特許第6125705号(P6125705)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6125705医用画像診断装置及び医用画像診断装置の作動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6125705
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】医用画像診断装置及び医用画像診断装置の作動方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20170424BHJP
【FI】
   A61B6/03 370A
   A61B6/03 375
   A61B6/03 360J
【請求項の数】26
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-185339(P2016-185339)
(22)【出願日】2016年9月23日
(62)【分割の表示】特願2012-263417(P2012-263417)の分割
【原出願日】2012年11月30日
(65)【公開番号】特開2016-214956(P2016-214956A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2016年9月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】石井 秀明
(72)【発明者】
【氏名】若井 智司
(72)【発明者】
【氏名】荒木田 和正
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 匠真
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 恭子
(72)【発明者】
【氏名】神長 茂生
(72)【発明者】
【氏名】廣畑 賢治
(72)【発明者】
【氏名】大賀 淳一郎
【審査官】 伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/021307(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管を含むCT画像のデータを取得する画像取得部と、
前記CT画像のデータに基づいて前記血管内のプラークの位置及び硬さを推定する推定部と、
前記CT画像から血管壁構造を抽出する抽出部と、
前記血管壁構造に基づく流体解析により前記プラークにかかる応力値を計算し、前記応力値と前記硬さとの双方に基づいて前記プラークの危険度を示す指標値を計算する計算部と、
を具備する医用画像診断装置。
【請求項2】
血管を含むCT画像のデータを取得する画像取得部と、
前記CT画像のデータに基づいて前記血管内のプラークの位置及び性状を推定する推定部と、
前記CT画像から血管壁構造を抽出する抽出部と、
前記血管壁構造に基づく流体解析により前記プラークにかかる応力値を計算し、前記応力値と前記性状との双方に基づいて前記プラークの危険度を示す指標値を計算する計算部と、
を具備する医用画像診断装置であって、
前記推定部は、前記血管の内径の変化に基づいて前記プラークの前記位置を推定する、医用画像診断装置。
【請求項3】
血管を含むCT画像のデータを取得する画像取得部と、
前記CT画像のデータに基づいて前記血管内のプラークの位置及び性状を推定する推定部と、
前記CT画像から血管壁構造を抽出する抽出部と、
前記血管壁構造に基づく流体解析により前記プラークにかかる応力値を計算し、前記応力値と前記性状との双方に基づいて前記プラークの危険度を示す指標値を計算する計算部と、
前記プラークに対応するマークと前記応力値の分布図とを前記CT画像に重ねて表示する表示部と、
を具備する医用画像診断装置。
【請求項4】
血管を含むCT画像のデータを取得する画像取得部と、
前記CT画像のデータに基づいて前記血管内のプラークの位置及び性状を推定する推定部と、
前記CT画像から血管壁構造を抽出する抽出部と、
前記血管壁構造に基づく流体解析により前記プラークにかかる応力値を計算する計算部と、
前記血管壁構造における前記プラークにかかる前記応力値の分布を示すカラーマップに、前記プラークの位置及び性状に対応するマークを表示する表示部と、
を具備する医用画像診断装置。
【請求項5】
前記推定部は、前記プラークの前記位置におけるCT値に基づいて前記性状を推定する、請求項2乃至4の何れか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項6】
前記性状は、前記プラークの硬さである、請求項2乃至4の何れか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項7】
前記CT画像のデータは、心拍動の1サイクルの少なくとも1部を含む時系列のデータである、請求項1乃至4の何れか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項8】
前記推定部は、前記血管の内径の変化に基づいて前記プラークの前記位置を推定する、請求項1、3及び4の何れか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項9】
前記プラークに対応するマークと前記応力値の分布図とを前記CT画像に重ねて表示する表示部、を更に備える請求項1及び2の何れか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項10】
前記分布図は、前記応力値に応じたカラーマップである、請求項3及び9の何れか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項11】
前記カラーマップは、前記血管の輪郭に沿って前記応力値を示す画素が割り当てられたマップである、請求項4及び10の何れか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項12】
前記マークは、前記プラークの硬さを表す、請求項3、4及び9の何れか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項13】
前記表示部は、前記危険度の高いプラークに対応するマークを強調して表示する、請求項3及び9の何れか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項14】
医用画像診断装置が、血管を含むCT画像のデータに対する解析に基づいて前記血管内のプラークの位置及び硬さを推定する推定工程と、
前記医用画像診断装置が、前記CT画像から血管壁構造を抽出する抽出工程と、
前記医用画像診断装置が、前記血管壁構造に基づく流体解析により前記プラークにかかる応力値を計算し、前記応力値と前記硬さとの双方に基づいて前記プラークの危険度を示す指標値を計算する計算工程と、
を具備する医用画像診断装置の作動方法。
【請求項15】
医用画像診断装置が、血管を含むCT画像のデータを取得する画像取得工程と、
前記医用画像診断装置が、前記CT画像のデータに対する解析に基づいて前記血管内のプラークの位置及び性状を推定する推定工程と、
前記医用画像診断装置が、前記CT画像から血管壁構造を抽出する抽出工程と、
前記医用画像診断装置が、前記血管壁構造に基づく流体解析により前記プラークにかかる応力値を計算し、前記応力値と前記性状との双方に基づいて前記プラークの危険度を示す指標値を計算する計算工程と、
を具備する医用画像診断装置の作動方法であって、
前記推定工程は、前記血管の内径の変化に基づいて前記プラークの前記位置を推定する、医用画像診断装置の作動方法。
【請求項16】
医用画像診断装置が、血管を含むCT画像のデータを取得する画像取得工程と、
前記医用画像診断装置が、前記CT画像のデータに対する解析に基づいて前記血管内のプラークの位置及び性状を推定する推定工程と、
前記医用画像診断装置が、前記CT画像から血管壁構造を抽出する抽出工程と、
前記医用画像診断装置が、前記血管壁構造に基づく流体解析により前記プラークにかかる応力値を計算し、前記応力値と前記性状との双方に基づいて前記プラークの危険度を示す指標値を計算する計算工程と、
前記医用画像診断装置が、前記プラークに対応するマークと前記応力値の分布図とを前記CT画像に重ねて表示部に表示する表示工程と、
を具備する医用画像診断装置の作動方法。
【請求項17】
医用画像診断装置が、血管を含むCT画像のデータを取得する画像取得工程と、
前記医用画像診断装置が、前記CT画像のデータに対する解析に基づいて前記血管内のプラークの位置及び性状を推定する推定工程と、
前記医用画像診断装置が、前記CT画像から血管壁構造を抽出する抽出工程と、
前記医用画像診断装置が、前記血管壁構造に基づく流体解析により前記プラークにかかる応力値を計算する計算工程と、
前記医用画像診断装置が、前記血管壁構造における前記プラークにかかる前記応力値の分布を示すカラーマップに、前記プラークの位置及び性状に対応するマークを表示部に表示する表示工程と、
を具備する医用画像診断装置の作動方法。
【請求項18】
前記推定工程は、前記プラークの前記位置におけるCT値に基づいて前記性状を推定する、請求項15乃至17の何れか一項に記載の医用画像診断装置の作動方法。
【請求項19】
前記性状は、前記プラークの硬さである、請求項15乃至17の何れか一項に記載の医用画像診断装置の作動方法。
【請求項20】
前記CT画像のデータは、心拍動の1サイクルの少なくとも1部を含む時系列のデータである、請求項14乃至17の何れか一項に記載の医用画像診断装置の作動方法。
【請求項21】
前記推定工程は、前記血管の内径の変化に基づいて前記プラークの前記位置を推定する、請求項14、16及び17の何れか一項に記載の医用画像診断装置の作動方法。
【請求項22】
前記医用画像診断装置が、前記プラークに対応するマークと前記応力値の分布図とを前記CT画像に重ねて表示部に表示する表示工程、を更に備える請求項14乃至15の何れか一項に記載の医用画像診断装置の作動方法。
【請求項23】
前記分布図は、前記応力値に応じたカラーマップである、請求項16及び22の何れか一項に記載の医用画像診断装置の作動方法。
【請求項24】
前記カラーマップは、前記血管の輪郭に沿って前記応力値を示す画素が割り当てられたマップである、請求項17及び23の何れか一項に記載の医用画像診断装置の作動方法。
【請求項25】
前記マークは、前記プラークの硬さを表す、請求項16、17及び22の何れか一項に記載の医用画像診断装置の作動方法。
【請求項26】
前記表示工程は、前記危険度の高いプラークに対応するマークを強調して前記表示部に表示する、請求項16及び22の何れか一項に記載の医用画像診断装置の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像診断装置及び医用画像診断装置の作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脳梗塞や心筋梗塞などの、いわゆる血栓症が原因の死亡者は、依然として多い。心筋梗塞の原因の1つとしてプラークの剥離がある。プラークとは、冠動脈の血管の内膜にコレステロール脂肪などの物質と血中にあるマクロファージとが沈着したものである。プラークが内圧などにより剥離すると、剥離した箇所に血栓ができ、血栓が血流に乗って流れ、冠動脈を閉塞することにより、心筋梗塞が発生する。したがって、心筋梗塞を予防するためには、剥離する可能性の高いプラークをカテーテル手術等により除去する必要がある。カテーテル手術が必要かの判断には、プレッシャーワイヤーを用いたFFR(Functional Flow Reserve:心筋部分血流予備量)の測定結果等が用いられる。しかし、FFRの測定はプレッシャーワイヤーを挿入する必要があるため、患者への負担が大きい。そのため、カテーテル手術が必要かの判断を、患者への負担が小さて済むような方法で出来ることが望まれている。
【0003】
現在、患者への負担が小さくて済むように、CT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)装置により撮影されたCT画像のCT値に基づいて、プラーク性状を推定する技術がある。しかしながら、そのプラークが剥離する可能性の高い危険度の高いプラークかどうかを判定することは難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
危険度の高いプラークを推定できる医用画像診断装置及び医用画像診断装置の作動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係る医用画像診断装置は、血管を含むCT画像のデータを取得する画像取得部と、前記CT画像のデータに基づいて前記血管内のプラークの位置及び硬さを推定する推定部と、前記CT画像から血管壁構造を抽出する抽出部と、前記血管壁構造に基づく流体解析により前記プラークにかかる応力値を計算し、前記応力値と前記硬さとの双方に基づいて前記プラークの危険度を示す指標値を計算する計算部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本実施形態に係る医用画像診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、本実施形態に係る医用画像診断装置が備えるプラーク強調表示処理を説明するためのフローチャートである。
図3図3は、本実施形態に係る医用画像診断装置のプラーク強調表示機能により、表示部に表示される3次元の重畳画像の一例を示した図である。
図4図4は、本実施形態に係る医用画像診断装置のプラーク強調表示機能により、表示部に表示される2次元の重畳画像の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る医用画像診断装置1を説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0008】
図1は、本実施形態に係る医用画像診断装置1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、医用画像診断装置1は、通信インターフェース部11と、記憶部12と、制御部13と、入力部14と、再構成部15と、冠動脈解析部16(抽出部16)と、プラーク位置推定部17と、カラーマップ変換部18と、硬さ推定部19と、プラークマップ発生部20と、危険度評価部(特定部)21と、アノテーション発生部22と、表示部23と、を有する。
【0009】
本実施形態に係る医用画像診断装置1は、LAN(Local Area Network)や公衆電子通信回線等のネットワークを介して、CT装置、SPECT装置、PET装置、PACS(Picture Archiving and Communication System:医療画像情報システム)等の外部装置に接続される。
【0010】
本医用画像診断装置1は、ネットワークを介して外部装置に接続するための通信インターフェース部11を有する。通信インターフェース部11は、例えば、外部装置等と有線ケーブル等で接続されるためのコネクタ部(図示せず)及び外部装置からの無線信号を受信するための無線信号受信部(図示せず)等を有する。本医用画像診断装置1は、後述の制御部13の制御に従って、外部装置と通信インターフェース部11を介したデータの送受を行う。
【0011】
記憶部12は、半導体記憶素子であるFlash SSD(Solid State Disk)などの半導体記憶装置及びHDD(Hard Disk Drive)等である。記憶部12は、制御部13による制御に従って、外部装置から送信された本医用画像診断装置1で処理対象となる画像のデータを記憶する。処理対象の画像のデータとは、トレーサーにより冠動脈を造影して心拍動の1サイクルにわたり、連続的に繰り返し撮影された一連の画像のデータである。一連の画像のデータは典型的にはCT装置により収集された心拍動の1サイクルを構成する時系列のCTボリュームデータである。
【0012】
また、記憶部12は、複数の硬さに対して、複数のCT値を対応付けたCT値対応表に関するデータを記憶する。
【0013】
制御部13は、CPU(Central Processing Unit)とメモリ回路等を有する。制御部13は、入力部1417から入力された情報を受け取り、一時的にメモリ回路に入力情報を記憶する。制御部13は、入力情報に基づいて本医用画像診断装置1の各部を制御する。また、制御部13は、各部で発生又は受信したデータの記憶部12への書き込み処理及び記憶部12から各部へのデータの読み出し処理を一括して制御する。
【0014】
入力部14は、本医用画像診断装置1に対して、ユーザによる指示情報を受け付けるための、インターフェースとして機能する。入力部14には、マウス、キーボード、トラックボール、タッチパネル、及びボタン等の入力デバイスが適宜利用可能である。具体的には、入力部14は、ユーザが所望する冠動脈の断面画像の入力を受け付ける。入力部14は、所望する冠動脈を、例えば、後述の表示部23に表示された冠動脈に関する3次元の形態画像上のユーザ操作に従って受け付ける。
【0015】
再構成部15は、CT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)ボリュームデータに基づいて、冠動脈に関する3次元又は2次元の形態画像を再構成する。以下、冠動脈に関する3次元及び2次元の形態画像を単に冠動脈に関する形態画像と呼ぶ。
【0016】
冠動脈解析部16は、心拍動の1サイクルを構成する時系列のCTボリュームデータに基づいて、冠動脈の各領域における応力値を計算する。そして、応力値分布図を発生する。冠動脈解析部16の詳細説明は後述する。
【0017】
プラーク位置推定部17は、冠動脈に関する形態画像上のプラーク位置を推定する。プラーク位置の推定には、例えば、冠動脈の内径の大きさの変化が利用される。内径は冠動脈内の冠動脈の芯線に直交する長さで定義される。プラーク位置推定部17は、冠動脈の複数の点における内径の大きさを計算する。そして、内径の大きさが急に狭くなる冠動脈の範囲を、プラークが存在する位置であると推定する。
【0018】
カラーマップ変換部18は、冠動脈解析部16により発生された応力値分布図を、予め記憶部12に記憶された応力値のLUT(Look Up Table)に基づいて、応力値カラーマップに変換する。
【0019】
硬さ推定部19は、プラーク位置推定部17により推定されたプラークの位置のCT値に基づいて、そのプラークの硬さを推定する。具体的には、硬さ推定部19は、記憶部12に記憶されているCT値対応表を読み出す。そして、硬さ推定部19は、CT値対応表を参照し、対象プラークのCT値をCT対応表における複数のCT値と比較することで、硬さを推定することができる。
【0020】
プラークマップ発生部20は、冠動脈に関する形態画像上のプラークを表すマークに、プラークの硬さに応じて色情報を付加したプラークマップを発生する。色情報は、プラークの硬さに応じて、識別できればよく、例えば、色の種類及び色の濃淡等を含む。
【0021】
危険度評価部21は、プラークの硬さと応力値とに基づいて、プラークの危険度を評価する。具体的には、プラークの硬さと応力値とに基づいて、危険値を計算する。危険度評価部21は、計算した危険値に応じて、そのプラークの危険度を評価する。例えば、危険度が3段階、「危険度なし」、「危険度小」、「危険度大」で表されている場合において、各段階に対して、各段階で評価される危険値の範囲が割り当てられている。そして、危険度評価部21は、計算した危険値と、各段階に対して割り当てた危険値の範囲とに従って、危険度を評価する。
【0022】
アノテーション発生部22は、危険度の高いプラークを強調するためのアノテーションを発生する。アノテーションには、例えば、プラークの危険度評価結果に関するテキスト情報又はプラークの危険度評価結果に応じたグラフィック情報が含まれる。グラフィック情報とは、例えば、フラグ、円、矩形、及び星等のマークである。
【0023】
表示部23は、プラークマップに対して応力値カラーマップを重ねた重畳画像を表示する。また、表示部23は、アノテーション発生部22で発生されたアノテーションを表示する。なお、入力部14を介したユーザ指示に従って、表示部23は、プラークマップと応力値カラーマップと重畳画像との表示を切り替える。
【0024】
(プラーク強調表示機能)
プラーク強調表示機能は、本実施形態に係る医用画像診断装置1の表示部23が、プラークマップに応力値マップを重ねた重畳画像上に、危険度の高いプラークを強調して表示する機能である。以下、プラーク強調表示機能に従う処理(以下、プラーク強調表示処理と呼ぶ)について、図2を参照して説明する。
【0025】
図2は、本実施形態に係る医用画像診断装置1が備えるプラーク強調表示処理を説明するためのフローチャートである。まず、外部装置から、通信インターフェース部11を介して、冠動脈の心拍動の1サイクルを構成する時系列のCTボリュームデータを受信する(ステップS11)。受信したCTボリュームデータは記憶部12に記憶される。
【0026】
ボリュームデータに基づいて、冠動脈解析部16により、冠動脈の血管芯線や血管内壁等の冠動脈の解剖学的構造に関する情報が抽出される(ステップS12)。抽出された冠動脈の解剖学的構造と冠動脈を流れる血液などの持つ粘性値などの物理パラメータとに基づいて、冠動脈解析部16により、冠動脈の各領域の応力値に関する構造流体解析が実行される(ステップS13)。そして、冠動脈解析部16により応力値分布図が発生する(ステップS14)。カラーマップ変換部18により、応力値分布図が応力値カラーマップに変換される(ステップS15)。
【0027】
ボリュームデータに基づいて、プラーク位置推定部17により、冠動脈に関する形態画像上のプラーク位置が推定される(ステップS16)。プラーク位置推定部17により推定されたプラークの位置のCT値に基づいて、硬さ推定部19により、そのプラークの硬さが推定される(ステップS17)。そして、プラークマップ発生部20により、冠動脈に関する形態画像上のプラークに、硬さに応じて色情報を付加したプラークマップが発生される(ステップS18)。
【0028】
プラークの硬さと応力値とに基づいて、危険等評価部により、プラークの危険度が評価される(ステップS19)。評価された結果、危険度の高いプラークが形態画像上にある場合において、アノテーション発生部22は、危険度の高いプラークを強調するためのアノテーションを発生する(ステップS20)。そして、表示部23は、プラークマップに対して応力値カラーマップを重ねた重畳画像とアノテーションを表示する(ステップS21)。
【0029】
ステップS20にて、表示部23に表示される重畳画像とアノテーションとの一例について図3図4を参照して説明する。
【0030】
図3は、本実施形態に係る医用画像診断装置1のプラーク強調表示機能により、表示部23に表示される3次元の重畳画像の一例を示した図である。図3には、冠動脈に関する3次元のプラークマップ上に応力値カラーマップを重ねた重畳画像とカラーバーと複数のアノテーションとが表示されている。重畳画像とプラークマップと応力値からマップとは、入力部14を介したユーザ指示に従って、適宜切り替え可能である。表示エリアに、これらの画像を切り替えるためのアイコンが表示されてもよい。カラーバーは、カラーマップ変換部18により、応力値分布図を応力値カラーマップに変換するために用いられたLUTである。図3に示すように、3つの血管領域がアノテーションにより強調されている。アノテーションには、プラーク性状(硬さ)と応力値とに関するテキスト情報が含まれている。これらの血管領域それぞれのプラークは、プラークの硬さと応力値との組み合わせが異なる。しかしながら、これらの血管領域それぞれにあるプラークは、危険度評価部21により、危険度が高いと判定されていることを示している。危険度評価部21による危険度の判定基準は、ユーザ指示に従って、適宜変更が可能である。
【0031】
図4は、本実施形態に係る医用画像診断装置1のプラーク強調表示機能により、表示部23に表示される2次元の重畳画像の一例を示した図である。図4には、冠動脈に関する2次元のプラークマップ上に応力値カラーマップを重ねた重畳画像とカラーバーとアノテーションとプラーク応表とが表示されている。応力値カラーマップは、血管壁にかかる応力値が分かればよく、例えば図4に示すように、応力値カラーマップを血管輪郭に沿って表示される。2次元の重畳画像は、図3で示した3次元の重畳画像に比べて、プラークの位置をより詳細に表すことができる。プラーク対応表は、プラークの硬さを示すものであり、例えば図4に示すように、プラークの硬さと対応する色が表示される。カラーバーは、カラーマップ変換部18により、応力値分布図を応力値カラーマップに変換するために用いられたLUTに基づいて表示され、カラーバーは応力値の大きさを色で表現するためのものである。
【0032】
なお、図3図4とで示した3次元重畳画像と2次元重畳画像とは、入力部14を介したユーザ指示に従って、切り替えが可能である。また、図3図4で示した、応力値カラーマップの表示方法、プラーク位置の表示方法、プラーク性状の表示方法、及びアノテーションの表示方法は、一例である。ユーザが、応力値カラーマップとプラークマップとを重ねた重畳画像の表示及び危険度の高いプラーク位置の表示が出来るのであれば、上述の表示方法に限定されない。
【0033】
以上に述べたプラーク強調表示機能によれば、以下の効果を得ることができる。
プラーク強調表示機能を備える本実施形態に係る医用画像診断装置1によれば、例えば、CT装置等により収集された冠動脈の心拍動の1サイクルを構成する時系列のCTボリュームデータに基づいて、プラークマップと応力値カラーマップとを発生することができる。そして、プラークマップに対して、応力値カラーマップを重ねた重畳画像を表示することができる。そして、重畳画像上等で、危険度が高いプラークを強調して表示することができる。危険度は、プラークの硬さ及びプラークが位置する血管にかかる応力値等に基づいて、危険度評価部21により、自動的に判定することができる。したがって、プラークの性状だけではなく、そのプラークにかかる応力値を考慮した上で、そのプラークの危険度を推定することができる。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や趣旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものある。
【符号の説明】
【0035】
1…医用画像診断装置、11…通信インターフェース部、12…記憶部、13…制御部、14…入力部、15…再構成部、16…冠動脈解析部(抽出部)、17…プラーク位置推定部、18…カラーマップ変換部、19…硬さ推定部、20…プラークマップ発生部、21…危険度評価部(特定部)、22…アノテーション発生部、23…表示部。
図1
図2
図3
図4