特許第6125744号(P6125744)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6125744バイオマスによる太陽熱と炭酸ガスの固定装置及び同固定装置を備えた家屋
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6125744
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】バイオマスによる太陽熱と炭酸ガスの固定装置及び同固定装置を備えた家屋
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20170424BHJP
   A01G 9/02 20060101ALI20170424BHJP
   A01G 9/04 20060101ALI20170424BHJP
   A01G 27/00 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   A01G7/00 602A
   A01G9/02 D
   A01G9/02 E
   A01G9/04
   A01G27/00 502R
【請求項の数】4
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2010-526801(P2010-526801)
(86)(22)【出願日】2009年8月28日
(86)【国際出願番号】JP2009065121
(87)【国際公開番号】WO2010024414
(87)【国際公開日】20100304
【審査請求日】2012年6月27日
【審判番号】不服2016-1111(P2016-1111/J1)
【審判請求日】2016年1月26日
(31)【優先権主張番号】特願2008-222947(P2008-222947)
(32)【優先日】2008年8月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】597166350
【氏名又は名称】有限会社プラス化建・工法研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】副島 康正
【合議体】
【審判長】 小野 忠悦
【審判官】 中田 誠
【審判官】 赤木 啓二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−340024号公報(JP,A)
【文献】 特公平8−11022号公報(JP,B2)
【文献】 実開昭52−99946号公報(JP,U)
【文献】 実開昭50−120954号公報(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00 - 9/02
A01G 1/00
A01G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボックス中に空気を取り込む空気取込手段と、大気開放状態に構成したボックス底部に敷設した空気及び水流通手段と、ボックスを載置する貯水用トレーと、ボックス内に収容した栽培土壌と、よりなるバイオマスによる太陽熱と炭酸ガスの固定装置であって、
前記空気及び水流通手段は、周壁面及び底面に水を流通可能に形成した多数の連通孔を備える第1収容部と、前記空気取込手段としての通気道が装着され前記第1の収容部の上部に載置された第2収容部と、を備え、
前記第1収容部には多孔質体を収容して、前記貯水用トレーから前記栽培土壌へ供給される水の浄化を行うべく構成し、
前記第2収容部には軽石と土壌菌を多く含有する微生物塊とを収容し、前記第1収容部で浄化された水に前記通気道からの空気と前記軽石と前記土壌菌とを接触させて、ミネラル分や土壌菌を多く含む水を前記土壌に供給可能とすると共に、同第2の収容部には、さらに吸水性ポリマーが収容されており、同吸水性ポリマーの表面に前記土壌菌を常在させつつ、前記土壌の水分が不足した際に、水分を徐放するよう構成し、
しかも、前記第1収容部に収容した前記多孔質体は、活性炭と発泡セラミックとイオン交換樹脂との混合物であり、前記貯水トレーに貯留された水の水面より突出させた状態で配置したことを特徴とするバイオマスによる太陽熱と炭酸ガスの固定装置。
【請求項2】
前記通気道は、栽培土壌中に埋設して上部を大気に露出したメッシュ筒体よりなることを特徴とする請求項1に記載のバイオマスによる太陽熱と炭酸ガスの固定装置。
【請求項3】
前記空気取込手段は、ボックスの側壁に形成した空気孔を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2いずれか1項に記載のバイオマスによる太陽熱と炭酸ガスの固定装置。
【請求項4】
前記貯水用トレーには、内部に貯留する水の水位を調整する水位調整手段を備えていることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のバイオマスによる太陽熱と炭酸ガスの固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスによる太陽熱と炭酸ガスの固定装置及び同固定装置を備えたエネルギー循環システムを有する家屋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バイオマス(植物)の栽培は自然山林や大地を耕し、田畑としてバイオマス(植物)を栽培するのが体勢である。農林業は自然環境を保全し人類の食糧を賄う重要な産業として発展してきた技術である。中には、人々の嗜好を満たす家庭園芸としてコンテナ等を用い、庭先やベランダで栽培される方法も実施されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、従来の山林、田畑による農林業技術では、自然環境に支配され安定性を欠くものである。一方、趣味の家庭園芸がミニ農林園として様々な方法で発達しているが、自然栽培法の模倣に過ぎず、大幅に農林業の生産性を改善するものではない。
【0004】
近年、世界各国の近代化発展は目覚しく、人口増加と生活水準の向上による食糧需要の増加と工業化によるエネルギー消費の増大が炭酸ガス排出量を増大し、地球環境の破壊と社会構造の崩壊を引き起こし重大な危機に迫られている。
【0005】
これを解決するには、化石燃料の更なる消費拡大に代えて、植物資源の生産性を高めることにより、食糧やバイオ燃料の原料となるバイオマスを増産することが最善の策である。しかし、この化石燃料に代わる膨大なエネルギー源を、従来の自然農林業の拡大するのみで対応するのは困難であるために、人工的に栽培環境を整えて大量の収穫を目的とした農林業技術が普及している。
【0006】
例えば、水耕栽培や自家用の農地のビニールハウスで人工的に収穫を試みるものがこれにあたる。
【0007】
また、今日では、この食糧問題に留まらず、工業化進展に伴う、地球温暖化の原因である炭酸ガス削減対策は国際協約として、直ちに解決すべき、人類存亡に係る更なる重要問題であるため、炭酸ガス排出規制が進められており、工業的見地からの炭酸ガス排出を削減する対応がとられている。また、食糧をはじめ、多くの生活物資を遠距離輸送することは、膨大なエネルギーの損失であり、様々な社会問題の原因の一つであると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−295876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、温暖化の原因物資と敵視されている炭酸ガスは、植物に由来する食糧を生産する上で不可欠な、人類にとって重要な資源である。
【0010】
すなわち、炭酸ガスを消費するバイオマス(植物)の栽培技術を向上させることは、食糧とエネルギー資源を増産するのみならず、同時に太陽熱を吸収し大気中の炭酸ガスを削減する、確実で、誰にでも出来る具体的な手段であると言える。
【0011】
例えば、サツマイモの光合成によると、264gの炭酸ガスと、688kcalの太陽熱を吸収して180gのブドウ糖(炭水化物)を生産する。炭水化物(ブドウ糖や澱粉等)は、人間や動物にとって重要な栄養物質であり、作物として固形化した資源として収穫される。
【0012】
この栄養作物を生産する植物の栽培の一手段として、コンテナ栽培が知られている。コンテナ栽培は、古くから行われているコンパクトに管理できる有用な園芸手段である。
【0013】
しかし、現状のコンテナ栽培に用いられる技術と用具は、農家向けとして育苗床などに使用されたり、アマチュア向けとしては趣味の園芸として使用される程度で、本格農業用具としての高い生産性の機能は具備していない。
【0014】
そこで、コンパクトに管理可能でありながら、高効率で炭酸ガスを固定し、高い作物生産性を備えるコンテナ栽培様のバイオマスによる太陽熱と炭酸ガスの固定装置が求められている。
【0015】
また、近年懸念されている食料危機問題を個人レベルで解決すべく、必要な食料の大半を自ら生産し、自ら消費する、いわゆる自給自足生活が現実味を帯びながら着目されつつある。
【0016】
しかし、広い耕作スペースを得ることのできる山奥や住宅過疎部では、比較的容易に自給自足を行ことができるが、逆に食料を大量消費する住宅部や都市部において自給自足を実現することができないという問題もある。
【0017】
本発明は、上述した課題を解決することのできるバイオマスによる太陽熱と炭酸ガスの固定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するために、請求項1のバイオマスによる太陽熱と炭酸ガスの固定装置に係る発明は、ボックス中に空気を取り込む空気取込手段と、大気開放状態に構成したボックス底部に敷設した空気及び水流通手段と、ボックスを載置する貯水用トレーと、ボックス内に収容した栽培土壌と、よりなるバイオマスによる太陽熱と炭酸ガスの固定装置であって、前記空気及び水流通手段は、周壁面及び底面に水を流通可能に形成した多数の連通孔を備える第1収容部と、前記空気取込手段としての通気道が装着され前記第1の収容部の上部に載置された第2収容部と、を備え、前記第1収容部には多孔質体を収容して、前記貯水用トレーから前記栽培土壌へ供給される水の浄化を行うべく構成し、前記第2収容部には軽石土壌菌を多く含有する微生物塊を収容し、前記第1収容部で浄化された水に前記通気道からの空気と前記軽石と前記土壌菌とを接触させて、ミネラル分や土壌菌を多く含む水を前記土壌に供給可能とすると共に、同第2の収容部には、さらに吸水性ポリマーが収容されており、同吸水性ポリマーの表面に前記土壌菌を常在させつつ、前記土壌の水分が不足した際に、水分を徐放するよう構成し、しかも、前記第1収容部に収容した前記多孔質体は、活性炭と発泡セラミックとイオン交換樹脂との混合物であり、前記貯水トレーに貯留された水の水面より突出させた状態で配置した。
【0019】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載のバイオマスによる太陽熱と炭酸ガスの固定装置において、前記通気道は、栽培土壌中に埋設して上部を大気に露出したメッシュ筒体よりなることに特徴を有する。
【0020】
また、請求項に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載のバイオマスによる太陽熱と炭酸ガスの固定装置において、前記空気取込手段は、ボックスの側壁に形成した空気孔を備えることに特徴を有する。
【0023】
また、請求項に係る発明は、請求項1〜いずれか1項に記載のバイオマスによる太陽熱と炭酸ガスの固定装置において、前記貯水用トレーには、内部に貯留する水の水位を調整する水位調整手段を備えていることに特徴を有する。
【発明の効果】
【0029】
請求項1に係るバイオマスによる太陽熱と炭酸ガスの固定装置では、ボックス中に空気を取り込む空気取込手段と、大気開放状態に構成したボックス底部に敷設した空気及び水流通手段と、ボックスを載置する貯水用トレーと、ボックス内に収容した栽培土壌と、よりなるバイオマスによる太陽熱と炭酸ガスの固定装置であって、前記空気及び水流通手段は、周壁面及び底面に水を流通可能に形成した多数の連通孔を備える第1収容部と、前記空気取込手段としての通気道が装着され前記第1の収容部の上部に載置された第2収容部と、を備え、前記第1収容部には多孔質体を収容して、前記貯水用トレーから前記栽培土壌へ供給される水の浄化を行うべく構成し、前記第2収容部には軽石土壌菌を多く含有する微生物塊を収容し、前記第1収容部で浄化された水に前記通気道からの空気と前記軽石と前記土壌菌とを接触させて、ミネラル分や土壌菌を多く含む水を前記土壌に供給可能とすると共に、同第2の収容部には、さらに吸水性ポリマーが収容されており、同吸水性ポリマーの表面に前記土壌菌を常在させつつ、前記土壌の水分が不足した際に、水分を徐放するよう構成し、しかも、前記第1収容部に収容した前記多孔質体は、活性炭と発泡セラミックとイオン交換樹脂との混合物であり、前記貯水トレーに貯留された水の水面より突出させた状態で配置したため、太陽熱と炭酸ガスとを効率よく固定するとともに、バイオマスの生育を効果的に助長することができる。また、空気や水の流れを阻害することなく、バイオマスの根部近傍に酸素や水を効率よく供給することができ、しかも、貯水トレー内の水をバイオマスに適した水にすることができる。また、生育の助長効果を有するイオン化した水や空気、栄養素をバイオマスに供給することができる。
【0030】
また、請求項2に係る発明では、前記通気道は、栽培土壌中に埋設して上部を大気に露出したメッシュ筒体よりなることとしたため、土壌中に効率的に空気を供給してバイオマスを活性化し、育成を促進させることができる。
【0031】
また、請求項に係る発明では、前記空気取込手段は、ボックスの側壁に形成した空気孔を備えることとしたため、土壌中に効率的に空気を供給してバイオマスを活性化し、育成を促進させることができる。
【0034】
また、請求項に係る発明では、前記貯水用トレーには、内部に貯留する水の水位を調整する水位調整手段を備えていることとしたため、バイオマスへの水の供給量を適宜変更することができ、しかも、前記空気及び水流通手段にて発生させるイオン化物質の生成量の調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本実施形態に係る固定装置の全体構成を示す斜視図である。
図2】本実施形態に係る固定装置の全体構成を示す説明図である。
図3】本実施形態に係る固定装置の内部構成を示す説明図である。
図4】本実施形態に係る固定装置の内部構成を示す説明図である。
図5】貯水用トレーの変形例を示す説明図である。
図6】第2実施形態に係る固定装置の構造を示した分解説明図である。
図7】第3実施形態に係る固定装置の構成を示す説明図である。
図8】第4実施形態に係る固定装置の全体構成を示す斜視図である。
図9】第4実施形態に係る固定装置の全体構成を示す分解説明図である。
図10】第4実施形態に係る固定装置の断面説明図である。
図11】貯水トレーの変形例を示す説明図である。
図12】貯水トレーの変形例を示す説明図である。
図13】本実施形態に係る家屋の全体構造を示した説明図である。
図14】本実施形態に係る家屋の2階フロアの間取りを示した説明図である。
図15】本実施形態に係る家屋の3階フロア及び屋上フロアの間取りを示した説明図である。
図16】本実施形態に係る家屋に配設されたバイオ補助装置の構成を示す説明図である。
図17】往路及び復路と、往路の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本実施形態に係るバイオマスによる太陽熱と炭酸ガスの固定装置及び同固定装置を備える家屋について、図面を参照しながら説明する。なお、理解を容易とするために、まず、バイオマスによる太陽熱と炭酸ガスの固定装置について詳説し、次いで、前記固定装置を備える家屋について詳説する。
【0042】
〔バイオマスによる太陽熱と炭酸ガスの固定装置〕
図1図3は本実施形態におけるバイオマスによる太陽熱と炭酸ガスの固定装置(以下、単に「固定装置」ともいう。)Aの説明図、図4は固定装置Aを複数段組み合わせた状態を示す説明図、図5は本実施形態におけるバイオマス栽培装置の通気開口部位が一体成形された貯水用トレー4の構造を示す説明図である。
【0043】
図1〜3に示す固定装置Aは、各種バイオマス(植物)の栽培条件に対応可能な、組立可変のバイオマス(植物)栽培装置として機能するものである。
【0044】
ここで、太陽熱や炭酸ガスを固定するために栽培されるバイオマスは、特に限定されるものではないが、固定装置A内に収容した栽培土壌8上や、栽培土壌8内に、例えば、野菜類や果菜類や根菜類、芋類などを栽培することができる。
【0045】
図1中において、符号1は、この固定装置Aの外壁を構成する外壁材である。この外壁材1は、発泡セラミックや発泡プラスチックなどの発泡素材で成形される。発泡素材の内部は、内部で発泡させた気泡同士が連通していない、いわゆる通常の発泡スチロールで有ってもよいが、気泡による空隙が互いに連続(連結)した状態の発泡セラミックや発泡プラスチック、硬質のスポンジ等で構成するようにしても良い。このような素材で形成することにより、通気性、保水性、保温性を兼備させることができる。
【0046】
また、立設した外壁材1の下部には、後述する貯水用トレー4に貯留された貯留水や、空気を取り込むための流通口10が形成されており、この流通口10には、土壌や同土壌中に含まれる組成成分の漏出を防ぎ、また、虫やゴミの侵入を防ぐためのネット11が配設されている。
【0047】
また、図1中に示す符号2は、外壁材1を固定するするとともに、外壁材1内部に収容した栽培土壌8の土圧に抗するための補強格子である。また、四方に立設した外壁材1の四隅には、上下方向に伸延する筒状の支柱管3を配設している。支柱管3もまた、外壁材1の補強材として機能するものであるが、後に図4を用いて説明するように、ボックス部20を積み重ねて使用する際に挿通して固定する支柱として機能するものでもある。また、この支柱管3は、生育したバイオマスの茎や実を支える支柱として利用したり、防虫、防鳥、防獣ネットの支柱としても使用可能である。
【0048】
特に、地下茎を発達させる根菜類や芋類をバイオマスとして育成させる場合には、このように固定装置上に、底のない枠状の固定装置を積み重ねて深底とすることにより、土中での育成を妨げることなく、太陽熱や炭酸ガスをより多く固定させることができる。
【0049】
説明を図1〜3に戻すと、四方に立設した外壁材1と、この外壁材1に沿って配設した補強格子2と、外壁材1の四隅に配設した支柱管3との上部から、断面視略コ字状の固定枠5を嵌着して一体的な矩形無底筒状のボックス部20を形成している。
【0050】
そして、このボックス部20と、同ボックス部20を受けるパレット状の貯水用トレー4上に配設することで固定装置Aを構成している。貯水用トレー4は、植物が必要とする水分を貯留しておく貯水槽として機能するものであり、その側面部分には、図2(a)に示すように、余剰の水分を排出し水位を調節するための排水口9が設けられている。
【0051】
この排水口9は、側面視略L字状の中空管の根元部分を貯水用トレー4内に挿入して構成しており、排水口9の立ち上げた先端開口部の高さよりも高水位の水分が貯水用トレー4内に貯留された際に水を通水して、先端開口部から外部へ排出可能としている。
【0052】
また、排水口9の根元部分は回動可能に形成しており、排水口9の先端開口部を円弧状に移動させることにより、貯水用トレー4に貯留される水の量を調整可能としている。すなわち、この排水口9は、貯水用トレーの内部に貯留する水の水位を調整する水位調整手段として機能する。
【0053】
符号6は貯水用トレー4(パレット)の上に設置された空気取込手段としての通気道である。この通気道6の壁面(周面)は、活性炭、イオン交換性セラミック、イオン交換樹脂、ゲルマニウム、トルマニウム等のイオン交換やイオン生成を誘発する素材で作られ、通過した水や気体がイオン化されて、生命力を高める壁体である。付言すれば、通気道は、其の材質が+・−のイオンを吸着脱離する電気特性を持つ活性体であり、箱体内部のイオン交換を行い、バイオマスの成育環境のpHを調整する。
【0054】
通気道6は、図2(b)及び図3(a)に示すように、貯水用トレー4の底部より立設して栽培土壌8を貫通し、外気に対して開口した状態で配設している。このような構成とすることにより、貯水用トレー4に貯留した水の水面上や、土壌中に空間を形成し、その空間を通して大気中(空気中)の酸素、窒素、炭酸ガスなどを水及び土壌に供給又は排出することができる。
【0055】
また、この通気道6は、水、肥料、活性剤、酸度調整剤、消毒剤などの投入口として使用することも可能であり、バイオマスを生育させる際の利便性を向上し、太陽光や炭酸ガスの固定をさらに促進させることができる。なお、固定装置Aに設置する通気道6の本数は、植物の種類に応じて適宜変更することができる。
【0056】
また、貯水用トレー4上には、通気道6より取り込まれた空気を全体に拡散し、イオンの交換や発生の主体となる空気及び水流通手段としての通気カップ12が配設されている(図3(b)参照。)。通気カップ12は、外観視略釣鐘状に形成しており、中空半球状に形成した上半部13は土壌が流下しない程度の大きさの小孔15が複数個形成され、また、上半部13の半球縁部から下方へ向けて拡開する下半部14には、その壁面16部分に長円形状とした切欠部17が形成されている。なお、上半部13と下半部14はそれぞれ別体に形成し合体させて構成しても良く、また、一つの金型等により一体的に構成しても良いのは勿論である。
【0057】
この通気カップ12は、図2(b)にも示すように、貯水用トレー4に整然と密に複数個配設されており、これら通気カップ12,12,…のさらに上には、同通気カップ12や通気道6の隙間を充填し上部に敷設される土壌への給気、給水の連続性を目的とした吸湿通気性を有する礫基盤層7が形成されている。なお、通気カップ12は、貯水用トレー4とは別体に設けることとしたが、図5に示すように、所定の金型等を用いて、貯水用トレー4と通気カップ12とを一体的に形成するようにしても良い。
【0058】
礫基盤層7は、適度な連続空間を形成するように、底部より粗めの物(粒径が大)から段々と細かい物(粒径が小)へと上積みし、貯水用トレー4に貯留される水の水位よりもやや高い位置まで積み上げられる。礫基盤層7は、適度な連続空間を形成するように、底部より粗めの物から細かい物へと順次敷設され、全体として通気性、排水性、保水性のバランスの取れた土壌基盤が形成される。
【0059】
また、礫基盤層7の更に上層には、緻密な網の目を有する防根シート18が敷設されており、さらに上層には、網目状の土壌漏出防止網48が敷設されている。
【0060】
防根シート18は、栽培土壌8に植栽したバイオマスの根が礫基盤層7へ伸延するのを防止するためのシートであり、通気や通水は可能で、且つ、バイオマスの根が通過しない程度の網の目を有するシートであればよい。
【0061】
また、土壌漏出防止網48は、栽培土壌8が下方へ流出するのを防止したり、防根シート18に直接栽培土壌8が接触するのを防止するためのものであり、栽培土壌8の粒子が通過できない程度の網目を有するシートであれば良い。
【0062】
また、礫基盤層7の下層で、通気カップ12の下半部14近傍には、粒状で多孔質性のイオン交換体19を配設している。このイオン交換体19は、例えば、活性炭や竹炭、備長炭、軽石等とすることができ、後に詳述するが、流通口10から内容へ流通する貯水用トレー4の貯留水や外気がイオン交換体19に接触することにより、貯留水中のイオン濃度を増加させて、バイオマスの育成を助長する役割を果たすものである。
【0063】
通気道6と通気カップ12においては、空気と地下水と土壌の3界面が接触する空間を形成する。この空間で、地下水及び土壌は、常に適度な酸素及びイオン化された水の供給を受けて、土壌中のバクテリアを育成し、腐敗菌の繁殖を防止する。有用バクテリアの繁殖は、培地となる土壌の力を活性化させて植物の根の発育を促進し、生命力旺盛で収穫力の高い活力のある植物体を育成する。
【0064】
特に、貯水用トレー4に蓄えられた水は、栽培土壌8中の物質が溶解されており、イオン発生体の主体となる空気及び水流通手段としての通気カップ12により、溶解している物質がイオン化されたコロイド溶液となる。
【0065】
すなわち、貯水用トレー4に蓄えられて数日を経た水は、栄養素を含むコロイドイオン溶液となっており、このような水は、水耕栽培に使用される培養液と同様の機能を有することとなる。したがって、バイオマスの根は、このコロイド溶液の水面まで到達すると、この水を吸収することにより水耕栽培と同様の生育を示すこととなる。しかも、このバイオマスの根は、栽培土壌8中にも繁殖しており、水中より遥かに多い濃度の栄養と、ミネラル類を吸収する。即ち水耕栽培の利点と、土壌栽培の利点とを、併せ持つこととなる。
【0066】
このようなコロイド溶液と、栽培土壌8と、空気との3界面は、バクテリアをはじめ原生動植物、プランクトン、ミミズ等の土中生物、小魚類他水中生物の生命連鎖が行われる共生環境となる。それら生物の排泄物、分泌物が混入した水は、更に生命の共棲棲息に必要な、生態生理コロイド溶液を形成する。これにより、イオン化された水が、容易に生命体に吸収され、生命成長に必要な環境を自律する。このような自律生命圏を形成することとなる。
【0067】
また、バイオマスに、上述の生態生理コロイド溶液が吸収されると、有機、無機両用にイオン交換作用を行い、生体成長に必要な有機、無機の物質交換(同化作用)が促進されることとなる。換言すれば、このイオン性のコロイド溶液は、バイオマスを構成する細胞の外界にイオン勾配を形成し、細胞のNa−Kポンプにおけるナトリウムの細胞外への排出と、カリウムの細胞内への輸送を助長し、バイオマスの生育を促すこととなる。細胞内外のナトリウムの浸透圧と、カリウムの浸透圧の相互移送を助長し、バイオマスの体内流通を促すこととなり生育を促進する。
【0068】
ところで、バイオマスとして栽培される植物は、その種類によって、水分を比較的好み、多量の水を要求するものと、水分をあまり好まないものがある。これに対して、従来は耕作地の形態を変えて対応している。中には、深い耕運を必要とする作物もある。日照においても強い日差しを好むものと、日陰を好むものがある。その度合いは植物によって種々様々である。自然の栽培土壌8は重いので、これに対応する条件を作る耕作作業は、極めて大きな労力と知力と忍耐力を必要とする。
【0069】
この固定装置Aによれば、外壁材1及び補強格子2を対面さして2列に長く接続し、栽培に適するように改良した軽量な栽培土壌8を投入すれば、重労働を要せずして、細長い畝状耕地を得る。これを、図4に示すように、縦方向へボックス部20を複数個連結して深い土壌としたり、また、横に複数個並設すれば、良く耕された、幅広い平坦な耕地となる。このように作物をパッケージ単位で栽培すれば、多種類の作物を狭いスペースの同じ場所で同時に栽培でき、夫々に適した栽培法を分別して実施できる。
【0070】
特に図4に示すように、縦方向へボックス部20を連結した固定装置Aとすることにより、バイオマスとして根菜類や芋類を植栽した場合でも、地下茎に十分な空気やイオンを送ることができ、生育を助長するとともに、炭酸ガスの固定を促進することができる。なお、図4中符号22は、上下の支柱管3,3を連結するための、連結片である。
【0071】
植物は育成の度合いに拠って株間の密度も、求める日照の量も異なる。従来では作付した植物を移動することは不可能である。この栽培法では、例えば図12に示すようなキャスターにより作物の育成状況によりレイアウトを自由に変更することができ、成長を促進することができる。なお、このキャスターは貯水用トレー4に対して着脱自在に構成しており、必要に応じて取り付け、取り外しが可能である。
【0072】
特に、重要なことは水である。自然水が安定して供給される状況を作るのは、極めて難しい。これを補完するための一般的灌水方法は多額の設備費を必要とする。植物の、特定の信号を出す。センサーで感知すれば、植物が必要とする潅水をジャストタイムで自動供給できる。天然の降雨もこれに蓄えられて使用できるので、経済的にも節水となり省資源となる。
【0073】
一般に、植物は根元に水が溜まりすぎると、根腐れする。それは、過剰な水が空気を遮断し酸欠状態を引き起し、毛根を弱らせ周囲の腐敗菌の繁殖を促すからである。この固定装置では、通気道6、通気カップ12の3界面空間により、土壌と根とに酸素と抗酸化土壌菌によるマイナスイオン水が常時供給され、抗酸化作用を活性化して、根腐れ障害を発生させない。栽培土壌8中のバクテリアは蘇生菌群(有用菌)と腐敗菌群が拮抗しており片方が増殖すると片方が萎縮する。植物の根と蘇生菌群は、それぞれの生成物を交換し、補完し合う共存関係にある。通気道6及び通気カップ12の中の3界面空間はこれを助長する環境を提供する。
【0074】
その結果、そこに栽培土壌8の強力な地力が発現する。栽培土壌8(栽培用土)は相性の良い作物を連続栽培することで、長期に連続使用できるが、一般には栽培器を解体し栽培土壌8を入れ替える必要がある。古い土砂は篩で粗礫と細土に分別して不要物を取除き、日光浴、寒風晒し等で消毒し、石灰などで中和する。さらに、植物残骸、生ごみ、油粕、米糠、籾殻などの有機質と粉炭を鋤きこみ、醗酵さして蘇生させる。蘇生した栽培土壌8は肥料土(堆肥)として、新しい配合土に混ぜてリサイクルし、強力な地力を持続させる。
【0075】
また、栽培土壌は、基底部のイオン交換体に感応しイオン化に反応する発泡セラミックの粒体や、吸水保水性を有するプラスチックの顆粒体や、植物繊維の顆粒体を、天然土、腐葉土等の天然の土と混合したものとしても良い。これにより、貯水用トレー4内に貯留した水をより効率的にイオン化することができ、バイオマスの生育をより助長することができる。
【0076】
また、収穫にあたっては、ボックス部20は容易に解体されるため、根菜類や芋類をバイオマスとして育成させた場合であっても、掘り起こしの労力を必要としないという特徴がある。栽培土壌8は、相性の良い作物を連続栽培することで、長期に連続使用もできるが、少量の土であるため一般的には、その都度リフレッシュして連作障害を避けてリサイクルできるので、省資源、省エネルギー農法となる。
【0077】
[第2の実施形態]
次に、バイオマスによる太陽熱と炭酸ガスの固定装置の第2の実施形態について、図6を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、前述の固定装置Aと同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。また、図6では説明の便宜上、貯水用トレー4を省略して示している。
【0078】
図6は、本第2実施形態に係る固定装置Bのボックス部30を示した分解説明図である。図6にも示すように、固定装置Bは、固定装置Aと比較して、円筒状の外壁材31を備えている点において構造を異にする。
【0079】
具体的には、外壁材31の表面に空気取込手段としての複数の空気孔32が穿設されており、外壁材31内に収容する土壌に対して、空気を効率よく供給できるように構成している。
【0080】
この固定装置Bによれば、従来の農法では、深堀を必要とする作物の作付け・収穫にあたっては多大の労力を必要とし、弱年齢者や老齢者には厳しい作業であったが、老齢者でも弱年齢者でも容易に深堀根菜を栽培し、掘り起こしの作業を要することなく収穫を行うことができる。
【0081】
[第3の実施形態]
次に、バイオマスによる太陽熱と炭酸ガスの固定装置の第3の実施形態について、図7を参照しながら説明する。図7は、平面視略矩形状とした長物根菜をバイオマスとして使用するための固定装置Cの説明図である。固定装置Cは、前述の第2の実施形態にて平面視略円形状に形成したボックス部30を平面視略矩形状とした点で構造を異にしている。
【0082】
また、この固定装置Cでは、1つの貯水用トレー4上に、複数のボックス部30を配設している点で特徴的であるといえる。
【0083】
このような構成とすることにより、いずれのボックス部30に植栽したバイオマスも同様の生育条件(水分やイオン濃度)とすることができ、可及的均一なバイオマスを育成させることができる。
【0084】
また、通気道6は、電磁気と感応する物質で形成されており、すべての植物の生命力に活力を与え、誰でも、何処でも栽培できる生産性の高いバイオマス栽培技術と栽培器具を提供し、農林業の生産性を向上させる。効率のよい栽培器具で植物の光合成能力を高め、大量の植物で大量の炭酸ガスを炭水化物(食糧)に代え、食糧及びバイオマスを増産すると同時に大気中の炭酸ガスを大量に削減し地球資源を増加させて、社会環境までも正常化する。
【0085】
6CO2+12H2O+688kcal→C6126+6H2O+6O2
これは、光合成の反応式である。植物は264gの炭酸ガス688kcalを吸収して180gのブドウ糖(炭水化物)を造る。これを薩摩芋の生産に当てはめると、略7kgの生薩摩芋を収穫し、「食糧」を得ると、略10kg(4500リットル)の大気中CO2削減となり、さらに大気中への26700kcalの太陽熱の反射を無くし一石三鳥である。
【0086】
この第3の実施形態に係る固定装置Cによれば、略50cm3の栽培機器、略70日間の栽培期間で略8kgの薩摩芋を収穫できる。さらに、同箱体を使った堆肥箱と混設すれば、発生する炭酸ガスと自家発熱で温室を形成することができる。しかも、パッケージ単位で省力化した工業的手法で栽培管理できる形態なので、三毛作も可能である。したがって、従来農法よりはるかに高い生産性が得られる。収穫された澱粉は様々な加工食品だけではなく、医薬品、工業用原料に加工される。炭素と水とでガス化すれば、高濃度の燃料ガスとなり、様々な用途の素材となる。
【0087】
この固定装置Cにより栽培されるバイオマスは、薩摩芋に限られない。あらゆる植物の栽培が可能で、その生命力を高め、従来の自然条件や労働力に制約された従来農法の生産性を大幅に向上させる。誰でも、何処でも、楽しみながら、安定的に更に高い食糧生産が得られる。軽労働であるため、老齢者も弱年齢者も生産に参加できるので、広く一般家庭に普及することができる。これにより、家庭菜園の普及は都市環境を大幅に緑化して、ヒートアイランド現象を解消する。植物の光合成力の活性化は自然環境の炭素循環をダイナミックにし、温暖化を阻止する。
【0088】
[第4の実施形態]
次に、バイオマスによる太陽熱と炭酸ガスの固定装置の第4の実施形態について、図8図10を用いて説明する。図8は第4の実施形態に係る固定装置Dの外観を示した斜視図であり、図9は固定装置Dの構成を示した分解説明図であり、図10は固定装置Dの断面視における説明図である。
【0089】
図8にも示すように、本第4実施形態に係る固定装置Dは、前述の固定装置A及び固定装置Bと略同様に、ボックス部40と貯水用トレー4とで構成し、内部に収容した土壌41にサツマイモ46を植栽している。
【0090】
具体的には、固定装置Dは、有底円形筒状(桶状)の貯水用トレー4内に、通気道6を備える空気及び水流通手段としての水浄化装置42を配設し、同水浄化装置42を囲むようにボックス部40を配設して構成している。また、ボックス部40は、2つの上下ボックス部40a,40bを積み重ねて配置し構成している。
【0091】
また、上ボックス部40aに取り付けられた4本の支柱管3a,3a,3a,3aと、下ボックス部40bに取り付けられた4本の支柱管3b,3b,3b,3bとがそれぞれ連通するように位置を調整し、支柱管3a及び3b中にそれぞれ連結棒43を挿通して上下ボックス部40a,40bを固定するようにしている。
【0092】
上ボックス部40aと下ボックス部40bとは同様の構成を備えており、外壁材1と、補強格子2と、前述の支柱管3aまたは3bとを備えている。
【0093】
外壁材1には、図10(a)にも示すように、土壌に空気を送給するための空気孔44が穿設されており、植栽した植物の根部に空気を可及的多く送給して、生育を助長するようにしている。この外壁材1は、厚みを1cm程度とした可撓性の発泡樹脂製マットを筒状に丸めて形成しているが、これに限定されるものではなく、予め筒状に形成された発泡樹脂製の筒体を使用するようにしても良い。
【0094】
また、補強格子2は、固定装置Bと同様に合成樹脂等により形成された可撓性の格子状シートを外壁材1に沿って配設している。
【0095】
また、支柱管3a,3bは、外形約1.7cm、内径約1.3cmで長さ約50cmの管であり、本第4実施形態では塩化ビニル製のパイプを使用している。
【0096】
また、空気孔44には、ボックス部40内に収容した土壌が空気孔44から漏出するのを防止するためのネット11を配設している。
【0097】
また、下ボックス部40bには上ボックス部40aと同様に外壁材1に空気孔44と同様の穴を設けているが、この穴は、貯水用トレー4に貯留される貯留水と空気を流通させるための流通口10として機能する。
【0098】
水浄化装置42は、図9に示すように、貯水用トレー4内に貯留された水がボックス部40内に収容した土壌に吸収される際に、水や空気を流通させながら水を浄化するとともに、貯留水51に溶解した土壌41の成分をイオン化する役割を有するものであり、空気及び水流通手段としての多孔質体収容体50と、同多孔質体収容体50内に挿通した空気取込手段として機能する筒状の通気道6とで構成している。なお、図9において、通気道6は説明の都合上短く記載しているが、通気道6は、貯水用トレー4と水浄化装置42とボックス部40とを組み立てた際に、ボックス部40の上部開口から通気道6の先端部が突出する程度の長さとしている。
【0099】
多孔質体収容体50は、周壁面及び底面に水を流通可能に形成した多数の連通孔を備える第1収容部45と、前述の通気道6が装着された第2収容部47とを備えており、第2収容部47の更に上部には、直径をボックス部40の内径と略同径とし、メッシュ生地で平面視円形状に形成した土壌漏出防止網48と防根シート18とを配設している。
【0100】
第1収容部45には、水を浄化する多孔質体(例えば、活性炭や竹炭、備長炭、軽石等)が収容されており、水中に含まれる夾雑物等を除去して貯水用トレー4から土壌41へ供給される水の浄化を行うようにしている。また、貯留水51に溶解した土壌41の成分をイオン化して、土壌41に供給される水を活性化させるようにしている。
【0101】
第2収容部47には、軽石や土壌菌を多く含有する微生物塊が収容されており、第1収容部45で浄化された水に、通気道6からの空気と軽石と土壌菌を接触させて、ミネラル分や有用菌を多く含む水を植栽した植物に対して供給可能に構成している。また、第2収容部47には、吸水性ポリマーが収容されており、水分を保持するとともに、土壌41に水分が不足した際に、水分を徐放する役割を有している。特に、この第2収容部47の内部では、吸水性ポリマーの表面に、土壌菌叢が常在することとなるため、固定装置Dに植栽するバイオマスの種類によらず、土壌41の微生物バランスを最適な状態で一定に保つことができるようにしている。
【0102】
また、土壌漏出防止網48は、ボックス部40内に収容した土壌が貯水用トレー4へ落下するのを防止するためものである。また、防根シート18は、植栽したバイオマスの根部が、多孔質体収容体50に絡みつかないようにするためのものである。
【0103】
このような固定装置Dによれば、図10(b)に示すように、貯水用トレー4中に溜まった貯留水51を毛管現象により吸い上げて、第1収容部45で夾雑物が除去し、次いで第2収容部47にて有用菌やミネラル分を添加して、土壌41に供給することができる。なお、土壌41は、通気、通水、保水、保肥作用があり、土壌菌類の生存に適合するものであれば、必ずしも天然の土壌を用いる必要はなく、例えば比較的軽量な人工の土を使用するようにしても良い。
【0104】
また、多孔質体収容体50は、図11及び図12に示すように、貯水用トレー4と多孔質体収容体50とが略一体的となるように構成しても良い。
【0105】
具体的には、図11に示すように、貯水用トレー4の中央部に形成した截頭円錐状の通気台部23上に、給水体24と、多孔質体収容部25と、防根シート18とを積層して構成することができる。なお、図11中、符号27は、固定装置Dの移動を容易とするために、貯水用トレー4の裏面部の四隅に取り付けられたキャスターである。このキャスター27は、必要に応じて貯水用トレー4より取り外すことができる。
【0106】
ここで通気台部23は、その上面部に複数の通気穴を穿設してなる通気平面部29が形成されており、図12に示すように、貯水用トレー4の底面から、通気台部23上に配設した給水体24へ向けて、白抜きの矢印33で示すように、空気を流通可能としている。
【0107】
また、給水体24は、その裏面部に前述の通気台部23と嵌合する形状の截頭円錐凹部28を備える外観視略円盤状に形成しており、貯水用トレー4内に貯留されている貯留水51を、流通口10を介して通水したり保水可能なスポンジ素材で形成している。また、給水体24の前記通気平面部29と当接する部分はスポンジ素材の厚みを肉薄状としており、通気平面部29を介して通気した空気が、さらに多孔質体収容部25へ向けて通気できるよう構成している。なお、図12に示す矢印34は、流通口10を介して流通する貯留水51及び空気の流れを示している。
【0108】
多孔質体収容部25は、前述の第1収容部45、及び、第2収容部47と同様の機能を担うものであり、多孔質体(例えば、活性炭や竹炭、備長炭、軽石等)や土壌菌、吸水性ポリマーの混合物を、土壌漏出防止網48で包み込んで、外観視略円盤状に成形している。
【0109】
この多孔質体収容部25では、給水体24を介して送られてくる空気や貯留水51が、土壌漏出防止網48を介して内部に導入され、多孔質体に接触することにより、接触した空気や貯留水51にイオンを含有させる。
【0110】
また、貯留水51の一部は、多孔質体収容部25内に収容した吸水性ポリマーにより担持され、多孔質体収容部25内部の潤いを保つこととなる。
【0111】
そして、多孔質体収容部25にてイオンを含んだ空気や貯留水51は、防根シート18を介して栽培土壌8に拡散し、栽培土壌8に多量のイオンを供給し、植栽したバイオマスの生育を促進することとなる。
【0112】
なお、図11では、断面視円形状のボックス部40を装着すべく、通気台部23、給水体24、多孔質体収容部25、防根シート18を平面視円形状に形成したが、ボックス部40の断面視形状に応じて適宜変更可能であるのは言うまでもない。
【0113】
次に、本実施形態に係る固定装置Dでのバイオマスの生育試験について説明する。
【0114】
本試験では、固定装置Dに植栽したバイオマスと、一般の市販プランターに植栽したバイオマスとの生育度合いの比較を行った。本試験では、被検体として植栽するバイオマスとしてサツマイモ(鳴門金時)を選択し、約50日後に茂った葉の総面積を算出することで比較を行った。
【0115】
また、固定装置D及び市販のプランターに収容した栽培土壌8の量は、いずれも35Lで、多数の苗の中から無作為に選択し、各々2株ずつ植栽した。なお、植栽した4株の苗は、いずれも生育度合いに差がないことを確認している。
【0116】
その結果、市販のプランターにて栽培されたサツマイモ2株の葉の枚数は95枚、総面積約0.3m2であったのに対し、固定装置Dにて栽培されたサツマイモ2株の葉の枚数は164枚、総面積約1.29m2であった。
【0117】
この結果から、本実施形態に係る固定装置A〜Dによれば、イオン化したコロイド培養溶液を安定的に供給可能としたため、一般的なプランター等と比較して、土壌41中に植栽したバイオマスの生育を効果的に助長することができることが分かる。また、葉の枚数や面積が多いことから、活発に光合成を行いながら、効率的に炭酸ガスを固定化できる。
【0118】
上述してきたように、第1〜第4の実施形態に例示した本実施形態に係る固定装置A〜Dによれば、山林、砂漠、海岸、岩場、田畑、人為的に作られた広場、ベランダ、屋上の何れに設置しても効率的にバイオマスによる太陽熱と炭酸ガスの固定を行うことができる。
【0119】
また、本実施形態に係る固定装置A〜Dは、生ゴミ等を栽培土壌8中に埋設することにより、堆肥やボカシ肥料を生成する生ごみ処理醗酵器としても使用することが可能である。このとき、栽培土壌8には、バイオマスが植生していても良く、植生していなくてもよい。
【0120】
特に、栽培土壌8にバイオマスが植生している場合には、複数の固定装置A〜Dをビニルハウスのような閉鎖空間内に配置しておくことにより、埋設した生ゴミから発生する醗酵熱と炭酸ガスで、温室を形成することができ、バイオマスの育成をさらに助長することができる。また、この際発生した炭酸ガスは、植物の光合成に必要な肥料として消費されることとなる。
【0121】
〔固定装置を備える家屋〕
次に、上述してきたバイオマスによる太陽熱と炭酸ガスの固定装置を備える家屋について説明する。図13は固定装置を備える家屋Eの正面図、図14及び図15は家屋の各階の構造を示した平面図である。
【0122】
上述してきた固定装置A〜Dは、それ単独でも炭酸ガスを吸収・固定してバイオマス(植物)を栽培生産する装置であるが、家屋の構成の一部として組み込んで、後に詳説する予め家屋に備えられた一連の発電機構と連設した系とする事で、その発電機構より発生する炭酸ガスを吸収し、太陽エネルギーをバイオマスエネルギーに変換し、炭酸ガスを家屋の循環系内に封じ込め、固定することが可能となる。
【0123】
また、本実施形態に係る固定装置を備える家屋は、さまざまな発電機構を家屋の各所に配設していることから、水力、風力、火力、太陽光等の各種物理的エネルギーを可及的有効に利用して起電することができる。
【0124】
また、本実施形態に係る固定装置を備える家屋は、上述の物理的エネルギーの電気への変換機構と、前述した固定装置A〜Dのように植物、(人間を含む)動物、バクテリア、等の生命力を起源とする生態エネルギー変換機構とを備えており、この二つのエネルギー変換機構を有機的に連係させて、日常的に利用可能なエネルギーとして、備蓄、循環させるものであると言える。
【0125】
以下、本実施形態に係る家屋Eについて具体的に説明すると、図13に示すように、地上3階、地下1階からなり、図14及び図15に示すように、2階〜屋上にはバイオマスによる太陽熱と炭酸ガスの固定装置Dが備えられるとともに、屋上に固定装置Dを稼働するために必要なバイオ補助装置60が備えられている。
【0126】
以下、各階の設備等について説明する。1階フロア61は、住人が生活する上で必要な設備等を備えるフロアであり、屋外から家屋Eに出入りするための玄関66や、客間67、居間59、図示しないダイニング、浴室、トイレ、書斎が備えられている。
【0127】
2階フロア62は、住人の寝室などの4つの部屋62a〜62dと、廊下62eと、住人が上下階へ移動するための階段62gと、ベランダ62fとで構成している。
【0128】
特に、この2階フロア62は、ベランダ62fに複数の固定装置Dを配設している点で特徴的である。
【0129】
具体的には、家屋の日照エリアとなるベランダ62fには、大型の貯水用トレー4上に、複数の固定装置Dが形成されており、バイオマスによる太陽熱及び炭酸ガスの固定と、それによる食料の生産を可能としている。
【0130】
また、ベランダ62fの左右両側には、炭酸ガス供給口68,68が配設されており、壁の中に配設され、後述のバイオ補助装置60と連結する図示しない配管により送給される栽培液を、貯水用トレー4へ貯留可能としている。
【0131】
この貯水用トレー4に貯留された栽培液は、各固定装置Dに水分を供給するとともに、養分をも供給することとなる。
【0132】
また、貯水用トレー4には排水口9が形成されており、貯水用トレー4に貯留された余分な栽培液を排水して、略一定の液量レベルを保つことができるようにしている。なお、この排水口9から排水された栽培液は、余剰水回収口110より回収されて、異物やゴミ等を取り除かれた後に、再び他のベランダに配設された固定装置Dに供給されることとなる。
【0133】
3階フロア63は、作業室63a,63bと、階段63cとベランダ63dとで構成されている。
【0134】
特に、この3階フロア63は、2階フロア62のベランダ62fと同様に、ベランダ63dに固定装置Dを複数配設している点、及び、作業室63bに蓄電器69,69が備えられている点に特徴を有している。なお、固定装置Dは、2階フロア62のベランダ62fと同様であるため、説明を省略する。
【0135】
蓄電器69,69は、後述するバイオ補助装置60にて発電した電力を蓄積しておくための物であり、家屋Eの住人が使用する電力や、地下室65にて栽培される各種植物の電照用電源として使用される。
【0136】
また、作業室63aには、屋上フロア64へ上るための屋上階段70が設置されており、屋上フロア64にて作業可能としている。
【0137】
屋上フロア64は、図15(b)に示すように、陸屋根に形成された作業スペースであり、日照エリアであることから、複数の固定装置Dが配設されている。
【0138】
また、この屋上フロア64に特徴的には、各フロアに配設した固定装置Dへ養分を供給して、固定装置Dを稼働させるために必要なバイオ補助装置60が配設されている。
【0139】
このバイオ補助装置60は、図16に示すように、クロレラなどの光合成可能な微生物(藻類等)を太陽熱を照射しながら培養するバイオマス集中培養器71と、太陽熱を介して該バイオマス集中培養器で培養した微生物により発電を行うバイオ発電機72とで構成している。なお、図16は、バイオ補助装置60の理解を容易とするために模式的に示しており、各構成部分の長さや大きさ等は必ずしも正確なものではない。
【0140】
付言すれば、バイオ補助装置60は、太陽熱の集光又は太陽熱由来のエネルギーで、バイオマスを瞬時にガス化して行なうものであり、その時発生する高い温度差、電離したガス流体の誘電力、高い蒸気圧、生成した水素ガスの化学反応によって、夫々異なる原理の複数の発電機構が、連続した一連の系を為して行なわれる物である。常時バイオマスを供給するバイオマス集中培養器71を備えるこのバイオ補助装置60は、家屋内における循環系の連続運転を可能とする基軸となる。
【0141】
バイオマス集中培養器71は、遮光性を有する部材により構成され、植物性バイオマスと水とを混合した液体中の生体植物性バイオマスに光合成の暗反応を行わせるバイオマス混濁液貯留槽73と、透光性を有する管により構成され、前記貯留槽に貯留している前記液体を流過させる過程において、前記液体に含まれる生体植物性バイオマスに光合成の明反応を行わせて増殖させるバイオマス増殖管74とを備えている。
【0142】
なお、バイオマス増殖管74の頂部には断面視略円弧状とした太陽電池パネル75と、多数の翼片を組み合わせ、風を受けることにより回転して発電するよう構成した風力発電機76が配設されており、バイオマス集中培養器71の稼働に必要な電力をまかなえるようにしている。また、ここで余剰に発生した電力は、3階フロア63に配設した蓄電器69,69に蓄電され、電力が不足した場合には、同じく蓄電器69,69から電力が供給されるように構成している。
【0143】
また、バイオマス集中培養器71は、バイオマス増殖管74へ培養液を供給する培養液供給機77とを備えている。
【0144】
培養液供給機77は、培養液を貯留する培養液槽77aと、この培養液槽77aに貯留している培養液をバイオマス増殖管74へ送給する送給ポンプ77bとを備えており、培養液供給管77cによりバイオマス増殖管74と連通連結されている。
【0145】
この培養液供給機77からバイオマス増殖管74へ供給する培養液は、尿素、第1リン酸カルシウム、硫酸マグネシウム、ブドウ糖、その他と適量のビタミン類及びミネラル類等を配合し、pHを6.0〜7.7に調整した水溶液としている。
【0146】
バイオマス増殖管74は、バイオマス混濁液を貯留する貯留槽として機能するバイオマス混濁液貯留槽73と、バイオマスであるクロレラ等を増殖させるバイオマス増殖管78とを備えている。
【0147】
バイオマス混濁液貯留槽73は、外界からの光を遮断可能な遮光性を有する部材により形成し、内部に常時所定量のバイオマス混濁液を貯留させることによって、クロレラに光合成における暗反応を行わせるように構成している。
【0148】
一方、バイオマス増殖管78は、光透過性の高いアクリル樹脂等により形成しており、バイオマス混濁液がこのバイオマス増殖管78を循環する過程において、クロレラに光合成における明反応を行わせるように構成している。
【0149】
このように、本実施形態のバイオマス増殖管74では、バイオマス混濁液貯留槽73を遮光性部材により形成する一方、バイオマス増殖管78を光透過性の高い部材により形成することによって、クロレラが効率的に光合成を行って増殖できるように構成している。
【0150】
また、このバイオマス混濁液貯留槽73には、後述する炭酸ガス供給管79が連通連結されており、この炭酸ガス供給管79を介して、バイオ発電機72で発生した炭酸ガスをバイオマス混濁液貯留槽73の底部からバイオマス混濁液中へ供給するように構成している。
【0151】
このようにバイオマス混濁液貯留槽73へ炭酸ガスを供給することによって、バイオマス混濁液貯留槽73におけるクロレラの増殖効率を向上させることができるだけでなく、発電の過程で生じる炭酸ガスを大量に大気中へ排出することもないので、温室効果の発生を抑制することができる。
【0152】
また、このバイオマス混濁液貯留槽73は、底部を漏斗状に形成することにより、成熟して沈殿してきたクロレラを、この漏斗状に形成した底部中央に集積させて、底部近傍におけるバイオマス混濁液中のクロレラの濃度を高めるように構成している。
【0153】
そして、このクロレラの濃度を高めたバイオマス混濁液を、バイオマス供給管80を介してバイオ発電機72へ供給するように構成している。
【0154】
また、本実施形態のバイオマス増殖管74では、バイオマス混濁液貯留槽73からバイオマス増殖管78へ、バイオマス混濁液貯留槽73内において比較的未成熟のクロレラが浮遊している表層近傍のバイオマス混濁液を流入させ、当該バイオマス増殖管78を通過させる過程でクロレラに効率よく明反応を行わせることによってクロレラを活性化させ、その後、再びバイオマス混濁液貯留槽73へ戻すことにより、クロレラに糖や脂肪酸、アミノ酸等の栄養素を効率よく合成させて成熟させるように構成している。
【0155】
特に、このバイオマス増殖管78は、光透過性が高く可撓性を有するアクリル樹脂等により形成された一本のチューブを、バイオマス混濁液貯留槽73の底部側から上方へ向けて立設させた二重螺旋構造となるように成形して構成している。
【0156】
具体的に説明すると、このバイオマス増殖管78は、バイオマス混濁液貯留槽73の底部から垂直に立設した支柱81を中心として螺旋を描くように、上記一本のチューブをバイオマス混濁液貯留槽73におけるバイオマス混濁液の比較的浅い位置から、支柱81の上端まで巻回させて形成したバイオマス混濁液の往路78aと、往路を形成した螺旋の内側に、支柱81の上端から支柱の下端まで、支柱81を中心として螺旋を描くようにチューブを巻回させて形成したバイオマス混濁液の復路78bとを備えている。
【0157】
そして、このバイオマス混濁液貯留槽73では、往路78aの始点をバイオマス混濁液の流入口とし、復路78bの終点をバイオマス混濁液の流出口としている。また、バイオマス混濁液の流入口には、バイオマス混濁液貯留槽73に貯留しているバイオマス混濁液をバイオマス増殖管78へ送出する送出ポンプ78cを配設している。なお、この送出ポンプ78cは、太陽電池パネル75及び風力発電機76により発電した電力の一部を利用して駆動するように構成している。
【0158】
このように、バイオマス増殖管78は、螺旋状に形成したバイオマス混濁液の往路78aの内側に、この往路78aと連通した螺旋状の復路78bを形成した二重螺旋構造としているため、往路78aを流れる未成熟なクロレラの方が、復路78bを流下するクロレラよりも光を受光しやすく、これにより未成熟のクロレラに効率的に明反応を行わせることができる。
【0159】
さらに、このバイオマス増殖管78では、往路78aを構成するチューブの流路断面積と、復路78bを構成するチューブの流路断面積とが略同じ断面積となるように構成しているが、往路78aを構成するチューブは、毛細管現象が働くように断面視略偏平状に構成しており、また、復路78bを構成するチューブは毛細管現象が働かないような管形状としている。
【0160】
そのため、通常使用時には、送出ポンプ78cを殆ど作動させずに、バイオマス混濁液をバイオマス混濁液貯留槽73からバイオマス増殖管78へ、そして、バイオマス増殖管78からバイオマス混濁液貯留槽73へと循環させることができるので、バイオマスの培養に要するエネルギーを可及的低減しながら、培養効率をさらに向上させることができる。
【0161】
すなわち、本実施形態では、バイオマス増殖管78におけるバイオマス混濁液の往路78aを形成するチューブの上面と下面との間隔を極めて小さく、しかも、偏平状に構成しているため、この往路78aを構成するチューブの毛細管現象を利用して、バイオマス混濁液貯留槽73からバイオマス増殖管78へバイオマス混濁液を吸い上げることができる。さらに、バイオマス混濁液が頂部に至り流下へ転じる復路78bの管形状は、毛細管力の働かない形状としているため重力で流下することとなる。しかも、復路78bに入ったバイオマス混濁液中のクロレラは、光エネルギーを吸収して比較的重くなっているため、自重により復路78bを下方へ流下し、このバイオマス混濁液が流下する力が往路78aにおいてバイオマス混濁液を上方に吸い上げる吸引力として作用するので、僅かな力でバイオマス混濁液を循環させることができ、送出ポンプ78cの駆動に使用する電力を可及的に低減することができる。
【0162】
また、上記のように、バイオマス増殖管78におけるバイオマス混濁液の復路78bの管の形状を往路78aに比して円形状に形成したことにより、毛細管力が開放され、チューブにクロレラが詰まることを抑制しながら流過させることもできる。図17(a)に示すように、往路78aは毛細管力の働く偏平な管の形状と成す一方、図17(b)に示すように、復路78bは断面視略円形の管の形状としている。なお、往路78aの流通空間35の断面視における長さLは10〜30cm、幅D(間隙)は0.2〜0.3mm程度で、復路78bの流通空間36の内径は5.1mm〜10.7mmであり、往路78aの流通空間35の断面積と、復路78bの流通空間36の断面積とは略同じ面積か、又は、復路78bの流通空間36の方がやや大きい面積としている。また、復路78bの流通空間36は、流下させるバイオマス混濁液の粘度に応じて、毛細管力が生起されない管径としている。
【0163】
このように構成したバイオマス増殖管74では、バイオマス混濁液貯留槽73中において成熟したクロレラは自重により下方に沈殿し、バイオマス混濁液の流入口付近に浮遊しているクロレラは比較的未成熟でその大きさも非常に小さいため、この未成熟なクロレラを含むバイオマス混濁液が往路78aを構成する微細な偏平内径のチューブ内を詰まることなく毛細管力で上方へ向かって流れることとなる。
【0164】
その後、往路78aを流れる間に増殖したクロレラを含むバイオマス混濁液は、復路78bを流下することとなるが、上記のように、往路78aを構成するチューブの管の形状を偏平な形状としているため、毛細管力で上昇し、頂上部で毛細管力のない円形の管に流入することとなって、重力により流下することとなる。しかも、成熟したクロレラは比重が重くなっているため、チューブ内に詰まることがなく、成熟したクロレラを含むバイオマス混濁液は、再度バイオマス混濁液貯留槽73へ流れ込むこととなる。
【0165】
なお、本実施形態では、往路78aの流通空間35を断面視略矩形状としたが、これに限定されるものではなく、例えば、図17(c)に示すように、往路78aの内部に断面視において縦長ダイヤ型の空間が左右方向へ連通した流通空間37を形成して、毛管現象生起可能としながらも、流量を増加させるよう構成しても良い。
【0166】
また、同様に、図17(d)に示すように、断面視においてジグザグ状の流通空間38を形成することによって、毛管現象生起可能としながらも、流量を増加させるよう構成しても良い。
【0167】
この図17(c)や図17(d)に示す構成とする場合、流通空間37や流通空間38は、可及的狭隘な構造とするのが望ましく、対向する管壁の間隔が0.2〜0.5mm程度となるよう構成するのが良い。
【0168】
このようにして培養されたバイオマス混濁液は、バイオ発電機72に供給されて発電に使用されることとなる。換言すれば、バイオマス集中培養器71は、太陽光エネルギーや太陽熱エネルギーを生体に変換する、生体エネルギー変換機構として機能するとも言え、また、太陽熱と炭酸ガスの固定装置の一形態であるとも言える。
【0169】
次に、バイオ発電機72について具体的に説明する。
【0170】
バイオ発電機72は、バイオマス集中培養器71により生成されたバイオマス混濁液をプラズマ化する温度まで瞬時に加熱する反応炉90と、この反応炉90内の高温と炉外の外気との温度差により発電を行う熱素子発電部91と、反応炉90によりプラズマ化させたバイオマス混濁液のプラズマ流で電磁誘導により発電する電磁流体発電部92と、プラズマ化した高圧力のガス流でタービンを回転させて発電を行うガスタービン発電部93と、タービンを回転させた後のガス流の温度を調整し、同ガス中の水素ガス濃度を高めるとともに、水素ガスを分取するガス改質分取部101と、同ガス改質分取部101にて分取した水素と大気中の酸素とを反応させて発電を行う燃料電池発電部95とを備えており、バイオマス混濁液を用いて多段階で発電を行うよう構成している。
【0171】
換言すれば、バイオ発電機72は、生産されたバイオマス混濁液を加熱して瞬時に気化させる蒸気化手段にて発生した、高い温度差と、電離したガス流と、高い蒸気圧と、更に発生した水素ガスとにより、夫々異なる原理により発電する複数の発電手段が、連続した一つの系の中で作動するエネルギー変換機構を構成している。
【0172】
また、バイオマス集中培養器71から反応炉90へバイオマス混濁液を送給するバイオマス供給管80の中途部には、このバイオマス供給管80を流れるバイオマス混濁液へ、予めストックしておいた余剰バイオマスや、他の生物種のバイオマス、原油や石炭等の化石燃料(以下、総称して「補助燃料」とも言う。)を混入する反応成分調整器96を設けている。
【0173】
この反応成分調整器96は、バイオマス供給管80を流れるバイオマス混濁液に、粉末状態や液状化させた補助燃料(例えば、液化石炭や粉末状の石炭)を混入するように構成しており、バイオマス混濁液に混入する補助燃料の量を調節する調節バルブ96aを備えている。
【0174】
この調節バルブ96aは、補助燃料の量を調節して、バイオマス混濁液中の元素組成(例えば、バイオマス混濁液を構成する水素原子、酸素原子、炭素原子の含有比率)を調整するものであり、ガス改質分取部101にて水素ガスを生成するための水素原子源や、水素ガス生成反応に必要なその他の元素を調整しながら供給するためのものである。
【0175】
また、雨天や曇天等で日照不足の時には、バイオマス混濁液中のバイオマスの生育や増殖が十分でなく、バイオ発電機72での発電量が低下することも考えられるが、この場合にも、調節バルブ96aを適宜調整しながらバイオマス混濁液中に補助燃料を添加することにより、バイオマス混濁液の燃焼カロリーを確保することができ、安定した発電を実現することができる。
【0176】
なお、本実施形態では、反応成分調整器96は化石燃料をバイオマス混濁液に混入する構成としているが、例えば、反応成分調整器96に生ゴミ処理を行うコンポスト製造機の機能を付与し、ここで発酵により生成された有機物含有液や固体残滓をバイオマス混濁液に混入する構成としても良い。また、反応成分調整器96では、廃棄生ごみを微細に擂り潰し糊化して、反応表面積を拡大した状態としてバイオマス混濁液に混入させる構成としても良い。
【0177】
また、バイオマス供給管80の反応炉90側端部には、バイオマス集中培養器71から供給されるバイオマス混濁液を霧状とし、この霧状としたバイオマス混濁液を反応炉90内へ向けて噴射させる噴射ポンプ97を備えている。
【0178】
反応炉90には、反応炉90の内の温度を1000℃〜3000℃まで上昇させる被加熱体98が、反応炉90の炉外に露出させた状態で配設されている。この被加熱体98は、集光された太陽光により発熱する熱交換器としての機能を果たすものである。
【0179】
具体的には、反応炉90の下部には、太陽光を集光する凹面集光体99が角度調整可能に配設されており、同凹面集光体99の角度を太陽へ向けると共に焦点位置を被加熱体98に合わせることで、被加熱体98を1000℃〜3000℃に加熱可能としている。
【0180】
反応炉90には、一端を反応炉90内に臨ませ、他端を反応炉90外へ臨ませた熱電対100が多数配設されており、熱素子発電部91を構成している。この熱素子発電部91にてセーベック発電により生成された電力は、図示しない配線を介して3階フロア63の作業室63bに配設した蓄電器69,69に蓄電される。
【0181】
また、反応炉90内では、高温となった被加熱体98にバイオマス混濁液が噴霧される。すると、このバイオマス混濁液は熱解離により瞬時にプラズマ化し、上昇流となって電磁流体発電部92に至る。
【0182】
電磁流体発電部92は、耐熱性を有する筒状のプラズマ流管路102の周囲に磁石103を配設するとともに、この磁石103の磁界内に正負1対の電極83a,83bを配置して構成しており、電離した状態のプラズマ流がプラズマ流管路102内を上昇し、磁石103の磁界内を通過した際に、電極間に起電力を生じさせて発電を行うようにしている。この電磁流体発電部92にて生成された電力もまた、図示しない配線を介して3階フロア63の作業室63bに配設した蓄電器69,69に蓄電される。
【0183】
このように電磁流体発電に供されたプラズマ流は、高い温度と圧力を維持した状態でガスタービン発電部93に至ることとなる。
【0184】
ガスタービン発電部93は、内部に吸気管104aを介して送気されるガス流によって回転するスクリュー型のタービン104bと、このタービン104bと共に回転する所定の電圧が印加された一次コイル104cと、一次コイル104cが回転することにより生じる磁界の変化を電流に変換する二次コイル104dとを備えている。なお、ガスタービン発電部93の一次コイル104cは、所定の電圧が印加されることによって電磁石として機能するものであり、この一次コイル104cに印加される電圧に関しても、他の各発電部により発電した電力のうちの一部を利用するように構成している。
【0185】
そして、このガスタービン発電部93により発電した電力もまた、図示しない配線を介して3階フロア63の作業室63bに配設した蓄電器69,69に蓄電され、生活電力として使用することができるように構成している。
【0186】
また、このガスタービン発電部93は、ガス改質分取部101と連通連結されており、タービン104bを回転させたガス流は、次にガス改質分取部101側へ排気送気されることとなる。
【0187】
ガス改質分取部101は、タービンを回転させた後のガスから炭酸ガスを取り除く炭酸ガス除去部101bと、炭酸ガスが取り除かれたガス流の温度を水素生成に適した300℃〜500℃となるように制御してガスの改質を行う熱交換器101aと、改質されたガス中に含まれる2次炭酸ガスと水素とを分取する水素ガス分取部101cとを備えている。
【0188】
ガスタービン発電部93からガス改質分取部101に供給されるガス流中には、主に、炭酸ガスと、水素ガスと、一酸化炭素ガスと、メタンガスと、バイオマス混濁液の水分由来の水蒸気とが含まれており、まず、炭酸ガス除去部101bにて炭酸ガスの分取が行われる。この炭酸ガス除去部101bには、炭酸ガスのみを透過させる素材で形成した仕切壁(図示せず)が配設されており、供給されるガスを炭酸ガスと、その他の残余ガスとに分離し、炭酸ガスを取出し可能に構成している。
【0189】
炭酸ガス除去部101bにて分取された炭酸ガスは、炭酸ガス供給管79へ送給され、バイオマス集中培養器71や炭酸ガス供給口68,68へ供給されることとなる。
【0190】
一方、炭酸ガス除去部101bにて残存することとなった水素ガスと、一酸化炭素ガスと、メタンガスは、熱交換器101aへ至る。
【0191】
熱交換器101aは、ガス流を300℃〜500℃の温度に調整して残余ガスの成分を熱解離及び会合させ、水素ガスを生成するように構成している。具体的には、熱交換器101aは他の各発電部により発電した電力のうちの一部を利用してガス流を加温するヒータと、外部から供給される水を通水してガス流を冷却する冷却器(図示せず)とを備えており、ガス流の温度を調整可能としている。また、ガス流が接触する熱交換器101aの表面には、後述の反応を触媒する白金が備えられており、メタンガスと一酸化炭素と水とを反応させて、水素と二酸化炭素とを生成する。すなわち、熱交換器101aは、触媒作用を生起する白金と、ガス流との温度を調整して反応を促進する触媒機構として機能するものでもある。
【0192】
ここでの反応は、下記の反応式に従って行われることとなる。
44CO + 44H2O → 44CO2 + 44H2 ……(1)
30CH4 + 30H2O → 30CO + 17H2 ……(2)
30CO + 30H2O → 30CO2 + 30H2 ……(3)
すなわち、(1)に示すように、炭酸ガス除去部101bでの残余ガス中に含まれる一酸化炭素は、熱交換器101aにて水と反応し、炭酸ガスと水素ガスとが生成される。この反応により、ガス流中の水素濃度が高められる。
【0193】
また、(2)に示すように、炭酸ガス除去部101bでの残余ガス中に含まれるメタンガスは、熱交換器101aにて水と反応し、一酸化炭素と水素とが生成される。この反応によっても、ガス流中の水素濃度が高められる。
【0194】
さらに、(3)に示すように、(2)にて生成された一酸化炭素もまた、熱交換器101aにて水と反応し、炭酸ガスと水素ガスとが生成され、ガス流中の水素濃度が高められることとなる。
【0195】
このように、熱交換器101aでは、炭酸ガス除去部101bでの残余ガス中に含まれる一酸化炭素やメタンガスの殆どを炭酸ガスと水素ガスとに変換して、ガス流中の水素濃度を高めるとともに、炭酸ガス濃度もまた高められることとなる。なお、本実施形態では、熱交換器101aの触媒としての素材は白金を用いることとしたが、レニュームで構成するようにしても良い。また、図16上において、ガス改質分取部101は模式的に図示されており、実際には一酸化炭素やメタンガスが反応するのに十分な時間を与えることのできる形状(大きさや長さ)としている。
【0196】
この熱交換器101aにて改質されたガス流は、次に、水素ガス分取部101cに至ることとなる。
【0197】
この水素ガス分取部101cには、熱交換器101aにて生成された水素ガスと炭酸ガスとの混合ガスから、水素ガスだけを分取する分取膜が備えられている。
【0198】
ここで分取された水素ガスは、燃料電池発電部95に至り、また、炭酸ガスは、炭酸ガス供給管79へ送気されることとなる。
【0199】
具体的には、水素ガス分取部101cは、水素ガス供給管104を介して燃料電池発電部95と連通連結されており、炭酸ガス供給管79を介してバイオマス集中培養器71と連通連結されている。
【0200】
炭酸ガス供給管79によりバイオマス集中培養器71へ向けて送気された炭酸ガスは、バイオマス混濁液貯留槽73の下部から放散されて、バイオマスの光合成にて必要な炭酸ガスとなる。
【0201】
また、炭酸ガス供給管79の中途部には枝管106が配設されており、炭酸ガスの一部を2階フロア62や3階フロア63、屋上フロア64に配設した炭酸ガス供給口68を介して固定装置Dに供給して、炭酸ガスの固定化を行うとともに、作物の育成を助長するようにしている。この場合、固定装置Dに炭酸ガスを供給する方法としては、例えば、各固定装置Dをビニルハウスに収容しておき、このビニルハウス内に炭酸ガス供給口68から吐出される炭酸ガスを放散するように構成しても良く、また、炭酸ガス供給口68に至る枝管106の中途部に、炭酸ガスを水中に溶解するばっき槽(図示せず)を設け、炭酸ガスが溶解した水を各固定装置Dに供給するよう構成しても良い。
【0202】
燃料電池発電部95は、ガス改質分取部101から水素ガス供給管104を介して供給される水素ガスと空気中の酸素とを電気化学的に燃焼させることによって発電する燃料電池95aを備えている。
【0203】
そして、この燃料電池95aにより発電した電力もまた、図示しない配線を介して3階フロア63の作業室63bに配設した蓄電器69,69に蓄電され、生活電力として使用することができるように構成している。
【0204】
この燃料電池95aは、水素極となる第1電極95bと、酸素極となる第2電極95cと、これら第1電極95b及び第2電極95cを浸漬する電解液が充填された電解槽95dとを備えており、電解槽の第1電極95b近傍に水素ガス供給管104が連結されており、第2電極95cの近傍に酸素を供給するための酸素供給管105が連結されている。
【0205】
また、酸素供給管105には、外気を電解槽95dへ送気するための圧送ポンプ105aを備えている。また、この圧送ポンプ105aは、電解槽95dへ送気する酸素量を調整可能とする調整バルブを備えている。
【0206】
また、燃料電池発電部95は、燃料電池95aが発電する際に発生する熱を用いて冷水を温水に変換する温水器95eを備えており、この温水器95eから温水供給管95fを介して給湯することにより、浴室やキッチン、バイオマス集中培養器71等で利用できるように構成している。なお、図中の符号95gは、温水器95eへの水道水の供給量を調整する調整バルブである。
【0207】
このように、バイオ発電機72では、熱素子発電部91と、電磁流体発電部92と、ガスタービン発電部93と、燃料電池発電部95とにより、多段階で発電を効率的に行って、コージェネレーションを構成するようにしている。
【0208】
上述してきた構成を有する本実施形態に係る家屋では、コンパクトに管理可能でありながら、高効率で炭酸ガスを固定し、高い作物生産性を備えるコンテナ栽培様のバイオマスによる太陽熱と炭酸ガスの固定装置を備え、また、効率的な自家発電を行いながら家屋全体が太陽熱と炭酸ガスの固定装置となり、エネルギー循環システムが構築された家屋とすることができる。
【0209】
また、本発明は、コンパクトなコンテナボックス様の栽培器でありながら、基底部にイオン交換機能を持ち、この作用により植物が活力を得て、旺盛に光合成を行い、誰でも、何処でも、容易に栽培できる、水耕栽培と土壌栽培の長所を併せ持つ、バイオマス(植物)固定装置と、しかも、工業的手法で管理できる、高い生産性の農業技術を備えた家屋を提供するものであるとも言える。
【0210】
これらの発明によれば、都市空間を含む、人々の住む全ての領域で、大量の食糧とバイオマス燃料を生産し、循環させる機能を持つ家屋を提供する。此れにより人々の生活を自然循環サイクルに組み込み、大量の太陽熱と炭酸ガスを吸収固定し、地球温暖化を防止する事ができる。
【0211】
すなわち、本発明に係る、太陽エネルギー循環機能を持つ家屋の、バイオマスによる太陽熱と炭酸ガスの変換固定装置(栽培器)は、断熱性のボックスの基底部に通気性、通水性を持ち、高いイオン交換機能を持つ、イオン交換体が埋設され、その上に、栽培土壌が収容されている。
【0212】
このボックスの周辺には、此れに連なる複数の開口部と、微細孔を持つ通気道が配設され、活発にイオン交換を行っている。其のイオン環境の中で、バクテリア(土壌菌)、原生藻類、動植物、プランクトン、ミミズ類や小魚類等の、多種多様で大量の生命が生息する。
【0213】
それら生物の分泌する排泄物と体液は、水に溶け、イオン化された土壌微粒物質と、空気と、混ざり合って、生理生態コロイド溶液を形成する。生体の介在するイオン化されたコロイド溶液は、相互作用により自律的にイオン(PH)調整をする、自律生命圏を形成する。
【0214】
この多様な、イオン環境は作物の生長を助長するのみならず其の周辺の、(人間を含む)すべての生命活動を安定させ、酸化、還元のリズムを正し、心身の活動と安定、安息、蘇生に必要な、バイオセラピー効果をもたらす。
【0215】
植物体は微細化して、水と混濁し、太陽熱の高温炉でガス化すると、水素、メタン、一酸化酸素、炭酸ガスと成る。更に二次反応させる事で、全て水素と炭酸ガスに成る。
【0216】
この時、反応炉内と外部とでは約1000℃〜3000℃の高い温度差が生じる。この温度勾配の中に熱電対回路を設けると高い電圧を生じる。この時のガス流体は全て電離した高速流体となっており、磁界内に配設した電極間に強い電流を流す。更にこのガス体は高い気圧を持ちタービンを回して発電する。
【0217】
炭酸ガスと水素ガスには大きな質量の差が有るため、ヒィルターで分離出来る。分離された、炭酸ガスは植物に送られ再び、バイオマスに再生する。水素は燃料電池で電力と水になる。
【0218】
この原理の異なる四つの発電は、一連の系の中で連続して行なわれ、公害原因のない、従来にない、高い発電効率を得る。
【0219】
以上の生産活動は、本発明による植物栽培器機で、喜びと活力を得た、多くの人々の労働によって行われる。全員参加の、大量の食糧及びバイオマスの生産は、バイオマスによる、地球資源を増加する。
【0220】
同時に、増産される大量の植物は、大気中の太陽熱と炭酸ガスを大量に吸収し、温暖化を防止し地球環境までも正常化する。
従ってこの家屋は、人々の植栽生活を介して、家屋自体がバイオマスによる太陽熱と炭酸ガスを変換固定し、太陽エネルギーを循環させる機能体となっている。
【0221】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【0222】
例えば、図16を用いて説明したバイオマス集中培養器71において、往路78aの始端部に送出ポンプ78cを設け、バイオマス混濁液貯留槽73のバイオマス混濁液を往路78aへ供給することとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、復路78bの終端部に吐出ポンプを設け、復路78b中のバイオマス混濁液を、バイオマス混濁液貯留槽73側に吐出するよう構成しても良い。このような構成とすることにより、往路78aにて生起される毛細管力によるバイオマス混濁液の循環を補助することができる。
【符号の説明】
【0223】
1 外壁材
2 補強格子
3 支柱管
4 貯水用トレー
5 固定枠
6 通気道
8 栽培土壌
9 排水口
12 通気カップ
20 ボックス部
30 ボックス部
31 外壁材
32 空気孔
40 ボックス部
42 水浄化装置
43 連結棒
44 空気孔
45 第1収容部
47 第2収容部
50 多孔質体収容体
60 バイオ補助装置
63d ベランダ
64 屋上フロア
71 バイオマス集中培養器
72 バイオ発電機
73 バイオマス混濁液貯留槽
74 バイオマス増殖管
77 培養液供給機
77a 培養液槽
77b 送給ポンプ
77c 培養液供給管
78 バイオマス増殖管
78a 往路
78b 復路
78c 送出ポンプ
79 炭酸ガス供給管
80 バイオマス供給管
90 反応炉
91 熱素子発電部
92 電磁流体発電部
93 ガスタービン発電部
95 燃料電池発電部
96 反応成分調整器
101 ガス改質分取部
A 固定装置
B 固定装置
C 固定装置
D 固定装置
E 家屋
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16
図17