特許第6124983号(P6124983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6124983
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】燃料電池スタック及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2484 20160101AFI20170424BHJP
   H01M 8/2485 20160101ALI20170424BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20170424BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20170424BHJP
【FI】
   H01M8/24 M
   H01M8/24 S
   H01M8/02 Z
   !H01M8/12
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-251502(P2015-251502)
(22)【出願日】2015年12月24日
【審査請求日】2016年11月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 玄太
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊之
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕己
(72)【発明者】
【氏名】大森 誠
【審査官】 渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−022844(JP,A)
【文献】 特開2005−158531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/2484
H01M 8/2485
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間、及び前記内部空間と連通する挿入孔、を有するマニホールドと、
幅方向において第1端面及び第2端面を有し、前記第1端面と前記挿入孔の内壁面との第1隙間が前記第2端面と前記挿入孔の内壁面との第2隙間よりも小さくなるよう前記挿入孔内に挿入される燃料電池セルと、
前記第1隙間を塞ぐ第1接合材と、
前記第2隙間を塞ぐように配置され、前記マニホールドに接合された調整部材と、
前記調整部材と前記燃料電池セルとを接合する第2接合材と、
を備える、燃料電池スタック。
【請求項2】
前記調整部材は、前記燃料電池セルの第2端面に沿った形状の凹部を有する、
請求項1に記載の燃料電池スタック。
【請求項3】
複数の前記燃料電池セルを備え、
前記調整部材は、各燃料電池セルの第2端面に沿った形状の前記凹部を複数有する、
請求項2に記載の燃料電池スタック。
【請求項4】
前記調整部材は、金属製である、
請求項1から3のいずれかに記載の燃料電池スタック。
【請求項5】
前記燃料電池セルの表面及び裏面に沿って幅方向に延び、前記燃料電池セルと前記マニホールドとを接合する一対の第3接合材をさらに備え、
前記第1接合材、前記第2接合材、及び前記一対の第3接合材は、一体的に形成される、
請求項1から4のいずれかに記載の燃料電池スタック。
【請求項6】
前記第1接合材は、ガラス材料を含む、
請求項1から5のいずれかに記載の燃料電池スタック。
【請求項7】
前記調整部材は、前記マニホールドに溶融接合される、
請求項1から6のいずれかに記載の燃料電池スタック。
【請求項8】
前記調整部材は、接合材によって前記マニホールドに接合される、
請求項1から6のいずれかに記載の燃料電池スタック。
【請求項9】
挿入孔を有するマニホールド、燃料電池セル、及び調整部材を備える燃料電池スタックの製造方法であって、
(a)前記挿入孔内に燃料電池セルを挿入するステップと、
(b)前記調整部材によって前記燃料電池セルを幅方向の第1側に押圧し、前記燃料電池セルを前記挿入孔内において幅方向の第1側に寄せるステップと、
(c)前記幅方向の第1側と反対側の第2側において形成された第2隙間を塞ぐように前記調整部材を配置するステップと、
)前記挿入孔内において前記幅方向の第1側において形成された第1隙間を第1接合材で塞ぐステップと、
(e)前記調整部材と前記燃料電池セルとを第2接合材で接合するステップと、
を含む、燃料電池スタックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタック及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池スタックは、マニホールドと、複数の燃料電池セルとを備えている(特許文献1参照)。各燃料電池セルは、マニホールドから上方に延びている。燃料電池セルの下端部は、マニホールドの挿入孔内に挿入されている。そして、燃料電池セルの下端部が挿入された状態の挿入孔を接合材で塞ぐ。この接合材によって、燃料電池セルの下端部がマニホールドに接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−164094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した燃料電池スタックにおいて、燃料電池セルの下端部が挿入された挿入孔内の隙間を接合材で確実に塞ぎ、マニホールドのガス密閉性を向上させることが好ましい。
【0005】
本発明の課題は、マニホールドのガス密閉性を向上させることのできる燃料電池スタックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面に係る燃料電池スタックは、マニホールドと、燃料電池セルと、第1接合材と、調整部材と、第2接合材とを備える。マニホールドは、内部空間、及び内部空間と連通する挿入孔、を有する。燃料電池セルは、幅方向において第1端面及び第2端面を有する。燃料電池セルは、第1隙間が第2隙間よりも小さくなるよう挿入孔内に挿入される。第1隙間は、第1端面と挿入孔の内壁面との隙間である。第2隙間は、第2端面と挿入孔の内壁面との隙間である。第1接合材は、第1隙間を塞ぐ。調整部材は、第2隙間を塞ぐように配置され、マニホールドに接合されている。第2接合材は、調整部材と燃料電池セルとを接合する。
【0007】
この構成によれば、燃料電池セルは、幅方向において隙間が均等になるように挿入孔に挿入されているのではなく、第1隙間が第2隙間よりも小さくなるように挿入孔内に挿入されている。このため、第1接合材は、より確実に第1隙間を塞ぐことができる。すなわち、第1隙間が大きいと、第1接合材は、マニホールド及び燃料電池セルのうち、第1接合材と親和性の高い方へ引っ張られてしまい、第1隙間を十分に塞ぐことができないおそれがある。これに対して、本発明では、第2隙間を大きくすることによって第1隙間を小さくしているため、第1接合材は第1隙間を十分に塞ぐことができる。なお、第1隙間が小さくなる一方で第2隙間は大きくなるが、第2隙間を塞ぐように調整部材が配置されているため、第2接合材は、第2隙間を埋めるのではなく、調整部材と燃料電池セルとの隙間を埋めればよい。この結果、第2隙間が大きくなっても問題が生じない。この結果、マニホールドのガス密閉性を向上させることができる。なお、調整部材は、第2隙間を完全に塞いでいなくてもよい。また、燃料電池セルの第1端面が挿入孔の内壁面と接触しており、第1隙間は無くてもよい。
【0008】
好ましくは、調整部材は、燃料電池セルの第2端面に沿った形状の凹部を有する。この構成によれば、調整部材と燃料電池セルとの隙間を小さくすることができる。
【0009】
好ましくは、燃料電池スタックは、複数の燃料電池セルを備える。そして、調整部材は、各燃料電池セルの第2端面に沿った形状の凹部を複数有する。
【0010】
好ましくは、調整部材は、金属製である。この構成によれば、一般的に金属製であるマニホールドと調整部材との熱膨張率が近くなるため、調整部材がマニホールドから剥離しにくくなる。
【0011】
好ましくは、燃料電池スタックは、一対の第3接合材をさらに備える。第3接合材は、燃料電池セルの表面及び裏面に沿って幅方向に延びる。また、第3接合材は、燃料電池セルとマニホールドとを接合する。第1接合材、第2接合材、及び一対の第3接合材は、一体的に形成される。
【0012】
好ましくは、第1接合材は、ガラス材料を含む。
【0013】
調整部材は、マニホールドに溶融接合されてもよいし、接合材によってマニホールドに接合されてもよい。
【0014】
本発明の第2側面に係る燃料電池スタックの製造方法は、次のステップ(a)から(c)を含。なお、燃料電池スタックは、挿入孔を有するマニホールド、燃料電池セル、及び調整部材を備える。ステップ(a)において、挿入孔内に燃料電池セルを挿入する。ステップ(b)において、調整部材によって燃料電池セルを幅方向の第1側に押圧し、燃料電池セルを挿入孔内において幅方向の第1側に寄せる。ステップ(c)において、挿入孔内において幅方向の第1側において形成された第1隙間を第1接合材で塞ぐ。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、マニホールドのガス密閉性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】燃料電池スタックの斜視図。
図2】燃料電池セルの斜視図。
図3】燃料電池セルの拡大断面図。
図4】燃料電池スタックの断面図。
図5】蓋部材の平面図。
図6】蓋部材の拡大平面図。
図7】調整部材の斜視図。
図8】第1隙間を中心とした燃料電池スタックの拡大断面図。
図9】第2隙間を中心とした燃料電池スタックの拡大断面図。
図10】燃料電池スタックの斜視図。
図11】変形例に係る調整部材の斜視図。
図12】変形例に係る蓋部材の平面図。
図13】変形例に係る燃料電池スタックの第1隙間を中心とした拡大断面図。
図14】変形例に係る燃料電池スタックの第1隙間を中心とした拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る燃料電池スタックの実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1に示すように、燃料電池スタック100は、複数の燃料電池セル10と、マニホールド20と、調整部材5と、第1接合材6と、第2接合材7と、を備えている。各燃料電池セル10は、マニホールド20によって支持されている。マニホールド20は、各燃料電池セル10にガスを供給する。
【0019】
[燃料電池セル]
各燃料電池セル10は、マニホールド20から上方に延びている。燃料電池セル10の長手方向(x軸方向)は、上下方向に延びている。また、各燃料電池セル10は、マニホールド20の長手方向(z軸方向)に沿って、互いに間隔をあけて配置されている。以下、この各燃料電池セル10が並ぶ方向(z軸方向)を並び方向と言う。各燃料電池セル10は、集電部材(図示省略)を介して互いに電気的に接続されている。集電部材は、導電性を有する材料から形成されている。例えば、集電部材は、酸化物セラミックスの焼成体又は金属などによって形成されている。
【0020】
図2に示すように、燃料電池セル10は、複数の発電素子部11と、支持基板12とを備えている。各発電素子部11は、支持基板12の両面に配置されている。なお、各発電素子部11は、支持基板12の片面のみに配置されていてもよい。各発電素子部11は、燃料電池セル10の長手方向において、互いに間隔をあけて配置されている。すなわち、本実施形態に係る燃料電池セル10は、いわゆる横縞型の燃料電池セルである。各発電素子部11は、電気的接続部17(図3参照)によって互いに電気的に接続されている。
【0021】
支持基板12は、燃料電池セル10の長手方向に延びる複数のガス流路121を内部に有している。なお、支持基板12の長手方向(x軸方向)は、燃料電池セル10の長手方向と同じ方向である。各ガス流路121は、互いに実質的に平行に延びている。各ガス流路121は、燃料電池セル10の長手方向の両端部において開口している。
【0022】
図3に示すように、支持基板12は、複数の第1凹部123を有している。各第1凹部123は、支持基板12の両面に形成されている。各第1凹部123は支持基板12の長手方向において互いに間隔をあけて配置されている。
【0023】
支持基板12は、絶縁性である。すなわち、支持基板12は、電子伝導性を有していない。支持基板12は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、支持基板12は、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とY(イットリア)とから構成されてもよいし、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl(マグネシアアルミナスピネル)とから構成されてもよい。支持基板12は、多孔質である。支持基板12の気孔率は、例えば、20〜60%程度である。
【0024】
各発電素子部11は、燃料極13、電解質14、及び空気極15を有している。また、各発電素子部11は、反応防止膜16をさらに有している。燃料極13は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。燃料極13は、燃料極集電部131と燃料極活性部132とを有する。
【0025】
燃料極集電部131は、第1凹部123内に配置されている。詳細には、燃料極集電部131は、第1凹部123内に充填されており、第1凹部123と同様の外形を有する。各燃料極集電部131は、第2凹部131a及び第3凹部131bを有している。燃料極活性部132は、第2凹部131a内に配置されている。詳細には、燃料極活性部132は、第2凹部131a内に充填されている。
【0026】
燃料極集電部131は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極集電部131は、NiO(酸化ニッケル)とY(イットリア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とCSZ(カルシア安定化ジルコニア)とから構成されてもよい。燃料極集電部131の厚さ、並びに第1凹部123の深さは、50〜500μm程度である。
【0027】
燃料極活性部132は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極活性部132は、NiO(酸化ニッケル)とGDC(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極活性部132の厚さは、5〜30μmである。
【0028】
電解質14は、燃料極13上を覆うように配置されている。詳細には、電解質14は、あるインターコネクタ171から他のインターコネクタ171まで燃料電池セル10の長手方向に延びている。すなわち、燃料電池セル10の長手方向において、電解質14とインターコネクタ171とが交互に配置されている。
【0029】
電解質14は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料からなる焼成体である。電解質14は、例えば、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、電解質14は、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。電解質14の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0030】
反応防止膜16は、緻密な材料からなる焼成体であり、平面視(x軸方向視)において、燃料極活性部132と略同一の形状であり、燃料極活性部132と略同じ位置に配置されている。反応防止膜16は、電解質14内のYSZと空気極15内のSrとが反応して電解質14と空気極15との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するために設けられている。反応防止膜16は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O(ガドリニウムドープセリア)から構成され得る。反応防止膜16の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0031】
空気極15は、反応防止膜16上に配置されている。空気極15は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。空気極15は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、空気極15は、LSF=(La,Sr)FeO(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O(ランタンニッケルフェライト)、又は、LSC=(La,Sr)CoO(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。空気極15は、LSCFからなる第1層(内側層)とLSCからなる第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極15の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0032】
電気的接続部17は、隣り合う発電素子部11を電気的に接続するように構成されている。電気的接続部17は、インターコネクタ171及び空気極集電膜172を有する。インターコネクタ171は、第3凹部131b内に配置されている。詳細には、インターコネクタ171は、第3凹部131b内に埋設(充填)されている。インターコネクタ171は、電子伝導性を有する緻密な材料からなる焼成体である。インターコネクタ171は、例えば、LaCrO(ランタンクロマイト)から構成され得る。或いは、インターコネクタ171は、(Sr,La)TiO(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ171の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0033】
空気極集電膜172は、隣り合う発電素子部11のインターコネクタ171と空気極15との間を延びるように配置される。例えば、図3の左側に配置された発電素子部11の空気極15と、図3の右側に配置された発電素子部11のインターコネクタ171とを電気的に接続するように、空気極集電膜172が配置されている。空気極集電膜172は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。
【0034】
空気極集電膜172は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、空気極集電膜172は、LSC=(La,Sr)CoO(ランタンストロンチウムコバルタイト)から構成されてもよい。或いは、空気極集電膜172は、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電膜172の厚さは、例えば、50〜500μm程度である。
【0035】
[マニホールド]
図1及び図4に示すように、マニホールド20は、各燃料電池セル10にガスを供給するように構成されている。燃料ガスなどのガスが、導入配管201を介して、マニホールド20の内部空間に供給される。マニホールド20は、各燃料電池セル10を支持している。マニホールド20は、マニホールド本体3と、蓋部材4と、を有する。また、マニホールド20は、内部空間と、複数の挿入孔41とを有している。
【0036】
図4に示すように、マニホールド本体3は、直方体状であって、上面が開口した内部空間を有する。マニホールド本体3は、底壁31、及び側壁32を有している。なお、底壁31及び側壁32は、1つの部材によって構成されている。マニホールド本体3は、例えば、金属によって形成される。より具体的には、マニホールド本体3は、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、及びNi基合金よりなる群から選ばれる少なくとも1種から形成されている。
【0037】
底壁31は、平面視(x軸方向視)が矩形状である。底壁31は、平面視において、長手方向(z軸方向)と幅方向(y軸方向)を有している。側壁32は、底壁31の周縁から上方に延びている。すなわち、側壁32は、底壁31の長手方向に延びる一対の縁部と短手方向に延びる一対の縁部とから延びている。
【0038】
側壁32は、側壁本体部321と、フランジ部322と、を有している。側壁本体部321は、底壁31から上方に延びる部分である。側壁本体部321は、内部空間の側面を画定している。フランジ部322は、側壁本体部321の上端部から外方に延びる部分である。なお、側壁本体部321とフランジ部322とは一体的に延びている。
【0039】
蓋部材4は、マニホールド本体3の上面を塞ぐように構成されている。蓋部材4の外周縁部は、側壁32上に配置されており、側壁32に接合されている。詳細には、蓋部材4の外周縁部は、フランジ部322上に接合されている。例えば、蓋部材4は、接合材によって側壁32に接合されていてもよいし、溶接などによって側壁32に溶融接合されていてもよい。なお、この接合材としては、後述する第1接合材の材料として記載した材料を用いることができる。
【0040】
図5に示すように、蓋部材4は、平面視(x軸方向視)が矩形状である。蓋部材4は、複数の挿入孔41を有している。各挿入孔41には、各燃料電池セル10の下端部が挿入される。各挿入孔41は、マニホールド20の幅方向(y軸方向)に延びている。すなわち、各挿入孔41は、燃料電池セル10の幅方向に延びている。また、各挿入孔41は、マニホールド20の長手方向において、互いに間隔をあけて整列している。
【0041】
蓋部材4は、例えば、金属によって形成される。より具体的には、蓋部材4は、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、及びNi基合金よりなる群から選ばれる少なくとも1種から形成されている。
【0042】
図4に示すように、マニホールド20は、各燃料電池セル10を支持している。詳細には、各挿入孔41には、各燃料電池セル10の下端部が挿入されている。各燃料電池セル10は、挿入孔41に挿入された状態でマニホールド20に接合されている。詳細には、後述する第1接合材6、第2接合材7、及び第3接合材8によって、各燃料電池セル10はマニホールド20に接合されている。
【0043】
各燃料電池セル10は、その幅方向(y軸方向)において、第1端面101及び第2端面102を有している。第1端面101及び第2端面102は、幅方向を向く端面である。第1端面101と第2端面102とは、互いに反対側を向いている。例えば、燃料電池セル10の幅方向において、第1端面101は第1側(図4の左側)を向いており、第2端面102は第2側(図4の右側)を向いている。
【0044】
図6は、各燃料電池セル10が挿入された状態の蓋部材4の平面図である。図6に示すように、第1端面101及び第2端面102は、例えば、湾曲面である。平面視(x軸方向視)において、第1端面101及び第2端面102は、円弧状となっている。第1端面101と挿入孔41の内壁面とによって第1隙間103が形成されている。また、第2端面102と挿入孔41の内壁面とによって第2隙間104が形成されている。第1隙間103は、第2隙間104よりも小さい。
【0045】
各燃料電池セル10は、挿入孔41内において、幅方向の第1側(図6の上側)に寄せて配置されている。各燃料電池セル10は、第1端面101が挿入孔41の内壁面に沿うように配置されている。この結果、各燃料電池セル10の第1端面101は、燃料電池セル10の並び方向(z軸方向)において互いに整列する。すなわち、各燃料電池セル10の第1端面101は、幅方向の位置が互いに同じである。なお、各燃料電池セル10の第1端面101の幅方向の位置は互いに完全に一致していなくてもよい。例えば、各第1端面101のうち、幅方向において最も第1側にある第1端面101と最も第2側にある第1端面101との差(オフセット量)は、約2.0mm以内とすることが好ましい。
【0046】
燃料電池セル10の幅方向(y軸方向)における第1隙間103の寸法d1は、例えば、0〜2.0mm程度とすることが好ましい。すなわち、燃料電池セル10の第1端面101が挿入孔41の内壁面に接触しており、第1隙間103が無くてもよい。幅方向(y軸方向)における第2隙間104の寸法は、例えば、0.5〜10mm程度とすることができる。なお、第1隙間103の寸法d1は、燃料電池セル10の第1端面101と挿入孔41の内壁面との最も離れた距離とする。また、第2隙間104の寸法d2は、燃料電池セル10の第2端面102と挿入孔41の内壁面との最も離れた距離とする。
【0047】
[調整部材]
図6に示すように、調整部材5は、板状の部材であって、複数の凹部51を有している。各凹部51は、燃料電池セル10の並び方向(z軸方向)に間隔をあけて配置されている。各凹部51は、対応する各燃料電池セル10の第2端面102に沿った形状を有している。具体的には、平面視(x軸方向視)において、各凹部51は円弧状となっている。
【0048】
調整部材5は、例えば金属製である。より具体的には、調整部材5は、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、及びNi基合金よりなる群から選ばれる少なくとも1種から形成されている。なお、調整部材5は、セラミックスであってもよい。具体的には、調整部材5は、ジルコニア、マグネシア、スピネル及び結晶化ガラスよりなる群から選ばれる少なくとも1種から形成されている。
【0049】
図1及び図4に示すように、調整部材5は、蓋部材4上に配置されており、第2隙間104を上方から塞いでいる。調整部材5は、マニホールド20の蓋部材4に接合されている。なお、調整部材5は、マニホールド20の蓋部材4と、接合材によって接合されていてもよいし、溶接などによって溶融接合されていてもよい。なお、接合材は、第1接合材6の材料として記載した材料を採用することができる。
【0050】
[第1接合材]
図8は、第1隙間103を中心とした燃料電池スタック100の拡大断面図である。図8に示すように、第1接合材6は、燃料電池セル10とマニホールド20とを接合している。第1接合材6は、第1隙間103内に充填されている。なお、第1接合材6は、第1隙間103内を埋めるとともに、第1隙間103内から上方に溢れ出た状態となっている。第1接合材6は、燃料電池セル10の第1端面101、マニホールド20の蓋部材4の上面、及び挿入孔41の内壁面と接触している。
【0051】
第1接合材6は、ガラス材料を含んでいる。好ましくは、第1接合材6は、結晶化ガラスである。結晶化ガラスとしては、例えば、SiO−B系、SiO−CaO系、又はSiO−MgO系が採用され得る。なお、本明細書では、結晶化ガラスとは、全体積に対する「結晶相が占める体積」の割合(結晶化度)が60%以上であり、全体積に対する「非晶質相及び不純物が占める体積」の割合が40%未満のガラスを指す。なお、第1接合材6の材料として、非晶質ガラス等が採用されてもよい。具体的には、第1接合材6は、SiO−MgO−B−Al系及びSiO−MgO−Al−ZnO系よりなる群から選ばれる少なくとも一種である。
【0052】
燃料電池セル10の支持基板12の外周面、特に、燃料電池セル10のうち、第1接合材6と接触する第1端面101は、セラミックスによって形成されている。例えば、第1端面101は、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)、及びMgO(酸化マグネシウム)よりなる群からなる少なくとも1種によって形成されている。なお、第2端面102も同様の材料で形成されている。
【0053】
[第2接合材]
図9は、第2隙間104を中心とした燃料電池スタック100の拡大断面図である。図9に示すように、第2接合材7は、調整部材5と燃料電池セル10とを接合している。第2接合材7は、調整部材5の上面、及び燃料電池セル10の第2端面102と接触している。なお、調整部材5と燃料電池セル10との間に隙間が形成されている場合は、第2接合材7はその隙間に充填される。
【0054】
なお、第1接合材6と第2接合材7とは、一体的に形成されている。具体的には、図1に示すように、第1接合材6と第2接合材7は、一対の第3接合材8を介して繋がっている。一方の第3接合材8は、燃料電池セル10の表面に沿って、燃料電池セル10の幅方向(y軸方向)に延びており、第1接合材6と第2接合材7とを繋げている。また、他方の第3接合材8は、燃料電池セル10の裏面に沿って、燃料電池セル10の幅方向(y軸方向)に延びており、第1接合材6と第2接合材7とを繋げている。すなわち、第1接合材6、第2接合材7、及び一対の第3接合材8によって、燃料電池セル10の下端部を囲んでいる。
【0055】
第3接合材8は、燃料電池セル10とマニホールド20の蓋部材4とを接合している。例えば、一方の第3接合材8は、蓋部材4の上面、及び燃料電池セル10の表面に接触している。また、他方の第3接合材8は、蓋部材4の上面、及び燃料電池セル10の裏面に接触している。なお、燃料電池セル10の表面又は裏面と挿入孔41の内壁面との間に隙間が形成されている場合、その隙間内に第3接合材8は充填されていることが好ましい。第2接合材7及び第3接合材8は、第1接合材6と同じ材料によって形成されることが好ましい。すなわち、第1接合材6,第2接合材7、及び第3接合材8は、一体的に形成されていることが好ましい。
【0056】
[製造方法]
次に、上述したように構成された燃料電池スタック100の製造方法について説明する。
【0057】
まず、マニホールド20の蓋部材4の各挿入孔41に、各燃料電池セル10の下端部を挿入する。なお、この時点では、第1隙間103が第2隙間104よりも大きくてもよいし、第1隙間103と第2隙間104とが同じ大きさであってもよい。また、蓋部材4を予めマニホールド本体3に接合していてもよいし、各燃料電池セル10を蓋部材4に接合した後に、その蓋部材4をマニホールド本体3に接合してもよい。
【0058】
次に、調整部材5を第2隙間104上に配置する。ここで、調整部材5は、第2隙間104を塞いでいる。調整部材5の各凹部51は、各燃料電池セル10の第2端面102と対向している。そして、調整部材5によって各燃料電池セル10を幅方向の第1側(図4の左側)に押圧し、各挿入孔41内において燃料電池セル10を幅方向の第1側に寄せる。このとき、調整部材5の各凹部51の内壁面は、各燃料電池セル10の第2端面102に当接している。
【0059】
各燃料電池セル10が幅方向の第1側に寄せられた結果、第1隙間103は第2隙間104よりも小さくなる。なお、各燃料電池セル10の第1端面101が各挿入孔41の内壁面に当接するまで、調整部材5を介して各燃料電池セル10を幅方向の第1側に押圧することが好ましい。
【0060】
次に、第1接合材6、第2接合材7、及び一対の第3接合材8によって、各燃料電池セル10をマニホールド20に接合する。第1接合材6、第2接合材7、及び一対の第3接合材8は、燃料電池セル10が挿入された挿入孔41の隙間を充填するように塗布される。
【0061】
詳細には、第1接合材6は、第1隙間103に充填される。また、第1接合材6は、燃料電池セル10の第1端面101、蓋部材4の上面、及び挿入孔41の内壁面と接触するように塗布される。
【0062】
第2接合材7は、燃料電池セル10の第2端面102と調整部材5の凹部51の内壁面との隙間に充填される。また、第2接合材7は、燃料電池セル10の第2端面102、及び調整部材5の上面と接触するように塗布される。
【0063】
第3接合材8は、燃料電池セル10の表面又は裏面と挿入孔41の内壁面との隙間に充填される。また、第3接合材8は、燃料電池セル10の表面又は裏面、及び蓋部材4の上面と接触するように塗布される。
【0064】
次に、調整部材5を蓋部材4に接合する。例えば、調整部材5を蓋部材4に溶接したり、接合材を介して調整部材5を蓋部材4に接合する。なお、第1接合材6、第2接合材7、及び第3接合材8を塗布する前に、調整部材5を蓋部材4に接合してもよい。
【0065】
以上のように構成された燃料電池スタック100は、次のようにして発電する。マニホールド20を介して各燃料電池セル10の各ガス流路121内に燃料ガス(水素ガス等)を供給するとともに、各燃料電池セル10の両面を酸素を含むガス(空気等)に曝すことにより、電解質14の両側面間に生じる酸素分圧差によって起電力が発生する。この燃料電池スタック100を外部の負荷に接続すると、空気極15において下記(1)式に示す化学反応が起こり、燃料極13において下記(2)式に示す電気化学反応が起こり、電流が流れる。
(1/2)・O+2e→O …(1)
+O→HO+2e …(2)
【0066】
酸素を含むガスは、例えば、図10に示すように、各燃料電池セル10の幅方向の第1側から各燃料電池セル10の間に供給される。詳細には、燃料電池スタック100は、ガス供給部材400をさらに備えている。ガス供給部材400は、各燃料電池セル10の間に空気などのガスを供給するように構成されている。なお、ガス供給部材400は、ガスを幅方向に沿って供給するように構成されている。
【0067】
詳細には、ガス供給部材400は、複数のガス供給孔401を有している。各ガス供給孔401は、燃料電池セル10の並び方向に間隔をあけて配置されている。各燃料電池セル10の下端部に向かってから供給されたガスが効率的に上方へ流れるよう、幅方向(y軸方向)において案内板がガス供給部材400と反対側に設置されていてもよい。案内板は、平板状であって、各燃料電池セル10の長手方向に延びるとともに、燃料電池セル10の並び方向に延びている。
【0068】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0069】
変形例1
上記実施形態に係る燃料電池スタック100は、1つの調整部材5を備えていたが、複数の調整部材5を備えていてもよい。例えば、図11に示すように、調整部材5は、1つの凹部51を有しており、1つの燃料電池セル10のみに対向して配置されていてもよい。
【0070】
変形例2
上記実施形態では、蓋部材4は、複数の挿入孔41を有しているが、これに限定されない。例えば、図12に示すように、マニホールド本体3の蓋部材4は、1つの挿入孔41を有していてもよい。そして、複数の燃料電池セル10の下端部が、1つの挿入孔41内に挿入されていてもよい。
【0071】
変形例3
上記実施形態では、第1接合材6は、第1隙間103内に充填されているが、第1接合材6の構成はこれに限定されない。例えば、図13に示すように、第1接合材6は、第1隙間103を塞いでおり、第1隙間103内に充填されていなくてもよい。すなわち、第1接合材6は、蓋部材4の上面と、燃料電池セル10の第1端面101のみに接触しており、挿入孔41の内壁面に接触していなくてもよい。
【0072】
変形例4
図14に示すように、第1接合材6は、第1隙間103内に充填されており、第1隙間103内のみに配置されていてもよい。すなわち、第1接合材6は、挿入孔41の内壁面と燃料電池セル10の第1端面101と接触しており、蓋部材4の上面と接触していなくてもよい。
【符号の説明】
【0073】
5 :調整部材
6 :第1接合材
7 :第2接合材
8 :第3接合材
10 :燃料電池セル
20 :マニホールド
41 :挿入孔
51 :凹部
100 :燃料電池スタック
101 :第1端面
102 :第2端面
103 :第1隙間
104 :第2隙間
【要約】
【課題】マニホールドのガス密閉性を向上させることのできる燃料電池スタックを提供する。
【解決手段】燃料電池スタック100は、マニホールド20と、燃料電池セル10と、第1接合材6と、調整部材5と、第2接合材7とを備える。マニホールド20は、内部空間、及び内部空間と連通する挿入孔、を有する。燃料電池セル10は、幅方向において第1端面及び第2端面を有する。燃料電池セル10は、第1隙間が第2隙間よりも小さくなるよう挿入孔内に挿入される。第1接合材6は、第1隙間内に充填される。調整部材5は、第2隙間を塞ぐように配置され、マニホールド20に接合されている。第2接合材7は、調整部材5と燃料電池セル10とを接合する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14