(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6124915
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】補機システムおよび補機システムを運転する方法
(51)【国際特許分類】
B60K 25/02 20060101AFI20170424BHJP
F16D 48/02 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
B60K25/02
F16D48/02 640Z
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-543899(P2014-543899)
(86)(22)【出願日】2012年11月29日
(65)【公表番号】特表2015-500762(P2015-500762A)
(43)【公表日】2015年1月8日
(86)【国際出願番号】EP2012074011
(87)【国際公開番号】WO2013079625
(87)【国際公開日】20130606
【審査請求日】2015年11月26日
(31)【優先権主張番号】102011119769.2
(32)【優先日】2011年11月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル−ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr−Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】イェアク メラー
【審査官】
沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭64−080728(JP,A)
【文献】
特開昭61−182424(JP,A)
【文献】
特開2003−063262(JP,A)
【文献】
実開平05−077542(JP,U)
【文献】
特開平07−127670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 25/00−28/16
F16D 25/00−39/00
F16D 48/00−48/12
B60W 10/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用車(12)の補機システム(10)であって、
−商用車(12)の原動機(14)によって機械的に駆動される補機(16)と、
−原動機(14)の機械的な駆動力を補機(16)に伝達する結合エレメントと、
−該結合エレメントを介して補機(16)に伝達される駆動力を中断するためのクラッチ(20)と、
を備え、
−補機システム(10)がさらに少なくとも1つの軸受け(22,24,26,28,30)を有し、該軸受けが、原動機(14)のオイル循環路(32)を介してオイルによって潤滑されるようになっている、
商用車(12)の補機システム(10)を運転する方法において、
−原動機(14)の運転開始後に所定の時間Δtが経過した場合および/または前記オイル循環路(32)内の所定の最低オイル圧が得られたと同時に所定の最低オイル温度が得られたまたは所定のオイル粘度が下回れた場合に、クラッチ(20)を制御信号によって締結することを特徴とする、商用車の補機システムを運転する方法。
【請求項2】
前記オイル循環路(32)内の前記最低オイル圧が下回られる場合には、前記制御信号に基づいて締結されたクラッチ(20)を解放し、かつ解放状態に保持する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
クラッチ(20)を、原動機(14)の運転開始前に解放する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
クラッチ(20)の解放前に、クラッチ(20)の解放が可能であるかどうかをチェックする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
商用車(12)の補機システム(10)であって、
−商用車(12)の原動機(14)によって機械的に駆動される補機(16)と、
−原動機(14)の機械的な駆動力を補機(16)に伝達する結合エレメントと、
−該結合エレメントを介して補機(16)に伝達される駆動力を中断するためのクラッチ(20)と、
を備え、
−該補機システム(10)がさらに少なくとも1つの軸受け(22,24,26,28,30)を有し、該軸受けが、原動機(14)のオイル循環路(32)を介してオイルによって潤滑されるようになっている、
商用車(12)の補機システム(10)において、
−原動機(14)の運転開始後に所定の時間Δtが経過した場合および/または前記オイル循環路(32)内の所定の最低オイル圧が得られたと同時に所定の最低オイル温度が得られたまたは所定のオイル粘度が下回れた場合に、クラッチ(20)を制御信号によって締結するために調整されている制御装置(34)が設けられている、
ことを特徴とする、商用車の補機システム。
【請求項6】
前記制御装置(34)は、前記オイル循環路(32)内の前記最低オイル圧が下回られている場合には、前記制御信号に基づいて締結されたクラッチ(20)を解放し、かつ解放状態に保持するために調整されている、請求項5記載の補機システム。
【請求項7】
前記制御装置(34)は、クラッチ(20)を原動機(14)の運転開始前に解放するために調整されている、請求項5または6記載の補機システム。
【請求項8】
前記制御装置(34)は、クラッチ(20)の解放前に、クラッチ(20)の解放が可能であるかどうかをチェックするために調整されている、請求項7記載の補機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用車の補機システム(Aggregatsystem)であって、商用車の原動機によって機械的に駆動される補機(Aggregat)と、原動機の機械的な駆動力を補機に伝達する結合エレメントと、該結合エレメントを介して補機に伝達される駆動力を中断するためのクラッチと、を備え、補機システムがさらに少なくとも1つの軸受けを有し、該軸受けが、原動機のオイル循環路を介してオイルによって潤滑されるようになっている、商用車の補機システムを運転する方法に関する。
【0002】
本発明はさらに、商用車の補機システムであって、商用車の原動機によって機械的に駆動される補機と、原動機の機械的な駆動力を補機に伝達する結合エレメントと、該結合エレメントを介して補機に伝達される駆動力を中断するためのクラッチと、を備え、補機システムがさらに少なくとも1つの軸受けを有し、該軸受けが、原動機のオイル循環路を介してオイルによって潤滑されるようになっている、商用車の補機システムに関する。
【0003】
商用車は、一般に、商用車の原動機を用いて直接的または間接的に駆動される多数の補機を有する。この場合、商用車の原動機は同時に、商用車の推進のために利用されるエネルギをも供給する。原動機から補機へのできるだけ簡単なエネルギ伝達を保証するために、補機は一般に原動機のすぐ近くに配置される。軸受け部の潤滑、たとえば原動機から補機へのエネルギ伝達のために使用される、たとえばシャフトおよび/または歯車として形成されていてよい結合エレメントの潤滑は、便宜上、原動機のオイル循環路を用いて実現されていてよい。このオイル循環路は既に、原動機自体に存在する既存の軸受け部を、公知の形式で潤滑する。この目的のために、原動機のオイル循環路は補機および/または該補機を駆動する結合エレメントにまで拡張されていてよい。
【0004】
この方式において問題になるのは、オイル循環路の流入路および流出路を、結合エレメントおよび/または補機の軸受け部にまで延長させることである。なぜならば、拡張されたオイル循環路の内部でのオイル循環の形成は、流入路および流出路における延長された流路に基づき、比較的長い時間を必要とするからである。このことは、原動機の運転開始時に結合エレメントおよび/または補機の軸受け部が、十分に潤滑されることなしに運動させられてしまうことを招く恐れがある。軸受けのこのような「乾いた」運動により、駆動された補機の高められた摩耗が生ぜしめられる恐れがある。このような摩耗は、補機システムの、時間的に十分に潤滑されないで運動させられた軸受けの増幅された摩滅に現れる。
【0005】
本発明の根底を成す課題は、このような摩耗を減少させることである。
【0006】
この課題は、独立形式の請求項に記載の特徴により解決される。
【0007】
本発明の有利な実施態様および改良形は、従属形式の請求項から明らかとなる。
【0008】
冒頭で述べた方法は、本発明によれば、原動機の運転開始後に所定の時間Δtが経過した場合および/または前記オイル循環路内の所定の最低オイル圧が得られた場合に、クラッチを制御信号によって締結することにより改良される。こうして、軸受けの十分な潤滑が確保された後でしか軸受けの運動または負荷を行うことができない。このことは、クラッチの制御された、時間的に遅延された締結により実現され得る。この場合、クラッチは原動機の運転開始から所定の時間Δtが経過した後でしか締結されない。これに対して択一的または付加的に、オイル循環路内のオイル圧の測定によっても、摩耗に対する軸受けの保護が実現され得る。オイル循環路内のオイル圧は、クラッチが制御信号によって締結される前に、所定の最低オイル圧を上回らなければならない。両手段は、軸受けの運動または軸受けの負荷が行われる前に、補機システムの、こうして保護された軸受けへのオイルの十分な供給を確保する。このことは、軸受けにおいて生じる摩耗を減少させる。補機システムに存在する軸受けは、たとえば2つの部分が互いに対して回転運動させられるような軸受け装置であってよい。軸受けは、たとえば補機に、または補機の駆動のために使用される結合エレメント、たとえばシャフトおよび/または歯車、またはクラッチに配置されていてよい。軸受けのための特別な例は、補機システムの特別な構成と関連して明示的に記載されている。軸受けは、常時、原動機と連結されていてよいか、またはクラッチにより原動機から連結解除可能であってよい。両事例において、軸受けの負荷は、駆動される補機の始動によって特に大きくなるので、補機の始動時では十分な潤滑が特に重要である。オイルを用いた潤滑としては、特にオイル膜の形成が挙げられる。オイル膜は、軸受け内の摩耗を減少させるために、軸受け内で互いに対して運動させられる2つの部分を互いに分離する。「原動機の運転開始」とは、不活性な停止させられた状態からの、原動機のオイル循環路内での圧力形成を伴う原動機の始動を意味する。したがって、運転開始されていない原動機は休止状態にあるので、原動機の個々の構成要素はその互いに相対的な位置を変化させない。原動機の運転開始のための時点としては、商用車の点火による信号「点火オン」の発生、原動機によるアイドリング回転数の達成または別の適当なかつ特徴的な判断基準であってよい。
【0009】
有利な実施態様では、オイル循環路内の前記最低オイル圧が下回られる場合には、前記制御信号に基づいて締結されたクラッチを解放し、かつ解放状態に保持することが有利である。このことは、やはり不要な軸受け摩耗を回避するために役立ち、そしてたとえば乾燥した連結過程または不十分にしか潤滑されていない連結過程による湿式クラッチの過熱をも阻止することができる。すなわち、クラッチの自動的な解放および解放保持により、潤滑が不十分な状態での軸受けの運動または負荷が阻止され得るので、軸受けに生じる摩耗が減じられる。オイル圧は、補機システムの運転時でも、たとえばオイル消費量が、商用車に設けられた別のコンポーネントによって変えられると、突発的に所定の最低値よりも下にまで低下する恐れがある。
【0010】
これに関連して、本発明の別の実施態様では、前記最低オイル圧が得られると同時に、所定の最低オイル温度または所定の最低オイル粘度が得られなければならない。オイル圧と関連してオイル温度を考慮することは、十分なオイル圧が得られているが、しかしオイル温度が低過ぎ、ひいてはオイルの粘度が高いことに基づき、このオイル圧が、潤滑したい軸受けへの実際のオイル流入をもたらさないことを回避するための安全防護のために役立つことができる。このような現象は、特に、商用車における特定の使用時間後によく認められるような、煤または別の粒子で汚染されたオイルにおいて生じ得る。
【0011】
本発明のさらに別の有利な実施態様では、クラッチを、原動機の運転開始前に解放することが有利である。安全性の理由から、クラッチが、締結された休止位置を有することが規定されている場合がある。このことは、停車された商用車において、原動機の運転開始時に潤滑が不十分である状態で、補機システムの軸受けが一緒に運動させられて、高められた摩耗が生ぜしめられる結果を招く恐れがある。したがって、原動機の運転開始前にクラッチを解放された状態に変えることが、軸受けに生じる摩耗を減少させるための前提条件となり得る。
【0012】
本発明のさらに別の有利な実施態様では、クラッチの解放前に、クラッチの解放が可能であるかどうかをチェックする。クラッチの解放が実際に可能であるのかどうかをチェックすることは、明確に規定された解放された運転状態と、明確に規定された締結された運転状態との間の中間状態へのクラッチの切換を阻止する。たとえば、ニューマチック式に操作されるクラッチでは、クラッチを解放するためには十分でない供給圧が存在する恐れがある。このような供給圧は、クラッチを、締結された運転状態から解放された運転状態へ切り換えるためには不十分である。それにもかかわらず、クラッチの解放が開始されると、クラッチは完全には解放されないので、規定されていない中間状態が生じ、このような中間状態では、クラッチ内部での高められた摩擦が生じる恐れがある。このような中間状態は、高い摩擦の発生に基づき、極めて短い時間でクラッチを破損または破壊して、故障させてしまう恐れがある。したがって、クラッチの解放が可能であるのかどうかのチェックは、補機システムを摩耗や破損から保護する。チェックの結果、クラッチが解放され得ることが判った場合、これによってクラッチの解放が可能となるか、またはクラッチの解放が生ぜしめられる。
【0013】
冒頭で述べた形式の補機システムは、本発明によれば、原動機の運転開始後に所定の時間Δtが経過した場合および/または前記オイル循環路内の所定の最低オイル圧が得られた場合に、クラッチを制御信号によって締結するために調整されている制御装置が設けられていることにより改良される。
【0014】
従属形式の請求項に記載の方法の利点および特別な特性は、補機システムの枠内でも同様に実現され得る。
【0015】
したがって、補機システムの有利な実施態様および特別な特性は、従属形式の装置請求項から同様に得られ、これらに関連して記載されている。
【0016】
たとえば、本発明の有利な実施態様では、前記制御装置は、前記オイル循環路内の前記最低オイル圧が下回られている場合には、前記制御信号に基づいて締結されたクラッチを解放し、かつ解放状態に保持するために調整されている。
【0017】
さらに別の有利な実施態様では、前記最低オイル圧が得られると同時に、所定の最低オイル温度または所定の最低オイル粘度が得られなければならない。
【0018】
また、前記制御装置は、クラッチを原動機の運転開始前に解放するために調整されていると有利になり得る。
【0019】
同じく、前記制御装置は、クラッチの解放前に、クラッチの解放が可能であるかどうかをチェックするために調整されていることが有利になり得る。
【0020】
以下に、本発明の有利な実施形態を図面につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】補機システムを運転するためのフローチャートである。
【
図2】第1の補機システムを備えた商用車を示す概略図である。
【
図4】補機システムの制御を示す第1の記号図である。
【
図5】補機システムの制御を示す第2の記号図である。
【0022】
以下の図面において、同一の構成部分または同形式の構成部分は同じ符号で示されている。
【0023】
図1には、補機システムを運転するためのフローチャートが示されている。出発点はステップ100「原動機オフ」(原動機遮断)である。原動機(駆動エンジン)は、補機システムの補機を機械的に駆動すると同時に商用車を駆動するために働くことができる。運転状態「原動機オフ」は、たとえば停車された商用車において、その原動機が完全に停止されている場合に生じ得る。原動機がオフであると、すなわち原動機が停止されていると、補機システムのクラッチも締結されていてよい。補機システムのクラッチは安全性の理由から、締結された休止位置を有していてよく、すなわち休止位置において締結された状態にあってよく、これによりたとえばクラッチ制御が故障した場合でも、停車された商用車の運転開始が可能となる。続くステップ102では、信号「点火オン」が存在しているかどうかがチェックされ得る。「No(いいえ)」の場合(「ステップ102−No」)、一般的な運転状態については何も変化しない。なぜならば、ステップ100に戻されるからである。原動機は停止されたままであり、これに相応して補機システム自体もアクティブな状態ではない。信号「点火オン」が存在している場合(ステップ102−Yes)、ステップ104において、クラッチの解放が可能であるかどうかがチェックされ得る。信号「点火オン」は、原動機の運転開始を導入するいかなる信号であってもよく、たとえば商用車の点火の操作により発生され得る電気的なパルスであってよい。補機システムの一部であるクラッチは、たとえばニューマチック式に操作可能であってよい。クラッチの解放はこの場合には、十分な供給圧が存在する場合にのみ信頼性良く行なわれ得る。クラッチを解放するための十分な供給圧が存在していると、クラッチの解放が可能となり(ステップ104−Yes)、引き続きステップ106においてクラッチの解放が実施され得る。ステップ106「クラッチ解放操作」においては、クラッチを解放するための信号が生じるか、もしくはクラッチの解放が行われ得る。その結果、引き続きステップ108へ進むことができる。ステップ108は補機システムのクラッチの解放状態を示す。ステップ104においてクラッチの解放が可能でないことが判ると(「ステップ104−No)、ステップ116へ進むことができる。なぜならば、クラッチは締結されたままであり、解放されないことが望ましいからである。たとえば、クラッチがニューマチック式に操作可能である場合、クラッチの解放は、供給圧が不十分である場合には不可能となり得る。不十分な供給圧により、クラッチを完全に解放するために必要となる力が形成され得ない。その場合、クラッチはたしかに、締結された切換状態からは脱せられるが、しかし完全に解放した切換状態へ切り換えられるわけではない。この規定されていない中間状態は、クラッチの運動時に、クラッチの、摩擦および熱に起因した高い摩耗により特徴付けられている。この摩耗はクラッチを短時間で破損させてしまう恐れがある。したがって、ステップ116はクラッチの締結された状態を示す。
【0024】
ステップ108、すなわちクラッチの解放された状態およびステップ116、すなわちクラッチの締結された状態を起点として、それぞれステップ110に進むことができる。ステップ110では、信号「点火オフ」が存在しているかどうかがチェックされる。信号「点火オフ」により、たとえば補機システムを駆動する原動機を停止させることができる。信号「点火オフ」は、信号「点火オン」とは異なる独立した信号を成すか、または信号「点火オン」の欠如により規定されていてもよい。信号「点火オフ」が存在していると(ステップ110−Yes)、ステップ100「原動機オフ」、すなわち最初の出発点に進むことができる。その場合、クラッチはやはり再びその休止位置をとることができる。特に、クラッチがまだ休止位置にない場合に、クラッチは締結されていてよい。信号「点火オフ」が存在しない場合(ステップ110−No)、ステップ112において、前条件が満たされているかどうかがチェックされ得る。前条件とは、たとえば信号「点火オン」による原動機の運転開始から所定の時間Δtが経過したことであってよい。択一的または付加的に、前条件は、原動機のオイル循環路内に所定の最低オイル圧が存在することであってもよい。所定の最低オイル圧は、たとえばオイル循環路に設けられた圧力センサによって測定され得る。最低オイル圧に対して付加的に、所定の最低オイル温度または所定の最低オイル粘度が前条件として設定されていてもよい。オイルの温度および粘度は、同じく原動機のオイル循環路に設けられて適当なセンサによって簡単に測定され得る。オイルの温度および/または粘度が既にCANバス上に信号として提供されることも可能である。この信号は、CANバスへの接続部を備えた補機システムの制御装置によって読み込むことができる。
【0025】
前条件が満たされていると(ステップ112−Yes)、ステップ114においてクラッチが締結され得る。ステップ114を起点として、ステップ116に進むことができる。ステップ116は、クラッチの締結された状態を示す。
【0026】
個々のステップの時間的な経過、特にステップ102における信号「点火オン」の検出およびステップ106におけるクラッチの解放操作は、原動機が運転される前にクラッチが解放されるように時間的に原動機の運転開始に合わせて調整されていてよい。こうして、軸受けの十分な潤滑が確保される前に補機システム内の軸受けが運動させられるか、または負荷されることが阻止される。これに関連して、ステップ104における、クラッチの解放が可能であるのかどうかのチェックにより、クラッチは規定されていない運転状態をとることができなくなる。特に、クラッチが、締結された位置と解放位置との間の中間位置をとり得ることが阻止される。こうして、クラッチにおける高い発熱を招く恐れのある、著しく高められた摩擦の発生が阻止され得る。基本的に、前条件が満たされていないと(ステップ112−No)、クラッチは解放され得る。こうして、軸受けの潤滑が不十分である場合には、補機システムが、摩耗による故障に対して保護され得る。ステップ112−Yesの際に、ステップ104と同様にクラッチの解放を実施することも考えられる。
【0027】
図2には、第1の補機システムを備えた商用車が示されている。図示の補機システム10は、原動機14により駆動される商用車12の構成要素である。原動機14は、補機システム10の構成要素としては描かれておらず、補機システム10には組み込まれていない。原動機14は、結合エレメント、たとえばシャフト18を介して補機16を機械的に駆動することができる。図示の補機16は、たとえば圧縮空気を発生させることのできるコンプレッサを示すことができる。原動機14は、複数の歯車52を介してシャフト18にトルクを伝達することができる。これにより、補機16に設けられたクランクシャフト54を運動させることができる。シャフト18の存在はオプショナル(選択的)であり、択一的な別の実施形態(図示しない)では、シャフト18を不要にすることもできる。その場合、歯車52のうちの少なくとも1つの歯車は、直接にクラッチに取り付けられていてよく、このような択一的な実施形態では、この歯車が結合エレメントとみなされ得る。結合エレメントは同じく、シャフト18と歯車52とを包含するように形成されていてよい。
【0028】
原動機14と補機16との間での機械的な力伝達を遮断するためには、クラッチ20が設けられていてよい。このクラッチ20は、たとえばクランクシャフト54をシャフト18から機械的に分離することができる。クラッチは直接にまたは間接的に制御装置34を介して制御可能であってよい。クラッチ20は、たとえばニューマチック式に操作可能であってよいので、制御装置34は、クラッチ20を解放または締結するために、ニューマチック式の切換弁を適宜に操作する。制御装置34によるクラッチ20の制御は、
図2には概略的にしか示されていない。制御装置34は、たとえば補機16に後置された、つまり力伝達経路で見て補機16の下流側に接続された圧縮空気処理装置(エアトリートメント装置)の制御装置34であってよい。制御装置34は圧縮空気処理と関連して別の機能、たとえばエアドライヤ(図示しない)の再生機能を制御することができる。制御装置34は、原動機14の原動機制御を制御することもできる。補機システム10は、シャフト18を支承するための第1の軸受け22と第2の軸受け24とを有していてよい。さらに、補機システム10は、クランクシャフト54と、このクランクシャフト54に場合によっては可動に配置された部分を支承するための第3の軸受け26と第4の軸受け28と第5の軸受け30とを有していてよい。補機システム10内部での前記軸受け22,24,26,28,30の、上記構成とは異なる配置または使用も可能である。たとえば上で既に述べた、シャフト18なしに実現される択一的な別の実施形態(図示しない)の場合には、第1の軸受け22がクラッチ20内に組み込まれていてよく、そして第2の軸受け24を不要にすることができる。
【0029】
補機システム10では、半径方向および/または軸方向に負荷される2種類の軸受け22,24,26,28,30が存在していてよい。このことは、クラッチ20に前置された第1の軸受け22および第2の軸受け24であり、これらの軸受け22,24は、原動機14が運転状態である場合、常に一緒に回転する。その他の軸受け、すなわち第3の軸受け26、第4の軸受け28および第5の軸受け30は、クラッチ20に後置されている。したがって、これらの軸受け26,28,30は、補機16が接続されている場合にしか一緒に回転しない。特にクラッチ20の締結時および補機16の始動時における接続過程の際には、軸受け22,24,26,28,30において接触による極めて高い動的な負荷が生じ、ひいては軸受け22,24,26,28,30の定位置固定の部分と可動の部分との間の混合摩擦が生じる。特に既に、存在するオイル中の高められた汚れ含量が存在する場合に、混合摩擦領域の通過や直接的な接触は不都合となる。なぜならば、軸受け22,24,26,28,30の高められた摩耗が生じ得るか、または頑丈性を改善する相応する手段が必要となるからである。このような手段は極めてコストがかかる恐れがある。オイルの最大3容量%を有する汚れ含量は、異常とは云えない。この場合、汚れとしては主として煤が生じる。しかし、十分な潤滑が行われれば、著しく汚染されたオイルにおいても、摩耗は大幅に減少され得る。
【0030】
さらに、前記構成では、特に第2の軸受け24と第3の軸受け26(両者とも直接にクラッチ20に隣接している)は、クラッチ20の操作の瞬間に、衝撃的に軸方向に負荷される。この場合にも、既に述べた混合摩擦は十分な潤滑により回避され得る。
【0031】
図3には、補機システムの概略図が示されている。
図3に示した補機システム10は、補機16、シャフト18およびクラッチ20の他に、特にオイル循環路32を示している。このオイル循環路32は原動機14を起点として、オイルポンプ40によって流入路36にオイルを供給する。オイルポンプ40はオイル溜め42からオイルを吸い込む。オイルポンプ40とオイル溜め42とは、原動機14の、組み込まれた構成要素として図示されている。なぜならば、原動機14は通常、オイル循環路32なしでは永続的に機能し得ないからである。流入路36を起点として、オイルは第1の軸受け22と第2の軸受け24と第3の軸受け26と第4の軸受け28と第5の軸受け30とに案内され得る。クラッチ20には、同じく流入路36を起点としてオイルが供給され得る。過剰オイルは、軸受け22,24,26,28,30を起点として戻し路38を介してオイル溜め42内に戻ることができる。クラッチ20にもオイルが供給される場合、クラッチ20からも過剰オイルが戻し路38を介してオイル溜め42内に戻ることができる。図示の並列式の供給は例示的に挙げたものであるに過ぎない。潤滑のために使用されるオイル循環路32では、択一的には潤滑のための直列式の供給または直列式の供給と並列式の供給とからの混合形を設定することもできる。流入路36には、たとえば圧力センサ44が配置されていてよい。たとえば、原動機14に既に存在する既存のオイル圧センサ(図示しない)によって、相応するオイル圧信号が読み取られ得る場合、または相応するオイル圧信号がCANバス上に既に存在していて、読み取られ得る場合には、圧力センサ44を不要にすることができる。必要に応じて、
図3には図示されていない別の圧力センサがオイル循環路32の種々異なる個所に設けられていてよいか、または図示の圧力センサ44をオイル循環路32内で移動させることができる。さらに、1つまたは複数の温度センサを、オイル循環路32の種々異なる個所に配置することができる。また、種々異なる個所に、オイルポンプにより圧送されたオイルの粘度を測定するための1つのセンサまたは複数のセンサを設けることも可能である。オイルの温度および粘度を測定するためのセンサは、特に流入路36の、既に圧力センサ44が配置されている区分に配置されていてよい。相応するオイル案内部がオイル循環路32内に組み込まれると、オイル循環路32の流入路36は、さらに必要に応じて、補機16を冷却するために設けられていてよい。
【0032】
流入路36を経由するオイル供給路は、たとえば補機16の主オイル通路と原動機14の原動機オイルギャラリ(エンジンオイルギャラリ)との間の接続路によって形成され得る。すなわち、軸受け22,24,26,28,30におけるオイル圧形成と、原動機14における別の軸受け個所への供給との間に関連性が生じる。これにより、特に寒冷時では、原動機14のスタートから少しの時間を置いた後でしか十分なオイル流が提供され得ない。全ての軸受け22,24,26,28,30の十分な潤滑を保証し、かつ上で説明した、軸受け22,24,26,28,30における有害な摩耗現象をできるだけ少なく抑えるためには、補機16、たとえばコンプレッサは、十分なオイル流が生じた後でしか接続されないことが望ましい。クラッチ20に同じく流入路36を起点としてオイルが供給される場合、付加的に、クラッチにおける十分なオイル流にも留意することが望ましく、これにより、この個所においても前記摩耗現象ができるだけ少なく抑えられる。
【0033】
オイルポンプ40からの軸受け22,24,26,28,30および場合によっては同じくオイル循環路32に接続されたクラッチ20の間隔が互いに異なることに基づき、個々の軸受け22,24,26,28,30およびクラッチ20に提供されるオイル圧は、オイルポンプに対する間隔と共に低下する。この圧力低下は、特にオイル循環路32による直列式の供給において増幅されて生じ得る。このことは、圧力センサ44の位置決めの際、時間間隔Δtの設定の際および最低オイル圧の設定の際に、適当に考慮され得る。
【0034】
図4には、補機システムの制御を示す第1の記号図が示されており、
図5には、補機システムの制御を示す第2の記号図が示されている。
図4および
図5には、入力量50が図示されている。これらの入力量50は制御装置34に供給される。供給された入力量50の値に関連して、制御装置34は制御信号「クラッチ解放操作」46または制御信号「クラッチ締結操作」48を発生させることができる。この制御信号により、クラッチ20は解放または締結されるので、補機16はシャフト18から機械的に分離される。入力量は、たとえばオイル圧、オイル温度、信号「点火オン」および/またはクラッチが圧縮空気操作可能である場合にはクラッチ操作のための回路圧を包含していてよい。原動機パラメータであるオイル圧およびオイル温度へのアクセスは、たとえば商用車のCANバスへの接続を介して保証され得る。また、補機システムに、入力量を測定するための固有のセンサを設けることも考えられる。得られた入力量または検出された入力量に関連して、クラッチ20の操作は、たとえば動的または静的に原動機の運転開始時に規定され得る。遅延の動的な規定は、たとえばオイル圧に基づいて行われ得る。静的な規定は、たとえば設定可能な時間間隔Δtに基づいて行われ得る。理想的には、入力量50の処理および制御信号46,48の発生および送信は、既に商用車に存在する制御装置34、たとえば電子式の圧縮空気処理システムの制御装置によって実施され得る。圧縮空気処理システムでは、既に汎用的に幾つかのソフトウェアサポートされた機能が形成され、これらの機能は圧縮空気処理システムの知識を必要とする。しかし原理的には、必要とされる入力量を考慮しかつ相応する制御信号を発生させることができるのであれば、別の制御装置を使用することもできる。
【0035】
オイル圧のための下限値としては、たとえば1バールを設定することができる。その場合、クラッチの締結を可能にするためには、この最低オイル圧がオイル循環路内で超過されなければならない。オイル温度のための下限値としては、たとえば−30℃を設定することができる。クラッチの締結を可能にするためには、オイル温度のためのこの下限値が、たとえば1バールの最低オイル圧に加えて、超過されなければならない。オイル圧に加えてオイル温度を考慮することは選択的である。オイル温度に対して択一的に、直接にオイルの粘度を求めることもできる。オイルの粘度はオイル温度と直接に相関されている。粘度を考慮することも選択的である。
【0036】
オイル圧および場合によってはオイル循環路からの別の特性値の代わりに、解放されたクラッチが締結されてよいとみなされるまで、原動機の運転開始から規定可能な時間間隔Δtが経過することを待つこともできる。この手段は、たとえば原動機パラメータであるオイル圧やオイル温度へのアクセスが存在しない場合に選択され得る。前記時間間隔Δtは、接続遅延に相当し、この接続遅延は原動機のスタート過程に関する固定の値またはオイル循環路内での圧力形成の開始時における別の重要でかつ特徴的な過程に関する固定の値として設定され得る。クラッチの解放は、クラッチがその休止位置で締結されている場合に、原動機の運転開始前の信号「点火オン」に基づいても行なわれ得る。このことは既に最低オイル圧の使用と関連して説明した通りである。接続遅延は、まず軸受けへの実際のオイル流入を保証するための安全防護のために役立つ。実際のオイル流入は、経験によれば、原動機のスタートから最大30秒後にしか開始し得ない。車両運転者の乗り心地要求に基づき、時間間隔Δtのために選択された遅延時間は、オイル供給の観点から理想的である時間よりも短く設定され得る。たとえば前記遅延時間は30秒の代わりに、僅か15秒であってもよい。この短縮された時間の場合でも、摩耗はまだ著しく減少され得る。
【0037】
入力量50は、信号「点火オン」を包含していてもよい。信号「点火オン」が存在していると、まずこのことが可能であれば、直ちにクラッチが解放され得る。たとえば、このためには、クラッチが圧縮空気操作可能である場合には、圧縮空気貯え容器内の十分な供給圧が必要となり得る。最低切換圧は、たとえば6.5バールであってよい。クラッチを解放するためには、提供された供給圧が最低切換圧を超過しなければならないことが規定されていてよい。
【0038】
上記説明、図面ならびに特許請求の範囲に記載されている本発明の特徴は、それぞれ単独の形でも、互いに任意に組み合わされた形でも、本発明を実現するために重要となり得る。
【符号の説明】
【0039】
10 補機システム
12 商用車
14 原動機
16 補機
18 シャフト
20 クラッチ
22 第1の軸受け
24 第2の軸受け
26 第3の軸受け
28 第4の軸受け
30 第5の軸受け
32 オイル循環路
34 制御装置
36 流入路
38 戻し路
40 オイルポンプ
42 オイル溜め
44 圧力センサ
46 制御信号「クラッチ解放操作」
48 制御信号「クラッチ締結操作」
50 入力量
52 歯車
54 クランクシャフト
100 原動機オフ
102 信号「点火オン」?
104 クラッチの解放可能?
106 クラッチ解放操作
108 クラッチ開放状態
110 信号「点火オフ」?
112 前条件満たされている?
114 クラッチ締結操作
116 クラッチ締結状態