(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6125093
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】車両シート用の前後方向アジャスタ、及び車両シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/07 20060101AFI20170424BHJP
B60N 2/44 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
B60N2/07
B60N2/44
【請求項の数】17
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-506858(P2016-506858)
(86)(22)【出願日】2014年4月4日
(65)【公表番号】特表2016-514650(P2016-514650A)
(43)【公表日】2016年5月23日
(86)【国際出願番号】EP2014056812
(87)【国際公開番号】WO2014166833
(87)【国際公開日】20141016
【審査請求日】2015年12月3日
(31)【優先権主張番号】102013206251.6
(32)【優先日】2013年4月9日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102013208003.4
(32)【優先日】2013年5月2日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511007886
【氏名又は名称】ジョンソン コントロールズ コンポーネンツ ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】シューマン、 カイ
(72)【発明者】
【氏名】ライマー、 ペーター
(72)【発明者】
【氏名】トイフェル、 インゴ
【審査官】
望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−155242(JP,A)
【文献】
特開2003−072439(JP,A)
【文献】
英国特許出願公開第00388339(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/07
B60N 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両シート(1)用の前後方向アジャスタであって、ロアレール(5)と、前後方向に移動させることができるように前記ロアレール内に案内されるアッパーレール(3)と、前記アッパーレール(3)と前記ロアレール(5)との間に配置され且つ前記アッパーレール(3)及び前記ロアレール(5)と接触する少なくとも1つの軸受要素(30)とを備え、少なくとも1つの支持要素(20)が設けられ、前記支持要素は、前記アッパーレール(3)及び前記ロアレール(5)に接触し、且つ回転可能な支持ローラー(22)を有し、前記支持ローラー(22)は、鉛直方向に延びる回転軸(A)を中心に回転させることができ、前記少なくとも1つの支持要素(20)は、前記支持ローラー(22)に鉛直方向に荷重をかける支持ばね(26)を備える、前後方向アジャスタ。
【請求項2】
前記少なくとも1つの支持要素(20)は進行方向における前記前後方向アジャスタの後方領域に配置される、請求項1に記載の前後方向アジャスタ。
【請求項3】
複数の支持要素(20)が設けられ、前記支持要素は進行方向において互いに前後に配置される、請求項1又は2に記載の前後方向アジャスタ。
【請求項4】
前記支持ばね(26)は、概ね中空円筒状の基体と、前記基体から半径方向及び/又は軸方向に突出する複数のばねアーム(28)とを有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の前後方向アジャスタ。
【請求項5】
前記支持ばね(26)は波形ばねとして設計される、請求項1から4のいずれか1項に記載の前後方向アジャスタ。
【請求項6】
前記支持ローラー(22)は鉛直方向に対して傾斜した面を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の前後方向アジャスタ。
【請求項7】
前記少なくとも1つの支持要素(20)は前記ロアレール(5)上に配置される、請求項1から6のいずれか1項に記載の前後方向アジャスタ。
【請求項8】
前記少なくとも1つの支持要素(20)は横方向において前記ロアレール(5)に対して偏心して配置される、請求項7に記載の前後方向アジャスタ。
【請求項9】
前記支持ローラー(22)は円柱デザインの軸受ピン(24)に回転可能に取り付けられ、前記軸受ピン(24)の中心軸は前記回転軸(A)と位置合わせされる、請求項1から8のいずれか1項に記載の前後方向アジャスタ。
【請求項10】
前記軸受ピン(24)は前記支持ばね(26)を貫通する、請求項9に記載の前後方向アジャスタ。
【請求項11】
前記軸受ピン(24)は前記レール(3,5)の一方に固定され、且つ前記レール(3,5)から離れたその端部にフランジ状の拡幅部分を有する、請求項9又は10に記載の前後方向アジャスタ。
【請求項12】
接触間隔(L1)が前記支持ローラー(22)の支持幅(L2)よりも大きい、請求項1から11のいずれか1項に記載の前後方向アジャスタ。
【請求項13】
前記接触間隔(L1)は前記支持ばね(26)の支持間隔(L3)よりも大きい、請求項12に記載の前後方向アジャスタ。
【請求項14】
前記支持ローラー(22)は非金属材料から成る、請求項1から13のいずれか1項に記載の前後方向アジャスタ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の少なくとも1つの前後方向アジャスタを備える車両シート(1)。
【請求項16】
前記複数の支持要素(20)は2つの支持要素(20)である、請求項3に記載の前後方向アジャスタ。
【請求項17】
前記支持ローラー(22)はプラスチック材料から成る、請求項14に記載の前後方向アジャスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の特徴を有する車両シート用の前後方向アジャスタに関するものである。本発明は更に、請求項15の特徴を有する車両シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な前後方向アジャスタと一般的な車両シートが、特許文献1に開示されている。前後方向アジャスタは、いずれも互いに対して移動可能な2つのシートレール(すなわち、互いを囲み合うアッパーレール及びロアレール)を有する、2つのレール対を含む。アッパーレールは、ロアレールに対して快適性の調整領域内で及び更にイージーエントリー位置に移動させることができる。
【0003】
アッパーレールとロアレールとの間に軸受要素が設けられ、前記軸受要素は、好ましくは、プラスチック材料から成るボールケージと、ボールケージ内に回転可能に搭載された金属製ボールとを備える。この例のボールケージはアッパーレールとロアレールとの間の中間スペースに配置され、ボールはアッパーレール及びロアレールと接触している。ロアレールに対するアッパーレールの移動の間、ボールはレール上を転がる。
【0004】
ボールケージの最後のボールに対する最初のボールの間隔は、アッパーレールとロアレールとの間の支持長さを定義する。最初のボールと最後のボールは、一般に、ボールケージの端部の近くに配置される。従って、ボールケージの長さは、概ねアッパーレールとロアレールとの間の支持長さに相当する。支持長さが大きいほど、前後方向アジャスタの剛性は大きい。
【0005】
所定の調整経路によるアッパーレールのロアレールに対する移動では、ボールケージはこの調整経路の半分だけ正確に移動する。ボールケージの最大可能長さは、このようにして、アッパーレールとロアレールの長さ及び最大調整経路によって決められる。結果として、前後方向アジャスタの支持長さ及び剛性も限定される。
【0006】
前後方向アジャスタの高い剛性度は、車両シートの高い固有振動数をもたらす。ここで、車両シートの可能な限り高い固有振動数は、車両シートに伝達される車両のシャーシによる低周波励起が増大につながらず、従って厄介な騒音又は振動につながらないので、望ましい。前記騒音は、空いている(すなわち、乗員が占有していない)車両シートで主に発生し得る。
【0007】
特許文献2には、一方で、アッパーレールとロアレールとの間に配置された回転可能なボールと、他方で、ロアレールに取り付けられた円筒状ローラーとを備える、車両シート用の前後方向アジャスタが開示されている。
【0008】
特許文献3には、同様に、アッパーレールとロアレールとの間に配置された回転可能なボールと、更に、横方向に延びる軸を中心に回転可能な円筒状のガイドローラーとを備える、車両シート用の前後方向アジャスタが開示されている。
【0009】
特許文献4には車両シート用のローラーガイドが開示されている。ローラーガイドは、横方向に延びる軸を中心に回転可能に取り付けられたガイドローラーを備え、前記ガイドローラーはガイドレール上を転がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許出願公開第102011011766号明細書
【特許文献2】独国実用新案第202006016652号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0067123号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第102004038507号明細書
【特許文献5】英国特許出願公開第388339号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、冒頭で述べたタイプの前後方向アジャスタ及び車両シート、特に前後方向アジャスタの剛性を改善することと、その結果、車両シートの固有振動数を増大させることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、請求項1に記載された特徴を有する前後方向アジャスタによって本発明に従って達成される。
【0013】
個別に又は互いに組み合わせて使用することができる有利な実施形態が従属請求項の主題を形成する。
【0014】
車両シート用の一般的な前後方向アジャスタは、ロアレールと、前後方向に移動させることができるようにロアレール内に案内されるアッパーレールと、アッパーレールとロアレールとの間に配置され且つアッパーレール及びロアレールと接触する少なくとも1つの軸受要素とを備え、少なくとも1つの追加の支持要素が設けられ、前記支持要素はアッパーレール及びロアレールに接触し且つ回転可能な支持ローラーを有する。
【0015】
本発明によれば、この例では、支持ローラーは鉛直方向に延びる回転軸を中心に回転させることができ、少なくとも1つの支持要素は支持ローラーに鉛直方向に荷重をかける支持ばねを備える。
【0016】
支持要素は、このようにして、アッパーレールとロアレールとの間に軸受要素から離間する追加の支持点を定める。支持長さは、その結果、概ね支持要素と軸受要素によって形成された前方支持点との間の間隔に相当する。軸受要素の前方支持点は、支持要素から離れた軸受要素の端部の近くに位置する。従って、支持長さが増大し、その結果、前後方向アジャスタの剛性も増大する。
【0017】
回転可能な支持ローラーが追加の支持点を定めるので、アッパーレール又はロアレールが支持要素に沿ってスライドし、支持ローラーがアッパーレール上又はロアレール上で転がる場合に生成される摩擦は比較的少量である。支持ばねが支持ローラーに鉛直方向に作用するので、アッパーレール又はロアレール及び支持要素の製造公差を補償することができ、支持要素がアッパーレール及びロアレールと常に接触することが保証される。
【0018】
有利には、少なくとも1つの支持要素は、進行方向において前後方向アジャスタの後方領域に配置される。結果として、前後方向アジャスタの支持長さは、軸受要素が進行方向において前後方向アジャスタの前方領域に位置する場合に増大する。軸受要素が進行方向において前後方向アジャスタの前方領域に位置する場合、アッパーレールはロアレールに対して快適性の調整領域内で及びイージーエントリー位置へも移動させることができる。
【0019】
好ましくは複数の、特に2つの支持要素が設けられ、2つの支持要素は、好ましくは、進行方向において互いに前後に配置される。
【0020】
本発明の有利な実施形態によれば、支持ばねは、概ね中空円筒状の基体と、基体から好ましくは軸方向に又は半径方向に又は半径方向及び軸方向に突出する複数のばねアームとを有する。
【0021】
本発明の他の有利な実施形態によれば、支持ばねは波形ばねとして設計される。
【0022】
支持ローラーは、好ましくは、鉛直方向に対して傾斜した面を有し、また、支持ローラーによって定められる支持点はこの面上に位置する。
【0023】
好ましくは、少なくとも1つの支持要素はロアレール上に配置され、その結果、車両に固定される。
【0024】
有利には、少なくとも1つの支持要素は横方向においてロアレールに対して偏心して配置される。結果として、ロアレールに対する移動中、アッパーレールは横方向において一方の側でのみ支持要素の支持ローラーと接触する。鉛直方向に延びる回転軸を中心とする支持ローラーの回転がそれによって可能になる。
【0025】
支持ローラーは、好ましくは、円筒デザインの軸受ピンに回転可能に取り付けられ、その中心軸は回転軸と位置合わせされる。
【0026】
好ましくは、支持要素は軸受ピンが支持ばねを貫通するように構成される。
【0027】
本発明の有利な発展形態によれば、軸受ピンはレールの一方に(すなわち、アッパーレール又はロアレールに)固定され、このレールから離れたその端部にフランジ状拡幅部分を有する。フランジ状拡幅部分は、支持ローラーが支持ばねによってレールから離れる方向に更に押されるのを防ぐことができる。
【0028】
有利な実施形態によれば、接触間隔が支持ローラーの支持幅よりも大きい。接触間隔は、この例では、支持ローラー上のアッパーレールの支持点と支持ローラーの回転軸との間の間隔である。
【0029】
支持幅は鉛直方向における支持ローラーの範囲である。結果として、支持ローラーに傾動モーメントが作用し、前記傾動モーメントは軸受ピンに対して相対的に支持ローラーに作用する。結果として、軸受ピンと支持ローラーとの間で鉛直方向に作用する摩擦力が増大し、前後方向アジャスタの剛性は更に増大する。
【0030】
また、有利な実施形態によれば、接触間隔は支持ばねの支持間隔よりも大きい。この例における支持間隔は、回転軸に対する支持ローラー上の支持ばねの作用点の間隔である。
【0031】
好ましくは、支持ローラーは、特にプラスチック材料で作られた、非金属材料から成る。結果として、支持ローラーは、比較的低い重量と、軸受ピン及びアッパーレールに対して十分に高い摩擦値を有する。
【0032】
上記目的は、請求項15に記載された特徴を有する車両シートによって達成され、前記車両シートは本発明に従う少なくとも1つの前後方向アジャスタを有する。車両シートの固有振動数は、前後方向アジャスタの増大した剛性によって増大する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図面に示される有利な実施形態を参照して、本発明を以下でより詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【
図1】後方調整位置にある前後方向アジャスタのレール対の平面図を示す。
【
図2】前方調整位置にある前後方向アジャスタのレール対の平面図を示す。
【
図3】後方調整位置にあるレール対の、
図1の切断線A−Aに沿った断面を示す。
【
図4】前方調整位置にあるレール対の、
図2の切断線B−Bに沿った断面を示す。
【
図5】後方調整位置にある第1の例示的な実施形態に従うレール対の、
図3の切断線C−Cに沿った断面を示す。
【
図6】第1の例示的な実施形態のレール対の部分分解図を示す。
【
図8】後部調整位置にある第2の例示的な実施形態に従うレール対の、
図3の切断線C−Cに沿った断面を示す。
【
図9】第2の例示的な実施形態のレール対の部分分解図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
自動車用の車両シート1(本例では後座席)が、座部2と、座部2に取り付けられ且つ傾きが調整可能な背もたれ10とを有する。車両シートは、しかしながら、前座席であってもよい。
【0035】
車両の内部の車両シート1の配置と車両の通常の進行方向は、以下で使用される方向情報を定義する。この例では、地面に対して垂直に向けられた方向を以下で鉛直方向と称し、鉛直方向に対して垂直且つ進行方向に対して垂直な方向を以下で横方向と称する。
【0036】
ヘッドレスト(図示せず)もまた鉛直方向において背もたれ10の上端に取り付けられ、前記上端は座部2から離れている。
【0037】
車両シート1は、前後方向アジャスタを用いて前後方向に調整可能であり、前後方向アジャスタは、自動車の車両フロアに接続された2つのロアレール5と、2つのアッパーレール3とを有する。これは、座部2が、背もたれ10と共に、本例では進行方向に相当する前後方向及びその逆方向に調整することができることを意味する。このために、アッパーレール3の各々は、前後方向に平行に延びるロアレール5の一方にそれぞれ移動可能に案内される。
【0038】
使用される方向情報(すなわち、前後方向アジャスタ及び前後方向アジャスタの部品に言及する、鉛直方向、進行方向及び横方向)は、車両内の前後方向アジャスタ及び車両シートの従来の配置に当てはまる。
【0039】
2つのアッパーレール3の各々は、いずれも、関連するロアレール5と共にシートレール対を形成する。前後方向アジャスタは、従って、横方向において互いに対してずらされ且つ互いに対して平行に延びる、2つのシートレール対を含む。
【0040】
それぞれ1つのロック装置14を用いて、2つのアッパーレール3の各々をそれぞれのロアレール5にロックすることができる。ロック解除レバー16を用いて、ロック装置14をロック解除することができる。代わりに、電気駆動装置も考えられる。
【0041】
本例では、2つのシートレール対は鏡面対称となるように構成される。従って、前後方向アジャスタの一方のシートレール対のみを以下で詳細に説明する。
【0042】
軸受要素がアッパーレール3とロアレール5との間に配置され、本例における軸受要素は、プラスチック材料から成るボールケージ30と、ボールケージ30内に回転可能に搭載された複数の金属製ボールと備える。また、軸受要素の他のタイプも(例えば、円筒ころ又は他の転動体の形態で)考えられる。
【0043】
図3及び
図4を見ると、いずれもボールケージ30が見える。ボールリテーナ30内に回転可能に搭載されたボールは、アッパーレール3及びロアレール5と接触している。
【0044】
本例では、進行方向におけるロアレール5の後方領域に2つの支持要素20が配置される。この例では、2つの支持要素20の各々は、支持ローラー22と、軸受ピン24と、支持ばね26とを備える。一方又は両方の支持要素20を進行方向におけるロアレール5の前方領域に配置することも考えられる。
【0045】
本例における2つの支持要素20は、進行方向において互いに前後に配置され、進行方向において前方に位置する支持要素20を前方支持要素20と称し、進行方向において後方に位置する支持要素20を後方支持要素20と称する。2つの支持要素20を横方向に又は互いに斜めにずらして配置することも考えられる。
【0046】
本例における2つの支持要素20は同様に構成されるので、支持要素20の一方のみを以下で詳細に説明する。
【0047】
軸受ピン24は、概ね円柱の形状を有し、その中心軸が鉛直方向に延びるようにロアレール5上に配置される。軸受ピン24は、軸受ピン24用に設けられたロアレール5の開口部に挿入され、そこに固定される。
【0048】
図1、
図2、
図3、
図4及び
図7の図は、第1の例示的な実施形態及び第2の例示的な実施形態に関する。
【0049】
図5及び
図6に示される第1の例示的な実施形態では、軸受ピン24は、ロアレール5にリベット止めされる。
図8及び
図9に示される第2の例示的な実施形態では、軸受ピン24は、ロアレール5にナット40を用いてねじ留めされる。また、他の固定の可能性(例えば、溶接)も考えられる。第2の例示的な実施形態では、更に、レール対の剛性を増加させる追加の補強クランプ42がロアレール5に接続される。
【0050】
軸受ピン24が挿入されるロアレール5の開口部は、横方向においてロアレール5の中心に位置せず、横方向において外側にずらして配置される。従って、軸受ピン24と、その結果その中心軸は、横方向においてロアレール5の中心に対して外側にずらして配置される。
【0051】
鉛直方向に対して傾斜面を有する支持ローラー22は、回転軸Aを中心に回転可能に軸受ピン24に取り付けられ、支持ローラー22の内径は、概ね軸受ピン24の外径に相当する。軸受ピン24は、従って、本例ではプラスチック材料から成る支持ローラー22を貫通する。支持ローラー22は、その結果、支持ローラー22の回転軸Aと位置合わせされた鉛直方向に延びる軸受ピン24の中心軸を中心に回転可能である。従って、支持ローラー22の回転軸Aもまた、横方向においてロアレール5の中心に対して外側にずらされる。
【0052】
アッパーレール3は、進行方向におけるその後端で、鉛直方向における下側領域に面取りした面、すなわち、鉛直方向に対して傾斜し且つ進行方向に対して傾斜して延びる斜めの部分を有する。
【0053】
支持ばね26は、
図5及び
図6に示される第1の例示的な実施形態によれば、概ね中空円筒状の基体と、基体から半径方向及び軸方向に突出する複数のばねアーム28とを備える。この例では、ばねアーム28は、最初に基体から半径方向に突出し、その更なる延長部で軸方向に湾曲する。軸受ピン24は、支持ローラー22と同様に支持ばね26を貫通し、支持ばね26の基体の内径は、概ね軸受ピン24の外径に相当する。
【0054】
第1の例示的な実施形態によれば、支持ばね26は、鉛直方向において支持ローラー22の下に配置され、すなわち軸方向にずらされ、本例ではその基体によってロアレール5上に支持される。ばねアーム28は、基体から半径方向外側へ且つ鉛直方向において上方へ突出し、支持ローラー22に鉛直方向において上向きに作用する。支持ばね26は、異なる形態の弾性要素の形状を有することもできる。
【0055】
例えば、第2の例示的な実施形態に従う支持ばね26は、波形ばねとして構成され、巻かれた平たい材料で作られた概ね中空円筒状の基体を有する。軸受ピン24は、鉛直方向において支持ローラー22の下に配置された(すなわち、支持ローラー22に対して軸方向にずらされた)支持ばね26を貫通する。支持ばね26は、支持ローラー22に鉛直方向において上向きに作用する。
【0056】
鉛直方向におけるその上端に、軸受ピン24はフランジ状拡幅部分を有し、フランジ状拡幅部分は、支持ローラー22がばねアーム28又は支持ばね26によって加えられるばね力によって更に上方へ押されるのを防ぐ。支持ローラー22は、従って、アッパーレール3との接触が全くない間は、軸受ピン24のフランジ状拡幅部分と支持ばね26との間で張力を受ける。
【0057】
前後方向アジャスタが、
図1、
図3、
図5及び
図8に示すように、後部調整位置にある場合、アッパーレール3の横領域が2つの支持要素20の支持ローラー22に接触する。この例では、アッパーレール3は、支持ばね26によって加えられるばね力と反対に、鉛直方向において下向きに支持ローラー22を押す。両方の支持要素20は、このようにして、後方領域で、鉛直方向においてアッパーレール3を支持し、同時に進行方向においてアッパーレール3に作用する。
【0058】
図8に示される第2の例示的な実施形態によれば、支持ローラー22は、鉛直方向において、支持幅L2として示される拡張部分を有する。支持ローラー22上のアッパーレール3の支持点は、回転軸Aから接触間隔L1に位置する。ここで、本例における接触間隔L1は、支持ローラー22の支持幅L2よりも大きい。
【0059】
同様に
図8に示される第2の例示的な実施形態によれば、支持ばね26は、回転軸Aから支持間隔L3で支持ローラー22に作用する。ここで、本例における接触間隔L1は、支持ばね26の支持間隔L3よりも大きい。
【0060】
アッパーレール3がロアレール5にロックされ、且つ支持ローラー22と接触している場合、第2の例示的な実施形態に従う支持要素20の上述の幾何学的デザイン及び配置によって、支持ローラー22に傾斜運動が作用し、前記傾斜モーメントは軸受ピン24に対して相対的に支持ローラー22に作用する。結果として、鉛直方向において軸受ピン24と支持ローラー22との間に作用する摩擦力は増大する。結果として、前後方向アジャスタの剛性はさらに増大する。
【0061】
前後方向アジャスタが後方調整位置にある場合、アッパーレール3とロアレール5との間の支持長さは、概ね進行方向におけるボールケージ30の前端と後方支持要素20との間の間隔に相当する。
【0062】
後方調整位置から始めて、アッパーレール3を前方調整位置に向かって、ロアレール5に対して前方に移動させると、アッパーレール3は、ボールケージ30が前方に移動する間、初めは後方支持要素20と接触したままである。アッパーレール3とロアレール5との間の支持長さは、従って、初めは増大する。
【0063】
アッパーレール3の前方への移動では、前記アッパーレールは、既に述べたように、支持ローラー22と接触したままであり、それによって、鉛直方向に延びるその回転軸Aを中心とする支持ローラー22の回転を引き起こす。支持ローラー22は、従って、前記アッパーレール上でアッパーレール3に沿って転がる。
【0064】
第2の例示的な実施形態によれば、それによって引き起こされた支持ローラー22の回転で、鉛直方向において軸受ピン24と支持ローラー22との間に作用する摩擦力が低減する。結果として、アッパーレール3の必要な変位力も低減する。本例では、アッパーレール3に面する支持ローラー22の面は輪郭を付けられ、それによってアッパーレール3に対する支持ローラー22の接触が改善される。
【0065】
所定の調整経路に従って前後方向アジャスが中央調整位置に達すると、アッパーレール3は後方支持要素20から離れ、それ以降、前方支持要素20のみと接触する。アッパーレール3とロアレール5との間の支持長さは、その結果、進行方向におけるボールケージ30の前端と支持要素20との間の間隔に概ね相当する。ボールケージ30は、しかしながら、中央調整位置では、後部調整位置でよりも更に前方に位置する。
【0066】
中央調整位置から始めて、アッパーレール3をロアレール5に対して更に前方に移動させると、前方調整位置の方向において、アッパーレール3は、ボールケージ30が前方に移動する間、前方支持要素20と接触したままである。アッパーレール3とロアレール5との間の支持長さは、このようにして再び増大する。
【0067】
前後方向アジャスタが、
図2及び
図4に示すように、前方調整位置にある場合、アッパーレール3の横領域が進行方向における前方支持要素20の支持ローラー22と接触する。この例では、アッパーレール3は、支持ばね26によって加えられるばね力と反対に、鉛直方向において下向きに支持ローラー20を押し、前方支持要素20は、従って、進行方向において後方領域でアッパーレール3を支持する。従って、アッパーレール3と後方支持ローラー20との間には全く接触がない。
【0068】
前後方向アジャスタが前方調整位置にある場合、アッパーレール3とロアレール5との間の支持長さは、概ね進行方向におけるボールケージ30の前端と前方支持要素20との間の間隔に相当する。前方調整位置では、この例におけるボールケージ30は、中央調整位置でよりも更に前方に位置する。
【0069】
前方調整位置から始めて、アッパーレール3をロアレール5に対して更に前方に、すなわち前方調整位置を越えてイージーエントリー位置へと移動させると、アッパーレール3は前方支持要素20からも離れる。前後方向アジャスタがイージーエントリー位置にある場合、アッパーレール3とロアレール5との間の支持長さは概ねボールケージ30の長さに相当する。
【0070】
アッパーレール3をイージーエントリー位置から進行方向と反対に後方へと移動させると、アッパーレール3の後端は再び前方支持要素20の支持ローラー22と接触する。この例では、アッパーレール3の後端に位置する面取りした面は、支持ローラー22の鉛直方向に対して傾斜して延びる面に当たり、それによりアッパーレール3が支持ローラー22と接触するプロセスが容易になり、アッパーレール3を移動させるのに必要な変位力は低減する。
【0071】
回転可能なローラーを全く有さず、例えば、好ましくは少なくとも部分的に傾斜した面を備えたスライダーを有する、支持要素20、又は複数の支持要素20を設けることも考えられる。この例では、アッパーレール3は支持要素20と、転がり接触ではなく、滑り接触する。
【0072】
以上の説明、特許請求の範囲及び図面で開示された特徴は、本発明をその様々な実施形態で実施するために個々に及び組み合わせでの両方で重要である。
【符号の説明】
【0073】
1 車両シート
2 座部
3 アッパーレール
5 ロアレール
10 背もたれ
14 ロック装置
16 ロック解除レバー
20 支持要素
22 支持ローラー
24 軸受ピン
26 支持ばね
28 ばねアーム
30 ボールケージ
40 ナット
42 補強クランプ
A 回転軸
L1 接触間隔
L2 支持幅
L3 支持間隔