(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カードの厚み方向から見たときに、前記第1方向と前記ギャップ方向とが平行になっている場合の前記ギャップ方向の傾斜角度を0°とし、前記第1方向と前記ギャップ方向とが直交している場合の前記ギャップ方向の傾斜角度を90°とすると、
前記カードの厚み方向から見たときに、前記ギャップ方向の傾斜角度は、10°から75°の範囲に設定されていることを特徴とする請求項3記載のカードリーダ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のカードリーダでは、表裏の向きが逆になった状態のカードがカードリーダに取り込まれると、磁気ヘッドによって磁気データを読み取ることができない。また、一般に、磁気データが記録されていないカードがカードリーダに取り込まれても、磁気ヘッドによって磁気データを読み取ることはできない。そのため、特許文献1に記載のカードリーダでは、磁気データが記録されたカードが、表裏の向きが正しい状態でカードリーダに挿入されたことを検知できることが好ましい。
【0005】
そこで、本発明の課題は、略長方形状に形成されるカードをその短手方向で取り込んで、カードに記録された磁気データの読取を行うカードリーダにおいて、磁気データが記録されたカードが、表裏の向きが正しい状態で挿入されたことを検知することが可能なカードリーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明のカードリーダは、略長方形状に形成されるカードをその短手方向で取り込んで、カードの磁気ストライプに記録された磁気データの読取を行うカードリーダにおいて、カードが挿入される挿入口が形成されるカード挿入部を備え、カード挿入部は、カードに接触する磁気ヘッドを備え、カードに接触する磁気ヘッドの先端には、直線状の磁気ギャップが形成され、磁気ストライプは、その長手方向とカードの長手方向とが一致するように形成されるとともに、磁気データは、カードの長手方向に配列されるように磁気ストライプに記録され、直線状に形成される磁気ギャップの形成方向をギャップ方向とすると、挿入口から挿入されたカードの厚み方向から見たときに、ギャップ方向は、カードの挿入方向に直交する第1方向に対して傾いていることを特徴とする。
【0007】
本発明のカードリーダでは、カード挿入部は、カードに接触する磁気ヘッドを備えている。そのため、本発明では、磁気ヘッドでの検知結果に基づいて、磁気ストライプが形成された面がどちらを向いた状態で挿入口からカードが挿入されたのかを検知することが可能になる。すなわち、本発明では、磁気ヘッドでの検知結果に基づいて、表裏の向きが正しい状態でカードが挿入されたことを検知することが可能になる。
【0008】
また、本発明では、磁気データは、カードの長手方向に配列されるように磁気ストライプに記録され、かつ、略長方形状に形成されるカードがその短手方向で取り込まれているため、カードの挿入方向に直交する第1方向と磁気データの配列方向とが一致する。ここで、カードの厚み方向から見たときに、磁気ヘッドの先端に形成されるギャップの形成方向であるギャップ方向と第1方向と平行であると、磁気ストライプに磁気データが記録されていても、磁気データにおける磁化反転を磁気ヘッドで検知することができないが、本発明では、カードの厚み方向から見たときに、ギャップ方向が第1方向に対して傾いているため、磁気ストライプに磁気データが記録されていれば、磁気データにおける磁化反転を磁気ヘッドで検知することが可能になる。すなわち、本発明では、磁気ヘッドでの検知結果に基づいて、磁気データが記録されたカードが挿入されたことを検知することが可能になる。
【0009】
本発明において、カードリーダは、磁気ヘッドの出力信号が入力される制御部を備え、制御部は、たとえば、カードが磁気ヘッドを通過する際の磁気ヘッドの出力信号の中のピーク値であって、所定の閾値を超えるピーク値の数が所定の数以上となるときに、磁気ストライプに磁気データが記録されていると判別する。
【0010】
この場合には、nを3以上の整数とすると、制御部は、閾値を超えるピーク値の数がn個以上となるときに、磁気ストライプに磁気データが記録されていると判別することが好ましい。本願発明者の検討によると、磁気ストライプに磁気データが記録されていなくても、磁気ヘッドがカードに接触する場合には、磁気ヘッドと磁気ストライプとの接触が始まるとき、および、磁気ヘッドと磁気ストライプとの接触が終わるときに、磁気ヘッドの出力信号のピーク値が閾値を超える場合があることが明らかになった。すなわち、磁気ストライプに磁気データが記録されていなくても、磁気ヘッドがカードに接触する場合には、ピーク値が2回、閾値を超える場合があることが明らかになった。そのため、閾値を超えるピーク値の数がn個以上(nは3以上の整数)となるときに、磁気ストライプに磁気データが記録されていると制御部が判別することで、磁気ストライプに磁気データが記録されていることを適切に判別することが可能になる。なお、本願明細書において、「ピーク値が閾値を超える」には、プラス側に設定される閾値をピーク値が上回る場合と、マイナス側に設定される閾値をピーク値が下回る場合とが含まれる。
【0011】
本発明において、カードの厚み方向から見たときに、第1方向とギャップ方向とが平行になっている場合のギャップ方向の傾斜角度を0°とし、第1方向とギャップ方向とが直交している場合のギャップ方向の傾斜角度を90°とすると、カードの厚み方向から見たときに、ギャップ方向の傾斜角度は、10°から75°の範囲に設定されていることが好ましい。本願発明者の検討によると、記録密度が75bpi(bit per inch)であるオール“0”の磁気データが磁気ストライプに記録されている場合、および、記録密度が210bpiであるオール“0”の磁気データが磁気ストライプに記録されている場合であって、磁気ヘッドが磁気ストライプに接触する場合には、ギャップ方向の傾斜角度が10°から75°の範囲に設定されていると、閾値を超えるピーク値の数が少なくとも3個を超えることが明らかになった。したがって、このように構成すると、国際規格やJIS規格によって規定されたカードに磁気データが記録されていることを適切に判別することが可能になる。
【0012】
本発明において、カードの厚み方向から見たときに、ギャップ方向の傾斜角度は、15°から25°の範囲に設定されていることが好ましい。この場合には、カードの厚み方向から見たときに、ギャップ方向の傾斜角度は、たとえば、15°に設定されている。本願発明者の検討によれば、ギャップ方向の傾斜角度が15°から25°の範囲に設定されていると、記録密度が75bpiであるオール“0”の磁気データが磁気ストライプに記録されている場合および記録密度が210bpiであるオール“0”の磁気データが磁気ストライプに記録されている場合であって、磁気ヘッドが磁気ストライプに接触する場合に、閾値を超えるピーク値の数が多くなること、および、磁気ヘッドの傾きに起因する磁気ストライプの傷の発生を抑制できることが明らかになった。したがって、このように構成すると、磁気ストライプの傷の発生を抑制しつつ、国際規格やJIS規格によって規定されたカードに磁気データが記録されていることを適切に判別することが可能になる。
【0013】
本発明において、磁気ヘッドは、第1方向におけるカード挿入部の一端側に配置されていることが好ましい。国際規格やJIS規格によって規定されたカードでは、磁気ストライプの一端側にオール“0”の磁気データからなるプリアンブルが記録され、磁気ストライプの他端側にオール“0”の磁気データからなるポストアンブルが記録されているため、このように構成すると、磁気ストライプの、プリアンブルが記録された部分またはポストアンブルが記録された部分を磁気ヘッドに接触させることが可能になる。したがって、磁気ストライプに記録される磁気データの内容にかかわらず、磁気ヘッドの出力信号を安定させることが可能になり、その結果、カードに磁気データが記録されていることをより適切に検知することが可能になる。また、このように構成すると、磁気ヘッドの傾きに起因して仮に磁気ストライプに傷が発生したとしても、重要なカードデータが記録される磁気ストライプの中心部分での傷の発生を防止することが可能になる。
【0014】
本発明において、カード挿入部は、励磁用コイルと検出用コイルとを有しカードに形成されるICチップの外部接続端子を検知するための金属検知機構を備え、金属検知機構は、第1方向におけるカード挿入部の他端側に配置されていることが好ましい。このように構成すると、カードリーダが金属検知機構を備えていても、磁気ヘッドは、金属検知機構の励磁用コイルが発生させる磁界の影響を受けにくくなる。したがって、カード挿入部に金属検知機構が配置されていても、磁気ヘッドでの検知結果に基づいて、磁気データが記録されたカードが、表裏の向きが正しい状態で挿入されたことを適切に検知することが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明では、略長方形状に形成されるカードをその短手方向で取り込んで、カードに記録された磁気データの読取を行うカードリーダにおいて、磁気データが記録されたカードが、表裏の向きが正しい状態で挿入されたことを検知することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
(カードリーダの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるカードリーダ1の斜視図である。本形態のカードリーダ1は、カード2に記録されたデータの読取およびカード2へのデータの記録を行うための装置であり、ATM(Automated Teller Machine)等の所定の上位装置に搭載されて使用される。このカードリーダ1は、カード2が挿入される挿入口3が形成されるカード挿入部4を備えている。また、カードリーダ1の内部には、挿入口3から挿入されたカード2が通過するカード通過路5(
図2参照)が形成されている。カード通過路5は、挿入口3に繋がるように形成されている。また、カードリーダ1は、カード通過路5においてカード2を搬送するカード搬送機構6を備えている。
【0019】
カード2は、厚さが0.7〜0.8mm程度の塩化ビニール製のカードである。本形態のカード2は、国際規格(たとえば、ISO/IEC7811)やJIS規格(たとえば、JISX6302)に準拠した磁気ストライプ付きかつ接触式のICカードであり、四隅に丸みを持った略長方形状に形成されている。カード2の裏面には、磁気データが記録される磁気ストライプ2aが形成されている。また、カード2には、図示を省略するICチップが内蔵されており、カード2のおもて面2bには、8個の外部接続端子からなる端子部2cが形成されている。
【0020】
磁気ストライプ2aは、略長方形状に形成されるカード2の長手方向に平行な細長い帯状に形成されている。すなわち、磁気ストライプ2aは、その長手方向とカード2の長手方向とが一致するように形成されている。この磁気ストライプ2aは、カード2の長手方向の全域に形成されている。また、磁気ストライプ2aは、カード2の短手方向においてカード2の短手方向の一端2d側に形成されている。具体的には、国際規格やJIS規格に基づいて、磁気ストライプ2aは、カード2の短手方向において、カード2の一端2dを基準とする所定の範囲内に形成されている。端子部2cは、カード2の一端2dと、カード2の長手方向の一端2eとを基準とする所定の位置に形成されている。また、端子部2cは、カード2の長手方向において、カード2の一端2e側に形成されている。
【0021】
磁気ストライプ2aに記録される磁気データは、磁気ストライプ2aの長手方向(すなわち、カード2の長手方向)に配列されている。すなわち、磁気ストライプ2aでは、その長手方向において、記録される磁気データに応じて所定のピッチでN極とS極とに磁極が反転している。また、磁気ストライプ2aには、第1トラック、第2トラックおよび第3トラックの3つのトラックの磁気データが記録されている。第1トラックおよび第3トラックに記録される磁気データの記録密度は210bpiであり、第2トラックに記録される磁気データの記録密度は75bpiである。また、磁気ストライプ2aの一端側には、オール“0”の磁気データからなるプリアンブルが記録され、磁気ストライプの他端側には、オール“0”の磁気データからなるポストアンブルが記録されている。具体的には、カード2の長手方向の一端2e側にプリアンブルが記録され、カード2の長手方向の他端2f側にポストアンブルが記録されている。
【0022】
本形態では、
図1に示すX方向でカード2が搬送される。具体的には、X1方向にカード2が挿入されて取り込まれ、X2方向にカード2が排出される。すなわち、X方向は、カード2の搬送方向であり、X1方向は、カード2の挿入方向であり、X2方向は、カード2の排出方向である。また、本形態では、カード2の短手方向とX方向とが一致するように、カードリーダ1にカード2が挿入され、カード2の短手方向とX方向とが一致するように、カードリーダ1内でカード2が搬送される。すなわち、カードリーダ1は、カード2の短手方向でカード2を取り込んで、カード2に記録された磁気データの読取等の所定の処理を行う。
【0023】
また、X方向に直交するY方向は、挿入口3から挿入されるカード2の幅方向であり、カードリーダ1内に正しい向きで挿入されたカード2の長手方向である。また、X方向とY方向とに直交する
図1のZ方向は、挿入口3から挿入されたカード2の厚み方向である。本形態では、Z方向と鉛直方向とが一致するようにカードリーダ1が配置されている。以下の説明では、X方向を「前後方向」、Y方向を「左右方向」、Z方向を「上下方向」とし、また、X1方向側を「奥(後ろ)」側、X2方向側を「前」側、Y1方向側を「右」側、Y2方向側を「左」側、Z1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側とする。本形態の左右方向(Y方向)は、挿入口3から挿入されたカード2の厚み方向である上下方向(Z方向)から見たときに、カード2の挿入方向である後ろ方向(X1方向)に直交する第1方向である。
【0024】
また、カードリーダ1は、上述の構成に加えて、カード2に当接して磁気ストライプ2aに記録された磁気データの読取および磁気ストライプ2aへの磁気データの記録を行う磁気ヘッド(図示省略)と、カード2の搬送方向に直交する左右方向へ磁気ヘッドを移動させるヘッド移動機構7と、カード2の端子部2cに接触してデータの通信を行うためのIC接点ブロック(図示省略)と、IC接点ブロックを移動させる接点ブロック移動機構(図示省略)と、カードリーダ1内に取り込まれたカード2を位置決めするための位置決め機構(図示省略)とを備えている。
【0025】
ヘッド移動機構7は、磁気ヘッドが搭載されるキャリッジ、左右方向へキャリッジを案内するガイド軸、キャリッジを左右方向へ送るリードスクリュー、磁気ヘッドを上下動させるためのカム板、および、ガイド軸を中心とするキャリッジの回動を防止するための回動防止軸等を備えている。このヘッド移動機構7は、磁気ヘッドを左右方向へ移動させるとともに、磁気ヘッドがカード2の磁気ストライプ2aに当接可能な位置と磁気ヘッドがカード通過路5から退避する位置との間で磁気ヘッドを上下動させる。本形態のヘッド移動機構7は、カード通過路5の下側へ磁気ヘッドを退避させる。
【0026】
IC接点ブロックは、カード2の端子部2cに接触する複数のIC接点バネ等を備えている。接点ブロック移動機構は、IC接点バネが端子部2cに接触可能な位置と、IC接点バネがカード通過路5から退避する位置との間でIC接点ブロックを移動させる。本形態の接点ブロック移動機構は、カード通過路5の上側へIC接点バネを退避させる。位置決め機構は、カードリーダ1内に取り込まれたカード2の奥端が当接する位置決め部材等を備えている。この位置決め機構は、磁気ヘッドやIC接点ブロックがデータの読取や記録を行う際に、カード2を位置決めする。
【0027】
(カード挿入部の構成)
図2は、
図1に示すカード挿入部4の概略構成を説明するための図である。
図3(A)は、
図2のE−E方向からプリヘッド9を示す正面図であり、
図3(B)は、
図3(A)のF−F方向からプリヘッド9を示す側面図である。
図4は、
図2に示すプリヘッド9の出力信号の一例を示す図である。
【0028】
カード挿入部4は、カードリーダ1の前面側部分を構成している。このカード挿入部4は、カード2に接触する磁気ヘッドとしてのプリヘッド9と、カード2の端子部2c(すなわち、ICチップの外部接続端子)を検知するための金属検知機構10と、カード通過路5を開閉するシャッタ部材11と、プリヘッド9の出力信号および金属検知機構10の出力信号が入力される制御部12とを備えている。
【0029】
金属検知機構10は、励磁用コイルと、検出用コイルと、磁性材料で形成され励磁用コイルおよび検出用コイルが巻回されるコアとを有する磁気式のセンサである。この金属検知機構10は、左右方向において、正しい向きで挿入されたカード2(すなわち、磁気ヘッドによる磁気データの読取および記録やIC接点ブロックによるデータの読取および記録が可能な向きで挿入されたカード2)の端子部2cが通過する位置に配置されている。具体的には、金属検知機構10は、カード挿入部4の左端側に配置されている。また、金属検知機構10は、カード通過路5の上面側に配置されている。
【0030】
なお、本形態では、おもて面2bを上側に向けた状態でカード2の短手方向の一端2d側から挿入口3にカード2が挿入される場合が、カード2が正しい向きで挿入される場合である。また、本形態のカード挿入部4は、カード2の幅方向(Y方向)の両端部を検知するための幅検知機構(図示省略)を備えており、この幅検知機構の検知結果に基づいて、カード2の短手方向が前後方向と一致するようにカード2が挿入口3から挿入されたか否かが検知される。
【0031】
シャッタ部材11は、カード挿入部4の奥端に配置されている。シャッタ部材11には、ソレノイド等を有するシャッタ部材11の駆動機構が連結されており、シャッタ部材11は、カード通過路5に配置されてカード通過路5を閉鎖する閉鎖位置と、カード通過路5の下側に退避してカード通過路5を開放する開放位置との間で移動可能となっている。
【0032】
カード2に接触するプリヘッド9の先端には、直線状の磁気ギャップ9aが形成されている。すなわち、プリヘッド9の先端では、プリヘッド9の内部に配置されるコア(図示省略)に隙間(ギャップ)が形成されており、この隙間が磁気ギャップ9aとなっている。直線状に形成される磁気ギャップ9aの、上下方向から見たときの形成方向(
図2の矢印Vで示す方向)をギャップ方向とすると、
図3(B)に示すように、ギャップ方向から見たときのプリヘッド9の先端部9bは、たとえば、凸曲面状に形成されている。プリヘッド9は、磁気ギャップ9aが下側からカード通過路5に臨むように、カード通過路5の下面側に配置されている。また、プリヘッド9は、カード挿入部4の右端側に配置されている。具体的には、プリヘッド9は、正しい向きで挿入されたカード2の磁気ストライプ2aの、ポストアンブルが記録された部分が通過する位置に配置されている。
【0033】
また、プリヘッド9は、上下方向から見たときに、ギャップ方向が左右方向に対して傾くように配置されている。上下方向から見たときに、左右方向とギャップ方向とが平行になっている場合のギャップ方向の傾斜角度を0°とし、左右方向とギャップ方向とが直交している場合のギャップ方向の傾斜角度を90°とすると、本形態では、上下方向から見たときに、ギャップ方向の傾斜角度θ(
図2参照)は、10°から75°の範囲に設定されている。具体的には、上下方向から見たときに、傾斜角度θは、15°から25°の範囲に設定されている。より具体的には、本形態の傾斜角度θは、15°に設定されている。
【0034】
プリヘッド9は、制御部12に接続されており、制御部12には、プリヘッド9の出力信号が入力される。上述のように、磁気ストライプ2aに記録される磁気データは、カード2の長手方向に配列され、かつ、カード2は、その短手方向と前後方向とが一致するようにカードリーダ1に取り込まれているため、カードリーダ1に取り込まれたカード2に記録される磁気データの配列方向は左右方向と一致する。ここで、ギャップ方向が左右方向と平行であると、磁気データが記録された磁気ストライプ2aがプリヘッド9に接触しながらプリヘッド9を通過しても、磁気データにおける磁化反転をプリヘッド9で検知することができないが、本形態では、ギャップ方向が左右方向に対して傾いているため、磁気ストライプ2aに磁気データが記録されていれば、磁気ストライプ2aがプリヘッド9に接触しながらプリヘッド9を通過するときの磁気データにおける磁化反転をプリヘッド9で検知することが可能である。
【0035】
したがって、本形態の制御部12は、プリヘッド9の出力信号に基づいて、磁気ストライプ2aに磁気データが記録されているか否かを判別する。具体的には、磁気ストライプ2aに磁気データが記録されていれば、カード2の磁気ストライプ2aが通過するときのプリヘッド9の出力信号のレベルが複数回、変動して、この出力信号の中に所定の閾値を超えるピーク値が所定数、現れるため、制御部12は、磁気ストライプ2aがプリヘッド9を通過する際のプリヘッド9の出力信号の中のピーク値であって、所定の閾値を超えるピーク値の数が所定の数以上となるときに、磁気ストライプ2aに磁気データが記録されていると判別する。より具体的には、nを3以上の整数とすると、制御部12は、閾値を超えるピーク値の数がn個以上となるときに、磁気ストライプ2aに磁気データが記録されていると判別する。制御部12は、たとえば、閾値を超えるピーク値の数が5個以上となるときに、磁気ストライプ2aに磁気データが記録されていると判別する。
【0036】
すなわち、磁気ストライプ2aに磁気データが記録されている場合には、たとえば、
図4に示すようにアナログ状に変動するプリヘッド9の出力信号が制御部12に入力される。制御部12は、
図4に示すように、閾値th1、th2を超えるピーク値P(具体的には、プラス側に設定される閾値th1を上回るピーク値P、および、マイナス側に設定される閾値th2を下回るピーク値P)の数をカウントし、ピーク値Pが5個以上であれば、磁気ストライプ2aに磁気データが記録されていると判別し、ピーク値Pの数が5個未満であれば、磁気ストライプ2aに磁気データが記録されていないと判別する。
【0037】
なお、本形態の閾値th1、th2は、プリヘッド9の出力信号に含まれるノイズのレベルが閾値th1、th2を超えないように設定されている。ただし、閾値th1、th2は、たとえば、ギャップ方向の傾斜角度θを15°としてプリヘッド9を磁気ストライプ2aに接触させた場合の、プリヘッド9の出力信号の中のピーク値の略半分の値に設定されていても良い。また、閾値th1、th2は、予め、実験等で算出されたノイズの平均値に基づいて設定されても良い。
【0038】
(ギャップ方向の傾斜角度)
図5から
図11は、
図2に示すギャップ方向の傾斜角度θを0°から90°まで5°ごとに変えたときのプリヘッド9の出力信号の測定結果を示すデータである。
図12は、
図5から
図11に示すプリヘッド9の出力信号において所定の閾値を超えるピーク値の数をまとめた一覧表である。
【0039】
上述のように、本形態では、上下方向から見たときに、ギャップ方向の傾斜角度θは、10°から75°の範囲に設定されている。具体的には、上下方向から見たときに、傾斜角度θは、15°から25°の範囲に設定されており、より具体的には、傾斜角度θは、15°に設定されている。この傾斜角度θの設定根拠を以下で説明する。
【0040】
傾斜角度θを0°から90°まで5°ごとに変えながらプリヘッド9の出力信号を実測すると、
図5から
図11に示すデータのようになる。
図5から
図11において、「条件1」で示すプリヘッド9の出力信号は、記録密度が75bpiの磁気データが磁気ストライプ2aに記録されるとともにプリヘッド9に磁気ストライプ2aが接触している条件下で測定されたときのプリヘッド9の出力信号であり、「条件2」で示すプリヘッド9の出力信号は、記録密度が75bpiの磁気データが磁気ストライプ2aに記録されるとともにプリヘッド9と磁気ストライプ2aとの間に40μmの隙間が形成されている条件下で測定されたときのプリヘッド9の出力信号であり、「条件3」で示すプリヘッド9の出力信号は、記録密度が210bpiの磁気データが磁気ストライプ2aに記録されるとともにプリヘッド9に磁気ストライプ2aが接触している条件下で測定されたときのプリヘッド9の出力信号であり、「条件4」で示すプリヘッド9の出力信号は、記録密度が210bpiの磁気データが磁気ストライプ2aに記録されるとともにプリヘッド9と磁気ストライプ2aとの間に40μmの隙間が形成されている条件下で測定されたときのプリヘッド9の出力信号である。なお、上述のように、プリヘッド9は、磁気ストライプ2aの、ポストアンブルが記録された部分が通過する位置に配置されており、条件1から4のいずれにおいても、磁気ストライプ2aの、オール“0”の磁気データが記録された部分がプリヘッド9を通過する。
【0041】
また、
図5から
図11に示すプリヘッド9の出力信号において所定の閾値を超えるピーク値の数をまとめると、
図12に示す一覧表のようになる。ここで、本願発明者の検討によると、磁気ストライプ2aに磁気データが記録されていなくても、プリヘッド9を通過する磁気ストライプ2aがプリヘッド9に接触する場合には、プリヘッド9と磁気ストライプ2aとの接触が始まるとき、および、プリヘッド9と磁気ストライプ2aとの接触が終わるときに、プリヘッド9の出力信号のピーク値が所定の閾値を超える場合があることが明らかになった。すなわち、磁気ストライプ2aに磁気データが記録されていなくても、プリヘッド9を通過する磁気ストライプ2aがプリヘッド9に接触する場合には、プリヘッド9の出力信号のピーク値が2回、閾値を超える場合があることが明らかになった。したがって、プリヘッド9に磁気ストライプ2aが接触することを前提として、磁気ストライプ2aに磁気データが記録されていることを適切に判別するためには、条件1で測定したプリヘッド9の出力信号および条件3で測定したプリヘッド9の出力信号において、閾値を超えるピーク値の数が少なくとも3個を超える傾斜角度θであることが好ましい。そのため、本形態では、傾斜角度θは、10°から75°の範囲に設定されている。
【0042】
また、条件1で測定したプリヘッド9の出力信号および条件3で測定したプリヘッド9の出力信号において、閾値を超えるピーク値の数がより多い傾斜角度θが好ましい。また、傾斜角度θが大きくなるにしたがって、プリヘッド9の先端部9bの、ギャップ方向の角部9c(
図3(A)参照)が磁気ストライプ2aに接触する際に、磁気ストライプ2aに傷が発生するおそれが高くなる。すなわち、プリヘッド9の大半は、ギャップ方向と直交する方向で磁気ストライプ2aに対して摺動するため、ギャップ方向と直交する方向において磁気ギャップ9aが頂点となる凸曲面状に形成されており、ギャップ方向で磁気ストライプ2aに対して摺動することを目的として作られているプリヘッド9は少ないため、傾斜角度θが大きくなると、摺動することを目的としていない角部9cが磁気ストライプ2aに接触して、磁気ストライプ2aに傷が発生するおそれが高くなる。そのため、本形態では、条件1で測定したプリヘッド9の出力信号および条件3で測定したプリヘッド9の出力信号において、閾値を超えるピーク値の数が比較的多くなり、かつ、比較的角度の小さい15°から25°の範囲が、具体的な傾斜角度θとして設定されている。さらに、本形態では、15°から25°の範囲の中で一番角度の小さい15°が、より具体的な傾斜角度θとして設定されている。
【0043】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、カード2に接触するプリヘッド9がカード挿入部4に配置されている。そのため、本形態では、プリヘッド9での検知結果に基づいて、磁気ストライプ2aが形成されるカード2の裏面が下側を向いた状態でカード2が挿入口3から挿入されたのか、それとも、カード2の裏面が上側を向いた状態でカード2が挿入口3から挿入されたのかを検知することが可能になる。すなわち、本形態では、プリヘッド9での検知結果に基づいて、表裏の向きが正しい状態でカード2が挿入されたことを検知することが可能になる。
【0044】
また、本形態では、プリヘッド9のギャップ方向が左右方向に対して傾いているため、上述のように、磁気ストライプ2aに磁気データが記録されていれば、磁気ストライプ2aがプリヘッド9に接触しながらプリヘッド9を通過するときの磁気データにおける磁化反転をプリヘッド9で検知することが可能になる。すなわち、本形態では、プリヘッド9での検知結果に基づいて、磁気データが記録されたカード2が挿入されたことを検知することが可能になる。
【0045】
また、上述のように、磁気ストライプ2aに磁気データが記録されていなくても、プリヘッド9に磁気ストライプ2aが接触する場合には、プリヘッド9の出力信号のピーク値が2回、閾値を超える場合があるが、本形態では、制御部12は、閾値を超えるピーク値の数がn個以上(nは3以上の整数)となるときに、磁気ストライプ2aに磁気データが記録されていると判別しているため、磁気ストライプ2aに磁気データが記録されていることを適切に判別することが可能になる。
【0046】
本形態では、ギャップ方向の傾斜角度θは、10°から75°の範囲に設定されている。そのため、本形態では、75bpiの磁気データまたは210bpiの磁気データが磁気ストライプ2aに記録されていれば、上述のように、プリヘッド9の出力信号において閾値を超えるピーク値の数が少なくとも3個を超える。したがって、本形態では、国際規格やJIS規格によって規定されたカード2に磁気データが記録されていることを適切に判別することが可能になる。
【0047】
また、本形態では、ギャップ方向の傾斜角度θが15°から25°の範囲に設定されているため、上述のように、75bpiの磁気データまたは210bpiの磁気データが磁気ストライプ2aに記録されているときのプリヘッド9の出力信号の、閾値を超えるピーク値の数を多くすることが可能になるとともに、プリヘッド9の傾きに起因する磁気ストライプ2aの傷の発生を抑制することが可能になる。したがって、本形態では、磁気ストライプ2aの傷の発生を抑制しつつ、国際規格やJIS規格によって規定されたカード2に磁気データが記録されていることを適切に判別することが可能になる。
【0048】
本形態では、プリヘッド9は、正しい向きで挿入されたカード2の磁気ストライプ2aの、ポストアンブルが記録された部分が通過する位置に配置されている。そのため、本形態では、磁気ストライプ2aに記録される磁気データの内容にかかわらず、プリヘッド9の出力信号を安定させることが可能になる。したがって、本形態では、磁気ストライプ2aに磁気データが記録されていることをより適切に検知することが可能になる。また、本形態では、重要なカードデータが記録される磁気ストライプ2aの中心部分にプリヘッド9が接触しないため、プリヘッド9の傾きに起因して仮に磁気ストライプ2aに傷が発生したとしても、磁気ストライプ2aの中心部分での傷の発生を防止することができる。
【0049】
本形態では、金属検知機構10がカード挿入部4の左端側に配置され、プリヘッド9がカード挿入部4の右端側に配置されている。そのため、本形態では、プリヘッド9は、金属検知機構10の励磁用コイルが発生させる磁界の影響を受けにくくなる。したがって、本形態では、カード挿入部4に金属検知機構10が配置されていても、プリヘッド9での検知結果に基づいて、磁気データが記録されたカード2が、表裏の向きが正しい状態で挿入されたことを適切に検知することが可能になる。
【0050】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0051】
上述した形態では、プリヘッド9は、カード挿入部4の右端側に配置されている。この他にもたとえば、金属検知機構10の励磁用コイルが発生させる磁界の影響をプリヘッド9が受けないのであれば、あるいは、カード挿入部4に金属検知機構10が配置されていないのであれば、プリヘッド9は、カード挿入部4の左端側に配置されても良いし、カード挿入部4の左右方向の中央に配置されても良い。ただし、この場合には、プリヘッド9は、正しい向きで挿入されたカード2の磁気ストライプ2aの、プリアンブルが記録された部分が通過する位置に配置されることが好ましい。
【0052】
上述した形態では、カード2は、厚さが0.7〜0.8mm程度の矩形状の塩化ビニール製のカードである。この他にもたとえば、カード2は、厚さが0.18〜0.36mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)カードであっても良いし、所定の厚さの紙カード等であっても良い。また、上述した形態では、カード2の裏面に磁気ストライプ2aが形成されているが、カード2の裏面に代えて、カード2のおもて面2bに磁気ストライプが形成されても良い。たとえば、JISX6302の規格に準拠した磁気ストライプがカード2のおもて面2bに形成されても良い。この場合には、プリヘッド9は、磁気ギャップ9aが上側からカード通過路5に臨むように、カード通過路5の上面側に配置される。