(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記成功率演算部は、前記無線通信期間において、前記無線通信部と前記外部機器との間での無線通信の成否を確認し、無線通信が正確に行われた回数から通信成功率を演算する請求項3に記載の誘導加熱調理器。
前記成功率演算部は、前記無線通信期間において、前記外部機器から一定のタイミングで送信される制御信号が前記無線通信部において正確に制御信号が受信された回数から通信成功率を演算する請求項3又は4に記載の誘導加熱調理器。
前記無線通信部は、前記外部機器から誘導加熱調理器の投入火力又は調理メニューの操作に関する制御信号を無線通信で受信する請求項1〜6のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。
前記無線通信部は、スマートフォンもしくはタブレットの情報端末、リモコン、他の家電機器、もしくは電力管理装置のいずれかからなる前記外部機器と無線通信を行うものである請求項1〜9のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
以下、図面を参照しながら本発明の誘導加熱調理器の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器を示す分解斜視図である。
図1の誘導加熱調理器100は、本体Bと、本体Bの上部に設けられ、上部に鍋などの被加熱物5が載置される天板4を有している。天板4は、全体が耐熱強化ガラスや結晶化ガラス等の赤外線を透過する材料で構成されており、本体Bの上面開口外周との間にゴム製パッキンやシール材を介して水密状態に固定される。天板4には、被加熱物5を誘導加熱するための加熱口として、第一の加熱口1と、第二の加熱口2と、第三の加熱口3とを備えている。各加熱口1〜3には、それぞれ鍋の大まかな載置位置を示す円形の鍋位置表示が、塗料の塗布や印刷等により形成されている。
【0014】
誘導加熱調理器100は、各加熱口1〜3に対応して、第一の加熱部11、第二の加熱部12、第三の加熱部13を備えている。第一の加熱部11、第二の加熱部12、及び第三の加熱部13はそれぞれ本体Bの内部であって天板4の下方に設けられており、各々の加熱部は加熱コイル(図示せず)で構成されている。加熱コイルは、略円形の平面形状を有し、絶縁皮膜された任意の金属(例えば銅、アルミなど)からなる導電線を円周方向に巻き付けることにより構成され、高周波電力が各加熱コイルに供給されることにより、誘導加熱動作が行われる。そして、各加熱部11〜13は、それぞれの加熱口1〜3に載置された被加熱物5を誘導加熱する。
【0015】
第一の加熱部11と第二の加熱部12とは本体Bの手前側に左右に並べて設けられており、第三の加熱部13は本体Bの奥側ほぼ中央に設けられている。なお、各加熱口1〜3の配置はこれに限るものではなく、例えば、3つの加熱口1〜3を略直線状に横に並べて配置してもよい。また、第一の加熱部11の中心と第二の加熱部12の中心との奥行き方向の位置が異なるように配置してもよい。また、
図1において3つの加熱部11〜13が設けられているが、少なくとも1つ以上設けられていればよい。
【0016】
天板4には、被加熱物5を加熱する際の投入火力(投入電力)又は調理メニュー(湯沸しモード、揚げ物モード等)等を設定するための操作部40a〜40cが第一の加熱部11、第二の加熱部12及び第三の加熱部13毎にそれぞれ設けられている。また、天板4には、報知手段として、誘導加熱調理器100の動作状態、操作部40a〜40c及び外部機器200からの入力内容・制御内容、無線通信中の外部機器200に関する情報、無線通信の有無等を表示する表示部41a〜41cが第一の加熱部11、第二の加熱部12及び第三の加熱部13毎にそれぞれ設けられている。
【0017】
なお、
図1において操作部40a〜40c及び表示部41a〜41cは、各加熱口1〜3毎に設けられている場合について例示しているが、複数の加熱口1〜3を一括して1つの操作部及び表示部が設けられていてもよい。また、操作部40a〜40cと表示部41a〜41cとは、別々に設けられていてもよいし、例えばタッチパネル等により一体的に設けられていてもよい。
【0018】
誘導加熱調理器100は、第一の加熱部11、第二の加熱部12、及び第三の加熱部13の加熱コイルに高周波電力を供給する駆動回路50と、駆動回路50を含め誘導加熱調理器100全体の動作を制御するための制御装置45とを備える。
【0019】
図2は、
図1の誘導加熱調理器100における駆動回路50の一例を示す回路図である。なお、
図2では加熱部11に対応する駆動回路50について例示しているが、駆動回路50は加熱部11〜13毎に設けられている。この場合、各駆動回路50の回路構成は同一であってもよいし、加熱部11〜13毎に変更してもよい。
図2に示すように、駆動回路50は、直流電源回路22と、インバータ回路23と、共振コンデンサ24aとを備える。
【0020】
直流電源回路22は、ダイオードブリッジ22a、リアクタ22b、平滑コンデンサ22cと、を備え、交流電源21から入力される交流電圧を直流電圧に変換して、インバータ回路23へ出力する。
【0021】
インバータ回路23は、スイッチング素子23a、23bが直流電源回路22の出力に直列に接続された、いわゆるハーフブリッジ型のインバータであり、フライホイールダイオードとしてダイオード23c、23dがそれぞれスイッチング素子23a、23bと並列に接続されている。インバータ回路23は、直流電源回路22から出力される直流電力を20kHz〜80kHz程度の高周波の交流電力に変換して、加熱部11と共振コンデンサ24aからなる共振回路に供給する。
【0022】
共振コンデンサ24aは加熱部11に直列接続されており、この共振回路は加熱部11のインダクタンス及び共振コンデンサ24aの容量等に応じた共振周波数を有する。なお、加熱部11のインダクタンスは被加熱物5(金属負荷)が磁気結合した際に金属負荷の特性に応じて変化し、このインダクタンスの変化に応じて共振回路の共振周波数が変化する。
【0023】
そして、加熱部11には数十A程度の高周波電流が流れ、流れる高周波電流により発生する高周波磁束によって加熱部11の直上の天板4上に載置された被加熱物5を誘導加熱する。スイッチング素子23a、23bは、例えばIGBT等のシリコン系からなる半導体で構成されているが、炭化珪素、あるいは窒化ガリウム系材料などのワイドバンドギャップ半導体を用いた構成でもよい。スイッチング素子23a、23bにワイドバンドギャップ半導体を用いることで、スイッチング素子23a、23bの通電損失を減らすことができる。また、スイッチング周波数(駆動周波数)が高周波(高速)になっても駆動回路50の放熱が良好であるため、駆動回路50の放熱フィンを小型にすることができ、駆動回路50の小型化および低コスト化を実現することができる。
【0024】
入力電流検出手段25aは、例えば、交流電源(商用電源)21から直流電源回路22へ入力される電流を検出し、入力電流値に相当する電圧信号を制御装置45へ出力する。コイル電流検出手段25bは、加熱部11と共振コンデンサ24aとからなる共振回路に接続されている。コイル電流検出手段25bは、例えば、加熱部11に流れる電流を検出し、加熱コイル電流値に相当する電圧信号を制御装置45に出力する。
【0025】
図3は、
図2の駆動回路に入力されるスイッチング信号の一例を示すグラフである。
図3のように、スイッチング素子23a、23bはスイッチング周期と呼ばれる繰り返し周期でオン・オフする。オン時間及びオフ時間はそれぞれスイッチング周期の半分の時間であり、スイッチング素子23a、23bがオンするタイミングは180°の位相差があるため、同時にオンすることはない。スイッチング周期が短くなると、スイッチング周期の逆数であるスイッチング周波数が高くなり、加熱部11のインピーダンスが大きくなる。このため、駆動回路50が供給する高周波電流が小さくなり、高周波電力が抑制される。一方、スイッチング周期が長くなると、スイッチング周波数が低くなり、加熱部11のインピーダンスが小さくなる。このため、駆動回路50が供給する高周波電流が大きくなり、高周波電力が上昇する。
【0026】
上記の制御方法は、スイッチング周波数の高さによって高周波電力を制御するため、スイッチング周波数制御と呼ばれている。なお、スイッチング素子23a、23bが同時にオンすると、インバータ回路23が短絡するため、実際の回路ではスイッチング素子23a、23bがともにオフする期間(デッドタイム)を設けるので、オン時間はスイッチング周期の半分の時間より短く、オフ時間はスイッチング周期の半分の時間より長くなる。
【0027】
図4は、
図2の駆動回路に入力されるスイッチング信号の別の一例を示すグラフである。
図4のように、スイッチング素子23a、23bはスイッチング周期と呼ばれる繰り返し周期でオン・オフする。オン時間はスイッチング周期の半分よりも短い時間であり、スイッチング素子23a、23bがオンするタイミングは180°の位相差があるため、同時にオンすることはない。スイッチング素子23a、23bが両方ともオフしている時、インバータ回路23は電力を出力しないため、オン時間を短くすると、駆動回路50が供給する高周波電流が小さくなり、高周波電力が抑制される。オン時間のスイッチング周期に対する比をデューティー比と呼び、上記の制御方法は、デューティー比によって高周波電力を制御するため、デューティー比制御と呼ばれている。
【0028】
図5は、
図1の誘導加熱調理器100における駆動回路50Aの別の一例を示す回路図である。なお、
図5の駆動回路50Aにおいて、
図2の駆動回路50と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。
図5の駆動回路50Aは、
図2のインバータ回路23に対して、スイッチング素子23e、23fと、フライホイールダイオードとしてダイオード23g、23hが追加接続された、いわゆるフルブリッジ型のインバータで構成されている。インバータ回路23は
図2と同様に、直流電源回路22から出力される直流電力を20kHz〜80kHz程度の高周波の交流電力に変換して、加熱部11と共振コンデンサ24aからなる共振回路に供給する。
【0029】
図6は、
図5の駆動回路に入力されるスイッチング信号の一例を示すグラフである。
図6に示すように、スイッチング素子23a、23b、23e、23fはスイッチング周期と呼ばれる繰り返し周期でオン・オフする。オン時間、オフ時間はそれぞれスイッチング周期の半分の時間であり、スイッチング素子23a、23bがオンするタイミングは180°の位相差があるため、同時にオンすることはない。IGBT23e、23fもオンするタイミングに180°の位相差があるため、同時にオンすることはない。スイッチング素子23a、23f、若しくはスイッチング素子23b、23eがともにオンしている期間において、インバータ回路23が電力を供給する。
【0030】
スイッチング素子23a、23eがオンするタイミングに位相差を設けることで、スイッチング素子23a、23f、若しくはスイッチング素子23b、23eがともにオンする期間を決定し、インバータ回路23が供給する電力を制御する。上記の制御方法は、位相差によって高周波電力を制御するため、位相制御と呼ばれている。なお、スイッチング素子23a、23b、若しくは23e、23fが同時にオンすると、インバータ回路23が短絡するため、実際の回路ではスイッチング素子23a、23bまた、23e、23fがともにオフする期間(デッドタイム)を設けるので、オン時間はスイッチング周期の半分の時間より短く、オフ時間はスイッチング周期の半分の時間より長くなる。
【0031】
なお、駆動回路50は、加熱部11に高周波電力を供給するものであれば特に
図2、
図5に示す例に限るものではなく、例えば、一石電圧共振回路などの回路方式等の公知の技術を適用することができる。一石電圧共振回路は
図2のインバータ回路23と同様に、直流電源回路22から出力される直流電力を20kHz〜80kHz程度の高周波の交流電力に変換して、加熱部11と共振コンデンサ24aからなる共振回路に供給する。
【0032】
ここで、制御装置45は、入力電流検出手段25a、コイル電流検出手段25b、操作部40a及び無線通信部6から与えられた信号に応じて、駆動回路50が加熱部11に供給する高周波電力を制御するための信号を送信する。また、制御装置45は、誘導加熱調理器100の動作状態や、操作部40a及び外部機器200からの入力内容・制御内容等を報知する制御信号を無線通信部6に送信する。
【0033】
無線通信部6は、外部機器200と無線通信を行うものであり、無線信号を送受信することができる。具体的には、制御装置45から与えられた制御信号を無線通信により、外部機器200に送信することができる。または、外部機器200から無線通信により受信した制御信号を制御装置45に送信することができる。もしくはこれら両方の動作を行うことができる。
【0034】
無線通信部6は、制御装置45と配線により接続されているが、配線が長いほどノイズの影響を受けやすいため、無線通信部6と制御装置45は近くに配置し、無線通信部6と制御装置45を接続する配線を短くすることが望ましい。無線通信部6は、内部に無線信号を送受信するアンテナ部を有しており、より無線信号を送受信しやすくするため、アンテナ部が天板4の直下となるように配置することが望ましい。
【0035】
外部機器200は、スマートフォン等の無線通信が可能な機器であって、無線通信により、誘導加熱調理器100が被加熱物5を加熱する際の投入火力(投入電力)や調理メニュー(湯沸しモード、揚げ物モード等)を設定する制御信号を送信する機能を有する。または、誘導加熱調理器100の動作状態や、操作部40a〜40c、及び外部機器200からの入力内容・制御内容等を報知する制御信号を受信し、表示する機能を持つ。もしくは、これら両方の機能を有するものである。
【0036】
図7は、
図1の誘導加熱調理器100における制御装置45の一例を示すブロック図であり、
図7を参照して制御装置45について説明する。なお、
図7において、制御装置45が第一の加熱部11を制御する場合について例示しているが、第二の加熱部12及び第三の加熱部13についても第一の加熱部11と同様にそれぞれ制御される。制御装置45は、誘導加熱調理器100全体の動作を制御するものであって、外部機器200と無線通信を行う無線通信部6と外部機器200が無線通信を行う無線通信期間において、駆動回路50が供給する高周波電力を可変する制御を行う。
【0037】
指令演算部45aは、操作部40aへの操作もしくは無線通信部6において受信した制御信号に従い、加熱部11の火力を設定して火力指令を出力するものである。例えば操作部40aまたは外部機器200において、加熱部11の火力が設定された場合、指令演算部45aは、設定された火力に基づいて火力指令を出力する。また、例えば操作部40aまたは外部機器200において所定の調理モードが設定された場合、指令演算部45aは、調理モードの設定内容に従い、調理モードの工程毎に異なる火力指令を出力する。例えば揚げ物モードである場合、指令演算部45aは、保温工程では高火力にする火力指令を出力し、保温工程後の予熱工程では低火力にする火力指令を出力する。
【0038】
通信状態検出部45bは、無線通信部6において外部機器200と無線通信が実行される無線通信期間を検出するものである。すなわち、通信状態検出部45bは、無線通信部6が外部機器200との間で無線通信を行っているか否かを判定し、無線通信部6が外部機器200との間で無線通信を行っている期間を無線通信期間として検出する。
【0039】
駆動制御部45cは、駆動回路50の動作を制御して加熱部11における火力を制御するものである。なお、駆動制御部45cは、火力指令に応じたスイッチング信号(
図3、
図4及び
図6参照)を駆動回路50に出力することにより、駆動回路50から加熱部11へ高周波電力が供給される。駆動制御部45cは、指令演算部45aから出力される火力指令に基づき、スイッチング信号の周波数の制御、オンデューティ比の制御もしくは位相制御を行い、駆動回路50に出力する。
【0040】
さらに、駆動制御部45cは、通信状態検出部45bが無線通信期間を検出したとき、火力指令の高周波電力Pより小さい制限電力LPによる加熱動作が行われるように、駆動回路50を制御する機能を有する。駆動制御部45cには、予め設定された制限電力LPが記憶されており、制限電力LPは加熱部11(加熱コイル)からの漏洩磁束が無線通信に影響を及ぼすことがない大きさに設定されている。なお、駆動制御部45cは、高周波電力Pと制限電力LPとを比較し、高周波電力Pが制限電力LPより小さい場合、制限電力LPへ変更せず、高周波電力Pの供給が継続されるように制御する。これにより、ユーザーの意図に沿った加熱を継続することができる。
【0041】
図8は、
図7の駆動回路から加熱部に供給される加熱コイル電流の一例を示すグラフである。
図8に示すように、無線通信が行われていない無線休止期間において、駆動制御部45cは、指令演算部45aによる火力指令に基づく高周波電力Pが加熱部11に出力されるように制御する。一方、無線通信期間において、駆動制御部45cは、火力指令に基づく高周波電力Pより小さい制限電力LPを供給するように制御し、駆動回路50が供給する高周波電力を抑制する。これにより、加熱部11で発生する漏洩磁束を少なくし、無線信号への加熱部11で発生する漏洩磁束の干渉を抑制することができる。さらに、被加熱物5への加熱は継続されるため、被加熱物5の調理への影響を最小限に抑えることができる。
【0042】
図9は、
図7の駆動回路50から加熱部11に供給される加熱コイル電流の別の一例を示すグラフである。
図9に示すように、駆動制御部45cは、無線通信期間において、駆動回路50が供給する高周波電力を停止させる(制限電力LP=0)。このように、加熱部11で発生する漏洩磁束をなくすことができるため、無線信号への加熱部11で発生する漏洩磁束の干渉を確実に防止することができる。
【0043】
また、
図1のように複数の加熱部11〜13が設けられており、複数の加熱コイルが同時に動作している場合、無線通信期間において、駆動回路50が一部、または全部の加熱部11に制限電力LPが供給されるように制御する。これにより、一部、または全部の加熱部11で発生する漏洩磁束を少なくなり、無線信号への複数の加熱部11〜13で発生する漏洩磁束の干渉を抑制することができる。この際、駆動制御部45cは複数の加熱部11〜13からの漏洩磁束の総和が無線通信に影響を及ぼさないように、制御するようにしてもよい。例えば駆動制御部45cには、駆動している加熱部11〜13の個数毎にそれぞれ異なる制限電力LPが設定されており、駆動制御部45cは駆動している加熱部11〜13に応じて、各加熱部11〜13に供給される制限電力LPを設定するようにしてもよい。
【0044】
図10は、本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器100の動作例を示すフローチャートであり、
図1〜
図10を参照して誘導加熱調理器100の動作例について説明する。なお、
図10において、加熱部11の駆動を制御する場合について例示する。はじめに、ユーザーから操作部40aもしくは外部機器200へ操作が行われると、操作の内容に従い火力指令が指令演算部45aから駆動制御部45cへ出力される。すると、駆動制御部45cにおいて、火力指令に基づきスイッチング信号が駆動回路50に出力され、駆動回路50により加熱部11が駆動される(ステップS1)。
【0045】
その後、ユーザーから操作部40aもしくは外部機器200へ加熱停止命令が入力された場合(ステップS2のYES)、駆動回路50による加熱動作が停止するように制御される(ステップS3)。一方、加熱停止命令が入力されない場合(ステップS2のNO)、加熱動作が継続する(ステップS4)。
【0046】
加熱動作が行われている際に、通信状態検出部45bにおいて、外部機器200との通信が行われるか否かが検出される(ステップS5)。無線通信が実行していないと判定された場合(ステップS5のNO)、火力指令に基づく高周波電力Pによる加熱動作が継続される(ステップS1〜S5)。一方、通信状態検出部45bが無線通信部6において無線通信が実行されていることを検出した場合(ステップS5のYES)、駆動制御部45cにおいて、火力指令に基づく高周波電力Pより小さい制限電力LPによる加熱が行われるように制御される(ステップS6、
図8及び
図9参照)。その後、無線通信が休止するまで、制限電力LPによる加熱が継続される(ステップS2〜S6)。一方、通信状態検出部45bにおいて、無線通信が終了したことが検出された場合(ステップS5のNO)、再び火力指令に基づく高周波電力が加熱部11に供給される(ステップS1〜S6)。
【0047】
上記実施の形態1によれば、無線通信期間において、駆動制御部45cが各加熱部11〜13へ火力指令に基づく高周波電力Pより小さい制限電力LPにすることにより、各加熱部11〜13において発生する漏洩磁束が、外部機器200と通信を行う無線信号に干渉することを抑制し、誘導加熱調理器100が外部機器200と通信を行う無線信号の品質を高め、正確に無線通信を行うことができる。
【0048】
すなわち、従来のように、外部機器200が家電機器を遠隔操作するための制御信号が破棄される、もしくは予め設定されている制御に変更される場合、外部機器200による所望の制御が実行されず、ユーザーにとって利便性が悪くなってしまう。同様に、家電機器等において初期化処理(再起動)が行われた場合、調理を継続して実行することができず、利便性が悪くなってしまう。一方、実施の形態1の誘導加熱調理器100においては、無線通信期間において、火力指令に基づく高周波電力Pより小さい制限電力LPを供給することにより、各加熱部11〜13において発生する漏洩磁束が外部機器200と通信を行う無線信号に干渉することが抑制される。したがって、各加熱部11〜13が駆動している最中であっても、外部機器200との無線通信をより正確に行うことができるため、外部機器200を用いてユーザーが望む操作をより正確に実行することができる。
【0049】
特に、
図8に示すように、無線通信期間においても、加熱部11への制限電力LPの供給が継続して行われることにより、通信の品質を確保しながら、被加熱物5への加熱が停止されることによる被加熱物5への影響を最小限に抑えることができる。
【0050】
実施の形態2.
図11は、本発明の実施の形態2に係る誘導加熱調理器の一例を示すブロック図であり、
図11を参照して誘導加熱調理器100Aについて説明する。なお、
図11の誘導加熱調理器100Aにおいて、
図7の実施の形態1の誘導加熱調理器100と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。
図11の誘導加熱調理器100Aが
図7の誘導加熱調理器100と異なる点は、通信成功率に基づいて制限電力LPを増減する点である。
【0051】
図11の制御装置145の通信状態検出部145bは、無線通信期間において、通信の成功の割合である通信成功率を算出する成功率演算部145xを有している。ここで、通信成功率を得る方法として、種々の方法を適用することができる。例えば、成功率演算部145xは、外部機器200と無線通信部6との間において無線通信の成功・失敗を相互に確認し、制御信号を正しく送受信できた割合を演算する。もしくは、成功率演算部145xは、外部機器200から一定のタイミングで制御信号が送信される場合に、無線通信部6で正確に制御信号を受信できた割合を通信成功率として演算する。
【0052】
あるいは、外部機器200から無線通信部6に制御信号が送信された場合、受信した制御信号の内容を確認する信号が無線通信部6から外部機器200に送信される。そして、外部機器200は受信した信号から、無線通信部6で正しく制御信号が受信されたか否かに関する信号を無線通信部6に再度送信される。この場合、成功率演算部145xは、正しく制御信号が送信されているか否かを確認し、正しく制御信号の割合を通信成功率として算出する。
【0053】
もしくは、無線通信部6から外部機器200に制御信号が送信された場合、受信した制御信号の内容を確認する信号が外部機器200から無線通信部6に送信される。そして、成功率演算部145xは、無線通信部6は受信した信号から、外部機器200で正しく制御信号が受信されているか否かを確認し、正しく制御信号が受信できた割合を通信成功率として算出する。
【0054】
また、外部機器200と無線通信部6と間で無線通信する制御信号の形式を予め定めておき、受信した制御信号が正しい形式であるか否かによって行う方法がある。外部機器200と無線通信部6との間で通信する制御信号の、少なくとも開始と終了箇所に無線通信成功の目印(フラグ)となる符号を付加し、成功率演算部145xは、全ての目印を含めて制御信号が受信できたか否かによって通信成功率を演算する。
【0055】
なお、通信成功率が制御装置145側の成功率演算部145xにおいて演算される場合について例示しているが、無線通信部6側に成功率演算部145xが設けられてもよい。また、成功率演算部145xは上述した複数の通信成功率の算出方法を組み合わせてもよい。この場合、例えば複数の通信成功率の平均値もしくは最大値等を後述する基準値と比較するようにしてもよい。
【0056】
駆動制御部45cは、無線通信期間の開始時において、予め設定された制限電力LPが供給されるように駆動回路50を制御する。そして、駆動制御部45cは、成功率演算部145xにおいて演算された通信成功率と予め設定した基準値と比較し、通信成功率が基準値以上の場合、駆動制御部45cは、現在の制限電力LPより大きい高周波電力を供給しても通信環境に支障が生じないものとして、現在の制限電力LPを設定増加量ΔIPだけ大きくする。
【0057】
一方、通信成功率が基準値より小さい場合、駆動制御部45cは、現在の制限電力LPでは通信状態に支障をきたすものとして、現在の制限電力LPを設定減少量ΔDPだけ小さくする。このように、実際の通信環境の状態を示す通信成功率に基づいて、制限電力LPを増減させることにより、より正確に無線通信を行いながら、火力指令に基づく電力からの可変量を最小限に抑えることができる。
【0058】
なお、特定の外部機器200と断続的に無線通信が実行される場合、無線通信を開始したときの供給する電力の可変量を前回通信終了時の可変量とすることで、供給する電力の指令値からの可変量をより少なくすることができる。また、駆動制御部45cが制限電力LPの増減を1つの基準値を用いて判断する場合について例示しているが、異なる基準値を用いてもよい。すなわち、上限基準値と下限基準値とが記憶されており、駆動制御部45cは、上限基準値より大きい場合は制限電力LPを増加させ、下限基準値より小さい場合は制限電力LPを減少させ、下限基準値以上であって上限基準値以下である場合、現在の制限電力LPを維持するようにしてもよい。
【0059】
図12は、本発明の実施の形態2に係る誘導加熱調理器の動作例を示すフローチャートである。なお、
図12のフローチャートにおいて、
図10の実施の形態1のフローチャートと同一の工程には同一の符号を付してその説明を省略する。
図12において、通信状態検出部45bにおいて無線通信が行われていることが検出された場合(ステップS5のYES)、火力指令に基づく高周波電力Pより小さい制限電力LPによる加熱が行われる(ステップS11)。このとき、成功率演算部145xにおいて、通信成功率が算出され(ステップS12)、通信成功率と基準値とが比較される(ステップS13)。
【0060】
通信成功率が基準値以上の場合(ステップS13のYES)、制限電力LPが設定増加量ΔIP分大きくなるように駆動回路50が制御される(ステップS14)。すなわち、制限電力LPが火力指令に基づく高周波電力Pからの可変量が小さくなるように変更され、加熱動作が継続される。一方、通信成功率が基準値よりも小さい場合、制限電力LPが設定減少量ΔDP分小さくなるように駆動回路50が制御される(ステップS15)。すなわち、制限電力LPが火力指令に基づく高周波電力Pからの可変量が大きくように変更され、加熱動作が継続される。
【0061】
その後、無線通信が休止するまで、制限電力LPの変更及び制限電力LPによる加熱が行われる(ステップS2〜S15)。一方、通信状態検出部45bにおいて、無線通信が終了して無線休止期間であることが検出された場合(ステップS5のNO)、再び火力指令に基づく高周波電力Pが加熱部11に供給される(ステップS1〜S6)。
【0062】
上記実施の形態2によれば、通信成功率に基づいて制限電力LPの大きさを増減することにより、無線通信信号への干渉を抑制しながら、火力の低下の度合いを最小限に抑え利便性への影響を抑えることができる。また、上述した通信成功率の演算方法を採用することにより、漏洩磁束が通信の品質に及ぼす影響を精度良く把握し、無線通信がより正確に行われるようにしながら、利便性への影響を小さくすることができる。
【0063】
本発明の実施の形態は、上記実施の形態に限定されず、種々の変更を行うことが出来る。例えば上記実施の形態1、2において、外部機器200が、スマートフォンの場合について説明したが、特にこれに限定されるものではない。例えば、外部機器200は、リモコンや、タブレット端末や、他の家電機器や、家電機器を制御するためのHEMS(Home Energy Management System)コントローラ等、Wi−fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等の無線通信機能を有する機器であればよい。