特許第6125394号(P6125394)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6125394ガスタービンの防錆ユニット及びシール装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6125394
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】ガスタービンの防錆ユニット及びシール装置
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/055 20060101AFI20170424BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20170424BHJP
   F02C 7/28 20060101ALI20170424BHJP
   F02C 7/30 20060101ALI20170424BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   F02C7/055
   F02C7/00 A
   F02C7/00 B
   F02C7/28 Z
   F02C7/30
   F01D25/00 Q
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-205898(P2013-205898)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-68326(P2015-68326A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】朝來野 二郎
【審査官】 瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第2744382(US,A)
【文献】 米国特許第5114098(US,A)
【文献】 特開昭62−23539(JP,A)
【文献】 特開平10−115487(JP,A)
【文献】 特許第3184016(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/00
F02C 7/00
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、燃焼器と、タービンと、前記圧縮機の上流側に接続された吸気ケーシングと、前記タービンの下流側に接続された排気ダクトと、を有するガスタービンの防錆ユニットであって、
前記吸気ケーシングの径方向内側の壁面に着脱可能な状態で固定される第1取付け部と、前記第1取付け部に支持され、前記吸気ケーシングの径方向外側の壁面に当接する複数の第1シール板と、を備え、複数の前記第1シール板が周方向に接して配置され、前記圧縮機と前記吸気ケーシングとの間をシールする第1シール装置と、
前記タービンのテールコーンに着脱可能な状態で固定される第2取付け部と、前記第2取付け部に支持され、前記排気ダクトの径方向外側の壁面に当接する複数の第2シール板と、を備え、複数の前記第2シール板が周方向に接して配置され、前記タービンと前記排気ダクトとの間をシールする第2シール装置と、を有することを特徴とするガスタービンの防錆ユニット。
【請求項2】
前記第2取付け部は、前記テールコーンに形成されたねじ溝に螺合して固定されていることを特徴とする請求項1に記載のガスタービンの防錆ユニット。
【請求項3】
前記第2取付け部は、前記テールコーンに固定された内周部と、前記第2シール板を支持し、前記内周部に対して回転可能な外周部と、を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスタービンの防錆ユニット。
【請求項4】
前記第2取付け部は、前記第2シール板の径方向の位置を調整する径方向位置調整機構を有する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のガスタービンの防錆ユニット。
【請求項5】
前記第1取付け部は、前記第1シール板を案内する溝が形成された案内部材と、前記案内部材を前記吸気ケーシングの内周側の壁面に固定する固定部と、を有する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のガスタービンの防錆ユニット。
【請求項6】
前記ガスタービンの前記第1シール装置と前記第2シール装置とで囲われた空間に乾燥空気を供給する乾燥空気供給装置をさらに有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のガスタービンの防錆ユニット。
【請求項7】
圧縮機と、燃焼器と、タービンと、前記圧縮機の上流側に接続された吸気ケーシングと、タービンの下流側に接続された排気ダクトと、を有することを特徴とするガスタービンに設置されるシール装置であって、
前記吸気ケーシングの径方向内側の壁面に着脱可能な状態で固定される取付け部と、前記取付け部に支持され、前記吸気ケーシングの径方向外側の壁面に当接する複数のシール板と、を備え、複数の前記シール板が周方向に接して配置され、前記圧縮機と前記吸気ケーシングとの間をシールすることを特徴とするシール装置。
【請求項8】
圧縮機と、燃焼器と、タービンと、前記圧縮機の上流側に接続された吸気ケーシングと、タービンの下流側に接続された排気ダクトと、を有するガスタービンに設置されるシール装置であって、
前記タービンのテールコーンに着脱可能な状態で固定される取付け部と、前記取付け部に支持され、前記排気ダクトの径方向外側の壁面に当接する複数のシール板と、を備え、複数の前記シール板が周方向に接して配置され、前記タービンと前記排気ダクトとの間をシールすることを特徴とするシール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンに設置するガスタービンの防錆ユニット及びシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、圧縮機と燃焼器とタービンとを有する。ガスタービンは、吸気ケーシングから取り込まれた空気を圧縮機で圧縮することで高温・高圧の圧縮空気とし、燃焼器で、圧縮空気に対して燃料を供給して燃焼させ、高温・高圧の燃焼ガスを生成し、燃焼ガスによりタービンを駆動する。また、タービンを通過した排ガスは、排気ダクトから排出される。ガスタービンは、タービンに連結された発電機を駆動して発電を行う。
【0003】
ガスタービンは、例えば供給先の電力の使用事情により運転する必要がない場合、また、発電システムの組み換え等のため、一定期間運転を停止する場合がある。ガスタービンが、設置されている環境によっては、運転を停止している間に内部に錆が発生してしまう虞がある。
【0004】
特許文献1及び特許文献2には、蒸気タービンの保管方法として、蒸気が流れる経路において、タービンの上流と下流に乾燥空気を循環させる配管を配置し、運転停止時は、各経路に配置されている弁を切り換えて、タービンに乾燥空気を循環させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−115487号公報
【特許文献2】特許第3184016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2の方法を用いて、ガスタービンに乾燥空気や不活性ガスを供給することで、運転停止時に錆が生じることを抑制できる。しかしながら、乾燥空気を循環させる配管や、経路を切り替えるための弁等を設置するには多くの作業が必要となる。また、装置構成も大型化してしまう。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するものであり、簡単な作業で装着することができ、ガスタービンの内部の錆の発生を抑制できるガスタービンの防錆ユニット及びシール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明は、圧縮機と、燃焼器と、タービンと、前記圧縮機の上流側に接続された吸気ケーシングと、前記タービンの下流側に接続された排気ダクトと、を有するガスタービンの防錆ユニットであって、前記吸気ケーシングの径方向内側の壁面に着脱可能な状態で固定される第1取付け部と、前記第1取付け部に支持され、前記吸気ケーシングの径方向外側の壁面に当接する複数の第1シール板と、を備え、複数の前記第1シール板が周方向に接して配置され、前記圧縮機と前記吸気ケーシングとの間をシールする第1シール装置と、前記タービンのテールコーンに着脱可能な状態で固定される第2取付け部と、前記第2取付け部に支持され、前記排気ダクトの径方向外側の壁面に当接する複数の第2シール板と、を備え、複数の前記第2シール板が周方向に接して配置され、前記タービンと前記排気ダクトとの間をシールする第2シール装置と、を有することを特徴とする。
【0009】
防錆ユニットは、第1シール装置の複数の第1シール板でガスタービンの入口側を塞ぎ、第2シール装置の複数の第2シール板でガスタービンの出口側を塞ぐことで、簡単な作業でガスタービンの入口と出口を簡単に塞ぐことができる。これにより、簡単な作業で装着することができる。また、ガスタービンの内部への外気の侵入を抑制でき、ガスタービンの内部の錆の発生を抑制できる。また、防錆ユニットは、第1取付け部と第2取付け部をガスタービンに対して着脱可能とすることで、ガスタービンの運転に対して影響を与えず、必要な場合のみ設置することができる。
【0010】
また、防錆ユニットは、前記第2取付け部が、前記テールコーンに形成されたねじ溝に螺合して固定されていることを特徴とする。
【0011】
これにより、テールコーンに形成されている既存のねじ溝を利用して、第2シール装置をガスタービンに対して固定することができる。
【0012】
また、防錆ユニットは、前記第2取付け部は、前記テールコーンに固定された内周部と、前記第2シール板を支持し、前記内周部に対して回転可能な外周部と、を有することを特徴とする。
【0013】
外周部を内周部に対して回転させることができることで、作業者は、同じ位置で、外周部に対して第2シール板を装着することができる。これにより、簡単な作業で装着することができる。
【0014】
また、防錆ユニットは、前記第2取付け部が、前記第2シール板の径方向の位置を調整する径方向位置調整機構を有することを特徴とする。
【0015】
第2シール板の径方向位置を調整可能とすることで、第2シール板と排気ダクトの径方向外側の壁面とをより確実に接触させることができる。
【0016】
また、防錆ユニットは、前記第1取付け部が、前記第1シール板を案内する溝が形成された案内部材と、前記案内部材を前記吸気ケーシングの内周側の壁面に固定する固定部と、を有することを特徴とする。
【0017】
第1取付け部は、案内部材を固定部で固定する構造とすることで、着脱作業を簡単にすることができる。
【0018】
また、防錆ユニットは、前記ガスタービンの前記第1シール装置と前記第2シール装置とで囲われた空間に乾燥空気を供給する乾燥空気供給装置をさらに有することを特徴とする。
【0019】
乾燥空気供給装置で、前記第1シール装置と前記第2シール装置とで囲われた空間に乾燥空気を供給することで、錆の発生をより確実に抑制することができる。
【0020】
上記の目的を達成するための本発明は、圧縮機と、燃焼器と、タービンと、前記圧縮機の上流側に接続された吸気ケーシングと、タービンの下流側に接続された排気ダクトと、を有するガスタービンに設置されるシール装置であって、前記吸気ケーシングの径方向内側の壁面に着脱可能な状態で固定される取付け部と、前記取付け部に支持され、前記吸気ケーシングの径方向外側の壁面に当接する複数のシール板と、を備え、複数の前記シール板が周方向に接して配置され、前記圧縮機と前記吸気ケーシングとの間をシールすることを特徴とする。
【0021】
シール装置は、複数の第1シール板でガスタービンの入口側を塞ぐ構造とすることで、簡単な作業でガスタービンの入口を簡単に塞ぐことができる。これにより、簡単な作業で装着することができる。また、ガスタービンの入口から外気の進入を抑制できガスタービンの内部の錆の発生を抑制できる。また、シール装置は、取付け部をガスタービンに対して着脱可能とすることで、ガスタービンの運転に対して影響を与えず、必要な場合のみ設置することができる。
【0022】
上記の目的を達成するための本発明は、圧縮機と、燃焼器と、タービンと、前記圧縮機の上流側に接続された吸気ケーシングと、タービンの下流側に接続された排気ダクトと、を有するガスタービンに設置されるシール装置であって、前記タービンのテールコーンに着脱可能な状態で固定される取付け部と、前記取付け部に支持され、前記排気ダクトの径方向外側の壁面に当接する複数のシール板と、を備え、複数の前記シール板が周方向に接して配置され、前記タービンと前記排気ダクトとの間をシールすることを特徴とする。
【0023】
シール装置は、複数の第1シール板でガスタービンの入口側を塞ぐ構造とすることで、簡単な作業でガスタービンの出口を簡単に塞ぐことができる。これにより、簡単な作業で装着することができる。また、ガスタービンの出口から外気の進入を抑制でき、ガスタービンの内部の錆の発生を抑制できる。また、シール装置は、取付け部をガスタービンに対して着脱可能とすることで、ガスタービンの運転に対して影響を与えず、必要な場合のみ設置することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、複数の第1シール板を周方向に配置する第1シール装置でガスタービンの圧縮空気が流れる経路の入口を塞ぐことで、簡単な作業でガスタービンの入口を簡単に塞ぐことができる。また、本発明によれば、第2シール板を周方向に配置する第2シール装置でガスタービンの排ガスが流れる経路の出口を塞ぐことで、簡単な作業でガスタービンの出口を簡単に塞ぐことができる。これにより、シールする装置をガスタービンの圧縮空気の入口及び排ガスの出口に簡単な作業で装着することができ、ガスタービンの内部の錆の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本実施形態のガスタービンを表す概略構成図である。
図2図2は、本実施形態のガスタービンに防錆ユニットを設置した状態を示す概略構成図である。
図3図3は、第1シール装置の概略構成を示す断面図である。
図4図4は、第1シール装置の概略構成を示す正面図である。
図5A図5Aは、第1取付け部の案内部材の概略構成を示す展開図である。
図5B図5Bは、第1取付け部の案内部材の拡大斜視図である。
図6図6は、第1取付け部の案内部材に第1シール板を取り付ける作業を説明するための説明図である。
図7図7は、第2シール装置の概略構成を示す断面図である。
図8図8は、第2シール装置の概略構成を示す正面図である。
図9図9は、第2シール装置の概略構成を示す拡大断面図である。
図10図10は、第2シール装置の概略構成を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るガスタービン燃焼器の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0027】
図1は、本実施形態のガスタービンを表す概略構成図である。本実施形態のガスタービン10は、図1に示すように、圧縮機11と燃焼器12とタービン13と吸気ケーシング20と排気ダクト30により構成されている。このガスタービン10には、図示しない発電機が連結されており、発電可能となっている。まず、吸気ケーシング20は、空気が流れる通路であり、圧縮機11に空気を供給する。吸気ケーシング20は、圧縮機11の一部でもある。
【0028】
圧縮機11は、空気を取り込む吸気ケーシング20に接続されている。圧縮機11は、圧縮機車室21内に入口案内翼(IGV:Inlet Guide Vane)22が配設されると共に、複数の静翼23と動翼24が前後方向(後述するロータ32の軸方向)に交互に配設されてなり、その外側に抽気室25が設けられている。燃焼器12は、圧縮機11で圧縮された圧縮空気に対して燃料を供給し、点火することで燃焼可能となっている。タービン13は、タービン車室26内に複数の静翼27と動翼28が前後方向(後述するロータ32の軸方向)に交互に配設されている。このタービン車室26の下流側には、排気車室29を介して排気ダクト30が配設されており、排気ダクト30は、タービン13に連続する排気ディフューザ31を有している。排気ダクト30は、タービン13を通過した排ガス(燃焼ガス)が通過する通路である。排気ダクト30は、排ガス処理装置や熱交換器が配置された配管に接続されており、接続された配管に排ガスを供給する。排気ダクト30は、タービン13の一部でもある。排気ダクト30の内側にはテールコーン40が設けられている。テールコーン40は、中空の部材であり、内部に後述するロータ32が設けれ、外周面が排気ガスの流れる通路の径方向内側の壁面となる。
【0029】
また、ガスタービン10は、圧縮機11、燃焼器12、タービン13、排気ダクト30の中心部を貫通するようにロータ32が位置している。ロータ32は、圧縮機11側の端部が軸受部33により回転自在に支持される一方、排気ダクト30側の端部が軸受部34により回転自在に支持されている。つまり、軸受部34は、テールコーン40とロータ32との間に設けられている。そして、このロータ32は、圧縮機11にて、各動翼24が装着されたディスクが複数重ねられて固定され、タービン13にて、各動翼28が装着されたディスクが複数重ねられて固定されており、吸気ケーシング20側の端部32aに図示しない発電機の駆動軸が連結されている。
【0030】
ガスタービン10は、圧縮機11の圧縮機車室21が脚部35に支持され、タービン13のタービン車室26が脚部36により支持され、排気ダクト30が脚部37により支持されている。
【0031】
以上より、ガスタービン10では、圧縮機11の吸気ケーシング20から取り込まれた空気が、複数の静翼23と動翼24を通過して圧縮されることで高温・高圧の圧縮空気となる。燃焼器12にて、この圧縮空気に対して所定の燃料が供給され、燃焼する。そして、この燃焼器12で生成された作動流体である高温・高圧の燃焼ガスが、タービン13を構成する複数の静翼27と動翼28を通過することでロータ32を駆動回転し、このロータ32に連結された発電機を駆動する。一方、排気ガスのエネルギは、排気ダクト30の排気ディフューザ31により圧力に変換され減速されてから大気に放出される。
【0032】
次に、図2から図10を用いて、ガスタービン10に設置可能な防錆ユニットについて説明する。図2は、本実施形態のガスタービンに防錆ユニットを設置した状態を示す概略構成図である。本実施形態の防錆ユニットは、ガスタービン10に対して着脱可能なユニットであり、ガスタービン10の運転停止時に設置される。防錆ユニット50は、圧縮機11と吸気ケーシング20との間をシールする第1シール装置52と、タービン13と排気ダクト30との間をシールする第2シール装置54と、第1シール装置52と第2シール装置54とでシールされた空間に乾燥空気を供給する乾燥空気供給装置56と、を有する。以下、各部について説明する。
【0033】
図2から図6を用いて、第1シール装置52について説明する。図3は、第1シール装置の概略構成を示す断面図である。図4は、第1シール装置の概略構成を示す正面図である。図5Aは、第1取付け部の案内部材の概略構成を示す展開図である。図5Bは、第1取付け部の案内部材の拡大斜視図である。図6は、第1取付け部の案内部材に第1シール板を取り付ける作業を説明するための説明図である。
【0034】
第1シール装置52は、図3に示すように、第1取付け部60と複数枚の第1シール板62とを有し、圧縮機11と吸気ケーシング20との間をシールする。第1取付け部60は、吸気ケーシング20の内周側の壁面20aに設置されている案内部材63と、案内部材63を固定する固定部64と、を有する。吸気ケーシング20の内周側の壁面20aとは、吸気ケーシング20の空気が流れる通路を形成する壁面のうち、ロータ32を基準とした径方向において、径方向内側となる壁面である。
【0035】
複数の第1シール板62は、図4に示すように、ロータ32の周方向に隣接して複数配置されている。本実施形態の第1シール板62は、周方向に16枚配置されている。なお、第1シール板62の枚数は特に限定されない。第1シール板62は、周方向に隣接した第1シール板62と接している。
【0036】
第1シール板62は、図3に示すように、吸気ケーシング20の壁面20aに固定された第1取付け部60の案内部材63に支持される基部76と、一方の端部が基部76に固定された板部78と、を有する。基部76は、案内部材63に対して径方向に移動できず、周方向に移動できるように移動方向を規制する凹凸形状が径方向内側の端部に形成されている。板部78は、基部76から離れるに従って幅が大きくなり、径方向内側と外側の辺が円弧となる扇形状である。第1シール板62は、基部76が案内部材63に支持されており、板部78の径方向外側の端部が吸気ケーシング20の外周側の壁面20bに接している。吸気ケーシング20の外周側の壁面20bとは、吸気ケーシング20の空気が流れる通路を形成する壁面のうち、ロータ32を基準とした径方向において、径方向外側となる壁面である。第1シール板62は、径方向内側の端部が案内部材63に固定され、径方向外側の端部が壁面20bに接することで、吸気ケーシング20の壁面20aと壁面20bとの間の空間を塞ぐ。
【0037】
案内部材63は、上述したように、吸気ケーシング20の内周側の壁面20aに設置されている。図5Aに示すように、案内部材63は、壁面20aの外周に巻かれる細長い部材であり、一方の端部が端部63aとなり他方の端部が端部63bとなる。案内部材63は、延在方向に沿って、端部63aから端部63bまで繋がった案内溝70が形成されている。案内溝70は、端部63bにおける形状が、開口側(壁面20aに巻きつけたときに径方向外側となる端面側)の幅が、中心側(径方向外側の端面よりも径方向内側)の部分よりも狭くなっている。つまり、案内溝70は、開口側に、案内溝70の内側に突出した突起が両端から出ている形状となる。
【0038】
案内部材63は、壁面20aに装着したときに接する面の延在方向に直交する端部に張り出し部72が形成されている。張り出し部72は、案内溝70と平行に延びており、壁面20aに装着したときの周方向において、壁面20aの全周に配置される。
【0039】
案内部材63は、案内溝70の張り出し部72側の面の一部に開口74が形成されている。開口74は、案内溝70と繋がっている。開口74は、第1シール板62の基部76の案内溝70に挿入される凹凸形状の周方向の長さよりも長い。これにより、第1シール装置52は、第1シール板62を、開口74から案内溝70に挿入することができる。
【0040】
固定部64は、締結可能な紐であり、張り出し部72に巻きつけることができる。これにより、固定部64は、案内部材63を壁面20aに固定する。なお固定部64は、案内部材63を壁面20aに固定できればよく、固定方法は、これに限定されない。例えば、ねじ止めや、溶接で案内部材63の両端を固定して、案内部材63を壁面20aに固定する。
【0041】
第1シール装置52は、第1取付け部60を壁面20aに固定し、かつ、第1取付け部60に固定され壁面20bに接触する複数の第1シール板62を周方向の全周に配置することで、吸気ケーシング20と圧縮機11との間をシールすることができる。
【0042】
次に、第1シール装置52をガスタービン10に装着する方法について説明する。作業者は、案内部材63を壁面20aに巻き付けた後、張り出し部72に固定部64を巻きつけ、固定部64を締結しリング形状とする。これにより、図6に示すように、案内部材63の端部63aと端部63bとが接した状態で壁面20aに固定された状態となり、案内溝72が壁面20aの周方向に繋がった1本のリング形状となる。その後、作業者は、第1シール板62を矢印79a方向に移動させて、基部78の径方向内側の突起を開口74に挿入し、突起が案内溝70に挿入された状態とする。その後、作業者は、第1シール板62を矢印79bの方向に移動させ、第1シール板62を周方向に移動させる。作業者は、16枚の第1シール板62を第1取付け部60に取り付ける。このように取り付けられた第1シール装置52は、第1取付け部60と複数の第1シール板62とで吸気ケーシング20と圧縮機11との間をシールした状態となる。また、16枚目の第1シール板62は、開口74に固定できる構造とすること好ましい。これにより、開口74に挿入されたままの第1シール板62が第1取付け部60から外れることを防ぐことができる。
【0043】
図2及び図7から図10を用いて、第2シール装置54について説明する。図7は、第2シール装置の概略構成を示す断面図である。図8は、第2シール装置の概略構成を示す正面図である。図9は、第2シール装置の概略構成を示す拡大断面図である。図10は、第2シール装置の概略構成を示す拡大断面図である。
【0044】
第2シール装置54は、図7に示すように、第2取付け部80と、複数枚の第2シール板82と、を有し、タービン13と排気ダクト30との間をシールする。第2取付け部80は、テールコーン40に固定された内周部90と、複数の第2シール板82を支持する外周部92と、内周部90に対して外周部92を回転自在な状態で連結する軸受94と、内周部90に対する外周部92の回転を規制するストッパ96と、外周部92を回転させる操作を入力するハンドル98と、第2シール板82の外周部92に対する径方向位置を調整する径方向位置調整機構99と、を有する。
【0045】
先に第2シール板82について説明する。複数の第2シール板82は、図8に示すように、ロータ32の周方向に隣接して複数配置されている。本実施形態の第2シール板82は、周方向に16枚配置されている。なお、第2シール板82の枚数は特に限定されない。第2シール板82は、周方向に隣接した第2シール板82と接している。
【0046】
第2シール板82は、図7図9及び図10に示すように、外周部92に支持される基部102と、一方の端部が基部102に固定された板部104と、突出部106と、を有する。基部102は、外周部92に嵌めこまれる凹凸形状が径方向内側の端部に形成されている。板部104は、基部102から離れるに従って幅が大きくなり、径方向内側と外側の辺が円弧となる扇形状である。第2シール板82は、板部104が、基部102に支持されており板部104の径方向外側の端部が排気ダクト30の外周側の壁面30aに接している。排気ダクト30の外周側の壁面30aとは、排気ダクト30の空気が流れる通路を形成する壁面のうち、ロータ32を基準とした径方向において、径方向外側となる壁面である。第2シール板82は、径方向内側の端部が外周部92に固定され、径方向外側の端部が壁面30aに接することで、外周部92と排気ダクト30の壁面30aとの間の空間を塞ぐ。突出部106は、基部102に対して、少なくとも板部104の面に直交する方向に突出している。また、突出部106は、基部102よりも径方向内側に伸びている。
【0047】
次に、第2取付け部80の各部について説明する。内周部90は、位置によって径が変化する円柱状の部材であり、テールコーン40と接する部分にねじ溝90aが形成され、テールコーン40の内周部90に接する部分に形成されたねじ溝40aに螺合される。内周部90とテールコーン40と内周部90がボルト、テールコーン40がナットの関係となる。テールコーン40に形成されたねじ溝は、他の目的で形成されている既存のねじ溝である。内周部90は、テールコーン40に固定されることで、ロータ32と同心円上に配置される。
【0048】
外周部92は、円筒上の部材であり、軸受94を介して内周部90に支持されている。外周部92は、第2シール板82の径方向内側に形成された凹凸とかみ合う凹凸が形成されており、当該凹凸がかみ合わされることで、第2シール板82を支持する。軸受94は、内周部90に対して外周部92を回転自在な状態で連結する。軸受け94は、転がり玉軸受等、種々の軸受用いることができる。
【0049】
ストッパ96は、内周部90と外周部92との両方と連結することで、内周部90に対する外周部92の回転を規制する。ストッパ96は、内周部90及び外周部92の少なくとも一方に対して着脱可能であり、内周部90及び外周部92の少なくとも一方と連結していない場合、内周部90に対して外周部92が回転可能となる。ハンドル98は、外周部92に配置されている。作業者は、ハンドル98を回転させることで外周部92を回転させる。
【0050】
径方向位置調整機構99は、第2シール板82の外周部92に対する径方向位置を調整する。径方向位置調整機構99は、第2シール板82が設置されている位置に対応して周方向に複数配置されている。径方向位置調整機構99は、突起部120とボルト122とを有する。突起部120は、外周部92に固定され、外周部92の軸方向に向けて突出している。突起部120は、ボルト122が挿入されるねじ溝が形成されている。ねじ溝は、径方向が溝の中心軸の方向となる向きで形成されている。ボルト122は、突起部120に形成されたねじ溝に挿入されている。ボルト122は、外周部92に第2シール板82が設置されている場合、径方向外側の端部が第2シール板82の突出部106と接触可能な位置に配置されている。径方向位置調整機構99は、ボルト122を回転させ、突起部120と接触させ、さらにボルト122を回転させることで、突起部120を径方向外側に移動させることができる。突起部120が径方向外側に移動すると、第2シール板82も径方向外側に移動する。したがって、径方向位置調整機構99は、ボルト122の位置を調整することで、突出部106の径方向の位置を調整し、第2シール板82の径方向の位置を調整することができる。
【0051】
第2シール装置54は、第2取付け部80をテールコーン40に固定し、第2取付け部80に固定されつつ、壁面30aに接触する複数の第2シール板82を周方向の全周に配置することで、タービン13と排気ダクト30との間をシールすることができる。なお、第2シール装置54は、タービン13と排気ダクト30との間を密閉する必要はなく、隙間が空いていてもよい。
【0052】
次に、第2シール装置54をガスタービン10に装着する方法について説明する。作業者は、第2取付け部80の内周部90のねじ溝90aをテールコーン40のねじ溝40aに挿入し、第2取付け部80をテールコーン40に装着する。その後、作業者は、第2シール板82を外周部92に装着する。その後、ハンドル98で外周部92を一定角度回転させる。作業者は、16枚の第2シール板82を第2取付け部80に取り付ける。作業者は、第2シール板82を第2取付け部80に取り付けたら、第2シール板82ごとに、径方向位置調整機構99により外周部92に対する第2シール板82の位置を調整する。このように取り付けることで、第2シール装置54は、第2取付け部80と複数の第2シール板82とでタービン13と排気ダクト30との間をシールした状態となる。
【0053】
次に、乾燥空気供給装置56は、第2シール装置54のシール板の一部に挿入された配管と、乾燥空気を供給する供給源と、を有する。乾燥空気供給装置56は、配管を介して、第1シール装置52と第2シール装置54とで囲まれた領域、つまりガスタービン10の圧縮空気と排ガスが流れる通路に乾燥空気を供給する。乾燥空気としては、水分含有量の少ない空気を用いてもよいし、窒素等の不活性ガスを用いてもよい。また、乾燥空気供給装置56は、第1シール装置52と第2シール装置54とで囲まれた領域に乾燥空気を供給できればよく、供給する経路は、特に限定されない。乾燥空気供給装置56は、ガスタービン10に設けられている既存の配管を用いて、第1シール装置52と第2シール装置54とで囲まれた領域に乾燥空気を供給してもよい。
【0054】
防錆ユニット50は、以上のような構成であり、ガスタービン10の運転停止時に第1シール装置52をガスタービン10の入口(圧縮機11と吸気ケーシン20との間)に設置し、第2シール装置54をガスタービン10の出口(タービン13と排気ダクト30との間)に設置される。さらに、防錆ユニット50は、乾燥空気供給装置56により、第1シール装置52と第2シール装置54とで囲まれた領域に乾燥空気を供給する。
【0055】
このように、防錆ユニット50は、第1シール装置52と第2シール装置54とを設置することで、ガスタービン10の圧縮空気と排ガスが流れる空間を塞ぐことができ、当該領域への外気の進入を抑制することができる。
【0056】
また、防錆ユニット50は、第1シール装置52を吸気ケーシング20の壁面20aに固定することで、ロータ32をたわみ防止のためにターニングしていても設置できる。これにより、ガスタービン10の運転に与える影響を少なくすることができる。また、防錆ユニット50は、ロータ32がターニングしていても、第1シール装置52の第1シール板62が固定された状態を維持できる。これにより、圧縮機11と吸気ケーシン20との間のシールをより高い確率で維持することができる。同様に、防錆ユニット50は、ロータ32がターニングしていても、第2シール装置54の第2シール板82が固定された状態を維持できる。これにより、タービン13と排気ダクト30との間のシールをより高い確率で維持することができる。
【0057】
さらに、防錆ユニット50は、乾燥空気供給装置56によって乾燥空気を供給することで、外気の進入をより確実に抑制し、さらに、第1シール装置52と第2シール装置54とで囲まれた領域の水分を低減することができる。これにより、ガスタービンの内部を錆がより発生しにくい雰囲気にすることができる。
【0058】
ここで、防錆ユニット50は、乾燥空気供給装置56により乾燥空気を供給し、第1シール装置52と第2シール装置54とで囲まれた領域を周囲よりの高い圧力、例えば20mmHg程度高い圧力とすることで、第1シール装置52と第2シール装置54とで囲まれた領域から外に空気が流れる状態とし、第1シール装置52と第2シール装置54とで囲まれた領域に外部の空気が進入することを抑制できる。
【0059】
また、防錆ユニット50は、第1シール装置52と第2シール装置54とで囲まれた領域の圧力や湿度を計測し、計測結果に基づいて、乾燥空気供給装置56から供給する乾燥空気を調整することが好ましい。これにより、第1シール装置52と第2シール装置54とで囲まれた領域を一定範囲の雰囲気に維持することができ、錆の発生等をより確実に防止することができ、かつ、供給する乾燥空気の量の増加も抑制できる。
【0060】
また、防錆ユニット50は、第1シール板62、第2シール板82を複数の板に分割した構造とすることで、ガスタービン10の内部への搬入しやすくすることができる。例えば、ガスタービン10に形成されているマンホールから第1シール板62、第2シール板82を搬入することができる。これにより簡単な作業で第1シール装置52と第2シール装置54とを装着することができる。
【0061】
また、第1シール装置52は、案内溝に沿って第1シール板62を移動させる構造とすることで、同一位置で、第1シール板62を第1取り付け部60に取り付けることができる。また、第2シール装置54は、外周部92を回転可能な構造とすることで、同一位置で、第2シール板82を第2取り付け部80に取り付けることができる。
【0062】
なお、第1シール装置52と第2シール装置54は、第1取付け部60、第2取付け部80に対して第1シール板62、第2シール板82を固定する方法として、種々の方法を用いることができる。例えば第1シール装置52は、案内溝に開口を設け、開口から第1シール板を挿入したが、これに限定されない。案内溝に対して着脱可能な固定部材、例えば、ねじ止めで装着できる案内溝の壁面の一部を設け、一部が欠けた溝にシール板を挿入した後、案内溝の壁面の一部をねじで止めて、シール板を案内溝に対して固定してもよい。
【0063】
また、第2シール装置54は、径方向位置調整機構99を備えることで、第2シール板82の径方向の位置を調整することができる。これにより、第2シール板82と壁面30aとをより確実に接触させることができる。
【符号の説明】
【0064】
10 ガスタービン
11 圧縮機
12 燃焼器
13 タービン
20 吸気ケーシング
20a 壁面
20b 壁面
30 排気ダクト
30a 壁面
31 排気ディフューザ
32 ロータ
40 テールコーン
50 防錆ユニット
52 第1シール装置
54 第2シール装置
56 乾燥空気供給装置
60 第1取付け部
62 第1シール板
63 案内部材
64 固定部
70 案内溝
72 張り出し部
74 開口
80 第2取付け部
82 第2シール板
90 内周部
92 外周部
94 軸受
96 ストッパ
98 ハンドル
99 径方向位置調整機構
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10