(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
長尺の鉄心用アモルファス磁性合金薄帯の単位ストリップを複数枚積層したものからなる複合ストリップを巻回したストリップ巻回体を保持したアンコイラと、前記アンコイラから引き出した複合ストリップをシヤーにより切断して形成した複数の短冊状の複合シートを積層することにより長手方向の端部に段部を有する積層体ブロックを形成する段積み装置と、前記段積み装置と前記アンコイラとの間に設けられて、前記アンコイラから引き出された複合ストリップを前記段積み装置に向けて送給するストリップ送給装置と、前記段積み装置により得られた積層体ブロックを巻枠の外周に巻き付けて巻鉄心を形成する鉄心巻回装置とを備えた巻鉄心製造装置であって、
前記ストリップ送給装置は、上部送出しローラ及び下部送出しローラと、両送出しローラの回転軸を互いに近づける方向に付勢するべく前記上部送出しローラ及び下部送出しローラの少なくとも一方を他方の側に加圧する加圧装置とを備えて、前記アンコイラから引き出された複合ストリップを前記上部送出しローラと下部送出しローラとの間に挟んで送給するように構成され、
前記アンコイラから引出された複合ストリップが前記上部送出しローラと下部送出しローラとの間を通る際に、前記アンコイラに巻かれていたときに該アンコイラの径方向の外側に向いていた複合ストリップの一方の主面が前記上部送出しローラ側に向いた状態になるように、前記アンコイラからの複合ストリップの引出方向が設定され、
前記下部送出しローラは硬質材料により、前記上部送出しローラは前記下部送出しローラよりも柔らかい軟質材料によりそれぞれ構成され、
前記加圧装置による加圧により前記下部送出しローラの外周の一部が送給しようとする複合ストリップとともに上部送出しローラに食い込んだ状態にされて、複合ストリップが両送出しローラの間を通過する際に湾曲した状態にされるように構成されていること、
を特徴とする巻鉄心製造装置。
長尺の鉄心用アモルファス磁性合金薄帯の単位ストリップを複数枚積層したものからなる複合ストリップを巻回したストリップ巻回体を保持したアンコイラと、前記アンコイラから引き出した複合ストリップをシヤーにより切断して形成した複数の短冊状の複合シートを積層することにより長手方向の端部に段部を有する積層体ブロックを形成する段積み装置と、前記段積み装置と前記アンコイラとの間に設けられて、前記アンコイラから引き出された複合ストリップを前記段積み装置に向けて送給するストリップ送給装置と、前記段積み装置により得られた積層体ブロックを巻枠の外周に巻き付けて巻鉄心を形成する鉄心巻回装置とを備えた巻鉄心製造装置であって、
前記ストリップ送給装置は、上部送出しローラ及び下部送出しローラと両送出しローラの回転軸を互いに近づける方向に付勢するべく前記上部送出しローラ及び下部送出しローラの少なくとも一方を他方の側に加圧する加圧装置とを備えて前記アンコイラから引き出された複合ストリップを前記上部送出しローラと下部送出しローラとの間に挟んで送給するように構成され、
前記アンコイラから引出された複合ストリップが前記上部送出しローラと下部送出しローラとの間を通る際に、前記アンコイラに巻かれていたときに該アンコイラの径方向の外側に向いていた複合ストリップの一方の主面が前記下部送出しローラ側に向いた状態になるように、前記アンコイラからの複合ストリップの引出方向が設定され、
前記上部送出しローラは硬質材料により、前記下部送出しローラは前記上部送出しローラよりも柔らかい軟質材料によりそれぞれ構成され、
前記加圧装置による加圧により前記上部送出しローラの外周の一部が送給しようとする複合ストリップとともに下部送出しローラに食い込んだ状態にされて、複合ストリップが両送出しローラの間を通過する際に湾曲した状態にされるように構成されていること、
を特徴とする巻鉄心製造装置。
前記アンコイラに保持されているストリップ巻回体に巻かれている複合ストリップを構成している複数枚の単位ストリップの間に生じる円周長の差が前記アンコイラとストリップ送給装置との間で複合ストリップを構成している単位ストリップに累積されるのを防ぐべく、前記アンコイラに保持されているストリップ巻回体の外径の減少に伴って前記加圧装置による加圧量を増大させていくように加圧装置を制御する加圧制御装置が設けられていること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の巻鉄心製造装置。
長尺の鉄心用アモルファス磁性合金薄帯の単位ストリップを複数枚積層したものからなる複合ストリップを巻回したストリップ巻回体を保持したアンコイラと、前記アンコイラから引き出した複合ストリップをシヤーにより切断して形成した複数の短冊状の複合シートを積層することにより長手方向の端部に段部を有する積層体ブロックを形成する段積み装置と、前記段積み装置と前記アンコイラとの間に設けられて、前記アンコイラから引き出された複合ストリップを前記段積み装置に向けて送給するストリップ送給装置と、前記段積み装置により得られた積層体ブロックを巻枠の外周に巻き付けて巻鉄心を形成する鉄心巻回装置とを備えた巻鉄心製造装置であって、
前記ストリップ送給装置は、上部送出しローラ及び下部送出しローラと両送出しローラの回転軸を互いに近づける方向に付勢するべく前記上部送出しローラ及び下部送出しローラの少なくとも一方を他方の側に加圧する加圧装置とを備えて前記アンコイラから引き出された複合ストリップを前記上部送出しローラと下部送出しローラとの間に挟んで送給するように構成され、
前記ストリップ送給装置は、前記上部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度又は前記下部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度を調整し得るように構成され、
前記アンコイラに保持されているストリップ巻回体に巻かれている複合ストリップを構成している複数枚の単位ストリップの間に生じる円周長の差が前記アンコイラとストリップ送給装置との間で複合ストリップを構成している複数の単位ストリップに累積されるのを防ぐべく、前記ストリップ送給装置の上部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度又は前記下部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度を制御する送出し速度制御装置が設けられていること、
を特徴とする巻鉄心製造装置。
前記アンコイラから引出された複合ストリップが前記上部送出しローラと下部送出しローラとの間を通る際に、前記アンコイラに巻かれていたときに該アンコイラの径方向の外側に向いていた複合ストリップの一方の主面が前記上部送出しローラ側に向いた状態になるように、前記アンコイラからの複合ストリップの引出方向が設定され、
前記送出し速度制御装置は、前記ストリップ巻回体の外径の減少に伴って、前記ストリップ送給装置の上部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度を、下部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度よりも高くしていくように、前記ストリップ送給装置の上部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度又は前記下部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度を前記ストリップ巻回体の外径の変化に対して制御することを特徴とする請求項4に記載の巻鉄心製造装置。
前記アンコイラから引出された複合ストリップが前記上部送出しローラと下部送出しローラとの間を通る際に、前記アンコイラに巻かれていたときに該アンコイラの径方向の外側に向いていた複合ストリップの一方の主面が前記下部送出しローラ側に向いた状態になるように、前記アンコイラからの複合ストリップの引出方向が設定され、
前記送出し速度制御装置は、前記ストリップ巻回体の外径の減少に伴って、前記ストリップ送給装置の下部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度を、上部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度よりも高くしていくように、前記ストリップ送給装置の上部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度又は前記下部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度を前記ストリップ巻回体の外径に対して制御することを特徴とする請求項4に記載の巻鉄心製造装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に示された周長差調整装置による場合には、送出しローラの他に、多数の周長差解消用のローラを必要とするため、ストリップ送給装置の構造が複雑になるだけでなく、複合ストリップをストリップ送給装置にセットする際に、複合ストリップを構成している脆弱な多数枚のアモルファス磁性合金薄帯(単位ストリップ)の間に周長差解消用のローラ部材を挿入する面倒な作業を必要とするため、準備作業に手間がかかるという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、周長差解消用のローラを用いることなく、アンコイラに巻かれている複合ストリップ内で生じている単位ストリップの周長差が、アンコイラとストリップ送給装置との間を伸びる複合ストリップ内に累積されて単位ストリップのしわや弛みが進展していくのを抑制又は防止することができるようにした巻鉄心製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、長尺の鉄心用アモルファス磁性合金薄帯の単位ストリップを複数枚積層したものからなる複合ストリップを巻回したストリップ巻回体を保持したアンコイラと、アンコイラから引き出した複合ストリップをシヤーにより切断して形成した複数の短冊状の複合シートを積層することにより長手方向の端部に段部を有する積層体ブロックを形成する段積み装置と、段積み装置とアンコイラとの間に設けられて、アンコイラから巻き戻した複合ストリップを段積み装置に向けて送給するストリップ送給装置と、段積み装置により得られた積層体ブロックを巻枠の外周に巻き付けて巻鉄心を形成する鉄心巻回装置とを備えた巻鉄心製造装置を対象とする。
【0010】
上記ストリップ送給装置は、上部送出しローラ及び下部送出しローラと、両送出しローラの回転軸を互いに近づける方向に付勢するべく上部送出しローラ及び下部送出しローラの少なくとも一方を他方の側に加圧する加圧装置とを備えて、アンコイラから引き出された複合ストリップを上部送出しローラと下部送出しローラとの間に挟んで送給するように構成されている。
【0011】
本発明の一態様では、アンコイラから引出された複合ストリップが上部送出しローラと下部送出しローラとの間を通る際に、アンコイラに巻かれていたときに該アンコイラの径方向の外側に向いていた複合ストリップの一方の主面が上部送出しローラ側に向いた状態になるように、アンコイラからの複合ストリップの引出方向が設定される。この場合、下部送出しローラが硬質材料により、上部送出しローラが下部送出しローラよりも柔らかい軟質材料によりそれぞれ構成されて、加圧装置による加圧により、下部送出しローラの外周の一部が送給しようとする複合ストリップとともに上部送出しローラに食い込んだ状態にされて、複合ストリップが両送出しローラの間を通過する際に湾曲した状態にされる。
【0012】
上記のように構成すると、複合ストリップが両送出しローラの間を通過する際に複合ストリップを湾曲させて、該複合ストリップの湾曲部で複数の単位ストリップの弧の長さに差を生じさせることができ、上部送出しローラにより近い位置にある単位ストリップの湾曲部の弧の長さを、上部送出しローラから離れた位置にある単位ストリップの湾曲部の弧の長さよりも長くすることができるため、複合ストリップが上部送出しローラと下部送出しローラとの間を通過する際に、複合ストリップを構成している複数の単位ストリップの送出し量(送出しローラ1回転当たりの送出し量)に差を持たせて、各単位ストリップの送出し量を、各単位ストリップがアンコイラに巻かれていた際の円周長に見合った量に補正することができる。即ち、アンコイラに巻かれていたときの円周長がより長い単位ストリップの送出し量を、アンコイラに巻かれていたときの円周長がより短い単位ストリップの送出し量よりも、その円周長の差分だけ多くすることができるため、アンコイラに巻かれていたときに生じていた単位ストリップの周長差が、アンコイラとストリップ送給装置との間を伸びる複合ストリップ内に累積されるのを防ぐことができる。複合ストリップが上部送出しローラと下部送出しローラとの間を通過する際に各単位ストリップと他の単位ストリップとの間に持たせる送出し量の差は、上部送出しローラ及び(又は)下部送出しローラを加圧する加圧装置による加圧量を調整して、複合ストリップの湾曲部の大きさを変えることにより調整することができる。
【0013】
本発明の他の態様では、アンコイラから引出された複合ストリップが上部送出しローラと下部送出しローラとの間を通る際に、アンコイラに巻かれていたときに該アンコイラの径方向の外側に向いていた複合ストリップの一方の主面が下部送出しローラ側に向いた状態になるように、アンコイラからの複合ストリップの引出方向が設定される。この場合は、上部送出しローラが硬質材料により、下部送出しローラが上部送出しローラよりも柔らかい軟質材料によりそれぞれ構成され、前記加圧装置による加圧により上部送出しローラの外周の一部が送給しようとする複合ストリップとともに下部送出しローラに食い込んだ状態にされて、複合ストリップが両送出しローラの間を通過する際に湾曲した状態にされる。
【0014】
上記のように構成した場合も、複合ストリップが上部送出しローラと下部送出しローラとの間を通過する際に、アンコイラに巻かれていたときの円周長がより長い単位ストリップの送出し量を、アンコイラに巻かれていたときの円周長がより短い単位ストリップの送出し量よりも、その円周長の差分だけ多くすることができるため、アンコイラに巻かれていたときに生じていた単位ストリップの周長差が、アンコイラとストリップ送給装置との間を伸びる複合ストリップ内に累積されるのを防ぐことができる。
【0015】
本発明の好ましい態様では、アンコイラに保持されているストリップ巻回体に巻かれている複合ストリップを構成している複数枚の単位ストリップの間に生じる円周長の差がアンコイラとストリップ送給装置との間で複合ストリップを構成している単位ストリップに累積されるのを防ぐべく、アンコイラに保持されているストリップ巻回体の外径の減少に伴って加圧装置による加圧量を増大させていくように加圧装置を制御する加圧制御装置が設けられる。
【0016】
上記のような加圧制御装置を設けて、ストリップ巻回体の外径の減少に伴って、加圧装置による加圧量を増大させていく制御を行うと、上部送出しローラと下部送出しローラとの間で複合ストリップに形成する湾曲部の形状をストリップ巻回体の外径の減少に伴って変化させて、送出しローラ1回転当たりの各単位ストリップの送出し量に付与する送り出し量の補正量を最適値に調整することができるため、ストリップ送給装置とアンコイラとの間で複合ストリップ内に単位ストリップの周長差が累積されるのを確実に防ぐことができる。
【0017】
本発明の更に他の態様では、ストリップ送給装置が、上部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度又は下部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度を調整し得るように構成され、アンコイラに保持されているストリップ巻回体に巻かれている複合ストリップを構成している複数枚の単位ストリップの間に生じる円周長の差がアンコイラとストリップ送給装置との間で複合ストリップを構成している複数の単位ストリップに累積されるのを防ぐべく、ストリップ送給装置の上部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度又は下部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度を制御する送出し速度制御装置が設けられる。
【0018】
本発明が対象とする巻鉄心製造装置では、アンコイラから引出された複合ストリップが上部送出しローラと下部送出しローラとの間を通る際に、アンコイラに巻かれていたときに該アンコイラの径方向の外側に向いていた複合ストリップの一方の主面が上部送出しローラ側に向いた状態になるように、アンコイラからの複合ストリップの引出方向を設定することもあり、アンコイラから引出された複合ストリップが上部送出しローラと下部送出しローラとの間を通る際に、アンコイラに巻かれていたときに該アンコイラの径方向の外側に向いていた複合ストリップの一方の主面が下部送出しローラ側に向いた状態になるように、アンコイラからの複合ストリップの引出方向を設定することもある。
【0019】
アンコイラからの複合ストリップの引出方向を前者のように設定する場合、上記送出し速度制御装置は、ストリップ巻回体の外径の減少に伴って、ストリップ送給装置の上部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度を、下部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度よりも高くしていくように、ストリップ送給装置の上部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度又は下部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度をストリップ巻回体の外径の変化に対して制御する。
【0020】
また、アンコイラから引出された複合ストリップが上部送出しローラと下部送出しローラとの間を通る際に、アンコイラに巻かれていたときに該アンコイラの径方向の外側に向いていた複合ストリップの一方の主面が下部送出しローラ側に向いた状態になるように、アンコイラからの複合ストリップの引出方向を設定する場合、送出し速度制御装置は、ストリップ巻回体の外径の減少に伴って、ストリップ送給装置の下部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度を、上部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度よりも高くしていくように、ストリップ送給装置の上部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度又は下部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度をストリップ巻回体の外径の変化に対して制御する。
【0021】
上記のような送出し速度制御装置を設けると、複合ストリップがストリップ送給装置を通過する際に、複合ストリップを構成している複数の単位ストリップの送出し速度に差を生じさせて、アンコイラに巻かれていたときの円周長がより長い単位ストリップの送出し量を、アンコイラに巻かれていたときの円周長がより短い単位ストリップの送出し量よりも、その円周長の差分だけ多くするように補正することができるため、アンコイラに巻かれていたときに生じていた単位ストリップの周長差が、アンコイラとストリップ送給装置との間を伸びる複合ストリップ内に累積されるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1又は2に記載された発明によれば、複合ストリップが
上部送出しローラと下部送出しローラとの間を通過する際に複合ストリップを湾曲させて、該複合ストリップの湾曲部で複数の単位ストリップの弧の長さに差を生じさせる
ことができ、これにより、複合ストリップが上部送出しローラと下部送出しローラとの間を通過する際に、該複合ストリップを構成している複数の単位ストリップの送出し量に差を
生じさせて、アンコイラに巻かれていたときの円周長がより長い単位ストリップの送出し量を、アンコイラに巻かれていたときの円周長がより短い単位ストリップの送出し量よりも、その円周長の差分だけ多くするように補正
することができるため、アンコイラに巻かれていたときに生じていた単位ストリップの周長差が、アンコイラとストリップ送給装置との間を伸びる複合ストリップ内に累積されるのを防ぐことができる。
【0023】
請求項3に記載された発明によれば、アンコイラに保持されているストリップ巻回体の外径の減少に伴って、加圧装置による加圧量を増大させていく制御を行うので、上部送出しローラと下部送出しローラとの間で複合ストリップに形成する湾曲部の形状をストリップ巻回体の外径の減少に伴って変化させて、送出しローラ1回転当たりの各単位ストリップの送出し量に付与する送り出し量の補正量を最適値に調整することができ、ストリップ送給装置とアンコイラとの間で複合ストリップ内に単位ストリップの周長差が累積されるのを確実に防ぐことができる。
【0024】
請求項4ないし6の何れかに記載された発明によれば、複合ストリップがストリップ送給装置を通過する際に、複合ストリップを構成している複数の単位ストリップの送出し速度に差を生じさせて、アンコイラに巻かれていたときの円周長がより長い単位ストリップの送出し量を、アンコイラに巻かれていたときの円周長がより短い単位ストリップの送出し量よりも、その円周長の差分だけ多くすることができるため、アンコイラに巻かれていたときに生じていた単位ストリップの周長差が、アンコイラとストリップ送給装置との間を伸びる複合ストリップ内に累積されるのを防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明に係る巻鉄心製造装置の全体的な構成を概略的に示したものである。図示の巻鉄心製造装置においては、巻鉄心を構成する鉄心ブロックを形成する際に用いるスライダーやクランプ類が、ストリップの移動方向に対して直角な方向に並べて2組設けられて、これら2組のスライダーやクランプ類を交互に用いて単位積層体の段積みを行うが、
図1(後記する
図2においても同じ。)においては、これらスライダーやクランプ類が1組のみ図示されている。なおスライダーやクランプ類を2組設ける場合、2組のスライダーやクランプ類を並べる方向は、ストリップの移動方向に対して直角な方向に限定されない。
【0027】
図1において20は、上面を水平方向に沿わせた状態で図示しないフレームに支持された固定テーブルである。固定テーブル20の後端部20aの後方(固定テーブルよりもストリップの送給方向の上流側)には、ストリップ送給装置21が配置され、固定テーブル20とストリップ送給装置21との間には、固定刃(下刃)22Aと、可動刃(上刃)22Bとを備えたシヤー22が配置されている。ストリップ送給装置21の後方(ストリップ送給装置よりもストリップの送給方向の上流側)には、アンコイラ23が配置され、アンコイラ23に、アモルファス非晶質磁性合金の複合ストリップASを巻回したドラム24が保持されている。複合ストリップASは、アモルファス非晶質磁性合金薄帯からなる長尺の単位ストリップを複数枚(例えば8枚)積層したものである。
【0028】
ストリップ送給装置21は、モータを駆動源とした図示しない駆動機構により回転駆動される下部送出しローラ21Aと、下部送出しローラ21Aの上方に配置されて、流体圧シリンダ70からなる加圧装置により下部送出しローラ側に加圧された上部送出しローラ21Bとを備えていて、アンコイラ23から引出された複合ストリップASを、下部送出しローラ21Aと上部送出しローラ21Bとの間に挟んでシヤー22に向けて送給する。
【0029】
固定テーブル20の上方には、互いに干渉しないように、固定テーブル20の幅方向(
図1の紙面と直角な方向)に間隔をあけた状態で配置されて、該固定テーブルの長手方向(複合ストリップの送給方向)に往復移動し得るように支持された第1及び第2のスライダSL1及びSL2が設けられている。これらのスライダは、第1及び第2のボールネジBS1及びBS2を備えたリニア駆動機構により固定テーブル20の長手方向に往復駆動される。なおスライダSL1及びSL2を往復動させるリニア駆動機構は、ボールネジを用いた機構に限定されるものではなく、リニアモータを駆動源としたもの等を用いてもよい。
【0030】
第1及び第2のスライダSL1及びSL2にはそれぞれ、互いに干渉しないように固定テーブル20の幅方向に間隔をあけて配置された第1及び第2の可動板M1及びM2が支持され、これらの可動板M1及びM2にはそれぞれ、複合ストリップASの先端を第1及び第2の可動板M1及びM2に対してクランプする第1及び第2のストリップフィード用クランプSF1及びSF2が取り付けられている。
【0031】
固定テーブル20の下方には、固定テーブル20の幅方向に間隔をあけて、第1及び第2のステップ送り用クランプSC1及びSC2が設けられている。これらのステップ送り用クランプは、第1及び第2のスライダSL1及びSL2にそれぞれ支持されていて、固定テーブル20上の複合シート(複合ストリップASをシヤー22により所定の長さに切断したもの)を、固定テーブル20の下側から該固定テーブルに設けられたスリットを通して、第1及び第2の可動板M1及びM2に対してクランプする。
【0032】
固定テーブル20の後端部20a側には、シヤー22により切断された固定テーブル上の複合シートをシヤー22寄りの位置で固定テーブルに対してクランプする第1及び第2のテールクランプTC1及びTC2が、固定テーブル20の幅方向に間隔をあけた状態で設けられている。
【0033】
上記固定テーブル20と、シヤー22と、スライダSL1,SL2と、可動板M1,M2と、ストリップフィード用クランプSF1,SF2と、ステップ送り用クランプSC1,SC2と、テールクランプTC1,TC2と、シヤー22、各クランプ等を制御する図示しない制御装置とにより、アンコイラから引き出した複合ストリップASを所定の長さに切断することにより形成した短冊状の複合シートの単体または該複合シートを更に複数個積層したものを単位積層体として、長さが異なる複数の単位積層体をそれぞれの位置を長手方向にずらした状態で積層することにより長手方向の端部に段部を有する積層体ブロックを形成する段積み装置31が構成されている。ストリップ送給装置31は、段積み装置31とアンコイラ23との間に設けられて、アンコイラから引き出された複合ストリップASを段積み装置31に受け渡す役目を果たす。
【0034】
固定テーブル20の前端部20bの前方には、鉄心巻回装置32が配置され、段積み装置31により形成された積層体ブロックBn (n=1,2,3,…)が鉄心巻回装置32に供給される。図示の鉄心巻回装置32は、回転自在に支持された巻枠(マンドレル)Mと、ループ状に形成されて多数のプーリPにより巻枠mに沿って走行するようにガイドされたエンドレスの巻込みベルトVと、巻込みベルトVを駆動する図示しない駆動機構とからなり、巻込みベルトVと巻枠mとの間に積層体ブロックB1 ,B2 ,…を順次巻き込んで円形の巻鉄心を製造する。この円形巻鉄心を矩形状に整形することにより、変圧器用鉄心を構成する。上記アンコイラ23と、ストリップ送給装置21と、シヤー22と、段積み装置31と、鉄心巻回装置32とにより巻鉄心製造装置が構成される。
【0035】
なお
図1に示した例では、巻枠mとして円形のものが用いられているが、巻枠Mとして矩形状のものを用いて、該矩形状の巻枠の外周に積層体ブロックB1 ,B2 ,B3 ,…を順次巻き付けてそれぞれの両端を接合することにより、矩形状の巻鉄心を直接製造する場合もある。
【0036】
図2は、
図1に示された巻鉄心製造装置の各部のうち、アンコイラ23と、ストリップ送給装置21と、シヤー22と、段積み装置31の一部とをより詳細に示したものである。
図2において、40は工場の床面に設置された架台、41は架台40に支持された固定フレームである。固定フレーム41は、架台40に下端が固定された図示しない支柱と該支柱に一端が固定されて固定フレーム41の上方を水平方向に延びる上部フレーム43を備えており、上部フレーム43の下方に固定テーブル20が配置されている。
【0037】
アンコイラ23は、回転軸23a1を有するドラム支持部23aを有していて、ドラム支持部23aに、アモルファス非晶質磁性合金の複合ストリップASを巻回したドラム24を保持するように構成されている。ドラム24は、ドラム支持部23aに嵌合されて保持された胴部24aと、胴部24aに固定された鍔部24bとを有する公知のもので、胴部24aにコイル状に巻回された複合ストリップASの巻回体Wが保持されている。
【0038】
固定テーブル20は、複合ストリップASの送給方向に細長く延びる矩形状を呈していて、その幅方向の中央部の下面に、長手方向に延びる支持脚部44が固定され、該支持脚部44の下端が架台40に固定されている。固定テーブル20には、支持脚部44の両側に位置させて、該固定テーブルの長手方向に互いに平行に延びる第1及び第2のスリット45A及び45Bが設けられている。上部フレーム43の下面には、固定テーブル20の幅方向に間隔をあけて該固定テーブルの長手方向に平行に延びる第1及び第2のガイドレール46A及び46Bが固定され、これらのガイドレール46A及び46Bにより、第1のスライダSL1及び第2のスライダSL2が、固定テーブルの長手方向に移動自在に支持されている。
【0039】
第1及び第2のスライダSL1及びSL2には、複合ストリップASの送給方向に伸びるネジ孔が設けられ、これらのスライダSL1及びSL2のネジ孔にそれぞれ第1及び第2のボールネジBS1及びBS2が螺合されている。ボールネジBS1及びBS2は図示しないサーボモータの出力軸に連結され、該サーボモータにより、第1のスライダSL1及び第2のスライダSL2が往復駆動されるようになっている。
【0040】
第1及び第2のスライダSL1及びSL2の下面にはそれぞれ、第1及び第2のクランプ昇降シリンダ(図示の例ではエアシリンダ)47A及び47Bが取り付けられている。昇降シリンダ47A及び47Bはそれぞれ下方に突出したピストンロッド47a及び47bを有していて、これらのピストンロッド47a及び47bの下端に第1及び第2の可動板M1及びM2が固定され、これらの可動板M1及びM2にそれぞれ第1のストリップフィード用クランプSF1及び第2のストリップフィードクランプSF2が取り付けられている。
【0041】
また第1及び第2のスライダSL1及びSL2の側面にそれぞれ第1及び第2のサイドフレーム50A及び50Bの上端が接続され、これらのサイドフレームの下端にそれぞれ第1の台車51A及び第2の台車51Bが連結されている。第1の台車51A及び第2の台車51Bの下部には車輪が取り付けられ、これらの台車の車輪は、固定テーブル20に設けられたスリット45A及び45Bの下方を両スリットに沿って延びるように位置決めされて設置ベース40上に固定された第1及び第2のガイドレール53A及び53Bの上を転動する。第1及び第2の台車51A及び51Bの上に、第1及び第2のステップ送り用クランプSC1及びSC2が取り付けられている。
【0042】
この例では、第1のスライダSL1が駆動されたときに該第1のスライダSL1とともに第1の可動板M1及び台車51Aが移動し、これに伴って第1のストリップフィード用クランプSF1及び第1のステップ送り用クランプSC1が複合ストリップASの送給方向に移動する。同様に、第2のスライダSL2が駆動されたときに該第2のスライダSL2とともに第2の可動板M2及び台車51Bが移動し、これに伴って第2のストリップフィード用クランプSF2及び第2のステップ送り用クランプSC2が複合ストリップASの送給方向に移動する。
【0043】
図2に示されたストリップ送給装置21は、複合ストリップASに下側から当接する下部送出しローラ21Aと、エアシリンダ70のピストンロッド70aの下端に取り付けられた上部送出しローラ21Bとを備えている。上部送出しローラ21Bは、シリンダ70により加圧された状態で複合ストリップASに上側から当接して該複合ストリップを下部送出しローラ21Aに押圧するピンチ位置と、複合ストリップASから離れて該複合ストリップの拘束を解除する退避位置との間を変位させられる。本実施形態では、流体圧シリンダ70により、上部送出しローラ21B及び下部送出しローラ21Aを加圧された状態で接触させるように上部送出しローラ21B及び下部送出しローラ21Aの一方を他方の側に加圧する加圧装置が構成されている。
【0044】
本実施形態では、アンコイラ23から複合ストリップASを引出す際の巻回体Wの回転方向をストリップ送給装置21側に向う方向(
図2において反時計方向)として、アンコイラに巻かれていたときにアンコイラの径方向の外側を向いていた複合ストリップASの厚み方向の一面を上方に向けた状態で、アンコイラから引出した複合ストリップをストリップ送給装置21の送出しローラ21A,21Bの間に導入するように、アンコイラ23からの複合ストリップの引出し方向が設定されている。ここで、便宜上、アンコイラに巻かれていたときにアンコイラの径方向の外側を向いていた複合ストリップASの厚み方向の一面Aaを複合ストリップの表面と呼び、その反対面Abを複合ストリップの裏面と呼ぶことにすると、本実施形態では、複合ストリップASがストリップ送給装置21により送給される際に、複合ストリップの表面及び裏面がそれぞれ上部送出しローラ21B及び下部送出しローラ21Aに接してシヤー側に送り出されるようになっている。
【0045】
ストリップ送給装置21とシヤー22との間には、ストリップ送給装置により送給される複合ストリップを支える受け渡しテーブル78が設けられている。
【0046】
上記の巻鉄心製造装置を用いて巻鉄心を製造する際には、アンコイラ23から引出した複合ストリップASを、ストリップ送給装置21により送給して、複合ストリップASの先端がシヤー22の近傍に設定されたクランプ位置に達したところで複合ストリップASの先端を第1のストリップフィード用クランプSF1によりクランプする。その後、第1のストリップフィード用クランプSF1を送給方向の前方側に所定距離移動させ、シヤー22により複合ストリップASを切断して短冊状の1つの複合シート(複合ストリップを所定の長さに切断したもの)を形成する第1の複合シート形成工程を行う。
【0047】
また複合ストリップASをストリップ送給装置21により送給して複合ストリップASの先端がクランプ位置に達したところで該複合ストリップの先端を第2のストリップフィード用クランプSF2によりクランプし、該第2のストリップフィード用クランプを送給方向の前方側に所定距離移動させた後、シヤー22により複合ストリップASを切断して他の複合シートを形成する第2の複合シート形成工程を行い、上記第1の複合シート形成工程と第2の複合シート形成工程とを交互に行うことにより、固定テーブル20上に単位積層体を形成する単位積層体形成工程を行う。
【0048】
上記単位積層体形成工程と、固定テーブル20に存在する単位積層体を第1及び第2のステップ送り用クランプSF1及びSF2の少なくとも一方により一括してクランプして送給方向の前方側に所定のずらし寸法だけ移動させるステップ送り工程との2つの工程を積層体ブロックが形成されるまで交互に行わせる。単位積層体形成工程では、第1または第2のストリップフィード用クランプSF1又はSF2が複合ストリップASをクランプして移動する過程で既に固定テーブル上に形成されている複合シートのシヤー22側の端部をテールクランプTC1,TC2により固定テーブル20に対してクランプしておき、第1及び第2のストリップフィード用クランプSF1及びSF2の一方が複合ストリップをクランプして移動する過程で、他方をクランプ位置に復帰させる。
【0049】
上記のようにして得られた積層体ブロックBn(n=1,2,…)を
図1に示された鉄心巻回装置32に送り込んで、巻鉄心を形成する。
【0050】
上記の巻鉄心製造装置において、アンコイラ23に巻回されている複合ストリップASの厚さをtとすると、各ターンの複合ストリップを構成している単位ストリップのうち、最外周の単位ストリップの円周長と最内周の単位ストリップの円周長との間には2πtの差がある。この周長差2πtは、アンコイラ23に巻回されている複合ストリップASの巻回体の外径Rの如何に関わりなく一定であり、アンコイラ23から複合ストリップASが引き出されるにつれてアンコイラ23に巻回されているストリップ巻回体Wの外径Rが小さくなっていっても、周長差2πtは一定である。アンコイラ23から複合ストリップASを引き出すにつれてストリップ巻回体Wの外径Rが小さくなっていくと、ストリップ巻回体Wの外周長2πRが小さくなっていき、複合ストリップを構成している最外周の単位ストリップの円周長と最内周の単位ストリップの円周長との差2πtがストリップ巻回体Wの外周長2πRに対して占める割合が大きくなって行くため、アンコイラから一定の長さの複合ストリップを引き出す間に複数の単位ストリップ相互間に生じる長さの差は、ストリップ巻回体Wの径の減少に伴って増大していく。
【0051】
従来の巻鉄心製造装置では、
図4に示されているように、下部送出しローラ21A及び上部送出しローラ21Bとして、外径が等しい硬質のローラを用いていたため、下部送出しローラ21A及び上部送出しローラ21Bがそれぞれ1回転当たりに送り出すストリップの送出し量が同じであり、複合ストリップを構成している複数の単位ストリップのそれぞれの送出し量が同一であった。そのため、従来の巻鉄心製造装置では、複合ストリップが上下の送出しローラの間を通過する際に、複数の単位ストリップ相互間の周長差が解消されることがなく、アンコイラとストリップ送給装置との間を延びる複合ストリップ内に周長差が累積されるのを避けられなかった。
【0052】
本実施形態においては、上記のような問題が生じるのを防ぐために、ストリップ送給装置21により複合ストリップASをシヤー22側に送り出す際に、送出しローラ1回転当たりの各単位ストリップの送出し量に、複合ストリップがアンコイラに巻回されていたときに各単位ストリップと他の単位ストリップとの間に生じていた周長差に相当する補正量を付加することにより、アンコイラ23とストリップ送給装置21との間で複合ストリップ内に周長差が累積されるのを防止する。
【0053】
そのため、本実施形態では、
図3に示されているように、下部送出しローラ21Aを金属のような硬質材料により構成し、上部送出しローラ21Bを下部送出しローラよりも柔らかいウレタンゴム等の軟質材料により構成して、流体圧シリンダ70(
図2参照)によって上部送出しローラ21Bを下部送出しローラ21A側に付勢することにより、下部送出しローラ21Aの外周の一部を送給しようとする複合ストリップASとともに上部送出しローラ21Bに食い込ませた状態にし、上部送出しローラ21Bと下部送出しローラ21Aとの間に挟まれた複合ストリップに湾曲部Acを生じさせるようにする。
【0054】
このように構成すると、複合ストリップの湾曲部Acにおいて、上部送出しローラ21Bにより近い位置にある単位ストリップの湾曲の弧の長さを、上部送出しローラ21Bから離れた位置にある単位ストリップの湾曲の弧の長さよりも長くすることができるため、複合ストリップが上部送出しローラ21Bと下部送出しローラ21Bとの間を通過する際に生じる、送出しローラ1回転当たりの各単位ストリップの送出し量に、各単位ストリップがアンコイラに巻かれていた際に生じていた周長差に相当する差を持たせることができ、アンコイラに巻かれていたときに生じていた単位ストリップの周長差が、アンコイラ23とストリップ送給装置21との間で複合ストリップ内に累積されるのを防ぐことができる。
【0055】
前述のように、アンコイラから一定の長さの複合ストリップを引き出す間に複数の単位ストリップ相互間に生じる長さの差は、ストリップ巻回体Wの径の減少に伴って増大していくため、下部送出しローラを硬質材料により構成し、上部送出しローラを軟質材料により構成して、両送出しローラの間に挟まれた複合ストリップを湾曲させることにより、両送出しローラが1回転する間に送り出される複数の単位ストリップの送出し量に差を持たせて、ストリップ送給装置とアンコイラとの間を延びる複合ストリップ内に単位ストリップの周長差が累積されるのを防ぐためには、ストリップ送給装置21で各単位ストリップに付与する送出し量の補正量を、アンコイラ23に保持されているストリップ巻回体Wの外径の減少に伴って大きくしていくように制御することが好ましい。
【0056】
ストリップ送給装置21の送出しローラが1回転する間に生じる各単位ストリップの送出し量は、上部送出しローラの付勢量を調整して、下部送出しローラの上部送出しローラ側への食い込み量を調整することにより適宜に調整することができる。従って、
図3に示されたような送出しローラを用いて、ストリップ送給装置21とアンコイラ23との間で複合ストリップ内に単位ストリップの周長差が累積するのを効果的に防ぐためには、アンコイラ23に保持されているストリップ巻回体Wの外径の減少に伴って流体圧シリンダ(加圧装置)70による加圧量を増大させていく加圧制御装置を設けるのが好ましい。
【0057】
図5は、マイクロプロセッサを用いて構成される加圧制御装置80の構成を概略的に示したものである。同図において、81は、アンコイラ23に保持されているストリップ巻回体Wに巻かれている複合ストリップASの巻取り量(残量)を検出するために通常アンコイラに設けられているアンコイラ巻取量検出手段、82はシヤー22による複合ストリップの切断長を検出する切断長検出手段である。切断長検出手段82は、シヤー22が各切断動作を行った後、次の切断動作を行う間にストリップ送給装置21がシヤー22に向けて送給する複合ストリップの送給量を検出するセンサ等により構成することができる。
【0058】
また
図5において、83はアンコイラ巻取量検出手段81により検出された複合ストリップの残量からストリップ巻回体Wの外径Rを演算するストリップ巻回体外径演算手段、84は、ストリップ巻回体外径演算手段83により演算されたストリップ巻回体Wの外径Rに対して、加圧装置87から上部送出しローラ21Bに与える加圧量の目標値を演算する目標加圧力演算手段、85は加圧装置70が上部送出しローラに与える加圧力を検出する加圧力センサである。目標加圧力演算手段84は、ストリップ巻回体の外径Rと加圧量の目標値との間の関係を与える加圧量目標値演算用マップを用いて、ストリップ巻回体Wの外径Rの減少に伴って値が増大していく加圧量の目標値を演算する。加圧量目標値演算用マップは、実験データに基づいて予め作成してマイクロプロセッサのROMに記憶させておく。また86は、加圧力センサ85により検出される加圧力を目標加圧力演算手段84により演算された目標加圧力に一致させるように流体圧シリンダ70からなる加圧装置87を制御する加圧装置制御部である。
【0059】
上記のような加圧制御装置80を設けて、ストリップ巻回体Wの外径の減少に伴って、加圧装置87による上部送出しローラ21Bの加圧量を増大させていく制御を行うと、上部送出しローラ21Bと下部送出しローラ21Aとの間で複合ストリップASに形成する湾曲部Acの形状をストリップ巻回体Wの外径の減少に伴って変化させて、送出しローラ1回転当たりの各単位ストリップの送出し量に付与する補正量を最適値に調整することができるため、ストリップ送給装置21とアンコイラ23との間で複合ストリップ内に単位ストリップの周長差が累積されるのを確実に防ぐことができる。
【0060】
上記の実施形態では、ストリップ送給装置21に設けられる加圧装置による加圧量を制御することにより、ストリップ送給装置21の送出しローラ1回転当たりの単位ストリップの送出し量に加える補正量を最適値に調整するようにしたが、ストリップ送給装置21の送出しローラ1回転当たりの単位ストリップの送出し量に加える補正量を調整する方法は上記の実施形態で示した方法に限定されない。
【0061】
例えば、上部送出しローラ21B及び下部送出しローラ21Aの双方を、外径が等しい硬質のローラにより構成するとともに、上部送出しローラ21B及び下部送出しローラ21Aのそれぞれの回転速度を個別に調整し得るようにストリップ送給装置21を構成しておいて、上部送出しローラ21Bによる複合ストリップの送出し速度と下部送出しローラ21Aによる複合ストリップの送出し速度とを制御することによっても、ストリップ送給装置21とアンコイラ23との間で複合ストリップ内に単位ストリップの周長差が累積されるのを防ぐことができる。
【0062】
図6は、上記のように、ストリップ送給装置の上部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度と、下部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度とを制御するようにした送出し速度制御装置90の構成例を示したものである。
図6において、91はアンコイラ23に設けられているアンコイラの残量を検出するアンコイラ巻取り量検出手段、92はシヤー22による複合ストリップの切断長を検出する切断長検出手段である。また93は、アンコイラ巻取量検出手段81により検出された複合ストリップの残量からストリップ巻回体Wの外径Rを演算するストリップ巻回体外径演算手段である。
【0063】
また94は、ストリップ巻回体外径演算手段93により演算されたストリップ巻回体Wの外径Rに対して、上部送出しローラ21Bによるストリップの送出し速度の目標値を演算する上部送出しローラ目標送出し速度演算手段、95は上部送出しローラ21Bによるストリップの送出し速度を検出する上部送出しローラ送出し速度検出手段、96は、上部送出しローラ送出し速度検出手段95により検出された上部送出しローラ21Bによるストリップの送出し速度を、上部送出しローラ目標送出し速度演算手段94により演算された目標値に一致させるように上部送出しローラ駆動装置97を制御する上部送出しローラ送出し速度制御部である。
【0064】
また94′は、下部送出しローラ21Aによる基準送出し速度を設定する下部送出しローラ基準送出し速度設定手段、95′は下部送出しローラ21Bによるストリップの送出し速度を検出する下部送出しローラ送出し速度検出手段、96′は、下部送出しローラ送出し速度検出手段95′により検出された下部送出しローラ21Aによるストリップの送出し速度を、基準送出し速度設定手段94′により設定された基準送出し速度に保つように下部送出しローラ駆動装置97′を制御する下部送出しローラ送出し速度制御部である。
【0065】
上部送出しローラ目標送出し速度演算手段94は、ストリップ巻回体の外径Rの減少に伴って上部送出しローラ21Bによるストリップの送出し速度を増加させるように、上部送出しローラ21Bによるストリップの送出し速度の目標値を演算する。
【0066】
図6に示された送出し速度制御装置90は、下部送出しローラ21Aによる複合ストリップの送出し速度を基準送出し速度に保つように下部送出しローラ駆動装置97′を制御するとともに、上部送出しローラ21Bによる複合ストリップの送出し速度を、ストリップ巻回体Wの外径Rの減少に伴って、下部送出しローラ21Aによる基準送出し速度よりも高くしていくように、上部送出しローラ駆動装置97を制御する。
【0067】
このような制御を行わせると、複合ストリップがストリップ送給装置21を通過する際に、該複合ストリップがアンコイラ23に巻かれていた際に該複合ストリップを構成する複数の単位ストリップに生じていた周長差に相当する分だけ、単位ストリップの送り速度に差を生じさせることができるため、アンコイラに巻かれていたときに生じていた単位ストリップの周長差が、アンコイラとストリップ送給装置との間で複合ストリップ内に累積されるのを防ぐことができる
【0068】
上記の実施形態では、下部送出しローラ21Aによる送出し速度を基準速度に保ち、上部送出しローラ21Bによる送出し速度をストリップ巻回体Wの外径Rの減少に伴って高くしていくように制御したが、アンコイラから引出された複合ストリップASが上部送出しローラと下部送出しローラとの間を通る際に、アンコイラに巻かれていたときに該アンコイラの径方向の外側に向いていた複合ストリップの一方の主面が上部送出しローラ側に向いた状態になるように、アンコイラからの複合ストリップの引出方向が設定されている場合、送出し速度制御装置は、ストリップ巻回体に巻かれている複合ストリップを構成している複数枚の単位ストリップの間に生じる円周長の差がアンコイラとストリップ送給装置との間で複合ストリップを構成している複数の単位ストリップに累積されるのを防ぐべく、ストリップ巻回体の外径Rの減少に伴って、ストリップ送給装置の上部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度を、下部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度よりも高くしていくように、上部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度又は下部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度を制御すれば良いので、上部送出しローラ21Bによる送出し速度を基準速度に保ち、下部送出しローラ21Aによる送出し速度をストリップ巻回体Wの外径Rの減少に伴って低くしていくように制御してもよい。
【0069】
またアンコイラから引出された複合ストリップが上部送出しローラと下部送出しローラとの間を通る際に、アンコイラに巻かれていたときに該アンコイラの径方向の外側に向いていた複合ストリップの一方の主面が下部送出しローラ側に向いた状態になるように、アンコイラからの複合ストリップの引出方向が設定されている場合には、ストリップ巻回体に巻かれている複合ストリップを構成している複数枚の単位ストリップの間に生じる円周長の差がアンコイラとストリップ送給装置との間で複合ストリップを構成している複数の単位ストリップに累積されるのを防ぐべく、ストリップ巻回体の外径の減少に伴って、ストリップ送給装置の下部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度を、上部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度よりも高くしていくように、上部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度又は下部送出しローラによる複合ストリップの送出し速度を制御するように送出し速度制御装置を構成すればよい。この場合、上部送出しローラによる送出し速度を一定として、下部送出しローラによる送出し速度をストリップ巻回体の外径の減少に伴って高くしていくように制御してもよく、下部送出しローラによる送出し速度を一定として、上部送出しローラによる送出し速度をストリップ巻回体Wの外径Rの減少に伴って低くしていくように制御してもよい。
【0070】
上記の各実施形態では、アンコイラ23から引出された複合ストリップASが上部送出しローラ21Bと下部送出しローラ21Aとの間を通る際に、アンコイラ23に巻かれていたときに該アンコイラの径方向の外側に向いていた複合ストリップの一方の主面(表面)Aaが上部送出しローラ側に向いた状態になるように、アンコイラからの複合ストリップの引出方向が設定されているが、
図7に示されているように、アンコイラから引出された複合ストリップが上部送出しローラ21Bと下部送出しローラ21Aとの間を通る際に、アンコイラに巻かれていたときに該アンコイラの径方向の外側に向いていた複合ストリップの一方の主面Aaが下部送出しローラ21A側に向いた状態になるように、アンコイラ23からの複合ストリップの引出方向が設定される場合にも本発明を適用することができる。
【0071】
図7に示すようにアンコイラからのストリップの引出方向を設定する場合には、下部送出しローラ21Aを軟質材料からなるローラにより構成し、上部送出しローラ21Bを硬質材料からなるローラにより構成して、加圧装置による加圧により上部送出しローラの外21Bの外周の一部が送給しようとする複合ストリップとともに下部送出しローラ21Aに食い込んだ状態になるようにしておくことにより、両送出しローラの間を通過する複合ストリップを湾曲した形状にして、前記の実施形態と同様に、複合ストリップがアンコイラに巻かれていた際に生じた単位ストリップの周長差がストリップ送給装置とアンコイラとの間で複合ストリップ内に累積するのを防ぐことができる。
【0072】
この場合、
図5に示した加圧制御装置80は、ストリップ送給装置の下部送出しローラ21Aの加圧量を、アンコイラに保持されているストリップ巻回体の外径の減少に伴って増大させていくように制御することになる。