特許第6125611号(P6125611)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6125611
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】感光性触覚センサ
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20170424BHJP
   G06F 3/042 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   G06F3/041 620
   G06F3/041 400
   G06F3/041 602
   G06F3/042 470
   G06F3/041 660
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-506279(P2015-506279)
(86)(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公表番号】特表2015-515067(P2015-515067A)
(43)【公表日】2015年5月21日
(86)【国際出願番号】FR2013050672
(87)【国際公開番号】WO2013156702
(87)【国際公開日】20131024
【審査請求日】2015年12月25日
(31)【優先権主張番号】1253649
(32)【優先日】2012年4月20日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】アブデルカデル・アリアンヌ
(72)【発明者】
【氏名】モハメド・ベンワディ
(72)【発明者】
【氏名】ティフェーヌ・カルド
【審査官】 山崎 慎一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−332607(JP,A)
【文献】 特開2010−152869(JP,A)
【文献】 特開2009−110496(JP,A)
【文献】 特開2006−048548(JP,A)
【文献】 特開2004−139162(JP,A)
【文献】 特開2004−127073(JP,A)
【文献】 特開2008−129574(JP,A)
【文献】 特開2006−013407(JP,A)
【文献】 特開2010−027056(JP,A)
【文献】 特表2012−509605(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/118450(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/156447(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/042
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
・その上に及ぼされた機械的応力に応じて変動する電気抵抗を有し、少なくとも部分的に光に対して透過性である、ピエゾ抵抗層(16)と、
・その上への入射光の量に応じて変動する電気抵抗を有し、前記ピエゾ抵抗層(16)に対向して配置される、感光層(38)と、
・前記ピエゾ抵抗層(16)及び前記感光層(38)を並列に電気的接続する、電気的接続要素(22、40、52)と、
を含む、触覚センサ(10)。
【請求項2】
前記ピエゾ抵抗層(16)及び前記感光層(38)は、前記ピエゾ抵抗層(16)よりもさらに変形しやすい媒体によって互いに分離される、請求項1に記載の触覚センサ。
【請求項3】
前記ピエゾ抵抗層(16)は、少なくとも部分的に光に対して透過性であり且つ変形可能である電気的絶縁保護層(20)の表面上に配置され、前記ピエゾ抵抗層(16)と前記保護層(20)とで形成されたスタックは、前記感光層(38)に沿って配置された開口部(30)を含む、請求項1又は2に記載の触覚センサ。
【請求項4】
前記ピエゾ抵抗層(16)は、表面領域単位毎に可変の折り返し数を有する蛇行型の形態で作られ、具体的に、前記センサの周辺領域における折り返し数よりも前記センサの中心領域における折り返し数がより大きい、請求項1から3の何れか1項に記載の触覚センサ。
【請求項5】
蛇行型が、前記保護層(20)に形成された開口部(30)の間、具体的に開口部の列の間に伸びる、請求項3または4に記載の触覚センサ。
【請求項6】
前記ピエゾ抵抗層(16)はPEDOT:PSSで作られる、請求項1から5の何れか1項に記載の触覚センサ。
【請求項7】
前記感光層(38)は、グラフェンとアンチモンでドープされた二酸化スズとの混合物を含む、請求項1から6の何れか1項に記載の触覚センサ。
【請求項8】
前記混合物におけるドープされた二酸化スズの重量比率は20%より大きい、請求項7に記載の触覚センサ。
【請求項9】
前記感光層(38)は前記ピエゾ抵抗層(16)と光反射層(34)との間に形成される、請求項1から8の何れか1項に記載の触覚センサ。
【請求項10】
前記反射層(34)は、可視及び近赤外範囲における波長を反射することができる、請求項9に記載の触覚センサ。
【請求項11】
前記ピエゾ抵抗層(16)及び前記感光層(38)は、それらを並列に電気的接続する導電性ボール(52)を用いて互いの上に設置される、請求項1から10の何れか1項に記載の触覚センサ。
【請求項12】
前記ピエゾ抵抗層(16)及び前記感光層(38)は、インサート(60)によって互いに付着した少なくとも2つの導電性ボール(52)のスタックを用いて互いの上に設置される、請求項11に記載の触覚センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触覚センサ、具体的には圧力検出触覚センサの分野に関し、具体的にディスプレイ、キーボード、及びタッチパッドに適用される。
【背景技術】
【0002】
それらに及ぼされた圧力を検出するディスプレイ、キーボード、及びタッチパッドが知られている。このようなデバイスは、柔軟な支持体上に形成された圧電材料(piezoelectric material)の層を含む圧力センサを含む。これらのデバイスが加圧されると、加圧されたセンサの圧電材料層は変形し、専用の電気回路によって検出される電荷を放出する。そして放出された電荷の検出により、圧力がデバイスに及ぼされたことが確定される。
【0003】
高品質の圧力センサを得るために、良好な機械的品質及び良好な圧電品質をともに有する圧電材料が通常探求される。
【0004】
これらの材料は具体的に、良好な弾性、柔軟な支持体に対する良好な接着性、並びに支持体との低い熱膨張差を有することが望ましい。実際に、硬すぎると圧電材料を柔軟な支持体上に設置することは困難であり、熱膨張係数差が大きすぎると温度変動の影響下で圧電層は支持体から分離され得る。結果として生じる圧力センサは故に、機械的に脆い。高い圧電定数を有する、つまり僅かにでも加圧されたときに大量の電荷を放出する圧電材料がまた、感度の高いセンサを設計するために探求される。
【0005】
ここで、現在の圧電材料は、良好な機械的特性又は良好な圧電特性の何れかを有する。例えば、圧力センサに現在使用されている圧電材料は、いわゆる「PZT」セラミックス(鉛・チタン・ジルコニウムの頭字語)及びPVDF(ポリフッ化ビニレンの頭字語)を含む。
【0006】
しかしながら、PZTセラミックは高い圧電定数を有するが、それは非常に高いヤング率を有し、故に不十分な機械的特性を有する。PVDは、低いヤング率、より一般的には良好な機械的特性を有するが、低い圧電定数を有する。
【0007】
機械的ロバスト性のために、良好な機械的挙動、故に低いヤング率を有する圧電材料が通常好ましい。しかしながら、低い圧電定数、故に加えられた圧力へのそれらの低い応答により、いわゆる「容量性」電気アセンブリが放出された電荷の量を測定するために使用される。このようなアセンブリでは、圧電材料層は電極と接触しており、それと共に放出された電荷に応じてその容量が変動する容量性回路を形成する。電極に接続された容量メータは、具体的に電極間に可変電圧を加えることによって、及び/又はその中に可変周波数を有する可変電流を注入することによって、容量性回路の容量を動的に測定する。容量性電気アセンブリは故に、複雑な測定手段を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、その表面上の物体の存在を測定するために容量性電気アセンブリを使用することを必要としない、向上した感度を有するピエゾ抵抗触覚センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、本発明は、
・その上に及ぼされた機械的応力に応じて変動する電気抵抗を有し、少なくとも部分的に光に対して透過性である、ピエゾ抵抗層と、
・その上への入射光の量に応じて変動する電気抵抗を有し、ピエゾ抵抗層に対向して配置される、感光層と、
・ピエゾ抵抗層及び感光層を並列に電気的接続する、電気的接続要素と、
を含む、触覚センサを目的とする。
【0010】
言い換えると、本発明による触覚センサは、その表面上の物体の存在を検出するために、2つの異なる同時の物理的現象を結合する。実際に、例えば指などの物体がセンサに近づくと、それは周囲の明るさを遮蔽し、故にセンサによって検出される光度変動をもたらす。ピエゾ抵抗層及び感光層の電気抵抗変動特性を使用することによって、またそれらを並列に接続することによって、指がセンサを押して光を遮蔽するときにそのアセンブリの電気抵抗の高い変動が故に得られる。このような変動は具体的に、例えば既知の値を有する一定電流をセンサに加えることによって、また結果として生じるそれを横切る電圧を測定することによって、静的に測定され得る。所定の閾値を超える電圧変動はそして、センサに及ぼされる圧力を特性化することを可能にする。
【0011】
一実施形態によると、ピエゾ抵抗層及び感光層が、ピエゾ抵抗層よりもさらに変形しやすい媒体によって、具体的に流体又は粘性流体、空気などの気体、例えば低圧、真空下などの気体によって分離され、それによりピエゾ抵抗層の大きな変形、故に電気抵抗の強い変動が可能になる。
【0012】
一実施形態によると、ピエゾ抵抗層は、少なくとも部分的に光に対して透過性であり且つ変形可能である電気絶縁保護層の表面上に配置され、ピエゾ抵抗層と保護層とで形成されたスタックは、感光層に沿って(in line with)配置された開口部を含む。周囲の光度変動に対するセンサの感度は故に、開口部の存在によって実質的に向上する。
【0013】
一実施形態によると、ピエゾ抵抗層は、表面領域単位毎に可変の折り返し数を有する蛇行型の形態で作られ、具体的に、センサの周辺領域における折り返し数よりもセンサの中心領域における折り返し数はより大きい。まず、蛇行型はその長さよりもかなり小さい幅を有する。蛇行型の変形は故に、その電気抵抗の強い変動をもたらす。さらに、表面領域単位毎の折り返し数は、その表面上においてセンサの可変の感度を、具体的にその中心領域においてより高い感度を提供する。
【0014】
有利には、蛇行型は、保護層に形成された開口部の間、具体的に開口部の列の間に伸びる。
【0015】
一実施形態によると、ピエゾ抵抗層はPEDOT:PSSで作られる。PEDOT:PSSは、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)又は「PEDOT」と、ポリ(スチレンスルホネート)との混合物である。PEDOT:PSSは、それに加えられる応力に応じて実質的に変動する電気抵抗を有するピエゾ抵抗材料である。PEDOT:PSSはまた、可視及び近赤外放射に対して透過性であるという利点も有する。
【0016】
一実施形態によると、感光層は、グラフェンとアンチモンでドープされた二酸化スズ又は「ATO」との混合物を含む。この材料は、幅広い放射スペクトルに対して、具体的に可視スペクトル及び近赤外スペクトルの赤波長(red wavelength)に対して感度が高いという利点、並びに収集された放射の量に応じて減少する電気抵抗を有するという利点の二重の利点を有する。具体的に、かなりの量の赤外放射を放出する指は、周囲の可視光が非常に低い場合でさえ感光層によって検出される。さらに、ピエゾ抵抗材料はまた、応力を受けたときに増加する電気抵抗を有する。物体の存在で増加する電気抵抗とその存在により減少する電気抵抗とを並列に接続することにより、アセンブリの電気抵抗の強い変動が得られ、それは高い感度を有するセンサを提供する。
【0017】
具体的に、混合物におけるドープされた二酸化スズの重量比率は20%より大きい。従って、このような比率が放射を最適に収集できることに留意できる。低い百分率では、検出感度の低下が観察され得る。
【0018】
一実施形態によると、感光層はピエゾ抵抗層と光反射層との間に形成される。反射層は、例えばこの層が小さい厚さを有することにより、それを横切った放射を感光層に戻すことができる。従って、センサ感度は向上する。
【0019】
具体的に、反射層は、可視及び近赤外範囲における波長を反射することができる。
【0020】
有利には、感光層は反射層から距離d(以下「数1」参照)だけ分離され、ここでλは近赤外の波長であり、nは反射層から感光層を分離する媒体の屈折率である。従って、選択された波長λに対して感光層で共鳴現象が得られ、それはこの波長に対するセンサ感度を向上させる。
【数1】
【0021】
一実施形態によると、ピエゾ抵抗層及び感光層は、それらを並列に電気的接続する金属ボールを用いて互いの上に設置される。従って、感度を有する層を互いに独立して製造し、そしてそれらを設置することができる。最終的に、ボールはそれを分離する距離を調整することができ、具体的に感光層に入射光を集めることができる。
【0022】
具体的に、ピエゾ抵抗層及び感光層は、インサートによって互いに付着した少なくとも2つの導電性ボールのスタックを用いて互いの上に設置される。従って、積層されるボールの数を調整することによって、ピエゾ抵抗層と感光層とを分離する距離を調整することができる。
【0023】
本発明は、添付図面と関連して例示のためにのみ提供された以下の説明を読むことでより良く理解されるが、同一の参照符号は同一又は同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明によるセンサの簡略断面図である。
図2図1のセンサの簡略上面図である。
図3図2のセンサのバリエーションの簡略上面図である。
図4】本発明によるセンサの等価電気回路図である。
図5】本発明によるセンサの製造方法を示す簡略上面図及び断面図である。
図6】本発明によるセンサの製造方法を示す簡略上面図及び断面図である。
図7】本発明によるセンサの製造方法を示す簡略上面図及び断面図である。
図8】本発明によるセンサの製造方法を示す簡略上面図及び断面図である。
図9】本発明によるセンサの製造方法を示す簡略上面図及び断面図である。
図10】本発明によるセンサの製造方法を示す簡略上面図及び断面図である。
図11】本発明によるセンサの製造方法を示す簡略上面図及び断面図である。
図12】本発明によるセンサの製造方法を示す簡略上面図及び断面図である。
図13】本発明によるセンサの製造方法を示す簡略上面図及び断面図である。
図14】本発明によるセンサの製造方法を示す簡略上面図及び断面図である。
図15】本発明によるセンサの製造方法を示す簡略上面図及び断面図である。
図16】本発明によるセンサの製造方法を示す簡略上面図及び断面図である。
図17】本発明によるセンサの2つの部分のハイブリダイゼーションのための、ボールのバリエーションの簡略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1の簡略断面図を参照すると、例えばディスプレイ、キーボード、又はタッチパッドに組み込むことが意図された本発明による触覚センサ10は、圧力センサ12と光センサ14とを含む。光センサ14は圧力センサ12の下に、且つそれに沿って配置され、2つのセンサ12、14は並列に電気的接続されている。
【0026】
圧力センサ12は、圧電材料で形成され、この材料に加えられる機械的応力に応じて変動する電気抵抗を有し、保護層、具体的に触覚面を画定する柔軟な基板18と電気的絶縁保護層20との間に挿入される、ピエゾ抵抗材料16を含む。
【0027】
ピエゾ抵抗層16は有利には、PEDOT:PSSで作られ、例えば10nmから5μmの範囲の厚さを有する。PEDOT:PSSはピエゾ抵抗材料、つまり、他のタイプの既知のピエゾ抵抗材料と比較してそれに加えられた応力に応じて強く変動する電気抵抗を有する材料である。さらに、PEDOT:PSSはまた、温度に対して感度が高く、その電気抵抗は、温度が低下すると減少する。さらに、このような材料は、可視及び近赤外放射に対して実質的に透過性である。
【0028】
例えば金、白金、ニッケル、銅、銀、又はアルミニウムで作られた導電性要素22はさらに、以下にさらに詳細に説明するように、それに電圧を与え、及び/又はその中に電流を注入するために、ピエゾ抵抗層16に接触して基板18上に形成される。例えば、導電性要素22は、層16と接触し且つ2つの金属領域26にそれぞれ接続される金属トラック24の2つのアセンブリを含む。
【0029】
柔軟な基板18は、例えば指28又は針によって、その表面上の物体によって及ぼされる圧力下で変形可能になるように選択される。柔軟な基板18は例えば、25μmから200μmの範囲の厚さを有する薄いプラスチック膜で形成される。
【0030】
圧力センサ12はさらに、光センサ14によって検出された放射に対して少なくとも部分的に透過性であるように設計される。透過性は、センサ12を形成する材料及び/又はそれを形成する層の厚さを選択することによって、及び/又は光のための特別なパス、例えば開口部をセンサに形成することによって得られる。
【0031】
有利には、基板18は故に、可視光に対して少なくとも部分的に透過性である材料で作られる。この目的のために、基板18は、ポリエチレンナフタレート(「PEN」)又はポリ(エチレンテレフタレート)(「PET」)で作られ、それは、柔軟であり、可視スペクトル及び近赤外に対して透過性であり、且つ低コストを有するという3つの利点を有する。
【0032】
同様に、保護層20は好ましくは、センサ14によって検出された放射に対して少なくとも部分的に透過性である誘電材料で形成される。例えば、層20はCYTOP型フルオロポリマー層であり、それは透過性であり、低誘電率を有し、10ナノメートルから500ナノメートルの範囲の厚さを有する。
【0033】
開口部30はまた、センサ12の一般透過性を向上させるために、圧力センサ12を通って、且つ光センサ14に沿って形成される。例えば、図2の簡略上面図に示すように、特に周期的である開口部の2次元ネットワークは、基板18、ピエゾ抵抗層16、及び保護層20を通って形成される。開口部は例えば、長方形の断面積を有し、50ナノメートルから5マイクロメートルの範囲の横の長さを有する。ピエゾ抵抗層16は、開口部30によって交差された固体の長方形の層の形態で作られる。
【0034】
有利には、図3の簡略上面図に示すように、ピエゾ抵抗層20は変形例として、開口部30の列の間を伸びる蛇行型の形状をとる。蛇行型は、その表面に及ぼされる圧力に応じて電気抵抗の上方変動が得られるように、その幅よりもかなり大きい長さを有する。好ましくは、蛇行型は、その周辺部よりも圧力センサ12の中央領域においてより多い折り返しを含む。従って圧力センサは、ピエゾ抵抗構造の中央で最大応力を提供する低い共鳴周波数により、その周辺部よりもこの中央領域においてより感度が高い。
【0035】
図1を再度参照すると、光センサ14は、反射層34を支持する基板32を含む。層34は、光センサ14によって検出された放射に対して少なくとも部分的に透過性である電気的絶縁材料で作られた層36で覆われる。それはまた、絶縁層36上に形成された感光層38も含む。例えば金、白金、ニッケル、銅、銀、又はアルミニウムで作られた導電性要素40がさらに、以下でさらに詳細に説明するように、それに電圧を与え、及び/又はその中に電流を注入するために、感光層38に接触して絶縁層36上に形成される。例えば、導電性要素40は、層38と接触し且つ2つの金属領域44に接続された金属トラック42の2つのアセンブリを含む。アセンブリは場合によっては、露出されたままの導電性領域44を除いて、電気的絶縁保護層48で覆われ、開口部50は、圧力センサ12の開口部30に沿って層48内に形成される。
【0036】
基板32は有利には、例えばPEN又はPETなどのプラスチック基板である柔軟且つ透過性の基板であり、25μmから200μmの厚さを有する。
【0037】
感光層38は有利には、グラフェンとATO(アンチモンでドープされた二酸化スズ(SnO2:Sb))との混合物で形成され、その混合物におけるATOの重量比率は有利には20%より大きい。このような材料は、可視スペクトル(特に赤)並びに近赤外で感知することができ、さらに、感知された放射量に応じて減少する電気抵抗を有する。感光層38は故に、指28の存在によってもたらされた周囲光の変動、並びに指28の存在によってもたらされた熱変動を捕えるが、このような熱変動は、指によって発せされた近赤外放射の変動として反映される。
【0038】
場合によっては、絶縁層36の材料並びに反射層34から感光層38を分離する距離は、以下「数2」に示す関係性を満たすように選択され、ここでdは前記距離であり、λは近赤外波長であり、nは層36の屈折率である。波長λにおいて電磁共鳴現象が故に得られ、それはこの波長に対するセンサ12の感度を向上させる。
【数2】
【0039】
反射層34は、感光層38によって検出される放射のかなりの反射を提供する材料で作られる。例えば反射層は、銀、アルミニウム、又は金の金属層であり、このような材料は可視及び近赤外範囲で強い反射力を有する。
【0040】
絶縁層36は、感光層38によって検出される放射に対して透過性である材料で作られ、例えば、有機ポリマー型又はSiO、ZrO、TiOなどの無機酸化物の誘電体である。このような材料は、可視及び近赤外範囲で強い透過性を有する。
【0041】
圧力センサ12及び光センサ14は有利には、金属ボール52を用いて互いに設置され、センサ12、14上それぞれに対向して配置された接続領域26、44の間にそれぞれ配置される。センサ12及び14は従って、並列に電気的接続される。さらにボール52は、距離d1だけそれらを分離させ、距離d1は、圧力センサ12がその表面に及ぼされた圧力下で強く曲がり、故にその電気抵抗の強い変動を経ることを可能にする。光センサ14から圧力センサ12を分離する空間はさらに、低圧下又はそれ以外の圧力下、真空下で、空気などの気体、流体又は粘性液体などで満たされる。もちろん、2つの機能は異なる要素で行われ得る。
【0042】
図4は、本発明によるセンサの等価電気回路図である。ピエゾ抵抗及び感光層16及び38は並列に電気的接続されており、センサ10は以下の「数3」に等しい全電気抵抗を有し、ここでR1及びR2はそれぞれ、感光層及びピエゾ抵抗層の電気抵抗である。
【数3】
【0043】
センサ10は例えば、抵抗又はそれに関連する電気量の静的測定の実施を可能にする一定電流又は電圧源を含む電気回路54に接続され、このような測定は、例えば指の存在などのセンサ表面での事象を決定するために、アナログ又はデジタル処理回路(図示せず)によって分析される。
【0044】
本発明によるセンサ10は故に、3つの異なる検出モード、つまり、ピエゾ抵抗触覚検出モードと、光検出モードと、触覚及び光検出モードを結合する検出モードとを結合する。
【0045】
ピエゾ抵抗検出モードでは、基板18に及ぼされる圧力がピエゾ抵抗効果、つまり、それに加えられる応力の影響下でのピエゾ抵抗層16の電気抵抗変動をもたらす。基板18に圧力を加える事実は実際に、ピエゾ抵抗層16の局所的な変形をもたらし、それは電気抵抗の変動を生じさせ、その変動は、対応する電気量、具体的に電流又は電圧の変動として反映される。及ぼされた圧力はそして、例えば加えられた圧力値に応じて測定された電気量の所定の変動の表を用いて決定される。
【0046】
光検出モードでは、センサ10の一面又は両面が照射されると、感光層38で形成された光抵抗(photoresistance)の電気抵抗が光強度に応じて変動し、この抵抗の変動は、電気量、電流又は電圧として変換され、それは上記と同様の方法でリード回路によって読まれる。さらに、光検出モードはまた近赤外の熱波を検出することを可能にし、故に可視スペクトルの周囲の光が低強度である場合に指を検出することができる。また、用途がそれを必要とするならば、光センサ14を形成する材料及び層は基板32上への入射光を検出することができ、それによって純粋な光検出が可能であることに留意すべきである。
【0047】
ピエゾ抵抗検出及び光検出を結合する検出モードでは、圧力センサ12の表面に圧力を及ぼす物体はまた、周囲の明るさを遮蔽し、故に光センサ14によって感知される光変動をもたらす。物体が指である場合、近赤外の熱波がさらにそれによって検出され得る。このような現象の結合は、センサの一般電気抵抗の強い変動を生じさせ、故に高感度検出を可能にする。
【0048】
本発明によるセンサの製造方法がここで、図5から16に関連して説明され、センサ12及び14は互いに独立して製造される。
【0049】
光センサ14の製造は、25から200マイクロメートルの範囲の厚さを有するPEN又はPET型の低コストの柔軟なプラスチック基板32の形成から始まり、物理蒸着、シルクスクリーニング、又はインクジェット印刷を用いて、例えば銀、アルミニウム、又は金で作られた反射金属層34の堆積が続く(図5)。
【0050】
電気絶縁性且つ透過性の層36がそして、得られたアセンブリ上で、例えば物理蒸着、シルクスクリーニング、又はインクジェット印刷を用いて堆積される。層36の厚さは、後に堆積され得る感光性要素上での光フローの反射を最大化するように選択される(図6)。層36を形成する材料は例えば、有機ポリマー型又はSiO、ZrO、TiOなどの無機パッシベーション酸化物の誘電体である。
【0051】
2つの接続電極40がそして、物理蒸着、シルクスクリーニング、又はインクジェット印刷を用いて層36上に形成される(図7)。電極40は例えば、導電性グラフェン又は具体的に金、銀、アルミニウム、白金、銅又はチタンである金属で作られる。
【0052】
本方法では、最小で20重量%のATOを有するグラフェンとATOとの混合物で作られた感光層38の堆積が続く(図8)。堆積は例えば、導電性グラフェンインクとATOインクとの混合物を堆積するシルクスクリーニング又はインクジェット印刷を用いて実施される。グラフェンインク及びATOインクの溶媒は有利には、非常に均一な堆積層を形成するために、近い蒸発温度を有する。溶媒の蒸発温度はまた、有利には、インク混合物の堆積物上に既に形成された層のアニール温度、具体的にプラスチック基板32のガラス転移温度より低い蒸発温度でのアニールの観点で、相溶性があるように選択される。具体的に、蒸発温度は110から180℃の範囲である。
【0053】
誘電層48がそして、例えば物理蒸着、シルクスクリーニング、又はインクジェット印刷を用いて、アセンブリ上に堆積され、開口部50が至る所で光抵抗層38に対して層48に形成される(図9及び10)。開口部は例えば、シルクスクリーニング又はリソグラフィを用いて形成される。
【0054】
圧力センサ12の製造は、25から200マイクロメートルの範囲の厚さを有するPEN又はPET型の低コストの柔軟なプラスチック基板18の形成で始まり、具体的にフルプレート堆積、例えば物理蒸着、シルクスクリーニング、又はインクジェット印刷を用いた2つの電極22の形成、電極22を画定するための後続の化学、物理、又はレーザエッチングが続く(図11)。電極22は例えば、導電性グラフェン又は具体的に金、銀、アルミニウム、白金、銅、又はチタンである金属で作られる。
【0055】
本方法では、ピエゾ抵抗材料の堆積及び幾何学的形状画定が続く。有利にはPEDOT:PSSで作られたピエゾ抵抗層16は、例えばシルクスクリーニング又はインク印刷によって、基板18上及び部分的に2つの電極22上に堆積される。ピエゾ抵抗層16の幾何学的形状は有利には、センサの中央においてより鋭い折り返しを有する蛇行型パターンを画定することによって、その中央での圧力センサ12の感度を向上するように選択される(図12)。
【0056】
絶縁材料、例えば誘電体で作られる透過性保護層20がそして、PEDOT:PSS層16を保護するために、得られたスタック上に堆積される(図13)。層20は例えば、シルクスクリーニング又はインク印刷によって、より一般的にはプラスチック基板18と相溶性のある低温堆積を用いて堆積される。アニールがそして、層20を硬化するために適用される。
【0057】
開口部30がそして、例えばレーザエッチング、プラズマエッチング、又は化学エッチングを用いて、リソグラフィマスクを介して基板18に形成される(図14)。基板18の厚さを横切る、故に圧力センサ12を横切る開口部30の寸法は有利には、光センサ14に向かって移動する光が最大となるように最適化される。具体的に開口部の寸法は、光センサ14によって検出される波長に対して、圧力センサ12を形成する層による回折現象を制限又は回避するように選択される。
【0058】
圧力及び光センサ12及び14が完成すると、それらは好ましくは、例えば銀を含む導電性インクを用いて組み立てられる。
【0059】
具体的に、銀を含む導電性エポキシ型インクなどの滴が、例えばシルクスクリーニングによって又はマイクロシリンジを用いて、光センサ12の各接続領域44上に堆積される。インク体積及び堆積条件により、光センサ14から圧力センサ12を分離する距離d1を調整することができる(図16)。光アニールがそして、インク滴の表面を固化するために実施され、その後圧力センサ12がそして、導電性ボール52上に配置される。最終アニールがそして、導電性ボールのアセンブリを固化するために適用される。
【0060】
また、個別に知られている寸法を有する滴を積み重ねることによって2つのセンサ12、14を分離する距離を調整することも可能である。例えば、滴の堆積により既知の標準距離を画定することができる場合、2つの滴を積み重ねることによってこの距離を2倍にすることができる。
【0061】
図17を参照すると、導電性インクの第1滴52が各接触領域44上に堆積され、その後、それらの上部表面を固化するために滴の表面アニールが適用される。
【0062】
導電性インクとの高い接着特性を有する硬い導電性金属インサート60がそして、最終センサの構造を機械的に支持するために、またそれに適用される複数の触覚面から生じるその疲労を防止するために、各滴内に挿入される。
【0063】
例えば、インサート60は、導電性カーボン、タングステン、ニッケル、窒化チタン、又は窒化タングステンナノチューブのロッドである。
【0064】
第2滴62がそして、各第1滴52上に堆積され、その後、アセンブリを硬化するためにアニールが適用される。
【0065】
他のタイプの装置、センサに存在するプラスチック材料と相溶しない温度を必要としないという利点を有する導電性インクを用いた装置ももちろん可能である。
【0066】
透過性PEDOT:PSSピエゾ抵抗層について説明してきた。しかしながら、例えばグラフェンなどの他の材料も可能である。
【0067】
同様に、グラフェンとATOとの混合物で作られた感光層について説明してきた。他の感光性材料ももちろん可能である。
【符号の説明】
【0068】
10 触覚センサ
12 圧力センサ
14 光センサ
16 ピエゾ抵抗層
18 基板
20 電気的絶縁保護層
22 導電性要素、電極
24 金属トラック
26 金属領域
28 指
30 開口部
32 基板
34 反射層
36 絶縁層
38 感光層
40 導電性要素、接続電極
42 金属トラック
44 金属領域
48 電気的絶縁保護層
50 開口部
52 導電性ボールの第1滴
60 インサート
62 第2滴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17