特許第6124907号(P6124907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6124907ウレタンアクリレート及びこれを含有する反応性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6124907
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】ウレタンアクリレート及びこれを含有する反応性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/67 20060101AFI20170424BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   C08G18/67
   C08F290/06
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-542083(P2014-542083)
(86)(22)【出願日】2013年10月10日
(86)【国際出願番号】JP2013077560
(87)【国際公開番号】WO2014061539
(87)【国際公開日】20140424
【審査請求日】2016年7月13日
(31)【優先権主張番号】特願2012-229789(P2012-229789)
(32)【優先日】2012年10月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高村 直宏
(72)【発明者】
【氏名】亀田 将人
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−180487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/67
C08F 290/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)及び(II)で表される構造を有するアルキレンオキサイド変性ジペン
タエリスリトール(メタ)アクリレートと、ポリイソシアネートとの反応生成物からなる
ウレタンアクリレート。
【化1】
【化2】
但し、一般式(I)中、Rは一般式(II)で表される置換基を表し、AOは−CH2CH
2O−、−CH2CH(CH3)O−、−CH2CH2CH2CH2O−、又は−CH2CH(C
25)O−で表されるアルキレンオキサイド単位の中から選択された1種又は2種以上を
示し、付加しているアルキレンオキサイドの平均重合度を示すLの平均値は0より大きく
5以下であり、mの平均値は0より大きく6以下であり、nの平均値は以上2以下であ
り、oの平均値は0以上6以下であり、m、n及びoの合計値は6である。一般式(II)
中、R2は水素原子又はメチル基を示す。
【請求項2】
請求項1に記載のウレタンアクリレートを含有することを特徴とする反応性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタンアクリレートを含有する反応性組成物、及びこのためのウレタンアクリレートに関する。特には、硬化後に、高い鉛筆硬度や耐擦傷性、耐摩耗性、基材への密着性、透明性、及び耐汚染性を示す反応性組成物及びこのためのウレタンアクリレートに関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタンアクリレートを含有する反応性組成物は、強靭性、柔軟性、耐擦傷性、耐候性、耐薬品性等の優れた特性を持たせることができる。更に、加熱や活性エネルギー線の照射により短時間で硬化する特性を有しており、光学用途部材、レジスト組成物、ハードコート組成物、インクジェット用インキ組成物の製造に好適である。
【0003】
また、昨今では、ノートパソコン、携帯電話等のモバイル電子機器において、シート状の透明プラスチック基材上に反応性樹脂組成物からなる微細な凹凸表面形状(例えばキーシート)を形成した部品や、意匠性の高い筐体が用いられることがあり、高い鉛筆硬度や耐擦傷性が求められている。そのため、ウレタンアクリレートからなる反応性組成物が注目されている。
【0004】
特許文献1に記載されている反応性組成物を用いた硬化物は、耐擦傷性に優れるが、各実施例に記載されたように実際には組成物中に溶剤を含んでいる為、賦型用途には不適切である。一方、特許文献2に記載の反応性組成物を用いた硬化物は、優れた透明性、耐擦傷性を持つことが開示されているが、組成物中に1,6−ヘキサンジオールジアクリレートやトリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートといった多官能(メタ)アクリロイル基含有化合物を使用しているため、硬化収縮を小さくすること、硬化物のクラック発生を抑えること、及び、硬化物と基材との密着性を向上させることが求められていた。
【0005】
また、特許文献3では、ヘキサメチレンジイソシアネ―ト3量体とHEA、HPA、HBA等の単官能アルコールのウレタン化合物、およびペンタエリスリトールトリアクリレートとのウレタン化合物を合成し、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールEO12mol付加体ヘキサアクリレート等の多官能(メタ)アクリレートを配合した組成物に関する記載が見られる。しかし、ベースとなるウレタンアクリレートの粘度が高い事、および諸物性の低下を抑える為に、元々、結晶性、粘度が高い多官能アルコール誘導体を配合した組成物になっており、低粘度化の度合いが低い事、低粘度化の為に単官能の希釈モノマーを配合した場合は、極端に硬化物の物性が低下している点に課題が残っている。また、フィルム上での賦型を目的とした材料にも関わらず、フィルム上で硬化した際の、カール性等のフィルムの変形、もしくは樹脂の硬化収縮に関する評価がなされていない。
【0006】
また、上記特許文献に限らず、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ソルビトール等に代表される、多官能アルコール体の(メタ)アクリレートにおいて、意図的に水酸基を残存させてイソシアネートと反応させたウレタンアクリレート化合物が、本発明の目的とする、高い鉛筆硬度や耐擦傷性、耐摩耗性、基材への密着性、透明性、耐候性を反応性組成物に付与する為に配合される事がある。しかし、これらのウレタンアクリレート化合物は総じて粘度が高く、硬化収縮による密着性の低下や、特許文献3と同様の課題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−15621号
【特許文献2】特開2004−338214号
【特許文献3】特開2009−040955号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、多官能(メタ)アクリレートから得られるウレタンアクリレート、及びこれを含有する反応性組成物において、反応性組成物に配合されている多官能(メタ)アクリレート、または、そのウレタンアクリレートが、高い結晶性や高い粘度を有することに起因して、反応性組成物のハンドリング性が悪化したり、硬化収縮率が高くなるといった問題を改善し、かつ硬化性や表面硬度が向上することができるものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、アルキレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールに由来する、下記の特定の構造を有する(メタ)アクリレートを用いたウレタンアクリレートであると、ジグリセリン、グリセリン、トリペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールプロパン等に代表される多官能アルコールに由来する(メタ)アクリレートを用いた場合と比較して、優れた光感度、低結晶性、低粘度、低硬化収縮性を有し、かつ硬化物は高硬度であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明のウレタンアクリレートは、下記一般式(I)及び(II)で表される構造
を有したアルキレンオキサイド変性ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレートと、ポ
リイソシアネート化合物との反応生成物からなるものである。また、本発明の反応性組成
物は、このようなウレタンアクリレートを含有するものである。
【化1】
【化2】
但し、一般式(I)中、Rは一般式(II)で表される置換基を表し、AOは−CH2CH
2O−、−CH2CH(CH3)O−、−CH2CH2CH2CH2O−、又は−CH2CH(C
25)O−で表されるアルキレンオキサイド単位の中から選択された1種又は2種以上を
示し、付加しているアルキレンオキサイドの平均重合度を示すLの平均値は0より大きく
5以下であり、mの平均値は0より大きく6以下であり、nの平均値は以上2以下であ
り、oの平均値は0以上6以下であり、m、n及びoの合計値は6である。一般式(II)
中、R2は水素原子又はメチル基を示す。
【発明の効果】
【0011】
本発明のウレタンアクリレート化合物は、優れた光感度、低結晶性、低粘度、低硬化収縮性を有し、かつ硬化物は高硬度であることから、従来はジペンタエリスリトール、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等に代表される多官能アルコールに由来の(メタ)アクリレート、もしくは、そのウレタン化合物を配合していたところ、このような従来の反応性組成物に比べ、より低粘度化しつつ、硬化物の物性を維持、もしくは向上させることが可能である。
【0012】
また、上記特性により、特には無溶剤系の反応性組成物において、低粘度化・粘度調整のために添加される単官能モノマーの含有量を低減させ、又は添加しなくてもよくなることから、反応性組成物中の重合性官能基である(メタ)アクリロイル基濃度を向上させることが可能となる。
【0013】
これにより、硬化性の向上、即ち架橋密度の高い硬化物を作ることが可能となり、耐擦り傷性のような力学的特性に加え、耐汚染性、耐溶剤性、耐熱性の向上が得られ、用途として、感熱記録体、光ディスク、光学シート、インクジェット用インク、湿し水を用いない印刷用インク(フレキソ印刷用インク、スクリーン印刷用インクなど)、光ファイバ等に好適に用いられる。一方、水系を含む溶剤系の反応性組成物においては、硬化性の向上、硬化収縮の低下による基材との密着性向上、硬化塗膜中の残存二重結合量が少なく熱で架橋が進まないため、耐熱試験で密着性が低下することがないことや、耐候性や耐光性の向上等が実現できる。
【0014】
従って、本発明のウレタンアクリレート化合物及び反応性組成物は、ハードコート等のコーティング用反応性組成物、インクジェット印刷などのインキ用反応性組成物、カラーレジスト等のレジスト用反応性組成物、フィルムコーティング等の用途において極めて優位性を持った材料であると言える。
【0015】
また、本発明の化合物及び反応性組成物は、単独使用でも上述の特性を発揮することが可能であるが、既存の反応性組成物、例えばジペンタエリスリトールのアクリレートのようなアルキレンオキサイド未変性多官能(メタ)アクリレートと併用した場合もその特性を発揮することが可能であり、添加剤としても利用することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<アルキレンオキサイド変性ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート>
本発明のウレタンアクリレートを得るのに用いる活性水素(水酸基)含有アクリレート化合物は、上記一般式(I)、(II)の構造で表される構造を有するものである。式(I)中、AOは−CH2CH2O−、又は−CH2CH(CH3)O−、又は−CH2CH2CH2CH2O−、又は−CH2CH(C25)O−で表されるアルキレンオキサイド単位を示す。すなわち、エチレンオキサイド単位、プロピレンオキサイド単位、及びブチレンオキサイド単位のいずれかを示し、中でも粘度、光感度、重合率という点からはエチレンオキサイド単位であるのが好ましい。これらのアルキレンオキサイド単位は、1種単独で存在していても、2種以上が併存していてもよい。
【0017】
アルキレンオキサイドの平均重合度を示すLの平均値は0より大きく5以下であり、好ましくは0より大きく2以下である。また、mの平均値は0より大きく6以下であり、2以上6以下が好ましい。残存する水酸基を示すnの平均値は0以上6未満であり、1以上2以下が好ましい。oの平均値は0以上6以下であり、0以上、4以下が好ましい。これらm、n及びoの合計値は6である。ハードコートなどの用途においては、ジペンタエリスリトール1分子あたりの、アルキレンオキサイド(特にはエチレンオキサイド)の平均付加モル数が、好ましくは2以上5以下、より好ましくは3以上5以下である。
【0018】
Rは一般式(II)で表される(メタ)アクリロイル基であり、一般式(II)におけるR2は水素原子またはメチル基である。
【0019】
すなわち、本発明に用いる水酸基含有アクリレート化合物は、ジペンタエリスリトールの6個の水酸基の一部又は全部が、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、又はこれらの複数種からなるスペーサーを経て、一般式(II)で表される(メタ)アクリル酸エステル基に変換された構造を有している。そして、(メタ)アクリル酸エステル基を有さない1個、ないしは2個の水酸基がイソシアネートと反応する形態を取っている。
【0020】
<アルキレンオキサイド変性ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレートの製造方法>
本発明のアルキレンオキサイド変性多官能(メタ)アクリレートは、例えば以下の方法により製造することができるが、その製造ルートは特に限定されず、どの様な製造方法でも採用することが可能である。
【0021】
ジペンタエリスリトールを原料とするアルキレンオキサイド変性方法は、任意に選択することができる。一般的な手法としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを使用した方法に加えて、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネートを使用した方法、エチレンクロロヒドリンを使用した方法が挙げられる。
【0022】
なお、以下に述べる製造方法において、本発明のウレタンアクリレートの原料として使用する(メタ)アクリル酸化合物は重合性が高いので、製造時や製品保管中に重合が進行しないよう重合禁止剤を適宜使用することができる。重合禁止剤としては、p−ベンゾキノン、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,5−ジフェニルパラベンゾキノンなどのハイドロキノン類、テトラメチルピペリジニル−N−オキシラジカル(TEMPO)などのN−オキシラジカル類、t−ブチルカテコールなどの置換カテコール類、フェノチアジン、ジフェニルアミン、フェニル−β−ナフチルアミンなどのアミン類、クペロン、ニトロソベンゼン、ピクリン酸、分子状酸素、硫黄、塩化銅(II)などを挙げることができる。この中でもハイドロキノン類、フェノチアジンおよびN−オキシラジカル類が汎用性かつ重合抑制効果の点で好ましい。
【0023】
重合禁止剤の添加量は、目的物である一般式(I)で示される化合物に対して、下限がおおよそ10ppm以上、好ましくは30ppm以上であり、上限が、通常5000ppm以下、好ましくは1000ppm以下である。少なすぎる場合は、十分な重合禁止効果が発現せず、製造時や製品保管中に重合が進行する危険性があり、多すぎる場合は、逆に硬化・重合反応を阻害してしまう可能性がある。その為、本発明の化合物単独、またはその重合性樹脂組成物とした際の光感度の低下、硬化物の架橋不良、力学的強度などの物性低下などを引き起こしてしまう恐れがあり、好ましくない。
【0024】
本発明に用いる水酸基含有アクリレート化合物を製造する上での(メタ)アクリル酸エステル基の一般的な導入方法としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等の目的とする構造に対応した(メタ)アクリル酸エステルを使用したエステル交換法、(メタ)アクリル酸クロライドを用いた酸クロライド法、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド、プロパンホスホン酸無水物、カルボニルジイミダゾール(CDI)、WSCD(水溶性カルボジイミド)などの縮合剤を使用した方法、酸触媒の存在下で(メタ)アクリル酸と共沸・脱水する脱水エステル化法等が挙げられる。以下に代表的なアルキレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールのエステル化反応について、製造上可能な条件を記載する。
【0025】
反応は、(メタ)アクリル酸とアルキレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールを酸触媒の存在下、生成する水を留去しながら行うことができる。使用される酸としては、通常のエステル化反応に用いられる酸であれば特に制限なく使用できる。例えば、硫酸や、塩酸などの無機酸、p−トルエンスルホン酸やメタンスルホン酸、カンファースルホン酸などの有機スルホン酸、酸型イオン交換樹脂、フッ素化ホウ素・エーテル錯体などのルイス酸、ランタナイドトリフレートなどの水溶性のルイス酸等が挙げられる。これらの酸は1種単独でも、任意の酸を2種以上混合して用いてもよい。
【0026】
酸の使用量は、基質であるアルキレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールに対して下限が0.1モル当量以上、好ましくは0.5モル当量以上である。一方、上限は制限がないが、通常は20モル等量以下、好ましくは10モル等量以下である。酸触媒量が少なすぎる場合は、反応の進行が遅かったり停止したりするため好ましくなく、また、多すぎる場合には、製品着色や、触媒の残存等の問題が生じたり、マイケル付加物の生成等の好ましくない副反応が起きたりする傾向にある。
【0027】
反応は、溶媒系、無溶媒系のどちらでも行うことができるが、副生物の生成、工程上のハンドリング面から溶剤系が好ましい。溶媒を使用する場合は、特に使用する溶媒に制限はないが、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、モノエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒などが好適に用いられる。これらの溶媒は1種を単独で用いることもでき、任意の複数の溶媒を混合して使用することもできる。
【0028】
溶媒を使用する場合、その量は原料であるアルキレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールの濃度を、通常は1質量%以上、好ましくは20質量%以上とし、上限は特に制限はないが、通常は80質量%以下、好ましくは70質量%以下とする。反応は、通常は使用する溶媒の沸点以上で行い、生成する水を留去しながら行う。ただし、上記(メタ)アクリル酸クロライドや縮合剤を使用した反応を行う際は、溶剤の沸点以下、もしくは氷冷下で反応を行うことがある。反応時間は任意に選択されるが、生成する水の量、系内の酸価を測定することにより反応の終点を認知することができる。
【0029】
反応時間は、下限が通常は30分間以上、好ましくは60分間以上であり、上限は特に限定はされないが通常は20時間以下、好ましくは10時間以下である。
【0030】
<精製方法>
上記の反応により製造された一般式(I)で表される化合物は、従来から用いられている精製方法で特に制限なく精製することができる。例えば、蒸留法、再結晶法、抽出洗浄法、吸着処理法などである。蒸留を行う場合は、その形態としては、単蒸留、精密蒸留、薄膜蒸留、分子蒸留などを任意に選択することができる。
【0031】
<(メタ)アクリル酸エステルモノマーの保存方法>
本発明の(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、重合性を有しているため、冷暗所に保存することが望ましい。また、重合を防止するために上記した重合禁止剤を上記した量使用して保存することも可能である。
【0032】
<アルキレンオキサイド変性ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレートと、ポリイソシアネートからのウレタンアクリレートの製造>
本発明のウレタンアクリレートは、上述のアルキレンオキサイド変性ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレートと、以下に説明するポリイソシアネートの反応生成物からなる。本発明のウレタンアクリレートは、上述のアルキレンオキサイド変性多官能(メタ)アクリレート、及び、下記の水酸基含有アルキル(メタ)アクリレートと、以下に説明するポリイソシアネートとの反応生成物からなるものであってもよい。ポリイソシアネートは、典型的には、分子量1000以下であり、各分子に2〜5個のイソシアネート基、特には2〜3個のイソシアネート基を有するものである。本発明で用いるポリイソシアネートは、特には、有機化合物の骨格からなる有機ポリイソシアネートである。ハードコートなどの用途においては、脂肪族骨格からなるポリイソシアネートが好ましい。
【0033】
ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、および、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの3量体の様な、各イソシアネートの多量体が挙げられる。
【0034】
上述のアルキレンオキサイド変性ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレートとともに、ポリイソシアネートに反応させる水酸基含有アルキル(メタ)アクリレートの例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート、及びそのカプロラクトン変性品やアルキルオキサイド変性品等が挙げられる。ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のモノエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸モノマーとの付加反応物であっても良い。また、上述のアルキレンオキサイド変性ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレートに水酸基を導入したものであっても良い。
【0035】
上記のイソシアネート成分と、アクリレート化合物の付加反応は、従来知られる各種の方法に従って行なうことができる。例えば、30〜90℃に加温したイソシアネート成分とジブチル錫ジラウレート等の触媒との混合物中に、アクリレート化合物を滴下して、6〜12時間反応させることにより実施することが出来る。
【0036】
<反応性組成物>
本発明の反応性組成物は、上記のウレタンアクリレートを含有するものである。
【0037】
本発明の反応性組成物の重合・硬化は、一般に知られた方法で実施することができ、その方法は特に制限されない。例えば、ラジカル開始剤の存在下に重合させる方法や、LED、高圧水銀灯などを光源とした紫外線や、電子線を用いた活性エネルギー線により、重合開始剤の存在下に重合させる方法、熱重合法、アニオン重合、付加重合などの方法を単独で、又は組み合わせて採用可能である。
【0038】
重合開始剤は特に限定されるものではないが、光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン等の芳香族ケトン類、アントラセン、α−クロロメチルナフタレン等の芳香族化合物、ジフェニルスルフィド、チオカーバメイト等のイオウ化合物を使用することができる。
【0039】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などのアゾ化合物を使用することができる。必要に応じ、これら光重合開始剤とラジカル重合開始剤とを併用してもよい。
【0040】
また紫外線などの活性エネルギー線による重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジルー2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)等を挙げることができる。
【0041】
なお、活性エネルギー線による重合開始剤の市販品としては、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製 商品名:イルガキュア 184、369、651、500、819、907、784、2959、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24−61、ダロキュア 1116、1173、BASF社製 商品名:ルシリン TPO、UCB社製 商品名:ユベクリル P36、フラテツリ・ランベルティ社製商品名:エザキュアー KIP150、KIP65LT、KIP100F、KT37、KT55、KTO46、KIP75/B等を挙げることができる。
【0042】
上記光重合開始剤、ラジカル重合開始剤、活性エネルギー線による重合開始剤の使用量は、公知の重合反応に準じて選択すればよい。例えば、ラジカル重合開始剤は、一般式(I)で示される本発明の化合物に対して、通常は0.0001〜10重量部、好ましくは0.001〜5重量部使用するのが適当である。反応温度は、下限が通常0℃以上、好ましくは10℃以上であり、一方上限は、通常は200℃以下、好ましくは100℃以下である。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない範囲内において、以下の実施例によって限定されるものではない。なお、特にことわらない限り、「%」は質量%、「部」は質量基準とする。
【0044】
<液体クロマトグラフ質量分析(以下、LC−MS分析と略す)条件>
実施例・比較例のLC−MS分析は次の条件で行った。
[LC部分]Agilent Technologies製 1100シリーズ
カラム:Inertsil ODS−2(4.6mmφ×250mm,5μm)、
溶離液:水80.0%−30min→0.0%、メタノール20.0%−30min→100.0%、
カラム温度:40℃、
流量:1mL/min、注入量:5μL(200 ppmメタノール溶液)、
検出器:UV、RI
[MS部分]JMS T100LP(日本電子製)
リングレンズ電圧:10V、イオン化法:APCI+、脱溶媒室温度:350℃、
ニードル電圧:2500V、オリフィス1温度:80℃、オリフィス1電圧:60V、
イオンガイドピーク間電圧:1000V、オリフィス2電圧:5V
【0045】
<水酸基価測定条件>
酢酸とピリジンを重量比1:9で混合し、アセチル化試薬とした。サンプルをフラスコに秤量し、アセチル化試薬を加え、80℃で2時間加熱した。反応後、フェノールフタレインを指示薬とし、1mol/l水酸化カリウム水溶液で滴定を行った。
【0046】
<NMR分析>
NMR分析の結果は、各ピークの帰属を次式に記載する番号((1)〜(3))で示す。
【化3】
【0047】
[合成例1](ジペンタエリスリトール2EO付加体アクリレートの合成)
攪拌装置を備えた容量1Lのオートクレーブ内に、ジペンタエリスリトール(広栄化学工業株式会社製、OH価1324)254g(1.0mol)、トルエン127g、KOH0.3gを仕込み、90℃まで昇温、攪拌し、スラリー状の液体とした。次いで130℃に加熱し、エチレンオキサイド132g(3mol)を徐々にオートクレーブ内に導入し反応せしめた。エチレンオキサイドの導入とともに、オートクレーブ内温度は上昇した。随時冷却を加え、反応温度は140℃以下に保つようにした。反応後、140℃にて水銀柱10mmHg以下にて減圧することで、過剰のエチレンオキサイド、副生するエチレングリコールの重合体を除去した。その後、酢酸にて中和を実施し、pH6〜7に調整した。得られたジペンタエリスリトール2EO付加体(平均2モルのエチレンオキサイドが付加したもの、以下同様)のOH価は982であった。
【0048】
得られたエチレングリコール変性ジペンタエリスリトール(OH価982)343g(1mol)、アクリル酸367g(5.1mol)、パラトルエンスルホン酸35g、トルエン900g、ハイドロキノン0.9gをガラス製四つ口フラスコに仕込み、空気を吹き込みながら加熱反応を行った。反応で生じた水はトルエンと共沸することで系外に随時除去した。反応温度は100〜110℃であり、反応終了時に系外へ除去された反応水量は95gであった。反応後、アルカリ水洗、水洗を行い、上層のトルエン層を分離し、トルエンを減圧留去し、一般式(I)で表される、水酸基含有ジペンタエリスリトール2EO付加体アクリレート538g(収率87%)を得た。
【0049】
これにつき、水酸基価の測定、並びに1H−NMR、13C−NMR、HPLC、及びLC−MS、水酸基価による分析を実施したところ、水酸基含有ジペンタエリスリトール2EO付加体アクリレートであることが明らかとなった。以下に、NMR分析、及びLC−MS分析の結果を示し、NMRのピークの帰属は上記番号で示す。
【0050】
<2EO付加体アクリレートの13C−NMR分析(400MHz),in CDCl3
45ppm:(2)由来、60ppm:(3)由来、61〜63ppm:エチレンオキサイドが付加した(3)由来、68〜73ppm:(3)に付加したエチレンオキサイド由来、77〜79ppm:重クロロホルム由来、128〜131ppm:エステル結合したアクリル酸由来、165〜167ppm:エステル結合部
【0051】
<2EO付加体アクリレートの1H−NMR分析(400MHz),in CDCl3
3.3〜4.1ppm(16H):(1)、(3)由来、3.6〜4.4ppm(8H):(3)のOHに付加したエチレンオキサイド由来、5.7〜6.4ppm(18H):アクリル酸エステルの2重結合由来、7.3ppm:重クロロホルム由来
【0052】
<2EO付加体アクリレートのLC−MS分析>
8.8〜11.5分:エチレンオキサイド重合体ジアクリレート、14〜16分:ジペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性モノアクリレート、16〜20分:ジペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性ヘキサアクリレート
【0053】
<2EO付加体アクリレートの水酸基価>
ジペンタエリスリトール2EO付加体ジペンタアクリレートモノアルコールの計算水酸基価=54mgKOH/g に対して、測定値は49mgKOH/gであった。
【0054】
[合成例2](ジペンタエリスリトール4EO付加体アクリレートの合成)
攪拌装置を備えた容量1Lのオートクレーブ内に、ジペンタエリスリトール(広栄化学工業株式会社製、OH価1324)254g(1.0mol)、トルエン127g、KOH0.3gを仕込み、90℃まで昇温、攪拌し、スラリー状の液体とした。次いで130℃に加熱し、エチレンオキサイド220g(5mol)を徐々にオートクレーブ内に導入し反応せしめた。エチレンオキサイドの導入とともに、オートクレーブ内温度は上昇した。随時冷却を加え、反応温度は140℃以下に保つようにした。反応後、140℃にて水銀柱10mmHg以下にて減圧することで、過剰のエチレンオキサイド、副生するエチレングリコールの重合体を除去した。その後、酢酸にて中和を行い、pH6〜7に調整した。得られたジペンタエリスリトール4EO付加体のOH価は765であった。
【0055】
得られたエチレングリコール変性ジペンタエリスリトール(OH価765)440g(1mol)、アクリル酸382g(5.3mol)、パラトルエンスルホン酸41g、トルエン900g、ハイドロキノン1gをガラス製四つ口フラスコに仕込み、空気を吹き込みながら加熱反応を行った。反応で生じた水はトルエンと共沸することで系外に随時除去した。反応温度は100〜110℃であり、反応終了時に系外へ除去された反応水量は99gであった。反応後、アルカリ水洗、水洗を行い、上層のトルエン層を分離し、トルエンを減圧留去し、一般式(I)で表される、水酸基含有ジペンタエリスリトール4EO付加体アクリレート610g(収率86%)を得た。
【0056】
これにつき、水酸基価の測定、並びに1H−NMR、13C−NMR、HPLC、及びLC−MS、水酸基価による分析を実施したところ、水酸基含有ジペンタエリスリトール4EO付加体アクリレートであることが明らかとなった。以下に、NMR分析、及びLC−MS分析の結果を示し、NMRのピークの帰属は上記番号で示す。
【0057】
<4EO付加体アクリレートの13C−NMR分析(400MHz),in CDCl3
45ppm:(2)由来、60ppm:(3)由来、61〜63ppm:エチレンオキサイドが付加した(3)由来、68〜73ppm:(3)に付加したエチレンオキサイド由来、77〜79ppm:重クロロホルム由来、128〜131ppm:エステル結合したアクリル酸由来、165〜167ppm:エステル結合部
【0058】
<4EO付加体アクリレートの1H−NMR分析(400MHz),in CDCl3
3.3〜4.1ppm(16H):(1)、(3)由来、3.6〜4.4ppm(16H):(3)のOHに付加したエチレンオキサイド由来、5.7〜6.4ppm(18H):アクリル酸エステルの2重結合由来、7.3ppm:重クロロホルム由来
【0059】
<4EO付加体アクリレートのLC−MS分析>
8.8〜11.5分:エチレンオキサイド重合体ジアクリレート、14〜16分:ジペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性モノアクリレート、16〜20分:ジペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性ヘキサアクリレート
【0060】
<4EO付加体アクリレートの水酸基価>
ジペンタエリスリトール4EO付加体ジペンタアクリレートモノアルコールの計算水酸基価=54mgKOH/g に対して、測定値は51mgKOH/gであった。
【0061】
[合成例3](ジペンタエリスリトール6EO付加体アクリレートの合成)
攪拌装置を備えた容量1Lのオートクレーブ内に、ジペンタエリスリトール(広栄化学工業株式会社製、OH価1324)254g(1.0mol)、蒸留水36g、KOH0.3gを仕込み、90℃まで昇温、攪拌し、スラリー状の液体とした。次いで130℃に加熱し、エチレンオキサイド352g(8mol)を徐々にオートクレーブ内に導入し反応せしめた。エチレンオキサイドの導入とともに、オートクレーブ内温度は上昇した。随時冷却を加え、反応温度は140℃以下に保つようにした。反応後、140℃にて水銀柱10mmHg以下にて減圧することで、過剰のエチレンオキサイド、副生するエチレングリコールの重合体を除去した。その後、酢酸にて中和を行い、pH6〜7に調整した。得られたジペンタエリスリトール6EO付加体のOH価は646であった。
【0062】
得られたエチレングリコール変性ジペンタエリスリトール(OH価646)521g(1mol)、アクリル酸389g(5.4mol)、パラトルエンスルホン酸45g、トルエン900g、ハイドロキノン1.1gをガラス製四つ口フラスコに仕込み、空気を吹き込みながら加熱反応を行った。反応で生じた水はトルエンと共沸することで系外に随時除去した。反応温度は100〜110℃であり、反応終了時に系外へ除去された反応水量は113gであった。反応後、アルカリ水洗、水洗を行い、上層のトルエン層を分離し、トルエンを減圧留去し、一般式(I)で表される、水酸基含有ジペンタエリスリトール6EO付加体アクリレート669g(収率83%)を得た。
【0063】
これにつき、水酸基価の測定、並びに1H−NMR、13C−NMR、HPLC、及びLC−MSによる分析を実施したところ、水酸基含有ジペンタエリスリトール6EO付加体アクリレートであることが明らかとなった。以下に、NMR分析、及びLC−MS分析、水酸基価測定の結果を示し、NMRのピークの帰属は上記番号で示す。
【0064】
<6EO付加体アクリレートの13C−NMR分析(400MHz),in CDCl3
45ppm:(2)由来、60ppm:(3)由来、61〜63ppm:エチレンオキサイドが付加した(3)由来、68〜73ppm:(3)に付加したエチレンオキサイド由来、77〜79ppm:重クロロホルム由来、128〜131ppm:エステル結合したアクリル酸由来、165〜167ppm:エステル結合部
【0065】
<6EO付加体アクリレートの1H−NMR分析(400MHz),in CDCl3
3.3〜4.1ppm(16H):(1)、(3)由来、3.6〜4.4ppm(24H):(3)のOHに付加したエチレンオキサイド由来、5.7〜6.4ppm(18H):アクリル酸エステルの2重結合由来、7.3ppm:重クロロホルム由来
【0066】
<6EO付加体アクリレートのLC−MS分析>
8.8〜11.5分:エチレンオキサイド重合体ジアクリレート、14〜16分:ジペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性モノアクリレート、16〜20分:ジペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性ヘキサアクリレート
【0067】
<6EO付加体アクリレートの水酸基価>
ジペンタエリスリトール4EO付加体ジペンタアクリレートモノアルコールの計算水酸基価=54mgKOH/g に対して、測定値は50mgKOH/gであった。
【0068】
[実施例1](ジペンタエリスリトール2EO付加体アクリレートとイソホロンジイソシアネートの反応)
合成例1で得られたジペンタエリスリトール2EO付加体アクリレート1236部(2mol)と、イソホロンジイソシアネート(住友バイエル株式会社製、商品名;デスモジュールI)222部(1mol)、ハイドロキノンモノメチルエーテル(川口化学工業(株)製、商品名;MQ)0.4部を2リットルのセパラブルフラスコに入れた。攪拌しながら、ガラス管にて、液中に空気導入を実施し、液温を70℃にし、ジブチル錫ジラウレート(旭電化工業(株)製、商品名:アデカスタブBT−11)0.3部を添加し、70〜80℃の間で反応温度の調整を行いつつ、6時間反応をおこなう事で、イソホロンジイソシアネートとジペンタエリスリトール2EO付加体のウレタンアクリレートを得た。
【0069】
[実施例2](ジペンタエリスリトール4EO付加体アクリレートとイソホロンジイソシアネートの反応)
合成例2で得られたジペンタエリスリトール4EO付加体アクリレート1418部(2mol)と、イソホロンジイソシアネート222部(1mol)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.45部を2リットルのセパラブルフラスコに入れた。攪拌しながら、ガラス管にて、液中に空気導入を実施し、液温を70℃にし、ジブチル錫ジラウレート0.34部を添加し、70〜80℃の間で反応温度の調整を行いつつ、6時間反応をおこなう事で、イソホロンジイソシアネートとジペンタエリスリトール4EO付加体のウレタンアクリレートを得た。
【0070】
[実施例3](ジペンタエリスリトール6EO付加体アクリレートとイソホロンジイソシアネートの反応)
合成例3で得られたジペンタエリスリトール6EO付加体アクリレート1612部(2mol)と、イソホロンジイソシアネート222部(1mol)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.5部を2リットルのセパラブルフラスコに入れた。攪拌しながら、ガラス管にて、液中に空気導入を実施し、液温を70℃にし、ジブチル錫ジラウレート0.38部を添加し、70〜80℃の間で反応温度の調整を行いつつ、6時間反応をおこなう事で、イソホロンジイソシアネートとジペンタエリスリトール6EO付加体のウレタンアクリレートを得た。
【0071】
[実施例4](ジペンタエリスリトール2EO付加体アクリレートとヘキサメチレンジイソシアネート三量体の反応)
合成例1で得られたジペンタエリスリトール2EO付加体アクリレート1854部(3mol)と、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体540部(1mol)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.48部を3リットルのセパラブルフラスコに入れた。攪拌しながら、ガラス管にて、液中に空気導入を実施し、液温を70℃にし、ジブチル錫ジラウレート0.48部を添加し、70〜80℃の間で反応温度の調整を行いつつ、6時間反応をおこなう事で、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体とジペンタエリスリトール2EO付加体のウレタンアクリレートを得た。
【0072】
[実施例5](ジペンタエリスリトール4EO付加体アクリレートとヘキサメチレンジイソシアネート三量体の反応)
合成例2で得られたジペンタエリスリトール4EO付加体アクリレート2127部(3mol)と、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体540部(1mol)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.53部を3リットルのセパラブルフラスコに入れた。攪拌しながら、ガラス管にて、液中に空気導入を実施し、液温を70℃にし、ジブチル錫ジラウレート0.53部を添加し、70〜80℃の間で反応温度の調整を行いつつ、7時間反応をおこなう事で、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体とジペンタエリスリトール4EO付加体のウレタンアクリレートを得た。
【0073】
[実施例6](ジペンタエリスリトール6EO付加体アクリレートとヘキサメチレンジイソシアネート三量体の反応)
合成例3で得られたジペンタエリスリトール6EO付加体アクリレート2418部(3mol)と、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体540部(1mol)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.59部を3リットルのセパラブルフラスコに入れた。攪拌しながら、ガラス管にて、液中に空気導入を実施し、液温を70℃にし、ジブチル錫ジラウレート0.59部を添加し、70〜80℃の間で反応温度の調整を行いつつ、7時間反応をおこなう事で、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体とジペンタエリスリトール6EO付加体のウレタンアクリレートを得た。
【0074】
[比較例1](ペンタエリスリトールトリアクリレートとイソホロンジイソシアネートの反応)
ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬株式会社製、商品名;KAYARAD PET-30)667部(2mol)、イソホロンジイソシアネート222g(1mol)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.18部を1リットルのセパラブルフラスコに入れた。攪拌しながら、ガラス管にて、液中に空気導入を実施し、液温を70℃にし、ジブチル錫ジラウレート0.18部を添加し、70〜80℃の間で反応温度の調整を行いつつ、6時間反応をおこなう事で、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートからなるウレタンアクリレートを得た。
【0075】
[比較例2](ジペンタエリスリトールアクリレートとイソホロンジイソシアネートの反応)
ジペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬株式会社製、商品名;KAYARAD DPHA)2248部(2mol)、イソホロンジイソシアネート222部(1mol)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.49部を3リットルのセパラブルフラスコに入れた。攪拌しながら、ガラス管にて、液中に空気導入を実施し、液温を70℃にし、ジブチル錫ジラウレート0.49部を添加し、70〜80℃の間で反応温度の調整を行いつつ、6時間反応をおこなう事で、イソホロンジイソシアネートとジペンタエリスリトールアクリレートからなるウレタンアクリレートを得た。
【0076】
[比較例3](2−ヒドロキシエチルアクリレートとイソホロンジイソシアネートの反応)
2−ヒドロキシエチルアクリレート(日本触媒株式会社製、商品名;BHEA)232部(2mol)、イソホロンジイソシアネート222部(1mol)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.09部を1リットルのセパラブルフラスコに入れた。攪拌しながら、ガラス管にて、液中に空気導入を実施し、液温を70℃にし、ジブチル錫ジラウレート0.09部を添加し、70〜80℃の間で反応温度の調整を行いつつ、6時間反応をおこなう事でイソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチルアクリレートからなるウレタンアクリレートを得た。
【0077】
[比較例4](2−ヒドロキシエチルアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネート三量体の反応)
2−ヒドロキシエチルアクリレート348部(3mol)、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名;デュラネートTLA-100)540部(1mol)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.18部を1リットルのセパラブルフラスコに入れた。攪拌しながら、ガラス管にて、液中に空気導入を実施し、液温を70℃にし、ジブチル錫ジラウレート0.18部を添加し、70〜80℃の間で反応温度の調整を行いつつ、6時間反応をおこなう事でヘキサメチレンジイソシアネート三量体と2−ヒドロキシエチルアクリレートからなるウレタンアクリレートを得た。
【0078】
[比較例5](ジペンタエリスリトールトリアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネート三量体の反応)
ジペンタエリスリトールトリアクリレート3372部(3mol)、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名;デュラネートTLA-100)540部(1mol)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.78部を5リットルのセパラブルフラスコに入れた。攪拌しながら、ガラス管にて、液中に空気導入を実施し、液温を70℃にし、ジブチル錫ジラウレート0.78部を添加し、70〜80℃の間で反応温度の調整を行いつつ、6時間反応をおこなう事でヘキサメチレンジイソシアネート三量体と2−ヒドロキシエチルアクリレートからなるウレタンアクリレートを得た。
【0079】
[比較例6](ペンタエリスリトールトリアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネート三量体の反応)
ペンタエリスリトールトリアクリレート1001部(3mol)、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体540部(1mol)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.31部を2リットルのセパラブルフラスコに入れた。攪拌しながら、ガラス管にて、液中に空気導入を実施し、液温を70℃にし、ジブチル錫ジラウレート0.31部を添加し、70〜80℃の間で反応温度の調整を行いつつ、5時間反応をおこなう事で、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートからなるウレタンアクリレートを得た。
【0080】
[粘度]JIS K 5600−2−3に従って測定を行った。
[光感度]実施例1から14、及び比較例で得られたサンプルを50重量部、酢酸エチルを50重量部、光重合開始剤としてBASF社製irgacure184を固形分に対して3重量部を添加、溶解した物を、ガラス基板上にスピンコーターにて乾燥膜厚5μmに塗布し、80℃で乾燥、脱溶剤を行った。この未硬化物をステップタブレット(25段、Riston社製)にて遮光し、ウシオ社製の平行光型露光機(SX−UID501H UVQ)にて、窒素雰囲気下、積算照度200mjで硬化させ、指触にてタックフリーとなる段数を記載した。
【0081】
[密着性]光感度の項目と同様にサンプルを調整し、メタルハライドランプを装着したベルトコンベアー式UV硬化装置にてABS、アクリル樹脂、PC、PET(易接着処理面)を基板として積算照度200mj/cm2にて硬化し、JIS−K5400規定の碁盤目試験を行い残存マス数を密着性とした。
【0082】
[鉛筆硬度]光感度の項目と同様の手法で硬化皮膜を作成し、JIS K 5600−5−
4に従い、ABS、PC、PET、アクリル樹脂上での皮膜硬度を測定した。
[耐擦傷性]PETフィルム(易接着処理面)に光感度の項目と同様の手法で硬化皮膜を作成し、テーバー磨耗試験を行った。1kg荷重でCS−10F磨耗輪を使用し所定の回数回転させた時のヘーズをヘーズメーター(スガ製作所 HGM型)にて測定し、試験前後のヘーズの差異を求めた。
【0083】
[耐スチールウール性]PETフィルム(易接着処理面)に光感度の項目と同様の手法で硬化皮膜を作成し、00番のスチールウールで3kgの荷重を掛けて100回研磨した際の塗膜の状態を目視にて観察し、次の基準で評価した;
○:傷なし、△:試験片に10本前後の傷が確認できる、×:多数の傷が確認できる。
【0084】
[カール性]厚さ150μm、一辺6cmの正方形にカットしたPETフィルムを基材とし、光感度の項目と同様の手法で硬化皮膜を作成した。平坦な面にフィルムの4隅の一点を固定し、その時の残りの3点の高さを測定し、その平均値をカール性とした。
【0085】
[耐汚染性]PETフィルム(易接着処理面)に光感度の項目と同様の手法で硬化皮膜を作成した。硬化皮膜上に汚染物として油性マジック、毛染め液、靴墨を塗布し18時間静置、エタノール綿にてふき取りした際の外観を目視で観察し、次の基準で評価した;
○:着色なし、△:わずかに着色あり、×:着色が濃い。
【0086】
[屈曲性]PETフィルム(易接着処理面)に光感度の項目と同様の手法で硬化膜を作成した。
作成したフィルムを硬化物層が外側になる様に、各直径の円柱に巻き付けて、フィルムにクラックが入った時の円柱の直径を記録した。
【0087】
【表1】
【0088】
表1に示された結果より、ハンドリング、樹脂組成の選定に不都合を生じていた、高粘度という課題に対しては、ウレタンアクリレートを得るための活性水素(メタ)アクリレートとして、アルキレンオキサイドを付加(AO変性)したジペンタエリスリトール(メタ)アクリレートを使用する事で解決可能であることが分かった。光感度に関しては、付加mol数が長くなるにつれて、高くなる傾向が見られたが、架橋密度とトレードオフの関係にあり、付加mol数4が好適であった。
【0089】
屈曲性に関しては、多官能(メタ)アクリレートを反応性成分に用いた場合、架橋密度が高く、剛直なフィルムになる事から、柔軟性を欠いた屈曲性に乏しいフィルムであったが、AO変性したジペンタエリスリトール(メタ)アクリレートを反応性成分に用いたウレタンアクリレートは、アルキレンオキサイド鎖(AO部分)が2重結合間のスペーサーとしての働きを示し、フィルム基材における、コーティング層として、割れる事なく高い追従性を示す可能性が示された。
【0090】
カール性、密着性は、密着性が出にくいPET基材における実施例において、付加mol数の増大と共に密着性、カール性が改善されている事から、AO変性する事で2重結合間の硬化収縮が緩和され、残存内部応力による密着性低下、フィルム変形が緩和されていると推察される。硬化皮膜の鉛筆硬度に関しては、架橋密度の低下から、付加mol数が多くなるに連れて低下することが分かったが、4molまでは硬度を損なうことなく、低粘度という特徴を発揮する事がわかった。これは、その他の、耐擦傷性、耐スチールウール性、耐汚染性の評価項目にも言えることである。
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上説明した通り、本発明の上記一般式(I)及び(II)で示される、AO付加モル数を最適化したアルキレンオキサイド変性ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレートを反応性成分として有するウレタンアクリレートは、光感度、希釈性に優れた低粘度を示し、かつ硬化物は高い屈曲性を有しており、低硬化収縮かつ高硬度である。そのため、ジペンタエリスリトール、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等に代表される多官能アルコールの(メタ)アクリレートを配合、もしくは、反応性成分としてウレタンアクリレート化していた反応性組成物を、より低粘度化しつつ、硬化物の物性を大きく向上することが可能である。従って、ドライフィルムレジスト、着色レジスト、黒色レジスト、半導体用レジストなどのレジスト樹脂組成物、歯科などの医療用樹脂組成物、塗料・コーティング用樹脂組成物、印刷用インク組成物、フィルムコーティング、ブラックマトリックス、フォトスペーサー等の用途に好適に用いることが可能であり、特にハードコートの用途において優れた特性を生かす事が期待される。