特許第6125436号(P6125436)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6125436
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】凍結乾燥製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/00 20060101AFI20170424BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20170424BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20170424BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20170424BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20170424BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20170424BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   A61K37/02ZNA
   A61K39/395 D
   A61K39/395 N
   A61K47/10
   A61K47/26
   A61K47/04
   A61K9/08
   A61K9/19
【請求項の数】21
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2013-553559(P2013-553559)
(86)(22)【出願日】2012年2月9日
(65)【公表番号】特表2014-506578(P2014-506578A)
(43)【公表日】2014年3月17日
(86)【国際出願番号】US2012024452
(87)【国際公開番号】WO2012109429
(87)【国際公開日】20120816
【審査請求日】2015年1月26日
(31)【優先権主張番号】61/440,918
(32)【優先日】2011年2月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591002957
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】GlaxoSmithKline LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100137497
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 未知子
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス、クランツ
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ、リネラ
【審査官】 平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−520577(JP,A)
【文献】 特表2002−503704(JP,A)
【文献】 特表2009−514900(JP,A)
【文献】 European Journal of Pharmaceutical Sciences,2002,Vol.15,No.2,p.115-133
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/48
A61K 38/00−38/58
A61K 39/00−39/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチド組成物の製造方法であって、ポリペプチドと揮発性添加剤とを混合して液体混合物を形成し、前記液体混合物を凍結乾燥して凍結乾燥ポリペプチド組成物を得ることを含んでなり、前記液体混合物が約0.25体積%〜約5体積%の揮発性添加剤を含んでなりかつ該揮発性添加剤がt−ブタノールである、方法。
【請求項2】
前記ポリペプチドが抗原結合性ポリペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、ヒト血清アルブミンのN末端に遺伝子操作により融合された少なくとも2つのGLP−1ポリペプチドを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記抗原結合性ポリペプチドが、可溶性受容体、抗体、抗体断片、免疫グロブリン単一可変領域、Fab、F(ab’)、Fv、ジスルフィド連結Fv、scFv、閉構造多特異的抗体、ジスルフィド連結scFv、および二重特異性抗体からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
液体ポリペプチド組成物の製造方法であって、請求項1に記載の方法によって製造された凍結乾燥ポリペプチドを得、該凍結乾燥ポリペプチドを、十分な量の薬学的に許容可能な分散剤で再構成して液体ポリペプチド組成物を得ることを含んでなる、方法。
【請求項6】
前記ポリペプチドが抗原結合性ポリペプチドである、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリペプチドがヒト血清アルブミンのN末端に遺伝子操作により融合された少なくとも2つのGLP−1ポリペプチドを含んでなる、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記抗原結合性ポリペプチドが、可溶性受容体、抗体、抗体断片、免疫グロブリン単一可変領域、Fab、F(ab’)、Fv、ジスルフィド連結Fv、scFv、閉構造多特異的抗体、ジスルフィド連結scFv、および二重特異性抗体からなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項9】
凍結乾燥ポリペプチド組成物の再構成時間を減少させる方法であって、
a)前記ポリペプチドを含んでなる液体混合物を凍結乾燥し、ここで、前記液体混合物は約0.25体積%〜約5体積%の揮発性添加剤を含んでなりかつ該揮発性添加剤はt−ブタノールであり、かつ、
b)前記凍結乾燥ポリペプチドを、前記凍結乾燥ポリペプチド組成物に対し十分な量の薬学的に許容可能な分散剤で再構成して液体ポリペプチド組成物を得ることを含んでなり、 ここで、揮発性添加剤の存在下で凍結乾燥されたポリペプチドを再構成させる時間が、揮発性添加剤の非存在下で凍結乾燥された同一のポリペプチドを再構成させる時間より短い、方法。
【請求項10】
前記ポリペプチドが抗原結合性ポリペプチドである、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリペプチドがヒト血清アルブミンのN末端に遺伝子操作により融合された少なくとも2つのGLP−1ポリペプチドを含んでなる、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記抗原結合性ポリペプチドが、可溶性受容体、抗体、抗体断片、免疫グロブリン単一可変領域、Fab、F(ab’)、Fv、ジスルフィド連結Fv、scFv、閉構造多特異的抗体、ジスルフィド連結scFv、および二重特異性抗体からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
治療用ポリペプチド、緩衝液、界面活性剤、少なくとも1つの賦形剤、および少なくとも1つの揮発性添加剤を含んでなり、前記揮発性添加剤がt−ブタノールでありかつ該t−ブタノールが約0.25体積%〜約5体積%で存在する、組成物。
【請求項14】
前記治療用ポリペプチドがGLP−1またはその断片および/もしくは変異体を含んでなる、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記治療用ポリペプチドが、ヒト血清アルブミンのN末端に遺伝子操作により融合された少なくとも2つのGLP−1(7−36(A8G))ポリペプチドを含んでなる、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記治療用ポリペプチドが配列番号1を含んでなる、請求項1315のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記緩衝液がリン酸ナトリウムである、13または16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記界面活性剤がポリソルベート−80である、請求項1317のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記少なくとも1つの賦形剤が、トレハロース、マルトース、スクロース、マンノース、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、グリセロールおよびデキストロースから選択される、請求項1318のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記賦形剤がトレハロースおよびマンニトールを含んでなる、請求項1319のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
配列番号1を含んでなるポリペプチド、リン酸ナトリウム、トレハロース、マンニトール、ポリソルベート−80およびt−ブタノールを含んでなり、該t−ブタノールが約0.25体積%〜約5体積%で存在する、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結乾燥させた生体分子の再構成時間を減少させるのに有用な製剤、および使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
凍結乾燥は、溶液から溶媒を除去して、安定で、高温で液体よりも貯蔵が容易な固体または粉末を形成する方法である。凍結乾燥は、フリーズドライとしても知られており、凍結と、それに続く昇華を含む。得られた凍結乾燥物質は、冷蔵無しで貯蔵することができ、その物質の貯蔵および輸送のコストならびにその製品が必要とする貯蔵スペースを減少させる。また、産物の重量も減少させることができ、それも同様に輸送コストおよび関連コストを減少させる。凍結乾燥は、種々の生体分子の貯蔵期間を延長させるため、それらを保存および貯蔵するのに特に有用である。
【0003】
生体分子は、化学基の数、および天然の折り畳み構造維持への安定性の依存のために、製剤として安定化させるのが小分子よりも困難である。この理由から、多くの市販の生体分子が凍結乾燥される。一般に、凍結乾燥は、(i)水の除去(大部分の生物学的な化学分解は加水分解性であるため)、および(ii)系の全体的な移動性の低減(側鎖および分子の動態的変動は、化学的および物理的な分解事象が起こることを必要とするため)によって、安定性を向上させる。
【0004】
凍結乾燥生体分子は、しばしば、それらが凍結乾燥され貯蔵されたまさにその容器内で、使用の前に再構成される。再構成時間が短いことは、医師および患者の両者にとって好ましいことである。凍結乾燥生体分子の再構成時間が長過ぎると、調製時間の増加を招き、それにより、多くの患者に同じに(at the same)投与することが困難になる。さらに、多くの生体分子は、患者自身によって投与されるように設計されている。より短時間の再構成時間は、患者が投与前に生体分子を完全に再構成させることを確実にし、それによって、安全性および効能が向上する。
【0005】
再構成時間を減少させるための以前の試みでは、再構成緩衝液の製剤に主に焦点が置かれていた。対照的に本発明は、生体分子の凍結乾燥に使用される緩衝液の製剤に、揮発性添加剤を添加することを対象にしている。このように、凍結乾燥生体分子の再構成時間を減少させる方法および組成物が必要とされる。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ポリペプチドを揮発性添加剤と混合して液体混合物を形成し、その液体混合物を凍結乾燥させて凍結乾燥ポリペプチド組成物を得ることを含んでなる、ポリペプチド組成物の製造方法に関する。
【0007】
本発明は、凍結乾燥ポリペプチド組成物の再構成時間を減少させる方法も対象としており、該方法は、a)該ポリペプチドを含んでなる液体混合物を凍結乾燥させ、該液体混合物は揮発性添加剤を含んでなり、b)該凍結乾燥ポリペプチド組成物に対し十分な量の薬学的に許容可能な分散剤で該凍結乾燥ポリペプチドを再構成させて、液体ポリペプチド組成物を得ることを含んでなり、ここで、揮発性添加剤の存在下で凍結乾燥されたポリペプチドを再構成させる時間は、揮発性添加剤の非存在下で凍結乾燥させた同一のポリペプチドを再構成させる時間よりも短い。
【0008】
本発明は、本発明の方法によって製造された凍結乾燥ポリペプチドを得て、十分な量の薬学的に許容可能な分散剤で凍結乾燥ポリペプチドを再構成して液体ポリペプチド組成物を得ることを含んでなる、液体ポリペプチド組成物の製造方法も対象とする。
【0009】
本発明は、ポリペプチドの凍結乾燥に適切な製剤も対象とする。
【0010】
本発明は、本発明の方法によって製造された乾燥ポリペプチド組成物も対象とする。
【0011】
本発明は、本発明の方法によって製造された液体ポリペプチド組成物も対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】振盪法(shaking method)を用いた凍結乾燥再構成時間のプロット。
図2】静置法(undisturbed method)を用いた凍結乾燥再構成時間のプロット。
図3】試料番号に応じた凍結乾燥再構成時間のプロット。 (A)試料番号に応じた、全試験に渡っての平均の再構成時間(recon time)を要約している箱ひげ図。ゼロに最も近い箱の境界は25パーセンタイルを示し、箱内の線は中央値を示し、ゼロから最も遠い箱の境界は75パーセンタイルを示す。箱の上方および下方のひげ(エラーバー)は、90パーセンタイルおよび10パーセンタイルを示す。10パーセンタイルの上方または90パーセンタイルの下方の外れ値(outlier)はシンボルとしてプロットされる。 (B)試料番号に応じてプロットされた、全ての凍結乾燥再構成時間。
図4】分析法および再構成法によって分類された、試料番号に応じた凍結乾燥再構成時間のプロット。
図5】アルビグルチド(albiglutide)のアミノ酸配列(配列番号1)。
図6】2%tBuOHの添加有りまたは添加無しのいずれかで凍結乾燥された、試料の再構成エンドポイントを比較する棒グラフ。試料の種類に応じて、棒は全試験に渡っての平均を表し、ひげ(whisker)は全試験に渡っての1つの標準偏差を表す。
図7】2%tBuOHの添加有りまたは添加無しのいずれかで凍結乾燥された、試料の再構成エンドポイントを比較する棒グラフ。試料の種類に応じて、棒は全試験に渡っての平均を表し、ひげ(whisker)は全試験に渡っての1つの標準偏差を表す。
図8】抗NOGOmAbの重鎖アミノ酸配列(配列番号3)および軽鎖アミノ酸配列(配列番号4)。
図9】抗TNFR1dAbのアミノ酸配列(配列番号5)。
図10】IL18のアミノ酸配列(配列番号6)。
図11】抗IL5の重鎖アミノ酸配列(配列番号7)および軽鎖アミノ酸配列(配列番号8)。
図12】抗CD20VHのアミノ酸配列(配列番号9)およびVLドメインのアミノ酸配列(配列番号10)。
【発明の具体的な説明】
【0013】
本発明は、特に、凍結乾燥製剤を提供する。本発明は、特に、凍結乾燥製剤の製造方法および使用方法も提供する。揮発性添加剤をポリペプチド凍結乾燥製剤に加えると、凍結乾燥ポリペプチドの再構成時間が減少することが、発明者により発見されている。本発明は、本発明の方法により製造される乾燥ポリペプチド組成物にも関する。
【0014】
本発明は、ポリペプチドを揮発性添加剤と混合して液体混合物を形成し、その液体混合物を凍結乾燥して凍結乾燥ポリペプチド組成物を得ることを含んでなる、ポリペプチド組成物を製造するために使用され得るいくつかの方法、試薬、および化合物を提供する。
【0015】
溶液からポリペプチドを凍結乾燥する方法、およびそのような凍結乾燥溶液から得られた凍結乾燥ポリペプチドを含んでなる製造物が、本明細書で提供される。ある実施態様によれば、揮発性添加剤は、ポリペプチドを含有する水溶液に溶解され、凍結乾燥されて、凍結乾燥ポリペプチドを含有する固体組成物を提供する。ある実施態様によれば、凍結乾燥ポリペプチドを含有するこれらの固体組成物は、安定であり、貯蔵に適しており、例えば、長期間の貯蔵に適している。そのような貯蔵は、周囲条件下であってもよく、制御温度下であってもよく、制御湿度下、または他の条件もしくは一連の条件下であってもよく;シール容器(例えば、取り外し可能な蓋を備えたビンもしくはジャー、管、カプセル、カプレット、バイアル、注射器、二連カートリッジ注射器、または他の容器)の中に貯蔵されてもよく、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、または他の不活性ガス)下のシール容器の中、または容器中に他の要素もしくは化合物を含むもしくは含まない他の容器の中に貯蔵されてもよい。
【0016】
本発明は特定の方法、試薬、化合物、組成物、または生物系に限定されず、当然ながら、変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される専門用語は、特定の態様の記述のみを目的としており、限定を意図するものではないことも理解されたい。本明細書および添付の特許請求の範囲の中で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈による明らかな指示がない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「ポリペプチド(a polypeptide)」への言及は、2つ以上のポリペプチドの組み合わせ等も含む。
【0017】
量、持続時間(temporal duration)等の測定可能な値を言及するときに本明細書で使用される「約」とは、特定の値からの、±5%、±1%、および±0.1%を包含する、±20%または±10%の変動を意味し、同様に、そのような変動は、開示された方法を実行するのに適切である。
【0018】
他に定義がなされていない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様のまたは等価のいかなる方法および材料も、本発明の試験実施に使用することができるが、好ましい材料および方法は、本明細書に記載のものである。本発明の記述および請求の際に、以下の専門用語が使用される。
【0019】
本発明で特定された全ての「アミノ酸」残基は、天然のL型である。標準的なポリペプチド命名法に従い、アミノ酸残基に対する略語は、次の表に示される通りである。
【0020】
【表1】
【0021】
本明細書では、全てのアミノ酸残基配列が、左から右の方向が従来のアミノ末端からカルボキシ末端の方向である式によって表されることに留意する必要がある。
【0022】
ある実施態様によれば、揮発性添加剤は有機溶剤である。一つの実施態様によれば、有機溶剤は、低級オキシ炭化水素、低級ハロ炭化水素、低級ハロキシ炭化水素、低級スルホキシ炭化水素、低級シクロ炭化水素またはそれらの組み合わせを含んでなる。一実施態様によれば、低級オキシ炭化水素は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、イソ−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、イソ−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、t−ペンタノール、メチルエチルケトン、ベンジルアルコール、酢酸、メチルエチルケトン、またはそれらの組み合わせである。
【0023】
ある実施態様によれば、揮発性添加剤は、アセトニトリル、酢酸アンモニウム、または炭酸アンモニウムである。一つの実施態様によれば、酢酸アンモニウムまたは炭酸アンモニウムの量は、約50mM〜約300mMである。一つの実施態様によれば、酢酸アンモニウムまたは炭酸アンモニウムの量は、約100mMまたは約250mMである。
【0024】
「低級オキシ炭化水素」とは、本明細書で言及される場合、1〜8個の炭素原子および1〜4個の酸素原子を有する、ヒドロカルビルラジカルおよび酸素原子を有する化合物を意味する。低級オキシ炭化水素の例としては、限定はされないが、低級アルカノール、低級ケトン、低級カルボン酸、低級カルボン酸エステル、低級炭酸塩等が挙げられる。
【0025】
「低級」とは、それが本明細書に記載の化学物質を言及している場合、1〜8個の炭素原子を有する化合物を意味する。
【0026】
「低級アルカノール」とは、1〜4個のヒドロキシル基を有する、分岐鎖または直鎖であり得る、飽和C−Cアルキル基を意味する。1個のヒドロキシル基を有する低級アルカノールの例としては、限定はされないが、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、イソ−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、イソ−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、t−ペンタノール等が挙げられる。
【0027】
「低級ケトン」の例としては、限定はされないが、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソ−ブチルケトン、メチル2−ブチルケトン、メチルt−ブチルケトン、ジエチルケトン、エチルプロピルケトン、エチルイソプロピルケトン、エチルブチルケトン、エチルイソ−ブチルケトン、エチルt−ブチルケトン等が挙げられる。
【0028】
「低級カルボン酸」の例としては、限定はされないが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸イソ酪酸(butyric acid isobutyric acid)等が挙げられる。
【0029】
「低級カルボン酸エステル」の例としては、限定はされないが、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、2−酢酸ブチル、t−酢酸ブチル等が挙げられる。
【0030】
「低級炭酸塩」の例としては、限定はされないが、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸プロピルメチル、炭酸イソプロピルメチル、炭酸ブチルメチル、炭酸イソ−ブチルメチル、炭酸2−ブチルメチル、炭酸t−ブチルメチル、炭酸ジエチル、炭酸プロピルエチル、炭酸イソプロピルエチル、炭酸ブチルエチル、炭酸イソ−ブチルエチル、炭酸t−ブチルエチル等が挙げられる。
【0031】
「低級ハロ炭化水素」とは、本明細書で言及される場合、1〜8個の炭素原子および1〜4個のハロ原子を有するヒドロカルビルラジカルおよびハロ原子を有する化合物を意味する。ハロ原子はクロロ、フルオロおよびブロモであることが好ましい。ハロ原子はクロロ原子(chloro atom)であることが最も好ましい。低級ハロ炭化水素の例としては、限定はされないが、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられる。
【0032】
「低級ハロキシ炭化水素」とは、1〜4個のハロ原子でさらに置換されている、本明細書で定義されるオキシ炭化水素を意味する。ハロキシ炭化水素の例としては、限定はされないが、ヘキサフルオロアセトンが挙げられる。
【0033】
「低級スルホキシ炭化水素」とは、硫黄原子も含有する、本明細書で定義されるオキシ炭化水素を意味する。低級スルホキシ炭化水素の例としては、限定はされないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびジメチルスルホンが挙げられる。
【0034】
「低級シクロ炭化水素」とは、例えば3〜8員の炭化水素環等の、環化したヒドロカルビルラジカルを意味する。シクロ炭化水素の例としては、限定はされないが、シクロヘキサンが挙げられる。
【0035】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、本明細書では、アミノ酸残基のポリマーを指すのに同義的に用いられる。ポリペプチドは、天然(組織由来)起源のもの、原核もしくは真核細胞調製物から組換えもしくは天然に発現されたもの、または合成法により化学的に生成されたものであり得る。前記用語は、一つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の、人工的な化学的模倣体(artificial chemical mimetic)であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然アミノ酸ポリマーおよび非天然アミノ酸ポリマーに適用される。アミノ酸模倣体とは、アミノ酸の一般的な化学構造と異なる構造を有するが、天然アミノ酸と同様の様式で機能する化学物質を意味する。非天然の残基は科学文献および特許文献の中に十分に説明されており、天然アミノ酸残基の模倣剤および指針(guideline)として有用な非天然組成物の数種類の例を、以下に記載する。芳香族アミノ酸の模倣体は、例えば、アルキルが置換型または非置換型のメチル、エチル、プロピル、ヘキシル、ブチル、ペンチル、イソプロピル、イソ−ブチル、sec−イソチル(isotyl)、イソ−ペンチル、または非酸性アミノ酸であり得る、D−またはL−ナフィルアラニン(naphylalanine);D−またはL−フェニルグリシン;D−またはL−2チエネイルアラニン(thieneylalanine);D−またはL−1,−2,3−、または4−ピレネイルアラニン(pyreneylalanine);D−またはL−3チエネイルアラニン(thieneylalanine);D−またはL−(2−ピリジニル)−アラニン;D−またはL−(3−ピリジニル)−アラニン;D−またはL−(2−ピラジニル)−アラニン;D−またはL−(4−イソプロピル)−フェニルグリシン:D−(トリフルオロメチル)−フェニルグリシン;D−(トリフルオロメチル)−フェニルアラニン:D−p−フルオロ−フェニルアラニン;D−またはL−p−ビフェニルフェニルアラニン;K−またはL−p−メトキシ−ビフェニルフェニルアラニン:D−またはL−2−インドール(アルキル)アラニン;および、D−またはL−アルキルアイニン(alkylainine)による交換によって生成することができる。非天然アミノ酸の芳香族環としては、例えば、チアゾリル、チオフェニル、ピラゾリル、ベンゾイミダゾリル、ナフチル、フラニル、ピロリル、およびピリジル芳香環が挙げられる。
【0036】
「ペプチド」には、本明細書で使用される場合、本明細書で具体的に例示されたペプチドの保存的変異物(conservative variation)であるペプチドも含まれる。「保存的変異」とは、本明細書で使用される場合、別の、生物学的に類似した残基による、アミノ酸残基の置換を表す。保存的変異の例としては、限定はされないが、イソロイシン、バリン、ロイシン、アラニン、システイン、グリシン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシン、ノルロイシンもしくはメチオニン等の1個の疎水性残基の別のものへの置換、または、アルギニンのリジンへの置換、グルタミン酸のアスパラギン酸への置換、またはグルタミンのアスパラギンへの置換等の、1個の極性残基の別のものへの置換が挙げられる。1個の別のものに置換され得る中性親水性アミノ酸には、アスパラギン、グルタミン、セリンおよびトレオニンが含まれる。「保存的変異」には、非置換の親アミノ酸の代わりに置換されたアミノ酸を使用することも含まれ、但し、その置換されたポリペプチドに対して産生された抗体は、非置換のポリペプチドとも免疫反応する。そのような保存的置換は、本発明のペプチドのクラスの定義に含まれる。「陽イオン性の」とは、本明細書で使用される場合、pH7.4の正味の正電荷を有する、あらゆるペプチドを意味する。ペプチドの生物学的活性は、当業者に既知のおよび本明細書に記載の標準方法により決定することができる。
【0037】
タンパク質に関して使用される場合の「組換え型」とは、異種の核酸もしくはタンパク質の導入、または天然の核酸もしくはタンパク質の変化により、タンパク質が改変されていることを示す。
【0038】
「再構成時間」およびその文法的変異は、使用される場合、凍結乾燥した分子が液体形態で溶解および/または懸濁するのに必要な時間を意味する。例えば、再構成時間としては、限定はされないが、ポリペプチドの乾燥ペレットが凍結乾燥後に水または緩衝液中で懸濁化するのに必要な時間を含む。従って、再構成時間およびその文法的変異の「減少」または「減少すること」は、第一の製剤および/または条件下で乾燥されたポリペプチドが液体中で懸濁化するのに必要な時間が、第二の製剤および/または条件下で乾燥され、同じ液体中に懸濁化された同じポリペプチドと比較して、より短いことを意味する。
【0039】
本発明はまた、凍結乾燥ポリペプチド組成物の再構成時間を減少させる方法に関し、該方法は、a)ポリペプチドを含んでなる液体混合物を凍結乾燥し、ここで該液体混合物は揮発性添加剤を含んでなり、b)該凍結乾燥ポリペプチドを、該凍結乾燥ポリペプチド組成物に対し十分な量の薬学的に許容可能な分散剤で再構成して液体ポリペプチド組成物を製造することを含んでなり、該揮発性添加剤の存在下で凍結乾燥されたポリペプチドの再構成時間は、該揮発性添加剤の非存在下で凍結乾燥された同一ポリペプチドの再構成時間よりも短い。本発明はまた、液体ポリペプチド組成物の製造方法に向けられ、該方法は、本発明の方法により製造される凍結乾燥ポリペプチドを得て、該凍結乾燥ポリペプチドを十分な量の薬学的に許容可能な分散剤で再構成して、液体ポリペプチド組成物を製造することを含んでなる。本発明はまた、本発明の方法により製造された液体ポリペプチド組成物に関する。
【0040】
ある例示的な実施態様によれば、凍結乾燥ポリペプチドは、十分な量の薬剤的に許容できる分散剤と接触するとすぐに、容易に再構成する。例えば、ある実施態様によれば、凍結乾燥ポリペプチドは、分散剤と混合されて、例えば、約5秒間振盪され、次に約5分間〜約30分間放置されて、液体ポリペプチド組成物を提供する。分散剤は、好ましくは無菌である水または「注射用水」(WFI)である。液体ポリペプチドは、投与前に、等張食塩水または他の賦形剤でさらに希釈して、望ましい濃度に作製することができる。本発明によれば、「賦形剤」としては、限定はされないが、安定剤、例えば、ヒト血清アルブミン(hsa)、ウシ血清アルブミン(bsa)、α−カゼイン、グロブリン、α−ラクトアルブミン、LDH、リゾチーム、ミオグロビン、オボアルブミン、RNase A;緩衝剤、例えば、クエン酸、HEPES、ヒスチジン、酢酸カリウム、クエン酸カリウム(postassium citrate)、リン酸カリウム(KHPO)、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム(NAHPO)、Tris塩基、およびTris−HCl;アミノ酸/代謝産物、例えば、グリシン、アラニン(α−アラニン、β−アラニン)、アルギニン、ベタイン、ロイシン、リジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、ヒスチジン、プロリン、4−ヒドロキシプロリン、サルコシン、γ−アミノ酪酸(GABA)、オピン(アラノピン、オクトピン、ストロンビン)、およびトリメチルアミンN−オキシド(TMAO);界面活性剤、例えば、ポリソルベート20および80、ならびにポロキサマー407:脂肪酸、例えば、ホスホチジルコリン(phosphotidyl choline)、エタノールアミン、およびアセチルトリプトファナート(acethyltryptophanate):ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、およびポリビニルピロリドン(PVP)10、24、40;低分子量の賦形剤、例えば、アラビノース、セロビオース、エチレングリコール、フルクトース、フコース、ガラクトース、グリセリン/グリセロール、グルコース、イノシトール(innositol)、ラクトース、マンニトール、マルトース、マルトトリオース、マンノース、メリビオース、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、オクツロース、プロピレングリコール、ラフィノース、リボース、ソルビトール、スクロース、トレハロース、キシリトール、およびキシロース;ならびに高分子量の賦形剤、例えば、セルロース、β−シクロデキストリン、デキストラン(10kd)、デキストラン(40kd)、デキストラン(70kd)、フィコール、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、ヒドロキシエチルデンプン、マルトデキストリン、メトセル(methocel)、ペグ(peg)(6kd)、ポリデキストロース、ポリビニルピロリドン(PVP)k15(10kd)、PVP(40kd)、PVP k30(40kd)、PVP k90(1000kd)、セファデックス(sephadex)G 200、およびデンプン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、システインHCl、チオグリセロール、チオグリコール酸、チオソルビトール、およびグルタチオン;還元剤、例えば、システインHCl、ジチオトレイトール(dithiothreotol)、および他のチオールまたはチオフェン;キレート化剤、例えば、EDTA、EGTA、グルタミン酸、およびアスパラギン酸;無機塩/金属、例えば、Ca2+、Ni2+、Mg2+、Mn2+、NaSO、(NHSO、NaHPO/NaHPO、KHPO/KHPO、MgSO、およびNaF;有機酸塩、例えば、酢酸Na、Naポリエチレン(Na polyethylene)、カプリル酸Na(オクタン酸Na)、プロピオナート(proprionate)、乳酸塩、コハク酸塩、およびクエン酸塩;有機溶媒、例えば、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(dmso)、およびエタノールが挙げられる。
【0041】
本発明の例示的な実施態様によれば、作製される液体ポリペプチド組成物は、望ましい特徴、望ましい粘度および表面張力などの特徴を示す。
【0042】
「表面張力」という用語は、表面/空気界面での表面下の分子により及ぼされる引力を意味し、これは、分子濃度の低い気体と比較して、分子濃度の高い液体によってもたらされる。無極性液体等の低い表面張力値を有する液体は、水よりも容易に流れる。通常、表面張力の値はニュートン/メーターまたはダイン/センチメーターで表される。
【0043】
本明細書で言及される「動的表面張力」は、表面/空気界面であり、およびその表面/表面界面への動的界面張力である。動的表面張力を測定するためのいくつかの代替的な方法が存在し、例えば、捕捉気泡表面張力測定法(captive bubble surface tensionometry)または拍動気泡表面張力測定法(pulsating bubble surface tensionometry)である。
【0044】
「粘度」という用語は、特定の温度の液体によって示される流れに対する内部抵抗を意味し;ずり速度に対するずり応力の比率である。1ダイン/平方センチメートルの力が、1平方センチメートルの面積で1平方センチメートル離れた2つの平行な液体表面を、1cm/秒の速度で互いに通過させた場合、液体は1ポアズの粘度を有する。1ポアズは100センチポアズと等しい。
【0045】
見かけ粘度が言及される際、粘度の値は、採用された温度、ずり速度およびずり応力等の、測定が行われた条件に依存することが理解されよう。見かけ粘度は、適用されたずり速度に対するずり応力の比率と定義される。見かけ粘度を測定するためのいくつかの代替法が存在する。例えば、粘度は、適切な円錐(cone)および板(plate)、平行板または他のタイプの粘度計もしくはレオメータによって試験され得る。
【0046】
本発明はまた、ポリペプチドの凍結乾燥に適切な製剤に向けられる。ある実施態様によれば、液体混合物は、約0.1体積%〜約10体積%の揮発性添加剤、約0.25体積%〜約5体積%の揮発性添加剤、または約2体積%の揮発性添加剤を含んでなる。一実施態様によれば、製剤は、約10mMのリン酸ナトリウム(pH7.2)、約117mMのトレハロース、約153mMのマンニトール、および約0.01%(w/v)ポリソルベート−80を含んでなる。別の実施態様によれば、製剤は、26mMのヒスチジン、150mMのトレハロース、0.02%ポリソルベート80(PS80)を含んでなる(pH6.0)。ある実施態様によれば、ポリペプチドはアルビグルチド(配列番号1)を含んでなる。他の実施態様によれば、ポリペプチドは、IL18(配列番号6)を含んでなる。一つの実施態様によれば、本発明は、約2%のt−ブタノールを含んでなる液剤に向けられる。一つの実施態様によれば、液剤は、約2%のt−ブタノール、約10mMのリン酸ナトリウム(pH7.2)、約117mMのトレハロース、約153mMのマンニトール、および約0.01%(w/v)ポリソルベート−80を含んでなる。別の実施態様によれば、前記製剤は、約2%のt−ブタノール、約26mMのヒスチジン(pH6.0)、約150mMのトレハロース、および約0.02%のポリソルベート80(PS80)を含んでなる。
【0047】
本明細書で使用される場合、「治療用タンパク質」とは、哺乳動物に投与されて、例えば、研究者または臨床医に探索されている組織、系、動物またはヒトの生物学的反応または医学的反応を引き出すことができるあらゆるタンパク質および/またはポリペプチドを意味する。治療用タンパク質は1より大きい生物学的反応または医学的反応を引き出してもよい。さらに、「治療有効量」という用語は、そのような量を受けていない対応する対象と比較して、限定はされないが、疾患、障害、もしくは副作用の治癒、予防、もしくは改善、または疾患もしくは障害の進行速度の減少をもたらす、あらゆる量を意味する。前記用語はまた、その範囲内に、第二の医薬品の治療効果を増強または補助する、正常な生理機能を増強するのに効果的な量ならびに患者における生理機能を生じさせるのに効果的な量を含む。
【0048】
一つの面によれば、本発明は、治療用ポリペプチド、緩衝液、界面活性剤、少なくとも1種の賦形剤、および少なくとも1種の揮発性添加剤を含んでなる組成物に向けられる。一つの実施態様によれば、治療用ポリペプチドは、GLP−1またはその断片および/もしくは変異体を含んでなる。一つの実施態様によれば、治療用ポリペプチドは、ヒト血清アルブミンのN末端に遺伝子的に融合された、少なくとも2種のGLP−1(7−36(A8G))ポリペプチドを含んでなる。一つの実施態様によれば、治療用ポリペプチドは配列番号1を含んでなる。一つの実施態様によれば、治療用タンパク質はGLP−1アゴニストを含んでなる。一つの実施態様によれば、治療用タンパク質はヒト血清アルブミンを含んでなる。
【0049】
一つの面によれば、本発明は、配列番号1を含んでなる薬剤を製造するための、本発明の特許請求の範囲に記載の組成物のうちのいずれか1つの使用に関する。
【0050】
一つの実施態様によれば、緩衝液はリン酸ナトリウムである。一つの実施態様によれば、緩衝液はヒスチジンである。一つの実施態様によれば、界面活性剤はポリソルベート−80である。一つの実施態様によれば、少なくとも1種の賦形剤は、トレハロース、マルトース、スクロース、マンノース、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、グリセロールおよびデキストロースから選択される。一つの実施態様によれば、賦形剤は、トレハロースおよびマンニトールを含んでなる。
【0051】
「GLP−1アゴニスト」とは、本明細書で使用される場合、インスリン産生を再現(simulate)することができる、および/または少なくとも1つのGLP−1活性を有する、任意の化合物または組成物を意味し、例えば、限定はされないが、インクレチンホルモンおよび/またはその断片、変異体および/もしくは複合体、ならびにインクレチン模倣体および/またはその断片、変異体および/もしくは複合体を含む。
【0052】
「インクレチンホルモン」とは、本明細書で使用される場合、インスリン分泌を増強する、あるいはインスリンのレベル(level or insulin)を上昇させるあらゆるホルモンを意味する。インクレチンホルモンの一例はGLP−1である。GLP−1は、食物摂取に応答して腸管内L細胞によって分泌されるインクレチンである。健常人では、GLP−1は、膵臓によるグルコース依存性インスリン分泌を刺激して、末梢におけるグルコース吸収を増加させることによって、食後の血糖値を制御する、重要な役割を担う。GLP−1はまた、グルカゴン分泌を抑制し、肝グルコース産生を減少させる。さらに、GLP−1は胃内容排出時間を延長し、小腸運動を緩徐化して、食物吸収を遅延させる。GLP−1は、グルコース依存性インスリン分泌に関わる遺伝子の転写を刺激し、β細胞の新生を促進することにより、持続的なβ細胞反応能を促進する(Meier, et al. Biodrugs 2003; 17 (2): 93-102)。
【0053】
「GLP−1活性」とは、本明細書で使用される場合、天然ヒトGLP−1の活性のうちの一つまたは複数を意味し、例えば、限定はされないが、血液および/または血漿中グルコースの減少、グルコース依存性インスリン分泌の刺激またはインスリンレベルの上昇、グルカゴン分泌の抑制、フルクトサミンの減少、脳へのグルコース運搬および代謝の増加、胃内容排出の遅延、ならびにβ細胞の応答能および/または新生の促進が挙げられる。これらの活性のいずれか、およびGLP−1活性に関連する他の活性は、GLP−1活性を有する組成物またはGLP−1アゴニストにより、直接的または間接的に引き起こされ得る。一例として、GLP−1活性を有する組成物は、グルコース依存性インスリン産生を直接的または間接的に刺激することができ、一方で、インスリン産生の刺激は、哺乳動物における血漿グルコースレベルを間接的に減少させ得る。
【0054】
「インクレチン模倣体」とは、本明細書で使用される場合、インスリン分泌を増強することができる、またはインスリンレベルを上昇させることができる化合物である。インクレチン模倣体は、哺乳動物において、インスリン分泌の刺激、β細胞新生の増加、β細胞アポトーシスの阻害、グルカゴン分泌の阻害、胃内容排出の遅延および満腹感の誘導が可能である。インクレチン模倣体には、限定はされないがGLP−1活性を有するあらゆるポリペプチドが含まれる場合があり、例えば、限定はされないが、エキセンジン3およびエキセンジン4が挙げられ、その任意の断片および/または変異体および/または複合体も含まれる。
【0055】
本明細書で使用される場合、「複合体(conjugate)」または「複合体化された(conjugated)」およびその文法的バリエーションは、互いに結合している2つの分子を意味する。例えば、第一のポリペプチドは、共有結合的または非共有結合的に、第二のポリペプチドに結合している場合がある。第一のポリペプチドは、化学リンカーにより共有結合している場合があり、または第二のポリペプチドに遺伝子操作により融合している場合があり、そこにおいて第一および第二のポリペプチドは共通のポリペプチド骨格を共有している。
【0056】
本明細書で使用される場合、ポリペプチドに関連して使用される際の「断片」とは、天然ポリペプチド全体のアミノ酸配列の、全てではないが一部と同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドである。断片は、「独立(free-standing)」していてもよく、またはそれらが単一のより大きなポリペプチドにおいて単一の連続領域としての一部または領域を形成する、より大きなポリペプチド内に含まれていてもよい。一例として、天然GLP−1の断片は、1〜36番目の天然アミノ酸のうち7〜36番目のアミノ酸を含むであろう。さらに、ポリペプチドの断片は、天然部分配列の変異体であってもよい。例えば、天然GLP−1の7〜30番目のアミノ酸を含んでなるGLP−1断片は、その部分配列内にアミノ酸置換を有する変異体であってもよい。
【0057】
「変異体」とは、この用語が本明細書で使用される場合、参照ポリヌクレオチドまたは参照ポリペプチド(reference polynucleotide or polypeptide)とは各々異なるが、本質的な特性は保持しているポリヌクレオチドまたはポリペプチドである。典型的なポリヌクレオチド変異体は、ヌクレオチド配列において、別の参照ポリヌクレオチドと異なっている。変異体のヌクレオチド配列における変化は、参照ポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドのアミノ酸配列を変化させてもさせなくてもよい。ヌクレオチド変化は、下記の様に、参照配列にコードされるポリペプチドにおいてアミノ酸の置換、付加、欠失、融合および切断をもたらしてもよい。典型的なポリペプチド変異体は、アミノ酸配列において、別の参照ポリペプチドと異なっている。通常、変化は限定的であるため、参照ポリペプチドの配列と変異体の配列は、全体的に見て極めて類似しており、多くの領域で同一である。変異体と参照ポリペプチドは、任意の組み合わせの一つまたは複数の置換、付加、欠失によって、アミノ酸配列において異なっていてもよい。置換された、または挿入されたアミノ酸残基は、遺伝暗号によってコードされるものであっても、それでなくてもよい。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの変異体は、対立遺伝子変異型等の天然型であってもよく、または天然に発生することが知られていない変異体であってもよい。ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの非天然型変異体は、変異誘発技術によって作製されてもよいし、または直接合成によって作製されてもよい。変異体には、限定はされないが、そのアミノ酸側鎖のうちの一つまたは複数に化学修飾を有するポリペプチドまたはその断片が含まれ得る。化学修飾としては、限定はされないが、化学部分の付加、新しい結合の生成、および化学部分の除去が挙げられる。アミノ酸側鎖で起こる修飾としては、限定はされないが、リジン−ε−アミノ基のアシル化、アルギニン、ヒスチジン、またはリジンのN−アルキル化、グルタミン酸基またはアスパラギン酸カルボン酸基(aspartic carboxylic acid group)のアルキル化、およびグルタミンまたはアスパラギンの脱アミドが挙げられる。末端アミノ基の修飾としては、限定はされないが、脱アミノ修飾、N−低級アルキル修飾、N−ジ−低級アルキル修飾、およびN−アシル修飾が挙げられる。末端カルボキシ基の修飾としては、限定はされないが、アミド修飾、低級アルキルアミド修飾、ジアルキルアミド修飾、および低級アルキルエステル修飾が挙げられる。さらに、一つまたは複数の側鎖、または末端基は、タンパク質化学の分野で通常の知識を有する者に知られている保護基によって保護されていてもよい。
【0058】
本発明の一つの実施態様によれば、ポリペプチドはGLP−1ポリペプチドである。「GLP−1ポリペプチド」としては、限定はされないが、GLP−1、またはその断片、変異体、および/もしくは複合体が挙げられる。本発明のGLP−1断片および/またはGLP−1変異体および/またはGLP−1複合体は、通常、少なくとも1つのGLP−1活性を有する。GLP−1、またはその断片、変異体、および/もしくは複合体は、ヒト血清アルブミンを含んでなってもよい。ヒト血清アルブミンは、GLP−1またはその断片および/もしくは変異体に複合体化されていてもよい。ヒト血清アルブミンは、注射前に化学リンカーを介して、インクレチンホルモン(GLP−1等)、および/またはインクレチン模倣体(エキセンジン3およびエキセンジン4等)、ならびに/またはその断片および/もしくは変異体に複合体化されてもよく、あるいは、in vivoで天然ヒト血清アルブミンに化学的に連結されてもよい(例えば、その全体が引用することにより本明細書の一部とされる、米国特許番号第6,593,295号および米国特許番号第6,329,336号を参照されたい)。あるいは、ヒト血清アルブミンは、GLP−1ならびに/もしくはその断片および/もしくは変異体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4等の他のGLP−1アゴニストならびに/もしくはその断片および/もしくは変異体に遺伝子操作により融合されていてもよい。ヒト血清アルブミンと遺伝子操作により融合されているGLP−1ならびにその断片および/または変異体の例は、以下のPCT出願に提供されている:WO2003/060071、WO2003/59934、WO2005/003296、WO2005/077042(その全体が引用することにより本明細書の一部とされる)。
【0059】
GLP−1活性を有するポリペプチドは、ヒトGLP−1の少なくとも1つの断片および/または変異体を含んでなってもよい。ヒトGLP−1の2つの天然断片が配列番号2に表される。
【化1】
配列中、37番目のXaaはGly(以後「GLP−1(7−37)」と称する)、または−NH(以後「GLP−1(7−36)と称する」)である。GLP−1断片には、限定はされないが、ヒトGLP−1の7〜36番目のアミノ酸(GLP−1(7−36))を含んでなる、またはそれらからなる、GLP−1の分子が含まれ得る。GLP−1の変異体またはその断片には、限定はされないが、野生型GLP−1における、または配列番号2に示されるGLP−1の天然断片における、1、2、3、4、5またはそれ以上のアミノ酸置換が含まれ得る。GLP−1変異体またはGLP−1の断片には、限定はされないが、野生型GLP−1の8番目のアラニンに類似したアラニン残基の置換体が含まれ、そのようなアラニンはグリシンに変異している(以後「A8G」と称する)(例えば、その全体が引用することにより本明細書の一部とされる、米国特許第5,545,618号に開示されている変異体を参照されたい)。
【0060】
いくつかの面によれば、GLP−1の少なくとも1つの断片および変異体がGLP−1(7−36(A8G))を含んでなり、ヒト血清アルブミンに遺伝子操作により融合している。更なる実施態様によれば、本発明のポリペプチドは、ヒト血清アルブミンまたはその変異体のN末端またはC末端に融合した、1,2,3,4,5、またはそれ以上の、直列に配向された(tandemly oriented)GLP−1分子、ならびに/またはその断片および/もしくは変異体を含んでなる。他の実施態様は、アルブミンまたはその変異体のN末端またはC末端に融合した前記A8Gポリペプチドを有する。ヒト血清アルブミンのN末端に融合した、2つの直列に配向されたGLP−1(7−36)(A8G)断片および/または変異体の一例は、配列番号1を含んでなり、図3に表される。別の態様では、GLP−1の少なくとも1つの断片および変異体は、ヒト血清アルブミンに直列且つ遺伝子操作により融合した、少なくとも2つのGLP−1(7−36(A8G))を含んでなる。一つの面によれば、少なくとも2つのGLP−1(7−36(A8G))は、ヒト血清アルブミンのN末端において、遺伝子操作により融合される。GLP−1活性を有する少なくとも1つのポリペプチドは、配列番号1を含んでなる可能性がある。
【0061】
GLP−1(7−37)の変異体は、例えば、GLP−1(7−37)OHの22番目に通常存在するグリシンがグルタミン酸と置換されているGLP−1変異体を示すGlu22−GLP−1(7−37)OHとして表してもよく;Val−Glu22−GLP−1(7−37)OHは、GLP−1(7−37)OHの8番目に通常存在するアラニンおよび22番目に通常存在するグリシンがそれぞれバリンおよびグルタミン酸と置換されている、GLP−1化合物を示す。GLP−1の変異体の例としては、限定はされないが以下が挙げられる:
【0062】
【化2】
【0063】
GLP−1の変異体には、限定はされないが、そのアミノ酸側鎖のうちの一つまたは複数に化学修飾を有するGLP−1またはGLP−1断片も含まれ得る。化学修飾としては、限定はされないが、化学的部分の付加、新しい結合の生成、および化学的部分の除去が挙げられる。アミノ酸側鎖における修飾としては、限定はされないが、リジン−ε−アミノ基のアシル化、アルギニン、ヒスチジン、またはリジンのN−アルキル化、グルタミン酸基またはアスパラギン酸カルボン酸基(aspartic carboxylic acid group)のアルキル化、およびグルタミンまたはアスパラギンの脱アミドが挙げられる。末端アミノ基の修飾としては、限定はされないが、デスアミノ(des-amino)修飾、N−低級アルキル修飾、N−ジ−低級アルキル修飾、およびN−アシル修飾が挙げられる。末端カルボキシ基の修飾としては、限定はされないが、アミド修飾、低級アルキルアミド修飾、ジアルキルアミド修飾、および低級アルキルエステル修飾が挙げられる。さらに、一つまたは複数の側鎖、または末端基は、タンパク質化学の分野で通常の知識を有する者に知られている保護基によって保護されていてもよい。
【0064】
GLP−1の断片または変異体は、一つまたは複数のアミノ酸が断片または変異体のGLP−1(7−37)OHのN末端および/またはC末端に付加されている、ポリペプチドもまた含んでいてもよい。アミノ酸がN末端またはC末端に付加されているGLP−1中のアミノ酸は、GLP−1(7−37)OHにおける対応するアミノ酸と同じ番号で表される。例えば、GLP−1(7−37)OHのN末端に2つのアミノ酸を付加することにより得られるGLP−1化合物のN末端アミノ酸は5番目であり;GLP−1(7−37)OHのC末端に1つのアミノ酸を加えることにより得られるGLP−1化合物のC末端アミノ酸は38番目である。従って、GLP−1(7−37)OHにおいてと同様、これらのGLP−1化合物の両方において、12番目はフェニルアラニンによって占められ、22番目はグリシンによって占められている。N末端に付加されたアミノ酸であるGLP−1の1〜6番目のアミノ酸は、GLP−1(1−37)OHの対応する位置にあるアミノ酸と同一またはそれの保存的置換であり得る。C末端に付加されたアミノ酸であるGLP−1の38〜45番目のアミノ酸は、グルカゴンまたはエキセンジン−4の対応する位置にあるアミノ酸と同一またはそれの保存的置換であり得る。
【0065】
アルビグルチド(albiglutide)は、ヒトアルブミンへの、二量体としてのペプチドのDPP−IV抵抗型の、遺伝的融合を介して合成された、GLP−1の新規の類似体であり、約5〜7日の半減期を有する持続性のGLP−1活性が提供される。アルビグルチドの一次アミノ酸配列は配列番号1である。
【0066】
本発明の別の面によれば、GLP−1活性を有する少なくとも1つのポリペプチドを含んでなる組成物は、1日1回から月1回、ヒトに投与され、1日1回、2日毎に1回、3日毎に1回、7日毎に1回、14日毎に1回、4週間毎に1回および/または月1回、投与することができる。別の面によれば、GLP−1活性を有する少なくとも1つのポリペプチドを含んでなる組成物の初回投与量および第二回投与量が、ヒトに投与される。初回および第二回の投与量は、同じであっても異なっていてもよい。GLP−1活性を有する少なくとも1つの(least one)ポリペプチドの各用量は、約0.25μg〜約1000mgの、GLP−1活性を有する少なくとも1つのポリペプチドを含んでなり得る。投与量には、限定はされないが、0.25μg、0.25mg、1mg、3mg、6mg、16mg、24mg 48mg、60mg、80mg、104mg、20mg、400mg.800、mg、最大約1000mgの、GLP−1活性を有する少なくとも1つのポリペプチドが含まれ得る。
【0067】
一つの実施態様によれば、本発明の組成物は、約15mg、30mg、50mgまたは100mgの配列番号1を含んでなる。
【0068】
別の実施態様によれば、ポリペプチドは抗原結合性ポリペプチドである。一つの実施態様によれば、抗原結合性ポリペプチドは、可溶性受容体、抗体、抗体断片、免疫グロブリン単一可変領域(immunoglobulin single variable domain)、Fab、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド連結したFv、scFv、閉構造多特異的抗体、ジスルフィド連結したscFv、または二重特異性抗体からなる群から選択される。
【0069】
「抗原結合性ポリペプチド」という用語は、本明細書で使用される場合、抗体、抗体断片および抗原に結合することができる他のタンパク質構築体を意味する。
【0070】
一つの実施態様によれば、抗原結合性ポリペプチドは抗NOGOmAbである。一つの実施態様によれば、抗原結合性ポリペプチドは、配列番号3の重鎖および配列番号4の軽鎖を含んでなる。
【0071】
一つの実施態様によれば、抗原結合性ポリペプチドは抗IL5mAbである。一つの実施態様によれば、抗原結合性ポリペプチドは、配列番号7の重鎖および配列番号8の軽鎖を含んでなる。
【0072】
一つの態様によれば、抗原結合性ポリペプチドは抗CD20mAbである。一つの態様によれば、抗原結合性ポリペプチドは、配列番号9の重鎖可変領域および配列番号10の軽鎖可変領域を含んでなる。一つの態様によれば、抗原結合性ポリペプチドは、免疫グロブリン単一可変領域である。一つの態様によれば、免疫グロブリン単一可変領域は抗TNFR1dAbである。一つの態様によれば、免疫グロブリン単一可変領域は配列番号5を含んでなる。
【0073】
Fv、Fc、Fd、Fab、またはF(ab)2という用語は、それらの標準的な意味で使用される(例えば、Harlow et al., Antibodies A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, (1988)を参照されたい。)。
【0074】
「キメラ抗体」とは、アクセプター抗体由来の軽鎖および重鎖の定常領域と結合した、ドナー抗体由来の天然の可変領域(軽鎖および重鎖)を含有する、改変抗体の一種を意味する。
【0075】
「ヒト化抗体」とは、非ヒトドナーの免疫グロブリンに由来するそのCDRを有し、その分子の残りの免疫グロブリン由来部分は1つ(または複数)のヒト免疫グロブリンに由来している、改変抗体の一種を意味する。さらに、フレームワーク支持残基(framework support residue)は、結合親和性が保存されるように改変され得る(例えば、Queen et al., Proc. Natl. Acad Sci USA, 86:10029-10032 (1989), Hodgson et al., Bio/Technology, 9:421 (1991)を参照)。適切なヒトアクセプター抗体(acceptor antibody)は、ドナー抗体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列に対する相同性によって、従来のデータベース、例えば、KABAT.RTM.データベース、Los Alamosデータベース、およびSwiss Proteinデータベースから選択されるものであってよい。ドナー抗体のフレームワーク領域に対する相同性(アミノ酸ベースで)によって特徴付けられるヒト抗体は、ドナーCDRを挿入するための、重鎖定常領域および/または重鎖可変フレームワーク領域を提供するのに適切であり得る。軽鎖定常領域または軽鎖可変フレームワーク領域を提供することができる適切なアクセプター抗体は、同様の方法で選択することができる。アクセプター抗体の重鎖および軽鎖が、同じアクセプター抗体由来である必要はないことに、留意する必要がある。従来技術により、そのようなヒト化抗体を作製するためのいくつかの方法が記述されている(例えば、EP−A−0239400およびEP−A−054951を参照)。
【0076】
「ドナー抗体」という用語は、改変された免疫グロブリンのコード領域を提供し、ドナー抗体に特有の抗原特異性および中和活性を有する改変された抗体の発現をもたらすために、その可変領域、CDR、もしくは他の機能的断片のアミノ酸配列、またはその類似体を、第一の免疫グロブリンパートナーに与える、抗体(モノクローナル、および/または組換え)を意味する。
【0077】
「アクセプター抗体」という用語は、ドナー抗体に対し異種の抗体(モノクローナルおよび/または組換え)を意味し、その重鎖および/もしくは軽鎖のフレームワーク領域ならびに/またはその重鎖および/もしくは軽鎖の定常領域をコードするアミノ酸配列の全て(または任意の、しかし、いくつかの実施態様では全て)を、第一の免疫グロブリンパートナーに提供する、ある実施態様によれば、ヒト抗体はアクセプター抗体である。
【0078】
「CDR」は、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の超可変領域である、抗体の相補性決定領域のアミノ酸配列と定義される。例えば、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 4th Ed., U.S. Department of Health and Human Services, National Institutes of Health (1987)を参照されたい。免疫グロブリンの可変部分には、3つの重鎖CDRおよび3つの軽鎖CDR(またはCDR領域)が存在する。従って、「CDR」とは、本明細書で使用される場合、3つ全ての重鎖CDR、または3つ全ての軽鎖CDRを意味する(または、適切ならば、全重鎖CDRおよび全軽鎖CDRの両方)。抗体の構造およびタンパク質フォールディングは、他の残りが抗原結合領域の一部と見なされることを示しており、当業者であれば、そうであることを理解するであろう。例えば、Chothia et al., (1989) Conformations of immunoglobulin hypervariable regions; Nature 342, p 877-883を参照されたい。
【0079】
本明細書で使用される場合、「ドメイン」という用語は、タンパク質の残りから独立している三次構造を有する、折り畳まれたタンパク質構造を意味する。一般的に、ドメインはタンパク質の別個の機能特性に関与しており、多くの場合、タンパク質の残りおよび/またはドメインの機能を喪失することなく、他のタンパク質へ、付加、除去または移行され得る。「抗体単一可変領域(antibody single variable domain)」は、抗体可変領域に特有の配列を含んでなる、折り畳まれたポリペプチドドメインである。従って、それには、完全な抗体可変領域、および、例えば、一つもしくは複数のループが、抗体可変領域に特有ではない配列によって置換された改変可変領域、または、切断された、もしくはN末端もしくはC末端の伸長を含んでなる抗体可変領域、ならびに少なくとも完全長ドメインの結合活性および特異性を保持する可変領域の折り畳まれた断片が含まれる。
【0080】
「免疫グロブリン単一可変領域(immunoglobulin single variable domain)」という言い回しは、異なるV領域またはドメインとは独立に、抗原またはエピトープと特異的に結合する、抗体可変領域(V、VHH、V)を意味する。免疫グロブリン単一可変領域は、単一免疫グロブリン可変領域による抗原結合に他の領域またはドメインを必要としない(すなわち、免疫グロブリン単一可変領域が追加の可変領域とは独立に抗原と結合する)他の異なる可変領域または可変ドメインを有する形態(例えば、ホモ多量体またはヘテロ多量体)で存在し得る。「ドメイン抗体」または「dAb」は、その用語が本明細書で使用される場合、抗原に結合することができる「免疫グロブリン単一可変領域」と同じである。免疫グロブリン単一可変領域は、ヒト抗体可変領域であり得るが、げっ歯類(例えば、WO00/29004に開示)、テンジクザメおよびラクダ科動物のVHHdAb(ナノボディ)等の他の種由来の単一抗体可変領域も含み得る。ラクダ科動物VHHは、天然に軽鎖を欠いている重鎖抗体を産生する、ラクダ、ラマ、アルパカ、ヒトコブラクダ、およびグアナコを含む種に由来する免疫グロブリン単一可変領域ポリペプチドである。そのようなVHHドメインは、当該技術分野において利用可能な標準的な技術によってヒト化することができ、そのようなドメインでもまだ、本発明では、「ドメイン抗体」であると見なされる。本明細書で使用される場合、「V には、ラクダ科動物VHHドメインが含まれる。NARVは、テンジクザメを含む軟骨魚類において同定された、別の種類の免疫グロブリン単一可変ドメインである。これらのドメインは、新規な抗原受容体可変領域(Novel Antigen Receptor variable region)(一般的にV(NAR)またはNARVと省略される)としても知られている。さらなる詳細に関しては、Mol. Immunol. 44, 656-665 (2006) および US20050043519Aを参照されたい。
【0081】
「エピトープ結合ドメイン」という用語は、異なるV領域またはドメインとは独立に抗原またはエピトープと特異的に結合するドメインを意味し、ドメイン抗体(dAb)、例えばヒト、ラクダ科動物またはサメの免疫グロブリン単一可変領域であり得る。
【0082】
本明細書で使用される場合、「抗原結合部位」という用語は、抗原に特異的に結合することができるタンパク質上の部位を意味し、これは、単一のドメイン、例えばエピトープ結合ドメインであり得、標準的な抗体に見出すことができるような、対のV/Vドメインであり得る。本発明のいくつかの面によれば、一本鎖Fv(ScFv)ドメインによって、抗原結合部位が提供され得る。
【0083】
「mAbdAb」および dAbmAb」という用語は、本発明の抗原結合タンパク質を指すために、本明細書では使用される。前記2つの用語は、同義的に使用することができ、本明細書で使用される場合は、同一の意味を有することが意図される。
【実施例】
【0084】
本発明は、以下の非限定例を参照することにより、さらに理解することができる。
【0085】
実施例1:t−ブタノール、エタノール、アセトニトリル、酢酸NHまたはNHHCO存在下でのアルビグルチドの凍結乾燥。
アルビグルチドの試料を、表Iに記載される、分析用調製マトリクス(analytical preparation matrix)に従って凍結乾燥用に調製した。凍結乾燥物(lyophile)を、適切な濃度のt−ブタノール、エタノール、およびアセトニトリル(1、5、および10%w/v);ならびに適切な濃度の酢酸NHおよびNHHCO(100mMおよび250mM)を含有するバイアル(2mL 13mm)中に、117mMトレハロース、153mMマンニトール、0.01%(w/v)ポリソルベート−80と共に、10mMリン酸ナトリウム(pH7.2)中の50mgのアルビグルチドを含有する0.750mLの溶液を凍結乾燥することによって、調製した。
【0086】
【表2】
【0087】
以下のサイクル条件下で、LyoStar凍結乾燥器を用いて、試料を凍結乾燥した:
【0088】
【表3】
【0089】
実施例2:凍結乾燥アルビグルチドの再構成
凍結乾燥物を、凍結乾燥させたバイアルストッパー(ツベルクリン注射器、ベクトン・ディッキンソン社製品番号309626)を通し、1mL注射器および25G(5/8”)針を介して、0.675mLの注射用水(WFI)で再構成した。0.675mLの体積で、乾燥成分の体積を補正し、0.75mLの最終体積を得た。「振盪法(shaking method)」または「静置法(undisturbed method)」のいずれかを用いて、再構成を行った。振盪法については、試料を10秒間振盪し、その後15秒間静置した。静置法については、試料を5秒間前後に揺すり、その後静置した。バイアル中に粒子が見えなくなったとき、試料が再構成されたとみなした。両方の再構成法の結果を、表1と、さらに図1および図2に示す。
【0090】
実施例3:t−ブタノール存在下でのアルビグルチドの凍結乾燥
アルビグルチドの試料を、表Iに記載の分析用調製マトリクスに従って、凍結乾燥用に調製した。凍結乾燥物を、適切な濃度のt−ブタノール(34mM〜202mM、または0.25〜2%w/v)を含有するバイアル(2mL 13mm)に、117mMトレハロース、153mMマンニトール、0.01%(w/v)ポリソルベート−80と共に、10mMリン酸ナトリウム(pH7.2)中の50mgのアルビグルチドを含んでなる、0.750mLの溶液を、凍結乾燥することによって調製した。
【0091】
【表4】
【0092】
以下のサイクル条件下で、LyoStar凍結乾燥器を用いて、試料を凍結乾燥した:
【0093】
【表5】
【0094】
実施例4:凍結乾燥アルビグルチドの再構成
凍結乾燥物を、凍結乾燥させたバイアルストッパー(ツベルクリン注射器、ベクトン・ディッキンソン社製品番号309626)を通し、1mL注射器および25G(5/8」)針を介して、0.675mLの注射用蒸留水(WFI)で再構成した。0.675mLの体積で、乾燥成分の体積を補正し、0.75mLの最終体積を得た。「静置法」(水を添加した後すぐに軽く混合し、その後バイアルを放置した)を用いて、再構成を行った。水の添加は、分析者(再構成工程を実行する異なる3人)に基づく4つのバリエーションおよびピペッティング法で行った:
分析者1:ストッパーを通じた注射器による再構成
分析者2:ストッパーを通じた注射器による再構成
分析者3:ストッパーを通じた注射器による再構成。
分析者1:従来のP1000 Raininピペッティング法による再構成。
【0095】
個々の再構成時間を表4に要約し、図3にグラフ化した。結果としての再構成時間のエンドポイント値に対する、凍結乾燥前に添加されるt−ブタノールの明らかな効果が存在する。対照試料を製剤緩衝液のみ(揮発性添加剤無し)の存在下で凍結乾燥したところ、平均t=17.87(±2.94)分(n=26)が得られ;高値および低値はそれぞれ、t=12.25分およびt=26.53分であった。0.25%t−ブタノール試料は対照試料と実質的に同一であり、再構成エンドポイント平均時間はt=19.35(±4.08)分(n=20)であり;高値および低値はそれぞれ、t=12.42分およびt=28.90分であった。
【0096】
0.5%以上のt−ブタノール濃度で、再構成速度の明らかな加速があり、t−ブタノール濃度が増加するにつれ、エンドポイント値は減少する。0.5%t−ブタノールで、全結果に渡っての平均再構成時間エンドポイントは、t=11.84(±2.94)分(n=19)を有する、対照群のおよそ65%であり;高値および低値はそれぞれ、t=0.58分およびt=17.93であった。0.5%群において1つの試料が、37分超を与えたことに注意されたい。この場合、凍結乾燥物が溶媒メニスカス上のバイアルの側面に固着し、溶液中に入りそこねているため、そのデータ点は平均から除外した。
【0097】
1%t−ブタノール群、1.5%t−ブタノール群、および2%t−ブタノール群を比較すると、再構成時間に顕著な加速が見られ、それらのエンドポイントは、1%tブタノールでt=7.71(±2.44)分(n=30)、1.5%tブタノールでt=7.16(±2.65)分(n=20)、および2%tブタノールでt=4.74(±1.75)分(n=20)である。再構成エンドポイントの高値および低値は、1%tブタノールでt=1.37分およびt=11.67分、1.5%tブタノールでt=3.90分およびt=15.50分、ならびに2%tブタノールでt=2.75分およびt=9.25分であった。これらの範囲値は、製剤緩衝液中2%tブタノールの存在下で凍結乾燥したアルビグルチドの再構成時間が、製剤緩衝液中のアルビグルチド用の現在推奨されるものでる30分よりも、およそ10分程度、3倍速くなり得ることを示唆している。要約すると、2%tブタノール試料は、1%tブタノール試料よりもおよそ1.5倍速く、対照試料群よりも約3.75倍速い。
【0098】
【表6】
【0099】
また、凍結乾燥再構成時間の結果を分析者に応じて分類し、ストッパー(注射器)を通してのWFIの注入を含む方法と、バイアルの蓋を取り、レイニン社製ピペットで分注する従来の方法とを比較して、表4に要約し図4にグラフ化した。各試料群内の再構成時間エンドポイントの分布が変動性の主要源であり、個々の分析者および/または再構成法は、各試料種の平均値または標準偏差に対してごく小さな影響しか持たない。0.5%tブタノール(試料5)および0.25%tブタノール(試料6)は例外で、他の試料と比べて、平均再構成時間および標準偏差のより広範な変動性を示した。
【0100】
実施例5:凍結乾燥されたmAb、dAb、およびIL18の再構成
抗NOGOmAb(配列番号3および4)、抗TNFR1dAb(配列番号5)、IL18(配列番号6)、抗IL5(配列番号7および8)、および抗CD20(可変領域の配列番号:9および10)を、約0.75mLの体積で、26mMヒスチジン、150mMトレハロース、0.02%ポリソルベート80(PS80)を含んでなる製剤(pH6.0)中で、以下に示される濃度に濃縮し、次に2mLバイアル中で凍結乾燥した。
79.3mgの抗IL5mAb
77.9mgの抗NOGOmAb
78.2mgの抗CD20mAb
29.1mgの抗TNFR1dAb
19.0mgのIL−18
【0101】
凍結乾燥物を、凍結乾燥させたバイアルストッパー(ツベルクリン注射器、ベクトン・ディッキンソン社製品番号309626)を通し、1mL注射器および25G(5/8”)針を介して、0.675mLの注射用水(WFI)で再構成した。0.675mLの体積で、乾燥成分の体積を補正し、0.75mLの最終体積を得た。「静置法」(水を添加した後すぐに軽く混合し、その後バイアルを放置した)を用いて、再構成を行った。水の添加は、ストッパーを通し注射器を介して、3人の異なる分析者(再構成工程を実行する異なる3人)によって、実行された。
【0102】
個々の再構成時間を表5に要約し、図6および図7にグラフ化した。
【0103】
試験された5種全てのタンパク質に渡って、凍結乾燥の間に2%t−ブタノールを加えられたものは、対照群よりも速い再構成時間を有した。このことは、試験されたmAbに対してのみ明らかであるわけではなく、試験された小分子、すなわち抗TNFR1dAbおよびIL−18に対しても観察することができ、また、t−ブタノール存在下でより速い再構成時間を有するように思われる。
【0104】
【表7】
【0105】
当業者は、通常の実験法だけを用いて、本明細書に記載される本発明の特定の態様に多く同等であると認識し、または確認することができる。そのような同等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。本願の全体を通して引用された全ての参考文献、特許、および公開特許出願の内容の全体は、引用することにより本明細書の一部とされる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]