特許第6125212号(P6125212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カヤバ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6125212-波力発電装置 図000002
  • 特許6125212-波力発電装置 図000003
  • 特許6125212-波力発電装置 図000004
  • 特許6125212-波力発電装置 図000005
  • 特許6125212-波力発電装置 図000006
  • 特許6125212-波力発電装置 図000007
  • 特許6125212-波力発電装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6125212
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】波力発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/22 20060101AFI20170424BHJP
【FI】
   F03B13/22
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-256400(P2012-256400)
(22)【出願日】2012年11月22日
(65)【公開番号】特開2013-209978(P2013-209978A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2015年5月22日
(31)【優先権主張番号】特願2012-44664(P2012-44664)
(32)【優先日】2012年2月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】群馬 英人
(72)【発明者】
【氏名】上野 弘行
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 靖
(72)【発明者】
【氏名】菅原 亮
(72)【発明者】
【氏名】小倉 雅則
【審査官】 新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−014483(JP,A)
【文献】 特開昭55−131576(JP,A)
【文献】 特開昭56−106071(JP,A)
【文献】 特開昭56−044466(JP,A)
【文献】 特表平5−501901(JP,A)
【文献】 米国特許第4383182(US,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1075538(KR,B1)
【文献】 中国特許出願公開第102011716(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波のエネルギーを運動エネルギーに変換する複数の水車と、
複数の前記水車の夫々に対応して設けられ、各前記水車によって一方向に回転し、流体が流出する第1ポート及び流体が流入する第2ポートを有し、一方向に流体を給排する複数の回転型流体圧ポンプと、
複数の前記回転型流体圧ポンプの前記第1ポートの夫々に連通した第1流路と、
複数の前記回転型流体圧ポンプの前記第2ポートの夫々に連通した第2流路と、
複数の前記第1流路が合流した流入路と、
複数の前記第2流路を分岐した流出路と、
各前記第1流路に設けられており、各前記回転型流体圧ポンプから前記流入路へ向けた流体の流れを許容し、その逆の流れを阻止する第5逆止弁と、
各前記第2流路に設けられており、前記流出路から各前記回転型流体圧ポンプへ向けた流体の流れを許容し、その逆の流れを阻止する第6逆止弁と、
前記流入路に連通した流入ポート、及び前記流出路に連通した流出ポートを有しており、各前記回転型流体圧ポンプが回転して、各前記第1流路、前記流入路、前記流出路、及び各前記第2流路で構成される循環路を循環する流体によって駆動する一つの流体圧モーターと、
前記流体圧モーターの駆動によって発電する発電機と、
を備えていることを特徴とする波力発電装置。
【請求項2】
長方形状のスリットが形成されており、水中に配置することによってこのスリットを波が通過する壁体を備えており、
前記水車は前記スリットの開口の投影面内に配置したことを特徴とする請求項1に記載の波力発電装置。
【請求項3】
前記流体圧モーターは可変容量型であることを特徴とする請求項1又は2に記載の波力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は波力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の波力発電装置を開示している。この波力発電装置は、水車と、この水車の回転軸部の一端に連結した発電機とを備えている。この波力発電装置は、水車が波のエネルギーを受けて回転することによって、水車の回転軸部の一端に連結した発電機が回転し、発電することができる。この波力発電装置は、水車の回転軸部と発電機とを直接的に連結しているため、波のエネルギーによって回転する水車の回転エネルギーを効率よく発電機に伝えて電気エネルギーに変換することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−221142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の波力発電装置は、水車の回転軸部と発電機とを直接的に連結しているため、発電機は水車の回転と同じ回転をする。水車は波のエネルギーによって回転するため、その回転は一定ではなくばらついてしまう。このため、この波力発電装置は、発電機が所望する一定の回転数で回転せず、発電効率が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、発電を良好に行うことができる波力発電装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の波力発電装置は、
波のエネルギーを運動エネルギーに変換する複数の水車と、
複数の前記水車の夫々に対応して設けられ、各前記水車によって一方向に回転し、流体が流出する第1ポート及び流体が流入する第2ポートを有し、一方向に流体を給排する複数の回転型流体圧ポンプと、
複数の前記回転型流体圧ポンプの前記第1ポートの夫々に連通した第1流路と、
複数の前記回転型流体圧ポンプの前記第2ポートの夫々に連通した第2流路と、
複数の前記第1流路が合流した流入路と、
複数の前記第2流路を分岐した流出路と、
各前記第1流路に設けられており、各前記回転型流体圧ポンプから前記流入路へ向けた流体の流れを許容し、その逆の流れを阻止する第5逆止弁と、
各前記第2流路に設けられており、前記流出路から各前記回転型流体圧ポンプへ向けた流体の流れを許容し、その逆の流れを阻止する第6逆止弁と、
前記流入路に連通した流入ポート、及び前記流出路に連通した流出ポートを有しており、各前記回転型流体圧ポンプが回転して、各前記第1流路、前記流入路、前記流出路、及び各前記第2流路で構成される循環路を循環する流体によって駆動する一つの流体圧モーターと、
前記流体圧モーターの駆動によって発電する発電機と、
を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の波力発電装置は、変換装置において波のエネルギーを運動エネルギーに変換する。この運動エネルギーによって流体圧ポンプが駆動し、循環路を流体が循環する。これによって、流体圧モーターが駆動して発電機が発電する。このように、この波力発電装置は、変換装置と発電機とは直接的に連結しておらず、変換装置が駆動する流体圧ポンプの流体の出力流量(回転数)と発電機の出力(回転数)を異ならせることができる。このため、この波力発電装置は、発電機を所望する一定の出力で駆動させる(一定の回転数で回転させる)ことができる。
【0008】
したがって、本発明の波力発電装置は発電を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1の波力発電装置を示す概略図である。
図2】実施例1の波力発電装置を示す断面図である。
図3】実施例1の波力発電装置を示す油圧回路図である。
図4】参考例1の波力発電装置を示す油圧回路図である。
図5】参考例2の波力発電装置を示す油圧回路図である。
図6参考例3の波力発電装置を示す概略図である。
図7参考例4の波力発電装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の波力発電装置を具体化した実施例1について、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
<実施例1>
実施例1の波力発電装置は、図1及び図2に示すように、波のエネルギーを運動エネルギーに変換する変換装置である複数個の水車10を備えている。また、この波力発電装置は、流体圧ポンプである複数個の油圧ポンプ20を水車10の夫々に対応して備えている。各油圧ポンプ20は第1流路31及び第2流路32が連通している。この波力発電装置は複数の第1流路31及び第2流路32を利用した作動油の循環路35を備えている。また、この波力発電装置は流体圧モーターである一つの油圧モーター40を循環路35に設けている。さらに、この波力発電装置は油圧モーター40の駆動によって発電する一つの発電機50を備えている。
【0012】
また、この波力発電装置は長方形状の複数のスリット61が形成された壁体60を備えている。壁体60は一方の側面側に消波用の空間Sを形成した側壁体70を有している。側壁体70は、壁体60の上下左右の各端面に連続した上壁部71、下壁部72、左壁部、右壁部、及びこれら壁部の各後端面に連続しており、壁体60に対向して消波用の空間Sを閉鎖する後壁部73から形成されている。つまり、壁体60と側壁体70とは中空の直方体形状の箱体を形成している。
【0013】
壁体60と側壁体70とは、上部が水面より上方に露出するように、海、川又は湖の底Bに側壁体70の下壁部72を載置し、固定される。また、側壁体70の後壁部73は、海、川又は湖等の岸Aの側面に接して固定される。このため、複数のスリット61を形成した壁体60が海、川又は湖側に面することになる。
【0014】
壁体60は上部を水面より上方に露出して水中に配置した状態で水平方向に延びた横長矩形状である。また、この状態で、壁体60は長辺を垂直方向にして水平方向に等間隔に整列した複数のスリット61が形成されている。各スリット61は上部が水面より上方に開口する。波は、壁体60に形成された複数のスリット61を通過して消波用の空間Sに流れ込んだり、消波用の空間S内から各スリット61を通過して海、川又は湖側に流れ出したりする流れを形成する。消波用の空間Sは各スリット61を通過して流れ込んだ波を鎮静化させることができる。
【0015】
水車10は壁体60に形成された複数のスリット61の夫々に対応して設けられている。つまり、各水車10は消波用の空間S内のスリット1の開口近傍であって、各スリット61の開口の投影面内に配置されている。各水車10は、回転軸部11と、回転軸部11の周りに形成した回転翼部12とを有している。各水車10の回転軸部11は、各スリット61の短辺方向の中心面上であって、かつスリット61の近傍の消波用の空間S内に垂直方向に延びて配置されている。この回転軸部11は、上端部が側壁体70の上壁部71を貫通して軸支されており、下端部が側壁体70の下壁部72の上面に軸支されている。
【0016】
回転翼部12は、回転軸部11の上下位置の2か所から回転軸部1を中心に放射方向に拡がった円盤状の支持部12Aと、上下に位置する支持部12A間に設けられ、水平面視において90°間隔に放射方向に延びた縦長矩形状の4枚の翼部12Bとを有している。回転翼部12は、回転軸部11と翼部12Bとの間に隙間を形成している。各水車10は同一方向のみに回転することができる。
【0017】
スリット61を通過する波はスリット61を通過することによって流速が速くなる。また、各水車10は、回転軸部11がスリット61の短辺方向の中心面上であり、さらに消波用の空間S内のスリット1の開口近傍であって、各スリット61の開口の投影面内に配置されている。このため、この波力発電装置はスリット61を通過する波によって水車10を勢いよく回転させることができる。
【0018】
油圧ポンプ20は水車10の回転軸部11の上端部に連結している。また、油圧ポンプ20は側壁体70の上壁部71の上面に設置されている。各油圧ポンプ20は各水車10の回転軸部11の回転によって回転し、作動油が流出する第1ポート21及び作動油が流入する第2ポート22を有している。
【0019】
各油圧ポンプ20は、図1及び図3に示すように、第1ポート21に第1流路31を連通している。各第1流路31は合流して流入路33を形成している。流入路33は一つの油圧モーター40の流入ポート41に連通している。各第1流路31は、図3に示すように、油圧ポンプ20から流入路33へ向けた作動油の流れを許容する第5逆止弁85を有している。
【0020】
また、一つの油圧モーター40は流出ポート42に流出路34を連通している。流出路34は分岐して複数の第2流路32を形成している。各第2流路32は各油圧ポンプ20の第2ポート22に連通している。各第2流路32は流出路34から油圧ポンプ20に向けた作動油の流れを許容する第6逆止弁86を有している。第1流路31、流入路33、流出路34、及び第2流路32によって作動油が循環する循環路35を構成している。各油圧ポンプ20が駆動することによって循環路35を作動油が循環する。油圧モーター40は循環路35を作動油が循環することによって駆動する。
【0021】
発電機50は、図1に示すように、回転軸51を油圧モーター40の回転軸43に直結している。このため、この発電機50は、油圧モーター40の駆動によって回転軸51が回転し、発電することができる。この発電機50は直流発電機である。このため、この波力発電装置は発電機50に接続したパワーコンディショナー90を備えている。パワーコンディショナー90は直流発電機が発電した電気を家庭で利用することができるように変換する。
【0022】
次に、この波力発電装置の発電動作を説明する。
【0023】
波は、壁体60に形成された各スリット61を通過して消波用の空間Sに流れ込んだり、消波用の空間S内から各スリット61を通過して海、川又は湖に流れ出したりする流れを形成する。この流れを利用して各水車10は同一方向に回転する。特に、波が消波用の空間Sに流れ込む際にスリット61を通過することによって流速が早くなるため、水車10は勢いよく回転する。
【0024】
各水車10が回転することによって各油圧ポンプ20が駆動する。すると、各油圧ポンプ20は、第1ポート21から作動油が流出し、循環路35を循環した作動油が第2ポート22から流入する。各油圧ポンプ20の第1ポート21から流出した作動油は、各第1流路31から合流して流入路33を経由して一つの油圧モーター40に流入する。つまり、各油圧ポンプ20から送られた作動油が合流して油圧モーター40の流入ポート41から油圧モーター40内に流入する。この際、各第1流路31に第5逆止弁8が設けられているため、各第1流路31において、作動油は各油圧ポンプ20から流入路33へ向けて流れ、逆流を防止することができる。
【0025】
油圧モーター40内に流入した作動油は油圧モーター40内を一定の方向に流れる。これによって、油圧モーター40は回転軸43を一方向に回転するように駆動する。油圧モーター40の流出ポート42から流出した作動油は流出路34から各油圧ポンプ20に分流される。つまり、作動油は各第2流路32を経由して各油圧ポンプ20の第2ポート22から各油圧ポンプ20内に流入し循環する。この際、各第2流路32に第6逆止弁86が設けられているため、各第2流路32において、作動油は流出路34から各油圧ポンプ20へ向けて流れ、逆流を防止することができる。
【0026】
このように、各水車10が波のエネルギーを利用して回転すると、各油圧ポンプ20が駆動し、第1流路31、流入路33、流出路34、及び第2流路32を利用した循環路35を作動油が循環する。この作動油が循環路35を循環することによって、油圧モーター40が継続的に駆動し、油圧モーター40の回転軸43が連続的に回転する。油圧モーター40の回転軸43が回転すると発電機50の回転軸51も回転するため、発電機50が発電する。
【0027】
この波力発電装置は発電を行う際、水車10と発電機50とは直接的に連結しておらず、水車10が駆動する油圧ポンプ20の回転数と発電機50の回転数を異ならせることができる。例えば、油圧モーター40の容量を変更することによって、油圧モーター40に流入する作動油の流量に対する回転軸43の回転数を変更することができる。このため、この波力発電装置は発電機50を所望する回転数で回転させることができる。
【0028】
したがって、実施例1の波力発電装置は発電を良好に行うことができる。
【0029】
また、この波力発電装置は、複数の水車10が一つの油圧モーター40及び一つの発電機50を駆動する。このため、波のエネルギーによって回転する各水車10の回転が一定でなく、各油圧ポンプ20から吐出する作動油の流量がばらついても、油圧モーター40に流入する作動油の流量を平均化することができる。このため、油圧モーター40の回転が安定化し、発電機50の発電を安定させることができる。
【0030】
また、複数の水車10が一つの油圧モーター40及び一つの発電機50を駆動することによって、各水車10の夫々に対応して複数の油圧モーター40及び複数の発電機50を設けた場合に比べて、油圧モーター40及び発電機50の容量を大きくすることができる。このため、発電効率を高めることができる。
【0031】
参考例1
参考例1の波力発電装置は、図4に示すように、双方向に回転自在な水車110と、循環路を切り換える切換装置120とを備えている点で実施例1と相違する。他の構成は実施例1と同様であり、実施例1と同一の構成は同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0032】
この波力発電装置は水車110が双方向に回転する。このため、波が壁体60に形成された各スリット61を通過して消波用の空間Sに流れ込んだり、消波用の空間S内から各スリット61を通過して海、川又は湖に流れ出したりする流れによって、各水車110は任意の方向に回転する。つまり、各水車110において回転方向が逆転し得る。
【0033】
水車110の回転方向が逆転すると、油圧ポンプ20の回転軸の回転方向が逆転するため、油圧ポンプ20の第1ポート21及び第2ポート22における作動油の流入出方向が逆転する。つまり、水車110が一方向に回転すると、油圧ポンプ20の第1ポート21から作動油が流出し、第2ポート22から作動油が流入するようになる。また、水車110が他方向に逆回転すると、油圧ポンプ20の第2ポート22から作動油が流出し、第1ポート21から作動油が流入するようになる。
【0034】
一方、発電機50は回転軸51を一方向に回転して発電するものである。このため、発電機50の回転軸51に直結した油圧モーター40の回転軸43も一方向に回転させなければならない。つまり、作動油が流入路33を経由して流入ポート41から油圧モーター40内に流入して油圧モーター40内を一定の方向に流れ、流出ポート42から流出路34へ流出するようにしなければならない。
【0035】
この波力発電装置は第1流路31及び第2流路32の中間部に設けた切換装置120を備えている。この切換装置120は、水車110の回転方向(油圧ポンプ20の回転軸の回転方向)を検知する図示しない検知装置を有しており、この検知装置の出力に応じて循環路を切り替えることができる。
【0036】
つまり、この波力発電装置は、水車110が一方向に回転していることを検知装置が検知している間は、切換装置120より油圧ポンプ20側の第1流路31Aと切換装置120より流入路33側の第1流路31Bとを連通し、かつ切換装置120より油圧ポンプ20側の第2流路32Aと切換装置120より流出路34側の第2流路32Bとを連通する。これによって、水車110が一方向に回転していることを検知装置が検知している間は、油圧ポンプ20側の第1流路31A、流入路33側の第1流路31B、流入路33、流出路34、流出路34側の第2流路32B、及び油圧ポンプ20側の第2流路32Aの順に作動油が循環する第1循環路を構成する。
【0037】
また、この波力発電装置は、水車110が他方向に逆回転していることを検知装置が検知している間は、切換装置120より油圧ポンプ20側の第2流路32Aと切換装置120より流入路33側の第1流路31Bとを連通し、かつ切換装置120より油圧ポンプ20側の第1流路31Aと切換装置120より流出路34側の第2流路32Bとを連通する。これによって、水車110が他方向に逆回転していることを検知装置が検知している間は、油圧ポンプ20側の第2流路32A、流入路33側の第1流路31B、流入路33、流出路34、流出路34側の第2流路32B、及び油圧ポンプ20側の第1流路31Aの順に作動油が循環する第2循環路を構成する。
【0038】
この波力発電装置は、水車110が一方向に回転している間は第1循環路を作動油が循環して油圧モーター40及び発電機50を一方向に回転して発電する。また、水車110が他方向に逆回転している間は第2循環路を作動油が循環して油圧モーター40及び発電機50を一方向に回転して発電する。このように、この波力発電装置は、水車110の回転方向に関わらず、各油圧ポンプ20は作動油が油圧モーター40内を一定の方向に流れるように第1循環路又は第2循環路を循環させることができる。このため、発電機50は常に一方向に回転し発電することができる。
【0039】
したがって、参考例1の波力発電装置も発電を良好に行うことができる。
【0040】
参考例2
参考例2の波力発電装置は、図5に示すように、切換装置130が4つの逆止弁81〜84を有したものである点で参考例1と相違する。他の構成は参考例1と同様であり、参考例1と同一の構成は同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0041】
この波力発電装置の切換装置130は、第1流路31に設け、油圧ポンプ20から油圧モーター40へ向けた作動油の流れを許容する第1逆止弁81を有している。また、この切換装置130は、第2流路32に設け、油圧モーター40から油圧ポンプ20へ向けた作動油の流れを許容する第2逆止弁82を有している。また、この切換装置130は、第1逆止弁81より油圧ポンプ20側の第1流路31を分岐し、第2逆止弁82より油圧モーター40側の第2流路32に連通した第1分岐流路131を有している。また、この切換装置130は、第1分岐流路131に設け、油圧モーター40から油圧ポンプ20へ向けた作動油の流れを許容する第3逆止弁83を有している。また、この切換装置130は、第2逆止弁82より油圧ポンプ20側の第2流路32を分岐し、第1逆止弁81より油圧モーター40側の第1流路31に連通した第2分岐流路132を有している。さらに、この切換装置130は、第2分岐流路132に設け、油圧ポンプ20から油圧モーター40へ向けた作動油の流れを許容する第4逆止弁84を有している。
【0042】
この波力発電装置は、水車110が一方向に回転すると、油圧ポンプ20の第1ポート21から作動油が流出する。油圧ポンプ20の第1ポート21から流出した作動油は、第1逆止弁81が設けられた第1流路31、及び流入路33を経由して、流入ポート41から油圧モーター40内に流入する。油圧モーター40内に流入した作動油は油圧モーター40内を一定の方向に流れて油圧モーター40を駆動する。油圧モーター40の流出ポート42から流出した作動油は、流出路34、及び第2逆止弁82が設けられた第2流路32を経由して第2ポート22から油圧ポンプ20内に流入して循環する。
【0043】
また、この波力発電装置は、水車110が他方向に逆回転すると、油圧ポンプ20の第2ポート22から作動油が流出する。油圧ポンプ20の第2ポート22から流出した作動油は、第4逆止弁84が設けられた第2分岐路132、及び流入路33を経由して、流入ポート41から油圧モーター40内に流入する。油圧モーター40内に流入した作動油は油圧モーター40内を一定の方向に流れて油圧モーター40を駆動する。油圧モーター40の流出ポート42から流出した作動油は、流出路34、及び第3逆止弁83が設けられた第1分岐路131を経由して第1ポート21から油圧ポンプ20内に流入して循環する。
【0044】
このように、この波力発電装置は、水車110の回転方向に関わらず、各油圧ポンプ20は作動油が油圧モーター40内を一定の方向に流れるように循環させることができる。このため、発電機50は常に一方向に回転し発電することができる。
【0045】
したがって、参考例2の波力発電装置も発電を良好に行うことができる。
【0046】
参考例3
参考例3の波力発電装置は、図6に示すように、波のエネルギーを運動エネルギーに変換する変換装置が振り子板210であり、油圧ポンプ220が振り子板210の揺動軸部211の一端部に連結しており、揺動軸部211の往復回転によって一方向に作動油を送るものである点で実施例1と相違する。他の構成は実施例1と同様であり、実施例1と同一の構成は同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0047】
この波力発電装置は、壁体60に形成された複数のスリット61に対向する位置に複数の振り子板210を配置している。振り子板210は、矩形状の平板部210Aと、平板部210Aの左右側面に沿って延びる支持部210Bと、一対の支持部210Bの上端部を連結した揺動軸部211とを有している。
【0048】
揺動軸部211は側壁体70の上壁部71の上面に設けられた一対の軸受部230に両端が軸支されている。また、揺動軸部211は壁体60に対して平行に配置されている。振り子板210は側壁体70の上壁部71に貫設した開口71Aを通じて消波用の空間S内に揺動自在に吊下げられている。振り子板210は、各スリット61を通過して消波用の空間Sに流れ込んだり、消波用の空間S内から各スリット61を通過して海、川又は湖に流れ出したりする流れによって、揺動する。
【0049】
各油圧ポンプ220は、一方の軸受部230に組み付けられ、振り子板210の揺動軸部211の一端部に連結している。各油圧ポンプ220は振り子板210の揺動軸が往復回転することによって、第1ポート221から作動油が流出し、各第1流路31、及び各第1流路31が合流した流入路33を経由して一つの油圧モーター40に流入する。油圧モーター40内に流入した作動油は油圧モーター40内を一定の方向に流れて油圧モーター40を駆動する。作動油は油圧モーター40の流出ポート42から流出路34に流出し、流出路34を分岐した各第2流路32を経由して各油圧ポンプ220の第2ポート222から各油圧ポンプ220内に流入し循環する。
【0050】
この波力発電装置は、各振り子板210が波のエネルギーを利用して揺動すると、各油圧ポンプ220を駆動し、第1流路31、流入路33、流出路34、及び第2流路32を利用した循環路35を作動油が循環する。この作動油が循環路35を循環することによって、油圧モーター40が継続的に駆動し、油圧モーター40の回転軸43が回転する。油圧モーター40の回転軸43が回転すると発電機50の回転軸51も回転する。これによって、発電機50が発電する。
【0051】
この波力発電装置は発電を行う際、振り子板210と発電機50とは直接的に連結していないため発電機50を所望の回転数で回転させることができる。例えば、油圧モーター40の容量を変更することによって、油圧モーター40に流入する作動油の流量に対する回転軸43の回転数を変更することができる。このため、この波力発電装置は発電機50を所望する回転数で回転させることができる。
【0052】
したがって、参考例3の波力発電装置も発電を良好に行うことができる。
【0053】
また、この波力発電装置は、複数の振り子板210が一つの油圧モーター40及び一つの発電機50を駆動する。このため、波のエネルギーによって揺動する各振り子板210の往復回転が一定でなく、各油圧ポンプ220から吐出する作動油の流量がばらついても、油圧モーター40に流入する作動油の流量を平均化することができる。このため、油圧モーター40の回転が安定化し、発電機50の発電を安定させることができる。
【0054】
参考例4
参考例4の波力発電装置は、図7に示すように、波のエネルギーを運動エネルギーに変換する変換装置300及び流体圧ポンプである油圧ポンプ330の形態が実施例1等と相違する。他の構成は実施例1等と同様であり、実施例1等と同一の構成は同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0055】
波のエネルギーを運動エネルギーに変換する各変換装置300は、波のエネルギーを受けて移動する移動板310と、この移動板310に波のエネルギーを受けて移動する方向とは反対方向に弾性力を付与する弾性体であるコイルばね311とを有している。
【0056】
各移動板310は、壁体60に形成された複数の各スリット61毎に、各スリット61の開口に対向して消波用の空間S内に設けられている。各移動板310は縦長矩形状の平板である。各移動板310は後述する一対の整流板320の対向面の夫々に設けられたガイド部材321に往復移動自在に支持されている。つまり、各移動板310は一対の整流板320の間に往復移動自在に支持されている。
【0057】
一対の整流板320は縦長矩形状の平板である。また、各整流板320は上下寸法が各スリット61の長辺よりも長く形成されている。各整流板320は各スリット61の両側の壁体60から各スリット61の長辺に平行な状態で消波用の空間S内に向けて延びている。このため、一対の各整流板320は、スリット61を流入出する波を各整流板320に沿った流れに整流することができる。
【0058】
各ガイド部材321は一対の整流板320の対向面の上下の2か所に水平方向に延びて取り付けられている。各ガイド部材321は各整流板320に取り付けられた状態で内部に水平方向に延びた空洞部を形成している。また、各ガイド部材321は、整流板320側でない面に水平方向に延びた開口部321Aを有している。この開口部321Aの上下幅は各空洞部の上下寸法よりも小さく形成されている。
【0059】
各ガイド部材321は各移動板310の左右の側面の上下2か所から突出した凸部310Aを各開口部321Aを介して各空洞部内に収納している。各移動板310の各凸部310Aは先端部が各ガイド部材321の開口部321Aの上下幅より拡がっている。このため、各移動板310の各凸部310Aは、各ガイド部材321の空洞部内から抜け止めされつつ、各ガイド部材321に沿ってスライド自在に把持されている。このため、各移動板310は、左右に配置された各ガイド部材321に支持され、各スリット61の開口面に対向した状態で、後壁部73方向及び各スリット61方向に往復移動をすることができる。
【0060】
各コイルばね311は各移動板310と側壁体70の後壁部73との間に挟持されている。各コイルばね311は後壁部73から各スリット61方向の弾性力を各移動板310に付与している。
【0061】
各移動板310は、各スリット61から消波用の空間S内に流入し、各整流板320によって整流された波の流れ(エネルギー)を受けると、後壁部73方向に移動する。この際、各移動板310は、一対の整流板320によって整流された波の流れを受けるため、波のエネルギーを効率的に受けることができる。また、各移動板310は、消波用の空間S内に流入した波が、消波用の空間S内からスリット61を通過して流出すると、各スリット61方向に移動する。そして、各移動310は各スリット61の開口の近傍に押し戻される。押し戻された各移動310は、各コイルばね311の弾性力によって各スリット61の開口近傍の位置に復元する。このように、各移動板310は波のエネルギーを利用して往復移動する。
【0062】
各油圧ポンプ330も各移動板310と側壁体70の後壁部73との間に挟持されている。各油圧ポンプ330は、軸方向に往復移動するロッド331と、ロッド331の一端に連結したピストン332と、ピストン332を収納したシリンダー333とを有している。
【0063】
各ロッド331の他端は各移動310の各スリット61に面していない背面に連結している。各シリンダー333は、各ピストン332によって、第1室333Aと第2室333Bとに内部を分割している。また、各シリンダー333は、第1室333Aに作動油が流出する第1ポート341を設け、第2室333Bに作動油が流入する第2ポート342を設けている。各第1ポート341は各第1流路31に連通し、各第2ポート342は各第2流路32に連通している。各ピストン332は第2室333Bから第1室333Aの一方向に作動油が流れように逆止弁を有した流路334を設けている。各シリンダー333は、ロッド331が突出している一端とは反対側の他端が側壁体70の後壁部73に連結している。
【0064】
これら油圧ポンプ330はピストン332が往復移動する際、次のように作動油が流れる。ピストン332が、第1室333Aの容積を大きくし、第2室333Bの容積を小さくする方向に移動すると、作動油が各ピストン332に設けられた流路334を介して第2室333Bから第1室333Aに流れる。ロッド331の侵入分の体積に相当する作動油が第1ポート341を介して第1流路31へ流出する。そして、ピストン332が、第1室333Aの容積を小さくし、第2室333Bの容積を大きくする方向に移動すると、第2流路32から第2ポート342を介して作動油が第2室333B内に流入し、第1室333A内の作動油が第1ポート341を介して第1流路31に流出する。
【0065】
第5逆止弁85は、各第1流路31中に設けられ、各シリンダー333の第1ポート341から油圧モーター40の流入ポート41への流れを許容し、流入ポート41から第1ポート341への流れを阻止する。また、第6逆止弁86は、各第2流路32中に設けられ、油圧モーター40の流出ポート42から各シリンダー333の第2ポート342への流れを許容し、第2ポート342から流出ポート42への流れを阻止する。
【0066】
この波力発電装置は循環路35を構成する流出路34にアキュムレータ350を設けている。
【0067】
次に、この波力発電装置の発電動作を説明する。
【0068】
壁体60に形成された各スリット61を通過して消波用の空間S内に流れ込んだ波が、一対の整流板320によって整流され、各移動板310に衝突する。すると、各移動板310は後壁部73方向に移動する。また、消波用の空間S内に流入した波が各スリット61を通過して流出すると、各移動板310は各スリット61方向に移動する。そして、各移動310は各スリット61の開口の近傍に押し戻される。このように、各移動板310は波のエネルギーを利用して往復移動する。
【0069】
各移動板310が往復移動すると、各油圧ポンプ330のロッド331及びピストン332も往復移動し、各油圧ポンプ330が駆動する。すると、各油圧ポンプ330は、第1ポート341から作動油が流出し、循環路35を循環した作動油が第2ポート342から流入する。各油圧ポンプ330の第1ポート341から流出した作動油は、各第1流路31から流入路33を経由して一つの油圧モーター40に流入する。つまり、各油圧ポンプ330から送られた作動油が合流して油圧モーター40の流入ポート41から油圧モーター40内に流入する。この際、各第1流路31に第5逆止弁8が設けられているため、各第1流路31において、作動油は各油圧ポンプ330から流入路33へ向けて流れ、逆流を防止することができる。
【0070】
油圧モーター40内に流入した作動油は油圧モーター40内を一定の方向に流れる。これによって、油圧モーター40は回転軸43を一方向に回転するように駆動する。油圧モーター40の流出ポート42から流出した作動油は流出路34から各油圧ポンプ330に分流される。つまり、作動油は各第2流路32を経由して各油圧ポンプ330の第2ポート342から各油圧ポンプ330内に流入し循環する。この際、各第2流路32に第6逆止弁86が設けられているため、各第2流路32において、作動油は流出路34から各油圧ポンプ330へ向けて流れ、逆流を防止することができる。
【0071】
このように、各移動板310が往復移動すると、各油圧ポンプ330が駆動し、各第1流路31、流入路33、流出路34、及び各第2流路32を利用した循環路35を作動油が循環する。この作動油が循環路35を循環することによって、油圧モーター40が継続的に駆動し、油圧モーター40の回転軸43が連続的に回転する。油圧モーター40の回転軸43が回転すると発電機50の回転軸51も回転するため、発電機50が発電する。
【0072】
この波力発電装置は発電を行う際、各移動板310と発電機50とは直接的に連結しておらず、各移動板310が駆動する各油圧ポンプ330の作動油の出力流量に比例させずに発電機50を回転させることができる。例えば、油圧モーター40の容量を変更することによって、油圧モーター40に流入する作動油の流量に対する回転軸43の回転数を変更することができる。このため、この波力発電装置は発電機50を所望する回転数で回転させることができる。
【0073】
したがって、参考例4の波力発電装置も発電を良好に行うことができる。
【0074】
また、この波力発電装置は、各油圧ポンプ330のピストン332が往復移動する際、各第2流路32から第2ポート342を介して第2室333B内に流入する作動油の油量が、第1室333A内から第1ポート341を介して各第1流路31に流出する作動油の油量よりも多い。この油量の相違は流出路34に設けたアキュムレータ350に一時的に貯留した作動油を利用することによって解消することができる。
【0075】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例1〜3に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1では、油圧ポンプが容量一定型のものであったが、可変容量型の油圧ポンプを利用してもよい。この場合、油圧ポンプに流入する作動油の流量が変動しても発電機を一定の回転数で回転させることができ、高効率化を図ることができる。
(2)実施例1では、発電機が直流発電機であったが、誘導発電機や同期発電機などの交流発電機であってもよい。
(3)実施例1では、油圧を利用するポンプ、モーターであったが、他の流体を利用するポンプ、モーターであってもよい。
)実施例1では、スリットを有した壁体と側壁体とによって形成した消波用の空間を備えたが、側壁体を備えず、スリットを有した壁体のみを備えて、スリットを通過する波のエネルギーを利用して回転する水車、揺動する振り子、又は往復移動する移動板を配置してもよい。また、壁体及び側壁体を備えず、波を直接受けて水車を回転させたり、振り子板を揺動させたり、移動板を往復移動させたりしてもよい。
【符号の説明】
【0076】
10、110…水車(変換装置)
20、220…油圧ポンプ(流体圧ポンプ)
21、221、341…第1ポート
22、222、342…第2ポート
31…第1流路
32…第2流路
35…循環路
40…油圧モーター(流体圧モーター)
50…発電機
60…壁体
61…スリット
81…第1逆止弁
82…第2逆止弁
83…第3逆止弁
84…第4逆止弁
120、130…切換装置
131…第1分岐流路
132…第2分岐流路
210…振り子板(変換装置)
300…変換装置(310…移動板、311…コイルバネ(弾性体))
330…油圧ポンプ(流体圧ポンプ)(ロッド…331、ピストン…332、シリンダー…333)
333A…第1室
333B…第2室
334…流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7