特許第6125610号(P6125610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6125610代謝障害、高脂血症、糖尿病、脂肪性肝疾患及びアテローム性動脈硬化症の治療のための新規コレステロール代謝物、5−コレステン−3β,25−ジオールジスルファート(25HCDS)
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6125610
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】代謝障害、高脂血症、糖尿病、脂肪性肝疾患及びアテローム性動脈硬化症の治療のための新規コレステロール代謝物、5−コレステン−3β,25−ジオールジスルファート(25HCDS)
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/575 20060101AFI20170424BHJP
   C07J 31/00 20060101ALI20170424BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20170424BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20170424BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20170424BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20170424BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20170424BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20170424BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20170424BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20170424BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20170424BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   A61K31/575
   C07J31/00CSP
   A61P3/06
   A61P3/10
   A61P9/10 101
   A61P1/16
   A61P29/00
   A61K9/14
   A61K9/20
   A61K9/48
   A61K9/19
   A61K9/08
【請求項の数】18
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2015-505762(P2015-505762)
(86)(22)【出願日】2013年3月15日
(65)【公表番号】特表2015-512937(P2015-512937A)
(43)【公表日】2015年4月30日
(86)【国際出願番号】US2013031861
(87)【国際公開番号】WO2013154752
(87)【国際公開日】20131017
【審査請求日】2016年2月23日
(31)【優先権主張番号】61/623,414
(32)【優先日】2012年4月12日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/623,203
(32)【優先日】2012年4月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502066627
【氏名又は名称】ヴァージニア コモンウェルス ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(72)【発明者】
【氏名】レン,シュンリン
【審査官】 伊藤 清子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/047022(WO,A1)
【文献】 Metabolism, 2012 Jun, Vol.61, No.6, pp.836-845,Epub 2012 Jan
【文献】 Atherosclerosis, 2011, Vol.214, No.2, pp.350-356
【文献】 Biochem. Biophys. Res. Commun., 2007, Vol.360, No.4, pp.802-808
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/575
A61K 9/08
A61K 9/14
A61K 9/19
A61K 9/20
A61K 9/48
A61P 1/16
A61P 3/06
A61P 3/10
A61P 9/10
A61P 29/00
C07J 31/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)式
【化1】
の5-コレステン-3,25-ジオールジスルファート(25HCDS)又は(ii)製薬上許容されるその塩である化合物を含む医薬組成物。
【請求項2】
前記化合物が
【化2】
である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
脂質の低減が必要な対象におけるその低減方法、コレステロール及び脂質の生合成の低減が必要な対象におけるその低減方法、炎症の低減が必要な対象におけるその低減方法、糖尿病の治療が必要な対象におけるその治療方法、高脂血症の治療が必要な対象におけるその治療方法、アテローム性動脈硬化症の治療が必要な対象におけるその治療方法、脂肪性肝疾患の治療が必要な対象におけるその治療方法、又は炎症性疾患の治療が必要な対象におけるその治療方法において使用するための、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記方法において、
- 前記化合物が前記対象の体重に基づき0.1mg/kgから100mg/kgの範囲の量で投与されるか、若しくは前記化合物が前記対象の体重に基づき1mg/kgから10mg/kgの範囲の量で投与され、及び/又は
- 投与が経口投与、腸内投与、舌下投与、経皮投与、静脈内投与、腹膜投与、非経口投与、注射、皮下注射及び筋肉注射による投与のうち少なくとも1つを含む、
請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
脂質代謝障害または炎症性疾患を治療するための、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
脂質代謝障害が、高脂血症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、または脂肪性肝疾患である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項8】
単離された化合物である、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
実質的に純粋である、請求項7又は8に記載に化合物。
【請求項10】
である請求項7から9のいずれかに記載の化合物。
【請求項11】
- 粉末形態、及び/又は
- 凍結乾燥形態
である、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
(i)請求項1又は2に記載の化合物、及び(ii)生理学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体を含む医薬組成物。
【請求項13】
前記組成物が単位投与形態で製剤化されている、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
- 前記組成物が固形であるか、又は
- 前記組成物が固形であり、かつ散剤、錠剤、カプセル剤又はトローチ剤の形態であるか、又は
- 前記組成物が固形であり、かつ増量剤と一緒に凍結乾燥形態で化合物を含み、前記組成物が、場合により密封されたバイアル、アンプル、注射器若しくは袋中に存在する、請求項12又は13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
液体である担体を含み、かつ場合により
- 化合物が前記液体中に溶解若しくは分散されている、及び/又は
- 前記液体が水性である、及び/又は
- 前記液体が注射用滅菌水若しくはリン酸緩衝生理食塩水である、及び/又は
- 前記組成物がバイアル、アンプル、注射器若しくは袋に密封されている
請求項12又は13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
25-ヒドロキシコレステールを三酸化硫黄の供給源と反応させるステップと、場合により、得られた5-コレステン-3,25-ジオールジスルファート(25HCDS)から製薬上許容される塩を形成するステップとを含む、請求項1又は2に記載の化合物の製造方法。
【請求項17】
三酸化硫黄の供給源が三酸化硫黄アミン錯体である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記化合物と前記の生理学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体とを組み合わせるステップを含む、請求項12から15のいずれかに記載の医薬組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、新規コレステロール代謝物、5-コレステン-3β,25-ジオールジスルファート(25HCDS)及びその使用に関する。詳細には、本発明は、脂質代謝障害及び炎症性疾患、例えば高脂血症、糖尿病、脂肪性肝疾患及びアテローム性動脈硬化症の予防及び治療のための25HCDSを提供する。
【背景技術】
【0002】
肝臓は、脂質恒常性の維持に重要な役割を果たしている。肝組織に脂質が蓄積すると、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に至る。NAFLDは、米国の全人口のほぼ4分の1に影響を与え、重大な硬変及び肝細胞癌に発展し得る。NAFLDの範囲は、単純な非進行性脂肪症から、肝硬変及び肝細胞癌をもたらす進行性非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に及ぶ。NAFLDの発症機序は、2段階のプロセスとして捉えられている。第1段階は、肝細胞中でのトリグリセリド及び付帯する脂質の蓄積である。第2段階は肝炎の発生である。NAFLDの顕著な特徴は、肝臓内トリグリセリド蓄積の増加である。脂質レベルの低下は、NAFLD治療成功の重要要素である。哺乳類において、ステロール調節配列結合タンパク1c(SREBP-1c)は優先的に脂質合成遺伝子発現を制御し、脂肪酸及びトリグリセリドの恒常性を調節する。脂肪酸生合成及び脂肪性肝疾患発症におけるその役割は、十分に実証されている。しかし、現在、承認されたNAFLD治療法はない。
【0003】
オキシステロールは、コレステロール恒常性及び脂質代謝の多様なポイントで作用し得る。オキシステロール受容体、LXRは、脂質代謝におけるステロール調節転写因子である。LXRの活性化は、ABCA1及びABCG5/8を介してコレステロール排出及びクリアランスの発現を刺激するだけでなく、SREBP-1c発現の上方調節も行い、次いでSREBP-1cが少なくとも32の、脂質の生合成及び輸送に関係する遺伝子を調節する。したがって、合成配位子によるLXRの活性化は、血清中コレステロールを、アテローム性動脈硬化症を防止する濃度にまで低減し得る一方、活性化は、SREBP-1cの活性化を介した脂肪酸及びトリグリセリドの合成に起因する肝脂肪変性及び高トリグリセリド血症ももたらす。肝細胞は脂肪酸をトリグリセリドの形態で貯蔵する能力が限られている。その能力を超えると、細胞損傷が発生する。過剰な量の細胞内遊離脂肪酸は活性酸素種(ROS)の産出を誘発し、脂肪毒性及び炎症性シグナル伝達経路の活性化を引き起こし、最終的にアポトーシスをもたらす。
【0004】
5-コレステン-3β,25-ジオール3スルファート(25HC3S)は最近、初代ラットの肝細胞核中で特定されたオキシステロールである。25HC3Sは、WO 2006/047022で開示されている。このオキシステロールは、オキシステロール硫酸化による25-ヒドロキシコレステロール(25HC)からのステロールスルホトランスフェラーゼ、SULT2B1bによって合成され得る。類似のコレステロール代謝物、5-コレステン-3β,25-ジオール3β-スルファート(25HCβS)の体外投与は、SREBP-1及びSREBP-2両方の発現を減少させ、SREBP-1cの処理を阻害し、且つアセチル-CoAカルボキシラーゼ-1(ACC-1)、脂肪酸シンターゼ(FAS)及び3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoAレダクターゼ(HMGR)を含む、脂質代謝に関係する鍵酵素の発現を抑制し、続いて中性脂肪及びコレステロールの濃度を減少させる。
【0005】
その結果は、25HC3SがLXRアンタゴニスト及びコレステロール満腹シグナルとして作用し、LXR/SREBP信号伝達阻害を介して脂肪酸及びトリグリセリド合成経路を抑制することを示す。さらに、25HC3SはIκBβ発現を増加させ、TNFα誘導性IκBβ分解を阻害し、核NFκB濃度を減少させる。対照的に、25HCは反対の形で作用して、IκBβ分解及び核NFκB蓄積を誘発する。これらの結果は、25HC3Sが炎症応答にも関係し、炎症経路と脂質恒常性調節との間の関連性を表わし得ることを示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2006/047022号
【発明の概要】
【0007】
別の調節コレステロール代謝物、5-コレステン-3β,25-ジオールジスルファート(25HCDS)が現在、特定されている。25HCDSに関する研究は、この自然発生代謝物の発現減少が、肝細胞及びマクロファージにおける脂質蓄積及び細胞損傷の両方に重要な役割を果たすことにより、代謝障害の病因に寄与することを示す。25HCDSを肝細胞及びマクロファージの培地に添加したところ、ステロール調節配列結合タンパク(SREBP)のmRNA濃度が減少し、SREBPの処理が阻害された結果、脂質生合成に関係する鍵酵素が下方調節され、肝細胞及びマクロファージ中での細胞内脂質濃度が減少した。25HCDSはまた、ペルオキシソーム増殖活性剤受容体(PPAR)、IκBの発現、及びペルオキシソーム増殖活性剤受容体1アルファ(PGC-1α)のmRNA濃度を増加させ、核NFκB濃度を減少させ、炎症性サイトカイン発現及び分泌を低減させた。重要なことに、in vivo研究は、25HCDS投与は毒性を示すことなく肝臓中性脂質を20から35%減少させることを示した。
【0008】
このように、新たに発見されたコレステロール代謝物25HCDSは、PPARγ/IκB/NFκB信号伝達経路を介した炎症応答抑制に加え、in vitro及びin vivoでの肝細胞及びマクロファージにおけるコレステロール及び脂質の生合成を阻害する、真のPPARγアゴニスト及びLXRアンタゴニストとして機能する。本発明の実施例に記載のとおり化学合成された25HCDSは、その結果、高脂血症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、脂肪性肝疾患などを含む、脂質代謝障害及び炎症性障害の治療及び予防のための医薬品として使用することができる。
【0009】
本発明の他の特徴及び優位性は、以下の発明を実施するための形態に記載され、また部分的に、発明を実施するための形態から明らかとなり、或いは本発明の実施により学習され得る。本発明は、発明を実施するための形態及び本発明の請求項で特に指摘される組成物及び方法によって実現及び達成される。
【0010】
一態様において、本発明は、医薬品としての、式
【0011】
【化1】
【0012】
の(i)5-コレステン-3,25-ジオールジスルファート(25HCDS)及び/又は製薬上許容されるその塩である化合物の使用を提供する。
【0013】
一部の態様において、該化合物は
【0014】
【化2】
【0015】
である。
【0016】
一部の態様において、本発明は、脂質の低減が必要な対象におけるその低減方法、コレステロール及び脂質の生合成の低減が必要な対象におけるその低減方法、炎症の低減が必要な対象におけるその低減方法、糖尿病の治療が必要な対象におけるその治療方法、高脂血症の治療が必要な対象におけるその治療方法、アテローム性動脈硬化症の治療が必要な対象におけるその治療方法、脂肪性肝疾患の治療が必要な対象におけるその治療方法、及び/又は炎症性疾患の治療が必要な対象におけるその治療方法における、該化合物の使用を提供する。さらなる態様において、本発明は、脂質の低減が必要な対象におけるその低減、コレステロール及び脂質の生合成の低減が必要な対象におけるその低減、炎症の低減が必要な対象におけるその低減、糖尿病の治療が必要な対象におけるその治療、高脂血症の治療が必要な対象におけるその治療、アテローム性動脈硬化症の治療が必要な対象におけるその治療、脂肪性肝疾患の治療が必要な対象におけるその治療、又は炎症性疾患の治療が必要な対象におけるその治療のための医薬品を製造するための、化合物
【0017】
【化3】
【0018】
の使用を提供する。
【0019】
さらに他の態様において、本発明は、対象を治療する方法であって、化合物
【0020】
【化4】
【0021】
の有効量の前記対象に投与するステップを含み、脂質の低減が必要な対象におけるその低減方法、コレステロール及び脂質の生合成の低減が必要な対象におけるその低減方法、炎症の低減が必要な対象におけるその低減方法、糖尿病の治療が必要な対象におけるその治療方法、高脂血症の治療が必要な対象におけるその治療方法、アテローム性動脈硬化症の治療が必要な対象におけるその治療方法、脂肪性肝疾患の治療が必要な対象におけるその治療方法、及び炎症性疾患の治療が必要な対象におけるその治療方法から選択される、前記方法を提供する。一部の態様において、該化合物は前記対象の体重に基づき0.1mg/kgから100mg/kgの範囲の量で投与されるか、又は該化合物は前記対象の体重に基づき1mg/kgから10mg/kgの範囲の量で投与される、及び/又は投与は経口投与、腸内投与、舌下投与、経皮投与、静脈内投与、腹膜投与、非経口投与、注射、皮下注射及び筋肉注射による投与のうち少なくとも1つを含む。
【0022】
一態様において、本発明は、(i)式
【0023】
【化5】
【0024】
の5-コレステン-3,25-ジオールジスルファート(25HCDS)及び/又は製薬上許容されるその塩である化合物を提供する。一態様において、該化合物自体及び製薬上許容されるその塩が提供される。別な態様において、提供されるのは、医薬品としての、該化合物及び製薬上許容されるその塩の使用である。一部の態様において、該化合物は
【0025】
【化6】
【0026】
である。
【0027】
一部の態様において、該化合物は単離された化合物である。他の態様において、該化合物は実質的に純粋である。さらに他の態様において、該化合物は固形である。固形は粉末形態、及び/又は凍結乾燥形態であってもよい。
【0028】
本発明はさらに、式
【0029】
【化7】
【0030】
の(i)5-コレステン-3,25-ジオールジスルファート(25HCDS)及び(ii)生理学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体である化合物を含む医薬組成物を提供する。
【0031】
一部の態様において、該化合物は
【0032】
【化8】
【0033】
である。
【0034】
一部の態様において、該医薬組成物は単位投与形態で製剤化される。他の態様において、該医薬組成物は固形である。該組成物の固形は、該医薬組成物が散剤、錠剤、カプセル剤又はトローチ剤の形態である組成物であるか、又は該組成物は増量剤と併せた凍結乾燥形態、場合によりバイアル、アンプル、注射器又は袋に密封された組成物を含む。一部の態様において、該医薬組成物は液体である担体を含む。この態様において、該化合物は液体中に溶解若しくは分散されていてもよく、及び/又は液体は水性であり、及び/又は液体は注射用滅菌水若しくはリン酸緩衝生理食塩水であり、及び/又は該組成物はバイアル、アンプル、注射器若しくは袋に密封されている。
【0035】
本発明はまた、化合物
【0036】
【化9】
【0037】
を製造する方法であって、25-ヒドロキシコレステールと三酸化硫黄の供給源とを反応させるステップと、場合により、得られた5-コレステン-3,25-ジオールジスルファート(25HCDS)から製薬上許容される塩を形成するステップを含む方法を提供する。一部の態様において、三酸化硫黄の供給源は三酸化硫黄アミン錯体である。他の態様において、該方法は、該化合物と生理学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体とを組み合せるステップを含む。
【0038】
前述のとおり、本発明は特に、脂質の低減が必要な対象におけるその低減方法、コレステロール及び脂質の生合成の低減が必要な対象にその低減方法、炎症の低減が必要な対象におけるその低減方法、糖尿病の治療が必要な対象におけるその治療方法、高脂血症の治療が必要な対象におけるその治療方法、アテローム性動脈硬化症の治療が必要な対象におけるその治療方法、脂肪性肝疾患の治療が必要な対象におけるその治療方法、又は炎症性疾患の治療が必要な対象におけるその治療方法において使用するための特定した化合物を提供する。誤解を避けるために記すと、この態様において、本発明は特定した方法において医薬品として使用するための特定した化合物を提供し得る。さらに、本発明は特定した方法において活性治療成分として指定される化合物を提供し得る。さらに、本発明は、特定した方法を含む治療方法によるヒト又は動物の対象の治療方法において使用するための特定した化合物を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】陰イオン三重四重極質量分析法(negative ion-triple quadruple mass spectrometry)による5-コレステン-3β,25-ジオールジスルファートとしての核オキシステロールの同定であって、HPLC/MSネガティブフルスキャンスペクトル、HPLC-MS溶出プロファイルをm/z583及びm/z561の生成物スキャンスペクトルから質量イオン80により選別したものを示す。
図2】化学合成された25HCDSの分析。生成物のMSスペクトル。
図3】25HCDSの1H NMRスペクトル。矢印は化合物の3位にあるプロトンと、出発材料及び生成物中での該化合物の共鳴化学シフトを示す。
図4】25HCDSの13C NMRスペクトル。矢印は化合物の3位及び25位の炭素と、出発材料及び生成物中での該化合物の共鳴化学シフトを示す。
図5】25HCDSは脂質合成遺伝子発現を調節する。図5AはリアルタイムRT-PCR分析を示すグラフであって、記載の濃度で25HCDSによる処理を施されたTHP-1細胞中でのSREBP-1c、ACC及びFASのmRNA濃度を示すグラフであり、図5Bは、SREBP-2、HMG-CoAレダクターゼ及びLDLRのmRNA濃度を示すグラフであり、図5Cは記載の回数、図5Dは記載の濃度で25HCDSによる処理を施されたTHP-1細胞中でのPPARγ及びIκBのmRNA濃度を示すグラフである。発現レベルはGAPDHに対して正規化されている。個々の値は3つの別々の測定結果の平均±標準偏差を表わす。
図6】25HCD3Sの投与がマウスNAFLDモデルにおける肝組織中での脂質蓄積を減少させることを示すグラフである。動物は25HCDSの腹膜注射を3日おきに6週間にわたり受けた。肝性トリグリセリド、遊離脂肪酸、総コレステロール、遊離コレステロール、コレステロールエステル、遊離脂肪酸及びトリグリセリドは、実施例に記載のとおり判定された。個々のレベルはタンパク質濃度によって正規化された。値は全て平均±標準偏差として表わされ、記号「*」はp<0.05とHFD供給ビヒクル処理を施されたマウス肝臓の対比を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0040】
新規の調節コレステロール代謝物、5-コレステン-3β,25-ジオールジスルファート(25HCDS)が現在、特定されている。25HCDSの投与は、マウスのNAFLDモデルにおけるin vivoでのLXR-SREBP-1c信号伝達経路を介して、PPARγ、PPARγ活性化補助因子1アルファ(PGC-1α)及びIκBの発現を大幅に増加させ、肝臓のトリグリセリド濃度及びコレステロール濃度を減少させた。これらの所見は、25HCDSが脂質代謝及び炎症応答に関係する強力な調節薬であることを実証する。
【0041】
本発明はこのように、脂質代謝障害及び炎症性疾患の治療及び予防のため25HCDSを使用する方法を提供する。一部の態様において、該方法は、25HCDSによる治療が必要な対象における25HCDS濃度を上昇させるための、及び/又は脂質代謝の有益な変化を生じさせるための、治療効果のある用量の25HCDS投与を含む。該方法の実施は概して、脂質代謝障害及びそれに付帯する状態の発症に苦しんでいる又はその発症の危険性のある患者の特定、及び/又は異常な炎症の発症に苦しんでいる又はその発症の危険性のある患者の特定、及び適切な経路による許容される形態での25HCDSの投与を含む。適切な対象の特定は、例えば、該技術分野で知られているような様々な血液検査、肝生検結果、顕性疾患症候群の有無などを用いて達成され得る。治療に適切な対象は、脂質代謝障害及び/又は炎症に苦しんでいる又は苦しむ可能性があると特定された対象を含む。25HCDS及び関連医薬組成物も、本発明により提供される。これらは治療方法において使用され得る。
【0042】
25HCDSは、製薬上許容される塩の形態であってもよい。製薬上許容される塩は、ジ付加塩又はモノ付加塩であってもよい。ジ付加塩は、25HCDS分子の2つのスルファート基それぞれにおける水素原子の喪失によって形成される。モノ付加塩は、25HCDS分子の2つのスルファート基のうち1つのみにおける水素原子(分子の3位又は25位のいずれかの)の喪失によって形成される。
【0043】
製薬上許容される塩は、例えばアルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩など)、アルカリ土類金属(カルシウム塩など)又はアンモニウム塩であってもよい。製薬上許容される塩は、例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、リチウム塩又はアンモニウム塩であってもよい。
【0044】
そのような塩の一例は25HCDSのナトリウム塩、例えば25HCDSの25位でスルファート基上の水素原子の喪失によって形成されるモノ付加塩など、25HCDSのモノ付加塩、即ち式
【0045】
【化10】
【0046】
を有する化合物である。
【0047】
誤解を避けるために記すと、本明細書全体を通じた「25HCDS」への言及は、別段に明示されない限り、製薬上許容される25HCDSの塩を含むという点が強調される。
【0048】
コレステロールは8つのキラル中心を含有することにより、区別可能な多数の立体異性体を生じる。これら8つのキラル中心は25HCDSにも存在する。概して、本発明で使用される25HCDSは単一の立体異性体又はこれら立体異性体のいずれか2つ以上の混合物であってもよい。ただし、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%の25HCDSは式
【0049】
【化11】
【0050】
を有し得る。
【0051】
この式中の8つのキラル中心それぞれにおけるキラリティは、天然のコレステロール中に見られるものと類似していると理解されることになる。よって、この立体異性体は天然の25HCDSのin vivo代謝物の立体異性体に相当する。
【0052】
25HCDS又は製薬上許容されるその塩は、単離された25HCDS又は製薬上許容されるその塩であってもよい。「単離された」とは、ヒト又は動物の対象の体内に含まれるか又は体内から抽出された組織材料内に含まれないことを意味する。例えば、単離された25HCDS又は製薬上許容されるその塩は、細胞内に含まれない。よって、単離された25HCDS又は製薬上許容されるその塩は、それ自体がヒト又は動物対象内に含まれるか又はヒト又は動物対象から抽出された組織材料(例えば、細胞)内に含まれる天然の25HCDSと明確に区別できる。
【0053】
25HCDS又は製薬上許容されるその塩は、実質的に純粋であってもよい。例えば、25HCDS又は製薬上許容されるその塩は、治療方法において使用するための実質的に精製された形態で提供され得る。
【0054】
「実質的に純粋」又は「実質的に精製された」ものである場合、二硫酸オキシステロール(25HCDS又は製薬上許容されるその塩)は、少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%以上が他の化学種を含まない形態であってもよい。実質的に純粋な25HCDS又は製薬上許容されるその塩は、特に、少なくとも約90重量%又は少なくとも約95重量%、より好ましくは少なくとも約98重量%、少なくとも約99重量%、さらに好ましくは少なくとも約99.5重量%又は少なくとも約99.8重量%の25HCDS又は製薬上許容されるその塩を含み得る。
【0055】
25HCDS又は製薬上許容されるその塩は固形であってもよい。例えば、25HCDS又は製薬上許容されるその塩は粉末の形態であってもよい。
【0056】
25HCDS又は製薬上許容されるその塩は、凍結乾燥形態であってもよい。よく知られているとおり、凍結乾燥は典型的に、腐敗しやすい材料を保存するため又は材料をより輸送しやすくために使用される脱水プロセスである。この技法には主に3つの段階、即ち凍結、一次乾燥及び二次乾燥の段階がある。凍結は典型的に凍結乾燥機を使用して行われる。一次乾燥中、圧力が適切な真空レベルの適用によって制御される一方、含有水分を昇華させられるよう、十分な熱が供給される。二次乾燥プロセスでは、水和の水分がさらなる加熱によって除去される。典型的に、さらなる乾燥を促すよう、圧力も低下させる。凍結乾燥プロセスの完了後、密封前に窒素などの不活性ガスによって真空状態を解消することができる、又は材料を真空下で密封することができる。
【0057】
25HCDSを生細胞から単離及び精製することは可能である一方、当業者は、十分な量の二硫酸オキシステロールを生成するには、概して化学的合成手段又は組み換えDNA技術の使用を含む方法(コレステロールの適切な改変を行うためのクローン酵素の使用によるものなど)のいずれかによって、化合物が合成されることを認識することになる。例示的合成スキームが、下記の実施例のセクションに記載されている。
【0058】
より全般的に、25HCDS又は製薬上許容されるその塩は、25-ヒドロキシコレステロールと三酸化硫黄の供給源との反応、及び場合により得られた生成物からの製薬上許容される塩の形成によって合成的に生産され得る。
【0059】
適切な三酸化硫黄の供給源は、25-ヒドロキシコレステロール中に存在する2つのヒドロキシル基(-OH)をサルフェート基(-OSO3H)に変換するために使用され得る。三酸化硫黄アミン錯体は、三酸化硫黄の供給源の1つの例示的な群である。そのような錯体の例は三酸化硫黄トリメチルアミン錯体(TMAS)、三酸化硫黄トリエチルアミン錯体(TEAS)、三酸化硫黄ジメチルアニリン錯体(DMAS)、三酸化硫黄ジメチルホルムアルデヒド錯体(DMFS)、三酸化硫黄ピリジン錯体(PSS)及び三酸化硫黄ポリビニルピリジン錯体(PVPS)を含む。典型的に、25-ヒドロキシコレステロール1モル当たり、1モル〜20モル、例えば2モル〜10モルの、選択された三酸化硫黄供給源(三酸化硫黄アミン錯体など)が使用される。
【0060】
反応は典型的に不活性溶媒中で行われる。溶媒は、例えば無水溶媒であってもよい。そのような溶媒の一例は無水ピリジンである。
【0061】
例えば所望される製薬上許容される塩をジスルファート生成物から生じさせるために、塩基を添加してもよい。そのような塩基の1つは、25HCDSのナトリウム塩の生成に使用され得るNaOHである。代替的試薬(異なる塩基性及び/又は異なるカチオンを有する)が他の製薬上許容される塩の生成に使用され得ることは、容易に理解される。
【0062】
反応温度は典型的に10から100℃の範囲、例えば20から80℃の範囲であってもよい。反応時間は典型的に0.1から24時間の範囲、例えば0.25から5時間の範囲であってもよい。
【0063】
所望の場合、反応が生じた後に反応混合物から生成物を精製してもよい。所望の場合、反応が生じた後に反応混合物から生成物を単離してもよい。
【0064】
25-ヒドロキシコレステロール出発材料は、商業的に入手可能な製品である。あるいは、それはコレステロールの水酸化によって製造され得る(例えばOgawaら、Steroids、74:81-87頁を参照のこと)。したがって、該方法はコレステロールを水酸化して25-ヒドロキシコレステロールを生成する初期ステップを含み得る。
【0065】
25HCDSは純粋な形態で又は製薬上許容される製剤で投与され得る。そのような製剤(組成物)は典型的に25HCDS又は製薬上許容されるその塩及び生理学的に許容される(適合する)賦形剤、希釈剤又は担体/ビヒクルを含む。25HCDSは、例えば製薬上許容される塩(例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、リチウム、アンモニウムなどのアルカリ金属塩)又は他の錯体の形態であってもよい。
【0066】
医薬組成物は無菌である。無菌とは、例えばUSP無菌テストを用いて判定されるような生存能力のある微生物が実質的に存在しない状態を意味する(「米国薬局方」、第30改訂版、米国薬局方会議、2008年、を参照のこと)。無菌状態を維持するため、該医薬組成物は、生存能力のある微生物の侵入を防止可能な密封包装状態で提供され得る。例えば、液体の医薬組成物の場合、組成物はバイアル又はアンプルに密封され得る。
【0067】
製薬上許容される製剤(組成物)は、注射可能な剤形と、固形剤形、例えば、錠剤、トローチ剤、散剤及びカプセル剤の両方、並びにエアロゾル化された剤形の製造に従来から利用されてきた液体材料及び固形材料を含むことが理解されるべきである。該化合物は水性又は油性ビヒクルと共に配合され得る。水は、該組成物を等張性にするための、及び生理学的に許容されるpHを維持するための従来型の緩衝材及び薬剤をも含み得る組成物(例えば注射可能な組成物)を製造するための担体として使用され得る。他の潜在的添加剤(好ましくは概して安全なと見なされるもの[GRAS])は着色剤、香味剤、界面活性剤(TWEEN、オレイン酸など)、溶媒、安定剤、エリキシル剤、及び結合剤又は封入材料(ラクトース、リポソームなど)を含む。固形の希釈剤及び賦形剤はラクトース、スターチ、従来型の崩壊剤、被覆剤などを含む。メチルパラベン又は塩化ベンザルコニウムなどの防腐剤も使用され得る。
【0068】
さらに詳細には、該組成物は固形である場合、散剤、錠剤、カプセル剤又はトローチ剤の形態であってもよい。該組成物は固形である場合、増量剤と併せた凍結乾燥形態の25HCDSを含み得る。増量剤は、体積を増やすために化合物に添加され得る、医薬的に不活性で概して化学的に不活性の物質である。凍結乾燥医薬組成物の製造に使用され、本発明に適する一般的な増量剤は、マンニトール及びグリシンを含む。該組成物は固形である場合、場合によりバイアル、アンプル、注射器又は袋に密封され得る。
【0069】
該医薬組成物が液体担体を含む場合、25HCDSは前記液体中に溶解若しくは分散され得、及び/又は液体は注射用滅菌水若しくはリン酸緩衝生理食塩水であってもよい。該医薬組成物は液体担体を含む場合、バイアル、アンプル、注射器又は袋に密封され得る。
【0070】
製剤に応じて、活性薬剤25HCDSは組成物の約1重量%から約99重量%を構成し、ビヒクルである「担体」は組成物の約1重量%から約99重量%を構成すると予想される。本発明の医薬組成物は、二硫酸オキシステロールの治療効果を阻害しない又はその効果に干渉しない範囲で、適切な製薬上許容される添加剤又は補助剤を含み得る。
【0071】
投与は経口投与、腸内投与、舌下投与、経皮投与、静脈内投与、腹膜投与、非経口投与、注射、皮下注射及び筋肉注射のうち少なくとも1つであってもよい。例えば、投与は、静脈内注射、筋肉注射、皮下注射、皮内注射、腹腔内注射を含む経口投与又は非経口投与、若しくは他の経路(経皮送達、舌下送達、経口送達、直腸送達及び口腔送達、エアロゾル吸入など)であってもよい。好適な実施形態において、投与は経口である。さらに、該化合物の投与は単一の治療形態として、若しくは前述のとおり脂質代謝障害発覚後に対象が実行し得る治療計画のための、例えば脂質低下薬又はコレステロール低下薬、運動及び食事療法など他の療法と併せて行われ得る。患者への25HCDS投与は断続的、若しくは漸進的又は継続的、一定の又は制御された速度であってもよい。加えて、該医薬製剤の投与の時刻及び1日当たり回数は変動する場合があり、また医師など熟練の実務者によって判定されるのが最善である。
【0072】
投与される25HCDSの正確な用量は個々の患者の年齢、性別、体重、総体的健康状態のほか、疾患の正確な病因によっても変動し得る。しかし、概して哺乳類(ヒトなど)への投与の場合、治療効果のある用量は24時間につき体重1kg当たり約0.1から約100mg以上の範囲の化合物であり、通常、24時間につき体重1kg当たり約0.5から約50mgの範囲の化合物、頻繁には24時間につき体重1kg当たり約1から約10mgの範囲の化合物が効果的である。
【0073】
本発明の医薬組成物は単位投与形態で製剤化され得る、即ち該医薬組成物は25HCDSの単位用量を各々が含有する個別分割形態であってもよい。この文脈において、単位用量は例えば約0.1mgから約100mg、又は約0.5mgから約50mg、又は約1mgから約10mgの25HCDSを含み得る。
【0074】
該医薬組成物は、25HCDSと選択された生理学的に許容される賦形剤、希釈剤及び/又は担体とを組み合わせることによって製造され得る。
【0075】
対象は通常ヒトである一方、技術の獣医学的応用も予期されている。
【0076】
他の態様において、25HCDSの濃度はそれが必要な対象において、25HCDSの内生的発現/生成の増加によって上昇する。そうするための例示的方法は、25HCDSの合成を受け持つ1つ以上の酵素を対象に提供することを含む。一部の実施形態では酵素自体が提供され、他の実施形態では酵素をコード化する核酸が提供される。25HCDSの合成に関係する酵素はSULT2Bab及びSULT2B1aで、これらのうち1つ又は両方が、25HCDSの体内濃度を上昇させるために投与され得る。例えば、これらの酵素のうち1つ又は両方を含有し発現させるベクターが提供され得る。例示的ベクターはアデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、複製可能なベクター、ヘルペスウイルスベクターなどを含むがこれらに限定されない。
【0077】
本発明に記載の対象における25HCDS濃度上昇によって予防又は治療され得る脂質代謝障害は、主に様々なウイルスにより生じるが、それだけでなく一部の細菌感染、薬物又は化学物質(毒物、アルコールなど)にも起因する肝炎(肝臓の炎症)、並びに肝線維症など随伴的合併症;自己免疫性疾患(自己免疫性肝炎)又は遺伝性疾患;肥満を伴い、肝臓中の脂肪存在量を特徴とするスペクトラム疾患である非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、及びNAFLDを伴う様々な症候群(肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝硬変、末期肝疾患など);肝硬変、即ち死滅肝細胞の置換に起因する肝臓中の線維性瘢痕組織の形成(肝細胞の死滅は例えばウイルス性肝炎、アルコール依存症又は他の肝臓毒性化学物質との接触によって生じ得る);体内の鉄分蓄積を引き起こし、最終的に肝臓損傷をもたらす遺伝性疾患である血色素症;肝臓癌(原発性肝細胞癌又は胆管癌及び転移性癌など、通常は胃腸管の他の部分から生じる);体内の銅蓄積を引き起こす遺伝性疾患であるウィルソン病;胆管の炎症性疾患であり、自己免疫性と考えられる原発性硬化性胆管炎;小胆管の自己免疫性疾患である原発性胆汁性肝硬変;バッド・キアリ症候群(肝静脈閉塞);遺伝性ビリルビン代謝障害であり、人口の約5%に見られるギルバート症候群;II型糖原病;並びに胆道閉塞症、アルファ-1抗トリプシン欠乏症、アラジール症候群及び進行性家族性肝内胆汁鬱滞などを含む様々な小児肝疾患を含むが、これらに限定されない。加えて、事故や銃撃などに起因する損傷など、外傷による肝臓損傷も治療され得る。さらに、特定の投薬に起因する肝臓障害も予防又は治療することができ、例えば抗不整脈薬のアミオダロン、様々な抗ウイルス薬(ヌクレオシド類似体など)、アスピリン(希に小児のライ症候群の一部として)、コルチコステロイド、メトトレキサート、タモキシフェン、テトラサイクリンなどの薬物は肝臓損傷を引き起こすことが知られている。一部の実施形態において、診断方法及び治療方法は対象における肝臓手術との関連で(術前、術中又は術後など)行われる。例えば、肝臓手術は肝臓移植手術であってもよく、治療対象はドナー又はレシピエントであってもよく、若しくは肝臓手術は罹患又は損傷した肝組織を除去する手術、又は癌性腫瘍を除去する手術などであってもよい。
【0078】
一部の実施形態において、予防又は治療される疾患又は病状は高脂血症、又は高脂血症に起因するものである。「高脂血症」という場合、血液中の脂質及び/又はリポタンパク質の一部又は全部の濃度が異常に上昇した状態を意味する。高脂血症は原発性及び続発性の亜型を含み、原発性高脂血症は通常、遺伝的原因(受容体タンパク質の説突然変異など)に起因し、続発性高脂血症は糖尿病など他の基礎的原因から生じる。ある対象において上昇し、本発明に記載の治療によって低下し得る脂質及び脂質合成物はカイロミクロン、超低比重リポタンパク質、中間比重リポタンパク質、低比重リポタンパク質(LDL)及び高比重リポタンパク質(HDL)を含むが、これらに限定されない。特に、コレステロール濃度上昇(高コレステロール血症)及びトリグリセリド濃度上昇(高トリグリセリド血症)は、アテローム性動脈硬化症に影響を及ぼすことから、血管及び心臓血管の疾患のリスク因子であることが知られている。脂質濃度上昇も、対象を急性膵炎など他の疾患に掛かりやすくし得る。よって本発明の方法は、脂質濃度上昇又はそれに付帯する病状の治療又は予防(予防的治療など)にも使用され得る。そのような病状は、例えば高脂血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、脂肪肝(肝脂肪変性)、メタボリック症候群、心臓血管疾患、冠状動脈心疾患、アテローム性動脈硬化症(即ち動脈硬化性血管疾患又はASVD)、及び関連疾患、急性膵炎、様々な代謝障害、例えば、インスリン抵抗症候群、糖尿病、多嚢胞性卵巣症候群、脂肪性肝疾患、悪液質、肥満、動脈硬化症、脳卒中、胆石、炎症性腸疾患、遺伝性代謝障害(例えば、脂質蓄積症)などを含むが、これらに限定されない。加えて、高脂血症を伴う様々な病状は、発行済み米国特許第8,003,795号(Liuら)及び同第8,044,243号(Sharmaら)に記載のものを含み、両方の特許の全内容が参照により本発明に組み込まれている。
【0079】
一部の実施形態において、予防又は治療される疾患及び病状は炎症、及び/又は炎症を伴う、炎症を特徴とする又は炎症に起因する疾患及び病状を含む。これらは多数のヒト疾患の根底を成す多数の障害を含む。一部の実施形態において、炎症は例えば感染や負傷などに起因する急性の炎症である。他の実施形態において、炎症は慢性である。一部の実施形態において、免疫系が、アレルギー反応及び一部のミオパシー両方に見られるような炎症性障害に関係する。しかし、病因的起源が炎症過程にある様々な非免疫性疾患も、癌、アテローム性動脈硬化症及び虚血性心疾患、並びに以下に挙げる他の疾患を含め、治療され得る。
【0080】
25HCDSを使用して予防又は治療され得る、異常な炎症を伴う障害の例は、尋常性座瘡、喘息、様々な自己免疫性疾患、セリアック病、慢性前立腺炎、糸球体腎炎、様々な過敏症、炎症性腸疾患、骨盤内炎症性疾患、再かん流傷害、リウマチ性関節炎、サルコイドーシス、移植拒絶反応、血管炎及び間質性膀胱炎を含むが、これらに限定されない。また、合法的に処方された薬物及び違法薬物双方の使用の結果として発生する炎症傷害のほか、負の認知によって誘発される炎症又はその結末、例えばストレス、暴力又は剥奪に起因する結末も含まれる。
【0081】
一態様において、予防又は治療される炎症性障害は、アレルギー反応(1型過敏症)、即ち炎症を誘発する不適切な免疫応答の結果である。一般的な例は、アレルゲンに対する皮膚のマスト細胞による過敏応答に起因する花粉症である。重篤な炎症性応答は、アナフィラキシーとして知られる全身性応答へと成熟し得る。他の過敏症反応(2型及び3型)は抗体反応によって仲介され、周辺組織に損傷を与える白血球の誘引による炎症を誘発するが、これも本発明に記載のように治療され得る。
【0082】
他の態様において、炎症性ミオパシーが予防又は治療される。炎症性ミオパシーは、筋肉成分を不適切に攻撃する免疫系によって引き起こされ、筋肉炎症の兆候をもたらす。炎症性ミオパシーは、全身性硬化症など他の免疫障害を併発する場合があり、皮膚筋炎、多発性筋炎及び封入体筋炎を含む。
【0083】
一態様において、本発明の方法及び組成物は肥満を伴うものなど全身性炎症の予防又は治療に使用され得る。そのような炎症に関係する過程は組織炎症と同一であるが、全身性炎症は特定の組織に限定されるのではなく、内皮細胞及び他の臓器系に関係する。全身性炎症は慢性の場合があり、またIL-6(インターロイキン-6)、IL-8(インターロイキン-8)、IL-18(インターロイキン-18)、TNF-α(腫瘍壊死因子アルファ)、CRP(C反応性タンパク)、インスリン、血糖及びレプチンを含む、多数の炎症マーカーの上昇が観察される肥満において幅広く観察される。これらのマーカーのレベル上昇を伴う病状又は疾患は、本発明に記載のように予防又は治療され得る。一部の実施形態において、炎症は、TNF-α、IL-6及びCRPなどサイトカインの全身濃度の2倍乃至3倍の増加が観察される「軽度慢性炎症」として分類され得る。胴囲も全身性炎症性応答と顕著な相関関係にあり、この相関関係における支配的因子は肥満症に誘発される自己免疫応答に起因し、免疫細胞は脂肪性沈着物を細菌や菌類など感染性因子と「誤認」する。全身性炎症は、過食によっても誘発され得る。飽和脂肪を多く含む食事はもとより、高カロリーの食事も、炎症マーカーの増加と関連付けられており、過食が慢性的である場合、応答が慢性となり得る。
【0084】
本発明の様々な側面が、以下の実施例に記載される。ただし、実施例に記載の情報は、本発明の範囲を何らかの形で制限すると見なされるべきではない。
【実施例】
【0085】
新規コレステロール代謝物、5-コレステン-3β,25-ジオールジスルファート(25HCDS)は、in vitro及びin vivoにおいて脂質生合成を減少させ、炎症応答を抑制する
はじめに
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)における脂質代謝の異常調節が蔓延しており、また特に、コレステロール代謝の大幅な摂動も存在することが示されている。そのような摂動が核受容体シグナル伝達を介してNAFLDに繋がり得る潜在的機序は、依然不明確である。本研究において、新規コレステロール代謝物、5-コレステン-3β,25-ジオールジスルファート(25HCDS)が、初代ラットの肝細胞中で特定された。本発明に記載のとおり、25HCDSが現在、化学合成され、その生物学的機能の研究が為されてきた。25HCDS(25μM)をヒトのTHP-1マクロファージ及びHepG2細胞に、またin vivoでマウスのNAFLD動物モデルに投与したところ、PPARγ及びPPARγ活性化補助因子1アルファ(PGC-1α)の発現が増加し、脂質生合成及び炎症性応答に関係する主要なタンパク質の発現が減少した。この投与は肝臓脂質レベルを著しく減少させ、炎症応答を抑制した。定量的RT-PCR及びウェスタンブロット分析の結果、25HCDSはSREBP-1/2のmRNA濃度を大幅に減少し、またACC、FAS及びHMG-CoAレダクターゼを含むそれらの応答遺伝子の発現を抑制し、IκBのmRNA濃度を上昇させ、TNF-α及びIL-βのmRNA濃度を低下させた。これらの結果は、SREBP信号伝達の阻害を介して、またPPARγ、PGC-1α及びIκBの発現増加を介した炎症応答の抑制を介して、脂質生合成阻害が発生したことを示唆する。肝組織中での脂質プロファイルを分析したところ、25HCDSを3日おきに6週間にわたり投与した結果、総コレステロール、遊離脂肪酸及びトリグリセリドがそれぞれ30%、25%及び20%と著しく減少したことが分かった。このように、25HCDSは脂質代謝及び炎症応答に対する強力な調節薬である。
【0086】
材料及び方法
材料:
細胞培養試薬及び補給品をGIBCO BRL(ニューヨーク州Grand Island)から;25-ヒドロキシコレステロールをNew England Nuclear(マサチューセッツ州Boston)から購入した。THP-1及びHepG2細胞をAmerican Type Culture Collection(メリーランド州Rockville)から調達した。リアルタイムRT-PCR用試薬をAB Applied Biosystems(Warrington WA1 4 SR、英国)から調達した。本研究で使用した化学物質の調達元はSigma Chemical Co.(モンタナ州St. Louis)又はBio-Rad Laboratories(カリフォルニア州Hercules)である。SREBP1、SREBP-2及びHMG-CoAレダクターゼに対する多クローン性ウサギ抗体を、Santa Cruz Biotechnology(カリフォルニア州Santa Cruz)から購入した。溶媒は全て、別途記載のない限り、Fisher(ニュージャージー州Fair Lawn)から調達した。増感化学発光(ECL)試薬を、Amersham Biosciences(ニュージャージー州Piscataway)から購入した。テストステロン及び27-ヒドロキシコレステロールを、Research Plus Inc.(ニュージャージー州Bayonne)から購入した。LK6 20 x 20 cm薄層クロマトグラフィー(TLC)プレートを、Whatman Inc.(ニュージャージー州Clifton)から購入した。
【0087】
方法:
5-コレステン-3β,25-ジオールジスルファートの化学合成
全般的手順:前述の方法(Ogawaら、Steroids、74:81-87頁)により、コレステロールから25-ヒドロキシコレステロールを製造した。JASCO(東京都、日本)製FT-IR 460 plus分光計上のKBrディスクでIRスペクトルを取得した。1H及び13CのNMRスペクトルを、Varian 500 Inova(AS500)測定器上で、それぞれ499.62MHz及び125.64MHzにて取得した。エレクトロスプレーイオン化(ESI)プローブを装備したThermo Scientific TSQ Quantum Ultra MSにより、陰イオンモード下で、フローインジェクション低解像度質量(LR-MS)スペクトルを記録した。ESIプローブを装備したThermo Scientific LTQ Qrbitrap Discovery MSを使用して、陰イオンモード下で、高解像度質量(HR-MS)スペクトルを測定した。逆相TLCを、メタノール-水-酢酸混合物(容積比90:10:1)を展開溶媒として使用して、被覆済みRP-18F254Sプレート上で実施した。スポットを50%のH2SO4用い、110℃で加熱して可視化した。Bond Elute C18カートリッジ(10 g; Varian)を、試料精製に使用した。OXONE(登録商標)(ペルオキシ一硫酸カリウム)及びアセトンをSigma-Aldrich Co.(モンタナ州St. Louis、米国)から購入し、他に使用した試薬は全て、HPLCグレードの有機溶媒を除き、最高グレードであった。
【0088】
5-コレステン-3β,25-ジオールジスルファート(25HCDS)の合成:無水ピリジン(300μL)中の25-ヒドロキシコレステロール溶液(30mg、0.07mmol)に対して三酸化硫黄トリメチルアミン錯体(45mg)を添加し、懸濁物を50℃で1時間撹拌した。反応混合物に対して0.1NのメタノールNaOH(100μL)を添加し、混合物を、メタノール(10mL)と水(10mL)で下処理済みのSep Pak C18カートリッジに入れた。カートリッジをPBS(25mL)と水(25mL)で連続洗浄し、次いで保持された25HCDSを60%のメタノール(10mL)で溶出した。アセトニトリルで10倍に希釈した後、溶媒を40℃以下のN2流の下で乾燥状態まで蒸発させ、25HCDSを粉末形態で得た。収量は25mg(60%)であった。
【0089】
細胞培養
ヒトのTHP-1単球及びHepG2細胞をAmerican Type Culture Collection(ATCC、バージニア州Manassas)から購入し、供給業者の手順書に従って維持した。100nMのフォルボール12-ミリスチン13-酢酸(PMA)の添加によって、THP-1単球をマクロファージへと分化させた。細胞が90%コンフルエンスに達した時点で、エタノール中の25HCDS(媒体中のエタノールの最終濃度は0.1%であった)を添加した。タンパク質、mRNA及び脂質の分析向けに、指示された時間に細胞を回収した。
【0090】
HMG CoA発現調節の研究のために、HepG2又はPHHを、メビノリン(50μM)及びメバロン酸(0.5μM)が存在する状態又は存在しない状態で、前述の媒体中で培養した。48時間培養した後、オキシステロールを添加してさらに6時間培養し、次いでmRNA及びタンパク質の濃度を判定するため細胞を採取した。
【0091】
TLC及びHPLCによるコレステロール生合成の判定
示される通りの様々な濃度の25HCDSを含有する媒体中でTHP-1マクロファージ又はHepG2細胞を6時間培養した後、60 mmの皿に入れた細胞に、5μCiの[1-14C]酢酸を含有する同じ新しい媒体3mlを加えた。37℃で2時間培養した後、媒体を除去し、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、記載のラバーポリスマンで採取し、微小遠心管中に回収した。細胞を遠心分離により沈殿させ、ペレットを3回、再懸濁及び沈殿によって3回洗浄した。細胞内留分(ミクロソーム、シトソル及び核)を、前述のとおり単離した(2)。細胞又は細胞内ペレットを、0.3mlのPBS中で再懸濁させた。各試料に対して、1.5μのテストステロンを内部基準として添加した。総脂質を抽出し、3倍量のクロロホルム:メタノール(1:1)の添加によって分離した。[14C]コレステロールとヒドロキシコレステロールをクロロホルム相へと単離し、TLC(トルエン:アセチル酢酸、容積比2:3)上で分離した。[1-14C]酢酸誘導体を、前述の(1)富士フィルム製イメージリーダーBAS-1800 IIにより可視化した。
【0092】
非標識化ステロール生成物の分析向けに、抽出した脂質を2単位のコレステロールオキシダーゼを使用して37℃で20分間培養した。1.5mlのメタノールに続いて0.5mlの飽和KClの添加により、酸化反応を終了させた。3mlのヘキサンを使用して2回、ステロールを抽出した。ヘキサン相を回収し、窒素流下で蒸発させた。前述のとおり(3)、HPLC分析のため、残留物を移動相溶媒中に溶解させた。
【0093】
クロロホルム相中の[1-14C]酢酸誘導体をHPLCにより、HP Series 1100溶媒送達システム(Hewlett Packard)を流速1.3ml/分で使用して、シリカカラム(5μx4.6mmx25cm;Beckman、米国)上で分析した。カラムを平衡化させ、移動相としてのヘキサン:イソプロパノール:氷酢酸(容積比965:25:10)の溶媒系内を通した。指示のある場合を除き、流出物を0.5分おきに回収した(留分当たり0.65ml)。[14C]酢酸誘導体中のカウントを、シンチレーション計数により判定した。カラムを[14C]コレステロール、[3H]25-ヒドロキシコレステロール及び[14C]27-ヒドロキシコレステロールに合わせて較正した。
【0094】
リアルタイムRT-PCRによるmRNA濃度の判定
DNase処理を含め、SV全RNA単離キット(Promega、ウィスコンシン州Madison)を使用して全RNAを単離した。全RNA、2μgを、製造者(Invitrogen、カリフォルニア州Carlsbad)からの推奨とおり、第1ストランドcDNA合成に使用した。ABI 7500高速リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems、カリフォルニア州Foster City)上での指標として適切な染料を使用して、リアルタイムRT-PCRを行った。リアルタイムPCR用のプライマー/プローブセットは全て、TaqMan遺伝子発現アッセイであった(Applied Biosystems、カリフォルニア州Foster City)。β-アクチン及びグリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)の増幅を、内部対照として使用した。相対的なメッセンジャーRNA(mRNA)発現を、比較周期閾値(Ct)法により定量化し、2-ΔΔCtとして表わした。増幅のための適切なプライマーの配列は、例えばRenら、2007年(1)に記載されている。
【0095】
ウェスタンブロット分析
ミクロソーム分画を、前述のとおり単離した(4)。処理後の細胞から抽出したミクロソームタンパク質又は総タンパク質を、7.5%のSDS-ポリアクリルアミド変性ゲル上で分離した。SDS-PAGEに続き、タンパク質を電気泳動的にポリビニリデンフルオライド(PVDF)膜(Millipore)へ移した。次いで膜をブロッキング溶液[PBS、pH7.4、0.1%のTWEEN(登録商標)20(膜タンパク質溶解性非イオン性界面活性剤、C58H114O26)、5%の脱脂粉乳]中で25℃にて60分間ブロッキングした。次いでタンパク質を4℃で終夜、ヒトのSREBP1、SREBP-2又はHMG-CoAレダクターゼに対するウサギ多クローン性IgGを使用して培養した。PBSで洗浄後、洗浄溶液中のpH7.4、0.05%のTWEEN(登録商標)20を含有する、ヤギの抗ウサギIgG-セイヨウワサビペルオキシダーゼ複合体、1:2500を添加し、60分間培養した。Amersham ECL plus Kitを使用して、タンパク質バンドを検出した。正のバンドを、Advanced Image Data Analyzer(Aida Inc.、Straubenhardt、ドイツ)によって定量化した。
【0096】
動物実験
動物実験はMcGuire Veterans Affairs Medical Centerの施設内動物飼育・使用委員会から承認され、ヘルシンキ宣言、実験動物の飼育及び使用に関する指針、並びに適用可能な全ての規制に従って実施された。血清及び肝臓における食事誘導性脂質蓄積に対する25HCDSの効果を検証するため、8週齢のメスのC57BL/6Jマウス(チャールズリバー、マサチューセッツ州Wilmington)に、42%のkcalを脂肪から、43%のkcalを炭水化物から、15%のkcalをタンパク質から、及び0.2%のコレステロールを含有する高脂肪食(HFD)(Harlan Teklad、ウィスコンシン州Madison)を、10週にわたり給餌した。全てのマウスを無菌施設内の同一条件下に収容し、水と餌に自由にアクセスできるようにした。各期間の終了時、マウスにビヒクル溶液(エタノール/PBS;ビヒクル)、又は25HCDS(25mg/kg)を3日おきに6週間にわたり腹腔内注射し、終夜絶食させ、血液試料を採取した。血清トリグリセリド、総コレステロール、高比重リポタンパクコレステロール、グルコース、アルカリ性ホスファターゼ(ALK)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)を、McGuire Veterans Affairs Medical Center附属臨床試験所内で標準的な酵素技法を用いて測定した。血清中のリポタンパク質プロファイルを、下記のとおり、HPLCにより分析した。
【0097】
肝臓脂質の定量化
肝組織を均質化し、脂質をクロロホルムとメタノールの混合物(2:1)で抽出し、濾過した。0.2mlの抽出物を乾燥状態まで蒸発させ、コレステロールアッセイについては10%のTRITON(商標)X-100(C14H22O(C2H4O)n)、非イオン性界面活性剤)を含有する100μlのイソプロパノール(Wako Chemicals USA、バージニア州Richmond)、遊離脂肪酸アッセイについてはNEFA溶液(0.5gのEDTA-Na2、2gのTRITON(商標)X-100、0.76mlの1N NaOH、及び1l当たり0.5gのアジ化ナトリウム、pH6.5)(Wako Chemicals USA、バージニア州Richmond)、又はトリグリセリドアッセイについてはイソプロパノールのみ(Fisher Scientific、ペンシルバニア州Pittsburgh)に溶解させた。アッセイは全て、各製造者の指示に従って行った。個々の脂質濃度を肝臓重量に対して正規化した。
【0098】
統計
データは平均±標準偏差として報告される。記載のある場合、データはt検定分析の対象とされ、p<0.05であれば有意な差があると判定された。
【0099】
結果
初代ラットの肝細胞核における新規コレステロール代謝物の検出
肝細胞核における新規コレステロール代謝物の存在を判定するため、核分画を初代ラットの肝細胞から単離した。各分画のメタノール/水相中のオキシステロールを、LC-MSにより分析した。結果は、主要な分子イオン、m/z561及びm/z583(561+Na)の2つは分子、5-コレステン-3β,25-ジオールジスルファートに十分適合することを示している(図1)。分子はSULT2B1b及びSULT2B1aにより合成される可能性が最も高い。
【0100】
核オキシステロール、5-コレステン-3β,25-ジオールジスルファートの化学合成
その構造を確認し、細胞の脂質恒常性及び炎症反応におけるその役割を研究するため、25HCDSを上記のとおり化学合成し、精製した。
【0101】
合成化合物のMS分析は、基準の核オキシステロールと同じ分子質量イオンであるm/z561及びm/z583(+Na)を示し、また精製された生成物は出発材料の25-ヒドロキシコレステロールであるm/z401は混在していなかった。LR-MS(ESI-ネガティブ), m/z: 583.4(M+Na-2H, 88%), 561.3(M-H, 46%), 481.4(M-SO3-H, 11%), 463.4(M-H2SO4-H, 34%), 431.82(14%), 381.27(100%)(図2). 1H NMR(CD3OD) δ: 0.72(3H, s, 18-CH3), 0.97(3H, d, J 5.0Hz, 21-CH3), 1.03(3H, s, 19-CH3), 1.14(6H, s, 26-及び27-CH3), 4.14(1H, br. m, 3α-H), 5.39(1H, br. s, 6-H)(図3). 13C NMR(CD3OD) δ: 12.45, 19.37, 19.90, 21.82, 22.29, 25.45, 25.51, 27.05, 27.12, 29.39, 29.44, 30.13, 33.16, 33.37, 37.26, 37.32, 37.50, 38.60, 40.52, 41.27, 43.65, 51.78, 57.71, 58.37, 79.98, 85.93, 123.44, 141.71(図4).結果は、合成された分子が5-コレステン-3β,25-ジオールジスルファート(25HCDS)であり、肝細胞核分画において記載の分子に「適合」することを示している。
【0102】
25HCDSは、SREBP信号伝達を介した、ACC、FAS及びHMG-CoAレダクターゼのmRNA濃度の減少により、脂質生合成を阻害する
25HCDSが脂質生合成をどのように阻害するか調査するため、全RNAを処理済みTHP-1マクロファージから単離した。トリグリセリド合成のためのACC及びFAS、並びにマクロファージ及びhepG2細胞におけるコレステロール合成のためのHMG-CoAレダクターゼのmRNA濃度を、リアルタイムRT-PCRにより判定した。図5に示されているように、培地中の細胞に25HCDSを添加した後の、ACC及びFASのmRNA濃度の減少(図5A)、並びにHMG-CoAレダクターゼのmRNA濃度の減少(図5B)は、示されているように濃度依存、及び時間依存(データ不記載)であった。これらの減少は、図5A及び5Bに記載のSREBP1/2の発現減少と整合的であった。これらの結果は、25HCDSがSREBPシグナル伝達を減少させることにより、脂質生合成を減少させることを示す。興味深いことに、25HCDSは直線的にPPARγのmRNA濃度を増加させたと同時に、IκBα発現も早い段階かつ低濃度で増加させた。これらの結果は、25HCDSが25HC3S同様、PPARγ/IκBαシグナル伝達経路を介して炎症応答を抑制することを示唆する。
【0103】
25HCDSの投与がHFD給餌マウスにおける脂質恒常性に及ぼす効果
25HCDSによる長期治療が脂質恒常性に及ぼす効果を研究するため、8週齢のメスのC57BL/6JマウスにHFDを10週間にわたり給餌し、その後、2つの群に分けた。1つの群に25HCDSを、もう1つの群にはビヒクルを、腹膜注射によって3日おきに6週間にわたり施した。治療期間中、マウスにHFDを給餌し、体重とカロリー摂取を観察した。これら2つのパラメータ間に有意な差は観察されなかった(データ不記載)。注射の6週間後、マウスを終夜絶食させ、と殺した。マウスの肝臓重量は、食事に関係なく、有意な差を示さなかった(データ不記載)。
【0104】
25HCDSが肝臓脂質代謝に及ぼす効果を研究するため、肝臓脂質レベル及び関連遺伝子発現レベルを判定した。既に報告されているように、HFD給餌マウスは通常の餌のマウスに比べ、肝臓におけるトリグリセリド、総コレステロール、遊離脂肪酸及びトリグリセリドの濃度上昇を示した(データ不記載)。これらの増加は25HCDS投与によって有意に、図6に示されているように、それぞれ例えば30%、20%及び18%(p<0.05)低減された。加えて、遺伝子発現分析は、表1に示されているように、25HCDS投与は遊離脂肪酸、トリグリセリド及びコレステロール合成に関係する鍵酵素及び受容体の発現を有意に減少させることを示した。
【0105】
脂質代謝の異常調節はしばしば炎症性疾患に関連する。25HCDS治療はTNFα及びIL1βの発現をそれぞれ、有意に50%及び36%抑制した(表2)。これらの結果は、25HC3Sが肝臓炎症応答を抑制し、肝臓損傷及び血清中のアルカリ性ホスファターゼ活性を減少させることを示した肝機能アッセイと整合的である(データ不記載)。興味深いことに、25HCDSは肝臓におけるPGC-1αの発現を倍増させた。このように、25HCDSは、LXR、PPARγ及びPGC-1αのシグナル伝達を介して脂質代謝及び炎症応答を調節すると見られる。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
論考
コレステロール及びトリグリセリド代謝は密接に関連している。オーファン核受容体は、多数の生物学的事象の重要な調節因子である主要な標的遺伝子の発現を調節するリガンド活性化転写因子である。脂肪酸受容体(PPAR)、オキシステロール受容体(LXR)、レチノイン酸受容体(RXR)及びSREBPは、細胞脂質レベルのセンサーの役割を果たし、遺伝子発現の変化を生じさせることにより、脂質恒常性を維持し、脂質蓄積による損傷から細胞を保護する。しかし、受容体活動間のクロストークは依然として不明瞭である。本発明で示されているように、コレステロール代謝物、25HCDSはin vitro及びin vivoにおけるSREBP-1cの発現、処理及び活性を阻害し、PPARγ及びPGC-1αの発現を増加させる。SREBPは脂質生合成を制御し、PPARγは炎症応答を調節し、PGC-1αはエネルギー恒常性を制御することは、十分に実証されている。このように、結果は、25HCDSがこれらのプロセスの強力な調節薬であり、肝臓の脂質恒常性及び炎症応答の維持に重要な役割を果たすことを示す。25HC3Sの投与は、核PPARγタンパク質濃度を高め、炎症応答を抑制するが、PPARγのmRNAはごくわずかに増加させる程度である。対照的に、25HCDSはPPARγ及びPGC-1αのmRNA発現を、時間依存及び濃度依存の形で有意に増加させ、25HCDSは25HC3Sに比べ、脂質代謝及び炎症応答の調節における能力が強いことを示している。
【0109】
25HCDS生合成及びオキシステロール硫酸化の反応は、肝細胞における核受容体活性を仲介する新規の調節経路に相当する。この経路の主要要素は以下のように要約される:1)細胞内コレステロール濃度が上昇する場合、ミトコンドリアコレステロール送達タンパク質、StARがコレステロールをミトコンドリアに送達し、そこで25HCなどの調節オキシステロールがCYP27A1によって合成される。これらのオキシステロールが次いでLXRを活性化する結果、脂肪酸及びトリグリセリドの生合成に関係する標的遺伝子の発現を上方調節する。加えて、25HCはLXRを活性化し、新たに合成されるコレステロール合成をHMGR発現阻害によって下方調節し、ABCA1の仲介による細胞からのコレステロール分泌を増加させる(HDL形成)。2)25HC3S及び25HCDSはLXRを不活性化し、SREBP-1cの処理を抑制し、これらの硫酸化オキシステロールが合成阻害によって細胞内脂質レベルを減少させることを示す。3)25HCが脂質代謝に及ぼす効果は、25HC3Sや25HCDSの効果と反対である。このように、細胞内オキシステロール硫酸化は、脂質代謝及びNAFLD発症に関係する新規の調節機構に相当する。
【0110】
マウスのNAFLDモデルを25HCDSで治療したところ、肝臓脂質レベルが減少した。多数のNAFLD治療が研究されてきた。多くはアラニントランスアミナーゼレベルなど生化学的マーカーを改善すると見られる一方、大部分は、組織学的異常性を逆転させ、又は臨床的エンドポイントを低減させることが示されたわけではない。25HCDSは核受容体LXR及びSREBPの活性化阻害を介して転写レベルでの脂質生合成に関係する主要遺伝子の発現を抑制し、HFDによって誘発される炎症性サイトカインを抑制し、PGC1aを介してエネルギー恒常性を制御する。このように、25HCDSは肝臓脂質レベルを効果的に低減する強力な調節薬の役割を果たし、相応に、NAFLD及びその他の脂質代謝関連疾患の治療のための新規の薬剤に相当する。
【0111】
参考文献
1. Ren,S.、Li,X.、Rodriguez-Agudo,D.、Gil,G.、Hylemon,P.及びPandak,W.M.、2007年、「硫酸化オキシステロール、25HC3Sは、ヒト肝細胞における脂質代謝の強力な調節薬である(Sulfated oxysterol, 25HC3S, is a potent regulator of lipid metabolism in human hepatocytes)」、Biochem. Biophys. Res. Commun.、360:802〜808頁。
2. Ren,S.、Hylemon, P.、Zhang,Z.P.、Rodriguez-Agudo,D.、Marques,D.、Li,X.、Zhou,H.、Gil,G.及びPandak,W.M.、2006年、「肝細胞核及びミトコンドリアにおける新規の硫酸化オキシステロール、5-コレステン-3β,25-ジオール三硫酸塩の特定(Identification of a novel sulfonated oxysterol, 5-cholesten-3beta, 25-diol 3-sulfonate, in hepatocyte nuclei and mitochondria)」、J. Lipid Res.、47:1081〜1090頁。
3. Pandak,W.M.、Ren,S.、Marques,D.、Hall,E.、Redford,K.、Mallonee,D.、Bohdan,P.、Heuman,D.、Gil,G.及びHylemon,P.、2002年、「ミトコンドリアへのコレステロール輸送は、初代ラット肝細胞における代替的経路を介した胆汁酸合成の場合、速度が制限される(Transport of cholesterol into mitochondria is rate-limiting for bile acid synthesis via the alternative pathway in primary rat hepatocytes)」、J. Biol. Chem.、277:48158〜48164頁。
4. Ren,S.、Hylemon,P.、Marques,D.、Hall,E.、Redford,K.、Gil,G.及びPandak,W.M.、2004年、「コレステロール輸送因子(StAR、MLN64及びSCP-2)の発現増加が胆汁酸合成に及ぼす効果(Effect of increasing the expression of cholesterol transporters (StAR, MLN64, and SCP-2) on bile acid synthesis)」、J. Lipid Res.、45:2123〜2131頁。
【0112】
本発明は、その好適な実施形態に関して記載されている一方、当業者は、本発明が添付の請求項の精神と範囲において修正を加えて実践され得ることを認識することになる。相応に、本発明は上記の実施形態に限定されるべきではなく、本発明の精神及び記載の範囲においてあらゆる修正及びそれに相当するものをさらに含むべきである。
本発明は以下の発明を包含する。
(1) 医薬品として使用するための、(i)式
【化12】
の5-コレステン-3β,25-ジオールジスルファート(25HCDS)又は(ii)製薬上許容されるその塩である化合物。
(2) 前記化合物が
【化13】
である、(1)に記載の使用のための化合物。
(3) 脂質の低減が必要な対象におけるその低減方法、コレステロール及び脂質の生合成の低減が必要な対象におけるその低減方法、炎症の低減が必要な対象におけるその低減方法、糖尿病の治療が必要な対象におけるその治療方法、高脂血症の治療が必要な対象におけるその治療方法、アテローム性動脈硬化症の治療が必要な対象におけるその治療方法、脂肪性肝疾患の治療が必要な対象におけるその治療方法、又は炎症性疾患の治療が必要な対象におけるその治療方法において使用するための、(1)又は(2)に記載の化合物。(4) 脂質の低減が必要な対象におけるその低減、コレステロール及び脂質の生合成の低減が必要な対象におけるその低減、炎症の低減が必要な対象におけるその低減、糖尿病の治療が必要な対象におけるその治療、高脂血症の治療が必要な対象におけるその治療、アテローム性動脈硬化症の治療が必要な対象におけるその治療、脂肪性肝疾患の治療が必要な対象におけるその治療、又は炎症性疾患の治療が必要な対象におけるその治療のための医薬品を製造するための、(1)又は(2)に記載の化合物の使用。
(5) 対象を治療する方法であって、(1)又は(2)に記載の化合物の有効量を前記対象に投与するステップを含み、脂質の低減が必要な対象におけるその低減方法、コレステロール及び脂質の生合成の低減が必要な対象におけるその低減方法、炎症の低減が必要な対象におけるその低減方法、糖尿病の治療が必要な対象におけるその治療方法、高脂血症の治療が必要な対象におけるその治療方法、アテローム性動脈硬化症の治療が必要な対象におけるその治療方法、脂肪性肝疾患の治療が必要な対象におけるその治療方法、及び炎症性疾患の治療が必要な対象におけるその治療方法から選択される、方法。
(6) - 前記化合物が前記対象の体重に基づき0.1mg/kgから100mg/kgの範囲の量で投与されるか、若しくは前記化合物が前記対象の体重に基づき1mg/kgから10mg/kgの範囲の量で投与され、及び/又は
- 投与が経口投与、腸内投与、舌下投与、経皮投与、静脈内投与、腹膜投与、非経口投与、注射、皮下注射及び筋肉注射による投与のうち少なくとも1つを含む、
(5)に記載の方法。
(7) (1)又は(2)に記載の化合物。
(8) 単離された化合物である、(7)に記載の化合物。
(9) 実質的に純粋である、(7)又は(8)に記載に化合物。
(10) 固形である(7)から(9)のいずれかに記載の化合物。
(11) - 粉末形態、及び/又は
- 凍結乾燥形態
である、(10)に記載の化合物。
(12) (i)(1)又は(2)に記載の化合物、及び(ii)生理学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体を含む医薬組成物。
(13) 前記組成物が単位投与形態で製剤化されている、(12)に記載の医薬組成物。(14) 前記組成物が固形である、(12)又は(13)に記載の医薬組成物。
(15) - 前記組成物が散剤、錠剤、カプセル剤又はトローチ剤の形態であるか、又は
- 前記組成物が増量剤と一緒に凍結乾燥形態で化合物を含み、前記組成物が場合により、密封されたバイアル、アンプル、注射器若しくは袋中に存在する、
(14)に記載の医薬組成物。
(16) 液体である担体を含む、(12)又は(13)に記載の医薬組成物。
(17) - 化合物が前記液体中に溶解若しくは分散されている、及び/又は
- 前記液体が水性である、及び/又は
- 前記液体が注射用滅菌水若しくはリン酸緩衝生理食塩水である、及び/又は
- 前記組成物がバイアル、アンプル、注射器若しくは袋に密封されている
(16)に記載の医薬組成物。
(18) 25-ヒドロキシコレステールを三酸化硫黄の供給源と反応させるステップと、場合により、得られた5-コレステン-3β,25-ジオールジスルファート(25HCDS)から製薬上許容される塩を形成するステップとを含む、(1)又は(2)に記載の化合物の製造方法。
(19) 三酸化硫黄の供給源が三酸化硫黄アミン錯体である、(18)に記載の方法。
(20) 前記化合物と前記の生理学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体とを組み合わせるステップを含む、(12)から(17)のいずれかに記載の医薬組成物の製造方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6