特許第6125312号(P6125312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6125312
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】車両用空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20170424BHJP
   B60H 1/03 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   B60H1/22 611D
   B60H1/22 671
   B60H1/22ZHV
   B60H1/22 651B
   B60H1/03 C
【請求項の数】13
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-93651(P2013-93651)
(22)【出願日】2013年4月26日
(65)【公開番号】特開2014-213765(P2014-213765A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098361
【弁理士】
【氏名又は名称】雨笠 敬
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 謙一
(72)【発明者】
【氏名】宮腰 竜
【審査官】 田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−033816(JP,A)
【文献】 特開2012−176658(JP,A)
【文献】 特開2007−278624(JP,A)
【文献】 特開2002−240539(JP,A)
【文献】 特開平11−198638(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0188266(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/22
B60H 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機と、
車室内に供給する空気が流通する空気流通路と、
冷媒を放熱させて前記空気流通路から前記車室内に供給する空気を加熱するための放熱器と、
冷媒を吸熱させて前記空気流通路から前記車室内に供給する空気を冷却するための吸熱器と、
前記車室外に設けられて冷媒を放熱又は吸熱させる室外熱交換器と、
制御手段とを備え、
該制御手段により少なくとも、前記圧縮機から吐出された冷媒を前記放熱器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、前記室外熱交換器にて吸熱させる暖房モードを実行する車両用空気調和装置において、
前記空気流通路から前記車室内に供給する空気を加熱するための補助加熱手段を備え、
前記制御手段は、要求される放熱器の暖房能力である要求暖房能力Qtgtと前記室外熱交換器の非着霜時に前記放熱器が発生する非着霜時暖房能力QhpNIとを比較し、該非着霜時暖房能力QhpNIが前記要求暖房能力Qtgtより不足する分を前記補助加熱手段の加熱により補完すると共に、
前記放熱器が実際に発生する実暖房能力Qhprが前記非着霜時暖房能力QhpNIよりも小さく、該非着霜時暖房能力QhpNIと前記実暖房能力Qhprとの差が所定値より大きい場合、前記圧縮機を停止し、前記要求暖房能力Qtgtにより前記補助加熱手段を制御することを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記実暖房能力Qhprが前記非着霜時暖房能力QhpNIよりも小さい場合、該非着霜時暖房能力QhpNIと実暖房能力Qhprの差を加えて前記補助加熱手段により加熱することを特徴とする請求項1に記載の車両用空気調和装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記放熱器から流出する空気の温度、及び、該放熱器を通過する風量のそれぞれを示す指標のうちの何れか、若しくは、それらの組み合わせと、前記放熱器に流入する空気の比熱、及び、該空気の密度を示す指標とに基づいて前記実暖房能力Qhprを算出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用空気調和装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記放熱器に流入する空気の温度、該放熱器から流出する空気の温度、及び、該放熱器を通過する風量のそれぞれを示す指標のうちの何れか、若しくは、それらの組み合わせと、前記放熱器に流入する空気の比熱、及び、該空気の密度を示す指標とに基づいて前記要求暖房能力Qtgtを算出すると共に、
外気温度、冷媒流量、前記空気流通路内の風量、車速、前記室外熱交換器通過風量、該室外熱交換器に通風する室外送風機の電圧、前記吸熱器の温度、前記圧縮機の回転数、前記放熱器出口の冷媒圧力、前記放熱器出口の冷媒温度、前記放熱器入口の冷媒圧力、及び、前記放熱器入口の冷媒温度のそれぞれを示す指標のうちの何れか、若しくは、それらの組み合わせに基づいて前記非着霜時暖房能力QhpNIを算出することを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちの何れかに記載の車両用空気調和装置。
【請求項5】
前記空気流通路外に前記放熱器を設けると共に、
該放熱器と熱交換する熱媒体−冷媒熱交換器と、前記空気流通路に設けられた熱媒体−空気熱交換器と、電気ヒータと、循環手段とを有し、前記熱媒体−冷媒熱交換器、及び/又は、前記電気ヒータにより加熱された熱媒体を前記循環手段により前記熱媒体−空気熱交換器に循環させる熱媒体循環回路から前記補助加熱手段を構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちの何れかに記載の車両用空気調和装置。
【請求項6】
前記空気流通路に設けられ、前記車室内に供給する空気を加熱する電気ヒータにより前記補助加熱手段を構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちの何れかに記載の車両用空気調和装置。
【請求項7】
前記放熱器を前記空気流通路に設けると共に、
該空気流通路に設けられた熱媒体−空気熱交換器と、電気ヒータと、循環手段とを有し、前記電気ヒータにより加熱された熱媒体を前記循環手段により前記熱媒体−空気熱交換器に循環する熱媒体循環回路から前記補助加熱手段を構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちの何れかに記載の車両用空気調和装置。
【請求項8】
前記熱媒体循環回路は、前記放熱器を経た冷媒から熱を回収する熱媒体−冷媒熱交換器を有することを特徴とする請求項7に記載の車両用空気調和装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記放熱器による暖房能力は不足していないが、前記非着霜時暖房能力QhpNIと前記要求暖房能力Qtgtとの差が所定値に縮小した場合、前記熱媒体循環回路による加熱を開始する予備運転を実行することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の車両用空気調和装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記予備運転を実行中、前記熱媒体循環回路により加熱する分、前記放熱器による暖房能力を低下させることを特徴とする請求項9に記載の車両用空気調和装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記予備運転を実行中、前記熱媒体循環回路を流れる熱媒体の温度が所定値より低い場合、前記熱媒体−空気熱交換器に循環される熱媒体の量を制限することを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の車両用空気調和装置。
【請求項12】
前記電気ヒータ、又は、前記熱媒体−空気熱交換器を、前記空気流通路の空気の流れに対して前記放熱器の下流側に配置したことを特徴とする請求項6乃至請求項11のうちの何れかに記載の車両用空気調和装置。
【請求項13】
前記電気ヒータ、又は、前記熱媒体−空気熱交換器を、前記空気流通路の空気の流れに対して前記放熱器の上流側に配置したことを特徴とする請求項6乃至請求項11のうちの何れかに記載の車両用空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車室内を空調するヒートポンプ方式の空気調和装置、特にハイブリッド自動車や電気自動車に適用可能な空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の環境問題の顕在化から、ハイブリッド自動車や電気自動車が普及するに至っている。そして、このような車両に適用することができる空気調和装置として、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、車室内側に設けられて冷媒を放熱させる放熱器(凝縮器)と、車室内側に設けられて冷媒を吸熱させる吸熱器(蒸発器)と、車室外側に設けられて冷媒を放熱又は吸熱させる室外熱交換器を備え、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器において放熱させ、この放熱器において放熱した冷媒を室外熱交換器において吸熱させる暖房モードと、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器において放熱させ、放熱器において放熱した冷媒を吸熱器において吸熱させる除湿モードと、圧縮機から吐出された冷媒を室外熱交換器において放熱させ、吸熱器において吸熱させる冷房モードの各モードを切り換えて実行するものが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献1では放熱器から出た冷媒を分流し、この分流した冷媒を減圧した後、当該放熱器を出た冷媒と熱交換させ、圧縮機の圧縮途中に戻すインジェクション回路を設け、それにより、圧縮機の吐出冷媒を増加させ、放熱器による暖房能力を向上させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3985384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような空気調和装置では、室外熱交換器に着霜した場合、外気中から吸熱することができなくなるため、所要の暖房能力が得られなくなる問題がある。また、放熱器を出た冷媒の温度は低いため、分流されて減圧された冷媒との熱交換量も少なくなる。そのため、圧縮機の圧縮途中にガスをインジェクションするためには、インジェクション回路に流す冷媒の量を増やすことに限界があり、圧縮機の吐出冷媒を十分に増加させることができず、結果として十分な暖房能力が得られなくなる欠点があった。
【0006】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、所謂ヒートポンプ方式の空気調和装置において、効率良く、且つ、快適に車室内を暖房することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用空気調和装置は、冷媒を圧縮する圧縮機と、車室内に供給する空気が流通する空気流通路と、冷媒を放熱させて空気流通路から車室内に供給する空気を加熱するための放熱器と、冷媒を吸熱させて空気流通路から車室内に供給する空気を冷却するための吸熱器と、車室外に設けられて冷媒を放熱又は吸熱させる室外熱交換器と、制御手段とを備え、この制御手段により少なくとも、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、室外熱交換器にて吸熱させる暖房モードを実行するものであって、空気流通路から車室内に供給する空気を加熱するための補助加熱手段を備え、制御手段は、要求される放熱器の暖房能力である要求暖房能力Qtgtと室外熱交換器の非着霜時に放熱器が発生する非着霜時暖房能力QhpNIとを比較し、この非着霜時暖房能力QhpNIが要求暖房能力Qtgtより不足する分を補助加熱手段の加熱により補完すると共に、放熱器が実際に発生する実暖房能力Qhprが非着霜時暖房能力QhpNIよりも小さく、この非着霜時暖房能力QhpNIと実暖房能力Qhprとの差が所定値より大きい場合、圧縮機を停止し、要求暖房能力Qtgtにより補助加熱手段を制御することを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明の車両用空気調和装置は、上記発明において制御手段は、放熱器が実際に発生する実暖房能力Qhprが非着霜時暖房能力QhpNIよりも小さい場合、この非着霜時暖房能力QhpNIと実暖房能力Qhprの差を加えて補助加熱手段により加熱することを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明において制御手段は、放熱器から流出する空気の温度、及び、この放熱器を通過する風量のそれぞれを示す指標のうちの何れか、若しくは、それらの組み合わせと、放熱器に流入する空気の比熱、及び、この空気の密度を示す指標とに基づいて実暖房能力Qhprを算出することを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明において制御手段は、放熱器に流入する空気の温度、この放熱器から流出する空気の温度、及び、この放熱器を通過する風量のそれぞれを示す指標のうちの何れか、若しくは、それらの組み合わせと、放熱器に流入する空気の比熱、及び、この空気の密度を示す指標とに基づいて要求暖房能力Qtgtを算出すると共に、外気温度、冷媒流量、空気流通路内の風量、車速、前記室外熱交換器通過風量、該室外熱交換器に通風する室外送風機の電圧、吸熱器の温度、圧縮機の回転数、放熱器出口の冷媒圧力、放熱器出口の冷媒温度、放熱器入口の冷媒圧力、及び、放熱器入口の冷媒温度のそれぞれを示す指標のうちの何れか、若しくは、それらの組み合わせに基づいて非着霜時暖房能力QhpNIを算出することを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明において空気流通路外に放熱器を設けると共に、この放熱器と熱交換する熱媒体−冷媒熱交換器と、空気流通路に設けられた熱媒体−空気熱交換器と、電気ヒータと、循環手段とを有し、熱媒体−冷媒熱交換器、及び/又は、電気ヒータにより加熱された熱媒体を循環手段により熱媒体−空気熱交換器に循環させる熱媒体循環回路から補助加熱手段を構成したことを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明の車両用空気調和装置は、請求項1乃至請求項4の発明において空気流通路に設けられ、車室内に供給する空気を加熱する電気ヒータにより補助加熱手段を構成したことを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明の車両用空気調和装置は、請求項1乃至請求項4の発明において放熱器を空気流通路に設けると共に、この空気流通路に設けられた熱媒体−空気熱交換器と、電気ヒータと、循環手段とを有し、電気ヒータにより加熱された熱媒体を循環手段により熱媒体−空気熱交換器に循環する熱媒体循環回路から補助加熱手段を構成したことを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明の車両用空気調和装置は、上記発明において熱媒体循環回路は、放熱器を経た冷媒から熱を回収する熱媒体−冷媒熱交換器を有することを特徴とする。
【0015】
請求項9の発明の車両用空気調和装置は、請求項7又は請求項8の発明において制御手段は、放熱器による暖房能力は不足していないが、非着霜時暖房能力QhpNIと要求暖房能力Qtgtとの差が所定値に縮小した場合、熱媒体循環回路による加熱を開始する予備運転を実行することを特徴とする。
【0016】
請求項10の発明の車両用空気調和装置は、上記発明において制御手段は、予備運転を実行中、熱媒体循環回路により加熱する分、放熱器による暖房能力を低下させることを特徴とする。
【0017】
請求項11の発明の車両用空気調和装置は、請求項9又は請求項10の発明において制御手段は、予備運転を実行中、熱媒体循環回路を流れる熱媒体の温度が所定値より低い場合、熱媒体−空気熱交換器に循環される熱媒体の量を制限することを特徴とする。
【0018】
請求項12の発明の車両用空気調和装置は、請求項6至請求項11の発明において電気ヒータ、又は、熱媒体−空気熱交換器を、空気流通路の空気の流れに対して放熱器の下流側に配置したことを特徴とする。
【0019】
請求項13の発明の車両用空気調和装置は、請求項6乃至請求項11の発明において電気ヒータ、又は、熱媒体−空気熱交換器を、空気流通路の空気の流れに対して放熱器の上流側に配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、冷媒を圧縮する圧縮機と、車室内に供給する空気が流通する空気流通路と、冷媒を放熱させて空気流通路から車室内に供給する空気を加熱するための放熱器と、冷媒を吸熱させて空気流通路から車室内に供給する空気を冷却するための吸熱器と、車室外に設けられて冷媒を放熱又は吸熱させる室外熱交換器と、制御手段とを備え、この制御手段により少なくとも、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、室外熱交換器にて吸熱させる暖房モードを実行する車両用空気調和装置において、空気流通路から車室内に供給する空気を加熱するための補助加熱手段を設け、制御手段が、要求される放熱器の暖房能力である要求暖房能力Qtgtと室外熱交換器の非着霜時に放熱器が発生する非着霜時暖房能力QhpNIとを比較し、この非着霜時暖房能力QhpNIが要求暖房能力Qtgtより不足するとき、放熱器による暖房能力が不足するとして、補助加熱手段による加熱を実行し、この不足分を補助加熱手段の加熱により補完するようにしたので、室外熱交換器に着霜した場合等、放熱器による暖房能力が不足した場合に補助加熱手段により車室内に供給する空気を加熱して暖房能力を補完することができるようになり、快適な車室内暖房を実現し、且つ、室外熱交換器の着霜も抑制することができるようになる。
【0021】
また、放熱器による暖房能力が不足している状況下で補助加熱手段による加熱を実行するので、補助加熱手段による加熱に伴う効率の悪化も最小限に抑えることが可能となる。これにより、特に電気自動車においては航続距離が低下する不都合を効果的に抑制することが可能となるものである。
【0022】
この場合、制御手段は、要求される放熱器の暖房能力である要求暖房能力Qtgtと放熱器が発生する暖房能力Qhpとを比較し、この暖房能力Qhpが要求暖房能力Qtgtより不足する分を補助加熱手段の加熱により補完するので、効果的に車室内の快適暖房と効率低下の抑制を行うことができるようになる。
【0023】
また、非着霜時暖房能力QhpNIが要求暖房能力Qtgtより不足する分を補助加熱手段の加熱により補完するようにしたので、室外熱交換器に着霜する以前の段階で放熱器の暖房能力が不足するか否かを把握し、迅速な補助加熱手段による加熱を開始して、より快適な車室内暖房を実現することが可能となる。
【0024】
更に、制御手段は、放熱器が実際に発生する実暖房能力Qhprが非着霜時暖房能力QhpNIよりも小さく、この非着霜時暖房能力QhpNIと実暖房能力Qhprとの差が所定値より大きい場合、圧縮機を停止すると共に、要求暖房能力Qtgtにより補助加熱手段を制御するようにすれば、室外熱交換器への着霜の進行度合いを把握し、着霜が進行してしまった場合には補助加熱手段のみによる車室内暖房に切り換えることができるようになる。これより、室外熱交換器のそれ以上の着霜の成長を防止し、或いは、着霜の融解を促進しながら、補助加熱手段により車室内の暖房も引き続き行うことが可能となる。
【0025】
このとき、請求項2の発明の如く制御手段が、放熱器が実際に発生する実暖房能力Qhprが非着霜時暖房能力QhpNIよりも小さい場合、この非着霜時暖房能力QhpNIと実暖房能力Qhprの差を加えて補助加熱手段により加熱するようにすれば、室外熱交換器に着霜が生じて非着霜時暖房能力QhpNIよりも放熱器が実際に発生する実暖房能力Qhprが低下している場合に、その低下分も補助加熱手段により補完することができるようになり、快適さをより一層向上させることができるようになる。
【0026】
この場合、請求項3の発明の如く制御手段が、放熱器から流出する空気の温度、及び、この放熱器を通過する風量のそれぞれを示す指標のうちの何れか、若しくは、それらの組み合わせと、放熱器に流入する空気の比熱、及び、この空気の密度を示す指標とに基づいて実暖房能力Qhprを算出し、請求項4の発明の如く放熱器に流入する空気の温度、この放熱器から流出する空気の温度、及び、この放熱器を通過する風量のそれぞれを示す指標のうちの何れか、若しくは、それらの組み合わせと、放熱器に流入する空気の比熱、及び、この空気の密度を示す指標とに基づいて要求暖房能力Qtgtを算出すると共に、外気温度、冷媒流量、空気流通路内の風量、車速、前記室外熱交換器通過風量、該室外熱交換器に通風する室外送風機の電圧、吸熱器の温度、圧縮機の回転数、放熱器出口の冷媒圧力、放熱器出口の冷媒温度、放熱器入口の冷媒圧力、及び、放熱器入口の冷媒温度のそれぞれを示す指標のうちの何れか、若しくは、それらの組み合わせに基づいて非着霜時暖房能力QhpNIを算出することにより、放熱器による暖房能力の判断とそれが不足することに伴う補助加熱手段による加熱をより的確に制御することが可能となる。
【0027】
尚、請求項5の発明の如く空気流通路外に放熱器を設けると共に、この放熱器と熱交換する熱媒体−冷媒熱交換器と、空気流通路に設けられた熱媒体−空気熱交換器と、電気ヒータと、循環手段とを有し、熱媒体−冷媒熱交換器、及び/又は、電気ヒータにより加熱された熱媒体を循環手段により熱媒体−空気熱交換器に循環させる熱媒体循環回路から補助加熱手段を構成すれば、電気的により安全な車室内暖房を実現することができるようになるが、請求項6の発明の如く空気流通路に設けられ、車室内に供給する空気を加熱する電気ヒータであってもよい。
【0028】
また、請求項7の発明の如く放熱器を空気流通路に設けると共に、この空気流通路に設けられた熱媒体−空気熱交換器と、電気ヒータと、循環手段とを有し、電気ヒータにより加熱された熱媒体を循環手段により熱媒体−空気熱交換器に循環する熱媒体循環回路から補助加熱手段を構成しても、電気的な安全性は向上する。
【0029】
また、請求項8の発明の如く熱媒体循環回路に、放熱器を経た冷媒から熱を回収する熱媒体−冷媒熱交換器を設ければ、放熱器を出た冷媒が有する熱を熱媒体循環回路内を流れる熱媒体に回収して熱媒体−空気熱交換器に搬送し、より効率的な暖房補助を行うことが可能となる。
【0030】
更に、上記熱媒体循環回路の場合に請求項9の発明の如く制御手段が、放熱器による暖房能力は不足していないが、非着霜時暖房能力QhpNIと要求暖房能力Qtgtとの差が所定値に縮小した場合、熱媒体循環回路による加熱を開始する予備運転を実行するようにすれば、放熱器による暖房能力の不足が予測される場合に、予め熱媒体循環回路内の熱媒体を温めておくことが可能となり、熱媒体循環回路を用いた迅速な暖房能力の補完を実現することができるようになる。
【0031】
また、この場合請求項10の発明の如く制御手段が、予備運転を実行中、熱媒体循環回路により加熱する分、放熱器による暖房能力を低下させるようにすれば、熱媒体循環回路の予備運転中、必要以上に暖房能力が増大してしまう不都合も解消することができるようになる。
【0032】
更に、請求項11の発明の如く制御手段が、予備運転を実行中、熱媒体循環回路を流れる熱媒体の温度が所定値より低い場合、熱媒体−空気熱交換器に循環される熱媒体の量を制限するようにすれば、熱媒体循環回路内の熱媒体の温度が未だ低い状況での熱媒体−空気熱交換器への循環を抑制し、車室内に供給される空気の温度低下を防止しながら、熱媒体の温度上昇を促進し、放熱器による暖房能力が不足した時点では迅速に熱媒体−空気熱交換器により空気流通路内の空気を加熱して暖房することができるようになるものである。
【0033】
この場合、請求項12の発明の如く電気ヒータ、又は、熱媒体−空気熱交換器を、空気流通路の空気の流れに対して放熱器の下流側に配置すれば、電気ヒータ、又は、熱媒体−空気熱交換器を上流側に配置する場合の如く、電気ヒータ、又は、熱媒体−空気熱交換器で加熱された空気が放熱器に流入することが無くなり、放熱器における熱交換性能の低下による運転効率の悪化を防止することができるようになる。
【0034】
また、熱媒体−空気熱交換器を放熱器の空気下流側に配置した場合、電気ヒータへの通電開始当初や、熱媒体循環回路内の熱媒体の温度が未だ低い状況では車室内に供給される空気温度の低下が懸念されるが、前述した請求項11の発明のように制御することにより、これは解消可能である。
【0035】
逆に、請求項13の発明の如く電気ヒータ、又は、熱媒体−空気熱交換器を、空気流通路の空気の流れに対して放熱器の上流側に配置した場合、前述の如き運転効率の悪化は懸念されるものの、電気ヒータへの通電開始時や、熱媒体循環回路内の熱媒体の温度が低いことによる問題は生じなくなり、放熱器との協調暖房も容易となると共に、上述の如き予備運転も不要となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明を適用した一実施形態の車両用空気調和装置の構成図である。
図2図1の空気流通路部分の拡大図である。
図3図1の車両用空気調和装置のコントローラの電気回路のブロック図である。
図4図1の車両用空気調和装置のコントローラの動作を説明するフローチャートである。
図5図4の熱媒体循環回路による加熱の実行可否判断の実例を示す図である。
図6図1の車両用空気調和装置のコントローラの動作の他の実施例を説明する図である。
図7図6に係るコントローラの動作を説明するフローチャートである。
図8図1の車両用空気調和装置のコントローラの動作のもう一つの実施例を説明するフローチャートである。
図9】本発明を適用した他の実施例の車両用空気調和装置の構成図である。
図10】本発明を適用したもう一つの他の実施例の車両用空気調和装置の構成図である。
図11図10の空気流通路部分の拡大図である。
図12図11中の各部の温度の関係を説明する図である。
図13】本発明を適用した更にもう一つの他の実施例の車両用空気調和装置の構成図である。
図14】本発明を適用した更にもう一つの他の実施例の車両用空気調和装置の構成図である。
図15】本発明を適用した更にもう一つの他の実施例の車両用空気調和装置の構成図である。
図16】本発明を適用した更にもう一つの他の実施例の車両用空気調和装置の構成図である。
図17図16の車両用空気調和装置のコントローラの動作を説明するフローチャートである。
図18図16の車両用空気調和装置のコントローラの動作を他の実施例を説明するフローチャートである。
図19】本発明を適用した更にもう一つの他の実施例の車両用空気調和装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
【0038】
図1は本発明の一実施例の車両用空気調和装置1の構成図を示している。本発明を適用する実施例の車両は、エンジン(内燃機関)が搭載されていない電気自動車(EV)であって、バッテリに充電された電力で走行用の電動モータを駆動して走行するものであり(何れも図示せず)、本発明の車両用空気調和装置1も、バッテリの電力で駆動されるものとする。即ち、実施例の車両用空気調和装置1は、エンジン廃熱による暖房ができない電気自動車において、冷媒回路を用いたヒートポンプ運転により暖房を行い、更に、除湿暖房や冷房除湿、冷房等の各運転モードを選択的に実行するものである。
【0039】
尚、車両として電気自動車に限らず、エンジンと走行用の電動モータを供用する所謂ハイブリッド自動車にも本発明は有効であり、更には、エンジンで走行する通常の自動車にも適用可能であることは云うまでもない。
【0040】
実施例の車両用空気調和装置1は、電気自動車の車室内の空調(暖房、冷房、除湿、及び、換気)を行うものであり、冷媒を圧縮する電動式の圧縮機2と、車室内空気が通気循環されるHVACユニット10の空気流通路3内に設けられ、圧縮機2から吐出された高温高圧の冷媒が冷媒配管13Gを介して流入し、この冷媒を車室内に放熱させる放熱器4と、暖房時に冷媒を減圧膨張させる電動弁から成る室外膨張弁6と、冷房時には放熱器として機能し、暖房時には蒸発器として機能すべく冷媒と外気との間で熱交換を行わせる室外熱交換器7と、冷媒を減圧膨張させる電動弁から成る室内膨張弁8と、空気流通路3内に設けられて冷房時及び除湿時に車室内外から冷媒に吸熱させる吸熱器9と、吸熱器9における蒸発能力を調整する蒸発能力制御弁11と、アキュムレータ12等が冷媒配管13により順次接続され、冷媒回路Rが構成されている。尚、室外熱交換器7には、室外送風機15が設けられている。この室外送風機15は、室外熱交換器7に外気を強制的に通風することにより、外気と冷媒とを熱交換させるものであり、これにより停車中(即ち、車速VSPが0km/h)にも室外熱交換器7に外気が通風されるよう構成されている。
【0041】
また、室外熱交換器7は冷媒下流側にレシーバドライヤ部14と過冷却部16を順次有し、室外熱交換器7から出た冷媒配管13Aは冷房時に開放される電磁弁(開閉弁)17を介してレシーバドライヤ部14に接続され、過冷却部16の出口が逆止弁18を介して室内膨張弁8に接続されている。尚、レシーバドライヤ部14及び過冷却部16は構造的に室外熱交換器7の一部を構成しており、逆止弁18は室内膨張弁8側が順方向とされている。
【0042】
また、逆止弁18と室内膨張弁8間の冷媒配管13Bは、吸熱器9の出口側に位置する蒸発能力制御弁11を出た冷媒配管13Cと熱交換関係に設けられ、両者で内部熱交換器19を構成している。これにより、冷媒配管13Bを経て室内膨張弁8に流入する冷媒は、吸熱器9を出て蒸発能力制御弁11を経た低温の冷媒により冷却(過冷却)される構成とされている。
【0043】
また、室外熱交換器7から出た冷媒配管13Aは分岐しており、この分岐した冷媒配管13Dは、暖房時に開放される電磁弁(開閉弁)21を介して内部熱交換器19の下流側における冷媒配管13Cに連通接続されている。更に、放熱器4の出口側の冷媒配管13Eは室外膨張弁6の手前で分岐しており、この分岐した冷媒配管13Fは除湿時に開放される電磁弁(開閉弁)22を介して逆止弁18の下流側の冷媒配管13Bに連通接続されている。
【0044】
また、室外膨張弁6には並列にバイパス配管13Jが接続されており、このバイパス配管13Jには、冷房モードにおいて開放され、室外膨張弁6をバイパスして冷媒を流すための電磁弁(開閉弁)20が介設されている。尚、これら室外膨張弁6及び電磁弁20と室外熱交換器7との間の配管は13Iとする。
【0045】
また、吸熱器9の空気上流側における空気流通路3には、外気吸込口と内気吸込口の各吸込口が形成されており(図1では吸込口25で代表して示す)、この吸込口25には空気流通路3内に導入する空気を車室内の空気である内気(内気循環モード)と、車室外の空気である外気(外気導入モード)とに切り換える吸込切換ダンパ26が設けられている。更に、この吸込切換ダンパ26の空気下流側には、導入した内気や外気を空気流通路3に送給するための室内送風機(ブロワファン)27が設けられている。
【0046】
また、図1において23は実施例の車両用空気調和装置1に設けられた補助加熱手段としての熱媒体循環回路を示している。この熱媒体循環回路23は循環手段を構成する循環ポンプ30と、熱媒体加熱電気ヒータ(図面ではECHで示す)35と、空気流通路3の空気の流れに対して、放熱器4の空気下流側となる空気流通路3内に設けられた熱媒体−空気熱交換器40とを備え、これらが熱媒体配管23Aにより順次環状に接続されている。尚、この熱媒体循環回路23内で循環される熱媒体としては、例えば水、HFO−1234yfのような冷媒、クーラント等が採用される。
【0047】
そして、循環ポンプ30が運転され、熱媒体加熱電気ヒータ35に通電されて発熱すると、この熱媒体加熱電気ヒータ35により加熱された熱媒体が熱媒体−空気熱交換器40に循環されるよう構成されている。即ち、この熱媒体循環回路23の熱媒体−空気熱交換器40が所謂ヒータコアとなり、車室内の暖房を補完する。係る熱媒体循環回路23を採用することで、搭乗者の電気的な安全性を向上することができるようになる。
【0048】
また、放熱器4の空気上流側における空気流通路3内には、内気や外気の放熱器4への流通度合いを調整するエアミックスダンパ28が設けられている。更に、放熱器4の空気下流側における空気流通路3には、フット、ベント、デフの各吹出口(図1では代表して吹出口29で示す)が形成されており、この吹出口29には上記各吹出口から空気の吹き出しを切換制御する吹出口切換ダンパ31が設けられている。
【0049】
次に、図3において32はマイクロコンピュータから構成された制御手段としてのコントローラ(ECU)であり、このコントローラ32の入力には車両の外気温度を検出する外気温度センサ33と、外気湿度を検出する外気湿度センサ34と、吸込口25から空気流通路3に吸い込まれる空気の温度を検出するHVAC吸込温度センサ36と、車室内の空気(内気)の温度を検出する内気温度センサ37と、車室内の空気の湿度を検出する内気湿度センサ38と、車室内の二酸化炭素濃度を検出する室内CO2濃度センサ39と、吹出口29から車室内に吹き出される空気の温度を検出する吹出温度センサ41と、圧縮機2の吐出冷媒圧力を検出する吐出圧力センサ42と、圧縮機2の吐出冷媒温度を検出する吐出温度センサ43と、圧縮機2の吸込冷媒圧力を検出する吸込圧力センサ44と、放熱器4の温度(放熱器4を経た空気の温度、又は、放熱器4自体の温度)を検出する放熱器温度センサ46と、放熱器4の冷媒圧力(放熱器4内、又は、放熱器4を出た直後の冷媒の圧力)を検出する放熱器圧力センサ47と、吸熱器9の温度(吸熱器9を経た空気の温度、又は、吸熱器9自体の温度)を検出する吸熱器温度センサ48と、吸熱器9の冷媒圧力(吸熱器9内、又は、吸熱器9を出た直後の冷媒の圧力)を検出する吸熱器圧力センサ49と、車室内への日射量を検出するための例えばフォトセンサ式の日射センサ51と、車両の移動速度(車速)を検出するための車速センサ52と、設定温度や運転モードの切り換えを設定するための空調(エアコン)操作部53と、室外熱交換器7の温度(室外熱交換器7から出た直後の冷媒の温度、又は、室外熱交換器7自体の温度)を検出する室外熱交換器温度センサ54と、室外熱交換器7の冷媒圧力(室外熱交換器7内、又は、室外熱交換器7から出た直後の冷媒の圧力)を検出する室外熱交換器圧力センサ56の各出力が接続されている。
【0050】
また、コントローラ32の入力には更に、熱媒体循環回路23の熱媒体加熱電気ヒータ35の温度(熱媒体加熱電気ヒータ35で加熱された直後の熱媒体の温度、又は、熱媒体加熱電気ヒータ35に内蔵された図示しない電気ヒータ自体の温度)を検出する熱媒体加熱電気ヒータ温度センサ50と、熱媒体−空気熱交換器40の温度(熱媒体−空気熱交換器40を経た空気の温度、又は、熱媒体−空気熱交換器40自体の温度)を検出する熱媒体−空気熱交換器温度センサ55の各出力も接続されている。
【0051】
一方、コントローラ32の出力には、前記圧縮機2と、室外送風機15と、室内送風機(ブロワファン)27と、吸込切換ダンパ26と、エアミックスダンパ28と、吹出口切換ダンパ31と、室外膨張弁6、室内膨張弁8と、各電磁弁22、17、21、20と、循環ポンプ30と、熱媒体加熱電気ヒータ35と、蒸発能力制御弁11が接続されている。そして、コントローラ32は各センサの出力と空調操作部53にて入力された設定に基づいてこれらを制御する。
【0052】
以上の構成で、次に実施例の車両用空気調和装置1の動作を説明する。コントローラ32は実施例では大きく分けて暖房モードと、除湿暖房モードと、内部サイクルモードと、除湿冷房モードと、冷房モードの各運転モードを切り換えて実行する。先ず、各運転モードにおける冷媒の流れについて説明する。
【0053】
(1)暖房モードの冷媒の流れ
コントローラ32により或いは空調操作部53へのマニュアル操作により暖房モードが選択されると、コントローラ32は電磁弁21を開放し、電磁弁17、電磁弁22及び電磁弁20を閉じる。そして、圧縮機2、及び、各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は室内送風機27から吹き出された空気が放熱器4及び熱媒体−空気熱交換器40に通風される状態とする。これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は放熱器4に流入する。放熱器4には空気流通路3内の空気が通風されるので、空気流通路3内の空気は放熱器4内の高温冷媒により加熱され、一方、放熱器4内の冷媒は空気に熱を奪われて冷却され、凝縮液化する。
【0054】
放熱器4内で液化した冷媒は放熱器4を出た後、冷媒配管13Eを経て室外膨張弁6に至る。尚、熱媒体循環回路23の動作及び作用については後述する。室外膨張弁6に流入した冷媒はそこで減圧された後、室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒は蒸発し、走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気中から熱を汲み上げる。即ち、冷媒回路Rがヒートポンプ(図面ではHPで示す)となる。そして、室外熱交換器7を出た低温の冷媒は冷媒配管13D及び電磁弁21を経て冷媒配管13Cからアキュムレータ12に入り、そこで気液分離された後、ガス冷媒が圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。放熱器4にて加熱された空気は熱媒体−空気熱交換器40を経て吹出口29から吹き出されるので、これにより車室内の暖房が行われることになる。
【0055】
コントローラ32は吐出圧力センサ42又は放熱器圧力センサ47が検出する冷媒回路Rの高圧圧力に基づいて圧縮機2の回転数を制御すると共に、放熱器温度センサ46が検出する放熱器4の温度及び放熱器圧力センサ47が検出する放熱器4の冷媒圧力に基づいて室外膨張弁6の弁開度を制御し、放熱器4の出口における冷媒の過冷却度を制御する。
【0056】
(2)除湿暖房モードの冷媒の流れ
次に、除湿暖房モードでは、コントローラ32は上記暖房モードの状態において電磁弁22を開放する。これにより、放熱器4を経て冷媒配管13Eを流れる凝縮冷媒の一部が分流され、電磁弁22を経て冷媒配管13F及び13Bより内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至るようになる。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気は冷却され、且つ、除湿される。
【0057】
吸熱器9で蒸発した冷媒は蒸発能力制御弁11、内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cにて冷媒配管13Dからの冷媒と合流した後、アキュムレータ12を経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。吸熱器9にて除湿された空気は放熱器4を通過する過程で再加熱されるので、これにより車室内の除湿暖房が行われることになる。コントローラ32は吐出圧力センサ42又は放熱器圧力センサ47が検出する冷媒回路Rの高圧圧力に基づいて圧縮機2の回転数を制御すると共に、吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度に基づいて室外膨張弁6の弁開度を制御する。
【0058】
(3)内部サイクルモードの冷媒の流れ
次に、内部サイクルモードでは、コントローラ32は上記除湿暖房モードの状態において室外膨張弁6を全閉とする(全閉位置)と共に、電磁弁21も閉じる。この室外膨張弁6と電磁弁21が閉じられることにより、室外熱交換器7への冷媒の流入、及び、室外熱交換器7からの冷媒の流出は阻止されることになるので、放熱器4を経て冷媒配管13Eを流れる凝縮冷媒は電磁弁22を経て冷媒配管13Fに全て流れるようになる。そして、冷媒配管13Fを流れる冷媒は冷媒配管13Bより内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気は冷却され、且つ、除湿される。
【0059】
吸熱器9で蒸発した冷媒は蒸発能力制御弁11、内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cを流れ、アキュムレータ12を経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。吸熱器9にて除湿された空気は放熱器4を通過する過程で再加熱されるので、これにより車室内の除湿暖房が行われることになるが、この内部サイクルモードでは室内側の空気流通路3内にある放熱器4(放熱)と吸熱器9(吸熱)の間で冷媒が循環されることになるので、外気からの熱の汲み上げは行われず、圧縮機2の消費動力分の暖房能力が発揮される。除湿作用を発揮する吸熱器9には冷媒の全量が流れるので、上記除湿暖房モードに比較すると除湿能力は高いが、暖房能力は低くなる。
【0060】
コントローラ32は吸熱器9の温度、又は、前述した冷媒回路Rの高圧圧力に基づいて圧縮機2の回転数を制御する。このとき、コントローラ32は吸熱器9の温度によるか高圧圧力によるか、何れかの演算から得られる圧縮機目標回転数の低い方を選択して圧縮機2を制御する。
【0061】
(4)除湿冷房モードの冷媒の流れ
次に、除湿冷房モードでは、コントローラ32は電磁弁17を開放し、電磁弁21、電磁弁22及び電磁弁20を閉じる。そして、圧縮機2、及び、各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は室内送風機27から吹き出された空気が放熱器4及び熱媒体−空気熱交換器40に通風される状態とする。これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は放熱器4に流入する。放熱器4には空気流通路3内の空気が通風されるので、空気流通路3内の空気は放熱器4内の高温冷媒により加熱され、一方、放熱器4内の冷媒は空気に熱を奪われて冷却され、凝縮液化していく。
【0062】
放熱器4を出た冷媒は冷媒配管13Eを経て室外膨張弁6に至り、開き気味で制御される室外膨張弁6を経て室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒はそこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aから電磁弁17を経てレシーバドライヤ部14、過冷却部16と順次流入する。ここで冷媒は過冷却される。
【0063】
室外熱交換器7の過冷却部16を出た冷媒は逆止弁18を経て冷媒配管13Bに入り、内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気は冷却され、且つ、除湿される。
【0064】
吸熱器9で蒸発した冷媒は蒸発能力制御弁11、内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cを介し、アキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。吸熱器9にて冷却され、除湿された空気は放熱器4を通過する過程で再加熱(暖房時よりも放熱能力は低い)されるので、これにより車室内の除湿冷房が行われることになる。コントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度に基づいて圧縮機2の回転数を制御すると共に、前述した冷媒回路Rの高圧圧力に基づいて室外膨張弁6の弁開度を制御し、放熱器4の冷媒圧力(放熱器圧力Pci)を制御する。
【0065】
(5)冷房モードの冷媒の流れ
次に、冷房モードでは、コントローラ32は上記除湿冷房モードの状態において電磁弁20を開き(この場合、室外膨張弁6は全開(弁開度を制御上限)を含む何れの弁開度でもよい)、エアミックスダンパ28は放熱器4及び熱媒体−空気熱交換器40に空気が通風されない状態とする。これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は放熱器4に流入する。放熱器4には空気流通路3内の空気は通風されないので、ここは通過するのみとなり、放熱器4を出た冷媒は冷媒配管13Eを経て電磁弁20及び室外膨張弁6に至る。
【0066】
このとき電磁弁20は開放されているので冷媒は室外膨張弁6を迂回してバイパス配管13Jを通過し、そのまま室外熱交換器7に流入し、そこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮液化する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aから電磁弁17を経てレシーバドライヤ部14、過冷却部16と順次流入する。ここで冷媒は過冷却される。
【0067】
室外熱交換器7の過冷却部16を出た冷媒は逆止弁18を経て冷媒配管13Bに入り、内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気は冷却される。
【0068】
吸熱器9で蒸発した冷媒は蒸発能力制御弁11、内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cを介し、アキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。吸熱器9にて冷却され、除湿された空気は放熱器4を通過すること無く吹出口29から車室内に吹き出されるので、これにより車室内の冷房が行われることになる。この冷房モードにおいては、コントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度に基づいて圧縮機2の回転数を制御する。
【0069】
(6)暖房モード及び当該暖房モードでの熱媒体循環回路(補助加熱手段)による補助加熱
次に、前記暖房モードにおける圧縮機2及び室外膨張弁6の制御と、当該暖房モードでの熱媒体循環回路23による補助加熱について説明する。
【0070】
(6−1)圧縮機及び室外膨張弁の制御
コントローラ32は下記式(I)から目標吹出温度TAOを算出する。この目標吹出温度TAOは、吹出口29から車室内に吹き出される空気温度の目標値である。
TAO=(Tset−Tin)×K+Tbal(f(Tset、SUN、Tam))
・・(I)
ここで、Tsetは空調操作部53で設定された車室内の設定温度、Tinは内気温度センサ37が検出する車室内空気の温度、Kは係数、Tbalは設定温度Tsetや、日射センサ51が検出する日射量SUN、外気温度センサ33が検出する外気温度Tamから算出されるバランス値である。そして、一般的に、この目標吹出温度TAOは外気温度Tamが低い程高く、外気温度Tamが上昇するに伴って低下する。
【0071】
コントローラ32はこの目標吹出温度TAOから目標放熱器温度TCOを算出し、次に、この目標放熱器温度TCOに基づき、目標放熱器圧力PCOを算出する。そして、この目標放熱器圧力PCOと、放熱器圧力センサ47が検出する放熱器4の冷媒圧力(放熱器圧力)Pciとに基づき、コントローラ32は圧縮機2の回転数Ncを算出し、この回転数Ncにて圧縮機2を運転する。即ち、コントローラ32は圧縮機2の回転数Ncにより放熱器4の冷媒圧力Pciを制御する。
【0072】
また、コントローラ32は目標吹出温度TAOに基づき、放熱器4の目標放熱器過冷却度TGSCを算出する。一方、コントローラ32は、放熱器圧力Pciと放熱器温度センサ46が検出する放熱器4の温度(放熱器温度Tci)に基づき、放熱器4における冷媒の過冷却度(放熱器過冷却度SC)を算出する。そして、この放熱器過冷却度SCと目標放熱器過冷却度TGSCに基づき、室外膨張弁6の目標弁開度(目標室外膨張弁開度TGECCV)を算出する。そして、コントローラ32はこの目標室外膨張弁開度TGECVVに室外膨張弁6の弁開度を制御する。
【0073】
コントローラ32は目標吹出温度TAOが高い程、目標放熱器過冷却度TGSCを上げる方向に演算を行うが、それに限らず、後述する要求暖房能力Qtgtと暖房能力Qhp(QhpNI)の差(能力差)や放熱器圧力Pci、目標放熱器圧力PCOと放熱器圧力Pciの差(圧力差)に基づいて算出してもよい。その場合コントローラ32は、能力差が小さい程、圧力差が小さい程、室内送風機27の風量が小さい程、又は、放熱器圧力Pciが小さい程、目標放熱器過冷却度TGSCを下げることになる。
【0074】
(6−2)熱媒体循環回路の制御1
また、コントローラ32は、この暖房モードにおいて放熱器4による暖房能力が不足すると判断した場合、熱媒体加熱電気ヒータ35に通電して発熱させ、循環ポンプ30を運転することにより、熱媒体循環回路23による加熱を実行する。
【0075】
熱媒体循環回路23の循環ポンプ30が運転され、熱媒体加熱電気ヒータ35に通電されると、前述したように熱媒体加熱電気ヒータ35により加熱された熱媒体(高温の熱媒体)が熱媒体−空気熱交換器40に循環されるので、空気流通路3の放熱器4を経た空気を加熱することになる。図2にはこのときの空気流通路3内における各部の温度等が示される。この図において、Gaは空気流通路3に流入した空気の質量風量、Teは吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度(吸熱器9を出た空気の温度)、Ga×SWは質量風量Gaにエアミックスダンパ28の開度を乗算した値、THhpは放熱器温度センサ46が検出する放熱器4を経た空気の温度(即ち、放熱器温度Tci)、THは熱媒体−空気熱交換器温度センサ55が検出する熱媒体−空気熱交換器40を経た空気の温度を示しており、暖房モードでは熱媒体−空気熱交換器40を出て吹出口29から吹き出される空気の温度の目標値が目標放熱器温度TCOとなる。尚、熱媒体循環回路23が動作していないときには、TH=THhpとなる。
【0076】
次に、図4図5を参照しながら前記暖房モードにおける熱媒体循環回路23の制御について説明する。コントローラ32は式(II)、式(III)を用いて要求される放熱器4の暖房能力である要求暖房能力Qtgtと、放熱器4が発生可能な暖房能力Qhpとしての非着霜時暖房能力QhpNIを算出する。この非着霜時暖房能力QhpNIは、室外熱交換器7に着霜が生じていない場合(非着霜時)、そのときの外気温度Tamにおいて放熱器4が発生可能な暖房能力の予測値である(即ち、ヒートポンプの推定最大暖房能力)。
【0077】
Qtgt=(TCO−Te)×Cpa×ρ×Qair ・・(II)
QhpNI=f(Tam、Nc、BLV、VSP、FANVout、Te)・・(III)
ここで、Teは吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度、Cpaは放熱器4に流入する空気の比熱[kj/kg・K]、ρは放熱器4に流入する空気の密度(比体積)[kg/m3]、Qairは放熱器4を通過する風量[m3/h](室内送風機27のブロワ電圧BLV等から推定)、VSPは車速センサ52から得られる車速、FANVoutは室外送風機15の電圧である。
【0078】
尚、式(II)においてはQairに代えて、或いは、それに加えて、放熱器4に流入する空気の温度、又は、放熱器4から流出する空気の温度を採用してもよい。また、式(III)の圧縮機2の回転数Ncは冷媒流量を示す指標の一例であり、ブロワ電圧BLVは空気流通路3内の風量を示す指標の一例であり、暖房能力QhpNIはこれらの関数から算出される。また、室外送風機15の電圧FANVoutは停車中(VSPが0)のときの室外熱交換器7の通過風量を示す指標となる。また、QhpNIはそれらと放熱器4の出口冷媒圧力、放熱器4の出口冷媒温度、放熱器4の入口冷媒圧力、及び、放熱器4の入口冷媒温度のうちの何れか、若しくは、組み合わせから算出してもよい。
【0079】
コントローラ32は図4のフローチャートのステップS1で各センサからデータを読み込み、ステップS2で上記式(II)を用い、要求暖房能力Qtgtを算出する。次に、ステップS3で上記式(III)を用い、室外熱交換器7が非着霜時の暖房能力QhpNI(推定値)を算出し、ステップS4で要求暖房能力Qtgtが暖房能力QhpNIより大きいか否か判断する。
【0080】
図5の斜め線は室外熱交換器7に着霜していないときの、放熱器4による非着霜時暖房能力QhpNIの限界ラインを示しており、横軸は外気温度Tam、縦軸は暖房能力を示している。要求暖房能力Qtgtが図5の非着霜時暖房能力QhpNI(の限界ライン)以下の場合、即ち、要求暖房能力Qtgtに対して放熱器4の非着霜時暖房能力QhpNIが足りている場合はステップS6に進み、熱媒体循環回路23による加熱を停止(循環ポンプ30停止、熱媒体加熱電気ヒータ35非通電でECH停止)し、放熱器4が要求暖房能力Qtgtを発生するように冷媒回路Rの圧縮機2他の機器を運転する(TGHP=Qtgt)。
【0081】
一方、要求暖房能力Qtgtが図5の非着霜時暖房能力QhpNIの限界ライン(斜め線)より大きいところにある場合、即ち、放熱器4の非着霜時暖房能力QhpNIが要求暖房能力Qtgtに対して不足する場合は、ステップS4からステップS5に進み、冷媒回路Rの放熱器4と熱媒体循環回路23の熱媒体−空気熱交換器40(ECH)の協調運転を実行する。即ち、コントローラ32は熱媒体循環回路23の循環ポンプ30を運転し、熱媒体加熱電気ヒータ35に通電することにより、冷媒回路Rの放熱器4による加熱に加えて、熱媒体−空気熱交換器40による加熱を開始する。
【0082】
このとき、コントローラ32は熱媒体加熱電気ヒータ温度センサ50や熱媒体−空気熱交換器温度センサ55の出力に基づき、熱媒体循環回路23による要求暖房能力TGQech=要求暖房能力Qtgt−非着霜時暖房能力QhpNIとなるように熱媒体加熱電気ヒータ35への通電と循環ポンプ30の運転を制御する。即ち、コントローラ32は要求暖房能力Qtgtに対して非着霜時暖房能力QhpNIが不足する分を、熱媒体循環回路23の熱媒体−空気熱交換器40による加熱で補完する。これにより、快適な車室内暖房を実現し、且つ、室外熱交換器7の着霜も抑制することができるようになる。
【0083】
また、放熱器4による暖房能力が不足している状況下で熱媒体循環回路23の熱媒体−空気熱交換器40による加熱を実行するので、熱媒体循環回路23の運転に伴う効率の悪化も最小限に抑えることが可能となる。これにより、実施例のような電気自動車においては航続距離が低下する不都合を効果的に抑制することが可能となる。
【0084】
更に、コントローラ32は要求暖房能力Qtgtと非着霜時暖房能力QhpNIとを比較し、この非着霜時暖房能力QhpNIが要求暖房能力Qtgtより不足する分を熱媒体循環回路23の加熱により補完するので、効果的に車室内の快適暖房と効率低下の抑制を行えると共に、室外熱交換器7に着霜する以前の段階で放熱器4の暖房能力Qhpが不足するか否かを把握し、迅速な熱媒体循環回路23による加熱を開始して、より快適な車室内暖房を実現することが可能となる。
【0085】
(6−3)熱媒体循環回路の制御2
次に、図6図7を用いてコントローラ32による熱媒体循環回路23の制御の他の実施例を説明する。前述したように暖房モードでは室外熱交換器7において冷媒が蒸発し、外気からの吸熱が行われる。そのため、特に低外気温環境下では室外熱交換器7に外気中の水分が霜となって付着し、成長するようになる。
【0086】
室外熱交換器7に着霜が発生すると、外気との熱交換(吸熱)が阻害されるようになるため、放熱器4が実際に発生可能な暖房能力Qhp、即ち、実暖房能力Qhprは前述した非着霜時暖房能力QhpNI(HP推定最大能力)より低下するようになる。コントローラ32は式(IV)を用いてこの実暖房能力Qhprを算出する。
Qhpr=(THhp−Te)×Cpa×ρ×Qair ・・(IV)
尚、THhpは前述した放熱器温度センサ46が検出する放熱器4を経た空気の温度(即ち、放熱器温度Tci)である。
【0087】
ここで、図6は係る実暖房能力Qhpr、非着霜時暖房能力QhpNI、及び、要求暖房能力Qtgtの関係を示している。室外熱交換器7の非着霜時には、Qhpr≒QhpNIであるが、室外熱交換器7に着霜が生じると、Qhprが低下してくるので、図6中(a)で示すように非着霜時暖房能力QhpNIと実暖房能力Qhprとの差(QhpNI−Qhpr)が所定値(着霜判定閾値)以上となったか否かで室外熱交換器7への着霜を判定することができる。
【0088】
尚、この室外熱交換器7の着霜判定はそれ以外にも、図6中(b)で示すように実暖房能力Qhprが低下する傾きが一定値以上であるかや、圧縮機2の回転数が上昇、放熱器4の温度低下等によっても判定可能である。但し、この実施例では上記(a)の方法で判断するものとする。
【0089】
また、実暖房能力Qhprが非着霜時暖房能力QhpNIより低くなる関係上、前記実施例(図4)のように熱媒体循環回路23による要求暖房能力TGQech=要求暖房能力Qtgt−非着霜時暖房能力QhpNI(図6の斜線部分)で熱媒体加熱電気ヒータ35への通電と循環ポンプ30の運転を制御しても、実際には図6中の格子線で示す分(QhpNI−Qhpr)が不足することになる。そこで、この実施例ではコントローラ32はこの不足分を補正して熱媒体循環回路23を制御する。
【0090】
即ち、コントローラ32は図7のフローチャートのステップS7で前述同様に各センサからデータを読み込み、ステップS8で前記式(II)を用い、要求暖房能力Qtgtを算出する。次に、ステップS9で前記式(III)を用い、室外熱交換器7が非着霜時の暖房能力QhpNI(推定値)を算出し、同様に先ずステップS10で要求暖房能力Qtgtが暖房能力QhpNIより大きいか否か判断する。
【0091】
そして、要求暖房能力Qtgtに対して放熱器4の非着霜時暖房能力QhpNIが足りている場合はステップS15に進み、熱媒体循環回路23による加熱を停止(循環ポンプ30停止、熱媒体加熱電気ヒータ35非通電でECH停止)し、放熱器4が要求暖房能力Qtgtを発生するように冷媒回路Rの圧縮機2他の機器を運転する(TGHP=Qtgt)。
【0092】
一方、放熱器4の非着霜時暖房能力QhpNIが要求暖房能力Qtgtに対して不足する場合は、ステップS10からステップS11に進み、前記式(IV)を用いて実暖房能力Qhprを算出する。そして、ステップS12で非着霜時暖房能力QhpNIと実暖房能力Qhprとの差(QhpNI−Qhpr)が所定値Aより小さいか否か判断する。上記式(II)〜(IV)で各暖房能力を算出することで、放熱器4による暖房能力の判断とそれが不足することに伴う熱媒体循環回路23による加熱をより的確に制御することが可能となる。尚、この所定値Aは室外熱交換器7に着霜が発生しているものの、着霜の成長はそれほど進行していない状態を判別するための値であり、前述した着霜判定閾値であっても良く、異なる値であっても良い。
【0093】
そして、差QhpNI−Qhprが所定値Aより小さい場合、コントローラ32は室外熱交換器7の着霜は未だ進行していないものと判断してステップS12からステップS13に進み、冷媒回路Rの放熱器4と熱媒体循環回路23の熱媒体−空気熱交換器40(ECH)の協調運転を実行する。即ち、コントローラ32は熱媒体循環回路23の循環ポンプ30を運転し、熱媒体加熱電気ヒータ35に通電することにより、冷媒回路Rの放熱器4による加熱に加えて、熱媒体−空気熱交換器40による加熱を開始する。
【0094】
このとき、コントローラ32は熱媒体加熱電気ヒータ温度センサ50や熱媒体−空気熱交換器温度センサ55の出力に基づき、熱媒体循環回路23による要求暖房能力TGQech=要求暖房能力Qtgt−非着霜時暖房能力QhpNI+ΔQhpとなるように熱媒体加熱電気ヒータ35への通電と循環ポンプ30の運転を制御する。このΔQhpは非着霜時暖房能力QhpNIと実暖房能力Qhprとの差である(ΔQhp=QhpNI−Qhpr)。
【0095】
即ち、この実施例でコントローラ32は、放熱器4が実際に発生する実暖房能力Qhprが非着霜時暖房能力QhpNIよりも小さい場合、要求暖房能力Qtgtに対して非着霜時暖房能力QhpNIが不足する分を、熱媒体循環回路23の熱媒体−空気熱交換器40による加熱で補完すると共に、それに非着霜時暖房能力QhpNIと実暖房能力Qhprの差ΔQhpを加えて熱媒体循環回路23の熱媒体−空気熱交換器40により加熱する。これにより、室外熱交換器7に着霜が生じて非着霜時暖房能力QhpNIよりも放熱器4が実際に発生する実暖房能力Qhprが低下している場合に、その低下分も熱媒体循環回路23により補完することができるようになり、快適さをより一層向上させることができるようになる。
【0096】
尚、図7のステップS12で差QhpNI−Qhprが所定値A以上となっている場合、コントローラ32は室外熱交換器7の着霜が進行していないものと判断してステップS12からステップS14に進み、冷媒回路Rの圧縮機2を停止し(HP停止)、熱媒体−空気熱交換器40が要求暖房能力Qtgtを発生するように熱媒体加熱電気ヒータ35や循環ポンプ30を運転する(TGQech=Qtgt)。
【0097】
このように、室外熱交換器7への着霜の進行度合いを把握して着霜が進行してしまった場合には、熱媒体循環回路23の熱媒体−空気熱交換器40のみによる車室内暖房に切り換えるので、室外熱交換器7のそれ以上の着霜の成長を防止し、或いは、着霜の融解を促進しながら、熱媒体循環回路23により車室内の暖房も引き続き行うことが可能となる。
【0098】
(6−4)熱媒体循環回路の制御3
次に、図8を用いてコントローラ32による熱媒体循環回路23の制御のもう一つの他の実施例を説明する。この場合の補助加熱手段としての熱媒体循環回路23は、熱媒体加熱電気ヒータ35で加熱された熱媒体(高温の熱媒体)を循環ポンプ30により熱媒体−空気熱交換器40に循環して放熱器4を経た空気流通路3内の空気を加熱するものであるため、熱媒体を暖房に適した温度の熱媒体(高温の熱媒体)にするまでに時間を要する。そこで、この実施例の場合、コントローラ32は放熱器4による暖房能力(非着霜時暖房能力QhpNI)が不足する以前の段階から熱媒体循環回路23の予備運転を実行する。
【0099】
図8は係る場合のコントローラ32の制御を示しており、図7と同一符号で示すステップは同一とする。即ち、この実施例では図8中で破線Xで示す範囲が図7に追加した熱媒体循環回路23の予備運転を示している。以後、図7と異なる部分を中心に説明すると、コントローラ32はステップS10で、要求暖房能力Qtgtに対して放熱器4の非着霜時暖房能力QhpNIが足りている場合はステップS16に進み、冷媒回路Rの圧縮機2他の機器を運転して、放熱器4により空気流通路3から車室内に供給される空気を加熱する(HP制御)。
【0100】
次に、ステップS17で要求暖房能力Qtgtと非着霜時暖房能力QhpNIとの差(Qtgt−QhpNI)が、0より小さく所定値Bより大きいか否か判断する。この所定値Bは絶対値が小さい所定の負の値とする。即ち、ステップS17でコントローラ32は、非着霜時暖房能力QhpNIが要求暖房能力Qtgt以上ではあるものの(ステップS10)、その差がBの絶対値より小さいか否か判断する。
【0101】
そして、ステップS17で差(Qtgt−QhpNI)がB以下であるとき、即ち、非着霜時暖房能力QhpNIの方が要求暖房能力QtgtよりBの絶対値以上大きい場合は、放熱器4による暖房能力は足りているものと判断してステップS15に進み、図7と同様に熱媒体循環回路23による加熱を停止(循環ポンプ30停止、熱媒体加熱電気ヒータ35非通電でECH停止)し、放熱器4が要求暖房能力Qtgtを発生するように冷媒回路Rの圧縮機2他の機器を運転する(TGHP=Qtgt)。
【0102】
他方、ステップS17で差(Qtgt−QhpNI)が0より小さくBより大きいとき、即ち、非着霜時暖房能力QhpNIの方が要求暖房能力Qtgtより大きいものの、その差が縮小してBの絶対値未満となっている場合は、熱媒体循環回路23の予備運転が必要であると判断してステップS18に進み、熱媒体循環回路23の予備運転を開始する。
【0103】
この予備運転では、冷媒回路Rの圧縮機2を運転しながら熱媒体循環回路23の循環ポンプ30の運転と熱媒体加熱電気ヒータ35への通電を開始し、冷媒回路R(HP)の放熱器4と熱媒体循環回路23の熱媒体−空気熱交換器40(ECH)を運転するものであるが、熱媒体循環回路23による要求暖房能力TGQech=要求暖房能力Qtgt−非着霜時暖房能力QhpNIとなるように熱媒体加熱電気ヒータ35への通電と循環ポンプ30の運転を制御する。但し、熱媒体循環回路23の要求暖房能力TGQechは所定値Cより大きくして熱媒体循環回路23自体の効率の悪化を防止する。これにより、熱媒体循環回路23内の熱媒体の温度は上昇していくので、放熱器4による暖房能力の不足が予測される場合に、予め熱媒体循環回路23内の熱媒体を温めておくことが可能となり、熱媒体循環回路23を用いた迅速な暖房能力の補完を実現することができるようになる。
【0104】
また、放熱器4の目標暖房能力TGHPは非着霜時暖房能力QhpNI−TGQechとして、予備運転中に熱媒体循環回路23による加熱が増える分、放熱器4の暖房能力を低下させる。即ち、放熱器4がQhpNI−TGQechを発生するように冷媒回路Rの圧縮機2他の機器を運転するので、結果的に放熱器4と熱媒体−空気熱交換器40を合わせた暖房能力は要求暖房能力Qtgtとなる。これにより、熱媒体循環回路23の予備運転中、必要以上に暖房能力が増大してしまう不都合も解消することができる。
【0105】
次に、コントローラ32はステップS19で熱媒体加熱電気ヒータ温度センサ50が検出する熱媒体循環回路23の熱媒体加熱電気ヒータ35を経た熱媒体の温度(図8のフローチャートではECH水温で示す)が所定値(暖房に供せる温度)より高いか否か判断し、高くなっている場合にはステップS20に進んで循環ポンプ(図8のフローチャートではWPで示す)30による循環熱媒体量を通常の熱媒体量とし、所定値以下の場合にはステップS21に進んで循環ポンプ30による熱媒体−空気熱交換器40への循環熱媒体量を制限し、低下させる(図8のフローチャートではWP水量制限で示す)。この循環熱媒体量の制御は循環ポンプ30の回転数制御により実行する。
【0106】
このように、コントローラ32は予備運転を実行中、熱媒体循環回路23を流れる熱媒体の温度が所定値より低い場合、熱媒体−空気熱交換器40への循環熱媒体量を制限するようにしたので、熱媒体循環回路23内の熱媒体の温度が未だ低い状況での熱媒体−空気熱交換器40への循環を抑制し、車室内に供給される空気の温度低下を防止しながら、熱媒体の温度上昇を促進し、放熱器4による暖房能力が不足した時点では迅速に熱媒体−空気熱交換器40により空気流通路3内の空気を加熱して暖房することができるようになる。尚、実施例では循環ポンプ30の回転数制御で熱媒体−空気熱交換器40への循環熱媒体量を制限したが、それに限らず、熱媒体−空気熱交換器40をバイパスする経路を別途設けておき、熱媒体の温度が低いうちはこのバイパス経路に全部若しくは一部を流すようにして、熱媒体−空気熱交換器40への循環熱媒体量を制限するようにしても良い。
【0107】
(7)他の構成例1
次に、図9は本発明の車両用空気調和装置1の他の構成図を示している。この実施例では、室外熱交換器7にレシーバドライヤ部14と過冷却部16が設けられておらず、室外熱交換器7から出た冷媒配管13Aは電磁弁17と逆止弁18を介して冷媒配管13Bに接続されている。また、冷媒配管13Aから分岐した冷媒配管13Dは、同様に電磁弁21を介して内部熱交換器19の下流側における冷媒配管13Cに接続されている。
【0108】
その他は、図1の例と同様である。このようにレシーバドライヤ部14と過冷却部16を有しない室外熱交換器7を採用した冷媒回路Rの車両用空気調和装置1においても本発明は有効である。
【0109】
(8)他の構成例2
次に、図10図12は本発明の車両用空気調和装置1のもう一つの他の構成図を示している。尚、この実施例の冷媒回路Rは図9と同様である。但し、この場合、熱媒体循環回路23の熱媒体−空気熱交換器40は、空気流通路3の空気の流れに対して放熱器4の上流側であってエアミックスダンパ28の下流側に配置されている。他の構成は図9と同様である。
【0110】
図11にはこのときの空気流通路3内における各部の温度等が示される。また、図12には、非着霜時暖房能力QhpNI、熱媒体循環回路23の要求暖房能力TGQech、要求暖房能力Qtgt、吸熱器温度Te、放熱器4を出た空気の温度THhp、目標放熱器温度TCOの関係が示される。尚、この図において、図2と同一符号で示すものは同一である。
【0111】
この場合には空気流通路3において熱媒体−空気熱交換器40が放熱器4の上流側に位置するため、熱媒体循環回路23の動作中、空気は熱媒体−空気熱交換器40で加熱された後、放熱器4に流入するようになる。このように熱媒体−空気熱交換器40を放熱器4の上流側に配置した車両用空気調和装置1においても本発明は有効であり、特にこの場合には熱媒体循環回路23内の熱媒体の温度が低いことによる問題は生じなくなる。これにより、放熱器4との協調暖房も容易となると共に、前述した図8の如き予備運転も不要となるが、熱媒体−空気熱交換器40を経た空気が放熱器4に流入することになるため、放熱器4との温度差が小さくなり、熱交換効率が低下する危険性がある。一方、図1図9のように熱媒体−空気熱交換器40を、空気流通路3の空気の流れに対して放熱器4の下流側に配置すれば、図10の如く熱媒体−空気熱交換器40を上流側に配置する場合に比して、熱媒体−空気熱交換器40で加熱された空気が放熱器4に流入することが無くなり、放熱器4の温度と空気の温度差を確保して、放熱器4における熱交換性能の低下を防止することができるようになる。
【0112】
(9)他の構成例3
次に、図13は本発明の車両用空気調和装置1の更にもう一つの他の構成図を示している。この実施例の冷媒回路R及び熱媒体循環回路23の基本構成は図1と同様であるが、熱媒体循環回路23に熱媒体−冷媒熱交換器70が設けられている。この熱媒体−冷媒熱交換器70は、循環ポンプ30を出た熱媒体配管23Aと冷媒回路Rの放熱器4を出た冷媒配管13Eとを熱交換させるものであり、この熱媒体−冷媒熱交換器70において、循環ポンプ30から吐出された熱媒体は放熱器4から出た冷媒から加熱作用を受けるように構成されている。これにより、放熱器4を経た冷媒から熱媒体循環回路23を循環する熱媒体に熱を回収することができる。
【0113】
このように、熱媒体循環回路23に、放熱器4を経た冷媒から熱を回収する熱媒体−冷媒熱交換器70を設けることにより、放熱器4を出た冷媒が有する熱を熱媒体循環回路23内を流れる熱媒体に回収して熱媒体−空気熱交換器40に搬送し、より効率的な暖房補助を行うことが可能となる。
【0114】
(10)他の構成例4
次に、図14は本発明の車両用空気調和装置1の更にもう一つの他の構成図を示している。この実施例の冷媒回路R及び熱媒体循環回路23は図13の場合と同様であるが、熱媒体循環回路23の熱媒体−空気熱交換器40が、空気流通路3の空気の流れに対して放熱器4の上流側であってエアミックスダンパ28の下流側に配置されている。このような構成によっても、放熱器4を出た冷媒が有する熱を熱媒体−冷媒熱交換器70にて熱媒体循環回路23内を流れる熱媒体に回収し、熱媒体−空気熱交換器40に搬送してより効率的な暖房補助を行うことが可能となる。
【0115】
(11)他の構成例5
次に、図15は本発明の車両用空気調和装置1の更にもう一つの他の構成図を示している。この実施例の冷媒回路R及び熱媒体循環回路23の配管構成は図1の場合と基本的に同様であるが、放熱器4は空気流通路3には設けられておらず、その外側に配置されている。その代わりに、この放熱器4にはこの場合の熱媒体−冷媒熱交換器74が熱交換関係に配設されている。
【0116】
この熱媒体−冷媒熱交換器74は、熱媒体循環回路23の循環ポンプ30と熱媒体加熱電気ヒータ35の間の熱媒体配管23Aに接続されたもので、熱媒体循環回路23の熱媒体−空気熱交換器40は空気流通路3に設けられている。係る構成で、循環ポンプ30から吐出された熱媒体は放熱器4を流れる冷媒と熱交換し、当該冷媒により加熱され、次に、熱媒体加熱電気ヒータ35(通電されて発熱している場合)で加熱された後、熱媒体−空気熱交換器40で放熱することにより、空気流通路3から車室内に供給される空気を加熱する。
【0117】
このような構成の車両用空気調和装置1においても、放熱器4による暖房能力が不足する場合に、熱媒体加熱電気ヒータ35に通電して熱媒体回路23A内を流れる熱媒体を加熱することにより、暖房補助を行うことが可能となると共に、後述するように電気ヒータを空気流通路3に配設する場合に比して、電気的により安全な車室内暖房を実現することができるようになる。
【0118】
(12)他の構成例6
尚、上記各実施例では補助加熱手段として熱媒体循環回路23を採用したが、通常の電気ヒータ(例えば、PTCヒータ)73にて補助加熱手段を構成してもよい。その場合の図1に対応する構成例が図16図4に対応する制御フローチャートの例が図17図7に対応する制御フローチャートの例が図18図9に対応する構成例が図19である。図16図19では図1図9の熱媒体循環回路23がこの場合の電気ヒータ73に置き換えられている。また、図4のステップS5及びステップS6が図17のステップS5A及びステップS6A、図7のステップS13〜ステップS15が、図18のステップS13A〜ステップS15Aとなるが、目標TGQechが電気ヒータ73による要求暖房能力TGQehに置き換えられている。
【0119】
その他の構成及び制御は基本的に同様であり、コントローラ32は熱媒体循環回路23の循環ポンプ30及び熱媒体加熱電気ヒータ35の代わりに、電気ヒータ73の通電を制御して、前述同様にその発熱によって放熱器4による暖房能力の補完を行うものであるので、詳細な説明は省略する。このように、車室内に供給する空気を電気ヒータ73で加熱するようにしても良く、係る構成によれば熱媒体循環回路23を用いる場合に比して構成が簡素化される利点がある。
【0120】
勿論、この電気ヒータ73を図10の場合の如く、図16図19における放熱器4の空気上流側に配置してもよく、その場合には電気ヒータ73への通電開始初期に車室内に供給される空気温度が低下する不都合を解消できる効果がある。
【0121】
尚、実施例では暖房モード、除湿暖房モード、除湿冷房モード、冷房モードの各運転モードを切り換えて実行する車両用空気調和装置1について本発明を適用したが、それに限らず、暖房モードのみ行うものにも本発明は有効である。
【0122】
また、上記各実施例で説明した冷媒回路Rの構成や各数値はそれに限定されるものでは無く、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能であることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0123】
1 車両用空気調和装置
2 圧縮機
3 空気流通路
4 放熱器
6 室外膨張弁
7 室外熱交換器
8 室内膨張弁
9 吸熱器
11 蒸発能力制御弁
17、20、21、22 電磁弁
23 熱媒体循環回路(補助加熱手段)
26 吸込切換ダンパ
27 室内送風機(ブロワファン)
28 エアミックスダンパ
30 循環ポンプ(循環手段)
32 コントローラ(制御手段)
35 熱媒体加熱電気ヒータ(電気ヒータ)
40 熱媒体−空気熱交換器
70、74 熱媒体−冷媒熱交換器
73 電気ヒータ(補助加熱手段)
R 冷媒回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19