特許第6124900号(P6124900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6124900
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】基板用作業機器の基板高さ補正方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20170424BHJP
   H05K 13/08 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   H05K13/04 A
   H05K13/04 Z
   H05K13/08 P
【請求項の数】11
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-532632(P2014-532632)
(86)(22)【出願日】2012年8月29日
(86)【国際出願番号】JP2012071853
(87)【国際公開番号】WO2014033856
(87)【国際公開日】20140306
【審査請求日】2015年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】富士機械製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 聖一
【審査官】 中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−094673(JP,A)
【文献】 特開2005−030793(JP,A)
【文献】 特開2000−299597(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/063763(WO,A1)
【文献】 特開2007−266334(JP,A)
【文献】 特開2006−019469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板用作業機器の基板保持装置により基板を水平姿勢に保持し、高さ測定装置により前記基板上の複数の測定点の高さの測定値を測定する測定点高さ測定ステップと、
一直線上に並んだ3つ以上の測定点に基づいて、前記基板の一直線方向の断面形状を滑らかな曲線で近似し、前記3つ以上の測定点の間に理論点を設定して、前記理論点の高さの理論値を前記滑らかな曲線を用いて算出する理論点高さ算出ステップと、
一直線上に並んだ3つ以上の測定点と理論点との組合せまたは一直線上に並んだ3つ以上の理論点に基づいて、前記基板の一直線方向の断面形状を滑らかな曲線で近似し、前記測定点と前記理論点との間または前記理論点同士の間に新たな理論点を設定して、前記新たな理論点の高さの理論値を前記滑らかな曲線を用いて算出し、所望する数量の理論点および理論値が得られるまで新たな理論点の設定および理論値の算出を繰り返す理論点設定繰返しステップと、
前記測定点の測定値および前記理論点の理論値を用いて、前記基板上の所望する作業点の高さの補正値を算出する作業点高さ補正ステップと、
を有する基板用作業機器の基板高さ補正方法。
【請求項2】
基板用作業機器の基板保持装置により基板を水平姿勢に保持し、高さ測定装置により前記基板上の複数の測定点の高さの測定値を測定する測定点高さ測定ステップと、
一直線上に並んだ3つ以上の測定点に基づいて、前記基板の一直線方向の断面形状を滑らかな曲線で近似し、前記3つ以上の測定点の間に理論点を設定して、前記理論点の高さの理論値を前記滑らかな曲線を用いて算出する理論点高さ算出ステップと、
前記測定点の測定値および前記理論点の理論値を用いて、前記基板上の所望する作業点の高さの補正値を算出する作業点高さ補正ステップと、を有し、
特定の一直線に着目したとき並んだ3つ目の測定点が無い場合に前記理論点高さ算出ステップの前に、前記3つ目の測定点に代わる代用点を前記特定の一直線上に設定し、前記代用点の近傍の周りに3つの補助測定点を設定して前記代用点からの距離が小さいほど大きな重み値を付与し、前記高さ測定装置により前記3つの補助測定点の高さの補助測定値を測定し、各前記補助測定値に前記重み値を乗算した後に加算して算出した加重平均値を前記代用点の高さの代用測定値とする代用点高さ測定ステップをさらに有し、
前記理論点高さ算出ステップで、前記代用点および前記代用測定値を前記3つ目の測定点および測定値として扱う基板用作業機器の基板高さ補正方法。
【請求項3】
基板用作業機器の基板保持装置により基板を水平姿勢に保持し、高さ測定装置により前記基板上の複数の測定点の高さの測定値を測定する測定点高さ測定ステップと、
一直線上に並んだ3つ以上の測定点に基づいて、前記基板の一直線方向の断面形状を滑らかな曲線で近似し、前記3つ以上の測定点の間に理論点を設定して、前記理論点の高さの理論値を前記滑らかな曲線を用いて算出する理論点高さ算出ステップと、
前記測定点の測定値および前記理論点の理論値を用いて、前記基板上の所望する作業点の高さの補正値を算出する作業点高さ補正ステップと、を有し、
前記理論点高さ算出ステップで、
特定の一直線に着目したとき前記3つ以上の測定点の組合せが複数通りあって、特定の2つの測定点の間の断面形状を複数通りの滑らかな曲線で近似でき、かつ前記複数通りの滑らかな曲線が互いに一致しなかった場合に、前記複数通りの滑らかな曲線の間を通る平均的な曲線を求め、前記特定の2つの測定点の間の理論点の高さの理論値を前記平均的な曲線を用いて算出する基板用作業機器の基板高さ補正方法。
【請求項4】
基板用作業機器の基板保持装置により基板を水平姿勢に保持し、高さ測定装置により前記基板上の複数の測定点の高さの測定値を測定する測定点高さ測定ステップと、
一直線上に並んだ3つ以上の測定点に基づいて、前記基板の一直線方向の断面形状を滑らかな曲線で近似し、前記3つ以上の測定点の間に理論点を設定して、前記理論点の高さの理論値を前記滑らかな曲線を用いて算出する理論点高さ算出ステップと、
前記測定点の測定値および前記理論点の理論値を用いて、前記基板上の所望する作業点の高さの補正値を算出する作業点高さ補正ステップと、を有し、
前記測定点高さ測定ステップで、
前記基板保持装置により前記基板の特定箇所を基準高さに保持し、前記特定箇所に近い近傍点を前記測定点の一部に設定し、前記近傍点の高さの測定値は前記高さ測定装置による測定を行わずに前記基準高さとする基板用作業機器の基板高さ補正方法。
【請求項5】
請求項2において、前記測定点高さ測定ステップで、
前記基板保持装置により前記基板の特定箇所を基準高さに保持し、前記特定箇所に近い近傍点を前記補助測定点の一部に設定し、前記近傍点の高さの補助測定値は前記高さ測定装置による測定を行わずに前記基準高さとする基板用作業機器の基板高さ補正方法。
【請求項6】
基板用作業機器の基板保持装置により基板を水平姿勢に保持し、高さ測定装置により前記基板上の複数の測定点の高さの測定値を測定する測定点高さ測定ステップと、
一直線上に並んだ3つ以上の測定点に基づいて、前記基板の一直線方向の断面形状を滑らかな曲線で近似し、前記3つ以上の測定点の間に理論点を設定して、前記理論点の高さの理論値を前記滑らかな曲線を用いて算出する理論点高さ算出ステップと、
前記測定点の測定値および前記理論点の理論値を用いて、前記基板上の所望する作業点の高さの補正値を算出する作業点高さ補正ステップと、を有し、
記測定点高さ測定ステップにおける前記基板上の複数の測定点を予め決定しておく測定点決定ステップをさらに有し、前記測定点決定ステップは、
同一ロット中の多数の前記基板からサンプル基板を選出し、前記サンプル基板上の多数のサンプル測定点の高さであるサンプル測定値を測定するサンプル測定ステップと、
前記多数のサンプル測定点を基準点と比較点とに分け、前記基準点のサンプル測定値を用いて前記比較点の高さの推定値を算出する比較点算出ステップと、
前記比較点における前記サンプル測定値と前記推定値との相関性を比較し、前記相関性が不足であると判断したときに前記基準点を変更しまたは増加させて前記比較点算出ステップに戻り、前記相関性が過剰であると判断したときに前記基準点を減少させて前記比較点算出ステップに戻り、前記相関性が妥当であると判断したときに前記基準点を前記測定点に決定する妥当性判断ステップと、を含む基板用作業機器の基板高さ補正方法。
【請求項7】
請求項6において、前記妥当性判断ステップで、
各前記比較点の前記サンプル測定値から前記推定値を減算して差分値を求め、いずれかの差分値が所定の許容値を超過したときに前記相関性が不足であると判断し、全ての差分値が前記許容値よりも大幅に下回ったときに前記相関性が過剰であると判断し、前記全ての差分値が前記許容値を下回りかつ前記基準点を減らすことが難しいときに前記相関性が妥当であると判断する基板用作業機器の基板高さ補正方法。
【請求項8】
請求項6または7において、前記比較点算出ステップで、前記基準点およびそのサンプル測定値を前記測定点および前記測定値とみなし、前記比較点および前記推定値を前記作業点および前記補正値とみなして、前記理論点高さ算出ステップおよび前記作業点高さ補正ステップを行う基板用作業機器の基板高さ補正方法。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項において、前記妥当性判断ステップで、前記サンプル測定値、前記推定値、および前記サンプル測定値から前記推定値を減算して求めた差分値の少なくとも一種からなるデータ群のうち一種以上を、値の大きさに応じ色分けまたは記号分けして表示する基板用作業機器の基板高さ補正方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項において、前記作業点高さ補正ステップで、前記測定点および前記理論点を頂点とする多数の三角形領域の組合せによって前記基板を分割し、かつ各前記三角形領域では前記基板が平面であると近似し、前記作業点が含まれる前記三角形領域を用いて前記作業点の高さの補正値を算出する基板用作業機器の基板高さ補正方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項において、前記理論点高さ算出ステップで、一直線上に並んだ3つの測定点に基づいて、前記断面形状を円弧で近似する基板用作業機器の基板高さ補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板用作業機器を用いて基板に作業を施す際に、反りやうねりなどの変形が生じ得る基板の高さを補正する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に所定の作業を施す基板用作業機器として、はんだ印刷機、部品実装機、リフロー機、および基板検査機などがあり、これらを基板搬送装置で連結して基板生産ラインを構築する場合が多い。このうち部品実装機は、基板を部品実装位置の基準高さに水平姿勢に保持する基板保持装置、および部品供給装置から採取した部品を保持された基板に実装する部品移載装置を備えている。部品移載装置は、上方から基板に接近し、基板が基準高さに存在するものとして部品実装作業を行う。ここで、基板に反りやうねりなどの変形が生じていると作業高さに誤差が生じるので、部品に衝撃ストレスが加わったり、部品実装作業が不安定になったりして、生産する基板の品質が低下するおそれが生じる。このおそれを解消するために、基板保持装置に保持された基板の複数点の高さを測定して変形状態を把握し、作業高さを補正する技術が開発されており、例えば特許文献1〜4に開示されている。
【0003】
特許文献1の部品装着装置は、基板表面の部品装着基準面からのずれを測定する測定部と、前記ずれを用いて基板表面の反りの近似を行い装着高さの補正量を演算する演算処理部と、補正量に基づいて部品を装着する装着部とを有することを特徴としている。さらに、請求項3には、基板表面の反りを近似する曲面方程式として2次関数を用いることが開示されている。そして、装着高さを補正することにより、部品が基板に適正な圧力で過不足なく押し付けられて装着されるので、部品欠損や装着不良を防止でき、装着作業の信頼性を向上できる、と記載されている。
【0004】
特許文献2の基板検査装置は、プリント基板もしくはプリント基板上の検査対象の高さを検出するレーザ変位センサおよび変位計測手段に加えて、レーザを透過しない計測位置を複数箇所指定する手段と、計測位置で検出した高さを基準として部品装着位置の高さを演算する手段と、を備えている。これにより、部品周りのパターンランドの有無や、パターンランド上のはんだの有無に関わらず、正確な基板高さを求めることができる、とされている。
【0005】
特許文献3の電子部品の装着装置は、レーザーセンサで基板の表面高さを測定することにより基板の反りおよび凹凸を検出する基板測定手段と、装着された電子部品の高さを検出する装着電子部品測定手段を備えており、実施形態には格子状の測定箇所が例示されている。そして、一番目の基板で基板の表面高さ、電子部品の高さ、および電子部品の厚みの関係を確認することにより、二番目以降の基板で電子部品の装着高さの補正が精度よく行われ、生産効率が向上する、と記載されている。
【0006】
特許文献4の回路基板に対する作業装置は、回路基板の作業面上の3つ以上の測定箇所および各測定箇所の近傍の複数の補助測定箇所について作業基準面からの測定変位量を測定する測定手段と、測定変位量が閾値の範囲内に収まっているときに測定箇所の測定変位量に基づいて作業面を曲面モデルにより想定する演算手段と、を備えている。さらに、請求項8には、回路基板の作業面を複数の領域に区画した区画作業面毎に曲面モデルによる想定を行う態様が開示されている。また、実施形態には、曲面モデルの方程式を2次関数で表す態様が開示されている。これにより、回路基板に段差やスリット、切欠き等の影響による不連続面があっても、作業品質を低下させない、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−299597号公報
【特許文献2】特開2005−30793号公報
【特許文献3】特開2010−186940号公報
【特許文献4】国際公開2007/063763
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1〜4に開示されるように、基板の高さを測定して基板の変形を2次関数などで近似して作業高さを補正する技術では、測定点数を増加してやればその分だけ高さ補正精度は向上する。例えば、基板の特定方向の断面形状を考えた場合、基板の中央が上方に突出する上反りやその逆の下反りの変形は、特定方向に並んだ3つの測定点の高さから近似することができ、4点以上の測定点を設定すれば高さ補正精度が向上する。また、凹凸が接合するうねり状の変形に対しては、4つ以上の測定点で高さを設定し、例えば3次関数を用いて近似することができる。しかしながら、測定点数を増加させると、高さ測定装置の移動および測定動作に多くの時間が必要となるため、その分だけ基板生産のスループットが低下する。
【0009】
一方、この種の基板はロット単位で量産され、同一ロット中の多数の基板は類似した変形状態を呈するのが一般的である。したがって、予め同一ロット中からサンプル基板を選出して変形状態の傾向を確認しておけば、測定点の点数および位置を適正化でき、かつ測定点数を絞り込んでも高さ補正精度を確保できると考えられる。これにより、基板量産時のスループットの向上が期待される。
【0010】
また、基板の高さを非接触で測定するために特許文献2および3に例示されたレーザ変位センサが多用されるが、測定点の位置設定には制約がある。つまり、測定点は、レーザー光の多くが透過する基板素材面に設定することはできず、通常はレーザー光をよく反射する回路パターン上に限定して設定される。さらに、近年では部品の高密度実装化のために回路パターンが細線化されており、高さ測定を行える十分な広さを有する測定点の位置が限定されている。このような理由で、規則的な測定点の設定、例えば特許文献3に例示される格子状の測定箇所の設定を行えない場合が往々にして生じる。すると、基板の変形を表わす近似関数を求めるときに演算処理が複雑化および煩雑化し、かつ演算精度も低下しがちになる。
【0011】
さらに、特許文献1および4に例示される基板の変形を2次関数で近似する技術は、必ずしも高精度であるとは限らない。例えば、前述した上反りや下反りの変形では基板は概ね球面状に変形すると考えられるので、特定方向の断面形状を2次関数よりも円弧で近似するほうが好もしい。また、凹凸が接合するうねり状の変形を2次関数や円弧で近似することはできず、より複雑な関数を用いるか、基板を複数の領域に分割してそれぞれの領域で変形を近似する必要がある。
【0012】
なお、上述した高さ測定点数の増減に依存して高さ補正精度とスループットとが背反する問題点、測定点の位置設定の問題点、および変形を近似する関数の精度の問題点は、部品実装機の部品実装作業に限定されるものではない。例えば、部品実装機で部品を仮付けするために接着剤を塗布するとき、作業高さの誤差は塗布範囲のずれや塗布ムラの原因になる。また例えば、ディスペンサ装置やインクジェット装置を有する描画方式のはんだ印刷機でも、作業高さの誤差は描画範囲のずれやはんだの厚さムラの原因になる。
【0013】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、基板高さの測定点数を限定して基板生産のスループットの低下を抑制しつつ、高さ補正精度を高めた基板用作業機器の基板高さ補正方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決する請求項1に係る基板用作業機器の基板高さ補正方法の発明は、基板用作業機器の基板保持装置により基板を水平姿勢に保持し、高さ測定装置により前記基板上の複数の測定点の高さの測定値を測定する測定点高さ測定ステップと、一直線上に並んだ3つ以上の測定点に基づいて、前記基板の一直線方向の断面形状を滑らかな曲線で近似し、前記3つ以上の測定点の間に理論点を設定して、前記理論点の高さの理論値を前記滑らかな曲線を用いて算出する理論点高さ算出ステップと、一直線上に並んだ3つ以上の測定点と理論点との組合せまたは一直線上に並んだ3つ以上の理論点に基づいて、前記基板の一直線方向の断面形状を滑らかな曲線で近似し、前記測定点と前記理論点との間または前記理論点同士の間に新たな理論点を設定して、前記新たな理論点の高さの理論値を前記滑らかな曲線を用いて算出し、所望する数量の理論点および理論値が得られるまで新たな理論点の設定および理論値の算出を繰り返す理論点設定繰返しステップと、前記測定点の測定値および前記理論点の理論値を用いて、前記基板上の所望する作業点の高さの補正値を算出する作業点高さ補正ステップと、を有する。
【0018】
請求項2に係る発明は、基板用作業機器の基板保持装置により基板を水平姿勢に保持し、高さ測定装置により前記基板上の複数の測定点の高さの測定値を測定する測定点高さ測定ステップと、一直線上に並んだ3つ以上の測定点に基づいて、前記基板の一直線方向の断面形状を滑らかな曲線で近似し、前記3つ以上の測定点の間に理論点を設定して、前記理論点の高さの理論値を前記滑らかな曲線を用いて算出する理論点高さ算出ステップと、前記測定点の測定値および前記理論点の理論値を用いて、前記基板上の所望する作業点の高さの補正値を算出する作業点高さ補正ステップと、を有し、特定の一直線に着目したとき並んだ3つ目の測定点が無い場合に前記理論点高さ算出ステップの前に、前記3つ目の測定点に代わる代用点を前記特定の一直線上に設定し、前記代用点の近傍の周りに3つの補助測定点を設定して前記代用点からの距離が小さいほど大きな重み値を付与し、前記高さ測定装置により前記3つの補助測定点の高さの補助測定値を測定し、各前記補助測定値に前記重み値を乗算した後に加算して算出した加重平均値を前記代用点の高さの代用測定値とする代用点高さ測定ステップをさらに有し、前記理論点高さ算出ステップで、前記代用点および前記代用測定値を前記3つ目の測定点および測定値として扱う。
【0019】
請求項3に係る発明は、基板用作業機器の基板保持装置により基板を水平姿勢に保持し、高さ測定装置により前記基板上の複数の測定点の高さの測定値を測定する測定点高さ測定ステップと、一直線上に並んだ3つ以上の測定点に基づいて、前記基板の一直線方向の断面形状を滑らかな曲線で近似し、前記3つ以上の測定点の間に理論点を設定して、前記理論点の高さの理論値を前記滑らかな曲線を用いて算出する理論点高さ算出ステップと、前記測定点の測定値および前記理論点の理論値を用いて、前記基板上の所望する作業点の高さの補正値を算出する作業点高さ補正ステップと、を有し、前記理論点高さ算出ステップで、特定の一直線に着目したとき前記3つ以上の測定点の組合せが複数通りあって、特定の2つの測定点の間の断面形状を複数通りの滑らかな曲線で近似でき、かつ前記複数通りの滑らかな曲線が互いに一致しなかった場合に、前記複数通りの滑らかな曲線の間を通る平均的な曲線を求め、前記特定の2つの測定点の間の理論点の高さの理論値を前記平均的な曲線を用いて算出する。
【0020】
請求項4に係る発明は、基板用作業機器の基板保持装置により基板を水平姿勢に保持し、高さ測定装置により前記基板上の複数の測定点の高さの測定値を測定する測定点高さ測定ステップと、一直線上に並んだ3つ以上の測定点に基づいて、前記基板の一直線方向の断面形状を滑らかな曲線で近似し、前記3つ以上の測定点の間に理論点を設定して、前記理論点の高さの理論値を前記滑らかな曲線を用いて算出する理論点高さ算出ステップと、前記測定点の測定値および前記理論点の理論値を用いて、前記基板上の所望する作業点の高さの補正値を算出する作業点高さ補正ステップと、を有し、前記測定点高さ測定ステップで、前記基板保持装置により前記基板の特定箇所を基準高さに保持し、前記特定箇所に近い近傍点を前記測定点の一部に設定し、前記近傍点の高さの測定値は前記高さ測定装置による測定を行わずに前記基準高さとする。
請求項5に係る発明は、請求項2において、前記測定点高さ測定ステップで、前記基板保持装置により前記基板の特定箇所を基準高さに保持し、前記特定箇所に近い近傍点を前記補助測定点の一部に設定し、前記近傍点の高さの補助測定値は前記高さ測定装置による測定を行わずに前記基準高さとする。
【0021】
請求項6に係る発明は、基板用作業機器の基板保持装置により基板を水平姿勢に保持し、高さ測定装置により前記基板上の複数の測定点の高さの測定値を測定する測定点高さ測定ステップと、一直線上に並んだ3つ以上の測定点に基づいて、前記基板の一直線方向の断面形状を滑らかな曲線で近似し、前記3つ以上の測定点の間に理論点を設定して、前記理論点の高さの理論値を前記滑らかな曲線を用いて算出する理論点高さ算出ステップと、前記測定点の測定値および前記理論点の理論値を用いて、前記基板上の所望する作業点の高さの補正値を算出する作業点高さ補正ステップと、を有し、前記測定点高さ測定ステップにおける前記基板上の複数の測定点を予め決定しておく測定点決定ステップをさらに有し、前記測定点決定ステップは、同一ロット中の多数の前記基板からサンプル基板を選出し、前記サンプル基板上の多数のサンプル測定点の高さであるサンプル測定値を測定するサンプル測定ステップと、前記多数のサンプル測定点を基準点と比較点とに分け、前記基準点のサンプル測定値を用いて前記比較点の高さの推定値を算出する比較点算出ステップと、前記比較点における前記サンプル測定値と前記推定値との相関性を比較し、前記相関性が不足であると判断したときに前記基準点を変更しまたは増加させて前記比較点算出ステップに戻り、前記相関性が過剰であると判断したときに前記基準点を減少させて前記比較点算出ステップに戻り、前記相関性が妥当であると判断したときに前記基準点を前記測定点に決定する妥当性判断ステップと、を含む。
【0022】
請求項7に係る発明は、請求項6において、前記妥当性判断ステップで、各前記比較点の前記サンプル測定値から前記推定値を減算して差分値を求め、いずれかの差分値が所定の許容値を超過したときに前記相関性が不足であると判断し、全ての差分値が前記許容値よりも大幅に下回ったときに前記相関性が過剰であると判断し、前記全ての差分値が前記許容値を下回りかつ前記基準点を減らすことが難しいときに前記相関性が妥当であると判断する。
【0023】
請求項8に係る発明は、請求項6または7において、前記比較点算出ステップで、前記基準点およびそのサンプル測定値を前記測定点および前記測定値とみなし、前記比較点および前記推定値を前記作業点および前記補正値とみなして、前記理論点高さ算出ステップおよび前記作業点高さ補正ステップを行う。
【0024】
請求項9に係る発明は、請求項6〜8のいずれか一項において、前記妥当性判断ステップで、前記サンプル測定値、前記推定値、および前記サンプル測定値から前記推定値を減算して求めた差分値の少なくとも一種からなるデータ群のうち一種以上を、値の大きさに応じ色分けまたは記号分けして表示する。
請求項10に係る発明は、請求項1〜9のいずれか一項において、前記作業点高さ補正ステップで、前記測定点および前記理論点を頂点とする多数の三角形領域の組合せによって前記基板を分割し、かつ各前記三角形領域では前記基板が平面であると近似し、前記作業点が含まれる前記三角形領域を用いて前記作業点の高さの補正値を算出する。
請求項11に係る発明は、請求項1〜10のいずれか一項において、前記理論点高さ算出ステップで、一直線上に並んだ3つの測定点に基づいて、前記断面形状を円弧で近似する。
【発明の効果】
【0025】
請求項1に係る基板用作業機器の基板高さ補正方法の発明では、一直線上に並んだ3つ以上の測定点に基づいて基板の断面形状を滑らかな曲線で近似し、測定点の間に理論点を設定してその高さの理論値を算出し、測定点の測定値および理論点の理論値を用いて所望する作業点の高さの補正値を算出する。したがって、測定点の測定値のみを用いて作業点の補正値を算出する従来技術と比較すると、より多数の測定点および理論点に基づいて高さ補正を行えるため、高さ補正精度を向上できる。また、高さ測定装置を移動させる実測定を測定点のみに限定し、実測定よりも短時間で行える演算処理により理論点の高さの理論値を算出するようにしたので、高さ補正の所要時間は従来技術から大幅には増加しない。したがって、基板生産のスループットの低下を抑制できる。
【0028】
さらに、理論点設定繰返しステップで所望する数量の理論点および理論値を得るので、高さ補正精度を顕著に向上できる。また、新たな理論点の設定およびその高さの理論値の算出は全て演算処理によって行い、高さ測定装置を用いた実測定を追加する必要はないので、高さ補正の所要時間は大幅には増加せず、基板生産のスループットの低下を抑制できる。
【0029】
請求項2に係る発明では、特定の一直線に着目したとき並んだ3つ目の測定点が無い場合に、代用点を特定の一直線上に設定し、周りの3つの補助測定点の高さの加重平均値を代用測定値として、3つ目の測定点に代える。したがって、基板の構造上の制約、例えば高さ測定を行える回路パターンの配置の制約により一直線上に3つ目の測定点を設定できない場合であっても、高さ補正精度を向上できる。
【0030】
請求項3に係る発明では、特定の2つの測定点の間の断面形状を近似した複数通りの滑らかな曲線が互いに一致しなかった場合に、特定の2つの測定点の間の理論点の高さの理論値を平均的な曲線を用いて算出する。これにより、特定の一直線上に4つ以上の測定点を設定して、単純な上反りや下反りよりも複雑な変形、例えば凹凸が接合するうねり状の変形などを精度よく近似できる。さらに、変形の様相が変化する領域、例えば凸変形領域から凹変形領域へと変化する途中の境界領域についても精度よく近似できる。
【0031】
請求項4および請求項5に係る発明では、基板保持装置により基準高さに保持される基板の特定箇所に近い近傍点を測定点または補助測定点の一部に設定し、実測定を省略して基準高さを用いる。したがって、高さ測定装置を用いて測定を行う測定点または補助測定点の点数を削減でき、高さ補正の所要時間の増加を一層抑制して、基板生産のスループットの低下を一層抑制できる。
【0032】
請求項6に係る発明では、基板上の複数の測定点を予め決定しておく測定点決定ステップをさらに有し、測定点決定ステップは、サンプル測定ステップ、比較点算出ステップ、および妥当性判断ステップを含んでいる。そして、サンプル測定ステップで、多数のサンプル測定点の高さを測定してサンプル基板の変形状態を予め精度よく確認しておき、比較点算出ステップおよび妥当性判断ステップで、仮決めした基準点からサンプル基板の変形を過不足のない精度で近似できるか否かを判断して測定点を決定する。したがって、同一ロット内で類似した変形状態の傾向を呈する多数の基板に対して、高さ測定点の点数を限定しつつ測定位置を適正化でき、基板の変形を十分な精度で近似できる。これにより、基板量産時の高さ測定点数を限定でき、基板生産のスループットが向上する。
【0033】
請求項7に係る発明では、比較点のサンプル測定値から推定値を減算した差分値の大きさに基づいて、サンプル基板の変形の近似の相関性が妥当であるか否かを客観的に判断するので、量産時の高さ測定点の点数および測定位置を確実に適正化できる。また、近似の相関性の妥当の判断を自動化することができるので、作業者の手間が軽減される。
【0034】
請求項8に係る発明では、比較点算出ステップで、請求項1〜7のいずれか一項に記載の理論点高さ算出ステップおよび作業点高さ補正ステップを行う。つまり、限られた基準点のサンプル測定値に基づいてサンプル基板の変形の近似を行うときに、基板量産時と同じ演算処理方法で比較点の推定値を算出する。これにより、測定点の妥当性判定を行うサンプル基板と量産時の多数の基板とで変形の近似方法が整合し、量産時の高さ測定点の点数を限定しても、基板の変形を確実に十分な精度で近似できる。
【0035】
請求項9に係る発明では、妥当性判断ステップで、サンプル測定値、推定値、および差分値からなるデータ群のうち一種以上を、値の大きさに応じ色分けまたは記号分けして表示する。これにより、作業者が近似の相関性を判断する場合であっても、視覚的に容易に判定でき、煩雑で微妙な判定の手間が軽減される。
請求項10に係る発明では、測定点および理論点を頂点とする多数の三角形領域の組合せによって基板を分割し、作業点が含まれる三角形領域を平面で近似して作業点の高さの補正値を算出する。換言すれば、基板全体の変形を滑らかな断面曲線で近似しつつ、局所的には基板を平面と見なして、所望する作業点の高さ補正を行う。これにより、いたずらに演算処理を複雑化させることなく高さ補正精度を向上できる。かつ、高さ補正の所要時間の増加を抑制して、基板生産のスループットの低下を抑制できる。
請求項11に係る発明では、一直線上に並んだ3つの測定点に基づいて基板の断面形状を円弧で近似するので、発生頻度が比較的高い球面状の上反りや下反りの変形に対して、従来の2次関数で近似する技術よりも高さ補正精度が良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】第1〜第5実施形態の基板用作業機器の基板高さ補正方法を行う部品実装機の構成を説明する斜視図である。
図2】(1)はレーザー高さセンサの構成および高さ検出方式を模式的に説明する図であり、(2)は基板上の複数の測定点における測定例を模式的に例示説明する図である。
図3】第1実施形態の基板用作業機器の基板高さ補正方法を説明するフローチャートの図である。
図4】第1実施形態における測定点の配置の具体例を説明する基板の平面図である。
図5】第1実施形態の理論点高さ算出ステップで行う演算処理を例示説明する図である。
図6】第1実施形態で理論点高さ算出ステップが終了した時点における測定点および理論点の配置の具体例を説明する基板の平面図である。
図7】第1実施形態で理論点設定繰返しステップが終了した時点における測定点および理論点の配置の具体例を説明する基板の平面図である。
図8】第1実施形態の作業点高さ補正ステップで行う演算処理を具体例で説明する図である。
図9】従来技術の高さ補正方法を例示説明する基板の平面図である。
図10】第2実施形態の基板用作業機器の基板高さ補正方法を説明するフローチャートの図である。
図11】第2実施形態の代用点高さ測定ステップで行う演算処理内容を例示説明する図である。
図12】第2実施形態の代用点高さ測定ステップの応用形態を説明する図である。
図13】第3実施形態における測定点の配置の具体例を説明する基板の平面図である。
図14】第3実施形態の理論点高さ算出ステップで行う演算処理内容を例示説明する図である。
図15】第4実施形態における測定点決定ステップの詳細を説明するフローチャートの図である。
図16】第4実施形態で、サンプル測定ステップの測定結果を図式的に表示したサンプル基板の平面図である。
図17】第4実施形態で、多数のサンプル測定点を基準点と比較点とに分けた状態を図式的に表示したサンプル基板の平面図である。
図18】第4実施形態で、比較点における差分値を図式的に表示したサンプル基板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
まず、本発明の第1〜第5実施形態の基板用作業機器の基板高さ補正方法を行う部品実装機1について、図1および図2を参考にして説明する。図1は、第1〜第5実施形態の基板用作業機器の基板高さ補正方法を行う部品実装機1の構成を説明する斜視図である。部品実装機1は、基板用作業機器に相当し、基板搬送装置2、部品供給装置3、部品移載装置4、および部品カメラ5が機台9に組み付けられて構成されている。部品移載装置4の実装ヘッド44には、本発明で用いる高さ測定装置に相当するレーザー高さセンサ6が設けられている。各装置2〜6は、図略の制御コンピュータから制御され、それぞれが所定の作業を行うようになっている。
【0038】
基板搬送装置2は、第1および第2ガイドレール21、22、一対のコンベアベルト、およびクランプ装置などにより構成されている。第1および第2ガイドレール21、22は、機台9の上部中央を横断して搬送方向(X軸方向)に延在し、かつ互いに平行するように機台9に組み付けられている。第1および第2ガイドレール21、22の直下に、互いに平行に配置された一対のコンベアベルトが並設されている。コンベアベルトは、コンベア搬送面に基板Kを戴置した状態で搬送方向(X方向)に輪転して、基板Kを機台9の中央部に設定された部品実装位置に搬入および搬出する。
【0039】
また、機台9の中央部のコンベアベルトの下方の図には見えない位置に、本発明で用いる基板保持装置に相当するクランプ装置が設けられている。クランプ装置は、基板Kを押し上げて水平姿勢でクランプし、部品実装位置に位置決めする。このとき、基板Kの第1および第2ガイドレール21、22に近い2つの辺縁は、基準高さH0に保持される特定箇所になっている。基板Kに反りやうねりなどの変形が発生していないときには、基板Kの全体が基準高さH0に保持され、基板Kに変形が発生していると、基板Kの高さは位置に依存して基準高さH0から上下に変化する。
【0040】
部品供給装置3はフィーダ方式の装置であり、部品実装機1の長手方向の前部(図1の左前側)に設けられている。部品供給装置3は、着脱可能な多数のカセット式フィーダ31がセットされて構成されている。カセット式フィーダ31は、本体32と、本体32の後部に設けられた供給リール33と、本体32の先端に設けられた部品取出部34とを備えている。供給リール33には多数の部品が所定ピッチで封入された細長いテープ(図示省略)が巻回保持され、このテープがスプロケット(図示省略)により所定ピッチで引き出され、部品が封入状態を解除されて部品取出部34に順次送り込まれるようになっている。
【0041】
部品移載装置4は、X軸方向およびY軸方向に移動可能なXYロボットタイプの装置である。部品移載装置4は、一対のY軸レール41、42、移動台43、実装ヘッド44、ノズルホルダ45、吸着ノズル47、基板カメラ46などにより構成されている。一対のY軸レール41、42は、機台9の長手方向の後部(図1の右奥側)から前部の部品供給装置3の上方にかけて配設されている。Y軸レール41、42上に、移動台43がY軸方向に移動可能に支持されている。移動台43には、実装ヘッド44がX軸方向に移動可能に設けられている。実装ヘッド44の前面にはノズルホルダ45が下向きに突設され、さらに、ノズルホルダ45には負圧を利用して部品を吸着採取および実装する吸着ノズル47が設けられている。また、実装ヘッド44の底面には、基板Kを撮像する基板カメラ46が下向きに設けられている。
【0042】
部品移載装置4の実装ヘッド44は、2つのサーボモータにより水平2方向(XY方向)に駆動される。2つのサーボモータ、Y軸レール41、42、および移動台43などによりヘッド駆動機構が構成されている。さらに、吸着ノズル47は別のサーボモータにより上下方向に駆動される。これにより、吸着ノズル47は、部品供給装置3のカセット式フィーダ31から部品を吸着採取し、位置決めされた基板Kに上方から接近し、基板K上の実装ポイントに部品を実装する。実装ポイントは、作業高さの補正を行う本発明の作業点に相当しており、その位置はヘッド駆動機構上の平面座標系の座標値によって表され位置制御される。基板カメラ46は、位置決めされた基板Kのフィデューシャルマークを読み取り、基板Kの部品実装位置に対する位置誤差を検出する。これにより、基板K上の座標値が較正され、位置制御が正確に行われる。
【0043】
部品カメラ5は、基板搬送装置2と部品供給装置3との間の機台9の上面に、上向きに設けられている。部品カメラ5は、吸着ノズル47が部品供給装置3から基板K上に移動する途中で吸着採取されている部品の状態を撮像して検出するものである。部品カメラ5が部品の吸着位置や回転角のずれ、リードの曲がりなどを検出すると、必要に応じて部品実装動作が微調整され、実装が困難な部品は廃棄される。
【0044】
部品実装機1は、図略の制御コンピュータを備えている。制御コンピュータは、生産する基板の基板種と実装される部品種との対応関係を始めとする諸情報、基板カメラ46や部品カメラ5の撮像データ、および図略のセンサの検出情報などに基づいて、部品実装動作を制御する。また、制御コンピュータは、第1〜第3実施形態の基板高さ補正方法の実行を制御する。
【0045】
次に、レーザー高さセンサ6について説明する。レーザー高さセンサ6は、図1に示されるように、実装ヘッド44の底面に基板カメラ46と並んで下向きに取り付けられている。したがって、レーザー高さセンサ6は実装ヘッド44により移動される。図2の(1)はレーザー高さセンサ6の構成および高さ検出方式を模式的に説明する図であり、(2)は基板K上の複数の測定点における測定例を模式的に例示説明する図である。
【0046】
図2の(1)に示されるように、レーザー高さセンサ6は、隣接配置されたレーザー光照射部61および反射光検出部62を有している。レーザー光照射部61は、下方に配置された基板Kに向かって、レーザー光L1を下向きに照射する。レーザー光L1は基板Kの上面で反射され、斜めに反射した反射レーザー光L2が反射光検出部62に入射する。反射光検出部62は、反射レーザー光L2の検出位置の違いから、基板Kの高さHを検出する。図2の(1)では、基板Kが基準高さH0にあるときの反射レーザー光L2と、基板Kaが基準高さH0よりも上方の高さHaにあるときの反射レーザー光L3とが例示されている。
【0047】
また、図2の(2)に例示されるように、レーザー高さセンサ6は基板Kの複数の測定点で高さ測定を行う。図には、基板KのY軸方向の3箇所の測定点y1〜y3が例示されている。この場合、基板Kが変形していないと、3つの測定点y1〜y3で同じ基準高さH0が測定される。また、図中に破線で例示されるように、上反りに変形した基板Kbでは、各測定点y1〜y3でそれぞれ異なった高さH1〜H3が測定される。なお、測定点y1〜y3は例であって、所望する任意の点数の任意の測定点を座標値を用いて設定することができる。ただし、安定した高さ測定を行うために、レーザー光L1をよく反射する回路パターン上で、かつ一定以上の広さを有する位置に測定点を設定することが好ましい。
【0048】
次に、第1実施形態の基板高さ補正方法について、図3図8を参考にして説明する。図3は、第1実施形態の基板用作業機器の基板高さ補正方法を説明するフローチャートの図である。第1実施形態の基板高さ補正方法は、測定点決定ステップS1、測定点高さ測定ステップS2、理論点高さ算出ステップS3、理論点設定繰返しステップS4、および作業点高さ補正ステップS5を有している。
【0049】
測定点決定ステップS1では、次の測定点高さ測定ステップS2における基板上の複数の測定点を予め決定しておく。測定点決定ステップS1は、後の第4および第5実施形態で説明する詳細なステップを踏むこともできるが、経験則に基づいて決定することができる。つまり、基板Kの大きさ、形状、厚さ、材質などの条件を考慮すれば、基板Kがどのように変形し、どの程度変形するかを概略予想できる。したがって、予想される変形を十分近似できる程度に、測定点の点数および位置を予め決定しておく。
【0050】
本第1実施形態では、図4に示される9点の測定点P1〜P9を基板K1上に設定する。図4は、第1実施形態における測定点P1〜P9の配置の具体例を説明する基板K1の平面図である。図示されるように、9点の測定点P1〜P9は、矩形形状の基板K1上に格子状に設定されている。測定点P5は基板K1の中央位置に設定され、それ以外の測定点P1〜P4、P6〜P9は、基板K1の辺縁から少し内側に入り込んだ位置に設定されている。各測定点P1〜P9は、基板K1の回路パターン上に設定され、レーザー高さセンサ6により安定した高さ測定が行われるようになっている。
【0051】
測定点高さ測定ステップS2では、クランプ装置により基板K1を水平姿勢に保持し、レーザー高さセンサ6により基板K1上の9点の測定点P1〜P9の高さの測定値を測定する。レーザー高さセンサ6は、2つのサーボモータにより駆動され、順次各測定点P1〜P9の上方に移動して、それぞれで高さの測定値を得る。なお、測定順序に制約は無いので、レーザー高さセンサ6の移動時間の総和が最短となる測定順序を選択することが好ましい。
【0052】
理論点高さ算出ステップS3では、一直線上に並んだ3つ以上の測定点に基づいて、基板の一直線方向の断面形状を滑らかな曲線で近似し、3つ以上の測定点の間に理論点を設定して、理論点の高さの理論値を前記滑らかな曲線を用いて算出する。図4の具体例では、基板K1の長辺に平行でそれぞれ3つの測定点を通る3本の直線、および基板K1の短辺に平行でそれぞれ3つの測定点を通る3本の直線について、合計で6回の演算処理を行う。
【0053】
図5は、第1実施形態の理論点高さ算出ステップS3で行う演算処理を例示説明する図である。図5中で、大きな矢印は測定点を示し、小さな矢印は理論点を示している。また、図5では、基板K1の長辺に平行で中央の3点の測定点P4、P5、P6を通る直線L1(図4示)に着目したときを例示している。理論点高さ算出ステップS3で、まず、一直線上に並んだ3つの測定点に基づいて、基板の断面形状を円弧で近似する。つまり、測定点P4、P5、P6の高さの測定値h4、h5、h6から、基板K1の断面形状を円弧C1で近似する。ここで、基準高さH0をゼロとして測定値h4、h5、h6を正負の符号を付して表すと、測定値h4、h5、h6は3つとも正値で、かつ、h4<h6<h5となっている。したがって、基板K1には上反りの変形が発生しており、円弧C1の中心は基板K1の下方に求められる。
【0054】
また、別の基板で下反りの変形が発生して、近似する円弧の中心が基板の上方に求められることも生じ得る。さらには、近似する円弧の半径が限りなく大きくなって、基板の断面形状が直線で近似されることも生じ得る。
【0055】
次に、測定点の間に理論点を設定する。具体例では、測定点P4と測定点P5との中間点に理論点Q45を設定し、測定点P5と測定点P6との中間点に理論点Q56を設定する。3番目に、理論点の高さの理論値を滑らかな曲線を用いて算出する。具体例では、理論点Q45および理論点Q56が円弧C1上に存在するものとして、それぞれの高さの理論値h45、h56を算出する。
【0056】
同様に、他の5本の直線についても同じ演算処理を実施する。この結果、図6に示される12点の理論点Q12、Q23、Q45、Q56、Q78、Q89、Q14、Q47、Q25、Q58、Q36、Q69が設定される。さらに、それぞれの高さの理論値が算出される。図6は、第1実施形態で理論点高さ算出ステップS3が終了した時点における測定点P1〜P9および理論点Q12、Q23、……の配置の具体例を説明する基板K1の平面図である。
【0057】
理論点設定繰返しステップS4では、一直線上に並んだ3つ以上の測定点と理論点との組合せまたは一直線上に並んだ3つ以上の理論点に基づいて、基板の一直線方向の断面形状を滑らかな曲線で近似し、測定点と理論点との間または理論点同士の間に新たな理論点を設定して、新たな理論点の高さの理論値を滑らかな曲線を用いて算出し、所望する数量の理論点および理論値が得られるまで新たな理論点の設定および理論値の算出を繰り返す。本第1実施形態では、基板K1の短辺に平行で3つの理論点を通る2本の直線について、合計で2回の演算処理を行う。
【0058】
具体例では、3点の理論点Q12、Q45、Q78を通る直線L2(図6示)に着目して、まず、各理論点Q12、Q45、Q78の高さの理論値から、基板K1の断面形状を円弧で近似する。次に、理論点Q12と理論点Q45との中間点に理論点Q15を設定し、理論点Q45と理論点Q78との中間点に理論点Q48を設定する。3番目に、理論点Q15および理論点Q48が近似した円弧上に存在するものとして、それぞれの高さの理論値を算出する。この演算処理の方法は、図5を用いて説明した測定点P4、P5、P6に基づく理論点高さ算出ステップS3の演算処理と同様である。
【0059】
3点の理論点Q23、Q56、Q89を通る直線L3(図6示)についても同じ演算処理を行い、理論点Q26および理論点Q59を設定し、それぞれの高さの理論値を算出する。ここまでの演算処理により、9点の測定点P1〜P9の測定値に基づいて、16点の理論点Q12、Q23、……の高さの理論値を算出できる。これにより、図7に示されるように、基板K1上の5×5の各格子点で高さが測定されあるいは算出されて既知になる。図7は、第1実施形態で理論点設定繰返しステップS4が終了した時点における測定点P1〜P9および理論点Q12、Q23、……の配置の具体例を説明する基板K1の平面図である。
【0060】
なお、理論点Q15の設定およびその高さの理論値の算出は、基板K1の対角線方向で3点の測定点P1、P5、P9を通る直線、あるいは基板K1の長辺に平行で3点の理論点Q14、Q25、Q36を通る直線に着目して行うこともできる。しかしながら、理論点Q12、Q45、Q78の相互間距離が最も短い基板K1の短辺に平行な直線L2に着目するほうが、近似の誤差を低減できて好ましい。
【0061】
作業点高さ補正ステップS5では、測定点の測定値および理論点の理論値を用いて、基板上の所望する作業点の高さの補正値を算出する。本第1実施形態では、まず、測定点および理論点を頂点とする多数の三角形領域の組合せによって基板を分割し、かつ各三角形領域では基板が平面であると近似する。次に、作業点が含まれる三角形領域を用いて作業点の高さの補正値を算出する。
【0062】
図8は、第1実施形態の作業点高さ補正ステップS5で行う演算処理を具体例で説明する図である。図8に示されるように、まず、9点の測定点P1〜P9および16点の理論点Q12、Q23、……を頂点とする32個の同形同大の三角形領域の組合せによって基板K1を分割する。ここで、各三角形領域では基板K1が平面であると近似するので、それぞれの平面を表す関数は、3頂点の座標値および高さから求められる。次に、作業点に相当する実装ポイントの座標値から、実装ポイントが含まれる三角形領域を特定する。最後に、実装ポイントが近似された平面上に存在するものとして、高さの補正値を算出することができる。
【0063】
例えば、図8の実装ポイントW1は、測定点P4、理論点Q14、および理論点Q45を頂点とする三角形領域Δ1(便宜的にハッチング示)に含まれている。したがって、実装ポイントW1が三角形領域Δ1を近似した平面上に存在するものとして、高さの補正値Hw1を算出することができる。また例えば、図8の実装ポイントW2は、3点の理論点Q58、Q59、Q89を頂点とする三角形領域Δ2(便宜的にハッチング示)に含まれている。したがって、実装ポイントW2が三角形領域Δ2を近似した平面上に存在するものとして、高さの補正値Hw2を算出することができる。
【0064】
基板K1に実装する全ての部品の実装ポイントの高さの補正値を算出すると、作業点高さ補正ステップS5を終了する。この後、算出した高さの補正値を用いて、基板K1上の各実装ポイントに部品を実装する作業を行う。
【0065】
次に、第1実施形態の基板用作業機器の基板高さ補正方法の効果について、従来技術と比較して説明する。図9は、従来技術の高さ補正方法を例示説明する基板K9の平面図である。従来技術では、例えば9点の測定点P1〜P9でそれぞれ基板K9の高さを測定し、測定点P1〜P9を頂点とする三角形領域を平面で近似して作業点の高さを補正していた。図9の具体例で、基板K9は8個の三角形領域に分割されていた。
【0066】
これに対して、第1実施形態の基板用作業機器の基板高さ補正方法では、一直線上に並んだ3点の測定点P4、P5、P6の中間点に理論点Q45、Q56を設定し、測定点P4、P5、P6に理論点Q45、Q56を加えて三角形領域を設定していた。図8の例では、9点の測定点P1〜P9に対して16点の理論点Q45、Q56を設定し、最終的に32個の三角形領域を設定していた。したがって、従来技術と比較すると、三角形領域の分割数が4倍になっており、三角形領域を平面で近似したときの誤差が小さくなって、高さ補正精度を向上できる。
【0067】
また、レーザー高さセンサ6を移動させて行う測定点の点数は第1実施形態と従来技術とで9点と変わらず、理論点の高さの理論値は実測定よりも短時間で行える演算処理により算出するようにした。このため、高さ補正の所要時間は従来技術から大幅には増加しない。したがって、基板生産のスループットの低下を抑制できる。
【0068】
さらに、理論点高さ算出ステップS3および理論点設定繰返しステップS4では基板K1の変形を円弧C1で近似し、作業点高さ補正ステップS5では、三角形領域を平面で近似して作業点W1、W2の高さの補正値Hw1、Hw2を算出している。換言すれば、基板K1の全体の変形状態を滑らかな断面曲線で近似しつつ、局所的には基板K1を平面と見なして、所望する作業点の高さ補正を行う。これにより、いたずらに演算処理を複雑化させることなく高さ補正精度を向上できる。かつ、高さ補正の所要時間の増加を抑制して、基板生産のスループットの低下を抑制できる。
【0069】
また、基板K1の断面形状を円弧C1で近似するので、発生頻度が比較的高い球面状の上反りや下反りに対して、従来の2次関数で近似する技術よりも高さ補正精度が良好になる。
【0070】
なお、基板K1の矩形形状の長辺の辺縁は、クランプ装置により基準高さH0に保持されている。したがって、測定点決定ステップS1で、長辺の辺縁から少し内側に入り込んだ6点の測定点P1〜P3、P7〜P9を辺縁に近い近傍点に変更設定すれば、測定点高さ測定ステップS2でレーザー高さセンサ6による測定を省略できる。この場合、6点の近傍点の高さの測定値は、保持された基準高さH0とする。
【0071】
この態様では、レーザー高さセンサ6を用いて測定を行う測定点の点数を9点から中央の3測定点P4、P5、P6のみに削減でき、高さ補正の所要時間の増加を一層抑制して、基板生産のスループットの低下を一層抑制できる。
【0072】
また、理論点設定繰返しステップS4で、さらに多数回の演算処理を行って理論点の数量を増加させることができる。例えば、第1実施形態では、基板K1上の5×5の各格子点で高さを既知としたが、9×9の各格子点で高さが既知となるまで理論点の数量を増加させることができる。すると、作業点高さ補正ステップS5で用いる三角形領域の数量が一層増加し、個々の三角形領域の面積が一層小さくなるので、平面近似によって生じる誤差が削減される。
【0073】
この態様では、理論点設定繰返しステップS4で所望する数量の理論点および理論値を得るので、高さ補正精度を顕著に向上できる。また、新たな理論点の設定およびその高さの理論値の算出は全て演算処理によって行い、レーザー高さセンサ6を用いた実測定を追加する必要はないので、高さ補正の所要時間は大幅には増加せず、基板生産のスループットの低下を抑制できる。
【0074】
次に、第2実施形態の基板用作業機器の基板高さ補正方法について、図10図12を参考にして、第1実施形態と異なる点を主に説明する。図10は、第2実施形態の基板用作業機器の基板高さ補正方法を説明するフローチャートの図である。図10のフローチャートを図3の第1実施形態のそれと比較すれば分かるように、第2実施形態では、理論点高さ算出ステップS3Aの前に代用点高さ測定ステップS6が追加されている。第2実施形態では、例えば、図4に例示される格子状の9点の測定点の設定を想定しても、実際には所望する位置に回路パターンが無く想定通りに測定点を設定できない場合の対応策として、代用点高さ測定ステップS6をさらに有している。
【0075】
代用点高さ測定ステップS6では、一直線に並んだ3つ目の測定点を設定できない場合に、代用点および3つの補助測定点を設定し、代用点の高さの代用測定値を求める。図11は、第2実施形態の代用点高さ測定ステップS6で行う演算処理内容を例示説明する図である。図11の具体例で、2つの測定点PA、PBを通る直線L4に着目したとき、並んだ3つ目の測定点が無い場合、まず、代用点PCを直線L4上に設定し、代用点PCの近傍の周りに3つの補助測定点Pa1、Pa2、Pa3を設定する。このとき、3つの補助測定点Pa1、Pa2、Pa3は、回路パターン上で高さ測定を行え、かつ代用点PCに近い位置に設定する。さらに、3つの補助測定点Pa1、Pa2、Pa3を頂点とする三角形の内部に代用点PCが含まれることが好ましい。
【0076】
次に、3つの補助測定点Pa1、Pa2、Pa3に対して、代用点PCからの距離が小さいほど大きな重み値を付与する。重み値は、例えば、距離の逆数の平方根に比例した値とすることができ、これに限定されない。一般的に、代用点PCに近い補助測定点ほど代用点PCの高さに接近する場合が多く、大きな重み値を付与することが妥当になる。3番目に、レーザー高さセンサ6により3つの補助測定点Ap1、Ap2、Ap3の高さの補助測定値を測定する。4番目に、各補助測定値に前述した重み値を乗算した後に加算して加重平均値を算出し、これを代用点PCの高さの代用測定値とする。
【0077】
次の理論点高さ算出ステップS3Aでは、代用点PCおよび代用測定値を、測定点PA、PBに並ぶ3つ目の測定点および測定値として扱う。以降の理論点繰返しステップS4および作業点高さ補正ステップS5の演算処理内容は、第1実施形態と同様である。なお、図11で、直線L4上の測定点PA、PBから遠く離れた遠方位置に別の測定点PXが仮に存在しても、断面形状を近似したときの誤差が増大するおそれがある。したがって、遠方位置の測定点PXを一直線上に並ぶ3つ目の測定点には採用しない。
【0078】
図12は、第2実施形態の代用点高さ測定ステップS6の応用形態を説明する図である。図12で、2つの測定点PD、PEを通る直線L5に着目したとき、並んだ3つ目の測定点が無い場合、まず、代用点PFを直線L5上に設定し、代用点PFの近傍の周りに2つの補助測定点Pa4、Pa5を設定する。そして、2つ目の測定点PEを3番目の補助測定点に兼用する。このとき、代用点PFの高さの代用測定値は、2つの補助測定点Pa4、Pa5の補助測定値および測定点PEの測定値の加重平均値により算出できる。
【0079】
第2実施形態の基板用作業機器の基板高さ補正方法およびその応用形態では、基板の構造上の制約、例えば高さ測定を行える回路パターンの配置の制約により一直線上に3つ目の測定点を設定できない場合であっても、高さ補正精度を向上できる。
【0080】
次に、第3実施形態の基板用作業機器の基板高さ補正方法について、図13および図14を参考にして、第1および第2実施形態と異なる点を主に説明する。第3実施形態は、一直線上に4点以上の測定点を設定して、基板の断面形状を2通り以上の滑らかな曲線で近似できるときの方法である。図13は、第3実施形態における測定点P11〜P22の配置の具体例を説明する基板K2の平面図である。また、図14は、第3実施形態の理論点高さ算出ステップで行う演算処理内容を例示説明する図である。図14中で、大きな矢印は測定点を示し、小さな矢印は理論点を示している。
【0081】
図13に示されるように、12点の測定点P11〜P22は、矩形形状の基板K2上に3×4の格子状に設定されている。ここで、基板K2の長辺に平行な中央の直線L6上には、4点の測定点P15〜P18が並び、それぞれ高さの測定値が求められている。したがって、理論点高さ算出ステップS3で、図14中の左寄りの3測定点P15、P16、P17と、右寄りの3測定点P16、P17、P18とでそれぞれ、基板K3の断面形状を円弧C2、C3で近似できる。
【0082】
図14で、3測定点P15、P16、P17に基づいて、上反りを示す円弧C2が求められている。一方、3測定点P16、P17、P18に基づいて、下反りを示す円弧C3が求められている。測定点P15と測定点P16との中間点に設定された理論点QLについては、第1実施形態と同様に理論点QLが円弧C2上に存在するものとして高さの理論値を算出する。また、測定点P17と測定点P18との中間点に設定された理論点QNについても、円弧C3上に存在するものとして高さの理論値を算出する。
【0083】
しかしながら、測定点P16と測定点P17との間については、基板K2の断面形状が2通りの円弧C2、C3で近似されており、かつ、2通りの円弧C2、C3が互いに一致していない。このとき、第3実施形態の理論点高さ算出ステップでは、測定点P16と測定点P17との間について2通りの円弧C2、C3の間を通る平均的な曲線C4を求める。そして、測定点P16と測定点P17との中間点に設定された理論点QMについて、平均的な曲線C4上に存在するものとして高さの理論値を算出する。
【0084】
平均的な曲線C4は、上反りと下反りで不一致となった場合には、簡易な直線で近似してもよい。つまり、上述の例では、測定点P16と測定点P17との間を直線で近似してもよい。また、平均的な曲線C4は、2通りの円弧C2、C3の中間高さを通る曲線とすることもでき、その他の近似方法を用いてもよい。このように、上反りと下反りとが接合した境界領域であっても、理論点QMを設定して高さの理論値を算出できる。
【0085】
また、特定の2つの測定点の間が2通りの上反りの円弧で近似され、あるいは2通りの下反りの円弧で近似され、かつ円弧の半径が互いに一致していない場合には、第3実施形態の理論点高さ算出ステップを応用できる。この場合、例えば、2通りの円弧の半径の平均半径を求めて平均的な曲線を得ることができる。
【0086】
第3実施形態の基板用作業機器の基板高さ補正方法およびその応用では、特定の一直線上に4つ以上の測定点を設定して、単純な上反りや下反りよりも複雑な変形、例えば凹凸が接合するうねり状の変形などを精度よく近似できる。さらには、変形の様相が変化する領域、例えば上述した測定点P16と測定点P17の間のように凸変形領域から凹変形領域へと変化する途中の境界領域についても精度よく近似できる。
【0087】
次に、第4実施形態の基板用作業機器の基板高さ補正方法について、図15図18を参考にして説明する。第4実施形態では、基板のロット生産を開始する以前に、測定点決定ステップS1で詳細なステップを踏んで測定点を決定する。基板をロット単位で量産するとき、同一ロット中の多数の基板は類似した変形状態を呈するのが一般的である。したがって、予め同一ロット中からサンプル基板を選出して変形状態の傾向を確認しておけば、測定点の点数および位置を適正化でき、かつ測定点数を絞り込んでも高さ補正精度を確保できると考えられる。第4実施形態の測定点決定ステップS1は、この考え方に基づいている。
【0088】
図15は、第4実施形態における測定点決定ステップS1の詳細を説明するフローチャートの図である。第4実施形態において、測定点決定ステップS1は、サンプル測定ステップS11、比較点算出ステップ、および妥当性判断ステップを含んでいる。図15のフローチャートで、ステップS12およびステップS13は比較点算出ステップに相当し、ステップS14〜ステップS18は妥当性判断ステップに相当している。
【0089】
サンプル測定ステップS11では、同一ロット中の多数の基板からサンプル基板を選出し、サンプル基板上の多数のサンプル測定点の高さであるサンプル測定値を測定する。このステップS11は、実測によりサンプル基板の変形状態を高精度で確認し、同一ロット中の基板の変形の傾向を把握することを目的としている。したがって、サンプル測定点の点数は、サンプル基板の変形状態を確実に確認できるだけの多数とすることが好ましい。サンプル測定点の位置は、特に限定されないが、以降の演算処理を簡略化するために格子状の配置とすることが好ましい。なお、測定自体は、部品実装機1のレーザー高さセンサ6を用いて実施することができ、部品実装機1の外部で別の高さ測定装置を用いて実施してもよい。
【0090】
図16は、第4実施形態で、サンプル測定ステップS11の測定結果を図式的に表示したサンプル基板KSの平面図である。図示される測定例では、矩形のサンプル基板KS上に5×5の格子状の25点のサンプル測定点が設定されている。各サンプル測定点のサンプル測定値は、値の大きさに応じ、記号分けして表示されている。具体的に、サンプル測定値の小さな値が白丸で表示され、サンプル測定値の中程度の値が二重丸で表示され、サンプル測定値の大きな値が黒丸で表示されている。つまり、白丸のサンプル測定点に対して二重丸のサンプル測定点は高く、黒丸のサンプル測定点はさらに高いことが表示されている。図16の測定例では、サンプル基板KSの短辺に平行する直線L7において、サンプル基板KSの断面形状が上反りであることが分かる。なお、部品実装機1に設けられたカラー方式の表示装置によりサンプル測定値を色分けして表示することもでき、あるいは、サンプル測定値の数値自体を一覧表示してもよい。
【0091】
次のステップS12では、多数のサンプル測定点を基準点と比較点とに分けて、基準点を初期設定する。基準点は、仮決めであって固定されておらず、以降の演算処理で逐次変更されるものである。基準点の初期設定方法に特別な制約は無く、例えば、多数のサンプル測定点を一つ置きに選択する。
【0092】
図17は、第4実施形態で、多数のサンプル測定点を基準点と比較点とに分けた状態を図式的に表示したサンプル基板KSの平面図である。図示される具体例では、基準点は、25点のサンプル測定点の一つ置きに9点が選択され、当初の記号がそのまま表示されている。また、残りの16点は比較点とされ、白丸、二重丸、および黒丸はそれぞれ、白三角形、二重三角形、および黒三角形に変更表示されている。
【0093】
次のステップS13では、基準点のサンプル測定値を用いて比較点の高さの推定値を算出する。つまり、比較点の高さが未知であると仮定し、基準点のサンプル測定値のみを用いて比較点の高さを推定する。このとき、基板量産時に作業点の高さを推定して補正する方法と同じ演算処理方法を用いることが好ましい。第4実施形態では、基準点およびそのサンプル測定値を測定点および測定値とみなし、比較点およびその推定値を装着ポイントおよび補正値とみなして、第1実施形態の理論点高さ算出ステップS3、理論点設定繰返しステップS4、および作業点高さ補正ステップS5を行う。
【0094】
次のステップS14では、比較点におけるサンプル測定値とステップS13で推定した推定値との相関性を把握する。具体的には、比較点におけるサンプル測定値から推定値を減算して差分値を求める。図18は、第4実施形態で、比較点における差分値を図式的に表示したサンプル基板KSの平面図である。図示される具体例では、基準点は白丸で表示され、比較点は四角形で表示されている。さらに、比較点を表示する四角形は、差分値の大小に対応して記号分けされている。なお、比較点の差分値は、色分けして表示することもでき、あるいは数値自体を一覧表示してもよい。
【0095】
次のステップS15では、把握した相関性の妥当性を評価する。具体的には、差分値を所定の許容値と大小比較して判定する。所定の許容値は、基板の高さ誤差が部品実装の作業品質に影響を及ぼさない範囲を考慮し、マージンを見込んで設定する。一般的に、許容される基板の高さ誤差の限界は2mm程度ある。しかしながら、同一ロット中の多数の基板が類似した変形の傾向を示しても変形の絶対値は変化し、また、作業点の高さ補正で測定誤差や近似誤差が生じる。このため、所定の許容値は、2mmよりもかなり小さく設定することが好ましい。
【0096】
ステップS15で、差分値が所定の許容値を超過したときに相関性が不足であると判断し、ステップS16に進む。ステップS16では、基準点を変更しまたは増加させてステップS13に戻る。
【0097】
図18に示される具体例で、白の四角形は差分値が許容値以内である妥当点を表示し、二重の四角形は差分値が許容値をわずかに超過した非妥当点を表示し、黒の四角形は差分値が許容値を大幅に超過した非妥当点を表示している。したがって、3点の非妥当点が存在することで相関性が不足であると判断され、ステップS16に進むことになる。そして、ステップS16で、非妥当点を無くすように基準点を変更または増加させて、ステップS13に戻る。
【0098】
また、ステップS15で、全ての差分値が許容値よりも大幅に下回ったときに相関性が過剰であると判断し、ステップS17に進む。ステップS17では、基準点を減少させてステップS13に戻る。そして、ステップS15で、全ての差分値が許容値を下回りかつ基準点を減らすことが難しいときに相関性が妥当であると判断し、ステップS18に進む。ステップS18では、相関性が妥当であると判断したときの基準点を測定点に決定して、測定点決定ステップS1を終了する。
【0099】
ステップS15で判定に迷うときは、基準点の設定を変更してステップS13〜ステップS15を繰り返して行い、近似の相関性が妥当であるか否かを確実に判断する。非妥当点を無くす確実な方法は、当該のサンプル測定点を比較点から基準点に設定変更することである。しかしながら、基準点を増加させることは、測定点数を絞り込むという目標に反するので、できるだけ少ない基準点の設定で相関性が妥当となるように、或る程度の試行錯誤を繰り返すことが好ましい。
【0100】
なお、所定の許容値を設定して差分値と比較する方法を採用することで、制御コンピュータによる自動演算処理を行えるが、これに限定されない。例えば、図16図18の表示に基づいて、作業者が相関性の妥当を判断してもよい。
【0101】
第4実施形態で、測定点決定ステップS1により測定点を決定した以降は、第1実施形態で説明した測定点高さ測定ステップS2から作業点高さ補正ステップS5までを実施する。これに限定されず、測定点決定ステップS1の次に、図9で説明した従来技術の高さ補正方法を実施することもできる。
【0102】
第4実施形態の基板用作業機器の基板高さ補正方法によれば、サンプル基板の変形状態を予め精度よく確認しておき、これを十分な精度で近似できるようにできるだけ少ない点数の測定点を決定する。したがって、同一ロット内で類似した変形の傾向を呈する多数の基板に対して、高さ測定点の点数を限定しつつ測定位置を適正化でき、基板の変形を十分な精度で近似できる。これにより、基板量産時の高さ測定点数を限定でき、基板生産のスループットが向上する。
【0103】
さらに、比較点のサンプル測定値から推定値を減算した差分値の大きさに基づいて、サンプル基板の変形の近似の相関性が妥当であるか否かを客観的に判断するので、量産時の高さ測定点の点数および測定位置を確実に適正化できる。また、相関性の妥当の判断を自動化することができるので、作業者の手間が軽減される。
【0104】
加えて、比較点算出ステップで限られた基準点のサンプル測定値に基づいてサンプル基板の変形の近似を行うときに、基板量産時と同じ演算処理方法で比較点の推定値を算出する。これにより、測定点の妥当性判定を行うサンプル基板と量産時の多数の基板とで変形状態の近似方法が整合し、量産時の高さ測定点の点数を限定しても、基板の変形を確実に十分な精度で近似できる。
【0105】
また、妥当性判断ステップ(ステップS14〜S19)で、サンプル測定値、推定値、および差分値からなるデータ群のうち一種以上を、値の大きさに応じ色分けまたは記号分けして表示する。これにより、作業者が近似の相関性を判断する場合であっても、視覚的に容易に判定でき、煩雑で微妙な判定の手間が軽減される。
【0106】
なお、サンプル測定ステップS11は、部品実装機1の外部で実施することもできる。さらに、測定点決定ステップS1中の詳細ステップS11〜S18を必ずしも部品実装機1の制御コンピュータで実行制御する必要は無く、別のコンピュータを用いてもよい。このとき、部品実装機1のレーザー高さセンサ6とは測定方式が異なる別の高さ測定装置を用いることもできる。また、基板生産ライン内の部品実装機1を用いずにオフラインで実施できるので、生産作業に影響を与えることがない。加えて、多数のサンプル測定点の測定に十分な時間をかけることで、サンプル基板の変形状態を極めて高精度に確認することができる。
【0107】
なお、各実施形態の作業点高さ補正ステップS5で、三角形領域を平面で近似する以外の補正方法を用いることもできる。この場合にも、理論点の高さの理論値を実測値と同様に扱うことで高さ補正精度を向上できる。また、高さ測定装置はレーザー高さセンサ6に限定されず、他の測定方式のセンサを用いてもよい。本発明は、その他にも様々な応用や変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の基板用作業機器の基板高さ補正方法は、部品実装機の部品実装作業に利用でき、部品実装機で基板に接着材を塗布する作業にも利用できる。さらに、本発明の基板用作業機器の基板高さ補正方法は、ディスペンサ装置やインクジェット装置を有する描画方式のはんだ印刷機で、基板にクリーム状はんだを滴下する作業や液状はんだを射出する作業に利用できる。
【符号の説明】
【0109】
1:部品実装機(基板用作業機器)
2:基板搬送装置 3:部品供給装置 4:部品移載装置
5:部品カメラ 6:レーザー高さセンサ(高さ測定装置)
9:機台
L1:レーザー光 L2、L3:反射レーザー光
K、Ka、Kb、K1、K2、K9:基板 KS:サンプル基板
H0:基準高さ Ha、H1、H2、H3:高さ
P1〜P9、P11〜P22、PA、PB、PD、PE、PX:測定点
PC、PF:代用点 Pa1〜Pa5:補助測定点
Q12〜Q89、QL、QM、QN:理論点
L1〜L7:直線 C1〜C3:円弧 C4:平均的な曲線
W1、W2:実装ポイント(作業点) Δ1、Δ2:三角形領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18