(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
サーバ装置と、撮影計画又は治療計画に従って被検体の撮影又は治療を実行する複数の医用装置と、前記サーバ装置と前記医用装置とを接続する電気的通信回線とを具備する医用システムにおいて、
前記医用装置各々は、
前記撮影計画又は前記治療計画に基づいて前記撮影又は治療に要する電力量を計算する電力量計算部と、
他の複数の医用装置に関する電力情報を前記サーバ装置を介して受信する受信部と、
前記計算された電力量と前記受信された電力情報とから総電力量を計算する総電力量計算部と、
前記計算された総電力量を閾値に比較する比較部と、
前記比較部による比較結果を表示するディスプレイとを具備する医用システム。
前記医用装置各々は、前記総電力量が前記閾値を超過しているとき、前記撮影計画又は前記治療計画の修正案として、前記撮影又は前記治療のタイミングを変更し、又は前記電力量を低減する撮影計画修正支援部を更に備える請求項1記載の医用システム。
サーバ装置と、撮影計画又は治療計画に従って被検体の撮影又は治療を実行する複数の医用装置と、前記サーバ装置と前記医用装置とを接続する電気的通信回線とを具備する医用システムにおいて、
前記サーバ装置は、
前記複数の医用装置から前記撮影計画又は前記治療計画に応じた前記撮影又は治療に要する電力情報を受信する受信部と、
前記受信された電力情報から総電力量を計算する総電力量計算部と、
前記計算された総電力量を閾値に比較する比較部と、
前記比較部による比較結果を前記複数の医用装置に送信する送信部とを具備する医用システム。
前記送信部は、前記総電力量が前記閾値を超過していないとき前記撮影計画又は前記治療計画を許可する信号を前記医用装置の一に送信し、前記総電力量が前記閾値を超過しているとき前記撮影計画又は前記治療計画の修正を促す信号を前記医用装置の一に送信する請求項4記載の医用システム。
前記医用装置各々は、前記サーバ装置から前記撮影計画又は前記治療計画の修正を促す信号を受信したとき、前記撮影計画又は前記治療計画の修正案として、前記撮影又は前記治療のタイミングを変更し、又は前記電力情報を低減する撮影計画修正支援部を更に備える請求項4記載の医用システム。
サーバ装置と、撮影計画又は治療計画に従って被検体の撮影又は治療を実行する複数の医用装置と、前記サーバ装置と前記医用装置とを接続する電気的通信回線とを具備する医用システムの電力管理方法において、
前記サーバ装置において、
前記複数の医用装置から前記撮影計画又は前記治療計画に応じた前記撮影又は治療に要する電力情報を受信し、
前記受信された電力情報から総電力量を計算し、
前記計算された総電力量を閾値に比較し、
前記計算された総電力量と前記閾値との比較結果を前記複数の医用装置に送信する医用システムの電力管理方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1を参照して本実施形態に係る医用システムを説明する。医用システムは、サーバ装置7と、撮影計画又は治療計画に従って被検体の撮影又は治療を実行する複数の医用機器2−6と、サーバ装置7と医用装置2−6とを有線又は無線で接続する病院内LAN等の電気的通信回線1とを具備する。医用機器2−6としては、X線診断装置、X線CT装置、磁気共鳴診断装置、放射線治療装置、X線循環器撮影装置が例示される。中央病院等では、複数のX線診断装置、複数のX線CT装置が設置されていることが多い。
【0009】
X線診断装置2、X線CT装置3、磁気共鳴診断装置4、放射線治療装置5が同一の電源供給系統8から給電を受ける。同一の電源供給系統8から給電を受ける複数の医用装置2−5の群を「グループ」と称する。X線循環器撮影装置6は他の電源供給系統9から給電を受ける。電源供給系統8、9は、同一又は異なる使用電力上限(制限電力値)を設定されている。電源供給系統8は、X線診断装置2、X線CT装置3、磁気共鳴診断装置4及び放射線治療装置5の電力総和が制限電力値を超過するとき、給電動作を中断する。電源供給系統9も同様である。
【0010】
サーバ装置7は、制御部71、通信部72、送受信管理部74、記憶部75を備える。送受信管理部74は医用機器2−6との間での情報の送受信を管理する。典型的には、送受信管理部74は、医用機器2−6から撮影計画又は治療計画に応じた撮影又は治療に要する電力情報を受信し、医用機器2−6各々に対して他の医用機器2−6に関する電力情報を送信する。サーバ装置7の記憶部75は、医用機器2−6から受信した電力情報を記憶する。なお、同一の電源供給系統8内に設置されている医用機器2−5の中の例えば自装置2で予定されている電力情報を、以下「第2の電力情報」といい、医用機器2−5の中の例えば他の装置3で予定されている電力情報を、以下「第1の電力情報」という。
【0011】
図2には
図1のX線CT装置3の構成を示している。X線CT装置3は、被検体からデータを収集する装置本体としてのガントリ11を備える。ガントリ11は、回転自在に支持される回転リング12を有する。回転リング12には、X線管13とX線検出器14が搭載される。X線検出器14は、X線管13に対して回転リング12の回転中心軸を挟んで対向する。回転リング12はその中心に開口部を有する。開口部には寝台の天板15に載置された被検体Pが挿入される。
【0012】
X線管13から曝射されたX線は、被検体Pを透過し、減衰してX線検出器14によって検出される。検出されたX線は、電気信号に変換され、データ収集部16にて増幅され、デジタルデータに変換され、データ伝送部17を介して投影データとして前処理部21に送られる。前処理部21は信号強度の補正や信号欠落の補正等の処理を行う。画像再構成部22は、前処理を受けた投影データから断層画像データを再構成する。生成された断層画像はディスプレイ25に表示される。
【0013】
X線は、X線管13の陰極(フィラメント)から放出された熱電子が陰極・陽極間の電位差により加速・集束されて陽極(ターゲット)に衝突することにより発生する。陰極・陽極間の電位差を管電圧、陰極からの熱電子線を管電流と呼ぶ。また、X線の変換効率は非常に低く、99%以上の入力エネルギー(管電圧×管電流)は熱に変換される。そのため、動作中のX線管13は非常に高温になり、ファンや熱交換器で冷却する必要がある。このことから、X線CT装置3は、データ収集、特にX線曝射のために多大な電力を要する。X線診断装置2、放射線治療装置5も同様に多大な電力を要する。磁気共鳴映像装置4は、特に高磁場発生及びコイル冷却に同様に多大な電力を要する。
【0014】
スキャンプラン設定支援部27は、医師により指定された撮影目的及び撮影部位等に応じたスキャンプラン(撮影計画)を試案する。試案された撮影計画はそのまま又は医師により適宜修正されて最終的には医師により確定される。なお、確定前の撮影計画を撮影計画案といい、確定された撮影計画を単に撮影計画という。電力計算部29は、撮影計画案の管電流、管電圧、X線継続時間等に基づいて、撮影計画案における撮影期間中の時刻ごとの予定電力量を計算する。典型的には分単位で予定電力量が計算される。
【0015】
グループ内装置電力情報要求部28は、撮影計画確定前の段階で、通信部23を介して、撮影計画案における撮影期間中の同時刻に係るグループ内の他の医用装置2,4,5の電力情報(第1の電力情報)の提供をサーバ装置7に要求する。通信部23は、その要求に呼応したサーバ装置7から当該他の医用装置2,4,5の電力情報(第1の電力情報)を受信する。記憶部26は、主に、再構成された画像情報を記憶するとともに、当該他の医用装置2,4,5からサーバ装置7を介して受信された第1の電力情報を記憶する。なお、当該他の医用装置2,4,5の第1の電力情報で示されている電力は通常は確定されている。
【0016】
電力総和計算部30は、受信された当該他の医用装置2,4,5に関する第1の電力情報と、撮影計画段階にある自装置3の電力計算部29で計算した予定電力量(第2の電力情報)とから、撮影計画案における撮影期間中の時刻毎に電源供給系統8内の電力総和を計算する。上限閾値比較部31は、計算された電力総和を、電源供給系統8に対して規定されている上限電力量(制限電力値)を比較する。上限閾値比較部31は、電力総和が制限電力値を越えているとき、スキャンプラン設定支援部27に対して撮影計画の確定を禁止する。上限閾値比較部31は、電力総和が制限電力値以下であるとき、スキャンプラン設定支援部27に対して撮影計画の確定を許可する。
【0017】
スキャンプラン設定支援部27は、上限閾値比較部31により撮影計画の確定を禁止されたとき、撮影計画の修正案を作成する。例えばX線発生時刻をシフトし、又はX線強度を低下させて撮影時間幅を延長する。その修正案の詳細は以下に詳述する。
【0018】
確定された撮影計画に従って制御部24は、例えばプレップスキャンやメインスキャンを行うようにガントリ11の動作を制御する。ここでプレップスキャンとは、任意の場所に設定したROI(Region Of Interest)におけるCT値を測定するための低線量によるスキャンである。制御部24は、このプレップスキャンにより得られた画像に基づいて、血流の速さを判定する。制御部24はまた、判定した血流の速さに基づき、プレップスキャンを終了してからメインスキャンを開始するまでの待ち時間を決定する。
【0019】
即ち、被検体Pに投与した造影剤が関心スライスに流入するタイミングを計り、CT値が閾値を超えたときにメインスキャンに移る。そして、制御部24は、上記の待ち時間によって決まるメインスキャンの開始タイミングに同期して、メインスキャンに関するガイダンスを出力する。また、制御部24は、ここで判定した血流の速さに基づいてメインスキャンの際における回転軸に沿う方向の天板15の移動速度を決定する。一方のメインスキャンは、造影された被検体Pの断層画像を再構成するために必要なCT値を収集するためのスキャンである。ここで、天板15は、ガントリ11内部へ挿入するときに移動するのは勿論、ヘリカルスキャンを行う場合にも移動が必要となる。
【0020】
図3は、X線CT装置3の撮影計画案の電力情報を時系列に示している。なお、ここでは説明の便宜上、3台のX線CT装置3−1,3−2,3−3が同じ電源供給系統8に接続されている例を用いて説明する。撮影計画段階にある自装置が3−3と仮定する。
【0021】
例えば造影剤検査では、通常、メインスキャンのタイミング制御のためにメインスキャン前に予備スキャン(プレップスキャンともいう)が行われる。プレップスキャンは造影剤の流入具合を確認するためのものである。
図3の(Prep)そして(Main)とは、それぞれプレップスキャン及びメインスキャンを表している。プレップスキャンは最低限の線量にて行えばその役目を果たすため、メインスキャンと比較して線量が少ない。故にX線管13に印加する電力はメインスキャンのそれと比べて少なくてすみ、その結果
図3のように低電力による使用で事足りる。
【0022】
造影剤を被検体Pに注入するためのインジェクタは他のX線CT装置3−1,3−2にも接続されているが、ここではインジェクタに関する説明は省き、インジェクタによる造影剤の注入の制御に関しては
図5を用いて後述する。
【0023】
図3(a)は、第1〜第3のCT装置3−1,3−2,3−3の使用予定の電力情報の概略図であり、ここでは、
図3(b)に示すとおり第1、第2のCT装置3−1,3−2の使用だけで制限電力値に到達してしまう状況にある。
【0024】
ここで本実施形態の記載において、操作者がある装置を使用するにあたって、サーバ装置7に保存された、使用が予定されている別の装置3−1,3−2の電力情報を第1の電力情報と呼び、一方で操作者が使用しようとしている装置の電力情報3−3を第2の電力情報と呼ぶ。ここでは第1のCT装置3−1及び第2のCT装置3−2の使用電力に関する情報が第1の電力情報であり、第3のCT装置3−3の使用電力に関する情報が第2の電力情報である。なお、この後例えば第4のCT装置(図示なし)を使用する場合には、上記第2の電力情報はサーバ装置7に保存された時点で第1の電力情報となり、サーバ装置7へ通知するための第4のCT装置の使用電力に関する情報を第2の電力情報と呼ぶ。
【0025】
第1のCT装置3−1及び第2のCT装置3−2を同時に使用すると、
図3(b)のようにメインスキャンのときに第1のCT装置3−1及び第2のCT装置3−2の合計の使用電力値が制限電力値に達してしまう。もし第3のCT装置3−3を
図3(b)に示すタイミングで使用すると、制限電力値を超過してしまう。そこで、第3のCT装置3−3は、サーバ装置7から第1の電力情報を経て、制限電力値を超過しないように自動的にタイミングをずらして使用される。そのため、操作者は装置の使用予定が決まった段階で、予め各装置における使用予定の情報をサーバ装置7に通知するための操作を行う。これは情報入力手段(図示なし)などを操作者が操作することによって行う。そしてその情報に基づき、通信部23がサーバ装置7へと通知する。
【0026】
操作者が第3のCT装置3−3を使用するにあたり、通信部23はサーバ装置7と通信を行い、電源供給系統8内における別の装置(ここでは第1のCT装置3−1及び第2のCT装置3−2)の第1の電力情報を取得する。第1の電力情報が
図3(b)のように制限電力値ギリギリとなるときは、当初予定していたタイミングにて第3のCT装置3−3を使用するのではなく、第3のCT装置3−3の使用タイミングをシフトさせる。このとき、第3のCT装置3−3に備わる通信部23はサーバ装置7へ使用タイミングの情報を通知する。
【0027】
図4は、第1のCT装置3−1及び第2のCT装置3−2におけるプレップスキャンとメインスキャンを行う時刻のばらつきを想定した場合の、サーバ装置7に通知する第1の電力情報を示した概略図である。上述の通りプレップスキャンは造影剤注入後の造影効果をモニターするスキャン方法であるため、造影剤の到達タイミングによって撮影時間(電力使用時間)が異なる。
【0028】
そこで、被検体Pや、被検体Pの状態によって、例えばパターンA〜Dのような、スキャンを終了するタイミングに幅を持たせた電力情報が考えられる。
図4においては、造影剤の到達タイミングが最も早いタイミングAと、造影剤の到達タイミングが最も遅いパターンDとの到達タイミングの差A−Bをばらつきの幅として考慮している。この場合、如何なる場合が生じても制限電力値の超過が生じないように、
図4のように最悪パターンとしてパターンA〜Dのどの場合もその範囲内にカバーできるようにばらつきの幅を設定することが望ましい。通信部23は、第1の電力情報をサーバ装置7に通知する。なお、このような到達タイミングのばらつきの幅は、予め設定した値を用いても良いし、過去の測定結果に基づいて設定してもよい。
【0029】
なお、簡潔に説明を行うため、
図3、
図5、
図6、
図8、及び
図9において上記の最悪パターンを考慮した表示はされていないが、プレップスキャンを伴う使用のときは最悪パターンを考慮した第1の電力情報をサーバ装置7に通知することが望ましい。
【0030】
図5は、第1のCT装置3−1及び第2のCT装置3−2における第1の電力情報を時系列に示した概略図であり、各X線CT装置3には周辺機器としてインジェクタが接続されている。ここでは、造影剤注入のためのインジェクタ40を周辺機器として使用している例を示す。
【0031】
第3のCT装置3−3を使用するにあたり、スキャンを行う前に造影剤を注入する必要がある。造影剤の注入は開始のタイミングが来たら医者によって手動で行ってもよいし、予め注入の用意をしておいて、タイミング(A)が来たら自動的に注入されるようにしてもよい。また、造影剤注入後は一定の間隔を空けてスキャンする必要があるため、注入後に電力の状況に応じて大きく間を空けるか若しくは注入後直ちにスキャンすることは好適ではない。
【0032】
そこで、本実施形態では、第3のCT装置3−3は、第1のCT装置3−1及び第2のCT装置3−2の第1の電力情報をもとに、第3のCT装置3−3に接続されたインジェクタ40による造影剤注入のタイミングの制御も行う。具体的には、制限電力を超過しないようにヘリカルスキャンのタイミングが決まり、それに基づいて造影剤注入のタイミング(B)が決まる。
【0033】
また、
図5に示すように、プレップスキャンを行わずに造影剤注入後にヘリカルスキャンを実施する場合も同様に、ヘリカルスキャンのタイミングをずらすことのないよう、造影剤注入後は所定のタイミングでヘリカルスキャンを実施する。
【0034】
なお、先に述べた通り、プレップスキャンを行う第1のCT装置3−1及び第2のCT装置3−2の第1の電力情報は、プレップスキャンに要する時間のばらつきを考慮した情報である。故に第3のCT装置3−3がタイミング(B)以前にサーバから取得した第1の電力情報より早く第1のCT装置3−1又は第2のCT装置3−2の使用が終了するケースも大いに考えられる。これを見越し、第3のCT装置3−3を早く使用したい場合には、当初予定していたタイミングより前に造影剤の注入を行うことも想定し、使用の準備をしておくのが好ましい。そのため、第1のCT装置3−1及び第2のCT装置3−2はプレップスキャン終了のタイミングと同時にその旨をサーバ装置7へ通知し、サーバ装置7は情報が更新されたデータを第3のCT装置3−3へと通知するのが好適である。そして第3のCT装置3−3はサーバから通知されたデータをもとに当初の予定より早いタイミングで使用を開始してもよいし、当初の予定通りのタイミングで使用してもよい。もし早いタイミングで使用開始する場合は、以前にサーバ装置7へ通知した第2の電力情報とは異なるため、更新された情報を新たにサーバ装置7へ通知する必要がある。
【0035】
また、第3のCT装置3−3の、造影剤注入及び各スキャンのタイミングをずらすのではなく、スキャンを低電力にて実行して制限電力値を超過しないようにしてもよい。
【0036】
図6は、本実施形態における、装置を低電力(低線量)にて使用する場合の例を示した概略図である。
図6(a)は、
図3(a)と同様に、第1〜第3のCT装置3−1,3−2,3−3の使用予定の電力情報の概略図であり、それら電力値を合算すると
図6(b)のように制限電力値を超過してしまう。
【0037】
そこで、スキャンの開始タイミングをずらすのが好適ではあるが、場合によっては、
図6(c)に示すように低電力動作への変更を行ってもよい。
図3の場合と同様に、サーバ装置7から通知された第1の電力情報をもとに、第3のCT装置3−3は電力制限値を超過しない程度の電力でスキャンを行う。
【0038】
ここで、X線CT装置3の低電力使用に関して詳細を述べる。
【0039】
低電力での使用とは、即ちX線管13に印加する電力を低くして使用することを意味しており、その結果低線量での撮像となる。当初の予定と同様の画質の画像を得るためには、
図6(c)に示すように曝射時間(スキャン時間幅)を拡大する。更に、低線量化に伴いガントリ11内の回転リング12の回転速度並びに天板15の移動速度を低下する。その結果、
図6(d)のように制限電力値を超過することなく第3のCT装置3−3を使用することができる。
【0040】
図4での説明と同様に、第1の電力情報をもとに第3のCT装置3−3の使用タイミングを決めるが、ここでは、電力制限値を超えないように第3のCT装置3−3の使用電力を落として使用する。このとき、第3のCT装置3−3は自己の装置使用にかかる造影剤注入を行う前にサーバ装置7から第1の電力情報を取得しておき、制限電力値と第1のCT装置3−1及び第2のCT装置3−2の使用予定の電力との間にどの程度電力の余裕があるかを確認する。ここで、タイミングをずらさずに低電力による使用が可能であると判断した場合に、低電力での使用を行う旨をサーバ装置7へ通知する。低電力で使用するとその分曝射時間を長くする必要があり、すると被検体の息止めや体動に関する問題をより考えなくてはならない。ここでの判断は、操作者がその場で経験に基づいて行ってもよいし、予め、「低電力においても問題無く使用が可能な電力値」の情報を装置側に設定しておき、第1のCT装置3−1及び第2のCT装置3−2を使用するときの電力の合算値と制限電力値との差分の値から自動的に判断させてもよい。
【0041】
一方で上記の息止めや体動などの問題から、低電力においても問題無く使用が可能な電力値で装置を使用しても制限電力値を超えてしまうような場合には、上述のように使用タイミングを変更すればよい。
【0042】
次に、本実施形態に係るX線CT装置の動作を説明する。
【0043】
図7は、本実施形態に係るフローチャートを示す図である。なお下記において「当初のタイミング」とは、
図3(a)に示す第3のCT装置3−3の情報のように、まず操作者が情報入力手段を操作するなどによって使用の意志を示したタイミングである。
【0044】
ステップS1において、サーバ装置7と接続状態にあるX線CT装置3に備わる制御部24は、サーバ装置7に問い合わせて、電源供給系統8内にある別の装置の第1の電力情報を、通信部23を用いて取得する。ここで操作者が例えば画像ディスプレイ25に表示された別の装置の使用電力情報を確認し、コンソール内に備わる情報入力手段を用いて自己の装置を使用する情報を入力してもよい。上述の第1〜第3のCT装置3−3を用いた例では、ここでは操作者は第3のCT装置3−3の使用を検討する。
【0045】
上述の第1〜第3のCT装置3−1,3−2,3−3を用いた例では、ここで第3のCT装置3−3がサーバ装置7から第1のCT装置3−1及び第2のCT装置3−2の第1の電力情報を取得する。このとき、
図2のようにプレップスキャンを必要とする場合(即ち造影剤を用いた検査の場合)は、上述のとおり被検体Pや、被検体Pの状態によってプレップスキャンが終了するタイミングが異なる(即ち、メインスキャンの開始タイミングも異なる)。故に、サーバ装置7には
図4のようなプレップスキャン終了時期のばらつきを考慮した第1の電力情報が保存されている。
【0046】
サーバ装置7は第1のCT装置3−1及び第2のCT装置3−2からそれぞれ送信された第1の電力情報を保存し、第3のCT装置3−3から要求があったときに、保存された第1の電力情報を第3のCT装置3−3に対して通知する。
【0047】
ここで、第1のCT装置3−1及び第2のCT装置3−2は、ばらつきを考慮したタイミングよりも早くプレップスキャンが終了したときは、その旨をサーバ装置7に通知する。このときサーバ装置7は、更新された情報を保存するとともに第3のCT装置3−3にその旨を通知する。
【0048】
なおプレップスキャンとメインスキャンの間隔は一定とするのが好ましい。そのため、制御部24は、プレップスキャンとメインスキャンの間隔を一定に維持するように、プレップスキャンの終了時期の変化とともに、メインスキャンのタイミングも変化させるように制御する。
【0049】
ステップS2において、上限閾値比較部31は、ステップS1で取得した第1の電力情報に基づき、使用を予定しているタイミングにおいて電力総和が制限電力を超過しているか否かを判断する。このときプレップスキャンを要する装置の使用の場合は、最悪パターンを考慮した電力情報に基づいて判断する。制限電力の超過が無い場合はステップS4Aへ、超過する場合はステップS3へと進む。
【0050】
上述の第1〜第3のCT装置3−1.3−2,3−3を用いた例では、第3のCT装置3−3を当初のタイミングで使用すると超過してしまうため、ステップS3へと進む。
【0051】
ステップS3において、制御部24は、制限電力を超過しないような低電力での使用が可能か否かを判断する。低電力にて使用可能であればステップS4Bへ。不可能であればステップS4Cへと進む。
【0052】
上述の
図6を用いた例ではここでステップS4Bへ、そして
図3を用いた例においてはステップS4Cへと進む。
【0053】
ステップS4Aにおいて、制御部24は、当初のタイミングにて、通常の電力での使用を決定する。
【0054】
ステップS4Bにおいて、制御部24は、当初のタイミングにて制限電力値を超過しないような低電力での使用を決定する。
【0055】
ステップS4Cにおいて、制御部24は、他のタイミングにて通常の電力での使用を決定する。
【0056】
ここで、上記ステップS4A〜ステップS4Cにおいて制御部24は使用のタイミングを自動的に決定するが、最終的な決定は操作者が行ってもよい。
【0057】
ステップS5において、制御部24は、X線CT装置3−3の使用予定の電力情報をサーバ装置7へ通知する。上述の第1〜第3のCT装置3−1、3−2,3−3を用いた例では、第3のCT装置3−3は第2の電力情報をサーバ装置7へ通知する。そしてサーバ装置7は予め保存してある第1の電力情報を、この第2の電力情報を加味して更新する。
【0058】
ステップS6において、制御部24は、ステップS5においてサーバ装置7に通知した第2の電力情報に基づいたX線曝射等、X線CT装置3の動作を制御する。
【0059】
ここで上述のように、造影剤を用いた診断である第1のCT装置3−1及び第2のCT装置3−2は、プレップスキャンの終わるタイミングが不定である。そこでそのばらつきを想定した電力情報をサーバ装置7へ通知するが、プレップスキャンが長引く最悪のパターンを想定して設定しているため、通知しておいた情報より早く第1のCT装置3−1若しくは第2のCT装置3−2の使用が終了する場合がある。この場合、もし第3のCT装置3−3の使用に当たり造影剤の注入が不要ならば、ステップS3にて通知した第3のCT装置3−3の使用開始時期を早めて使用を開始してもよい。
【0060】
なお、第3のCT装置3−3の使用が造影剤を用いた診断であり、プレップスキャン開始後のメインスキャンの場合はこの限りでない。これは、プレップスキャンの後に例えば90secなどと一定の間隔を空けた後にメインスキャンを行うためである。電力的に使用可能となっても、この間隔を狭めてメインスキャンを早く行うことは好適ではない。第1のCT装置3−1や第2のCT装置3−2の使用後に第3のCT装置3−3の造影剤を注入する予定の場合は、第1のCT装置3−1又は第2のCT装置3−2のプレップスキャンが終わり、その情報がサーバ装置7から第3のCT装置3−3へと通知されたら当初より早いタイミングで第3のCT装置3−3における造影剤注入を始めてもよい。
【0061】
ここで、当初予定されサーバ装置7へ通知していた電力よりも、使用電力を下げて装置の使用を行うことは、電力的には可能である。故に、予定以下の電力使用の場合は、変更があったときにその都度サーバ装置7へ変更の旨を通知してもよいが、サーバ装置7へ通知せずに当初の予定のまま、電力を下げて使用してもよい。一方、使用タイミングを通知無しに変更することは好ましくない。
【0062】
図8(a)は、第1〜第3のCT装置3−3における使用予定の電力情報を示した概略図である。ここでの第3のCT装置3−3はプレップスキャンを行わず、メインスキャンを五回に分けて行っており、これは心電同期スキャンや呼吸同期スキャンなどの場合を示している。このように、プレップスキャンを要するスキャンシーケンスに限らず、X線CT装置3を使用するにあたって種々のスキャンシーケンスにおいて適用可能である。
【0063】
図8の場合では総電力使用量は電力制限値ギリギリに収まっており、第3のCT装置3−3も計画通り使用することができる。ここで
図8(b)のように、装置の運用を開始した後にサーバ装置7に通知した情報を更新せずに使用電力の削減を行うことも可能とする。一方で情報を更新せずに使用電力の増幅を行うと電力制限値を超過してしまうため、情報を更新せずに使用電力の増幅を行うことはできない(
図8(c))。
【0064】
以上、本実施形態においてX線CT装置3を例にとって説明したが、これに限らずX線CT装置とは異なるモダリティを利用し、他のモダリティの電力情報をサーバにて管理してもよい。
【0065】
例えばMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置がネットワーク上に接続されている例を考えてみると、MRI装置はX線CT装置と比べ撮像時間が長いため、その使用電力は別の装置の使用に大きく関わってくる。
【0066】
そこで、
図9のように、MRI装置の使用予定によって制限電力ギリギリとなることが判明している場合、撮像時間の短いCT装置や別の装置による電力の使用を優先し、当初予定していたMRI装置の利用を
図9(b)のようにタイミングAの位置にずらしてもよい。具体的には、第2のCT装置3−2又は第3のCT装置3−3が
図9(a)のタイミングで使用を予定しているときに、MRI装置の使用延期を依頼する。この依頼はサーバ経由で行ってもよいし、各装置間で直接行っても良い。MRI装置は依頼を受け、延期可能であればその旨をサーバ若しくは依頼のあった装置へと返す。
【0067】
ここで、本実施形態においてサーバ装置7はX線CT装置3外部に備わっている例を示したが、これに限らずX線CT装置3等の装置内部にサーバを有していてもよい。
【0068】
なお、第1〜第3のCT装置3−1,3−2,3−3以外にも電力を使用する装置は存在し、電力情報はもっと入り組んだ情報となりうる。本実施形態では三つの装置に限って説明を行ったが、使用する装置の数が増えても本実施形態は実施可能である。
【0069】
次に、本実施形態に係るX線CT装置の効果を説明する。
【0070】
本実施形態によると、サーバ装置7に接続された複数のX線CT装置3において、各装置の電力情報をサーバ装置7で管理することにより、電力制限値を超過することなくX線CT装置3等の医用機器を使用することができる。電力制限値を超過することがないため、所望の画質の診断画像を得ることが出来る。
【0071】
また、スキャン時期のタイミングを自動的に計るため、電力制限値を超えることがない上に、効率的な装置の使用を実現する。医用装置は、診断途中に装置の使用を停止することは診断の都合上不適であるため、その使用タイミングを自動的に制御可能な本実施形態は非常に有用となり、いかなる病院や診療所においても適用可能である。
【0072】
更に、上述の通り造影剤注入に伴うプレップスキャンの終了タイミングは不定であるため、本実施形態では初めは幅を持たせてプレップスキャンの終了タイミングを設定しておく。そしてその後プレップスキャンの終了と同時にその情報を更新することによって、各装置を無駄な遅滞無く効率よく使用することができる。
【0073】
更に本実施形態ではX線CT装置3に接続された周辺機器の使用タイミングも制御することによって、より操作者や患者にとって好都合な診断を行うことができる。具体的には、インジェクタを用いて造影剤を注入するタイミングがスキャンのタイミングから自動的に導かれるため、操作者は電力不足の心配をすることなく安心して造影剤の注入を行うことができ、更に好適なタイミングでスキャンが行える。
【0074】
仮に、造影剤を注入した後の好適なタイミングでスキャンを行うと制限電力を超過してしまうような事態になると、無理に低電力での使用を行うか若しくは電力に余裕ができるまで使用を待たなくてはならない。すると、低電力での使用では所望の画質が得られない問題、そして造影剤注入後の最適なスキャンタイミングを逃したことにより不適な画像となる問題が生じる。本実施形態によると上記問題を解決することができる。
【0075】
また
図6を用いて説明したとおり、状況に応じて低電力で装置を使用させることにより、希望するタイミングをずらすことなく装置を使用することができる。
図6においては第1のCT装置3−1及び第2のCT装置3−2の終了を待てばすぐ第3のCT装置3−3は使用できるが、別の装置も電力を使用しているため、第3のCT装置3−3を通常の電力で使用するためには数十分も待たなくてはならないケースも起こる。その様なケースにおいては、例えば救急患者等に対して緊急に第3のCT装置3−3を使用する必要がある場合など、低電力にて一刻も早く使用しなくてはならない。故に、電源供給系統8内にある複数の装置の電力の使用を管理し、それに基づき低電力での使用が可能なタイミングを計ることができる本実施形態は非常に有用である。
【0076】
また、MRI装置等の他のモダリティを利用している場合にも、サーバ装置7にてその電力情報を管理することにより、効率良く各装置を使用することができる。予め優先度等を設けておけば、例えばMRI装置の使用が予定されている場合に、優先度の高いCT装置等を割り込ませて使用させることにより、効率的な装置の使用を行うことができる。撮像後にデータを画像化するにあたって、MRI画像とCT画像を合成させる処理を行う場合には、その合成処理のタイミングを計ることもできる。
【0077】
また上述の説明では、電力総和計算処理、閾値比較処理、撮影計画の確定の禁止/許可の処理は、各医用装置で実行するものとして説明したが、
図10に示すように、サーバ装置7で実行するようにしてもよい。サーバ装置7の制御部71は、通信部72を介して、LAN1で接続されている全ての医用装置2−6に対して電力情報の送信を要求する。医用装置2−6から送信された電力情報は記憶部73に記憶される。
【0078】
サーバ装置7は例えば撮影計画段階にある医用装置3からその確定の許可をリクエストされたとき、サーバ装置7の電力総和計算部75は、医用装置3と同じ電源供給系統8内にある他の医用装置2,4,5の電力情報と、当該医用装置3からの電力情報とから、医用装置3の撮影計画案における撮影期間中の時刻毎に電源供給系統8内の電力総和を計算する。閾値比較部76は、計算された電力総和を、電源供給系統8に対して規定されている上限電力量(制限電力値)を比較する。プラン許可処理部77は、電力総和が制限電力値を越えているとき、当該医用装置3に対して撮影計画の確定を禁止するための制御信号を通信部72を介して送信する。当該医用装置3のスキャンプラン設定支援部27は、撮影計画の確定を許可するための制御信号を受信したとき、ディスプレイ25に表示した撮影計画用画面の確定ボタンをアクティブにする。当該医用装置3のスキャンプラン設定支援部27は、撮影計画の確定を禁止するための制御信号を受信したとき、ディスプレイ25に表示した撮影計画用画面の確定ボタンを非アクティブに維持する。医用装置3は撮影計画の修正をするごとにその確定の許可をサーバ装置7に対してリクエストする。撮影計画の修正及び確定許可のリクエストは、サーバ装置7から撮影計画の確定を許可するための制御信号を受信するまで繰り返される。
【0079】
また上述では、撮影計画の修正案の作成は医用装置側で行うと説明したが、サーバ装置7で撮影計画の修正案を作成するようにしても良い。この場合、撮影計画の確定を禁止するための制御信号とともに、撮影計画の修正案を医用装置に送信する。
【0080】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。