特許第6124906号(P6124906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロックウッド リチウム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特許6124906炭素含有硫化リチウムからなるシェルを有するリチウム金属生成物、その製造方法およびその使用
<>
  • 特許6124906-炭素含有硫化リチウムからなるシェルを有するリチウム金属生成物、その製造方法およびその使用 図000003
  • 特許6124906-炭素含有硫化リチウムからなるシェルを有するリチウム金属生成物、その製造方法およびその使用 図000004
  • 特許6124906-炭素含有硫化リチウムからなるシェルを有するリチウム金属生成物、その製造方法およびその使用 図000005
  • 特許6124906-炭素含有硫化リチウムからなるシェルを有するリチウム金属生成物、その製造方法およびその使用 図000006
  • 特許6124906-炭素含有硫化リチウムからなるシェルを有するリチウム金属生成物、その製造方法およびその使用 図000007
  • 特許6124906-炭素含有硫化リチウムからなるシェルを有するリチウム金属生成物、その製造方法およびその使用 図000008
  • 特許6124906-炭素含有硫化リチウムからなるシェルを有するリチウム金属生成物、その製造方法およびその使用 図000009
  • 特許6124906-炭素含有硫化リチウムからなるシェルを有するリチウム金属生成物、その製造方法およびその使用 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6124906
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】炭素含有硫化リチウムからなるシェルを有するリチウム金属生成物、その製造方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20170424BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20170424BHJP
   C01B 17/22 20060101ALN20170424BHJP
【FI】
   H01M4/38 Z
   H01M4/36 C
   !C01B17/22
【請求項の数】25
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-540475(P2014-540475)
(86)(22)【出願日】2012年11月9日
(65)【公表番号】特表2015-502002(P2015-502002A)
(43)【公表日】2015年1月19日
(86)【国際出願番号】EP2012072234
(87)【国際公開番号】WO2013068523
(87)【国際公開日】20130516
【審査請求日】2015年11月6日
(31)【優先権主張番号】102011086035.5
(32)【優先日】2011年11月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513159239
【氏名又は名称】ロックウッド リチウム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Rockwood Lithium GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ ヴィーテルマン
(72)【発明者】
【氏名】ウテ エメル
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ハートニヒ
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン ラング
【審査官】 小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03642436(US,A)
【文献】 米国特許第03615191(US,A)
【文献】 特表2010−535936(JP,A)
【文献】 T.G. PEARSON,JOURNAL THE CHEMICAL SOCIETY,1931年 1月 1日,P413-420
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13−4/62
C01B 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア/シェル形態を有する粒子状リチウム金属/硫化リチウム複合材であって、その際、シェルは炭素含有硫化リチウムからなり、且つ、コアは金属リチウムからなり、含有されるリチウムの最高50質量%が金属ではない形態で含有されている、前記複合材。
【請求項2】
含有されるリチウムの20質量%までが金属ではない形態で含有されていることを特徴とする、請求項1に記載の複合材。
【請求項3】
含有されるリチウムの5質量%までが金属ではない形態で含有されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の複合材。
【請求項4】
前記炭素含有硫化リチウムからなるシェルの炭素含有率が、0.1〜50質量%であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の複合材。
【請求項5】
前記炭素含有硫化リチウムからなるシェルの炭素含有率が1〜30質量%であることを特徴とする、請求項4に記載の複合材。
【請求項6】
使用されたリチウム金属の純度が、少なくとも98質量%であることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の複合材。
【請求項7】
リチウム含有率全体に対する複合材のナトリウムの含有率が、最高1000ppmであることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の複合材。
【請求項8】
リチウム含有率全体に対する複合材のナトリウムの含有率が、最高100ppmであることを特徴とする、請求項7に記載の複合材。
【請求項9】
個々の粒子が500μm以下の大きさであることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の複合材。
【請求項10】
平均粒径が、1〜500μmであることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の複合材。
【請求項11】
平均粒径が、10〜100μmであることを特徴とする、請求項10に記載の複合材。
【請求項12】
平均粒径が、15〜80μmであることを特徴とする、請求項10または11に記載の複合材。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の粒子状リチウム金属/硫化リチウム複合材の製造方法であって、溶融された液滴形態のリチウム金属を炭化水素溶剤中で、CS2、S8、H2S、COS、SO、SO2またはそれらの混合物の群から選択される硫黄源と反応させることを特徴とする、前記方法。
【請求項14】
硫黄源として、純粋な二硫化炭素、または二硫化炭素と硫黄および/または硫化水素との混合物を使用する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記反応を、温度180〜300℃の範囲で実施することを特徴とする、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記反応を、温度180℃〜250℃の範囲で実施することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記反応を、温度180℃〜220℃の範囲で実施することを特徴とする、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
炭化水素溶剤として、反応条件下で液体である飽炭化水素の群から選択される溶剤を使用することを特徴とする、請求項13から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
炭化水素溶剤として、少なくとも180℃の沸点を有する、飽和炭化水素の群から選択される溶剤を使用することを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
炭化水素溶剤として、少なくとも200℃の沸点を有する、飽和炭化水素の群から選択される溶剤を使用することを特徴とする、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
炭化水素溶剤として、200℃より高い沸点を有する、飽和炭化水素の群から選択される溶剤を使用することを特徴とする、請求項18から20までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
炭化水素溶剤として、デカン、ウンデカン、ドデカンまたは上記の化合物の任意の混合物からなる群から選択されるものを使用することを特徴とする、請求項13から18までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
炭化水素溶剤として、パラフィン沸騰留分を使用することを特徴とする、請求項13から22までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
リチウム電池の電極を製造するための、請求項1から12までのいずれか1項に記載の粒子状リチウム金属/硫化リチウム複合材の使用。
【請求項25】
リチウム硫黄電池のアノードを製造するための、請求項1から12までのいずれか1項に記載の粒子状リチウム金属/硫化リチウム複合材の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状のリチウム金属/硫化リチウム複合材、Li2S@C被覆されたリチウム金属生成物の製造方法およびその使用に関する。
【0002】
再充電可能な電気化学的貯蔵システムは、現在、日常生活の多くの領域でますます重要性を増してきている。自動車のスターター用バッテリーとして、および携帯型電子製品のためのエネルギー源としての、既に長らく存在する用途の他に、将来的には電気自動車の駆動用、および固定式エネルギー貯蔵装置用の用途が非常に増加することが予測される。新規の用途については、従来の鉛/硫酸蓄電池は考慮に入れられず、なぜなら、それらは容量があまりに少なすぎ、且つ充分に多いサイクル数が可能ではないからである。これに対して、リチウム電池には最高の可能性が認められる。
【0003】
しかしながら、従来技術によるリチウム蓄電池は同様に、多くの用途についてエネルギー貯蔵能力が少なすぎる。現在のリチウムイオン電池は、約100〜250Wh/kgの比エネルギー密度を有している。さらに、多くの場合、それらは高価な元素、例えばコバルトおよび/またはニッケルを含有する。リチウム/硫黄系およびリチウム/空気系は、はるかに高い(理論)エネルギー密度を有している:
【表1】
【0004】
Li/空気系の開発に際した技術的な挑戦は、市場に出せる系が最も早くても10〜20年後までは期待できないというほどに重大である(M. Jacoby, Chem. Eng. News Nov. 22 (2010) 29−31)。その可能性は、リチウム/硫黄系の場合に明らかに有利であると考えられる。しかしながら、この電池は、充電および放電の際に容量があまりに速く失われるという欠点を有している。その理由は、リチウム金属の有機材料、例えば一般的な電解液に対する反応性が高いことである。この電解液は、リチウム塩、例えばLiPF6、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI)またはリチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)の有機溶剤、炭酸エステル、エーテルまたはそれらの混合物中の溶液である。さらには、電池の充電プロセスの際、金属リチウムは通常、溶液から均一(平面的)には析出せず、表面が多く、小枝状の形態で、つまりデンドライト状で析出する。デンドライトの形成は主に安全性の問題をもたらし、なぜなら極端な場合にはセパレータが突き破られることがあり、それによって短絡が生じかねないからである。さらにまた、デンドライトの形成はガルバニ電池の容量の低下をみちびくことがあり、針状の形態はアノード本体から切り離される傾向がある。アノードから分離されたそのような金属質の断片は、もはやアノードとの電気的接触を有さず、従って、もはや電気化学的な充放電反応のための活物質として使用することはできない。
【0005】
さらには、アノードとして使用される金属リチウムは電解液に対して反応性が高く、従って可溶性の多硫化リチウムの分解によってアノード上にLi2S相が形成されることが知られている。この相の電子伝導性およびイオン伝導性が乏しいので、インピーダンス、つまり貫通抵抗が上昇し、そのことはセルの出力の低下と同じ意味を持つ。さらに、そのリチウムは腐食し、もはやレドックス工程に関与しない物質になる、即ち、電池の容量はそれに応じて減少する。容量の減少は、硝酸リチウムの存在下で低下させることができる(Z. Wen, J. Power Sources 196 (2011) 9839−43)。しかし、酸化剤としての硝酸リチウムは電解質の有機成分に対して反応性があり、そのことからやはり安全性の問題をみちびきかねないという点で不利である。
【0006】
さらに、リチウム/硫黄電池を放電状態で組み立てる、即ち、アノードとしてリチウムを含まない(またはリチウムの少ない)材料、例えば亜鉛/炭素複合材を使用し、且つカソードとして硫化リチウムを使用することが提案された(B.Scrosati, Angew. Chem. 2010, 122, 2421−4)。残念ながら、この電池構成も同様に、サイクル安定性がわずかしかないことが判明している。主な原因は、サイクルの際に可溶性の貧硫黄性(Oligoschwefel)化合物(例えばLi23およびLi24)が形成され得ることであると考えられる。それによって、カソードはレドックス活性材料を失う(Y. Li, J. Power Sources 195 (2010) 2945−9; D. Aurbach, J. Electrochem. Soc. 156(8), A694−A702 (2009))。
【0007】
本発明の課題は、大きな比表面積を有するリチウム金属に基づく表面安定化アノード材料であって、反応性が低く、且つ通常の装置内で安全に操作可能であり、その表面被覆はイオン伝導性且つ電子伝導性であり、その際、前記表面被覆は可能な限り(それぞれの電池化学に関しての)異元素を含有しない前記アノード材料、並びに前記生成物を単純且つ安価に製造するための方法を示すことである。
【0008】
前記課題は、金属のコアおよびリチウム金属/硫化リチウム複合材(Li2S@C複合材)からなるシェルからなる粒子状のコア/シェル材料によって解決される。さらには、高い比表面積を有し且つ不動態化されているが伝導性の外被を有するリチウム金属の生産を可能にする方法が示される。
【0009】
本発明の生成物は、好ましくは、液滴の形態の溶融リチウム金属と、CS2、S8、H2S、COS、SO、SO2の群から選択される硫黄源とを、炭化水素に基づく溶剤中且つ少なくとも180℃から最高300℃まで、好ましくは180℃〜250℃、特に好ましくは180℃〜220℃の温度で反応させることによって製造される。その際、リチウムと硫黄との間の化学量論組成比は、最高で50質量%、好ましくは20質量%、特に好ましくは5質量%のリチウム金属がリチウム塩に変換されるように選択される。本発明のとりわけ特に好ましい実施態様において、本発明による粒子状のリチウム金属/硫化リチウム複合材は、金属リチウムを少なくとも97質量%の含有率で有する。
【0010】
製造条件は、まず、平均粒径300μm、好ましくは100μm、特に好ましくは80μmを有する未被覆のリチウム液滴が生じるように選択される。これは、従来技術によって、高剪断力をもたらす撹拌機構、例えば分散ディスク(歯付ディスク撹拌機)または噴霧撹拌機、例えば分散撹拌機「Ultraturrax」を使用して行われる。所望の粒径を有するリチウム液滴の形成後、本発明による硫黄源と反応させ、そのことによって、不動態化されているが伝導性である表面層の形成が生じる。
【0011】
不動態化された伝導性の表面被覆の形成後、撹拌および均質化条件を、前記表面被覆が破壊されないように選択する。これは低摩耗性の撹拌工程によって達成される。
【0012】
高エネルギーの撹拌の代わりに、従来技術に応じた他の分散方法、例えば超音波噴霧も使用できる。
【0013】
溶剤は、好ましくは飽和炭化水素の群から選択される。意外なことに、飽和炭化水素を溶剤として使用した場合、純粋相の、非結晶性である(X線でアモルファスの)炭素被覆されたまたは炭素ドープされた、主に硫化リチウムからなる表面被覆(以下でLi2S@Cとして示す)が生じることが判明した。これに対し、芳香族または部分芳香族の溶剤を使用する場合は、多くの場合、炭化リチウムまたは水素化リチウムで汚染された表面層が生じる。好ましくは、選択された反応条件下で液体である、つまり少なくとも180℃、より良好には少なくとも200℃の沸点、および特に好ましくは220℃より高い沸点を有する溶剤が使用される。例はデカン、ウンデカン、ドデカンまたはこれらの上記の化合物の任意の混合物であり、直鎖、分枝鎖、または環式かどうかには関わらない。市販のパラフィン沸騰留分(Siedeschnitt)、例えばShellsol(登録商標) D70またはD100がとりわけ特に好ましい。
【0014】
使用されるリチウム金属は、好ましくは少なくとも98質量%の純度を有し、特に好ましくは電池品質で使用される。ナトリウム含有率は、好ましくは1000ppm未満、特に好ましくは100ppm未満である。
【0015】
硫黄源として、二硫化炭素並びに元素硫黄(S8)および/またはH2Sが特に好ましい。とりわけ特に好ましくは、二硫化炭素、または二硫化炭素と元素硫黄との混合物が使用され、その際、2つの硫黄源の間のモル比は1:10〜10:1の間で変化し、且つ、リチウムと硫黄全体(つまり2つの硫黄源の形態において)との間のモル比は、4:1、好ましくは10:1、特に好ましくは40:1である。
【0016】
本発明による生成物は、通常使用されるリチウム箔と比較して、粒子状の、多くの場合球状の形態および好ましくは500μm未満の粒径に起因する高い比表面積によって特徴付けられる。好ましい平均粒径は、1〜500μm、好ましくは10〜100μm、特に好ましくは15〜80μmである。さらには、その表面は平面状(滑らか)ではなく、むしろ粗い。ガルバニ電池の実現可能な電流密度は、とりわけ、電極材料の比表面積によって定められるので、そのように構造化された材料は、比較的高い伝導率(例えば自動車の駆動用バッテリーのために必要とされるもの)の達成のためにも適している。
【0017】
本発明によるLi2S@C複合材の炭素含有率は、0.1〜50%の間、好ましくは1〜20%の間である。それを、反応条件(とりわけ温度)の選択によって、並びに硫黄源の選択によって変化させることができる。より高い炭素含有率は、殊に、炭素含有硫黄化合物、好ましくは二硫化炭素(CS2)および/または硫化カルボニル(COS)を使用することによって達成される。該反応は、硫黄源としてこの化合物だけを使用して、
4Li+CS2 → 2Li2S+C
または
4Li+COS → Li2S+Li2O+C
に従って生じることができる。
【0018】
Li2S@Cシェルを有する本発明によるリチウム金属生成物は、電池のアノードの製造のために使用される。リチウム硫黄電池のためのその使用が特に好ましい。
【0019】
以下で本発明を2つの実施例、並びに8つの図面を用いて、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例1に従って製造された生成物のX線回折パターン、ここで、ピークxがLi2Sに該当し且つoがリチウム金属に該当する。
図2】実施例2に従って製造された生成物のX線回折パターン、ここで、ピークxがLi2Sに該当し且つoがリチウム金属に該当する。
図3】実施例1に従って製造された生成物の、レーザー散乱光測定によって算出された粒径分布。
図4】実施例2に従って製造された生成物の、レーザー散乱光測定によって算出された粒径分布。
図5】実施例1に従って製造された生成物の走査型電子顕微鏡(SEM)写真。
図6】実施例2に従って製造された生成物のSEM写真。
図7】実施例1の生成物の示差走査熱量測定(DSC)。
図8】実施例2の生成物のDSC。
【0021】
実施例
実施例1: パラフィンオイル中、200℃での、溶融リチウム金属および2.5mol%のCS2からの、Li2S@C被覆されたリチウムの製造
高エネルギー撹拌機構(Ultraturrax)を備えた、不活性化(即ち、水および空気を有さず、Arで満たされた)特殊鋼二重ジャケット付き反応器内で、20.5gのリチウム金属を520gのShellsol(登録商標) D100に装入し、210℃のジャケット温度で撹拌しながら溶解した。完全な溶融後、高エネルギー撹拌機を用いて、リチウムを微細なエマルションへと加工した(16000rpmで数分)。その後、5.48gの二硫化炭素を、Shellsol(登録商標) D100中の20%の溶液として、反応器の開口部を通じて添加した。反応は発熱性であり、197℃から200℃弱への内部温度の上昇で検知可能であった。添加終了後、撹拌機を停止させ、その後、8℃へと冷却し、且つ、テフロンの浸漬管を用いて懸濁液をフィルターフリットに押しつけ、(最初はShellsol(登録商標)で、その後3回、ペンタンで)洗浄し、且つ、室温(RT)で一定の質量になるまで乾燥させた。暗い灰色の自由流動性の粉末25.7gが得られた。
【0022】
前記粉末は、険しい表面凹凸を有する不規則な楕円形並びに球状の粒子からなり(図5参照)、且つ、金属含有率79.6質量%を有した(加水分解によるガス容積測定)。前記材料は、平均粒径55μmを有した。炭素含有率は3.4質量%であり、それは、20.4質量%のシェルの割合において外挿して、16.7質量%のシェルの濃度に相応する。
【0023】
N−メチルピロリドン(NMP)中での実施例1からの本発明による生成物の安定性(DSC試験)
DSC試験(「示差走査熱量測定」)のために、Systag社の装置、Schweiz(Radex−System)を使用した。試料容器中に、保護ガス雰囲気下で2gのN−メチルピロリドン(NMP)および0.1gの試験生成物を計量供給した。該試料を、特定の温度で15時間、保管した。
【0024】
本発明による材料を80℃で貯蔵する際、どのような熱的な作用も観察されない(図7)。さらなる試験は、NMPとの混合物が約110℃まで安定であることを示した。
【0025】
実施例2: パラフィンオイル中、200℃での、溶融リチウム金属および0.3mol%のCS2からの、Li2S@C被覆されたリチウムの製造
高エネルギー撹拌機構(Ultraturrax)を備えた、不活性化(即ち、水および空気を有さず、Arで満たされた)特殊鋼二重ジャケット付き反応器内で、19.4gのリチウム金属を500gのShellsol(登録商標) D100に装入し、210℃のジャケット温度で撹拌しながら溶解した。完全な溶融後、高エネルギー撹拌機を用いて、リチウムを微細なエマルションへと加工した(16000rpmで数分)。その後、0.64gの二硫化炭素を、Shellsol(登録商標) D100中の20%の溶液として、反応器の開口部を通じて添加した。反応は発熱性であり、約207℃から210℃弱への内部温度の上昇で検知可能であった。添加終了後、撹拌機を停止させ、その後、80℃へと冷却し、且つ、テフロンの浸漬管を用いて懸濁液をフィルターフリットに押しつけ、(最初はShellsol(登録商標)で、その後3回、ペンタンで)洗浄し、且つ、室温(RT)で一定の質量になるまで乾燥させた。暗い灰色の自由流動性の粉末19.8gが得られた。
【0026】
前記粉末は、なめらかな表面凹凸を有するほぼ球状の粒子からなり(図6参照)、且つ、金属含有率98.2質量%を有した(加水分解によるガス容積測定)。炭素含有率は、0.23質量%であり、それは粒子のシェルの割合に対して13質量%に相応する。
【0027】
前記材料は、平均粒径107μmを有した(図4参照)。
【0028】
X線回折により、硫化リチウムの痕跡の他に、リチウム金属が主に結晶相として検出される(図2)。
【0029】
NMP中での実施例2からの本発明による生成物の安定性(DSC試験)
本発明による材料を80℃で貯蔵する際、どのような熱的な作用も観察されない(図8)。さらなる試験は、NMPとの混合物が約120℃まで安定であることを示した。
【0030】
本発明は以下に関する:
・ コア/シェル形態を有する粒子状リチウム金属/硫化リチウム複合材であって、その際、シェルは炭素含有硫化リチウムからなり、且つ、コアは金属リチウムからなる前記複合材。
【0031】
・ 含有されるリチウムの最高50質量%、好ましくは最高20質量%、特に好ましくは最高5質量%が金属ではない形態で、つまり、主として硫化リチウムとして含有されている前記複合材。
【0032】
・ Li2S@Cシェルの炭素含有率が、0.1〜50質量%、好ましくは1〜30質量%である前記複合材。
【0033】
・ 使用されたリチウム金属の純度が少なくとも98質量%である前記複合材。
【0034】
・ リチウム含有率全体に対するナトリウムの含有率が、最高1000ppm、好ましくは最高100ppmである前記複合材。
【0035】
・ 個々の粒子が500μm以下の大きさである前記複合材。
【0036】
・ 平均粒径が、1〜500μm、好ましくは10〜100μm、特に好ましくは15〜80μmである前記複合材。
【0037】
・ 粒子状リチウム金属/硫化リチウム複合材の製造方法であって、溶融された液滴形態のリチウム金属を炭化水素溶剤中で、CS2、S8、H2S、COS、SO、SO2またはそれらの混合物の群から選択される硫黄源と反応させる、前記方法。
【0038】
・ 硫黄源として、好ましくは純粋な二硫化炭素、または二硫化炭素と硫黄および/または硫化水素との混合物を使用する前記方法。
【0039】
・ 反応が、180℃〜300℃、好ましくは180℃〜250℃、特に好ましくは180℃〜220℃の範囲の温度で行われる前記方法。
【0040】
・ 炭化水素溶剤として、好ましくは、選択された反応条件下で液体である、つまり少なくとも180℃、有利には少なくとも200℃の沸点、特に好ましくは200℃より高い沸点を有する飽和溶剤を使用する前記方法。
【0041】
・ 炭化水素溶剤として、好ましくはデカン、ウンデカン、ドデカンまたは前記化合物の任意の混合物を、直鎖、分枝鎖または環式であるかには関わらず使用する前記方法。
【0042】
・ 炭化水素溶剤として、特に好ましくは市販のパラフィン沸騰留分、例えばShellsol(登録商標) D70またはD100を使用する前記方法。
【0043】
・ リチウム電池の電極を製造するための、粒子状リチウム金属/硫化リチウム複合材の使用。
【0044】
・ リチウム硫黄電池のアノードを製造するための、粒子状リチウム金属/硫化リチウム複合材の使用。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8