特許第6125375号(P6125375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6125375
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】スクリュー圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/04 20060101AFI20170424BHJP
   F04C 18/16 20060101ALI20170424BHJP
   F04C 29/02 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   F04C29/04 E
   F04C18/16 A
   F04C29/02 311B
   F04C29/04 C
   F04C29/02 331Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-174076(P2013-174076)
(22)【出願日】2013年8月26日
(65)【公開番号】特開2015-42847(P2015-42847A)
(43)【公開日】2015年3月5日
【審査請求日】2015年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】515294031
【氏名又は名称】ジョンソンコントロールズ ヒタチ エア コンディショニング テクノロジー(ホンコン)リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】米本 龍一郎
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 泰成
(72)【発明者】
【氏名】岩井 聡
【審査官】 加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−133334(JP,A)
【文献】 実開平02−144687(JP,U)
【文献】 特開2011−214432(JP,A)
【文献】 特開平03−124990(JP,A)
【文献】 実開昭54−129022(JP,U)
【文献】 実開平03−065869(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 29/02−29/04
F04C 18/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮するスクリューロータと、
前記スクリューロータを駆動するモータと、
前記スクリューロータを支持する軸受と、
前記スクリューロータ、前記モータ、及び、前記軸受を収納するケーシングと、
前記スクリューロータから吐出した冷媒を冷媒ガスと油に分離する油分離器と、
前記ケーシングに一体で形成された熱交換器と、を備え、
前記油分離器で分離された油は前記熱交換器内の油流路を経由して前記軸受に供給され
前記ケーシングにより前記モータが支持されるとともに、前記ケーシングと前記モータとの間に前記ケーシング内に吸入された冷媒を前記スクリューロータに導く冷媒流路が形成され、
前記ケーシングが前記モータを支持する位置の径方向外側に前記熱交換器が形成されるスクリュー圧縮機。
【請求項2】
冷媒を圧縮するスクリューロータと、
前記スクリューロータを駆動するモータと、
前記スクリューロータを支持する軸受と、
前記スクリューロータ、前記モータ、及び、前記軸受を収納するケーシングと、
前記スクリューロータから吐出した冷媒を冷媒ガスと油に分離する油分離器と、
前記ケーシングに一体で形成された熱交換器と、を備え、
前記油分離器で分離された油は前記熱交換器内の油流路を経由して前記軸受に供給され、
前記ケーシングにより前記モータが支持されるとともに、前記ケーシングと前記モータとの間に前記ケーシング内に吸入された冷媒を前記スクリューロータに導く冷媒流路が形成され、
前記冷媒流路の径方向外側に前記熱交換器が形成され、
前記冷媒流路と前記油流路との間に断熱材が配置されるスクリュー圧縮機。
【請求項3】
請求項1または2において、前記油流路を複数に分岐して形成したスクリュー圧縮機。
【請求項4】
請求項1乃至の何れか一項において、前記熱交換器の表面に一体で形成された放熱フィンを備えるスクリュー圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機や冷凍機などの冷凍装置に用いられるスクリュー圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスクリュー圧縮機として、空調機や冷凍機などの冷凍装置にスクリュー圧縮機を用いる場合に、冷凍サイクル内を循環する液冷媒をバイパスし、液冷媒と圧縮機内を循環する油とを熱交換し、油を冷却するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の冷凍装置は、スクリュー圧縮機、油分離器、凝縮器、減圧装置及び蒸発器が冷媒配管を介して接続された冷媒の循環サイクルと、油分離器から油冷却器を経て、圧縮機内の軸受部、スクリューロータに至る油供給流路と、減圧装置出口の冷媒配管から液冷媒を一部バイパスし、膨張弁、冷却菅を経てスクリューロータに至る冷媒の分岐流路を備える。油冷却器にて、油分離器からの高温の油と分岐流路からバイパスした冷たい冷媒とを熱交換させて高温の油を冷却し、冷却された油をスクリューロータと軸受部に導く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−79959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のスクリュー圧縮機では、油分離器からの高温の油と減圧装置出口の冷媒配管からバイパスした液冷媒とを別途設けた油冷却器に導き熱交換させる。しかしながら、高温の油を冷却するために液冷媒をバイパスするように構成すると、液冷媒を減圧する膨張弁、冷却管を収納する熱交換器が必要となりサイクルの構成が複雑になる。更に、低温となる冷媒と熱交換させるため、油の過冷却による性能低下の可能性もある。
【0006】
本発明は、簡易な構造で軸受や圧縮作動室に供給される油を冷却し、高効率、高信頼性のスクリュー圧縮機を提供すことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスクリュー圧縮機の特徴は、冷媒を圧縮するスクリューロータと、スクリューロータを駆動するモータと、スクリューロータを支持する軸受と、スクリューロータ、モータ、及び、軸受を収納するケーシングと、スクリューロータから吐出した冷媒を冷媒ガスと油に分離する油分離器と、ケーシングに一体で形成された熱交換器と、を備え、油分離器で分離された油は熱交換器内の油流路を経由して軸受に供給され、前記ケーシングにより前記モータが支持されるとともに、前記ケーシングと前記モータとの間に前記ケーシング内に吸入された冷媒を前記スクリューロータに導く冷媒流路が形成され、前記ケーシングが前記モータを支持する位置の径方向外側に前記熱交換器が形成されることにある。
本発明のスクリュー圧縮機の他の特徴は、冷媒を圧縮するスクリューロータと、スクリューロータを駆動するモータと、スクリューロータを支持する軸受と、スクリューロータ、モータ、及び、軸受を収納するケーシングと、スクリューロータから吐出した冷媒を冷媒ガスと油に分離する油分離器と、ケーシングに一体で形成された熱交換器と、を備え、油分離器で分離された油は熱交換器内の油流路を経由して軸受に供給され、前記ケーシングにより前記モータが支持されるとともに、前記ケーシングと前記モータとの間に前記ケーシング内に吸入された冷媒を前記スクリューロータに導く冷媒流路が形成され、前記冷媒流路の径方向外側に前記熱交換器が形成され、前記冷媒流路と前記油流路との間に断熱材が配置されることにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易な構造で軸受や圧縮作動室に供給される油を冷却し、高効率、高信頼性のスクリュー圧縮機を提供すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】スクリュー圧縮機の外観を表す図
図2図1中の縦断面図
図3図1中の横断面図
図4図3中のIII-III矢視断面図
図5】油の流れを表す油系統図
図6】変形例の図3に相当する図
図7図5中のIV-IV矢視断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施例のスクリュー圧縮機は、冷媒を圧縮するスクリューロータと、スクリューロータを駆動するモータと、スクリューロータを支持する軸受と、スクリューロータ、モータ、及び、軸受を収納するケーシングと、スクリューロータから吐出した冷媒を冷媒ガスと油に分離する油分離器と、ケーシングに一体で形成された熱交換器と、を備え、油分離器で分離された油は熱交換器内の油流路を経由して軸受に供給される。油分離器で分離された油はケーシングに形成された熱交換器内の油流路を経由して軸受に供給されるので、簡易な構造で軸受や圧縮作動室に供給される油を冷却でき、高効率、高信頼性のスクリュー圧縮機を提供すことができる。
【0011】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1はスクリュー圧縮機の外観を表す図である。図2図1中の縦断面図である。図3図1中の横断面図である。図4図3中のIII-III矢視断面図である。図5は油の流れを表す油系統図である。図6は本実施例の変形例であり、図3に相当する図である。図7図5中のIV-IV矢視断面図である。
【0012】
これら図1図5において、スクリュー圧縮機は、圧縮機本体70と、圧縮機本体70を駆動するモータ(電動機)7,8と、モータ7,8を収納するモータケーシング1とを備える。モータケーシング1は、モータ7,8の外側に冷媒流路11を形成しており、吸込口5からストレーナ30を経て吸込室(低圧室)10を介して冷媒流路11内にガスが流入する。
【0013】
圧縮機本体70で圧縮された冷媒ガスは、吐出ポート14を介して吐出ケーシング3に形成された吐出室(高圧室)13内に流出する。吐出室13は、圧縮機本体70に一体で形成された油分離器4に接続される。吐出室13から油分離機4に流入した冷媒ガスは、圧縮機本体70で圧縮された冷媒ガスと油とを分離する。分離されたガスは圧縮機本体70の吐出口6から外部(例えば冷凍サイクルを構成する凝縮器)へ供給される。一方、分離された油は、油分離器下部に設けられた油溜め10に溜められ、メインケーシング2に配設された軸受20、21及び吐出ケーシング3に配設された軸受22、23、24、25へ供給される。メインケーシング2に配設された軸受20、21へ供給された油は、軸受20、21を潤滑しメインケーシングに形成された吸込ポート12に排出される。吐出ケーシング3に配設された軸受22、23、24、25へ供給された油は、雄ロータ9A及び雌ロータ9Bで形成される圧縮作動室に排出される。
【0014】
モータ7、8は、雄ロータ9Aの吸込側軸部に取り付けられた回転子8と、回転子8の外周側に配設された固定子7と、これら回転子8及び固定子7を収納するモータケーシング1とを備える。
【0015】
圧縮機本体70は、回転軸が平行で互いに噛み合いながら回転する雄ロータ9A及び雌ロータ9Bと、これら雄ロータ9A及び雌ロータ9Bの歯部を収納するメインケーシング2と、メインケーシング2のロータ軸方向吐出側(図2中右側)に接続された吐出ケーシング3とを備える。
【0016】
メインケーシング2のロータ軸方向吸込側(図2中左側)にはモータケーシング1が接続されており、モータケーシング1の内部には、吸込室10からメインケーシング2への冷媒流路11が形成される。
【0017】
雄ロータ9Aの吸込側軸部はメインケーシング2に配設されたころ軸受20で支持され、吐出側軸部は吐出ケーシング3に配設されたころ軸受22及び玉軸受24で支持される。同様に、雌ロータ9Bの吸込側軸部はメインケーシング2に配設されたころ軸受21で支持され、吐出側軸部は吐出ケーシング3に配設されたころ軸受23及び玉軸受25で支持される。また、雄ロータ9Aの吸込側軸部はモータ7、8の回転軸と直結する。モータ7、8の駆動によって雄ロータ9Aが回転し、これに伴い、雌ロータ9Bが雄ロータ9Aと噛み合いながら回転する。
【0018】
メインケーシング2は、雄ロータ9A及び雌ロータ9Bの歯部を収納する円筒状のボア15、16を有する。雄ロータ9A及び雌ロータ9Bの歯溝には圧縮作動室が形成される。メインケーシング2には、モータケーシング1の内部と吸気行程の圧縮作動室とを連通する吸込ポート12が形成される。メインケーシング2には、吐気行程の圧縮作動室に対してロータ径方向外側(図2中上側)に位置する雄ロータ9A側の吐出ポート14及び雌ロータ9B側の吐出ポートが形成される。
【0019】
吐出ケーシング3は、メインケーシング2の端面に当接してボア15、16の開口を覆う吐出側端面と、吐出側端面に形成された雄ロータ9A側の吐出ポート及び雌ロータ9B側の吐出ポートと、圧縮作動室からの圧縮ガスが吐出ポート14を介して吐出される吐出室13とを有する。
【0020】
このようなスクリュー圧縮機においては、冷媒ガスが吸込口5から吸込室10に流入し、モータケーシング1の冷媒流路11を経由して(回転子8及び固定子7を冷却しつつ)メインケーシング2の吸込ポート12に流入する。雄ロータ9A及び雌ロータ9Bの回転に伴い、圧縮作動室がロータ軸方向に移動しつつ容積が縮小されて、冷媒ガスを圧縮する。圧縮機作動室で圧縮された冷媒ガスは、吐出ポート14、吐出室13を介して油分離機4に流入し、油分離機4で油と分離された後、吐出口6から外部へ供給される。
【0021】
ここで、本実施例のスクリュー圧縮機のモータケーシング1には熱交換器41が一体で形成される。熱交換器41は、モータケーシング1とモータステータ7との接触位置(モータケーシング1がモータステータ7を支持する位置)の径方向外側のモータケーシング1に配置される(つまり、モータケーシング1とモータステータ7との間には冷媒流路11が位置しない。)。また、熱交換器41の外面には、複数のフィン40が形成される。
【0022】
熱交換器41の内部には油の流路52が形成され、油流路52には油配管50、51が接続される。油配管50は、カバー31を介して油溜め10に接続されており、油溜め10から熱交換器41に油を供給する。油配管51は、メインケーシング2に形成された油流路70に接続されており、熱交換器41で冷却された油は、軸受21、20を潤滑後、吸入ポート12に排出される。また、油配管51は、吐出ケーシング3に形成された油流路71にも接続されており、軸受22、23、24、25を潤滑後、雄ロータ9A及び雌ロータ9Bの歯溝とボア15、16とで形成される圧縮作動室内に排出される。
【0023】
このように構成されたスクリュー圧縮機は、以下のように作用する。つまり、油溜め10内の高温の油は、モータケーシング1に一体で設けた熱交換器41に流入する。熱交換器41に流入した油は、熱交換器41内に油流路52内を流れる。この過程で、モータケーシング1内に形成された熱交換器41の油流路52と外部の空気とが熱交換する(つまり、モータケーシング1が油流路52内を流れる油と外部の空気との熱交換する熱交換器としても機能する。)。特に、本実施例においては、熱交換器41の外表面に複数の放熱フィンがモータケーシングと一体に形成されており、この放熱フィンを介して放熱が促進される。外気と接触する表面積を増すことができるから、油を効率的に冷やすことができる。このように、空気の温度に対して油温が高い場合には、熱交換により油温が低下して、冷却された油と冷媒ガスとが熱交換することにより吸入ガス温度が低下し、ガス密度が増えるため冷媒循環量が増加し性能向上する。
【0024】
更に、冷却された油を圧縮作動室に供給することで動力が軽減する。また、スクリューロータ9A、9Bの熱変形が軽減されることで、雄ロータ9Aと雌ロータ9Bの噛み合わせ部の隙間からの漏れが軽減する。かつ、油の粘度が増加するため圧縮作動室の隙間からの漏れを低減できる。これらの作用により、スクリュー圧縮機の性能が向上する。
【0025】
また、空気の温度に対して油温が低い場合には、空気との熱交換により油温が上昇するため、油の粘度が低減し、軸受内部の油の攪拌損失が低減するので、性能が向上する。
【0026】
ここで、熱交換器41の位置は、モータケーシング1とモータステータ7が接触する位置の径方向外側のモータケーシング1に形成されるので(モータケーシング1とモータステータ7との間には冷媒流路11が位置しないので)、熱交換器41内の油流路52と冷媒流路11との距離を離すことができる。従って、油流路52を流れる油の熱による冷媒流路11を流れる冷媒ガスの過熱を抑制することができる。
【0027】
ここで、熱交換器41内部に設けられた油流路52を複数に分岐する(多パスにする)ことで、熱交換器41内の流路52表面積を拡大でき、かつ、流路52内を流動する油が流路52表面に接触しやすくなるため、熱交換器41を小型化することができる。
【0028】
尚、本実施例においては、熱交換器41をモータケーシング1とモータステータ7との接触位置の径方向外側のモータケーシング1に配置したが、これに限られない。すなわち、例えば図6及び図7で示すように、モータケーシング1に設けた冷媒流路11とモータケーシング1内部の油流路52との間に断熱材60を配置してもよい。冷媒流路11とモータケーシング1内部の油流路52との間に断熱材60を配置することにより、油流路52の熱は、断熱材60に阻まれ、冷媒流路11を流れるガスに熱伝達し難くなる。
【符号の説明】
【0029】
1:モータケーシング
2:メインケーシング
3:吐出ケーシング
4:油分離器
5:吸入口
6:吐出口
31:カバー
40:フィン
41:熱交換器
50:油配管
51:油配管
70:圧縮機本体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7