(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アルミニウム箔の一方の面にベース樹脂が塗布されてベース樹脂からなる第1塗膜層が積層され、前記第1塗膜層の表面に、該第1塗膜層の幅方向の両端縁部に第1塗膜層が露出した露出縁部を残した態様で、電池本体の表面フィルムに対して熱接着可能な軟化点160℃以下の熱接着性樹脂からなる第2塗膜層が形成されていることを特徴とする電池用ラミネート外装材。
前記第2塗膜層の熱接着性樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体またはエチレン−メチル(メタ)アクリレート−無水マレイン酸共重合体である請求項1に記載の電池用ラミネート外装材。
前記第1塗膜層のベース樹脂が、ラミネート電池の端部補強用プラスチック部品に対して熱接着可能な熱可塑性樹脂からなる請求項1または2に記載の電池用ラミネート外装材。
前記アルミニウム箔における前記第1塗膜層形成側とは反対側の表面に、厚さ8μm〜40μmの延伸フィルムが貼着されてなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の電池用ラミネート外装材。
前記アルミニウム箔における前記第1塗膜層形成側とは反対側の表面に、厚さ0.5μm〜5μmの熱硬化樹脂層が形成されてなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の電池用ラミネート外装材。
電池本体に請求項1〜7のいずれか1項に記載の電池用ラミネート外装材が前記第2塗膜層側で接して巻付けられて熱接着されると共に、電池本体の両側にはみ出た該ラミネート外装材の余剰部分で構成される各筒状部に、端部補強用プラスチック部品の少なくとも一部が挿嵌されて、該端部補強用プラスチック部品が前記筒状部内面の第1塗膜層の露出縁部に熱接着されてなることを特徴とするラミネート電池。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来のものは、アルミニウム箔とベースフィルムが接着剤で貼着された構成であるので、外装材としての総厚さが大きいものとなり、その分重量も増大するので、体積エネルギー密度や重量エネルギー密度が大きいことが要求されるモバイル機器用の電池用としては、体積エネルギー密度や重量エネルギー密度の点で些か不十分な面があった。
【0008】
また、外装材を構成するベースフィルムは(フィルムであるために薄くすることができず)厚さがあることで断熱性が発現し、これにより外装材を電池本体に熱接着する際に些か時間を要するものとなっていた。
【0009】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、外装材としての全体厚さを低減して軽量化できると共に、熱接着時の電池本体への接着を確実に行うことができ、端部補強用のプラスチック部品を用いる場合でも当該部品に対して強固に接着できる外装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0011】
[1]アルミニウム箔の一方の面にベース樹脂が塗布されてベース樹脂からなる第1塗膜層が積層され、前記第1塗膜層の表面に、該第1塗膜層の幅方向の両端縁部に第1塗膜層が露出した露出縁部を残した態様で、電池本体の表面フィルムに対して熱接着可能な軟化点160℃以下の熱接着性樹脂からなる第2塗膜層が形成されていることを特徴とする電池用ラミネート外装材。
【0012】
[2]前記第2塗膜層の熱接着性樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体またはエチレン−メチル(メタ)アクリレート−無水マレイン酸共重合体である前項1に記載の電池用ラミネート外装材。
【0013】
[3]前記第1塗膜層のベース樹脂が、ラミネート電池の端部補強用プラスチック部品に対して熱接着可能な熱可塑性樹脂からなる前項1または2に記載の電池用ラミネート外装材。
【0014】
[4]前記第1塗膜層の厚さが0.5μm〜10μmである前項1〜3のいずれか1項に記載の電池用ラミネート外装材。
【0015】
[5]前記アルミニウム箔における前記第1塗膜層形成側とは反対側の表面に、厚さ8μm〜40μmの延伸フィルムが貼着されてなる前項1〜4のいずれか1項に記載の電池用ラミネート外装材。
【0016】
[6]前記アルミニウム箔における前記第1塗膜層形成側とは反対側の表面に、厚さ0.5μm〜5μmの熱硬化樹脂層が形成されてなる前項1〜4のいずれか1項に記載の電池用ラミネート外装材。
【0017】
[7]前記アルミニウム箔が硬質アルミニウム箔である前項1〜6のいずれか1項に記載の電池用ラミネート外装材。
【0018】
[8]電池本体に前項1〜7のいずれか1項に記載の電池用ラミネート外装材が前記第2塗膜層側で接して巻付けられて熱接着されると共に、電池本体の両側にはみ出た該ラミネート外装材の余剰部分で構成される各筒状部に、端部補強用プラスチック部品の少なくとも一部が挿嵌されて、該端部補強用プラスチック部品が前記筒状部内面の第1塗膜層の露出縁部に熱接着されてなることを特徴とするラミネート電池。
【0019】
なお、硬質アルミニウム箔とは、加工(圧延)を施して加工硬化させた状態のアルミニウム箔を意味し、例えば、加工硬化上がりの箔、加工硬化後に適度な熱処理を施した箔等が挙げられ、一般的にJIS規格(JIS H0001)で用いられている質別記号HX1、HX2、HX3、HX4、HX5、HX6、HX7、HX8、HX9のもの(ただし、X:1〜3)が挙げられる。これに対し、軟質アルミニウム箔は、上記の硬質アルミニウム箔以外のアルミニウム箔を意味し、例えば、完全焼き鈍しにより軟化させた状態の箔等が挙げられ、一般的にJIS規格(JIS H0001)でO材と称されているものが挙げられる。
【発明の効果】
【0020】
[1]の発明に係る電池用ラミネート外装材は、それ自体が電池本体の表面フィルムに対して熱接着可能な熱接着性樹脂からなる第2塗膜層を備えるため、電池本体への装着に際し、別途に粘着テープやホットメルト接着剤を使用することなく、該電池本体に対して直接に容易に熱接着でき、それだけラミネート電池の部品数を少なくできると共に、電池製造ラインの簡素化を可能にする。しかして、第2塗膜層は軟化点160℃以下の熱接着性樹脂からなるため、ラミネート外装材を該第2塗膜層側で接するように電池本体に巻き付けた状態で、160℃以下の低温加熱によって接着固定でき、もって電池本体内のセパレータの融解や電解液の分解等の熱劣化を回避でき、高い電池性能を維持できる。
【0021】
また、アルミニウム箔の一方の面にベース樹脂が塗布されてベース樹脂からなる第1塗膜層が積層されているので、従来の構成(アルミニウム箔の一方の面に接着剤層を介してベースフィルムが貼着されてなる構成)と比較して、厚さを大きく低減できて、軽量化を実現することができ、これにより、体積エネルギー密度や重量エネルギー密度の高いラミネート電池の提供が可能となる。
【0022】
また、端部補強用プラスチック部品を使用する際は、外装材の第1塗膜層における露出縁部(第2塗膜層が形成されていない領域)と、該端部補強用プラスチック部品とを熱圧着することにより、電池用ラミネート外装材と端部補強用プラスチック部品とを接着することができる。
【0023】
更に、第1塗膜層は、アルミニウム箔にベース樹脂が塗布されて形成された「塗膜」である(従来のような、アルミニウム箔にベース「フィルム」を貼着した構成ではない)ので、この第1塗膜層(ベース樹脂層)と端部補強用プラスチック部品とを強接着できるし、振動試験を経た後でも十分な強接着状態が維持される(接着力の耐久性に優れるという有利な効果を奏する)。なお、これらの点は、後述する実施例1と比較例2の評価結果(表1参照)を対比することにより明らかである。
【0024】
[2]の発明では、第2塗膜層の熱接着性樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体またはエチレン−メチル(メタ)アクリレート−無水マレイン酸共重合体であるから、第2塗膜層は、電池本体の表面フィルムに対して低温圧着でも優れた熱接着性を発揮する。
【0025】
[3]の発明では、第1塗膜層のベース樹脂が、ラミネート電池の端部補強用プラスチック部品に対して熱接着可能な熱可塑性樹脂からなる構成であるから、外装材の第1塗膜層(ベース樹脂層)における露出縁部(第2塗膜層が形成されていない領域)と、端部補強用プラスチック部品とを強接着できる。
【0026】
[4]の発明では、第1塗膜層の厚さが0.5μm〜10μmであるから、このような薄膜の形成により軽量化できると共に、第1塗膜層(ベース樹脂)と端部補強用プラスチック部品とが十分に接着する。
【0027】
[5]の発明では、電池用ラミネート外装材のアルミニウム箔の外面側表面に貼着された特定厚さの延伸フィルムが保護層として機能するから、ラミネート電池の外装に耐摩耗性、耐衝撃性、耐薬品性が付与される。
【0028】
[6]の発明では、電池用ラミネート外装材のアルミニウム箔の外面側表面に形成された特定厚さの熱硬化樹脂層が保護層として機能するから、ラミネート電池の外装の耐摩耗性、耐衝撃性、耐薬品性が向上する。
【0029】
[7]の発明では、アルミニウム箔として硬質アルミニウム箔を用いているから、剛性がより高くなることで、電池用ラミネート外装材をより薄くでき、電池のエネルギー密度をより増大させることができる。
【0030】
[8]の発明に係るラミネート電池では、上記電池用ラミネート外装材(の第2塗膜層)が電池本体に対して確実に接着固定されると共に、電池の両端部において端部補強用プラスチック部品が、ラミネート外装材における第1塗膜層の露出縁部(第2塗膜層が積層形成されていない領域)に強固に接着されたものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1(A)〜(C)は、本発明を適用するラミネート電池の外装形成を工程順に示したものである。このラミネート電池は、
図1(A)の如く直方体形状の電池本体10をそれよりも幅広の矩形状のラミネート外装材11の第2塗膜層2の上に載せ、
図1(B)の如く該ラミネート外装材11で電池本体10を包み込んで電池本体10の表面フィルムにラミネート外装材11の第2塗膜層2を熱接着すると共に、ラミネート外装材11の両側余剰部にて構成される両端の長方形の各筒状部11a内に、
図1(C)の如く直方体形状の端部補強用プラスチック部品12の一部を挿嵌し、該端部補強用プラスチック部品12と、筒状部11aの内面の第1塗膜層(ベース樹脂層)1の露出縁部1a(熱接着性樹脂が未塗布の縁部、即ち第2塗膜層が積層形成されていない縁部領域)とを熱接着によって接着固定したものである。図中の10aは電池の端子を示す。
【0033】
なお、電池本体10は、リチウムイオン電池やリチウムポリマー電池であり、その表面がポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリアミド(ON)フィルム、ポリプロピレン(OPP)フィルム等の延伸フィルムにて構成されている。
【0034】
そして、ラミネート外装材11は、
図2に示すように、アルミニウム箔3の一方の面にベース樹脂が塗布されてベース樹脂からなる第1塗膜層1が積層され、前記第1塗膜層1の表面に、該第1塗膜層1の幅方向の両端縁部に第1塗膜層が露出した露出縁部1a、1aを残した態様で、電池本体10の表面フィルムに対して熱接着可能な軟化点160℃以下の熱接着性樹脂からなる第2塗膜層2が形成されたものを基本構成としている。
【0035】
ここで、第1塗膜層1を構成するベース樹脂としては、ラミネート電池の端部補強用プラスチック部品に対して熱接着可能な熱可塑性樹脂からなるのが好ましく、例えば、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂(ABS樹脂)、12ナイロンの如き接着性ポリアミド樹脂などが使用され、中でも、端部補強用プラスチック部品12に対して小さい接着面積でも強固に熱接着できるように、当該プラスチック部品12と同系の熱可塑性樹脂からなる樹脂が好ましく,特に加工性及び絶縁性に優れたオレフィン系樹脂が好適である。
【0036】
前記アルミニウム箔3の一方の面に第1塗膜層(ベース樹脂層)1を形成するには、前記ベース樹脂をトルエン等の有機溶媒中に添加混合して乳化し、これをグラビアコート方式等でアルミニウム箔3の一方の面に塗布して、乾燥すればよい。
【0037】
しかして、前記第1塗膜層(ベース樹脂層)1の厚さは、電池本体10の凹凸のある表面に対しても圧力緩衝作用で確実に接着できるように0.5μm〜10μmにするのが好ましい。0.5μm未満では、圧力緩衝作用が不充分であるために凹凸のある電池表面には接着不完全になりやすく、10μmを超えるとラミネート外装材11の総厚さが増大して電池のエネルギー密度が低下するし、コストも増大するので、好ましくない。
【0038】
前記アルミニウム箔2としては、硬質又は軟質の厚さが40μm〜200μmのアルミニウム箔が好適である。薄過ぎては材料強度に劣る一方、厚過ぎては、ラミネート外装材11の総厚さが増大して電池のエネルギー密度が低下するし、加工が困難になるので、好ましくない。前記アルミニウム箔2としては、硬質アルミニウム箔が好適である。
【0039】
前記第2塗膜層2の熱接着性樹脂としては、電池本体10の表面フィルムに対して熱接着可能な軟化点160℃以下のものであればよいが、特に延伸フィルムに対する接着性に優れる、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、「EVA」という場合がある)、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−メチル(メタ)アクリレート−無水マレイン酸共重合体が好適である。しかして、この熱接着性樹脂の軟化点が160℃より高くなると、電池本体10に対する熱接着の温度が高くなるため、電池本体10内のセパレータの融解や電解液の分解等の熱劣化を生じる懸念がある。
【0040】
前記第2塗膜層2に用いるEVAとしては、酢酸ビニル含量が30質量%〜95質量%、MI(メルトインデックス)が3以上のものが好ましい。これは、酢酸ビニル含量が30質量%未満ではアルコール等の溶媒に溶けにくく、第1塗膜層1への塗布が困難になることによる。なお、塗工性を向上するために、EVAを一部ケン化変性し、アセトオキシ基、カルボキシル基、水酸基等を含むグラフトポリマーとして、アルコール等の溶媒に対する溶解性を高めてもよい。また、電池本体10の表面の延伸フィルムとの接着性をより向上させるために、エチレン−酢酸ビニル共重合体に少量のエチレン−アクリレート共重合体(EEA)を添加することもできる。
【0041】
更に、前記第2塗膜層2には、第1塗膜層(ベース樹脂)1との密着性とホットタック性を向上させる粘着付与成分、ならびにラミネート外装材11の巻回状態でのブロッキングを防止するためのブロッキング防止剤を、それぞれ熱接着性樹脂に対して1質量%〜20質量%の範囲で含有させることが推奨される。
【0042】
上記の粘着付与成分としては、テルペンフェノール樹脂、ロジン及びロジンエステル、石油樹脂等が挙げられ、これらは2種以上を併用してもよいが、特に軟化点60℃〜160℃で平均分子量3000以下のものが好ましい。これは、軟化点が60℃未満ではブロッキングを生じ易く、160℃より高くなると低温下での熱接着性が発現せず、また平均分子量が3000より大きくなると溶解性ならびにエチレン−酢酸ビニル共重合体との相溶性の悪化を招くことによる。
【0043】
上記のブロッキング防止材としては、SiO
2、CaCO
3、BaCO
3、TiO
2、タルク等の無機質粒子が挙げられ、これらは2種以上を併用してもよいが、特に平均粒子径が1μm〜10μmで比重3以下のものが推奨される。すなわち、平均粒子径が1μm未満になると、ブロッキング防止材の粒子同士が凝集密着して樹脂中で分散しにくくなり、逆に10μmを超える粒子になると、第2塗膜層2を形成するためのグラビアコート時にグラビア版の目詰まりが発生するので、好ましくない。また、比重が3を超えると、塗布後の乾燥で熱が加わった時に樹脂中で沈降し易く、ブロッキング防止効果を発現しない懸念があるので、好ましくない。
【0044】
第1塗膜層(ベース樹脂層)1の上に第2塗膜層2を形成するには、前記のエチレン−酢酸ビニル共重合体の如き樹脂成分と要すれば粘着付与成分及びブロッキング防止材をアルコール中に添加混合して乳化し、これをグラビアコート方式等で第1塗膜層(ベース樹脂層)1上に塗布して乾燥すればよい。この時、第2塗膜層2を形成する樹脂成分に有機系顔料、無機系顔料、色素等の着色剤を樹脂成分100質量部に対し0.1質量部〜5質量部の範囲で添加しても良い。例えばグラビアコート方式等で
図6に示すように外装材原反に第2塗膜層2を塗布形成する際に、隣り合う露出縁部1a、1aの間に細線状の切断線表示用塗膜部20も同時に形成するものとすれば、この切断線表示用塗膜部20が着色されていることで、切断の際に切断装置(幅入れ装置)の位置決め用センサーが該切断線表示用塗膜部20を認識することによって、切断位置を誤りなく確実に位置決めすることができる。
【0045】
前記有機系顔料としては、特に限定されるものではないが、例えばレーキレッド、ナフトール類、ハンザイエロー、ジスアゾイエロー、ベンズイミダゾロン等のアゾ系顔料、キノフタロン、イソインドリン、ピロロピロール、ジオキサジン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の多環式系顔料、レーキレッドC、ウォチュングレッド等のレーキ顔料などが挙げられる。また、前記無機系顔料としては、特に限定されるものではないが、例えばカーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、酸化鉄、酸化亜鉛等が挙げられる。また、前記色素としては、特に限定されるものではないが、例えばトリナトリウム塩(黄色4号)等の黄色色素類、ジナトリウム塩(赤色3号)等の赤色色素類、ジナトリウム塩(青色1号)等の青色色素類などが挙げられる。
【0046】
前記第2塗膜層2の厚さは、0.5μm〜10μmと薄く設定するのが好ましい。0.5μm未満にすることは技術的に難しく、一方10μmを超えるとラミネート外装材11として使用するとき型付が起こりやすくなるので、好ましくない。
【0047】
このような構成のラミネート外装材11を用いて電池本体10の外装を行うには、まず該ラミネート外装材11を第2塗膜層2側が上向きになるように配置し、この第2塗膜層2の上に
図1(A)の如く電池本体10を載せ、
図1(B)の如く該ラミネート外装材11を電池本体10に巻き付け、その外側から160℃以下の熱板を当接して熱接着する。これにより、溶融した第2塗膜層2の熱接着性樹脂を介して電池本体10の表面フィルムとラミネート外装材11とが熱接着されて一体化するが、この熱接着の温度が低いため、電池本体10内のセパレータの融解や電解液の分解等の熱劣化が回避され、もって高い電池性能を維持できる。
【0048】
そして、この熱圧着により、ラミネート外装材11の幅方向両側の余剰部によって電池本体10の両端にそれぞれ筒状部11aが構成され、該筒状部11aの内面には第1塗膜層1の露出縁部1a(第1塗膜層1が露出した縁部、即ち第2塗膜層2を形成するための熱接着性樹脂が未塗布の縁部)が表出している。次いで、各筒状部11a内に
図1(C)の如く端部補強用プラスチック部品12の一部を挿嵌し、その外側から180〜220℃の熱板を圧接して、該端部補強用プラスチック部品12と、ラミネート外装材11の第1塗膜層(ベース樹脂層)1の露出縁部1aとを熱圧着する。このとき、ラミネート外装材11の第1塗膜層(ベース樹脂層)1と端部補強用プラスチック部品12とが直接に強接着して一体化することになるが、この高温での熱圧着は電池本体10から外れた位置でなされるから、該電池本体10に熱劣化を生じる懸念はない。
【0049】
上述した実施形態のラミネート外装材11では、ラミネート電池の外周面においてアルミニウム箔3が露出することになるが、本発明のラミネート外装材においては、アルミニウム箔3の表面に耐摩耗性、耐衝撃性、耐薬品性等を付与するために、保護層を設けてもよい。このような保護層を設けるには、例えば
図3に示すように、アルミニウム箔3における第1塗膜層1形成側とは反対側の表面に、接着剤層6を介して延伸フィルム5を貼着したり、
図4に示すように、同表面に熱硬化樹脂層7を形成すればよい。
【0050】
しかして、延伸フィルム5としては、PET、PBT、PEN、ON、OPP等よりなる安価で汎用性のある一般的な樹脂フィルムを使用すればよい。その厚さは8μm〜40μmの範囲が好ましい。8μm未満では汎用性がなく、40μmよりも厚くなると高価で加工性も悪くなるので、好ましくない。また、更に耐摩耗性を向上させるために、延伸フィルム5の表面にシリカやアルミナを真空蒸着したもの、同表面にシロキサン系樹脂をコーティングしたもの、該延伸フィルム5の表面を粗化処理したもの等も使用可能である。なお、前記接着剤層6としては、例えば、ポリエーテル−ポリウレタン又はポリエステル−ポリウレタンベースの接着剤を使用できる。
【0051】
一方、熱硬化樹脂層7としては、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、硝化綿系樹脂等の熱硬化で強固な皮膜を形成し得る樹脂成分を用いればよい。そして、更に耐摩耗性を向上させるために、これらの樹脂中に5質量%以下のシロキサン系樹脂を添加してもよい。また、熱硬化樹脂層7の厚さは、0.5μm〜5μmの範囲が好ましい。薄過ぎては保護層としての効果が期待できず、逆に厚過ぎても却って樹脂層が脆くなる上に加工単価も増大するので、好ましくない。
【0052】
なお、上記実施形態では、第2塗膜層2は、第1塗膜層(ベース樹脂層)1の両端縁部の露出縁部1a、1aを除いた残部の全面に形成されているが(
図2〜4参照)、特にこのような構成に限定されるものではなく、例えば、
図5に示すように、第2塗膜層2が、第1塗膜層(ベース樹脂層)1における露出縁部1a、1aを除いた残部に部分的に形成された構成を採用することもできる。
【実施例】
【0053】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0054】
<実施例1>
JIS A3004−H18材からなる厚さ100μmの硬質アルミニウム箔3の一方の面に、延伸フィルム5として厚さ12μmのPETフィルムをポリエステル−ウレタン系接着剤6を介して貼り合わせると共に、該硬質アルミニウム箔3の他方の面に、無水マレイン酸変性ポリプロピレン40質量部をトルエン60質量部に溶解させてなる樹脂液をグラビアコート方式で塗布した後、200℃で20秒間乾燥させることによって、厚さ3μmの第1塗膜層1を形成せしめて、総厚さ120μmのラミネートフィルムを作製した。
【0055】
次に、酢酸ビニル含量40質量%でMIが15のEVA樹脂30質量部、ケン化度20%にした同EVA樹脂30質量部、軟化点90℃で平均分子量1500のテルペン樹脂10質量部、粒径2〜5μmで比重2.5〜2.7のSiO
2の10質量部、酸化チタン0.5質量部を混合した樹脂混合物に、イソプロピルアルコールと純水とを容量比1:1で混合した溶媒を加え、樹脂固形分が40質量%となる塗液を調整した。そして、この塗液を前記ラミネートフィルムの第1塗膜層1の上に乾燥後の厚みが3μmとなるように一定間隔で(
図6参照)塗布したのち、200℃で20秒間加熱乾燥して熱接着性樹脂の第2塗膜層2を形成し、次いで切断装置により切断線表示用塗膜部20の位置で切断することにより、電池用ラミネート外装材11を作製した。この電池用ラミネート外装材11では、第1塗膜層1の表面に、該第1塗膜層1の幅方向の両端縁部に第1塗膜層が露出した露出縁部1a、1aを残した態様で、第2塗膜層2が形成されている(
図3参照)。
【0056】
<実施例2>
第2塗膜層2の厚さを1μmに設定した以外は、実施例1と同様にして、
図3に示す電池用ラミネート外装材を作製した。
【0057】
<実施例3>
第1塗膜層1を形成するための樹脂液として、無水マレイン酸変性ポリプロピレン40質量部をトルエン60質量部に溶解させてなる樹脂液に代えて、無水マレイン酸変性ポリエチレン55質量部をトルエン45質量部に溶解させてなる樹脂液を用いた以外は、実施例1と同様にして、
図3に示す電池用ラミネート外装材を作製した。
【0058】
<実施例4>
延伸フィルムのPETフィルムに代えて、アルミニウム箔の前記一方の面に、エポキシ樹脂を塗布、加熱乾燥させることにより厚さ2μmの熱硬化樹脂層7を形成した以外は、実施例1と同様にして、
図4に示す電池用ラミネート外装材を作製した。
【0059】
<比較例1>
第1塗膜層1の上面の全面に厚さ3μmの第2塗膜層2を形成した(第1塗膜層において露出縁部を設けない構成とした)以外は、実施例1と同様にして、電池用ラミネート外装材を作製した。
【0060】
<比較例2>
第1塗膜層の形成に代えて、アルミニウム箔の他方の面に、ポリエステル−ウレタン系接着剤を介して厚さ40μmのCPPフィルム(キャスティングポリプロピレンフィルム)を貼り合わせた構成とし、該CPPフィルムの上に、該CPPフィルムの幅方向の両端縁部にCPPフィルムが露出した露出縁部を残した態様で、前記第2塗膜層2を形成せしめた以外は、実施例1と同様にして電池用ラミネート外装材を作製した。
【0061】
[性能評価試験1]
実施例1〜4及び比較例1、2の電池用ラミネート外装材を用い、既述の
図1(A)〜(C)で示す方法に準じ、表面がポリアミド(ON)フィルムからなるリチウムイオン電池の電池本体に対する熱接着を熱板によって160℃×0.2MPa×2秒の条件で行うと共に、ポリプロピレン製の端部補強用プラスチック部品に対する熱圧着を熱板によって160℃×0.4MPa×3秒の条件で行ってラミネート電池の外装を施した。そして、ラミネート外装材の電池本体及び端部補強用プラスチック部品に対する接着強度を測定した。但し、実施例3の評価では、端部補強用プラスチック部品として高密度ポリエチレン製の端部補強用プラスチック部品を用いた。これら評価結果を表1に示す。なお、端部補強用プラスチック部品は、表中では「プラ部品」と略記した。
【0062】
[性能評価試験2]
実施例1〜4及び比較例1、2の電池用ラミネート外装材を性能評価試験1と同様にして電池本体に巻き付けて外装を施し、粘着テープで接着して固定した後、粘着テープ面が上になるように縦500mm、横500mmのポリプロピレン製ケースに入れ、JIS Z0232に基づいた装置で振動範囲5〜100Hzの不規則振動を6時間与えた後、ラミネート外装材の外観と、端部補強用プラスチック部品の落下の有無を観察した。その結果を表1に示す。なお、ラミネート外装材の外観については、「◎」…外観変化なし、「○」…外面に僅かな傷が発生、「×」…傷が目立って発生、の3段階で評価した。
【0063】
【表1】
【0064】
表1の結果から明らかなように、本発明に係る電池用ラミネート外装材(実施例1〜4)は、電池本体の樹脂フィルム表面に対して容易に且つ確実に熱接着できる上、接着面積が小さいにも拘らず、端部補強用プラスチック部品に対しても強固に熱接着できる。更に、このラミネート外装材は、外装後のラミネート電池の振動試験でも傷を生じにくく、最終形態のラミネート電池としての外観を損ねたりする懸念がないし、この振動試験で端部補強用プラスチック部品が落下することがなく、ラミネート外装材と端部補強用プラスチック部品とが十分に強接着していること(即ち接着の耐久性に優れていること)を確認できた。
【0065】
これに対し、第1塗膜層の全面に第2塗膜層を形成した比較例1では、160℃×0.4MPa×3秒の熱圧着条件下において、第1塗膜層と端部補強用プラスチック部品との間に第2塗膜層が排除されることなく残存するから、ラミネート外装材の端部補強用プラスチック部品に対する接着強度は不十分であった。また、比較例2の外装材は、160℃×0.4MPa×3秒の熱圧着条件下において、CPPフィルム(厚さ40μm)による断熱の影響により、ラミネート外装材の端部補強用プラスチック部品に対する接着強度は不十分であった。