特許第6125041号(P6125041)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6125041細菌を用いた癌治療用組成物およびその製造のための菌の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6125041
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】細菌を用いた癌治療用組成物およびその製造のための菌の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/74 20150101AFI20170424BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20170424BHJP
   A61K 31/11 20060101ALI20170424BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20170424BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20170424BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20170424BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20170424BHJP
   A61K 38/21 20060101ALI20170424BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170424BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20170424BHJP
【FI】
   A61K35/74 A
   A61K37/02
   A61K31/11
   A61K45/00
   A61K31/155
   A61K31/675
   A61K37/24
   A61K37/66 G
   A61P35/00
   !C12N1/20
【請求項の数】13
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2015-550723(P2015-550723)
(86)(22)【出願日】2013年12月23日
(65)【公表番号】特表2016-505604(P2016-505604A)
(43)【公表日】2016年2月25日
(86)【国際出願番号】US2013077441
(87)【国際公開番号】WO2014107365
(87)【国際公開日】20140710
【審査請求日】2015年8月17日
(31)【優先権主張番号】61/748,369
(32)【優先日】2013年1月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515176405
【氏名又は名称】デコイ バイオシステムズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】DECOY BIOSYSTEMS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100136858
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 浩
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ジェイ ニューマン
【審査官】 安藤 公祐
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−523810(JP,A)
【文献】 特開平04−270965(JP,A)
【文献】 特表平11−506424(JP,A)
【文献】 特表2008−501728(JP,A)
【文献】 LUO X,ONCOLOGY RESEARCH,米国,PERGAMON PRESS,2001年 1月,V12 N11-12,P501-508
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/74
A61K 31/11
A61K 31/155
A61K 31/675
A61K 38/00
A61K 38/21
A61K 38/22
A61K 45/00
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)対応する野生型のグラム陰性菌生物と比較して、リポ多糖(LPS)由来のエンドトキシン活性が少なくとも80%低下し、且つ、発熱性が少なくとも90%低下している、無傷及び非生菌であるグラム陰性菌生物、及び(b)薬学上許容可能な賦形剤、を含む癌の治療用の組成物であって、
無傷及び非生菌であるグラム陰性菌生物が、グラム陰性菌生物を3μg/mL〜5000μg/mLのポリミキシン及び0.05%〜2%のグルタルアルデヒドで処理して調製される、組成物。
【請求項2】
前記ポリミキシンが、ポリミキシンBまたはポリミキシンEである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
無傷及び非生菌であるグラム陰性菌生物が、対応する野生型のグラム陰性菌生物と比較して、LPS由来のエンドトキシン活性が少なくとも90%低下し、且つ、発熱性が少なくとも95%低下している、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
LPS由来のエンドトキシン活性の低下が、インビトロでのカブトガニ血球抽出成分(LAL)評価により測定される、請求項1から3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
発熱性の低下が、インビボでの哺乳類試験で測定される、請求項1から4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記菌生物が、サルモネラ属の菌生物又は大腸菌属の菌生物である、請求項1から5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記菌細胞が、非細菌性のタンパク質を符号化している又は発現するDNAを含み、前記非細菌性のタンパク質が、好ましくは、腫瘍抗原又は免疫システム刺激タンパク質である、請求項1から5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記発熱性が、LPS由来のエンドトキシン活性よりも顕著に低下している、請求項1から5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
組成物を必要とする患者における癌の治療用の医薬の製造のための組成物の使用であって、
前記組成物が、対応する野生型のグラム陰性菌生物と比較して、リポ多糖(LPS)由来のエンドトキシン活性が少なくとも80%低下し、且つ、発熱性が少なくとも90%低下している、無傷及び非生菌であるグラム陰性菌生物を含み、
無傷及び非生菌であるグラム陰性菌生物が、グラム陰性菌生物を3μg/mL〜5000μg/mLのポリミキシン及び0.05%〜2%のグルタルアルデヒドで処理して調製される、使用。
【請求項10】
請求項に記載の使用であって、前記組成物が、(a)CTLA−4、PD−1、PD−L1、およびPD−L2からなる群から選択される、免疫機能を阻害するT細胞受容体またはT細胞受容体リガンドの拮抗薬、(b)メトホルミンおよびフェンホルミンからなる群から選択されるSTAT3の阻害剤、(c)GITR、4−1BB、CD40およびOX40からなる群から選択される免疫機能を刺激するT細胞受容体の作動薬、(d)好ましくはシクロホスファミドである化学療法剤、または(e)好ましくは、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、インターロイキン−2およびインターロイキン−12からなる群から選択される、サイトカイン、をさらに含む、使用
【請求項11】
前記癌が、リンパ腫、または結腸、直腸、膵臓もしくは肝臓の癌から選択される、請求項9又は10の使用
【請求項12】
癌の治療用の無傷で非生菌である菌生物を調製する方法であって、
前記生物を無傷に保ちながら、前記生物のリポ多糖(LPS)由来エンドトキシン活性および発熱性を低下させる条件下で、グラム陰性菌生物を3μg/mL〜5000μg/mLのポリミキシン及び0.05%〜2%のグルタルアルデヒドに接触させる工程と、
それにより、対応する野生型のグラム陰性菌生物と比較して、リポ多糖(LPS)由来のエンドトキシン活性が少なくとも80%低下し、且つ、発熱性が少なくとも90%低下している、無傷及び非生菌である菌生物を調製する工程とを含む、方法。
【請求項13】
前記ポリミキシンが、ポリミキシンB又はポリミキシンEである、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、参照することにより本明細書に組み込まれる、2013年1月2日出願の米国仮出願第61/748369号に対する米国特許法第119条(e)の利益を主張する。
本開示は、グラム陰性菌を含む組成物、および当該グラム陰性菌を投与することによる癌治療方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
細菌感染症にかかった患者における癌の退縮の関連性については、少なくとも1868年にはすでに観察および報告されている。弱毒化サルモネラ生菌を固形腫瘍型担がん動物に全身投与することで、腫瘍を治療できることが報告されている。例えば、特許文献1および非特許文献1を参照されたい。また、弱毒化グラム陽性結核菌(BCG)を膀胱内投与(非全身投与)することは、膀胱の上皮内癌(CIS)の治療および予防策として米国で承認されている。
【0003】
グラム陰性サルモネラ生菌を用いた腫瘍治療の改善策についても、特定の栄養要求性変異株に対して報告されている。例えば、非特許文献2、特許文献2、および非特許文献3を参照されたい。
【0004】
msbB遺伝子座に欠損を有するサルモネラ菌が作製されている。これは、細胞外膜において、リピドAのLPS欠乏末端ミリストイル化を発現させるものである。これらmsbB−サルモネラ菌株で処理されたマウス体内および豚体内におけるTNF−アルファの誘導は、野生型細菌によって誘導されたうちのそれぞれ33%、14%であった。例えば、非特許文献4および特許文献3を参照されたい。VNP20009菌株を含むこのような生の生物を投与することは、皮下移植されたB16F10マウスメラノーマ、ならびにマウス体内で成長したヒト腫瘍異種移植片Lox、DLD−1、A549、WiDr、HTB177およびMDA−MB−231の成長を阻害することが報告されている(非特許文献5)。サルモネラ菌株VNP20009もまた、最大耐量および低用量メトロノミクス法の両手法において、化学療法剤シクロホスファミドの抗腫瘍効果を改善させることが報告されている(非特許文献6)。
【0005】
リピドAを生成できず、かつ細胞外膜においてLPSが欠乏するグラム陰性菌の条件突然変異体が作製されたが、この変異体は生命体にとって有毒であることが報告されている。例えば、3−デオキシ−D−マンノオクツロソン酸塩(Kdo)の合成の変異体阻害、またはKdo分子のリピドIVへの組み込みの変異体阻害が、リピドAおよびLPSの合成、並びにLPS前駆体のグラム陰性菌外膜への局在化を妨げる。リピドIVとは、糖化が不足しているLPS前駆体である。これらの変異体の活性化は、細菌生存率の低下につながる(非特許文献7、非特許文献8、および非特許文献9)。
【0006】
外部から加えられた化合物の使用により、KdoのリピドIVへの組み込み、リピドAの合成、および細胞外膜への局在化を阻害することも可能である。Goldmanらは(非特許文献10)、特にCTP:CMP−3−デオキシ−D−マンノオクツロソン酸シチジリルトランスフェラーゼ活性を阻害し、これにより、2−ケト3−デオキシ−D−マンノオクツロソン酸塩(Kdo)の、グラム陰性菌のリピドIV内への組み込みを遮断する抗菌剤について言及している。LPS合成が止むと、リピドIVと構造が類似する分子が蓄積することが判明し、細菌の増殖が止まる。著者らは、LPS前駆体リピド種IVへのKdoの添加が、ネズミチフス菌LT2および大腸菌(E. coli)のどちらにおいても、リピドA−Kdo形成の主要経路であると結論付けている。
【0007】
最近になって、リピドAまたは6−アシルリピド多糖を含むLPSが細胞外膜において不足しているものの、生存率は維持しているグラム陰性菌の変異体が作製された。例えば、特許文献4では、3−デオキシ−D−マンノ−オクト−2−ウロソン酸(Kdo)の合成において欠陥を有する大腸菌K−12株KPM22が報告されている。KPM22には、大部分がリピドIVから成る細胞外膜(OM)がある。この生物の生存率は、細胞内膜から外膜へのリピドIVの移送を促進するセカンドサイト抑制遺伝子(second‐site suppressor)の存在によって得られる。この抑制遺伝子は、細胞内膜内におけるリピドIVの蓄積といった毒性副作用を軽減し、OM生合成を支えるのに十分な量のLPS前駆体をもたらすことが報告されている。最大1μg/mLのLPS前駆体添加量におけるヒト単核細胞によるTNF−アルファ分泌誘導に対する不能性として測定するに、この菌株から作製されたLPS前駆体には、エンドトキシン活性がほとんどない。非特許文献11も参照されたい。
【0008】
感染や敗血症性ショックと関わる用量制限副作用は、癌患者に対する生菌の全身投与を著しく制限する。この制限は、野生型細菌とも関連するし(例えば、非特許文献12を確認のために参照されたい。)、また、腫瘍組織内で選択的に増殖し、修飾リピドAを発現する、遺伝子的に弱毒化された細菌とも関連する(非特許文献13を参照されたい。)。この制限は、癌治療において加熱死菌の活用をもたらした。例えば、非特許文献14、非特許文献15、非特許文献16、特許文献5、特許文献6、および確認のために非特許文献12を参照されたい。しかし、非感染性で、死滅した細菌でもなお、LPS由来エンドトキシンや他の細胞成分と関連した、かなりの用量制限毒性を誘発する。この毒性は発熱性であり、敗血症性ショック症状をもたらし得る。したがって、細菌を用いた癌治療にはさらなる改良が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6685935号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0300779号明細書
【特許文献3】米国特許第7354592号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2010/0272758号明細書
【特許文献5】米国特許第8034359号明細書
【特許文献6】欧州特許第1765391号明細書
【特許文献7】米国特許第7452531号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2011/0224097号明細書
【特許文献9】米国特許第4436727号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Pawelek他、Lancet Oncol. 4(9):548−56、2003
【非特許文献2】Hoffman他、Amino Acids 37:509−521、2009
【非特許文献3】Zhao他、Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 102(3):775−760, 2005
【非特許文献4】Low他、Nature 17:37−41, 1999
【非特許文献5】Luo他、Oncol. Res 12(11−12):501−508, 2001
【非特許文献6】Jia他、Int. J. Cancer 121(3):666−674, 2007
【非特許文献7】Rick他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 69(12):3756−3760, 1972
【非特許文献8】Belunis他、J. Biol. Chem. 270(46):27646−27652, 1995
【非特許文献9】Taylor他、J. Biol. Chem. 275(41):32141−32146, 2000
【非特許文献10】Goldman他、J Bacteriol. 170(5):2185−91, 1988
【非特許文献11】Mamat他、Mol Microbiol. 67(3):633−48, 2008
【非特許文献12】Wiemann and Starnes, Pharmac. Ther. 64:529−564, 1994
【非特許文献13】Toso他、J. Clin. Oncol. 20(1):142−152, 2002
【非特許文献14】Havas他、Med. Oncol. & Tumour Pharmacother. 10(4):145−158, 1993
【非特許文献15】Ryoma他、Anticancer Res. 24:3295−3302, 2004
【非特許文献16】Maletzki他、Clin. Develop. Immunol. 2012:1−16, 2012
【非特許文献17】Leslie他、App.Environment.Microbiol.61(10):3592−3597,1995
【非特許文献18】Gu他、J.Biotech.88:95−105,2001
【非特許文献19】Ameican Type Culture Collection Bacterial Culture Guide
【非特許文献20】United States Pharmacopeia、第151章
【非特許文献21】Eisenstein他、Med.Oncol.12(2):103−8,1995
【非特許文献22】Cooperstock他、Infect Immum. 1981 Jul;33(1):315−8
【非特許文献23】Jones, M.,Int. J. Pharm. Compd., 5(4):259−263, 2001
【非特許文献24】BukhariとTaylor共著、J. Bacteriol.105(3):844−854,1971
【非特許文献25】Curtiss他、Immunol.Invest.18(1−4):583−596,1989
【非特許文献26】Shintani他、Biocontrol Science,16(3):85−94,2011
【非特許文献27】RutalaとWeber共著、Emerg.Infect.Dis.7(2):348−353,2001
【非特許文献28】Yaman、Curr.Opin.Drug Discov.Develop.4(6):760−763,2001
【非特許文献29】Gilman他、Goodman And Gilman's: The Pharmacological Bases of Therapeutics, 8th ed., Pergamon Press, 1990
【非特許文献30】Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th rd., Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1990
【非特許文献31】RECIST1.0またはRECIST1.1、Therasse他、J.Natl.Cancer Inst.92(3):205−216,2000
【非特許文献32】Eisenhauer他、Eur.J.Cancer45:228−247,2009
【非特許文献33】Ishida他、EMBO J.11(11):3887−95,1992
【非特許文献34】Freeman他、J.Exp.Med.192(7):1027−34,2000
【非特許文献35】Latchman他、Nat.Immunol.2(3):261−8,2001
【非特許文献36】Brahmer他、J.Clin.Oncol.,28(19):3167−3175,2010
【非特許文献37】Brahmer他、N.Engl.J.Med.,366(26):2455−2465,2012
【非特許文献38】Lipson他、Clin.Can.Res.19(2):462−468,2013
【非特許文献39】Park他、Pharm Res.20(8):1239−48,2003
【非特許文献40】Rebe他、JAK−STAT2(1):e23010−1−10,2013
【非特許文献41】Deng他、Cell Cycle 11(2):367−376,2012
【非特許文献42】Hirsch他、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA110(3):972−977,2013
【非特許文献43】Appleyard他、British J Cancer 106:1117−1122,2012
【非特許文献44】Jiralerspong他、J Clin Oncol.27(20):3297−3302,2009
【非特許文献45】Del Barco他、Oncotarget 2(12):896−917,2011
【非特許文献46】Melero他、Clin.Cancer Res.15(5):1507−1509,2009
【非特許文献47】Garber,JNCI 103(14):1079−1082,2011
【非特許文献48】Khong他、Int.Rev.Immunol.31(4):246−266,2012
【非特許文献49】VinayとKwon共著、Mol.Cancer Ther.11(5):1062−1070,2012
【非特許文献50】Snell他、Immunol.Rev.244(1):197−217,2011
【非特許文献51】So他、Cytokine Growth Factor Rev.19(3−4):253−262,2008
【非特許文献52】Smyth他、Immunological Rev.202:275−293,2004
【非特許文献53】Kim−Schulze,Surg.Oncol.Clin N.Am.16:793−818,2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、癌であると診断された哺乳動物(例えばヒト)中の癌を、当該哺乳動物に所定量のグラム陰性菌を投与することにより治療するための組成物および方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ここで、前記菌は、(i)非生菌、または哺乳動物体内において実質的に非生菌であり、(ii)エンドトキシン活性および/または発熱性を顕著に低下させ、そして(iii)癌細胞の増殖または転移能を抑制するのに十分な量が投与される、ものである。
【0013】
いくつかの実施形態では、哺乳動物への投与に先立ち、(i)放射線、(ii)化学滅菌、(iii)エンドトキシン(例えば、ポリミキシンBまたはポリミキシンE)を不活性化する抗生物質、または(iv)KDO2−リピドIVの生合成を阻害するような抗生物質、による処理を行うことで、グラム陰性菌が非生菌化または実質的に非生菌化される。
【0014】
何れか一つ以上の前記処理に代えて、または加えて、グラム無陰性菌は、KDO2−リピドIVの生合成を阻害または一部阻害する、或いは、KDO2−リピドIVのO−アシル化を防ぐ遺伝子欠損をさらに有する。
【0015】
KDO2−リピドIVのO−アシル化を阻害または一部阻害する遺伝子欠損は、例えばmsbBやlpxM遺伝子座を機能的に阻害する欠損を含む。
【0016】
本開示の一態様において、組成物は、実質的に非生菌であり、エンドトキシン活性および/または発熱性を顕著に低下させるグラム陰性菌と、薬学上許容可能な賦形剤とを含有する。一実施態様では、グルタルアルデヒドを用いた処理により、グラム陰性菌を非生菌化した。また別の実施態様では、ポリミキシンBまたはポリミキシンEを用いた処理により、エンドトキシン活性および/または発熱性が低下した。さらなる実施態様では、グルタルアルデヒドを用いた処理により、エンドトキシン活性および/または発熱性が低下した。
【0017】
別の態様として、癌であると診断された哺乳動物を治療するために、エンドトキシン活性および/または発熱性を顕著に低下させる実質的に非生菌のグラム陰性菌を所定量投与することを含み、投与される量が癌細胞の増殖または転移を阻害するのに十分な量である方法が提供される。
【0018】
さらに別の態様として、本開示は、癌であると診断された哺乳動物(例えばヒト)に対し所定量のグラム陰性菌を投与することにより、哺乳動物の癌を治療する方法を提供する。ここで前記菌は、生菌であり、弱毒化はされていてもされていなくともよく、細胞外膜においてリポ多糖を顕著にまたは完全に消失させる遺伝子欠損を有する。また、その投与量は、癌細胞の増殖または転移能を阻害するのに十分な量である。
【0019】
一実施態様では、本開示は、癌であると診断された哺乳動物に対し、細胞外膜においてリポ多糖を顕著に消失させる遺伝子欠損を有する生菌または非生菌のグラム陰性菌生物を所定量投与することを含む癌治療方法を提供する。その投与量は、癌細胞の増殖を阻害するのに十分な量である。
【0020】
いくつかの実施態様では、前記遺伝子欠損は、KDO2−リピドIVの生合成を阻害または一部阻害し、或いは、KDO2−リピドIVのO−アシル化を防ぐ。
【0021】
いくつかの実施態様では、癌は固形腫瘍である。
【0022】
他の実施態様では、前記哺乳動物は、例えばシクロホスファミドなどの化学療法剤を追加投与される。また他の実施態様では、前記哺乳動物は、免疫機能阻害受容体の拮抗薬、または、例えばT細胞受容体やT細胞受容体リガンド(例えばCTLA−4、PD−1、PD−L1、PD−L2)の機能を阻害する受容体作動薬を追加投与される。
【0023】
他の実施態様では、前記哺乳動物は、例えばT細胞受容体を刺激する作動薬などの、免疫機能刺激受容体の作動薬を追加投与される。好適な受容体ターゲットとしては、例えばGITR、4−1BB、CD40、OX40が挙げられる。
【0024】
他の実施態様では、前記哺乳動物は、例えばインターフェロン−アルファ、インターフェロン−ベータ、インターフェロン−ガンマ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、インターロイキン−2、およびインターロイキン−12などの免疫機能刺激サイトカインを追加投与される。
【0025】
いくつかの実施態様では、グラム陰性菌はサルモネラ菌または大腸菌類である。
【0026】
別の実施態様では、本開示は、グラム陰性菌をポリミキシンBおよびグルタルアルデヒドを用いて処理することにより、前記菌におけるエンドトキシン活性および/または発熱性を消失または低下させる方法を提供する。一実施態様では、生存率が0%にまで低下し、エンドトキシン活性または発熱性が約90%または96%低下した。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】ポリミキシンB(PMB)を用いた大腸菌の培養が、細菌細胞に関連するエンドトキシン活性のレベルを低下させることを示す図である。この点については実施例2でより詳細に記述する。
図2】ポリミキシンB(PMB)を用いた大腸菌の培養が、細胞の生存率を低下させることを示す図である。この点については実施例2でより詳細に記述する。
図3】グルタルアルデヒド(GA)を用いた大腸菌の培養が、細菌細胞に関連するエンドトキシン活性のレベルを低下させることを示す図である。詳細は実施例3に記載されているとおりである。
図4】グルタルアルデヒド(GA)を用いた大腸菌の培養が、細胞の生存率を低下させることを示す図である。詳細は実施例3に記載されているとおりである。
図5】未処理の大腸菌(図5A)、1000μg/mLのPMBで処理した大腸菌(図5B)、1%のGAで処理した大腸菌(図5C)、またはPMBおよびGAの両方で処理をした大腸菌(図5D)の透過型電子顕微鏡画像である。この画像より、いずれの処理を行った後も細菌は無傷であることがわかる。詳細は実施例4に記載されているとおりである。
図6】マウス皮下におけるマウスB16F10メラノーマの増殖について、PMBおよびGAで処理した大腸菌の用量依存効果を示すグラフである。詳細は実施例7に記載されているとおりである。
図7】マウス皮下におけるマウスB16F10メラノーマの増殖について、未処理の大腸菌および1%のGAで処理を行った大腸菌の用量依存効果を示すグラフである。詳細は実施例8に記載されているとおりである。
図8】マウス皮下におけるCT26マウス結腸直腸癌の増殖について、PMBおよびGAで処理を行った大腸菌の用量依存効果を示すグラフであり、図8Aは、持続的にシクロホスファミドを用いなかった場合および用いた場合を示し、図8Bは、持続的に抗マウスCTLA−4抗体を用いなかった場合および用いた場合を示す。詳細は実施例9に記載されているとおりである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書では、エンドトキシンおよび/または発熱活性を著しく低下させる非生菌グラム陰性菌生物を含有する組成物と、癌にかかった哺乳動物に対し、エンドトキシンまたは発熱活性を著しく低下させる非生菌グラム陰性菌生物を所定量投与することを含み、投与量が癌の増殖や転移を阻害するのに十分な量である癌治療方法とが提供される。
【0029】
細菌を介した抗腫瘍活性をもたらすメカニズムとしては、腫瘍組織内での生菌生物の選択的増殖と、宿主免疫反応の刺激、特にはLPS(エンドトキシン)を介した宿主単核細胞からの殺腫瘍サイトカインの放出の誘導が、可能性として挙げられる。しかし、生菌の増殖およびLPS(エンドトキシン)を介したサイトカインの誘導(LPSがmsbB変異体で弱毒化されていても)は、生菌を用いた哺乳動物の治療に関わる用量制限毒性をもたらすと考えられている。Tosoらが(非特許文献13)、msbBで弱毒化したサルモネラ生菌を用いて癌患者を治療したところ、用量制限毒性は菌血症やサイトカイン放出に伴う副作用などを含んでいた。ヒト腫瘍をマウスに異種移植したモデルで見られる場合と比較し、腫瘍組織中の細菌増殖はより低く、サイトカインを介した毒性に対する感度はより高かった。生菌による全身増殖、および/または一つの第2級アシル鎖が欠乏しているLPSを一部介したサイトカイン関連の毒性が、弱毒化されたグラム陰性生菌をマウス以外の哺乳動物(ヒトなど)に安全かつ効果的に投与することを妨げていると考えられている。マウスは、細菌感染およびサイトカイン誘導により生じる関連した敗血症に対し、比較的耐性があることで知られている。
【0030】
理論に縛られることを望むものではないが、エンドトキシン活性および/または発熱性を顕著に低下させる死菌または非生菌のグラム陰性菌生物は、生きている菌生物または生菌生物を使用する場合と比べ、毒性が低くかつ癌治療に対しより効果的な量で癌患者に投与されることができると考えられている。生菌生物は、個々の患者の正常組織や腫瘍組織の中で実験者がコントロールできないような種々の態様で増殖し、治療効果が発揮されない程度に不十分に増殖したり、過剰に増殖したりして、結果として許容できないほどの毒性を生じる。また、エンドトキシン活性および/または発熱性を顕著に低下させる死菌または非生菌のグラム陰性菌生物は、野生型レベルのエンドトキシン活性および/または発熱性を生じる死菌を使用する場合と比べ、毒性が低くかつ癌治療に対しより効果的な量で癌患者に投与されることができるとも考えられている。
【0031】
さらに、細菌外膜中の糖化リピドAやLPSの量を著しく減少させる、LPSの形成における遺伝子欠損を有するグラム陰性生菌生物は、哺乳類宿主中でのさらなる増殖を防ぐように弱毒化した生菌として投与するか、死菌として投与するかにかかわらず、癌治療に有用であるとも考えられている。このような生物は機能性LPS分子が不足しており内毒素性ショックを引き起こしたり宿主免疫システムに刺激を与えたりするが、グラム陰性菌には、宿主の自然または複合自然(combined innate)の適用性免疫反応を刺激し、腫瘍細胞を死滅させたり腫瘍の増殖を抑制するような別の特性があると考えられている。
【0032】
本明細書に開示された一実施態様では、癌治療に使用されるグラム陰性生物は、非細菌性タンパク質(例えば、腫瘍特異性抗原)をコードしたり発現させたりするDNAを有しない。したがって、腫瘍抗原に対する特定の免疫学的反応を直接誘発しない点において、このグラム陰性生物は癌ワクチンではない。そのかわり、この生物は、一般的には宿主自然免疫反応と、可能性として間接的に適応性抗腫瘍免疫反応とを刺激する免疫補助剤または生物学的修飾物質(BRM)として機能する。いくつかの実施態様では、このグラム陰性生物は、腫瘍サイト中またはその周辺に直接注射され、または全身投与されて腫瘍中またはその周辺に蓄積された。この生物に対する増大した自然免疫反応は、副次的に腫瘍に対する反応になることもある。加えて、または代わりとして、この生物に対する免疫反応が、適応性抗腫瘍反応に加わることのできる既存の腫瘍抗原特有免疫細胞を刺激または活性化することもあり得る。
【0033】
代替的な実施態様では、グラム陰性生物が、例えば腫瘍特異性抗原を含む非細菌性タンパク質や免疫システム刺激タンパク質の発現をコードするDNAを発現させる。あらためて、この生物を腫瘍サイト中もしくはその周辺に、または全身に注射し、この生物、腫瘍特異性抗原、またはその両方に対する先天性または適応性免疫反応を誘発することができる。
【0034】
本明細書で使用される「腫瘍特異性抗原」とは、腫瘍によって発現されるが、その腫瘍の元となった生物の正常細胞からは発現されない抗原を指す。「腫瘍関連抗原」とは、腫瘍によって発現され、またその腫瘍の元となった生物の正常細胞からも限られた程度で発現される抗原を指す。限られた程度での発現は、腫瘍細胞中よりも低いレベルで正常細胞中に発現すること、限られた種類の正常細胞中で発現すること、または胎児成育期のみに正常細胞により発現すること(すなわち胎児性抗原)を示し得る。本明細書において使用されるとおり、抗原とは、抗体または免疫細胞(例えば、T細胞)によって免疫反応に認識され得る任意の分子である。
【0035】
本明細書に記載される「免疫補助剤」および「生物学的修飾物質」とは、抗原、腫瘍、腫瘍関連細胞に対する免疫反応を強める任意の物質を指す。したがって、外来抗原、または疾病起因もしくは疾病関連細胞に発現した新抗原、あるいは構造的改変または構造的異常レベルの既存抗原に対して、免疫システムがより活発に反応するよう刺激する目的で、免疫補助剤や生物学的修飾物質が使用される。しかし、いくつかの実施形態では、例えば腫瘍特異的もしくは腫瘍関連抗原、またはサイトカインやケモカインといったヒト免疫活性タンパク質を発現する組み換え型グラム陰性菌を本願明細書に開示される方法において使用することが検討されている。代替的な実施形態では、サイトカインやケモカインなどの、精製した免疫活性タンパク質を、投与前にグラム陰性生物と混合するか、またはグラム陰性生物の注入前もしくは後に投与した。
【0036】
本明細書に記載される「哺乳動物」には、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジなどの任意の哺乳類が含まれる。好ましい哺乳動物はヒトである。
【0037】
「グラム陰性菌」とは、グラム染色として知られる手法の一部である第1塩基染色(例えば、クリスタルバイオレット)を保持しない細菌を指す。典型的なグラム染色では、まず細胞をスライドに熱固定し、塩基性染料(例えば、クリスタルバイオレット)で染色する。このとき、グラム陰性菌もグラム陽性菌もともに染色される。次にスライドを媒染剤(例えば、グラム染色用ヨウ素)で処理し、媒染剤が塩基性染料(例えば、クリスタルバイオレット)と結合すると共に塩基性染料を細胞中に取り込む。この細胞をアセトンかアルコールで洗浄し、異なる色の第2染料(例えば、サフラニン)で対比染色する。グラム陽性生物は初めに染色されたバイオレットを保持する一方、グラム陰性生物は有機洗浄剤により脱色され、対比染色を示す。典型的なグラム陰性菌には、特に限定されることなく、大腸菌種、赤痢菌種、サルモネラ菌種、カンピロバクター菌種、ナイセリア菌種、ヘモフィラス菌種、アエロモナス菌種、フランシセラ菌種、エルシニア菌種、クレブシエラ菌種、ボルデテラ菌種、レジオネラ菌種、コリネバクテリウム菌種、シトロバクター菌種、クラミジア菌種、ブルセラ菌種、シュードモナス菌種、ヘリコバクター菌種、ビブリオ菌種が含まれる。
【0038】
グラム陰性生物には、多くの無害共生生物に加え、サルモネラ菌、大腸菌、ペスト菌、クレブシエラおよび赤痢菌、プロテウス、腸内細菌、セラチア菌、シトロバクター菌といったよく知られた多くの病原体が属する腸内細菌科という大きなファミリーが含まれる。腸内細菌科を構成する菌は、この科に属する菌種のうちいくつかが動物の腸内に生存することから、腸内細菌と呼ばれる。
【0039】
腸内細菌科は桿菌であり、一般的に1〜5μmの長さを持つ。腸内細菌科の菌は通性嫌気性菌にあり、糖を発酵させて乳酸やその他種々の最終生成物を生成する。多くは硝酸塩を亜硝酸塩に還元し、シトクロムC酸化酵素をほとんど有しない。また多くは運動用の鞭毛を有するが、非運動性の菌もある。腸内細菌科の菌は無胞子菌である。
【0040】
「ベクター」とは、別の核酸を運ぶことができ、別の核酸に対して核酸単体としてリンクする核酸分子を指す。ベクターが動作可能にリンクされて遺伝子の発現を可能にするベクターを、本明細書中では「発現ベクター」という。本明細書で使われる「発現システム」は、発現ベクター中の配列がRNAに転写され、それがRNA構造に折り込まれ、またはタンパク質に翻訳されるのを可能にする成分の組み合わせを示す。発現システムは、市販もしくは既知の方法で容易に作成できるインビトロ発現システムであったり、発現ベクターを有する真核性もしくは原核性宿主細胞といったインビボ発現システムであったりする。一般的に、DNA遺伝子組み換え技術に有用な発現ベクターとは、通常、ベクター形状では細菌染色体と結合されていない環状二本鎖DNAを指す「プラスミド」のことである。従来技術において周知のその他の発現ベクターも発現システムにおいて使用することができる(例えば、コスミッドベクター、ファージミッドベクター、バクテリオファージベクター)。
【0041】
「核酸」とは、デオキシリボ核酸(DNA)といったポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド、および適切な場合には、リボ核酸(RNA)を指す。この用語は、核酸類似体から形成されたRNA類似体またはDNA類似体、および、本明細書に記載されている実施態様で適用可能なように、一本鎖(センス鎖またはアンチセンス鎖)や二本鎖のポリ核酸も、均等物として含むように理解されるべきである。
【0042】
本明細書で使用されている「調整」は、上方調整(活性化または刺激(例えば、苦痛を与えたり、強化させることによって))と下方調整(阻害または抑制(例えば、拮抗させたり、減少させたり、阻害することによって))との両方を指す。「誘発性がある」とは、特に、構成要素ではないけれども刺激(例えば、温度、重金属、その他培地添加物)に対する反応として生じる遺伝子発現を指す。
【0043】
A.細菌生物の候補
本明細書に記載された方法に用い得る細菌生物の候補は、グラム陰性であり、且つ、野生型生物としてエンドトキシン活性を有するものに由来する。典型的なグラム陰性菌には、特に限定されることなく、大腸菌種、赤痢菌種、サルモネラ菌種、カンピロバクター菌種、ナイセリア菌種、ヘモフィラス菌種、アエロモナス菌種、フランシセラ菌種、エルシニア菌種、クレブシエラ菌種、ボルデテラ菌種、レジオネラ菌種、コリネバクテリウム菌種、シトロバクター菌種、クラミジア菌種、ブルセラ菌種、シュードモナス菌種、ヘリコバクター菌種、ビブリオ菌種が含まれる。またグラム陰性生物は、腸内細菌科、シュードモナス科、ナイセリア科、ベイヨネラ科、バクテロイデス科、ビブリオ科、パスツレラ科、フソバクテリア科に属するものであり得る。いくつかの実施態様において、候補生物は、サルモネラ菌種と大腸菌種である。
【0044】
一つの候補であるサルモネラ生物、VNP20009がLuoらによって記述されている(非特許文献5)。VNP20009は、msbB部位やpurI部位が除去されたネズミチフス遺伝子改変菌株である。VNP20009生菌を1×10から3×10cfu/マウスの範囲で腫瘍を抱えたマウスに静脈投与することは、皮下移植されたB16F10マウスメラノーマ、および異種移植されたヒト腫瘍Lox、DLD−1、A549、WiDr、HTB177、MDA−MB−231の増殖を阻害した。静脈投与されたVNP20009もまた、これらの動物における肺転移の成長を阻害した。特許文献3を参照されたい。
【0045】
別の候補であるサルモネラ生物は、非特許文献21に記載されたSL3235である。SL3235は弱毒化されたサルモネラ菌株であり、生菌投与すると、マウス体内での形質細胞腫腫瘍の増殖を治癒できる。
【0046】
さらに別の候補であるサルモネラには、非特許文献2で報告されている栄養要求性変異体が含まれる。ネズミチフス菌A1−R変異体はロイシン−アルギニンに対して栄養要求性を示し、高い抗腫瘍毒性(anti−tumor virulence)を有する。ビトロでは、A1−Rは腫瘍細胞を感染させ核破壊を起こす。A1−Rの投与は、ヌードマウスに同所移植されたヒト前立腺癌またはヒト乳癌の転移を治癒する。原発性骨肉腫または肺転移を有するヌードマウスに静脈投与(i.v.)されたA1−Rは、特に転移に対して、有効である。A1−Rはまた、ヌードマウスに脾臓内投与した場合、膵臓癌の肝臓への転移(pancreatic cancer liver metastasis)に有効だと報告されている。特許文献2、非特許文献3も参照されたい。
【0047】
固形腫瘍の治療に適した種々のグラム陰性生物が特許文献1で報告されている。これらの生物は、投与されると腫瘍の中で優先的に複製するためスーパー感染性と呼ばれる。例えばネズミチフス菌のような腫瘍特異的変異体サルモネラ菌種がスーパー感染性として含まれる。単純ヘルペスウィルスからのチミジン・キナーゼ、大腸菌からのシトシン・デアミナーゼ、またはヒト・ミクロソームp−450オキシドレダクターゼといった自殺遺伝子を含有するサルモネラ菌種の腫瘍特異的変異体もスーパー感染性として説明されている。非特許文献1も参照されたい。
【0048】
一実施態様では、生物として大腸菌を選択した。とりわけ検討した菌株は、大腸菌株2617−143−312、(Migula)Castellani and Chalmers(ATCC(登録商標)13070(商標))である。使用可能な追加の大腸菌株には、MG1655(ATCC(登録商標)47076)やKY8284(ATCC(登録商標)21272)が含まれる。
【0049】
本明細書に記載された方法に使用されたグラム陰性生物は、野生型生物とは異なるDNAを含んだり発現したりする組み換え生物である必要はない。しかし、いくつかの実施態様においては、原生種ではない分子を発現させるように生物を改変してもよい。例えば特許文献7では、一つ以上の初期エフェクター分子を固形腫瘍サイトに運ぶための弱毒化した腫瘍標的細菌ベクターを調製して使用することが報告されている。この方法によれば、宿主に全身投与すると毒性を発し得るエフェクター分子を、弱毒化して宿主に対する毒性を低減させた腫瘍標的細菌によって、腫瘍部分に局所的に運ぶことができる。具体的には、弱毒化した腫瘍標的細菌は、一つ以上の初期エフェクター分子をコードするよう改変された通性好気性菌または通性嫌気性菌となり得る。初期エフェクター分子には、TNFサイトカイン科、抗血管新生因子、および細胞毒性ポリペプチドもしくはペプチドに属するものが含まれる。本開示の初期エフェクター分子は、例えば悪性腫瘍癌、メラノーマ、リンパ腫、肉腫、またはこれらの腫瘍の転移といった固形腫瘍癌の治療に有用である。
【0050】
B.細菌エンドトキシン活性の低下
細菌生物のエンドトキシン活性および/または発熱性の低下には、種々の方法を用いることができる。本明細書で使用されているように、「エンドトキシン活性」とは、発熱や敗血症性ショックを含む毒性を発生し得るグラム陰性菌の部分を指す。エンドトキシンに寄与する毒性の影響は、グラム陰性菌の外膜中に存在する、または外膜に由来する、リポ多糖分子の糖化リピドA部分と関連することが判明している。
【0051】
「リポ多糖(LPS)」とは、共有結合により結合したリピドおよび多糖(グリコフォスホリピド)からなる巨大分子を指す。LPSは3つの構成:1)O抗原、2)コアオリゴ糖、および3)リピドAからなる。O抗原はグリカンを繰り返し単位とする高分子で、コアオリゴ糖に結合しており、LPS分子の最外領域を構成する。コアオリゴ糖はリピドAに直接結合し、通常ヘプトーズや3−デオキシ−D−マンノオクツロン酸(ケト−デオキシオクツロン酸塩、KDOとしても知られる)といった糖を含む。リピドAは複数の脂肪酸と連結したリン酸化グルコサミン二糖類である。脂肪酸はLPSを細菌膜中に留め、残りのLPSは細胞表面から突出する。LPSが突然変異したり取り除かれたりすると、細菌が死ぬ場合がある。
【0052】
エンドトキシン活性はLPSのリピドA領域部分に存在する。細菌細胞が免疫システムによって溶解すると、リピドAを含有する膜断片が一連の循環中に放出され、発熱、下痢、また可能性としては致命的ショック(エンドトキシン性または敗血症性ショックと呼ばれる)を引き起こす。LPSの毒性は、哺乳類免疫システムのB細胞やマクロファージとの相互作用を通じ、リピドAによって発現する。この過程は、宿主にとって致命的な結果をもたらし得る、炎症誘発性サイトカイン、主に腫瘍壊死要因(TNF)を分泌させる。リピドAは、ビボにおけるマウスCD4+およびCD8+T細胞だけでなく、ビトロにおけるヒトT−リンパ球(Th−1)をも活性化させる。この特性は、宿主の免疫システムが、種々のサイズのLPS糖鎖に対する特定の既往IgG抗体反応を高めることを可能にする。これらより、近年LPSは、インビボにおけるT細胞依存性抗原として認識されている。
【0053】
エンドトキシン活性は従来技術において良く知られた方法で測定することができ、例えば、カブトガニの血液を用いたカブトガニ血球抽出成分(LAL)評価は、ごく低レベルのLPSまで検出できる。エンドトキシン活性があると、酵素カスケードを経た増幅があるため、カブトガニ血液ライセート試薬が凝固してしまう。LAL評価のゲル凝固タイプ、比濁タイプ、比色タイプは市販されている。例えば、ニュージャージー州AllendaleのLonza社,およびメリーランド州GermantownのClogen Labs社を参照されたい。
【0054】
Hyglos社(ドイツ、ミュンヘン地区)のEndoLISA(登録商標)など、酵素関連免疫吸着測定法(エライザ診断)に基づくエンドトキシン活性評価も知られている。この評価法では、固相に結合されたLPS特異ファージ・タンパク質を使用してLPSを捉え、洗浄工程の後に、組み換えファクターCを添加することによりLPSの存在を決定する。ファクターCは、LPSで活性化されると、化合物を分断して蛍光を発する。カブトガニ血液ライセート試薬中に存在するファクターCは、通常、酵素前駆体として存在し、LAL試験において発生する凝固カスケードのプライマーである。
【0055】
エンドトキシン活性は、インビトロの主要末梢血単核から、或いは、エンドトキシン源候補で動物を処理し、処理後1−4時間経った動物から得られたプラズマ中のTNF−アルファのレベルを測定することにより、TNF−アルファ分泌の誘発を評価することによっても測定できる。哺乳類の主要末梢血単核細胞はLonza社(Allendale、ニュージャージー州、米国)などの会社から購入できる。細胞上清またはプラズマ中のTNF−アルファレベルは、Thermo Scientific社(Rockford、イリノイ州、米国)、Abcam社(Cambridge、マサチューセッツ州、米国)、またはeBioscience社(San Diego、カリフォルニア州、米国)などから購入可能なエライザ診断キットで決定できる。
【0056】
エンドトキシン活性はまた、静脈投与された生物またはその誘導体に対するウサギの発熱性(直腸温度の上昇)を測定することによってもインビボ評価できる。
【0057】
グラム陰性生物のエンドトキシン活性および/または発熱性は、野生型生物のものと比較して、著しく低下させることができるかもしれない。エンドトキシン活性の著しい低下率は約70%よりも大きいことが好ましく、約75%よりも大きいことがより好ましく、約80%よりも大きいことがより好ましく、約85%よりも大きいことがより好ましく、約90%よりも大きいことがより好ましく、約95%よりも大きいことがさらに好ましく、約99%よりも大きいことがさらにより好ましい。
【0058】
グラム陰性生物のエンドトキシン活性を低下させるのに、種々の方法が利用可能である。その方法には、LPSと結合する試薬またはLPSの生成を阻害する試薬を用いた生物の処理や、LPSを改変したりLPSの生成を阻害したりするように細菌生物を遺伝子操作することが含まれる。
【0059】
一実施態様では、エンドトキシンを不活性化する抗生物質で細菌生物を処理することにより、エンドトキシン活性または発熱性を低下することができる。これに適する抗生物質はポリミキシンBまたはポリミキシンEである。例えば、Cooperstockらは、ポリミキシンBを用いた処理が、百日咳菌、大腸菌、インフルエンザ菌、緑膿菌を含むグラム陰性菌ワクチンにおけるLPSの抗炎症反応を低下させると、非特許文献22の中で報告している。抗生物質量や処理条件を決定することは、当業者の技術範囲内のことである。一実施態様では、ポリミキシンBかEかを問わず、1mLあたり1×10から5×1010の細菌に対し、約3mgから5000mgの濃度のポリミキシンを用いることができる。別の実施態様では、ポリミキシンの濃度は、1mLあたり1×10から5×1010の細菌に対し、約200mgから5000mgとすることができる。また、一実施態様では、10分から4時間の間、または約30分から約3時間の間、抗生物質を細菌に付与した。一実施態様では、MgClの形でのマグネシウム(Mg)の存在下で細菌を増殖させ、細菌完全性を維持するのに適切な温度にて、MgClの存在下でポリミキシンを用いて処理をした。一実施態様では、増殖培地におけるMgCl濃度を約0.5mMから約5.0mM、または約2mMとし、処理培地におけるMgCl濃度を約5.0mMから約30mM、または約20mMとした。一実施態様では、処理培地の温度を約2℃から約10℃、または約4℃とした。細胞完全性は、3000xgで10分間遠心分離を行った後の明確に規定されたペレットにおける回復効率、および、電子顕微鏡法により決定した。好ましい実施態様では、処理および洗浄後の細菌回復は約80%よりも高く、電子顕微鏡法では細菌は無傷に見えた。
【0060】
別の実施態様では、KDO2−リピドIVの生合成を阻害することで知られる抗生物質で細菌生物を処理することにより、エンドトキシン活性を低下させることができた。例えば、非特許文献10は、CTP:CMP−3−デオキシ−D−マンノオクツロソン酸シチジリル基転移酵素の活性を特異的に阻害し、3−デオキシ−D−マンノオクツロソン酸(KDO)がグラム陰性生物のLPS内に入り込むことを抑えるのに有用な抗生剤IIIを含む抗生剤について説明している。LPS合成が止むと、細菌の増殖も止む。LPS前駆体種であるリピドAへのKDOの添加は、ネズミチフス菌および大腸菌のどちらにおいても、リピドA−KDO形成の主要経路である。一実施態様では、抗生物質は抗生剤IIIであり、グラム陰性菌は、適量(例えば5mg/mLから500mg/mL)かつ適切な時間(例えば2から8時間)で処理された。
【0061】
エンドトキシン活性の低下は、生物に遺伝的欠損を導入することでも達成できる。本明細書の「欠損」とは、遺伝子または遺伝子の発現に関しては、遺伝子が通常の(野生型)遺伝子とは異なるか、または遺伝子の発現が野生型遺伝子の場合と比較して低いレベルであることを指す。欠損遺伝子はその遺伝子中の変異体から生じることもあるし、その遺伝子の発現を制御する変異体から生じることもある(例えば、転写または転写後)。
【0062】
一実施態様では、エンドトキシン活性の低下は、KDO2−リピドIVの生合成を阻害する遺伝的欠損を導入することによっても達成できる。例えば、Woodardらは、特許文献4において、非毒性のグラム陰性生菌(例えば大腸菌)は、外膜中のLPSが著しく不足していると報告している。また筆者らは、大腸菌K−12の菌株であるKPM22は、3−デオキシ−D−マンノオクツロソン酸(Kdo)の合成において欠損があると説明している。KPM22は、糖化をほとんど有しないLPS前駆体であるリピドIVで主に構成される外膜(OM)を有する。生物の生存率は、リピドIVを内膜(IM)から外膜へと運ぶセカンドサイト抑制遺伝子の存在により達成される。この抑制遺伝子は、内膜中のリピドIVの蓄積の毒性副作用を軽減し、OM生合成を補助するのに十分な量のLPS前駆体をもたらすと報告されている。非特許文献11も参照されたい。
【0063】
別の実施形態では、Bramhillらが、特許文献8で、TLR4/MD2の作動薬として働くリピドAまたは6−アシルリポ多糖のようなリガンドを実質的に持たない外膜を有するグラム陰性生菌について説明している。Bramhillによれば、このような細菌は、アラビノース−5−リン酸イソメラーゼの低下した活性と、一つ以上の抑制遺伝子変異体とを、例えば輸送体中に有してリピドIVを運ぶための輸送体の容量を高め、或いは、膜タンパク質YhjD中に有し得る。一つ以上の遺伝子(例えばIpxL,IpxM,pagP,IpxPおよび/またはeptA)を著しく取り除くか、および/または一つ以上の酵素(例えばLpxL,LpxM,PagP,LpxPおよび/またはEptA)を著しく不活性化することができる。
【0064】
別の実施形態では、Kdoの合成を妨げるような遺伝子欠損を導入することによりエンドトキシン活性を低下することができるかも知れない。例えば、Rickら(非特許文献7)は、LPSの3−デオキシ−D−マンノオクツロン酸(ケトデオキシオクトン酸)領域内での合成において欠損を有し、増殖のためにD−アラビノース−5−リン酸を要するネズミチフス栄養要求性変異体について報告している。この変異体の欠損は、D−アラビノース−5−リン酸に対して親酵素の35倍の見掛けK(m)を有する改変ケトデオキシオクトン酸−8−リン酸合成酵素(kdsA)に起因していた。これは、変異体菌株を、完全なLPSの増殖および合成に関して、外因性D−アラビノース−5−リン酸に依存させた。別の例では、Belunisらは、非特許文献8において、大腸菌中のKdo転移酵素(kdtA)遺伝子を阻害し、KdoがリピドIV内に組み込まれることを抑制した。この変異体は致死であるが、温度感受性プラスミドコードKdtAの条件付き存在下により救済することができる。Kdo合成経路中での条件付き変異体の成長は、細菌の増殖を許容し、非許容状態下に移されることで、エンドトキシン活性が顕著に低下された非生菌を作り出すのに十分な増殖または生存をもたらす。
【0065】
LPS由来のエンドトキシンに加え、外膜タンパク質、線毛(fimbriae、pili)、リポペプチド、リポタンパク質などを含むグラム陰性生物の様々な他の構成成分も、発熱性や敗血症性ショックを誘発、寄与し得る(非特許文献23に説明されている)。発熱性は、ラビット方法という従来周知の方法で測定することができる。ラビット方法は、推定発熱物質を静脈投与した後の直腸温度の評価を含む。
【0066】
ポリミキシンBとグルタルアルデヒトとの混合物でグラム陰性生物を処理すると、ラビット体内での発熱性の低下が30倍となることが判明している。一実施形態では、1000μg/mLのポリミキシンBと1%のグルタルアルデヒドを用いることで、ラビット体内で測った発熱性の低下が30倍となった。発熱性は、ポリミキシンBとLPSとの反応、およびグルタルアルデヒドのLPSおよび/または他の細菌構成成分との反応性の組み合わせにより低下する。ここにおいて、グルタルアルデヒドは、細菌も死滅させるので、二つの役割を果たす。したがって、一実施形態では、1000μg/mLのポリミキシンBと1%のグルタルアルデヒドとの組み合わせでグラム陰性菌微生物を処理することにより、グラム陰性菌微生物のエンドトキシン活性と発熱性を低下させる方法と、グラム陰性菌微生物を殺菌する方法とが提案されている。別の実施形態では、グラム陰性菌は、一回投与量を約3μg/mLから約1000μg/mLの範囲としたポリミキシンBと、一回投与量を約0.1%から約1.0%の範囲としたグルタルアルデヒドとの組み合わせで処理されている。さらなる実施形態では、ポリミキシンBの一回投与量の範囲を約100μg/mLから約1000μg/mLとし、グルタルアルデヒドは約0.5%から約1.0%の投与量範囲とした。加えて、グラム陰性菌は、例えば一回投与量の範囲が約1000μg/mLから約3000μg/mLのポリミキシンBと、一回投与量の範囲が約0.5%から約1.0%のグルタルアルデヒドとを用いて処理することもできる。別の態様として、グラム陰性菌を、例えば一回投与量の範囲が約3000μg/mLから約5000μg/mLのポリミキシンBと、一回投与量の範囲が約0.5%から約2.0%のグルタルアルデヒドとを用いて処理することもできる。一実施形態では、エンドトキシン活性が約70%、または約75%、または約80%、または約85%、または約90%、または約92%低下し、発熱性が約75%、または約80%、または約85%、または約90%、または約95%、または約97%低下した。
【0067】
C.細菌の非生菌化
本開示の方法による投与に用いられる細菌は、投与前または投与に際して、非生菌化または実質的に非生菌化した。「非生菌」というのは、生物を外からの試薬で処理することにより死滅させること、および/または生物が哺乳動物の宿主内で生存できなくさせる変異体を含むことを意味する。実質的に非生菌とは、その生存率が少なくとも80%、85%、90%、95%、99%、またはそれ以上低下した菌株である。死滅していないか、または完全には死滅しきれていない細菌に対する好ましい実施形態において、細菌は、哺乳動物体内で増殖できない程度にまで更に処理または改変された。LPSが実質的に作られないようないくつかの実施形態では、非生菌、弱毒化菌、または生菌の投与を検討した。
【0068】
細菌の非生菌化の好ましい方法は、LPSと結合してエンドトキシン活性をブロックするような化合物を用いた処理か、またはLPS生合成を妨げるような化合物を用いた処理である。LPS結合およびLPS生合成の阻害のどちらの方法でも、細胞外皮の透過性上昇の結果として生存率が低下した。別の試みは、LPS生合成経路における条件付き変異を用いることで細菌株を増殖させることである。この変異は、細菌株の増殖の間は抑制されており、その後、変異を活性化してLPS生合成を阻害する非許容状態へと移される。それぞれの例において、行われる工程は、各環境において、生存率を実質的に失活させつつ高い細菌細胞完全性を維持するように最適処理時間や化合物の最適投与量を決定することにより、細菌を非生菌化するものである。非生菌が100%未満のケースでは、哺乳動物体内における生菌のさらなる増殖を防ぐ変異体を含む細菌を使用することができる(例えば、非特許文献24、非特許文献25に説明されるようなジアミノピメリン酸栄養要求株)。
【0069】
代替的な、または追加の細菌非生菌化方法を望むなら、細菌を殺す好ましい方法は、電離放射線(ガンマ線や電子ビーム)があるが、湿式・乾式加熱、滅菌ガス・蒸気(非特許文献26を参照されたい。)といった他の標準的な滅菌方法を用いることもできる。使用し得る追加の非標準的な最終滅菌手法としては、化学滅菌といった化学処理が挙げられ、これは非特許文献27、および非特許文献28にまとめられている。化学ガス、蒸気および液体滅菌剤の例としては、エチレンオキシドガス(EOG)、二酸化塩素、気相過酸化水素水(VHP)、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド(例えば、≧0.05%、≧10分間)、オルト−フタルアルデヒド(OPA)(例えば、≧0.1%、≧5分間)、およびフェノールが挙げられる。細菌の死滅方法は、生物の完全性に影響を及ぼし得る。例えば、放射線の使用とは対照的に、加熱は細菌完全性にダメージを与えることがある。本明細書で使用された細菌生物としては、完全無欠な生物や、生物を死滅させたときに生じ得る生物の一部退化した形態を含むが、細胞壁分画(調製物)または細胞壁骨格(特許文献9を参照されたい。)、細胞質分画、およびこれに類する他の細胞成分から分離された生物の細胞内分画までは含まれない。
【0070】
D.組成物
一実施形態では、エンドトキシンおよび/または発熱活性を著しく低下させた非生菌グラム陰性菌生物と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含有する組成物が提案される。別の実施形態では、少なくとも約80%の生物が非生菌、または少なくとも約90%の生物が非生菌、または約100%の生物が非生菌である。一実施形態では、生物は、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%低下した生存率を有している。
【0071】
一実施形態では、エンドトキシンおよび/または発熱活性が約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%低下した。組成物は、エンドトキシンまたは発熱毒性の任意の予定減少量との組み合わせにおいて、任意の予定量の非生菌または生菌性の低下した細菌を含んでいてもよい。別の実施形態では、組成物は、少なくとも約95%したエンドトキシン活性および発熱性を有する約100%非生菌生物を含んでいる。
【0072】
本明細書に記載の組成物は、本明細書に記載されている種々の方法で処方することができる。一実施形態では、組成物は、本明細書中に記載されている生物と、薬学上許容可能な担体とを含んでいる。
【0073】
「薬学上許容可能な担体」とは、組成物において使用され得る任意の希釈剤、賦形剤、または運搬体を指す。薬学上許容可能な担体には、イオン交換体;アルミナ;ステアリン酸アルミニウム;レシチン;ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質;リン酸、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウムなどの緩衝物質;植物性飽和脂肪酸の部分的グリセリド混合物;水;硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩などの塩または電解質、コロイドシリカ、3ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸塩、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、羊毛脂が含まれる。適した調剤担体は、本技術分野において標準的な参考文献である非特許文献30に記載されている。これらの担体は、経口錠剤、カプセル、エリキシル剤、シロップなどの意図する投与剤形の観点から選ばれ、従来の薬学上の慣行と合致する。
【0074】
薬剤組成物は、従来周知の方法、中でも、発酵槽で微生物培養した後に、遠心分離による濃縮および洗浄、ろ過または透析、通常の造粒、混合、溶解、カプセル化、凍結乾燥、または乳化工程を経る方法により製造できる。組成物は、顆粒、沈殿物、粒子、フリーズドライ、回転乾燥、スプレードライパウダー、アモルファスパウダーを含む粉体、注射液、乳化液、エリキシル剤、懸濁液や溶液といった様々な剤形で製造できる。製剤処方は、任意に、安定剤、pH調整剤、界面活性剤、バイオアベイラビリティ調整剤、またはこれらの組み合わせを含むこともできる。
【0075】
薬剤組成物は、油、水、アルコール、これらの組み合わせなどの滅菌液を用いて、懸濁液や溶液として調製できる。薬学上適切な界面活性剤、懸濁剤、または乳化剤を、経口投与または非経口投与用に添加することができる。懸濁液は、ピーナツオイル、セサミオイル、コットンシードオイル、コーンオイル、オリーブオイルなどの油を含んでいてもよい。また、懸濁液調製物は、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、脂肪酸グリセリド、アセチル化脂肪酸グリセリドなどの脂肪酸エステルを含んでいてもよい。懸濁液調製物は、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサデシルアルコール、グリセロール、プロピレングリコールなどのアルコールを含んでもよい。ポリ(エチレングリコール)などのエーテル、鉱物油、ワセリンなどの石油炭化水素、そして水も懸濁液調製物に用いることができる。
【0076】
組成物は、哺乳類、好ましくは人間に対して薬剤投与する目的で調製される。このような本発明の薬剤組成物は、非経口を含めた種々の方法で投与され得る。本明細書の「非経口」とは、皮下、静脈、筋肉、関節内、滑液嚢内、肋骨下、くも膜下、肝内、病巣内および頭蓋内の注射または点滴技術を含む。
【0077】
滅菌注射可能な組成物の剤形としては、水性または油性の懸濁液が挙げられる。この懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤と、懸濁剤とを用いた従来公知の技術によって調剤することができる。滅菌注射可能な組成物は、例えば1,3−ブタンジオールの溶液などの、無毒で非経口摂取が可能な希釈液や溶媒の滅菌注射可能な溶液または懸濁液であり得る。中でも、使用される好ましい溶媒(ビークル)および溶剤は、水、リンガー溶液、生理食塩水である。加えて、滅菌された固定油は、溶剤または懸濁媒体として従来から使用されている。このため、合成モノ−またはジ−グリセリドなど任意の無菌性固定油を使用することができる。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、オリーブオイル、ひまし油などの天然の薬学上許容された天然オイルであるため、特にポリオキシエチル化された場合に、注射可能な剤形に調製するのに有用である。これらの油性溶液または油性懸濁液は、乳化物や懸濁液といった薬学上許容される投与剤形の調製に通常使用されているカルボキシメチルセルロースやそれに類似する分散剤などの長鎖アルコール希釈液や分散液を含んでいてもよい。その他広く使用されている界面活性剤、例えばTween(商品名)、Span(商品名)、その他の乳化剤、或いは、薬学上許容される固形、液体、その他の投与剤形の製造に通常使用されているバイオアベイラビリティ・エンハンサーもまた、調製用に使用することができる。組成物は、急速静注法や持続注入といった非経口投与用にも処方することができる。
【0078】
E.癌治療方法
本明細書に記載された方法による治療に適する癌としては、一般的に上皮性悪性腫瘍癌、白血病またはリンパ腫、非上皮性悪性腫瘍(肉腫)である。上皮性悪性腫瘍癌としては、肛門、胆道、膀胱、乳、結腸、直腸、肺、中咽頭、下咽頭、食道、胃、膵臓、肝臓、腎臓、胆嚢および胆管、小腸、尿路、女性生殖系管、男性生殖系管、内分泌腺、甲状腺、および皮膚のものが挙げられる。その他適する癌としては、カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、頭頸部腫瘍、未知の原発性腫瘍、血管腫、黒色腫(メラノーマ)、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、そして脳、神経、目、髄膜の腫瘍が挙げられる。
【0079】
いくつかの実施形態では、治療対象の癌は、例えば上皮性悪性腫瘍、肉腫、メラノーマ、リンパ腫などの固形腫瘍を形成している。
【0080】
本明細書に記載された癌治療は、癌の増殖や転移を阻害するのに十分な量のグラム陰性生物(生菌、死菌かはそれぞれの適正に応じて)を投与することにより実現する。本明細書において使用する「十分な量」の語は、被験者に有益な効果をもたらすのに十分な投与量(または連続投与量)のことをいう。任意の特定対象物に対する具体的な治療効果のある投与レベルは、治療対象の癌の種類、癌の重症度、特定の生物または混合組成物の活性度、投与経路、生物または混合組成物のクリアランス速度、治療時間、(もしあれば)生物と一緒に使用した薬、および被験者の年齢、体重、性別、食習慣、一般的な健康状態、そして医術および医療科学においてよく知られている同様の要因といった、様々な要因に依存する。「治療効果のある量」を決定するに当たって考慮される種々の一般的な事柄は、当業者の間でも知られており、例えば、非特許文献29や、非特許文献30にも記載されている。投与レベルは、典型的には約0.001から100mg/kg/日までの範囲内に収まり;通常は約0.05から10mg/kg/日が化合物にとっての適用範囲である。投与された生物に対する投与レベルは、典型的には約10から1012/mの範囲に収まる。組成物は、経脈管、静脈、動脈、筋肉、皮下などの非経口、経口、または同様の方法で投与することができる。細菌生物は、経脈管投与、静脈投与、動脈投与、筋肉投与、皮下投与、腹腔内投与、または膀胱内投与などの非経口投与することができる。
【0081】
治療効果のある投与量は、従来周知の手法で推量できる。マウス腫瘍を有する免疫応答性マウス、またはヒト腫瘍が異種移植された免疫低下マウス(例えばヌードマウス)を用いた癌動物モデルが従来周知であり、参照のために本明細書に組み込まれている多くの文献でも広く説明されている。これらの情報は、ラット、イヌ、および/または人間以外の霊長類の安全性試験と併用することにより、ヒトにおける安全で可能性のある初期投与量を決定するのに活用されている。生物の投与量を推定するためのさらなる情報は、実際のヒトの癌で試験することにより得られる。例えば、Tosoらは(非特許文献13、ページ142−152)、転移メラノーマを持つ患者に対してVNP20009生菌を投与したフェーズIの臨床試験について報告している。患者は、10(6)から10(9)cfu/m(2)のVNP20009を30分間ボーラス静脈注入された。最大許容投与量は3×10(8)cfu/m(2)であった。1×10(9)cfu/m(2)の投与を受けた患者には、血小板減少症、貧血症、持続性菌血症、高ビリルビン血症、下痢、嘔吐、吐き気、アルカリ性ホスファターゼの上昇、低リン血症などの用量制限毒性が見られた。
【0082】
本発明の生物は薬学上許容できる剤形で投与することができる。「薬学上許容できる」とは、生物学的なものではないか、或いは望ましくないものではない原材料を指す。つまり、選択された生物または混合化合物と一緒に個体に投与しても、いかなる望ましくない生物学的効果も生じないし、他のいかなる投与剤とも有害な作用を起こさない原材料である。この点についてはより十分に上述されている。
【0083】
本明細書に記載されている、ある状態や疾病のために対象を「治療する」とは、治癒することの他に、少なくともその状態や疾病の一症状を改善することも含むものと意図する。癌が治癒した時、癌が寛解した時、余命が統計上顕著に延びた時、腫瘍の進行にかかる時間が統計上顕著に延びた時、リンパ腫または造血器腫の各タイプに対して確立された標準基準に基づいてリンパ腫または造血器腫の全身腫瘍組織量が軽減した時、固形腫瘍における応答評価基準(非特許文献31および非特許文献32)に基づいて全身固形腫瘍組織量が減少した時に、癌患者が治療されたという。本明細書に記載されている「寛解」とは、以前癌の証拠が見られた患者の体内で増殖する癌細胞が存在しなくなることを指す。よって、寛解状態にある癌患者は、癌が治癒したか、癌は存在するものの容易に検出されない状態にある。したがって、腫瘍が成長できない時や転移できない時に癌が寛解したと言える。本明細書にある完全寛解とは、X線、MRI、CT、PETなどのイメージング診断や、血液や骨髄の生体検査といった診断法で示されるものとして、疾病が存在しないことを指す。癌患者が寛解に向かっても、癌が再発してぶり返すこともある。
【0084】
とくに断りがない限り、「著しく」とは約80%よりも大きいことを意味し、約90%よりも大きく、約95%よりも大きく、そして約99%よりも大きい。
【0085】
F.癌治療の組み合わせ
本明細書に記載された癌治療方法は、宿主免疫応答を負に調節する一つ以上の受容体拮抗薬またはリガンドと一緒のグラム陰性生物の投与を採用してもよい。拮抗薬は、PD−1、PD−L1、またはCTLA−4に対するものでよく、通常は、例えば約0.03mg/kgから約30mg/kgの範囲で、1週間から4週間ごとに静脈投与される。
【0086】
プログラム細胞死タンパク質1(PD−1)は、ヒトの体内ではPDCD1遺伝子によってコードされるタンパク質である。PD−1はまた、CD279(分化279のクラスタ)に分類される。PD−1は268のアミノ酸からなるI型膜タンパク質である。PD−1は、T細胞調節遺伝子(T cell regulators)の拡大CD28/CTLA−4ファミリーのメンバーである。例えば、非特許文献33を参照されたい。このタンパク質は、細胞外IgV領域を有し、次いで膜貫通領域と細胞内尾部を有する。細胞内尾部は、免疫受容体チロシンベース阻害性モチーフと免疫受容体チロシンベーススイッチモチーフ内に二つのリン酸化サイトを有する。これは、PD−1がTCRシグナル伝達を負に調節することを示唆する。PD−1は、活性化T細胞、B細胞、マクロファージの表面に発現する。PD−1は免疫反応の広域負調節剤である。
【0087】
PD−1は、B7ファミリーのメンバーであるPD−L1とPD−L2の二つのリガンドを有する。例えば、非特許文献34および非特許文献35を参照されたい。PD−1は40kDaの1型膜貫通タンパク質であり、妊娠、同種移植、自己免疫疾患、肝炎中の免疫システムを抑制する主な役割を担っていることが報告されている。PD−L1タンパク質は、LPSやGM−CSF処理に対する反応としてマイクロファージや樹枝状細胞(DC)上で上方調整され、TCRやB細胞受容体シグナル伝達に対してはT細胞やB細胞上で上方調整される。PD−1受容体/PD−L1リガンド複合体の形成は、阻害シグナルを伝え、(免疫反応中の)リンパ節におけるCD8+T細胞の増殖を減少させる。またPD−1は、アポトーシスを通じて、リンパ節中の外来抗原特異性T細胞の蓄積をコントロールすることができる。PD−L2の発現はより制限されており、主に樹枝状細胞やいくつかの腫瘍株により発現する。
【0088】
CD152(分化152のクラスタ)としても知られているCTLA−4(細胞傷害性Tリンパ球抗原4)は、免疫システムを下げるタンパク質受容体である。CTLA−4はヘルパー、エフェクター、および免疫制御性T細胞の表面に発現し、それにより細胞免疫が抗原を攻撃する。T細胞はCD28受容体を刺激することで働きはじめ、CTLA−4受容体を刺激することで働きを止めることができる。T細胞共刺激タンパク質のように、CTLA−4、CD28は、それぞれ、B7−1、B7−2とも呼ばれるCD80,CD86と抗原の存在する細胞上で結合する。T細胞受容体およびCD28を通じたT細胞の活性化は、B7分子の抑制性受容体であるCTLA−4の増加した発現を引き起こす。
【0089】
CTLA−4やPD−1に対する単クローン抗体(mAbs)により、T細胞活性を強化したり長くしたりすることができる。イピリムマブ(ipilimumab)およびトレメリムマブ(tremelimumab)はCTLA−4を阻害する単クローン抗体であり、抗腫瘍免疫反応を誘発したり高めたりして、耐久性のある抗腫瘍効果をもたらすことが示されている。イピリムマブ(MDX−010またはMDX−101としても知られている)は、ブリストル・マイヤーズ スクイブ社(Bristol Myers Squibb)から商品名Yervoyで、切除不能または転移性の悪性メラノーマの治療用として米国市場で販売されている。BMS−936558(MDX−1106)は、PD−1に対する単クローン抗体であり、ヒトの臨床試験において著しい抗腫瘍活性を示している。例えば、非特許文献36、非特許文献37、および非特許文献38を参照されたい。
【0090】
CTLA−4の阻害は、CTLA−4と免疫グロブリン(Ig)重鎖のFcから作られる融合タンパク質(CTLA4Ig)によっても得られる。例えば、非特許文献39を参照されたい。
【0091】
腫瘍ミクロ環境における免疫反応に対する負制御剤としてもう一つの重要なものは、シグナル伝達兼転写活性化(STAT)シグナル反応性転写因子STAT3である。腫瘍および関連する免疫細胞中でこの因子の活性が上昇する。腫瘍細胞中でのSTAT3の活性化は、血管形成の刺激のみならず、生命力の強化、増殖、浸潤、転移に寄与する。免疫細胞中で上昇したSTAT3活性は、Treg、Th17、骨髄由来抑制細胞などの免疫抑制細胞の、腫瘍ミクロ環境内での蓄積および活性化をもたらす。非特許文献40を説明のために参照されたい。広く使用されている2型糖尿病薬であるメトホルミンやフェンホルミンは抗腫瘍活性があることが示されており、そのメカニズムとしては、STAT3活性を阻害することで、抗腫瘍免疫抑制を減少させることが含まれると考えられている。非特許文献41、非特許文献42、非特許文献43、非特許文献44、非特許文献45を説明のために参照されたい。本明細書に記載される癌治療方法は、グラム陰性生物を、STAT3の発現または活性の阻害剤とともに投与することを採用してもよい。このような阻害剤としては、メトホルミンやフェンホルミンがある。メトホルミンは、例えば約50mgから約1000mgの範囲で、通常1日当たり1回から3回投与することができる。フェンホルミンは、一般的には約20mgから約800mgの範囲で、1日当たり1回から2回投与する。
【0092】
本明細書に記載される癌治療方法は、グラム陰性生物を、宿主免疫反応を正に制御する一つ以上の受容体作動薬またはリガンドとともに投与することを採用してもよい。4−1BB(CD137)、GITR、CD40、またはOX40(CD134)に対する作動薬は、例えば約0.03mg/kgから約30mg/kgの範囲で、1週間から4週間ごとに静脈投与することができる。
【0093】
グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体(TNFR)関連タンパク質(GITR)、4−1BB(CD137)、CD40、OX40(CD134)は、共刺激TNFRファミリーのメンバーであり、制御性およびエフェクターT細胞、並びに、免疫システムのその他細胞上に発現する。これらのタンパク質の活性化は、免疫機能の刺激または強化をもたらす。これら個々のタンパク質に対する単クローン抗体を活性化することは、前臨床モデルにおいて抗腫瘍活性を示しており、臨床開発へと進んでいる。非特許文献46、非特許文献47、非特許文献48、非特許文献49、非特許文献50、非特許文献51を参照されたい。
【0094】
本明細書に記載された癌治療方法では、グラム陰性生物を、一つ以上の化学療法剤と共に投与することを採用してもよい。この様な剤としては、シクロホスファミドを含んでいてもよい。本明細書に記載された方法においてシクロホスファミドを使用する際には、5mg/mから750mg/mの範囲で、毎日または21日ごとに、静脈投与または経口投与を試みた。別の方法として、シクロホスファミドは、例えば5mgから100mgの投与量の低用量メトロノミクス法において、毎日、経口投与されてもよい。非特許文献6もまた参照されたい。
【0095】
抗腫瘍免疫反応の刺激も、種々のサイトカインを用いて行われている。例えば、非特許文献52および非特許文献53を説明のために参照されたい。本明細書に記載された癌治療方法では、グラム陰性生物を、インターフェロン−アルファ、インターフェロン−ベータ、インターフェロン−ガンマ、顆粒状マイクロファージコロニー刺激因子、インターロイキン−2、インターロイキン−12などの、組換発現または単離され、かつ精製されたサイトカインとともに投与することを採用してもよい。
【0096】
本明細書に記載された癌治療方法では、組換発現または単離され、かつ精製されたインターフェロン−アルファとともに投与されたグラム陰性生物を使用してもよい。インターフェロン−アルファは、約3×10から約3×10IUの範囲で、週に1、3、5、または7回、皮下、筋肉内、または静脈のいずれかで投与することができる。別の実施形態では、グラム陰性生物を、インターフェロン−ベータとともに投与してもよい。ある実施形態では、インターフェロン−ベータを、約0.01mgから約5mgの範囲で、週に1回または一日おきに、皮下または静脈に投与する。インターフェロン−ガンマが一緒に投与され得る。一実施形態では、インターフェロン−ガンマは、約1×10IUから約1×10IUの範囲で、一回のみまたは毎日、皮下または静脈に投与され得る。
【0097】
追加の方法では、インターロイキン(例えばインターロイキン−2やインターロイキン−12)が一緒に投与され得る。一実施形態では、グラム陰性菌との組み合わせにおいて、インターロイキンが、約1×10から約1×10IUの範囲で、週に一回から日に3回まで、静脈投与され得る。さらなる方法は、例えば、一般的に約5μgから約5mgの範囲の顆粒状マイクロファージコロニー刺激因子とともに、毎日または毎月、皮下、皮内、又は静脈にグラム陰性菌を投与することを含む。ここに記載されたいずれの組み合わせ治療においても、生物は、追加の癌治療を施す前又は後に投与するようにしている。また生物は、同時に投与することもできる。
【0098】
以下の実施例は、本開示を説明する役目を果たす。これらの実施例は、本開示の範囲を何ら制限するものではない。
【実施例1】
【0099】
リポ多糖に関連したエンドトキシン活性の不活性化、および細胞完全性を失うことなくポリミキシンBにより細菌細胞を死滅させるための最適条件は、37℃にて、濃縮後期対数(増殖期)細菌(10から1011/mL)を、濃度1〜100μg/mLのポリミキシンBを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で、2分間から6時間の間の様々な時間にわたり培養することにより、各細菌株について決定する。生存率は、増殖可能な寒天プレート上にコントロールおよび処理済み細菌懸濁液を連続希釈プレーティングし、その後一晩培養し、コロニー計測することにより測定する。細胞完全性は、目視(顕微鏡)検査、および600nmにおける吸光度分析により測定する。エンドトキシン活性は、カブトガニ血球抽出成分(LAL)評価により測定する。可溶性のまたは過剰のポリミキシンおよび細胞残屑は、可溶性エンドトキシンも含め、0.9%のNaCl(通常の生理食塩水)を用いて遠心分離洗浄により取り除かれる。
【0100】
別の方法として、条件付き突然変異の結果生じたLPS欠損を有する、無傷の、非生菌の単離のための最適条件は、細菌が非許容状態のLB(溶原培地)媒質内で増殖され、数回にわたり取り除かれる点を除き、ポリミキシン処理に関して記述されたのと同様の方法で決定し、ポリミキシン処理に関して記述されたのと同様の分析および処理を経る。
【0101】
ポリミキシン処理を行った細菌、または生理食塩水で洗浄された後期対数期LPS変異体/欠損細菌は、抗凍結剤としてのトレハロースを用いてフリーズドライされる(例えば、非特許文献17、非特許文献18、非特許文献19を参照されたい。)。希望に応じて、細菌の生存率は、細菌完全性を消失させることなく生存率を0%にまで低下させるのに十分な照射量のイオン化放射線を用いた処理によってさらに低下される。
【0102】
フリーズドライされた細菌は、抗腫瘍試験に使用される前に、滅菌水中に再懸濁される。PBSで洗浄されたマウス癌細胞(B16およびB16F10メラノーマ、CT−26大腸癌、Panc02膵臓癌、またはルイス肺癌(細胞株に応じて10〜10細胞))は、毛を剃ったC57BL/6マウスの背中に皮下移植される。マウスは無作為に選ばれ、腫瘍が最初に触診されたとき、腫瘍が平均体積で75mmに達したとき、または腫瘍が平均体積で300mm(ノギス計測により算出)に達したときから治療が開始される。再懸濁された細菌は、週に1回から2回、尾静脈または腹腔内(i.p.)より、0.1〜0.2mL注入量中10から1010の各投与量で注射される。T細胞受容体を対象とした抗体拮抗薬または抗体作動薬は、3〜100mgの各投与量で、週に1回から2回、腹腔内投与される。シクロホスファミドは、隔日ペースで5日間、150mg/kgまでの投与量で(MTD投与)、または飲料水中に毎日25mg/kgの投与量で(低用量メトロノミクス法投与)、腹腔内投与される。マウスは、週に2回体重を計測され、また、臨床観察が記録される。腫瘍測定(ノギス計測)は週に2回行われ、腫瘍が1000mmに達したとき、壊死したとき、または15%以上の減量が観察されたときは、マウスは安楽死させられる。犠牲となったマウスからは腫瘍が取り除かれて評量され、また最低限の解剖が行われる。もし長期的な腫瘍の退縮や治癒が観察された場合は、マウスは再び腫瘍細胞の移植に用いられる場合がある。
【実施例2】
【0103】
実施例2では、大腸菌株2617−143−312(Migula)Castellani and Chalmers(ATCC(登録商標)13070)を使用した。この無害グラム陰性菌は、増殖するのに外来栄養のジアミノピメリン酸(DAP)を必要とする。哺乳動物はDAPを作らないため、この菌株は生菌ではなく、哺乳動物体内において感染を起こすことはできない。加えて、DAPの栄養要求性は、インビトロ試験における汚染観察にも使用可能である。細菌は、2mMのMgCl、0.5%のグルコース、および1mMのDAPを有するLBミラー培養液(Miller)中、37℃下で、300rpmにて一定振動させることにより、後期対数期(O.D.600に基づく)まで増殖された。培養物は、2000×gにて15分間の遠心分離、および、20mMのMgCl、0.5%のグルコース、および0.1mMのDAPを有する4℃のLBミラー培養液(PMB処理培地)への再懸濁により、3回洗浄した。最終的な再懸濁は、O.D.600が1の場合に1.12×10菌/mLに相当するとの基準の下、2×1010菌/mLにて行われた。各培養物試料は、さまざまな濃度のポリミキシンB(PMB)(Calbiochem#5291)を用いずに、および用いて、4℃、一定攪拌下にて1時間培養された。その後細菌は、3000×gにて10分間の遠心分離、および2×10菌/mLでの再懸濁により、4℃の未使用PMB処理培地を用いて3回洗浄された。細菌回復効率はO.D.600を追跡することにより測定した。PMB処理および洗浄後の細菌回復は、濃度300μg/mLまでのPMBで処理したすべての試料において90%よりも大きく、また濃度1000μg/mLのPMBで処理した試料において80%を超えた。
【0104】
図1において、エンドトキシン活性は、未処理の、または処理された細菌培養物の連続希釈物を、カブトガニ血液ライセート(LAL)Endosafe Endochrome−K動態検査キット(サウスカロライナ州、チャールストン拠点のCharles River社製、Endosafe)を用いて分析することにより測定された。未処理の培養物は、主として約50〜100エンドトキシン単位/1×10菌を有していた。独立した4回の実験において、1000μg/mLのPMBを用いた処理について同程度のエンドトキシンの低下が見られた(平均=未処理の場合の17%)。
【0105】
図2において、細菌の生存率は、各試料を連続希釈し、2mMのMgClおよび0.5%のグルコースを有し、かつ1mMのDAPを有する/有しない(それぞれ、生存率と汚染度を測定するため)LBミラー寒天プレート上にその試料をプレーティングすることにより測定した。プレートは37℃下で一晩培養され、各プレート上のコロニー数が計測され、そして各プレート上のコロニー数に希釈係数を掛けることにより、生存率が算出された。各懸濁液中の細菌の総数は、O.D.600に、O.D.600=1あたり1.12×10菌/mLの変換係数を掛けることにより算出した。生存率(%生菌)は、細菌総数に対する生菌/mLのパーセントとして算出した。1000μg/mLのPMBを用いた処理は、細菌の生存率を0%に低下させた。スケールアップした後続実験では、独立した4回の実験において、1000μgのPMBが生存率を平均11%まで低下させた。
【実施例3】
【0106】
実験は、処理前洗浄、グルタルアルデヒド(GA)処理、および処理後洗浄を、20mMのMgClを含むpH7.5のリン酸緩衝生理食塩水(PBS;MgおよびCaを含まない)を用いて行ったことを除いては、実施例2に記載された方法で行った。GA処理後の細菌回復は、実験した全ての濃度において、典型的には80〜100%であった。図3は、1%のGAを用いた処理が、エンドトキシン活性を96%低下させることを示す。濃度1%GA処理を用いた、2Lにスケールアップした実験では、エンドトキシン活性が未処理培養物に対して82%低下した。
【0107】
図4に示すように、GAを用いた処理は、投与量が0.05%を上回る場合は常に、100%の殺菌をもたらした。
【0108】
濃度1000μg/mLのPMB処理の後に、2Lの後期対数期の培養物を用いた1%のGA処理を組み合わせることは、細菌の生存率を0%とし、またエンドトキシン活性を未処理培養物に対して92%(12倍)低下させた(表1)。
【実施例4】
【0109】
実施例4では、実施例2および3に記載された手順どおりに、細菌を培養し、1000μg/mLのPMB、1%のGA、またはその両方を用いて処理した。試料は、pH7.5で1%GAを含むPBSで希釈され(そうでなければ、前もってGAにさらし)、10分間固定させた。この菌を含んだ25mLの液滴がパラフィルム上に置かれ、あらかじめ0.1%のポリ−L−リシンでコーティングされた100メッシュのフォルムバール+カーボンEMグリッド(ペンシルバニア州、ハットフィールド拠点、EMS社製)で覆われた。試料は10分間付着させ、その後グリッドは200mLの水滴上にのせることで簡単に3回洗浄した。グリッドは、100mLの2%酢酸ウラニル水溶液の液滴上に1分間のせることでネガティブ染色した。余剰の染色剤は3M濾紙で吸い取り、自然乾燥した。試料は、ボトムマウントEagle4K(16メガピクセル)のディジタルカメラ(倍率1200倍および11000倍)を備えた、FEI Tecnai Spirit G2 BioTWIN透過型電子顕微鏡で可視化した。図5B、5C、5Dの画像は、本方法に従って行ったPMBおよび/またはGA処理は、細菌を無傷なままにし、好ましい結果となることを裏付ける。多糖類カプセルが未処理の細菌(図5A)上に見られる(ぼやけた表面)が、これは処理されたすべての細菌(図5B、5C、5D)においては取り除かれたか、艶消し(matted down)されたようである。
【実施例5】
【0110】
実施例5では、大腸菌類が培養され、そして1000μg/mLのPMBと1%のGAとで処理されて、実施例2および実施例3に記載された方法で生存率およびエンドトキシンレベルが測定された。最終洗浄後、未処理の細菌、およびPMB+GA処理された細菌を、0.5mMのMgClおよび12%のトレハロースを含むpH7.5の50%PBS中に、濃度が1.1×1011菌/mLとなるよう再懸濁したのちに、この試料を等量分割し、急速冷凍し、そして−80℃で保存した。発熱性閾値は、原則として、非特許文献20に記載されているとおりに決まる。少なくとも2.0kgの体重があるメスのニュージーランドシロウサギの成体を用いた。すべての動物は、発熱性テストの前に最長7日、疑似試験状態にした。投与量範囲は1投与あたり1匹のウサギを用いて検討し、その結果を1投与あたり2匹のウサギを用いて継続確認した。細菌は、注入できるように無菌食塩水で希釈した。すべての投与は10mLを静脈内投与して行った。試験剤投与3時間のうちのいずれかの時点で0.5〜1.0℃の温度上昇をもたらした試験剤のうちの最も低い濃度が、発熱性閾値を表していると考えた。ベースライン、および試験剤の注入後1時間から3時間の間で30分ごとに、直腸温度を記録した。未処理および処理された大腸菌類の保存に使われた生理食塩水希釈溶媒は、発熱性を示さないことが示された。2匹のウサギへの未処理の細菌3×10の投与は、0.8℃および1.0℃の温度上昇をもたらした。PMB+GA処理された細菌3×10の投与は、0.1℃より大きな温度上昇をもたらさなかったが、2匹のウサギへのPMB+GA処理された細菌9×10の投与は0.7℃および1.0℃の温度上昇をもたらし、発熱性閾値の差が30倍であることを明示した。PMBはリポ多糖を介した発熱活性のみを失活させる可能性がある。一方、GAはリポ多糖を介した発熱性も、細菌中の他の成分を介した発熱性も失活させるのかもしれない。
【0111】
表1は、未処理の細菌、および1000μg/mLのPMBと1%のGAとで処理された細菌の、ウサギを使った標準的なインビボ試験により測定された発熱性(熱性反応)閾値を示す。測定値をインビトロLAL評価で測定したエンドトキシンレベルと比較したところ、未処理の細菌の場合に対し、PMB+GA処理はエンドトキシンレベルを12倍低下させるものの、同じ試料を介した発熱性は30倍低下した。
【0112】
【表1】
【実施例6】
【0113】
実施例6では、実施例2および実施例3に記載された手順に従い、大腸菌類を培養し、1000μg/mLのポリミキシンBと1%のGAとで処理した。未処理の細菌および処理された細菌の冷凍ストックを37℃下で急速解凍し、注入(静脈投与量≦3×10細菌)できるように無菌食塩水で少なくとも10倍に希釈するか、または注入(静脈投与量≧5×10細菌)できるように、3000×gで10分間遠心分離した後に無菌食塩水で再懸濁した。細菌または溶媒は、尾静脈を通じて100mLを静脈注入した。
【0114】
生後8週間のC57BL/6またはBALB/cメスマウスを用い、試験の前に少なくとも7日間は環境順化させた。日に1〜2回、死亡観察および臨床観察を行った。注入時、および注入後1〜4時間の時点で追加観察を行った。溶媒には毒性がほとんどないことが確認された。症状観察も行ったが、それは以下に記載するものに限定されない:
皮膚、毛、目、粘膜、足取り、姿勢、および分泌/排せつといった処理に対する反応、または流涙、立毛、異常呼吸パターンといったその他の自律神経活動の兆候;発作の発生;通常覚醒の変化;過剰な毛繕いや反復旋回といった典型的な行動;異常行動(自傷行為);こぶや腫れ物の発達(腫瘍、膿瘍など);ストレスおよび/または呼吸器症状の信号上昇;注射箇所における刺激や炎症の兆候;消費する飲食物および糞尿物の変化。
【0115】
複数回にわたる細菌投与試験を、週に2回、2週間(4処理)行った。動物の体重測定を含む毒性試験を行った。PMB+GA処理された細菌(投与量1×10)について報告されている、複数回投与試験に使用したマウスは腫瘍を有していた。表2に報告されているその他の全てのマウスは腫瘍を有していなかった。
【0116】
【表2】
【実施例7】
【0117】
実施例7では、実施例2および実施例3に記載された手順に従い、1000μg/mLのPMBと1%のGAとで処理された細菌(DB103)を調製した。生後8週間のC57BL/6Jメスマウスに対し、注射する箇所の毛を剃り、右わき腹から2×10のB16F10マウスメラノーマ細胞(ATCC CRL−6475)を皮下注入した。尾静脈を通じた静脈投与処置が3日後に開始され、週2回で計5回続けた。0.5mMのMgClおよび12%のトレハロースを含むpH7.5の50%PBS溶液中に、濃度が1.1×1011菌/mLとなるように入れたDB103を、無菌食塩水で11倍(1×10投与)または220倍(5×10投与)に希釈し、最終的に100mLの量を注入した。溶媒コントロール処理グループについては、ストックしていた溶媒を11倍に希釈した。腫瘍は、毎週2回ノギスで計測し、腫瘍体積は(長さ×幅)/2の計算式で算出した。化合物と関連した死亡は見られなかった。1×10のDB103で処理された2匹を除き、すべての動物で腫瘍が発達した。最大3%(低用量グループ)および7%(高用量グループ)の一時的な体重低下が見られたが、最終処理後に回復した(図6)。
【実施例8】
【0118】
実施例8では、実施例2および実施例3に記載された手順に従い、大腸菌類(未処理および1%GA処理)を調製した。実験は、腫瘍が触知できるようになった11日目に処理を開始したことを除き、実施例7に記載された手順に従い行った。24日以降は腫瘍の負担から各グループにおける動物数匹を安楽死させなければならなかったため、ほとんどのグループにおいてグループ測定の記録は行わなかった。腫瘍はすべての動物で発生した。1×10GAグループでの最大減量は11%であった。毒性が未処理の大腸菌類1×10の投与を不可能にした(表2を参照)。
【実施例9】
【0119】
実施例9では、実施例2および実施例3に記載された手順に従い、1000μgのPMBと1%のGAとで処理された細菌(DB103)を調製した。実験は、1×10のマウスCT26直腸癌細胞をBALB/cマウスの右わき腹から皮下投与したことを除き、実施例7に記載された手順に従い行った。DB103処理は、尾静脈を通じて静脈投与することで3日後に開始し、週2回で計6回続けた。シクロホスファミド(LKTラボラトリーズ社製、#C9606)は、3日目から〜20mg/kg/日(水中0.133mg/mL)で飲料水を通じて継続的に投与された。200μLのPBS中100μgの抗マウスCTLA−4抗体(BioXcell #BE0164)を3日目、6日目、9日目に腹腔内投与した。臨床観察及び死亡率は毎日記録した。腫瘍は、ノギスで毎週2回計測し、腫瘍体積は(長さ×幅)/2の計算式で算出した。腫瘍は溶媒グループのすべてのマウスで発生した。いずれのグループにおいても、減量および化合物関連の死は見られなかった。図8Aおよび8Bでは、溶媒、低用量、および高用量DB103グループのデータは、同じであった。
【0120】
本明細書で言及されているすべての特許および刊行物は、本開示が属する技術分野における当業者の技術水準を示すものである。すべての特許および刊行物は、各刊行物が具体的かつ個別に参照によって組み込まれた場合と同程度に、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0121】
本明細書に例示的に記載された本開示は、本明細書に具体的に開示されていない、任意の構成要件や制限が存在しない場合でも、適切に実施されうる。したがって例えば、本明細書の例示の任意の文言「を有する(含む、含有する)」、「を実質的に有する(含む、含有する)」、「のみからなる」は、それぞれ他の2つの文言のいずれかに置き換えることができる。本明細書に記載された文言や表現は制限のためではなく説明のために使用したものであり、これらの文言や表現を使用することが全部または一部が示され記載されている均等な構成要素を排除することを意図するものではなく、特許請求の範囲の範囲内において種々変更を加え得ることはもちろん可能である。このように、たとえ本開示が好ましい実施例や選択的要素により具体的に記載されていても、本明細書で開示されたコンセプトの修正および変更は当業者に帰属し、そのような修正および変更は、特許請求の範囲に定義された開示の範囲に属すると理解すべきである。その他の実施形態は以下の特許請求の範囲に明記する。
図1
図2
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図8