特許第6125511号(P6125511)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6125511
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】医療用導管のための挿入装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/158 20060101AFI20170424BHJP
【FI】
   A61M5/158 500K
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-533393(P2014-533393)
(86)(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公表番号】特表2014-528281(P2014-528281A)
(43)【公表日】2014年10月27日
(86)【国際出願番号】US2012057914
(87)【国際公開番号】WO2013049568
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2015年9月24日
(31)【優先権主張番号】61/541,124
(32)【優先日】2011年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/627,280
(32)【優先日】2012年9月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506221907
【氏名又は名称】アニマス・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ソーレナス・ウィリアム・ジー
(72)【発明者】
【氏名】ブッツ・マリオン・ゲルトラウド
(72)【発明者】
【氏名】デステファノ・マーク・アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】クレメンテ・マシュー
【審査官】 落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−516723(JP,A)
【文献】 特表2001−512992(JP,A)
【文献】 米国特許第6719721(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/158
A61M 31/00
A61M 5/142
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内に導管を挿入するための挿入装置であって、
基部プレートと、
前記基部プレートの第1の表面上に配設される下ハウジングであって、ラッチと、少なくとも1つのガイド支持体と、前記下ハウジングを通る第1のチャネルとを備える、下ハウジングと、
前記装置が非作動状態である間、導管の少なくとも一部分を支持するためのガイドであって、前記下ハウジングと移動可能に係合可能である、ガイドと、
前記下ハウジングの第1の端部に移動可能に取り付けられるクランプであって、前記下ハウジングラッチと解放可能に係合する少なくとも1つの第1のコンポーネントと、前記下ハウジングラッチと解放不可能に係合する第2のコンポーネントとを備える、クランプと、
前記クランプ上にあり、前記ガイドと移動可能に係合される、上ハウジングと、
前記第1のチャネルと連通している第2のチャネルと、
前記第1及び第2のチャネル内の導管と、を備え
少なくとも1つの追加のロックを備える、装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第1のコンポーネントが、前記クランプの第1の表面から延在する少なくとも1つのアクチュエータを備え、前記少なくとも1つの第2のコンポーネントが、前記クランプの第2の表面から延在する少なくとも1つのストライクを備える、請求項1に記載の挿入装置。
【請求項3】
前記クランプストライクが、前記クランプアクチュエータの実質的に反対側に位置する、請求項2に記載の挿入装置。
【請求項4】
前記第2のチャネルが、前記クランプと前記上ハウジングとの間に形成される、請求項1に記載の挿入装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの追加のロックが、前記上ハウジングの前面上における、前記下ハウジングの内表面を摩擦係合するための少なくとも1つのラッチタブと、前記少なくとも1つのラッチタブの解放不可能な係合のための、前記下ハウジングの前記内表面上における少なくとも1つのタブスロットとを含む、請求項に記載の挿入装置。
【請求項6】
前記下ハウジング内表面が、前記少なくとも1つのラッチタブと摩擦係合するための少なくとも1つの可撓性タブ部材を更に含む、請求項に記載の挿入装置。
【請求項7】
前記下ハウジング内表面が、少なくとも1つのスロット付きレリーフを更に含む、請求項に記載の挿入装置。
【請求項8】
前記下ハウジング内表面が、前記少なくとも1つの可撓性タブ部材の両側にスロット付きレリーフを更に含む、請求項に記載の挿入装置。
【請求項9】
前記導管が、可撓性医療用導管である、請求項1又は記載の挿入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国特許法119条及び120条のもと、2012年9月26日出願の米国特許出願第13/627,280号及び2011年9月30日出願の米国特許出願第61/541,124号の優先権の利益を主張し、それらの出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は概して、医療用装置に関する。具体的に、本発明は、体内への物質の注入に有用な挿入装置に関する。
【背景技術】
【0003】
糖尿病は、この疾患に苦しむ人々のライフスタイルを顕著に妨げる可能性があるので、重大な健康上の懸念である。典型的には、より重度な形態の状態、I型又はインスリン依存性糖尿病の治療は、治療しないまま放置するとケトーシスを引き起こす可能性がある高血糖を予防するために、血中のグルコースを制御するためのインスリンを必要とする。糖尿病患者の高血糖はまた、心臓疾患、失明、高血圧、及び腎不全など、糖尿病の長期にわたるいくつかの影響と関連付けられてきた。加えて、インスリン療法の不適切な投与により、昏睡状態及び死亡の原因となり得る低血糖発作を引き起こす可能性がある。
【0004】
異常な血糖値に起因する衰弱させる効果により、インスリン注入ポンプが開発されてきた。これらのインスリン送達装置は、インスリンのリザーバが、注入セットの一部である導管を介して患者に送達されることが可能である必要がある。様々な注入セットが、診断、治療、及び手術方法を実施するために、並びにインスリンを送達するために、身体標的部位へのアクセスを可能にする導管を採用する。例えば、この目的で、剛性針によって皮膚標的部位に挿入される可撓性カニューレが従来採用される。注入セットの使用には、患者の皮膚下の導管の展開と関連した疼痛、不快、及び不安を含む、いくつかの欠点がある。したがって、患者が使用しやすく、皮膚下の適切な深さまで流体搬送導管を迅速かつ確実に挿入し、導管の挿入と関連した不安を最小限に抑える注入セットを有することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本発明の装置の一実施形態の後面斜視図である。
図2図1の装置の頂部正面斜視図である。
図3】導管なしの開放位置にある図1の装置の断面図である。
図4】導管ありの開放位置にある図1の装置の断面図である。
図5】導管なしの閉鎖位置にある図1の装置の断面図である。
図6】導管ありの閉鎖位置にある図1の装置の断面図である。
図7A図1の装置の上ハウジングの頂部正面斜視図である。
図7B図7Aの上ハウジングの側面図である。
図7C図7Aの上ハウジングの正面図である。
図7D図7Aの上ハウジングの内面の底面斜視図である。
図8A図1の装置のガイドコンポーネントの正面斜視図である。
図8B図8Aのガイドコンポーネントの底面斜視図である。
図9A図1の装置のクランプコンポーネントの一実施形態の頂部正面斜視図である。
図9B図9Aのクランプコンポーネント実施形態の側面図である。
図9C図9Aのクランプコンポーネント実施形態の頂面図である。
図9D図9Aのクランプコンポーネント実施形態の底面斜視図である。
図10A図1の装置の下ハウジングコンポーネントの正面斜視図である。
図10B図10Aの下ハウジングの側面図である。
図10C図10Aの下ハウジングの頂面図である。
図11】上ハウジングの一部分が切り取られた、図1の装置の側面図である。
図11A図7の一部分の拡大図である。
図12A】装置作動が開始される際の図7の装置を示す。
図12B】装置が半分閉鎖している際の図7の装置を示す。
図12C】ラッチ係合のロック開始時の図7の装置を示す。
図12D】ラッチ係合をロックする装置の継続を示す。
図12E】閉鎖され、完全にロックされ、展開された位置にある装置を示す。
図13】本発明の装置の別の実施形態の後面斜視図である。
図14】本発明の装置で有用な可撓性医療用導管の正面斜視図である。
図14A図14の導管の近位端の末端図である。
図15A】本発明の装置で有用な力制御及びロッキングコンポーネントの代替実施形態の斜視図である。
図15B図15Aのコンポーネントの正面図である。
図15C】作動時の図15Aのコンポーネントの正面図である。
図15D】装置閉鎖時の図15Aのコンポーネントの正面図である。
図16A】本発明の装置で有用な力制御及びロッキングコンポーネントの更に別の代替実施形態の斜視図である。
図16B図16Aのコンポーネントの正面図である。
図16C】作動時の図16Aのコンポーネントの正面図である。
図16D】装置閉鎖時の図16Aのコンポーネントの正面図である。
図17A】本発明の装置で有用な力制御及びロッキングコンポーネントのなお別の代替実施形態の斜視図である。
図17B図17Aのコンポーネントの正面図である。
図17C】作動時の図17Aのコンポーネントの正面図である。
図17D】装置閉鎖時の図17Aのコンポーネントの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、導管を通して流体、薬物などを送達する目的で、体内に導管を挿入するための挿入装置を提供する。本発明の装置は、ヒト身体の皮下組織への導管の挿入においてその最大の有用性が見出され、体内への可撓性医療用導管の挿入において更に有用性が見出される可能性が高い。装置は、体内への導管の展開前及び後に、例えば、針、カニューレ保護カバーなどの装置のコンポーネントが、装置に挿入されるか、又は装置から取り外される必要がないという点で有利である。加えて、装置は、いったん装置が作動されると、その再使用又は再開放を防止するだけではなく、導管を展開するために、ユーザによって克服されなければならない、作動に対する抵抗力の形態で、ユーザにフィードバックも提供する、ロック及び力制御コンポーネントを含む。ユーザが抵抗力を克服するために印加しなければならない力が、いったん作動が生じると導管を展開するために必要とされる力より大きいため、完全かつ迅速な導管の展開が確実になる。更に別の利点として、装置は、装置がロックする完全な導管展開が生じたときを示すために、ユーザに触覚フィードバックを提供する。
【0007】
図1〜6に示されるように、上ハウジング11、ガイド15、クランプ16、下ハウジング12、及び基部13を有する、本発明の挿入装置10が提供される。本発明の目的で、装置の「頂部」は、上ハウジング11の上面2を指し、「底部」は、基部プレート13の下面14を指す。「近位」は、底部よりも装置の頂部により近いことを意味し、「遠位」は、頂部よりも底部により近いことを意味する。
【0008】
図1に示されるように、上ハウジング11は、ユーザの取り扱いを補助するために、上面2に1つ又は2つ以上の凹部3を有してもよい。上ハウジング11は、クランプ16の上面上にある。クランプ16は、接着、スナップ嵌め、溶接などによって、上ハウジング11に取り付けられてもよい。あるいは、あまり好ましくはないが、上ハウジング及びクランプは、一体型コンポーネントであってもよい。任意に、クランプ16は、これらのコンポーネントを一緒に保持するために、図9Bに示されるように、上ハウジング11の内面の凹部への挿入のための1つ又は2つ以上の支柱8を単独で、又は1つ又は2つ以上の任意のラッチアーム9と組み合わせて、含んでもよい。更に別のオプションとして、図7Dに見られるように、支柱7が上ハウジング11の内面から下向きに延在してもよく、その支柱は、クランプ及び上ハウジングを一緒に接合するために使用され得る。また、任意の上ハウジング側壁6が上ハウジング11の特徴に関して留意され、かつ図7Dに示され、それは、図10Aに示される下ハウジング側壁4と共に、装置へのラインセットコネクタの挿入のためのガイドを提供してもよい。
【0009】
クランプ16は、取り付けが移動可能な取り付けであるという条件で、任意の便利な方法によって下ハウジング12に取り付けられてもよく、クランプ16が上ハウジング11と共に、下ハウジング12に対して上向き及び下向きに移動し、下ハウジング12上での上ハウジング11及びクランプ16の閉鎖を可能にすることができるように、クランプ16が取り付けられることを意味する。好ましくは、クランプ16は、上ハウジング及びクランプが下ハウジングに対して「クラムシェル」のように開閉することを可能にするように、下ハウジング12に枢動可能に又はヒンジにより取り付けられる。示されるように、クランプ16は、1つ又は2つ以上のヒンジピン77によって、下ハウジング12にヒンジにより取り付けられる。図10A〜10Cに見られるように、ヒンジピン77は、下ハウジング12の少なくとも1つの側、又は好ましくは両側に位置する。示されるように、ヒンジピン77は、クランプ16の相補的湾曲部分31内にあり、それと関節結合をなす。任意に、クランプ16は、装置の閉鎖中、クランプ及び下ハウジングを互いに対して安定させることを補助するために、下ハウジング12の溝78に適合し、その中で回転するようにサイズ及び形状決定される、タブ84を含む。
【0010】
下ハウジング12は、基部プレート13の上面5に配設される。好ましくは、基部プレート13は、被検者又は患者の皮膚に取り付ける接着パッチ又はパッドである。あるいは、基部プレート13は、半剛性又は可撓性プレートであってもよく、その皮膚に面する表面又は下面14は、接着剤でコーティングされるか、又はそれに取り付けられる接着パッドを有する。
【0011】
本発明の装置は好ましくは、装置が開放、非作動状態にあるとき、導管の支持のためのガイドを含む。ガイドは、任意の好適なサイズ及び形状を有してもよく、図8A及び8Bに示されるように、ガイド15は、細長い「U型」コンポーネントである。図7Dを参照すると、上ハウジング11には、ガイド15に対して相補的サイズ及び形状を有する範囲を形成する、内側前面37、上ハウジング支柱41、及び上ハウジング導管支持体39が見られ、装置がその完全に展開及び閉鎖した状態にあるとき、ガイド15がこの範囲内に実質的に完全に適合するようにする。クランプ16のクランプピン55は、ガイド15の両側の穴45に挿入される。その遠位端において、ガイド15は、装置がその開放、非作動状態にあるとき、下ハウジング上で支持される。例えば、図2〜4に示されるように、装置10がその開放位置にあるとき、ガイド15は、例えば、ガイド支柱25など、下ハウジング上にあるか、又はそれによって支持される、ガイドレッグ44などの1つ又は2つ以上の支持体コンポーネントを含んでもよい。図8Bには、その両側に内部ガイドチャネルがある中央支持体48を含む、ガイド15の内面が示され、それらのチャネルは、側壁内面52、内側前面53、及び中央支持体外側表面51によって境界を画されている。ガイド15の中央支持体48は、湾曲内部チャネル47が示されるように、導管支持体コンポーネントを含み、装置がその開放、非作動状態にあるとき、ガイド中に置かれる導管の部分の経路及び支持体を提供し、それらの部分は、装置がその作動状態からその閉鎖状態に移動する際に、ガイドを通過する。装置10が閉鎖されると、上ハウジング支柱41は、ガイド15の両側の凹部46に沿って下向きに摺動し、上ハウジング11は、下ハウジング12に向かって下向きに移動する。同時に、ガイド15及びガイドレッグ44は、下ハウジング支柱25上を下向きに移動する。
【0012】
ガイド15は、ガイド15と、関節結合をなすハウジング及び導管部分との間の摩擦を低減するために、例えば、シリコーン潤滑油でのコーティングで、コーティングされてもよい。しかしながら、好ましくはガイドは、摩擦低減を促進するために、潤滑性ポリマーから作られる。好適な潤滑性ポリマーは、当該技術分野において良く知られている。好ましくは、潤滑性ポリマーは、ポリオキシメチレンである。
【0013】
図10A〜10Cを参照すると、ガイド支柱25は、個々で、あるいは単一ユニットとして、下ハウジング12の内面67から上向きに生じ、それと一体になっている。上ハウジング11、ガイド15、及び下ハウジング12は全て、装置の作動時、上ハウジング11が下ハウジング12に向かって移動すると、これらの部分が逆入れ子式に倒れるように、サイズ及び形状決定される。図3及び5を参照すると、下ハウジングチャネル85が示され、チャネルは、下ハウジング内に形成され、好ましくはガイド支柱25の間の中心にある。下ハウジングチャネルは、装置の近位部分内に位置する第2のチャネルと連通する。導管は、2つのチャネル内に収納され、装置の作動及び導管の展開時、導管の遠位部分は、下ハウジングチャネルを通って移動し、下ハウジング開口86を出る。
【0014】
図9A〜9D、11、11A、及び12A〜Eを参照すると、装置10は、複合力制御コンポーネントを組み込む。力制御コンポーネントは加えて、いったん導管が展開され、装置が閉鎖されると、装置に対してロックを提供する。したがって、力制御コンポーネントは、下ハウジングラッチと解放可能に係合する、少なくとも1つの第1の部品、及び下ハウジングラッチと解放不可能に係合する、少なくとも1つの第2の部品からなる。示されるように、力制御メカニズムは、クランプ16及びラッチ68からなり、クランプ16は、クランプ16の下面59に固定して取り付けられるか、又はそれと一体になっており、かつそれから延在する、「L」字型クランプアクチュエータ56を含む。クランプストライク57が、クランプ16の上面61から上向きに延在し、好ましくはアクチュエータ56の反対側に位置し、それもまた、クランプ16に固定して取り付けられるか、又はそれと一体になっていてもよい。1つ又は2つ以上のクランプアーム54が、前面58から外向きに延在し、それから下向きに延在する「L」字型クランプピン55を有する。クランプピン55は、装置がその完全に展開及び閉鎖された状態にあるとき、図1に示される下ハウジング開口部26に入る。
【0015】
クランプ16はまた、上面61と一体的に形成され、それから生じるクランプシート64も含み、それは導管の近位端を保持する。クランプシート64は、導管の近位部分をしっかりと保持するのに好適な任意のサイズ及び形状を有してもよい。支持体65がクランプシート64から前方に延在し、それと一体になっており、それは、湾曲部分66に延在し、それと一体になっている。図7Dを参照すると、上ハウジング湾曲シート42が上ハウジング11の内面から生じ、それは、上ハウジングがクランプ上にあるとき、クランプシート64を覆い、導管近位端に対する包囲を完了する。上ハウジング導管支持体39は、上ハウジングシート42から前方に延在し、それと一体になっており、その最前部分38において、セクション66へと相補的に湾曲する。導管の本体に対して、図3及び5に示されるチャネル36が、クランプ16のコンポーネント65及び66、並びに上ハウジング11のコンポーネント38及び39によって形成される。
【0016】
装置の力制御コンポーネントに対して、クランプ16のクランプアクチュエータ56は、下ハウジング12のラッチ68と解放可能に係合し、一方で、クランプストライク57は、ラッチ68と解放不可能に係合する。装置10は、1つを有してもよいが、好ましくはそれと相互作用する少なくとも2つのラッチ68及び少なくとも2つのクランプアクチュエータ56を有する。2つ以上のラッチ68が使用される場合、好ましくは、ラッチは、互いから等間隔に離間している。ラッチ68は好ましくは、下ハウジング12の内表面67と一体になっており、それから生じる。ラッチ68は、近位端のラッチアーム69からなり、そこから戻り止めローブ71及び戻り止めピーク72が生じる。戻り止めローブ71と戻り止めピーク72との間には、クランプアクチュエータ56の最遠位端73を捕捉するようにサイズ及び寸法決定される凹部74が形成される。凹部74のサイズ及び寸法は、凹部74における遠位端73に対する「緊密」な適合に必要とされるものよりもわずかに小さいが、力が、凹部74から遠位端73を離すためにユーザによって加えられる必要があるように、少なくとも部分的に凹部74内で遠位端73を保持するのに十分である。
【0017】
使用中、装置10は、例えば図4に示されるように、開放、非展開状態でユーザに送達される。非展開状態において、医療用導管20は、装置内に完全に引き込まれ、その鋭い端部は、露出していない。非展開位置において、クランプアクチュエータ56の端部73は、図11Aに示されるように、凹部74中にある。ユーザは、図12A〜Eに示されるように、標的部位に対して基部プレート13の下面14を配置し、上ハウジング11を下向きに押し、それが下ハウジング12を移動させるようにする。
【0018】
図12A〜12Eを参照すると、十分な力が上ハウジング11に印加されると、装置は作動され、クランプアクチュエータ56の端部73は、下向きに移動し、戻り止めローブ71を係合し始め、その上に圧力を加え、図12Aの小矢印によって示されるように、ラッチ68を前方に偏向させ、クランプアクチュエータ56の端部73の通過を可能にする。端部73及び戻り止めローブ71の係合によって生成される抵抗力は、ユーザによって感じられ、装置を作動させ、導管を展開するために必要とされる力に関して、ユーザに主要なフィードバックを提供し、その力は、クランプアクチュエータ端部が戻り止めローブを通過するために必要とされる力の増加により、医療用導管の完全な展開及び迅速な挿入のための十分な力を確実にする。いったん端部73が戻り止めローブ71を越えると、上ハウジング11の下方運動を継続するために必要とされる力は、著しく低下する。
【0019】
装置作動が継続すると、上ハウジング11は、その下方移動を継続し、完全に閉鎖した位置に達する前に、戻り止めピーク72は、クランプストライク57上でクランプピーク79の前面81を係合し始め、再び抵抗を生み出す。この抵抗を克服するために印加される必要がある力は、ピーク72による前方のラッチアーム68の偏向をもたらす。ユーザは、戻り止めピーク72及び前面81の相互作用によって生成される抵抗を検出し、それは、装置の完全な閉鎖及びロッキングが目前であるというユーザへの指示の役割を果たす。いったんクランプストライクピーク79が十分に下向きに移動し、戻り止めピーク72がストライクピーク79上で捕捉されると、これは、装置10をロックし、装置の閉鎖時に、上ハウジング11が下ハウジング12から離れて上向きに移動することを防止する役割を果たす。
【0020】
当業者は、様々な複合力制御−ロックコンポーネントのいずれも、開示されたクランプ及びラッチと同様の結果をもたらし得ることを認識するであろう。更なる好適なコンポーネントの例が、図15〜17に示される。
【0021】
装置に対する任意かつ好ましい追加のロックが、図1、2、及び図7A〜7Cに示される。上ハウジング11の前面19は、それから外向きに突出する1つ又は2つ以上のラッチタブ21を有する。好ましくは、前面19の側面から等距離で離間した2つのタブ21が使用される。タブ21は、任意の便利なサイズ及び形状を有してもよい。装置10の作動時、上ハウジング11は、下向きに移動し、タブ21は、下ハウジング12の前プレート22の内面23に接触し、ハウジングの閉鎖への摩擦抵抗をもたらす。摩擦抵抗が、ユーザによって印加される上ハウジング11への下方の力によって克服されると、タブ21は、それらがタブスロット24に接触し、それに入るまで内面23に沿って移動する。これが生じるとき、装置は、「カチッ」と音を立てて閉鎖し、再開放することができず、装置に対する第2のロックを提供する。
【0022】
追加のロックに対する代替実施形態が図13に示される。本実施形態では、下ハウジング12の前プレート22の内面23は、内面23から外向き及び下向きに延在し、それに移動可能に取り付けられる、可撓性タブ部材75を有する。可撓性タブ部材75は、その両側にスロット付きレリーフ76を更に有してもよく、かつ好ましくは有し、それは、その中にタブのラッチタブ21を摺動可能に受容するように形状決定された経路を提供する。上ハウジング11が下ハウジング12に向かって下向きに移動し、それと係合すると、タブ21は、可撓性タブ部材75と係合し、それを下ハウジング12の前部に向かって移動させる。上ハウジング11が下ハウジング12上でその完全に配置された位置に達すると、タブ21は、可撓性タブ部材75の下端を通って、内面56内に形成されるスロットであるタブスロット24に移動する。更に別の代替例として、タブ部材は、傾斜部分を含んでもよい。
【0023】
針、カニューレ、及びそれらの組み合わせなど、本発明の装置での使用に好適な任意の導管が使用され得る。加えて、本発明の様々な実施形態に従って使用される導管は、その縦軸に沿ってそこを通るチャネルを有する細長い骨組を含んでもよく、その骨組は、可撓性材料から形成されてもよい。更に別の代替例は、次いでチャネルを形成するために第2の材料でコーティングされる、材料の細長い骨組を提供することである。
【0024】
本発明の装置で有用な導管である、好ましい導管20が図14に示される。より好ましくは、導管20は、可撓性医療用導管である。かかる導管は典型的には、細長い本体部分27、先の尖った又は鋭い遠位端29、及び近位端28を有する。可撓性医療用導管の本体27は、身体の真皮及び皮下組織での使用に適合し、導管のゲージが小さくなること(約30ゲージ以下を意味する)を可能にする弾性率を有する材料から作られる。加えて、材料は好ましくは、耐キンク性を有し、保管中に湾曲又は屈曲位置のままでいることができ、その上、導管の少なくとも一部分が、本発明の装置から完全に展開されたときに実質的に真っ直ぐな形状を取り戻すことを可能にするようなものである。本発明の装置で有用な可撓性医療用導管の本体のための好適な材料の例としては、ニチノール、ポリエチレンエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、アルミニウム、チタン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、ニチノールが使用される。本発明の実施形態に採用されるニチノールは、当業者に既知の技術を使用して、同様に当業者に既知の様々な超弾性特性(例えば、耐キンク性、大きな負荷量に適応する能力、機械的変形応力の解放に続いて元の形状に戻る能力など)を保有するように、有利に前処理又は事前にプログラムされ得る。本発明で有用な可撓性医療用導管は、Nitinol Devices and Components Corporationから入手可能である。
【0025】
示されるように、可撓性医療用導管20は、投薬ポンプの注入コンポーネントなどの関連医療装置コンポーネントへの流体密封接続を提供するように構成される、近位端28を有する。示されるように、近位端28は、穿孔可能セプタム35を含む。任意に、かつ示されるように、近位端28は、クランプシート64への近位端28の固定を補助するようにサイズ及び形状決定される、それから下向きに延在するプロング34を含んでもよい。可撓性医療用導管は、装置内でのその運動を補助するために、好適な潤滑性コーティングでコーティングされてもよい。
【0026】
本発明で有用な可撓性医療用導管は、例えば、それらが、皮膚下の所定の深さに一貫して挿入され得るという点、耐キンク性である一方で無理なく可撓性であるという点、及び、比較的小さな断面積を有するという点において、有益である。例えば、既知の注入セットで使用される典型的なカテーテルは、直径約584マイクロメートルであり、本発明で有用な導管は好ましくは、その典型的な直径の約4分の3以下である。耐キンク性は、比較的薄い壁(約50マイクロメートル以下を意味する)を有する可撓性管の使用を可能にする。加えて、可撓性医療用導管は、本発明の装置の好ましい実施形態の湾曲チャネルに一致し、それを通って移動することができる。
【0027】
図3及び4に示されるように、チャネル36は、上ハウジング11及びクランプ16によって形成される。導管20の近位端28は、クランプシート64及び湾曲シート42によって形成される範囲内で保持され、一方で、導管20の本体27は、チャネル36を通って延在する。装置の開放、非作動状態において、導管本体27の少なくとも一部分は、ガイド15の湾曲チャネル47によって支持され、導管の最遠位端29は、下ハウジング12内に形成されるチャネル85中にある。装置が完全に展開及び閉鎖されるとき、装置内にとどまる導管本体27の部分は、チャネル36及び85中に存在する。
【0028】
装置内のチャネルの内部寸法は、生成される摩擦が最小限で、導管20がそれを通過するようなものである。任意に、チャネルの内面は、医療用導管20の通過を促進し、摩擦を最小限に抑えるために、好適な潤滑性コーティングでコーティングされてもよく、又は潤滑性材料で作られてもよい。
【0029】
上ハウジング11中の開口部18は、導管を薬剤注入ポンプに接続する目的で、導管20の近位端28へのアクセスを提供する。接続は、任意の望ましいメカニズムによって行われてもよいが、好ましくは、流体密封接続である。
【0030】
当業者は、装置が、装置を作動させるために種々の力の印加を必要とするように構築されてもよいことを認識するであろう。好ましくは、装置は、装置を作動させるためにユーザが約5N〜約15Nの力を印加する必要があるように設計される。ラッチ及びクランプの様々な相互作用部品の幾何学的寸法、これらのコンポーネントを構築するために選択される材料、並びに導管に対する寸法、構造材、及びチャネルは全て、装置の作動及び展開に必要な力を決定する。本発明の結果を達成するために、これらの要因のバランスを取ることは、当業者の技能内にある。
【0031】
装置での使用に選択される材料は好ましくは、ポリプロピレン、又はアクリロニトリルブタジエンスチレン、及びメチルメタクリレートアクリロニトリルブタジエンスチレン、並びにそれらの組み合わせを含むブタジエンスチレンである。好ましくは、クランプに使用される材料は、これらのコンポーネントの相互作用を促進するために、上及び下ハウジング並びにラッチに使用されるものよりも剛性である。より好ましくは、クランプに選択される材料は、ポリプロピレンであり、ハウジング及びラッチに使用される材料は、メチルメタクリレートアクリロニトリルブタジエンである。
【0032】
当業者は、種々の表面構成のいずれかも、混合力制御−ロックコンポーネントに使用され得ることを認識するであろう。更に、構造材、幅、及び厚さは、装置の相互作用コンポーネントの力を制御するように変更され得る。コンポーネントの移動経路の形状及び長さは、必要とされる閉鎖力への更なる制御を促進するように制御され得る。図面が、ハウジング上及び内のある特定の位置に配置される力制御−ロックコンポーネント及び追加のロックを示す一方で、機械構造間の協働関係のバリエーションが、当業者によって、上ハウジング及び下ハウジングの間で代替され得る。
【0033】
ラッチ−クランプは、単独で、又は装置の追加のロック特徴と組み合わせて、針及びシリンジなどの医療用挿入装置の再使用としばしば関連付けられる、細菌及び疾病のまん延を回避する。更に、これらのロッキング特徴はまた、閉鎖及びロッキングが生じるとき、聞こえる「カチッという音」を生成し、導管移動、したがって、患者への導管の挿入の完了を確認する。
【0034】
〔実施の態様〕
(1) 体内に導管を挿入するための挿入装置であって、
基部プレートと、
前記基部プレートの第1の表面上に配設される下ハウジングであって、ラッチと、少なくとも1つのガイド支持体と、前記下ハウジングを通る第1のチャネルとを備える、下ハウジングと、
前記装置が非作動状態である間、導管の少なくとも一部分を支持するためのガイドであって、前記下ハウジングと移動可能に係合可能である、ガイドと、
前記下ハウジングの第1の端部に移動可能に取り付けられるクランプであって、前記下ハウジングラッチと解放可能に係合する少なくとも1つの第1のコンポーネントと、前記下ハウジングラッチと解放不可能に係合する第2のコンポーネントとを備える、クランプと、
前記クランプ上にあり、前記ガイドと移動可能に係合される、上ハウジングと、
前記第1のチャネルと連通している第2のチャネルと、
前記第1及び第2のチャネル内の導管と、を備える、装置。
(2) 前記少なくとも1つの第1のコンポーネントが、前記クランプの第1の表面から延在する少なくとも1つのアクチュエータを備え、前記少なくとも1つの第2のコンポーネントが、前記クランプの第2の表面から延在する少なくとも1つのストライクを備える、実施態様1に記載の挿入装置。
(3) 前記クランプストライクが、前記クランプアクチュエータの実質的に反対側に位置する、実施態様2に記載の挿入装置。
(4) 前記第2のチャネルが、前記クランプと前記上ハウジングとの間に形成される、実施態様1に記載の挿入装置。
(5) 少なくとも1つの追加のロックを備える、実施態様1に記載の挿入装置。
【0035】
(6) 前記少なくとも1つの追加のロックが、前記上ハウジングの前面上における、前記下ハウジングの内表面を摩擦係合するための少なくとも1つのラッチタブと、前記少なくとも1つのラッチタブの解放不可能な係合のための、前記下ハウジングの前記内表面上における少なくとも1つのタブスロットとを含む、実施態様5に記載の挿入装置。
(7) 前記下ハウジング内表面が、前記少なくとも1つのラッチタブと摩擦係合するための少なくとも1つの可撓性タブ部材を更に含む、実施態様6に記載の挿入装置。
(8) 前記下ハウジング内表面が、少なくとも1つのスロット付きレリーフを更に含む、実施態様7に記載の挿入装置。
(9) 前記下ハウジング内表面が、前記少なくとも1つの可撓性タブ部材の両側にスロット付きレリーフを更に含む、実施態様7に記載の挿入装置。
(10) 前記導管が、可撓性医療用導管である、実施態様1、2、又は5に記載の挿入装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図11
図11A
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図13
図14
図14A
図15A
図15B
図15C
図15D
図16A
図16B
図16C
図16D
図17A
図17B
図17C
図17D