特許第6124890号(P6124890)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6124890
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】放熱装置、及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/473 20060101AFI20170424BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   H01L23/46 Z
   H05K7/20 N
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-525861(P2014-525861)
(86)(22)【出願日】2013年7月18日
(86)【国際出願番号】JP2013069515
(87)【国際公開番号】WO2014014054
(87)【国際公開日】20140123
【審査請求日】2015年1月14日
(31)【優先権主張番号】特願2012-159734(P2012-159734)
(32)【優先日】2012年7月18日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-284011(P2012-284011)
(32)【優先日】2012年12月27日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-284012(P2012-284012)
(32)【優先日】2012年12月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】岩田 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】森 昌吾
(72)【発明者】
【氏名】上山 大蔵
(72)【発明者】
【氏名】坪川 健治
(72)【発明者】
【氏名】曽我 慎一
(72)【発明者】
【氏名】谷本 秀夫
【審査官】 ▲吉▼澤 雅博
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/136362(WO,A1)
【文献】 特開2007−012719(JP,A)
【文献】 特開2001−160649(JP,A)
【文献】 特開昭47−036973(JP,A)
【文献】 特開2007−184479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱装置であって、
複数のセラミックシートが積層されてなる基体と、
該基体の内部に設けられた冷媒が流れる冷媒流路と、
冷却対象物が搭載される部位として前記基体の第1面に設けられた少なくとも一つの搭載部と、
前記複数のセラミックシートのうちの少なくとも一つによって形成されるスリット形成層であって、該スリット形成層は、前記冷媒流路の一部を構成する複数のスリットを有し、該複数のスリットは、前記セラミックシートの積層方向から見て、少なくとも部分的に前記搭載部を含む領域と重なり合うように形成された、前記スリット形成層と、
前記複数のセラミックシートのうちの少なくとも一つによって形成される連通路形成層であって、該連通路形成層は、前記冷媒流路の一部を構成するとともに前記複数のスリットに連通する連通路を有し、前記セラミックシートの積層方向において、前記スリットは、前記連通路に対し前記搭載部寄りに位置する、前記連通路形成層と、を有し、
前記積層方向から見て、前記スリットと前記連通路とにおける重なり部は、前記搭載部が設けられた領域の近傍に位置しており、
断面視において、前記搭載部に対応する冷媒流路の上流側に位置する前記重なり部は、前記搭載部の直下の第1の重なり部と、該第1の重なり部以外の第2の重なり部とを含み、該第2の重なり部の長さが、前記第1の重なり部の長さよりも長くなっている、放熱装置。
【請求項2】
前記基体の第1面には、複数の前記搭載部が並設されているとともに、
前記積層方向から見て、隣り合う搭載部の間に位置する前記冷媒流路の一部は、前記隣り合う搭載部の一方から、前記基体における前記第1面に対して反対側の第2面に向かう方向に延びるとともに、さらに、該第2面から前記隣り合う搭載部の他方に向かう方向に延びている、請求項1に記載の放熱装置。
【請求項3】
前記基体は、隣り合う搭載部の一方から前記第2面に向かう方向に前記冷媒流路の一部が延びた先に位置する前記第2面の部位に、別の冷却対象物が搭載される搭載部をさらに有している、請求項2に記載の放熱装置。
【請求項4】
前記スリット形成層のスリットにおいて前記冷媒が流れる方向の下流側には、前記基体における前記第1面に対して反対側の第2面に向かって延びる延設流路が設けられており、
前記第1面寄りに位置する前記延設流路の流路面の一部と前記第2面寄りに位置する前記延設流路の流路面の一部とが前記積層方向において対向している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の放熱装置。
【請求項5】
前記スリット形成層は、複数の第1スリット、複数の第2スリット、及び、これら複数の第1スリットと複数の第2スリットとを連通する連通部、を有しており、
前記複数の第1スリットは、前記積層方向から見て、隣り合う搭載部の一方を含む領域と少なくとも部分的に重なり合っており、
前記複数の第2スリットは、前記積層方向から見て、隣り合う搭載部の他方を含む領域と少なくとも部分的に重なり合っている、請求項2に記載の放熱装置。
【請求項6】
放熱装置であって、
複数のセラミックシートが積層されてなる基体と、
該基体の内部に設けられた冷媒が流れる冷媒流路と、
冷却対象物が搭載される部位として前記基体の第1面に設けられた少なくとも一つの搭載部と、
前記複数のセラミックシートのうちの少なくとも一つによって形成されるスリット形成層であって、該スリット形成層は、前記冷媒流路の一部を構成する複数のスリットを有し、該複数のスリットは、前記セラミックシートの積層方向から見て、少なくとも部分的に前記搭載部を含む領域と重なり合うように形成された、前記スリット形成層と、
前記複数のセラミックシートのうちの少なくとも一つによって形成される連通路形成層であって、該連通路形成層は、前記冷媒流路の一部を構成するとともに前記複数のスリットに連通する連通路を有し、前記セラミックシートの積層方向において、前記スリットは、前記連通路に対し前記搭載部寄りに位置する、前記連通路形成層と、を有し、
前記積層方向から見て、前記スリットと前記連通路とにおける重なり部は、前記搭載部が設けられた領域の近傍に位置しており、
前記基体の第1面には、複数の前記搭載部が並設されているとともに、
前記積層方向から見て、隣り合う搭載部の間に位置する前記冷媒流路の一部は、前記隣り合う搭載部の一方から、前記基体における前記第1面に対して反対側の第2面に向かう方向に延びるとともに、さらに、該第2面から前記隣り合う搭載部の他方に向かう方向に延びており、
前記スリット形成層は、複数の第1スリット、複数の第2スリット、及び、これら複数の第1スリットと複数の第2スリットとを連通する連通部、を有しており、
前記複数の第1スリットは、前記積層方向から見て、隣り合う搭載部の一方を含む領域と少なくとも部分的に重なり合っており、
前記複数の第2スリットは、前記積層方向から見て、隣り合う搭載部の他方を含む領域と少なくとも部分的に重なり合っている、放熱装置。
【請求項7】
前記冷媒流路は、前記基体における前記第1面に開口した冷媒供給孔及び冷媒排出孔を備える、請求項1〜のいずれか一項に記載の放熱装置。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか一項に記載の放熱装置と、
前記放熱装置の前記搭載部に搭載される金属板と、
前記金属板に実装される半導体素子と、を備える、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックシートが積層されて形成された放熱装置、及び半導体素子が実装された金属板が当該放熱装置に搭載されることで構成された半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の放熱装置が、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1の放熱装置は、冷媒流路の構成要素である複数のスリットを有するセラミックシートと、冷媒流路と外部とを連通する連通路を有するセラミックシートとを含む複数のセラミックシートが積層された積層体が焼成されることで形成されている。そして、半導体素子を実装した金属板が放熱装置に接合されることで半導体装置が構成される。金属板を介して放熱装置に伝達された半導体素子の熱は、冷媒流路を流れる冷媒に放熱され、半導体素子が冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2011/136362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような放熱装置において、半導体素子等の冷却対象物に対する冷却性能のさらなる向上が望まれている。
本開示の目的は、冷却対象物に対する冷却性能を向上させることができる放熱装置、及び半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における放熱装置の一態様は、複数のセラミックシートが積層されてなる基体と、該基体の内部に設けられた冷媒が流れる冷媒流路と、冷却対象物が搭載される部位として前記基体の第1面に設けられた少なくとも一つの搭載部と、前記複数のセラミックシートのうちの少なくとも一つによって形成されるスリット形成層であって、該スリット形成層は、前記冷媒流路の一部を構成する複数のスリットを有し、該複数のスリットは、前記セラミックシートの積層方向から見て、少なくとも部分的に前記搭載部を含む領域と重なり合うように形成された、前記スリット形成層と、前記複数のセラミックシートのうちの少なくとも一つによって形成される連通路形成層であって、該連通路形成層は、前記冷媒流路の一部を構成するとともに前記複数のスリットに連通する連通路を有し、前記セラミックシートの積層方向において、前記スリットは、前記連通路に対し前記搭載部寄りに位置する、前記連通路形成層と、を有し、前記積層方向から見て、前記スリットと前記連通路とにおける重なり部は、前記搭載部が設けられた領域の近傍に位置しており、断面視において、前記搭載部に対応する冷媒流路の上流側に位置する前記重なり部は、前記搭載部の直下の第1の重なり部と、該第1の重なり部以外の第2の重なり部とを含み、該第2の重なり部の長さが、前記第1の重なり部の長さよりも長くなっている
本開示における放熱装置の一態様は、複数のセラミックシートが積層されてなる基体と、該基体の内部に設けられた冷媒が流れる冷媒流路と、冷却対象物が搭載される部位として前記基体の第1面に設けられた少なくとも一つの搭載部と、前記複数のセラミックシートのうちの少なくとも一つによって形成されるスリット形成層であって、該スリット形成層は、前記冷媒流路の一部を構成する複数のスリットを有し、該複数のスリットは、前記セラミックシートの積層方向から見て、少なくとも部分的に前記搭載部を含む領域と重なり合うように形成された、前記スリット形成層と、前記複数のセラミックシートのうちの少なくとも一つによって形成される連通路形成層であって、該連通路形成層は、前記冷媒流路の一部を構成するとともに前記複数のスリットに連通する連通路を有し、前記セラミックシートの積層方向において、前記スリットは、前記連通路に対し前記搭載部寄りに位置する、前記連通路形成層と、を有し、前記積層方向から見て、前記スリットと前記連通路とにおける重なり部は、前記搭載部が設けられた領域の近傍に位置しており、前記基体の第1面には、複数の前記搭載部が並設されているとともに、前記積層方向から見て、隣り合う搭載部の間に位置する前記冷媒流路の一部は、前記隣り合う搭載部の一方から、前記基体における前記第1面に対して反対側の第2面に向かう方向に延びるとともに、さらに、該第2面から前記隣り合う搭載部の他方に向かう方向に延びており、前記スリット形成層は、複数の第1スリット、複数の第2スリット、及び、これら複数の第1スリットと複数の第2スリットとを連通する連通部、を有しており、前記複数の第1スリットは、前記積層方向から見て、隣り合う搭載部の一方を含む領域と少なくとも部分的に重なり合っており、前記複数の第2スリットは、前記積層方向から見て、隣り合う搭載部の他方を含む領域と少なくとも部分的に重なり合っている。
【0007】
本開示における半導体装置の態様は、上記態様の放熱装置と、前記放熱装置の前記搭載部に搭載される金属板と、前記金属板に実装される半導体素子と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態における半導体装置の斜視図。
図2図1の半導体装置における放熱装置の斜視図。
図3図2の放熱装置の構成要素である複数のセラミックシートの平面図。
図4図1の半導体装置の断面図。
図5】(a)は図4における1−1線に沿った断面図、(b)は図4における2−2線に沿った断面図。
図6図4の半導体装置の一部を拡大した断面図。
図7】別の実施形態におけるセラミックシートの平面図。
図8図7のセラミックシートを備える半導体装置の断面図。
図9】別の実施形態における半導体装置の一部を拡大した断面図。
図10】別の実施形態における半導体装置の一部を拡大した断面図。
図11】別の実施形態における半導体装置の断面図。
図12】別の実施形態におけるセラミックシートの平面図。
図13】別の実施形態における半導体装置の断面図。
図14図13の半導体装置の一部を拡大した断面図。
図15図13の半導体装置における放熱装置の構成要素である複数のセラミックシートの平面図。
図16】第2実施形態における放熱装置の斜視図。
図17図16の放熱装置を備える半導体装置の斜視図。
図18図17における3−3線に沿った断面図。
図19図17における4−4線に沿った断面図。
図20図16の放熱装置における基体の構成要素である複数のセラミックシートの平面図。
図21】別の実施形態における半導体装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1図6にしたがって説明する。
図1に示す半導体装置10は、放熱装置11の基体12における一方の面(第1面)12aに、半導体素子13aが実装された金属板13b、及び半導体素子14aが実装された金属板14bが搭載されることで、構成されている。金属板13b,14bは、配線層及び接合層として機能するとともに、純アルミニウム(例えば、工業用純アルミニウムである1000系アルミニウム)や銅により形成されている。また、半導体素子13a,14aとしては、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やダイオードが用いられる。また、半導体素子13a,14aと金属板13b,14bとは、金属接合、例えば、半田付けやろう付けによって接合されている。また、金属板13b,14bと放熱装置11とは、金属接合、例えば、半田付けやろう付けによって接合されている。これにより、金属板13b,14bは、基体12における第1面12aに搭載されている。
【0010】
図2に示すように、基体12における第1面12aにおいて、金属板13b,14bが載置される部位(図2において破線で示す部位)は、金属板13b,14bが搭載される搭載部としての第1搭載部121及び第2搭載部131である。すなわち、基体12の第1面12aには搭載部が複数(第1実施形態では2つ)並設されている。
【0011】
基体12は、セラミック製のシートが複数枚(第1実施形態では5枚)積層されることで構成されており、放熱装置11は、基体12が焼成されることによって形成されている。セラミックの材料としては、酸化アルミニウム、窒化珪素、炭化珪素、窒化アルミニウム、及びアルミナ・ジルコニウムなどが用いられる。なお、放熱装置11の冷却方式として水冷方式を採用する場合、セラミックの材料としては、耐水性の高い材料が好ましい。
【0012】
図3に示すように、第1実施形態の放熱装置11はセラミックシートとしての第1〜第5セラミックシート21,22,23,24,25を構成要素として備えている。なお、以下の説明は、放熱装置11において第1セラミックシート21を「上」とし、第5セラミックシート25を「下」として説明する。第1セラミックシート21は、放熱装置11の天板部を構成するとともに、その一面(上面)が基体12における第1面12aである。また、第1セラミックシート21には貫通孔状の冷媒供給孔21a及び冷媒排出孔21bが形成されている。冷媒供給孔21a及び冷媒排出孔21bは同一開口面積を有する。冷媒供給孔21aには、放熱装置11内に冷媒を供給する供給管P1(図1及び図2に示す)が接続されるとともに、冷媒排出孔21bには、放熱装置11内を流通した冷媒を外部に排出する排出管P2(図1及び図2に示す)が接続される。
【0013】
第2セラミックシート22には貫通孔状の第1冷媒流入孔22aが形成されている。第1冷媒流入孔22aは、第1〜第5セラミックシート21,22,23,24,25の積層方向から見て、冷媒供給孔21aと重なる位置に形成されている。また、第2セラミックシート22には貫通孔状の第1冷媒流出孔22bが形成されている。第1冷媒流出孔22bは、第1〜第5セラミックシート21,22,23,24,25の積層方向(以下、単に積層方向Aと言う場合もある。)から見て、冷媒排出孔21bと重なる位置に形成されている。第1冷媒流入孔22a及び第1冷媒流出孔22bは、対称となる位置に形成されている。第1冷媒流入孔22a及び第1冷媒流出孔22bは同一開口面積を有する。
【0014】
また、第2セラミックシート22における第1冷媒流入孔22aと第1冷媒流出孔22bとの間には、スリットとしての複数の第1スリット22cが形成されている。各第1スリット22cは、第2セラミックシート22を貫通するとともに、第2セラミックシート22における第1冷媒流入孔22a寄りの位置から第2セラミックシート22の中央部に亘って直線状に延びている。第1スリット22cの長さは互いに同じであり、第1スリット22cは同一開口面積を有する。複数の第1スリット22cは、少なくとも部分的に第1搭載部121(金属板13b及び半導体素子13a)の直下に配置されている。すなわち、積層方向Aから見て、第1スリット22cは少なくとも部分的に、第1搭載部121と重なり合っている。
【0015】
また、第2セラミックシート22における第1冷媒流入孔22aと第1冷媒流出孔22bとの間には、スリットとしての複数の第2スリット22dが形成されている。各第2スリット22dは、第2セラミックシート22を貫通するとともに、第2セラミックシート22における第1冷媒流出孔22b寄りの位置から第2セラミックシート22の中央部に亘って直線状に延びている。第2スリット22dの長さは互いに同じであり、第2スリット22dは同一開口面積を有する。複数の第2スリット22dは、少なくとも部分的に第2搭載部131(金属板14b及び半導体素子14a)の直下に配置されている。すなわち、積層方向Aから見て、第2スリット22dは少なくとも部分的に、第2搭載部131と重なり合っている。
【0016】
第3セラミックシート23には貫通孔状の第2冷媒流入孔23aが形成されている。第2冷媒流入孔23aは、積層方向Aから見て、第1冷媒流入孔22aと重なる位置に形成されている。また、第3セラミックシート23には貫通孔状の第2冷媒流出孔23bが形成されている。第2冷媒流出孔23bは、積層方向Aから見て、第1冷媒流出孔22bと重なる位置に形成されている。第2冷媒流入孔23a及び第2冷媒流出孔23bは同一開口面積を有する。
【0017】
また、第3セラミックシート23には、各第1スリット22cの延設方向に対して直交する方向に延びる第1連通孔23cが形成されている。第1連通孔23cは、積層方向Aから見て、各第1スリット22cにおける第1冷媒流入孔22a寄りの端部である一端部と部分的に重なっている。よって、各第1スリット22cと第1連通孔23cとは連通している。さらに、第3セラミックシート23における第1連通孔23cよりも第2冷媒流出孔23bに近い位置には、各第1スリット22cの延設方向に対して直交する方向に延びる第2連通孔23dが形成されている。第2連通孔23dは、積層方向Aから見て、各第1スリット22cにおける第1冷媒流出孔22b寄りの端部である他端部と部分的に重なっている。よって、各第1スリット22cと第2連通孔23dとは連通している。
【0018】
また、第3セラミックシート23には、各第2スリット22dの延設方向に対して直交する方向に延びる第3連通孔23eが形成されている。第3連通孔23eは、積層方向Aから見て、各第2スリット22dにおける第1冷媒流入孔22a寄りの端部である一端部と部分的に重なっている。よって、各第2スリット22dと第3連通孔23eとは連通している。さらに、第3セラミックシート23における第3連通孔23eよりも第2冷媒流出孔23bに近い位置には、各第2スリット22dの延設方向に対して直交する方向に延びる第4連通孔23fが形成されている。第4連通孔23fは、積層方向Aから見て、各第2スリット22dにおける第1冷媒流出孔22b寄りの端部である他端部と部分的に重なっている。よって、各第2スリット22dと第4連通孔23fとは連通している。
【0019】
第4セラミックシート24には、第1貫通孔24a、第2貫通孔24b、及び第3貫通孔24cが形成されている。第1貫通孔24aは、積層方向Aから見て、第2冷媒流入孔23a、及び第1連通孔23cの一部と重なって、第2冷媒流入孔23aと第1連通孔23cとを連通している。また、第2貫通孔24bは、積層方向Aから見て、第2連通孔23dの一部及び第3連通孔23eの一部と重なって、第2連通孔23dと第3連通孔23eとを連通している。さらに、第3貫通孔24cは、積層方向Aから見て、第4連通孔23fの一部及び第2冷媒流出孔23bと重なって、第4連通孔23fと第2冷媒流出孔23bとを連通している。第5セラミックシート25は、放熱装置11の底板部を構成するとともに、その一面(下面)が基体12における第2面12bである。すなわち、当該第2面12bは、基体12において、第1面12aに対して反対側に位置する面である。
【0020】
図4に示すように、放熱装置11の基体12は、第5セラミックシート25上に第4セラミックシート24、第3セラミックシート23、第2セラミックシート22、第1セラミックシート21が順に積層されることにより形成されている。そして、基体12の内部には、冷媒供給孔21a、第1冷媒流入孔22a、第2冷媒流入孔23a、第1貫通孔24a、第1連通孔23c、各第1スリット22c、第2連通孔23d、第2貫通孔24b、第3連通孔23e、各第2スリット22d、第4連通孔23f、第3貫通孔24c、第2冷媒流出孔23b、第1冷媒流出孔22b及び冷媒排出孔21bによって、冷媒が流れる冷媒流路15が形成されている。また、冷媒供給孔21a及び冷媒排出孔21bは基体12における第1面12aに開口している。
【0021】
第2連通孔23d、第2貫通孔24b及び第3連通孔23eは、積層方向Aから見て、第1搭載部121と第2搭載部131との間に位置する冷媒流路15の一部を構成している。そして、第2連通孔23d、第2貫通孔24b及び第3連通孔23eによって、冷媒流路15の一部、すなわち、第1搭載部121から第2面12bに向かう方向に延びるとともに、さらに、第2面12bから第2搭載部131に向かう方向に延びる冷媒流路15の一部が形成されている。
【0022】
第1実施形態では、第2セラミックシート22が、冷媒流路15の一部を構成する複数の第1スリット22c及び第2スリット22dを有するスリット形成層に相当する。また、第1連通孔23cは、各第1スリット22cにおける第1冷媒流入孔22a寄りの一部が重なって各第1スリット22cに連通する連通路に相当する。第2連通孔23dは、各第1スリット22cにおける第冷媒流出孔2b寄りの一部が重なって第1スリット22cに連通する連通路に相当する。第3連通孔23eは、各第2スリット22dにおける第1冷媒流入孔22a寄りの一部が重なって各第2スリット22dに連通する連通路に相当する。第4連通孔23fは、各第2スリット22dにおける第1冷媒流出孔22b寄りの一部が重なって各第2スリット22dに連通する連通路に相当する。そして、第3セラミックシート23が、連通路に相当する第1連通孔23c、第2連通孔23d、第3連通孔23e、及び第4連通孔23fを有する連通路形成層に相当する。
【0023】
そして、積層方向Aにおいて、第1スリット22c及び第2スリット22dは、第1連通孔23c、第2連通孔23d、第3連通孔23e及び第4連通孔23fに対し第1搭載部121及び第2搭載部131寄りに位置している。
【0024】
放熱装置11では、第1スリット22cにおいて冷媒が流れる下流側に、第2連通孔23dが連設されるとともに、第2連通孔23dに第2貫通孔24bが連設され、基体12の第1面12aから第2面12bに向かって延びる延設流路Wが形成される。図4及び図6に示すように、延設流路Wでは、基体12の第1面12a寄りに位置する第1スリット22cによって形成される流路の一部の流路面X1と、第2面12b寄りに位置する第2貫通孔24bによって形成される流路の一部の流路面Y1とが、第1〜第5セラミックシート21〜25の積層方向において対向している。
【0025】
流路面X1は、第2セラミックシート22よりも上側に位置する第1セラミックシート21の面で構成されるとともに、流路面Y1は、第4セラミックシート24よりも下側に位置する第5セラミックシート25の面で構成される。すなわち、第1スリット22cで形成される流路は、前記積層方向の最上に位置する冷媒流路15を構成する流路であり、流路面X1は前記流路の上面に相当する。また、第2貫通孔24bで形成される流路は、前記積層方向の最下に位置する冷媒流路15を構成する流路であり、流路面Y1は前記流路の下面に相当する。
【0026】
図5(a)に示すように、隣り合う第1スリット22cの間には第1フィン31が形成されている。また図5(b)に示すように、隣り合う第2スリット22dの間には第2フィン32が形成されている。
【0027】
図6に示すように、第1フィン31の長さH(第1スリット22cの長さ)は、積層方向Aから見て、領域Z(図6においてドットで示す領域)に含まれる長さに設定されている。この領域Zは、第1セラミックシート21の断面において、直線A,Bに挟まれる領域であり、これら直線A,Bは、基体12における第1面12aとのなす角度θが45°となるように、金属板13bの両端131b,132bから延びる直線である。なお、基体12における第1面12aに対する直線A,Bの角度θは、30°〜60°の範囲内であればよい。この直線A,Bに挟まれる領域Zは、半導体素子13aから発する熱が金属板13bを介して放熱装置11に伝達される熱伝達領域を示している。
【0028】
そして、第1実施形態においては、積層方向Aから見て、この領域Zに対応する第1連通孔23cの部位が、各第1スリット22cと第1連通孔23cとの重なり部35とされる。よって、重なり部35は、半導体素子13aから発する熱が金属板13bを介して放熱装置11に伝達される熱伝達領域内に位置している。すなわち、積層方向Aから見て、重なり部35は、第1搭載部121が設けられた領域の近傍に位置している。重なり部35は、各第1スリット22cにおける第1冷媒流入孔22a寄りの端221cに対して第1スリット22cの内側に位置している。なお、第2フィン32の長さ(第2スリット22dの長さ)、及び各第2スリット22dと第3連通孔23eとの重なり部36の説明については、第1フィン31の長さH、及び各第1スリット22cと第1連通孔23cとの重なり部35の説明と同じであり、その詳細な説明は省略する。
【0029】
また、図6において、放熱装置11の断面視において、重なり部35は、第1搭載部121直下の第1の重なり部35aと、第1の重なり部35a以外の第2の重なり部35bとから構成されている。そして、第2の重なり部35bの長さが、第1の重なり部35aの長さより長くなっている。なおここで言う第2の重なり部35bの長さが、第1の重なり部35aの長さより長くなっているとは、放熱装置11の断面視において、第2の重なり部35bが、第1冷媒流入孔22a側に延設されており、それにより第2の重なり部35bの長さが、第1の重なり部35aの長さより長くなっていることを言う。また、ここでは第1搭載部121について説明したが、第2搭載部131側でも同様の形態としていても良い。なお、「搭載部直下」とは、搭載部に対し冷媒流路15寄りの領域であって、積層方向Aから見て、搭載部に重なる領域に相当する。
【0030】
次に、第1実施形態の作用を説明する。
冷媒供給源から供給された冷媒は、供給管P1から冷媒供給孔21a、第1冷媒流入孔22a、第2冷媒流入孔23a、第1貫通孔24a及び第1連通孔23cを介して各第1スリット22c内に流れ込む。ここで、第1連通孔23cから各第1スリット22cに冷媒が流れ込む際には、第1搭載部121(半導体素子13a及び金属板13b)に向かうように第1連通孔23cから各第1スリット22c内に冷媒が噴出される。これにより、第1連通孔23cから各第1スリット22cに流れ込む冷媒に噴流が生じ、各第1スリット22c内を流れる冷媒が撹拌される。その結果、例えば、冷媒が第1面12aに沿って流れた後、第1搭載部121(基体12における第1面12a)に沿うように各第1スリット22cを流れる場合に比べると、金属板13bを介して放熱装置11(各第1フィン31)に伝達される半導体素子13aの熱が、各第1スリット22cを流れる冷媒によって効率良く放熱され、半導体素子13aに対する冷却性能が向上する。なお、第1実施形態では、半導体素子13aは第1の冷却対象物に相当する。
【0031】
また、各第1スリット22cを流れる冷媒は、第2連通孔23d、第2貫通孔24b、第3連通孔23eを介して各第2スリット22d内に流れ込む。ここで、第3連通孔23eから各第2スリット22dに冷媒が流れ込む際には、第2搭載部131(半導体素子14a及び金属板14b)に向かうように第3連通孔23eから各第2スリット22d内に冷媒が噴出される。これにより、第3連通孔23eから各第2スリット22dに流れ込む冷媒に噴流が生じ、各第2スリット22d内を流れる冷媒が撹拌される。その結果、例えば、冷媒が第1面12aに沿って流れた後、第2搭載部131(基体12における第1面12a)に沿うように各第2スリット22dを流れる場合に比べると、金属板14bを介して放熱装置11(各第2フィン32)に伝達される半導体素子14aの熱が、各第2スリット22dを流れる冷媒によって効率良く放熱され、半導体素子14aに対する冷却性能が向上する。なお、第1実施形態では、半導体素子14aは第2の冷却対象物に相当する。
【0032】
そして、各第2スリット22dを流れる冷媒は、第4連通孔23f、第3貫通孔24c、第2冷媒流出孔23b、第1冷媒流出孔22b及び冷媒排出孔21bを介して排出管P2から放熱装置11の外部に排出される。
【0033】
上記第1実施形態では以下の効果が得られる。
(1)積層方向Aにおいて、第1スリット22c及び第2スリット22dは、第1連通孔23c、第2連通孔23d、第3連通孔23e及び第4連通孔23fに対し第1搭載部121及び第2搭載部131寄りに位置している。そして、積層方向Aから見て、各第1スリット22cと第1連通孔23cとの重なり部35、及び各第2スリット22dと第3連通孔23eとの重なり部36は、第1搭載部121及び第2搭載部131が設けられた領域の近傍に位置している。よって、第1連通孔23cから各第1スリット22cに流れ込む冷媒の流れ、及び第3連通孔23eから各第2スリット22dに流れ込む冷媒の流れが、第1搭載部121及び第2搭載部131に向かう流れとされ得る。よって、例えば、冷媒が第1搭載部121及び第2搭載部131に沿うように各第1スリット22c及び各第2スリット22dを流れる場合に比べると、半導体素子13a,14aが効率良く冷却されることができ、半導体素子13a,14aに対する冷却性能が向上し得る。
【0034】
(2)冷却対象物が搭載される第1の搭載部121に対応した領域Z、すなわち、上述した熱伝達領域である領域Zにおいて、第2の重なり部35bの長さは、第1の重なり部35aの長さより長くなっている。ここで、冷媒は細いスリットの冷媒流路に入ってから乱流が発生するが、乱流が熱交換に寄与するまでにタイムラグがある。よって、第2の重なり部35bの長さが、第1の重なり部35aより長くなっていることにより、冷媒によって、上流側に位置する伝熱領域から冷却でき半導体素子13aが効率良く冷却されることができる。それにより、半導体素子13aに対する冷却性能が向上し得る。なお、第1の搭載部121と同様に、第2の搭載部131および後述する第3の搭載部171についても同様の形態とすれば、複数の半導体素子が各搭載部に搭載された場合にも同様の効果が得られる。
【0035】
(3)冷媒流路15の一部であって、第2連通孔23d、第2貫通孔24b及び第3連通孔23eによって形成されている一部は、第1搭載部121から第2面12bに向かう方向に延びるとともに、さらに、該第2面12bから第2搭載部131に向かう方向に延びている。よって、冷媒流路15を流れる冷媒の流れが、第1搭載部121及び第2搭載部131に向かう流れとされ得る。したがって、半導体素子13aが実装された金属板13bが第1搭載部121に搭載されるとともに、半導体素子14aが実装された金属板14bが第2搭載部131に搭載される場合において、半導体素子13a,14aが効率良く冷却されることができ、半導体素子13a,14aに対する冷却性能が向上し得る。
【0036】
(4)第1連通孔23cと第1スリット22c、第連通孔23eと第2スリット22d、のそれぞれが各搭載部に向かって階段状とされている。それにより、階段状の冷媒流路15で冷媒を噴流させるとともに乱流も発生させることができ、各第1スリット22cの上流側の端221c及び各第2スリット22dの上流側の端の流路面X1から効率よく冷却でき冷却性能を向上し得る。その結果として、冷却性能を向上させるために流路を長くする必要もなく放熱装置11を小型化することができる。
【0037】
(5)冷媒供給孔21a及び冷媒排出孔21bは、基体12における第1面12aに開口している。よって、基体12における第1面12aに冷媒供給用の供給管P1や冷媒排出用の排出管P2を接続することができるため、放熱装置11に必要な部品が、基体12における第1面12a側に集約して配置され得る。その結果として、放熱装置11を小型化することができる。
【0038】
(6)第1フィン31の長さH(第1スリット22cの長さ)は、積層方向Aから見て、領域Zに含まれる長さに設定されている。この領域Zは、金属板13bの両端131b,132bから延びるとともに基体12における第1面12aとのなす角度θが45°となる直線A,Bに挟まれる領域である。これによれば、第1フィン31の長さHが半導体素子13aの放熱に最低限必要な長さとされ得る。すなわち、第1スリット22cの長さを極力短くすることができ、第1スリット22cが、領域Zよりも外側へはみ出す位置まで延びるように形成されている場合に比べると、第1スリット22c内を流れる冷媒の圧力損失が抑制され得る。
【0039】
(7)延設流路Wが、流路面X1,Y1が積層方向において互いに対向する流路とされることで、流路面積が小さくなる部分が減らされ得る。したがって、冷媒の圧力損失を低減させることができる。また、流路面X1,Y1が対向されることで、延設流路Wは、積層方向Aにおいて直線的な流路に近くなる。このため、延設流路Wにおける階段状部分を減らすことで、冷媒流路15の横方向への広がりを低減させ、放熱装置11の体格が小さくされ得る。
【0040】
なお、上記第1実施形態は以下のように変更してもよい。
図7に示すように、第2セラミックシート22に、各第1スリット22cと各第2スリット22dとを連通する連通部22hが形成されてもよい。そして、図8に示すように、第2連通孔23d、第2貫通孔24b及び第3連通孔23eが削除されてもよい。これによれば、第2セラミックシート22のみで、各第1スリット22cから連通部22hを介して各第2スリット22dに冷媒が流され得る。よって、各第1スリット22cから第2連通孔23d、第2貫通孔24b及び第3連通孔23eを介して各第2スリット22dに冷媒を流す場合に比べると、冷媒の流れがスムーズになるため、冷媒の圧力損失が抑制され得る。なお、この場合、第1搭載部121に、最も冷却されることが望ましい半導体素子を実装した金属板が搭載されるのが好ましい。
【0041】
図9に示すように、例えば、第1連通孔23cの開口面積を、上記第1実施形態の第1連通孔23cの開口面積よりも小さくして、第1連通孔23cを通過する際の冷媒の流速を速くしてもよい。これによれば、第1連通孔23cから各第1スリット22cに流れ込む冷媒に噴流が生じ易くなる。その結果、半導体素子13aに対する冷却性能がさらに向上する。また、同様に、第3連通孔23eの開口面積を、上記第1実施形態の第3連通孔23eの開口面積よりも小さくして、第3連通孔23eを通過する際の冷媒の流速を速くしてもよい。
【0042】
図10に示すように、例えば、第1貫通孔24aの開口面積を、上記第1実施形態の第1貫通孔24aの開口面積よりも大きくしてもよい。また、同様に、第2貫通孔24bの開口面積を、上記第1実施形態の第2貫通孔24bの開口面積よりも大きくしてもよい。
【0043】
図11に示すように、積層方向Aから見て、第1搭載部121と第2搭載部131との間に位置する冷媒流路15の一部が、第1搭載部121から基体12における第2面12bに向かう方向に延びた先に位置する第2面12bの部位に、搭載部としての第3搭載部171がさらに設けられてもよい。そして、この場合、第2貫通孔24bが複数のスリット41に代えられるとともに、積層方向Aから見て、第4セラミックシート24における第3搭載部171と少なくとも部分的に重なる部位に複数のフィン42が形成される。そして、半導体素子17aが実装された金属板17bが第3搭載部171に搭載される。半導体素子17aは、複数のスリット41を流れる冷媒によって放熱されることで冷却される。半導体素子17aは第3の冷却対象物に相当する。これによれば、放熱装置11に半導体素子が極力多く搭載されることができ、全体の体積が減らされるとともに、放熱装置11に搭載された半導体素子13a,14a,17aの冷却性能が向上され得る。
【0044】
第2セラミックシート22が、図12に示すように、波線状の複数の第1スリット43及び第2スリット44が形成されてもよい。これによれば、平面視直線状の第1スリット22c及び第2スリット22dに比べて放熱表面積が増加し、また冷媒の攪拌効果をもつことにより半導体素子13a,14aに対する冷却性能がさらに向上され得る。
【0045】
上記第1実施形態において、冷媒流路15の冷媒供給孔及び冷媒排出孔の位置が変更されてもよい。例えば、冷媒供給孔及び冷媒排出孔が、基体12における第2面12bに開口されてもよい。
【0046】
上記第1実施形態において、第1スリット22c及び第2スリット22dは、積層方向Aから見て、それらの少なくとも部分的に、第1搭載部121及び第2搭載部131を含む領域と重なり合っていればよい。
【0047】
上記第1実施形態において、第1スリット22c及び第2スリット22dの数が変更されてもよい。スリットの数は、半導体素子の面積や冷媒流路15の通路幅などによって変更される。例えば、冷媒流路15を形成する領域面積を同一とすると、通路幅を大きくすればスリットの数は少なくなり、通路幅を小さくすればスリットの数は多くなる。
【0048】
上記第1実施形態において、放熱装置11の基体12を構成するセラミックシートの積層枚数が変更されてもよい。例えば、セラミックシートの積層枚数は、放熱装置11内に形成される冷媒流路15の断面積(流路面積)に応じて増減される。
【0049】
上記第1実施形態において、半導体素子及び金属板の数は特に限定されるものではない。
上記第1実施形態において、搭載部の数は特に限定されるものではない。
【0050】
上記第1実施形態において、放熱装置11の冷却方式が空冷とされてもよい。このように構成した場合、冷媒流路15には、空気などの冷却用気体が流れることになる。
図4に示す第1実施形態の放熱装置11において、第1スリット22cに繋がる延設流路Wに加えて、その延設流路Wと同様の構成を有する延設流路が第2スリット22d側に設けられても良い。
【0051】
図13及び図14に示すように、延設流路Wとして、第1〜第5セラミックシート21〜25の積層方向に延びる直線状の延設流路W1,W2が設けられても良い。延設流路W1は、第1スリット22cと、第2連通孔23dと、第2貫通孔24bとによって構成される冷媒流路15の一部の流路である。延設流路W2は、冷媒流路15の一部の流路であって、第2スリット22dと、第4連通孔23fと、第3貫通孔24cとによって構成される。図14に示すように、延設流路W1では、第1セラミックシート21の面で構成される流路面X1と第5セラミックシート25の面で構成される流路面Y1とが、積層方向において対向する。この点は、延設流路W2でも同じである。直線状の延設流路W1,W2によれば、流路を階段状に形成する場合に比して、冷媒の圧力損失をさらに低減できる。また、階段状の部分を減らすことで、冷媒流路15の横方向への広がりがさらに低減し、放熱装置11の体格をさらに小さくすることもできる。
【0052】
図15に示すように、直線状の延設流路W1を形成する場合は、第2連通孔23dにおける第2冷媒流入孔23a寄りの端に対して反対の端(第2冷却流出孔23b寄りの端)の位置と、第1スリット22cにおける第1冷媒流入孔22a寄りの端に対して反対の端(第1冷却流出孔22b寄りの端)の位置と、を一致させる。また、延設流路W1を形成する場合は、第2連通孔23dにおける第2冷媒流入孔23a寄りの端の位置と、第2貫通孔24bにおける第1貫通孔24a寄りの端の位置と、を一致させる。また、直線状の延設流路W2を形成する場合は、第4連通孔23fにおける第2冷媒流出孔23b寄りの端の位置と、第2スリット22dにおける第1冷媒流出孔22b寄りの端の位置と、を一致させる。また、延設流路W2を形成する場合は、第4連通孔23fにおける第2冷媒流出孔23b寄りの端に対して反対の端(第2冷却流入孔23a寄りの端)の位置と、第3貫通孔24cにおける第2貫通孔24b寄りの端の位置と、を一致させる。
【0053】
(第2実施形態)
以下、本発明を具体化した第2実施形態を図16図20にしたがって説明する。
図16に示すように、放熱装置11は、複数枚(第2実施形態では6枚)の第1〜第6セラミック部材212,213,214,215,216,217を積層してなる基体218を備えている。セラミック部材の材料としては、酸化アルミニウム、窒化珪素、炭化珪素、窒化アルミニウム、及びアルミナ・ジルコニアなどが用いられる。また、放熱装置11の冷却方式として水冷方式を採用する場合、セラミックの材料としては、耐水性の高い材料が好ましい。
【0054】
基体218は、冷媒供給孔219と冷媒排出孔220とを有する。外部供給される冷媒は、冷媒供給孔219を通じて、基体218の内部に形成された冷媒流路に供給され、上記冷媒流路を流通した冷媒は、冷媒排出孔220を通じて、基体218の外部に排出される。冷媒供給孔219及び冷媒排出孔220は、基体218の構成要素である第1セラミック部材212にそれぞれ開口している。すなわち、これら冷媒供給孔219及び冷媒排出孔220は、基体218における一方の面(第1面)にそれぞれ開口している。冷媒供給孔219には、外部の冷媒供給源に接続される供給管P1を接続することができるとともに、冷媒排出孔220には、冷媒を外部に排出する排出管P2を接続することができる。また、基体218には、第1〜第6セラミック部材212,213,214,215,216,217の積層方向(以下、単に積層方向Bと言う場合もある。)から見て、前記冷媒流路と少なくとも部分的に重なる位置に、電子部品221の搭載部222(図16に破線で示す)が設けられる。第2実施形態において搭載部222は、冷媒供給孔219及び冷媒排出孔220が開口する第1セラミック部材212の面(第1面)であって、基体218の外部に位置する面に設けられる。
【0055】
図17に示すように、半導体装置10は、上述した第1実施形態と同様に、放熱装置11の基体218に設けられた搭載部222に、電子部品221として半導体素子226が実装された金属板227が搭載されることによって構成される。金属板227は、配線層及び接合層として機能するとともに、純アルミニウム(例えば、工業用純アルミニウムである1000系アルミニウム)や銅である。半導体素子226は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やダイオードである。半導体素子226と金属板227、及び金属板227と放熱装置11とは、例えば半田付けやろう付けなどによって金属接合される。
【0056】
以下、第2実施形態の放熱装置11について詳細に説明する。
図18及び図19に示すように、放熱装置11の基体218の内部には、冷媒供給孔219と冷媒排出孔220とに連通する冷媒流路228が形成されている。なお、以下の説明は、基体218の構成要素であるとともに搭載部222を有する第1セラミック部材212を「上」とし、第1セラミック部材212から最も離れた位置にある第6セラミック部材217を「下」として説明する。
【0057】
冷媒流路228は、第1〜第7流路L1〜L7を備える。詳細には、第1流路L1は、冷媒供給孔219に連設されるとともに冷媒を鉛直方向下方に流す直線状の流路である。第2流路L2は、第1流路L1から分岐されるとともに冷媒を斜め上方に流す流路である。第3流路L3は、第2流路L2に連設されるとともに搭載部222の直下に形成され、冷媒を水平方向に流す直線状の流路である。第4流路L4は、第3流路L3に連設されるとともに冷媒を鉛直方向下方に流す直線状の流路である。第5流路L5は、第4流路L4に連設されるとともに冷媒を水平方向に流す直線状の流路である。第6流路L6は、第5流路L5に連設されるとともに冷媒を鉛直方向上方に流す直線状の流路である。また、第7流路L7は、第2流路L2とともに第1流路L1から分岐され、冷媒を搭載部222の直下に位置する第3流路L3に向けて鉛直方向下方から上方に流す直線状の流路である。第1〜第6セラミック部材212〜217には、冷媒流路228の構成要素である複数の流路用孔が形成されている。そして、上述した第1〜第7流路L1〜L7は、複数の流路用孔が、第1〜第6セラミック部材212〜217の積層方向で繋ぎ合わせることで構成されている。
【0058】
以下、図20を用いて、放熱装置11の各部材を説明する。なお、図20においては、セラミック部材を形成するシートをセラミックシートとして称し、セラミック部材と同じ符号を用いて説明する。
【0059】
図20に示すように、第2実施形態において放熱装置11の構成要素である6枚の第1〜第6セラミックシート212〜217は、その長さ及び幅がそれぞれ同一寸法の矩形状のシートである。
【0060】
第1セラミックシート212は、搭載部222が設けられる放熱装置11の天板を構成し、搭載部222の両側には、冷媒供給孔219を有する第1流路用孔212aと、冷媒排出孔220を有する第6流路用孔212bと、を有する。第1流路用孔212aと第6流路用孔212bは同一の開口面積を有する。
【0061】
第2セラミックシート213は、積層された状態において、第1セラミックシート212の下方に位置する。第2セラミックシート213は、第1流路用孔213aと、第6流路用孔213bとを有する。第1流路用孔213aは、第1セラミックシート212の第1流路用孔212aと同位置に形成されて該第1流路用孔212aと連通し、かつ該第1流路用孔212aと同一の開口面積を有する。第6流路用孔213bは、第1セラミックシート212の第6流路用孔212bと同位置に形成されて該第6流路用孔212bと連通し、かつ該第6流路用孔212bと同一の開口面積を有する。また、第2セラミックシート213は、第1流路用孔213aと第6流路用孔213bとの間に、スリット状の複数本の第3流路用孔213cを(第2実施形態では5本)有する。各第3流路用孔213cは、同一形状であり、直線状に延びている。また、第3流路用孔213cにおいて、その延びる方向(長さ方向)に沿った長さは、搭載部222における同一方向に沿った長さよりも長く、複数の第3流路用孔213cは、その延びる方向(長さ方向)に直交する方向に沿って等間隔で位置している。そして、図18及び図19に示すように、第3流路用孔213cは、部分的に、搭載部222の直下に位置しており、その他の第3流路用孔213cの部分は、積層方向Bから見て、搭載部222の外側に位置している。
【0062】
第3セラミックシート214は、積層された状態において、第2セラミックシート213の下方に位置する。第3セラミックシート214は、第1流路用孔214aと、第6流路用孔214bとを有する。第1流路用孔214aは、第2セラミックシート213の第1流路用孔213aと同位置に形成されて該第1流路用孔213aと連通し、かつ該第1流路用孔213aと同一の開口面積を有する。第6流路用孔214bは、第2セラミックシート213の第6流路用孔213bと連通し、かつ該第6流路用孔213bと同一の開口面積を有する。また、第3セラミックシート214は、第1流路用孔214aと第6流路用孔214bとの間に、スリット状の複数本の第3流路用孔214cを(第2実施形態では5本)有する。各第3流路用孔214cは、同一形状であり、直線状に延びている。各第3流路用孔214cは、積層方向Bから見て、第2セラミックシート213の第3流路用孔213cと部分的に重なる位置にある。そして、各第3流路用孔214cにおいて、その延びる方向(長さ方向)に沿った長さは、第2セラミックシート213の第3流路用孔213cにおける同一方向に沿った長さよりも長い。また複数の第3流路用孔214cは、その延びる方向(長さ方向)に直交する方向に沿って等間隔で位置している。また、第2セラミックシート213と第3セラミックシート214とが積層された状態において、第3流路用孔214cの両端は、積層方向Bから見て、第3流路用孔213cの両端の位置から外方に向かってそれぞれ同一の長さだけ突出した位置にある。
【0063】
第2セラミックシート213と第3セラミックシート214とが積層された状態では、図19に示すように、各第3流路用孔213cと各第3流路用孔214cとが積層方向で重なり合い、セラミックシート2枚分の高さの第3流路L3が形成される。
【0064】
第4セラミックシート215は、積層された状態において、第3セラミックシート214の下方に位置する。第4セラミックシート215は、第1流路用孔215aを有している。この第1流路用孔215aは、第3セラミックシート214が積層された状態で、積層方向Bから見て、第1流路用孔214aの全範囲に重なるとともに、第3流路用孔214cにおける第1流路用孔214a寄りの一部の範囲に重なる位置にある。第1流路用孔215aの開口面積は、第3セラミックシート214の第1流路用孔214aの開口面積よりも大きい。また、第1流路用孔215aにおいて、第3セラミックシート214の第3流路用孔214cの延びる方向に直交する方向に沿った長さは、最外にそれぞれ位置する第3流路用孔214cの内面間の長さと同じである。
【0065】
また、第4セラミックシート215は、第6流路用孔215bを有し、この第6流路用孔215bは、第3セラミックシート214の第6流路用孔214bと同位置に形成されて該第6流路用孔214bと連通し、かつ該第6流路用孔214bと同一の開口面積を有する。また、第4セラミックシート215は、第1流路用孔215aと第6流路用孔215bとの間に第4流路用孔215cを有し、この第4流路用孔215cは、積層方向Bから見て、各第3流路用孔214cにおける第6流路用孔214b寄りの一部の範囲に重なる位置にある。
【0066】
また、第4セラミックシート215は、第1流路用孔215aと第4流路用孔215cとの間に、スリット状の複数の第7流路用孔215dを(第2実施形態では5本)有する。各第7流路用孔215dは、同一形状であり、直線状に延びている。また、各第7流路用孔215dは、積層方向Bから見て、第3セラミックシート214の第3流路用孔214cと重なる位置にある。そして、各第7流路用孔215dにおいて、その延びる方向(長さ方向)に沿った長さは、第2,第3セラミックシート213,214の各第3流路用孔213c,214cにおける同一方向に沿ったそれぞれの長さよりも短い。また複数の第7流路用孔215dは、その延びる方向(長さ方向)に直交する方向に沿って等間隔で位置している。また、第7流路用孔215dのそれぞれの中心は、搭載部222の中心を、第3流路用孔213c,214cの延びる方向に直交する方向に通る線上に位置している。
【0067】
第5セラミックシート216は、積層された状態において、第4セラミックシート215の下方に位置する。第5セラミックシート216は、第1流路用孔216aと第5流路用孔216bとを有する。第1流路用孔216aは、第4セラミックシート215が積層された状態で、積層方向Bから見て、第1流路用孔215aの全範囲、及び各第7流路用孔215dの全範囲と重なる位置にある。また、第5流路用孔216bは、第4セラミックシート215が積層された状態で、積層方向Bから見て、第6流路用孔215bの全範囲、及び第4流路用孔215cの全範囲に重なる位置にある。第6セラミックシート217は、積層された状態で、第5セラミックシート216の下方に位置する。第6セラミックシート217は、放熱装置11の底板を構成する。
【0068】
放熱装置11の基体218は、第6セラミック部材217上に、第5セラミック部材216、第4セラミック部材215、第3セラミック部材214、第2セラミック部材213、第1セラミック部材212の順に積層されることによって構成される。このように構成された基体218には、前述したように、この基体218の内部に冷媒流路228が形成される。
【0069】
第1流路L1は、第1〜第5セラミック部材212〜216の各第1流路用孔212a,213a,214a,215a,216aが繋がることによって形成される。第2流路L2は、第4セラミック部材215の第1流路用孔215aの一部の範囲と、第3セラミック部材214の第3流路用孔214cの一部の範囲と、第2セラミック部材213の第3流路用孔213cの一部の範囲と、が階段状に繋がることによって形成される。第3流路L3は、第2セラミック部材213の第3流路用孔213cと第3セラミック部材214の第3流路用孔214cとが繋がることによって形成される。
【0070】
第4流路L4は、第3セラミック部材214の第3流路用孔214cの一部の範囲と、第4セラミック部材215の第4流路用孔215cと、第5セラミック部材216の第5流路用孔216bの一部の範囲と、が直線状に繋がることによって形成される。第5流路L5は、第4セラミック部材215の第4流路用孔215cに繋がる第5セラミック部材216の第5流路用孔216bによって形成される。第6流路L6は、第5セラミック部材216の第5流路用孔216bに繋がるとともに、第1〜第4セラミック部材212〜215の各第6流路用孔212b,213b,214b,215bが繋がることによって形成される。第7流路L7は、第5セラミック部材216の第1流路用孔216aに繋がる第4セラミック部材215の第7流路用孔215dによって形成される。
【0071】
第2実施形態において第3流路L3は、搭載部222の直下において冷媒を流す直下流路となる。また、第2実施形態において第2流路L2は第3流路L3における冷媒の流れる方向の上流側に連通され、第2流路L2に繋がる第1流路L1とともに冷媒を第3流路L3に供給する供給流路を構成する。また、第2実施形態において第4流路L4は第3流路L3における冷媒の流れる方向の下流側に連通され、第4流路L4に繋がる第5流路L5と、第5流路L5に繋がる第6流路L6とともに第3流路L3を流れた冷媒を排出する排出流路を構成する。また、第2実施形態において第7流路L7は前記供給流路と前記排出流路との間に位置し、第3流路L3に対して鉛直方向下方から上方に向けて冷媒を噴出させる噴出流路となる。噴出流路となる第7流路L7は、搭載部222の中央部に向けて冷媒を噴出させる。
【0072】
また、図19に示すように、基体218には、第3流路L3を構成する第2セラミック部材213の第3流路用孔213cの間にフィン230が形成されるとともに、第3流路L3を構成する第3セラミック部材214の第3流路用孔214cの間にはフィン231が形成される。フィン230,231は、積層方向Bで重なり合う。これらのフィン230,31は、ストレートフィンである。
【0073】
次に、第2実施形態の作用を説明する。
第2実施形態の放熱装置11では、冷媒供給孔219を介して冷媒流路228に流入した冷媒が第1流路L1によって一旦、放熱装置11の下方に流れる。第1流路L1を流れた冷媒は、第1流路L1から分岐する第2流路L2と第7流路L7とに分流し、それぞれの流路を流れるとともに、第2流路L2及び第7流路L7から第3流路L3に流れる。第3流路L3を流れる冷媒には、第3流路L3を塞ぐ第1セラミック部材212の面及びフィン230,231を通じて電子部品221(半導体素子226と金属板227)の熱が放熱される。そして、第3流路L3を流れる熱交換後の冷媒は、第4流路L4、第5流路L5及び第6流路L6を流れ、冷媒排出孔220から外部に排出される。
【0074】
第2実施形態の放熱装置11では、第3流路L3に対して電子部品221の搭載部222の外周領域から搭載部222に向かって斜め方向から冷媒を流す第2流路L2と、搭載部222の中央部に向かって下から上に冷媒を流す第7流路L7と、を備えている。これらの第2流路L2及び第7流路L7を流れる冷媒は、第3流路L3に向けて下から上に噴出される。これにより、第3流路L3を流れる冷媒に噴流が生じ、冷媒が攪拌される。この攪拌により、第3流路L3を流れる冷媒の温度境界層を薄くする。特に、第7流路L7により、搭載部222において最も高温となる電子部品221の中央部に向けて冷媒を噴出させることで、冷媒を直接的に発熱面に当てることができ、温度境界層を効果的に薄くする。
【0075】
したがって、第2実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(8)第3流路L3に対して鉛直方向下方から上方に向けて冷媒を噴出させる第7流路L7を設けることで、冷媒を搭載部222に向けて直接的に当てることができる。これにより、第3流路L3を流れる冷媒の攪拌を効果的に行うことができ、第3流路L3を流れる冷媒の温度境界層を薄くできる。したがって、冷却対象物に対する冷却性能を向上させることができる。
【0076】
(9)第7流路L7を第1流路L1から分岐した流路として形成している。このため、基体218に形成される冷媒流路228の構成を簡素化することができる。
(10)第7流路L7は、冷媒を搭載部222の中央部に向かって噴出させる。これにより、第3流路L3を流れる冷媒の温度境界層を効果的に薄くできる。したがって、冷却対象物に対する冷却性能をさらに向上させることができる。
【0077】
(11)冷媒供給孔219や冷媒排出孔220を、搭載部222を設けた基体218の面(第1面)に開口させている。このため、冷媒供給孔219に接続される供給管P1や冷媒排出孔220に接続される排出管P2などの放熱装置11に必要な部品を集約して配置することができる。その結果、放熱装置11を小型化することができる。
【0078】
(12)第3流路L3に対して第2流路L2と第7流路L7との2つの流路から冷媒を噴出させる。このため、第3流路L3を流れる冷媒の攪拌を効果的に行うことができる。したがって、第3流路L3を流れる冷媒の温度境界層を薄くできる。
【0079】
(13)直線状の第4流路L4を設けている。このため、第4流路L4を階段状の流路とする場合に比して冷媒の圧力損失を低減させることができる。また、第4流路L4を直線状の流路とすることで、冷媒流路228において階段状となる部分を減らすことができ、冷媒流路228の横方向への広がりを低減することができる。したがって、放熱装置11を小型化することができる。
【0080】
(14)放熱装置11を有する半導体装置10では、電子部品221(半導体素子226と金属板227)を効率良く冷却することができ、電子部品221に対する冷却性能を向上させることができる。
【0081】
(15)セラミック製の放熱装置11では、放熱装置11自体に冷却機能と絶縁機能とを持たせることが可能となる。このため、放熱装置11に電子部品221(半導体素子226と金属板227)を直接接合することによって半導体装置10を構成することができる。したがって、半導体装置10における部品点数の削減や小型化を図ることができる。
【0082】
なお、第2実施形態は以下のように変更してもよい。
上記第2実施形態において、図21に示すように、冷媒流路228に複数の第7流路L7を形成しても良い。複数の第7流路L7を形成する場合、これらの第7流路L7は冷媒の噴出位置を、積層方向Bから見て、搭載部222の領域内に位置させることで、噴流の効果をより発揮させることができる。また、複数の第7流路L7のうち、少なくとも1つの第7流路L7を搭載部222の中央部に向けて冷媒を噴出させる位置に設けると良い。この構成によれば、複数の第7流路L7によって搭載部222に対して広範囲から冷媒を直接的に当てることができ、第3流路L3を流れる冷媒の温度境界層を効果的に薄くできる。したがって、冷却対象物に対する冷却性能をさらに向上させることができる。
【0083】
上記第2実施形態において、基体218には、第3流路用孔213c,214cを波状にすることで波状のフィンが形成されても良い。波状のフィンは、冷媒との接触面積が増加し、また冷媒の攪拌効果をもつので、冷却性能を向上させることができる。
【0084】
上記第2実施形態において、第2流路L2に冷媒を供給する流路と第7流路L7に冷媒を供給する流路とを異ならせても良い。例えば、第7流路L7に対して、冷媒を外部から直接供給しても良い。
【0085】
上記第2実施形態において、基体218における冷媒供給孔219や冷媒排出孔220の位置が変更されても良い。例えば、冷媒供給孔219や冷媒排出孔220を第6セラミック部材217に配置しても良いし、いずれか一方を第1セラミック部材212に配置し、他方を第6セラミック部材217に配置しても良い。
【0086】
上記第2実施形態において、第3セラミック部材214の第3流路用孔214cの一部の範囲と、第4セラミック部材215の第4流路用孔215cと、第5セラミック部材216の第5流路用孔216bの一部の範囲と、を階段状に繋げることにより、第4流路L4を斜め下方に延びる流路としても良い。
【0087】
上記第2実施形態において、第3流路用孔213c,214cの本数が変更されても良い。これらの本数は、半導体素子の面積や冷媒流路228の通路幅などによって変更される。例えば、冷媒流路228を形成する領域面積を同一とすると、通路幅を大きくすれば数は少なくなり、通路幅を小さくすれば数は多くなる。
【0088】
上記第2実施形態において、放熱装置11の基体218を構成するセラミック部材の積層枚数が変更されてもよい。例えば、セラミック部材の積層枚数は、放熱装置11内に形成される冷媒流路228の断面積(流路面積)に応じて増減させる。
【0089】
上記第2実施形態において、放熱装置11の冷却方式は液冷及び空冷の何れでも良い。
上記第2実施形態において、放熱装置11に搭載する電子部品221の数を変更しても良い。なお、基体218内部の冷媒流路228は、電子部品221を搭載する搭載部222の数や配置などによって適宜変更される。
【符号の説明】
【0090】
10…半導体装置、11…放熱装置、12,218…基体、12a…第1面、12b…第2面、13a,14a,17a,226…半導体素子(冷却対象物)、13b,14b,17b,227…金属板、15,228…冷媒流路、21…セラミックシートとしての第1セラミックシート、21a,219…冷媒供給孔、21b,220…冷媒排出孔、22…スリット形成層に相当するセラミックシートとしての第2セラミックシート、22c,43…スリットとしての第1スリット、22d,44…スリットとしての第2スリット、22h…連通部、23…連通路形成層に相当するセラミックシートとしての第3セラミックシート、23c…連通路に相当する第1連通孔、23d…連通路に相当する第2連通孔、23e…連通路に相当する第3連通孔、23f…連通路に相当する第4連通孔、24…セラミックシートとしての第4セラミックシート、25…セラミックシートとしての第5セラミックシート、35,36…重なり部、41…スリット、121…搭載部としての第1搭載部、131…搭載部としての第2搭載部、171…搭載部としての第3搭載部、212〜217…第1〜第6セラミック部材(セラミックシート)、222…搭載部、212a,213a,214a,215a,216a…第1流路用孔、212b,213b,214b,215b…第6流路用孔、213c,214c…第3流路用孔、215c…第4流路用孔、215d…第7流路用孔、216b…第5流路用孔、W,W1,W2…延設流路、X1,Y1…流路面、L1〜L7…第1〜第7流路。
図1
図2
図3
図4
図5
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