【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明の座屈拘束型ブレースは、柱・梁のフレームに架設され、フレームの層間変形時に軸方向力を負担するブレースであり、軸方向両側部分に位置する端部と、この両側の端部間の中間区間に位置し、前記軸方向力を負担し、塑性化が想定される中間部とに前記軸方向力の作用方向に区分され、
前記中間部は
、前記ブレースの断面上の中心から放射方向の外側に分散して複数配置され
て前記軸方向力を負担する芯材と、この芯材を断面上の外周側から包囲しながら軸方向に連続的に配置され、前記芯材から実質的に分離し、前記芯材の変形を拘束する筒状の外側拘束材と、この外側拘束材の断面上の内周側から前記芯材を拘束し、軸方向に連続的に配置され、少なくとも前記中間部の区間において前記芯材から分離する内側拘束材とを備え、
前記芯材が前記中間部から前記端部にまで連続し、少なくとも前記端部の区間に、前記外側拘束材の断面上の内周側から前記芯材を拘束する端部拘束材が配置され、この端部拘束材が前記芯材に接合され、前記端部において前記芯材と前記端部拘束材が一体になっていることを構成要件とする。
【0013】
「柱・梁のフレームに架設される」とは、ブレース4がフレーム3の構面内(フレーム3内)に配置される場合と、構面の外側(フレーム3外)に配置される(外付けされる)場合を含む趣旨である。ブレース4の両側部分の接続部4A,4Aは主に柱1・梁2の接合部(フレーム3の隅角部)に接合されるが、ブレース4は柱1・梁2の接合部(フレーム3隅角部)間の他、
図16に示すように梁2の中間部と柱1・梁2の接合部間等に架設される場合もあるため、ブレース4の接続部4Aはブレース4の架設状態に応じ、フレーム3のいずれかの部分に接合され、必ずしも柱1・梁2接合部に接合されるとは限らない。
【0014】
芯材は軸方向の圧縮力と引張力を負担し、塑性化(降伏)によりエネルギを吸収しながら、圧縮力の負担により座屈の発生が想定される部分であり、例えばブレースがH形(I形)断面や十字形断面等の断面を形成する場合のフランジに相当し、ブレースの断面上の中心から半径(放射)方向の外側に分散して配置される部分である。
中間部4Cの区間の芯材41の断面形状は基本的に芯材41の軸方向に一定である(請求項7)。中間部4Cの区間の芯材41の断面形状が芯材41の軸方向に一定であることは、中間部4Cの区間の外側拘束材42と内側拘束材43の断面形状が芯材41の軸方向に一定であることでもある。
【0015】
ブレースがH形(I形)断面であれば、フランジはウェブの両側に2箇所配置されるから、芯材はその断面上、2箇所に分散し(
図4)、ブレースが十字形断面であれば、4箇所に分散される形になるが(
図5)、ブレースの断面形状はこれらには限られない。H形断面には例えば2本の溝形鋼をウェブにおいて背中合わせに接合した形も含まれ、十字形断面には4本の山形鋼を組み合わせて接合した形も含まれる。ブレースはこのように山形鋼を含め、複数本の形鋼を任意の断面形状に組み合わせて構成される場合もある。
【0016】
内側拘束材43は外側拘束材42の断面(軸に直交する断面)上の内周側(内側)から、外側拘束材42と共に芯材41(フランジ)を拘束する部材(部位)を指し、ブレース4がH形(I形)断面や十字形断面等である場合のウェブに相当する。ブレース4がH形断面の場合は、ウェブはI形になり(
図4)、十字形断面の場合は十字形になる(
図5)。内側拘束材43(ウェブ)は外側拘束材42と対になって芯材41の圧縮力負担時の変形を拘束するが、芯材41が圧縮力を負担するときに、芯材41から圧縮力が伝達されることがないよう、あるいは芯材41から伝達される圧縮力の一部を負担することによって座屈を生ずることがないよう、内側拘束材43は少なくともブレース4の中間部の区間において芯材41(フランジ)から分離する。
【0017】
外側拘束材42と内側拘束材43が「軸方向に連続的に配置される」とは、軸方向に不連続にならずに連続して存在することと、軸方向の一部区間において不連続になる部分がありながらも、全体として連続に近い状態で断続的に配置されることを言う。「連続に近い状態」とは断続的に配置される外側拘束材42,42間、または内側拘束材43,43間に不連続部分(空隙)が存在しながらも、全体としてはその不連続部分の存在(空隙の大きさ)が、芯材41を外周側から、または内周側から拘束する効果が失われない程度に留まることを言う。
【0018】
「内側拘束材43が少なくともブレース4の中間部4Cの区間において芯材41(フランジ)から分離する」とは、内側拘束材43がブレース4の中間部4Cの区間でのみ芯材41から分離する場合と、中間部4Cの区間と端部4Bの区間の双方(ブレース4の全長)に亘って芯材41から分離する場合があることを言う。内側拘束材43がブレース4の中間部4Cの区間でのみ分離することは、端部4Bの区間では内側拘束材43が芯材41に接合され、一体化することであり、その場合の内側拘束材43は端部拘束材44を兼ねることになる(請求項3)。内側拘束材43がブレース4の全長(中間部4Cから端部4Bにまで)に亘る長さを持ちながら、ブレース4の全長に亘って分離することは、端部4Bの区間では内側拘束材43とは異なる別の端部拘束材44が端部4Bの区間に配置され、芯材41に接合され、一体化することである。その場合の内側拘束材43とは別の端部拘束材44は例えば内側拘束材43(ウェブ)の幅方向両側等に配置されることになる。
【0019】
「ブレース4の端部4B」は前記したブレース4の両側部分の接続部4A,4Aを除いた、接続部4A,4Aより中間部4C寄りの一部の区間であり、芯材41が軸方向力の負担に伴う曲げモーメントにより塑性化するときに、塑性ヒンジの形成が想定される区間を指す。「ブレース4の中間部4C」はこの「塑性ヒンジの形成が想定される区間」である軸方向両側の端部4B,4Bを除いた区間を指す。端部拘束材44は「ブレース4の端部4B」の区間において芯材41に接合され、一体化することで、芯材41の断面積を増大させ、芯材41の剛性と強度を高める働きをし、芯材41の端部における塑性ヒンジの形成を防止する機能を持つ。
【0020】
「少なくとも端部4Bの区間に、外側拘束材42の断面上の内周側から芯材41を拘束する端部拘束材44が配置され」とは、端部拘束材44が「ブレース4の端部4B」の区間にのみ配置される場合と、「端部4B」の区間から前記の接続部4Aの区間にまで連続し、接続部4Aの一部を兼ねる場合があることを言う。端部拘束材44は前記のように内側拘束材43が兼ねることもある(請求項3)。「端部4B」の区間から接続部4Aの区間までは、
図1に示すように芯材41も連続することがある。
図1〜
図3は内側拘束材43が端部4Bから接続部4Aにまで連続し、端部4Bの端部拘束材44と接続部4Aを兼ね、芯材41も「端部4B」の区間から接続部4Aにまで連続し、接続部4Aを兼ねている場合の例を示している。
【0021】
芯材41(フランジ)と内側拘束材43(ウェブ)はブレース4を構成しながらも、内側拘束材43(ウェブ)が少なくともブレース4の中間部4Cの区間において芯材41(フランジ)から分離することで、芯材41がフレーム3から伝達される軸方向力を降伏後に至るまで負担する。内側拘束材43は芯材41と共に圧縮力を負担することから解放されることで、芯材41が変形しようとするときに芯材41に接触することにより芯材41の座屈を防止する役目を果たす。内側拘束材43(ウェブ)は芯材41(フランジ)と分離していない区間、例えばブレース4の軸方向の端部4Bの区間において芯材41(フランジ)に接合される場合に、この接合部分を通じて芯材41(フランジ)から伝達される限りにおいて軸方向力を負担する。
【0022】
前記のようにブレース4の端部4Bには、芯材41(フランジ)に接合されて一体となる端部拘束材44が配置され、この端部拘束材44はブレース4のウェブ(内側拘束材43)とは異なる断面形状の場合もある。但し、
図1、
図6、
図9〜
図11に示すように内側拘束材43は中間部4Cの少なくとも軸方向中央部の一部の区間を除き、あるいは端部4Bの少なくとも一部の区間、もしくは中間部4Cの区間と端部4Bの区間との境界を除き、中間部4Cから端部4Bにまで連続し、端部拘束材44が内側拘束材43と同一の断面形状になることもある(請求項2)。
【0023】
請求項2における「内側拘束材43が中間部4Cの少なくとも軸方向中央部の区間を除き、中間部4Cから端部4Bにまで連続し」とは、
図1〜
図3に示すように内側拘束材43が中間部4Cの少なくとも軸方向中央部の区間を除き、中間部4Cから端部4Bにまで連続して存在することを言う。また請求項2における「内側拘束材43が端部4Bの少なくとも一部の区間、もしくは中間部4Cの区間と端部4Bの区間との境界を除き、中間部4Cから端部4Bにまで連続し」とは、
図6、
図9〜
図11に示す例のように内側拘束材43が端部4Bの少なくとも一部の区間、あるいは中間部4Cの区間と端部4Bの区間との境界を除き、中間部4Cから端部4Bにまで連続的に存在することを言う。
【0024】
前者(
図1〜
図3)の場合、内側拘束材43は端部拘束材44を兼ねる。後者(
図6、
図9〜
図11)の場合、内側拘束材43は端部4Bの一部区間、もしくは中間部4Cと端部4Bとの境界を除き、連続して存在するのであるから、端部拘束材44は内側拘束材43(ウェブ)とは異なり(別部材になり)、端部拘束材44が内側拘束材43(ウェブ)が互いに異なる断面形状にあることもあるが、端部拘束材44と内側拘束材43との間の一部区間が不在になる(欠如する)だけで、端部拘束材44は内側拘束材43と同一の断面形状になることもある。
【0025】
図1のF−F線断面図を示す
図4−(d)に示すように
図1の例におけるブレース4の軸方向中央部の、後述の内側補剛材45,45で挟まれた区間は内側拘束材43が不在であることを示している。
図6、
図9〜
図11では中間部4Cと端部4Bの境界に位置する端部拘束材44の端面と内側拘束材43の端面間は空隙(内側拘束材43と端部拘束材44が不在)であることを示している。
【0026】
内側拘束材43が中間部4Cの少なくとも軸方向中央部の一部の区間において、あるいは端部4Bの少なくとも一部の区間、もしくは中間部4Cの区間と端部4Bの区間との境界において不連続(不在)になり、内側拘束材43の一部に空隙が形成されることには、芯材41が特に軸方向圧縮力を負担し、一部に変形が生じて内側拘束材43に接触したときに、芯材41からの圧縮力が内側拘束材43の全長に伝達されないようにする意味がある。軸方向圧縮力により変形した芯材41が内側拘束材43に接触することがあったとしても、内側拘束材43の軸方向の一部区間が分断されていることで、内側拘束材43に反力が生じにくくなるため、内側拘束材43に圧縮力が伝達されにくくなる。仮に内側拘束材43に圧縮力が伝達されたとしても、後述の分割された内側拘束材構成材43a,43a単位で圧縮力が負担されるため、内側拘束材43の全長が圧縮力を負担する状態にならなくなる。同じことは軸方向の一部区間において不連続になる部分を有する場合の外側拘束材42にも言える。
【0027】
図1〜
図3に示す例のように中間部4Cの軸方向中央部の区間において内側拘束材43が不在になり、内側拘束材43が空隙区間を挟んで後述の内側拘束材構成材43a,43aに分割される場合には、芯材41の軸方向の一部区間において内側拘束材43が不在であること(空隙の形成)によって芯材41に局部的な塑性化が生ずる可能性があり得る。空隙の形成によって芯材41の局部的な塑性化が想定される状況は、前記した「内側拘束材43に不連続部分(空隙)が形成されることの結果として内側拘束材43による芯材41の拘束効果が失われる状況」に相当する。
【0028】
内側拘束材43への空隙の形成に伴い、芯材41に局部的な塑性化が想定される場合には、芯材41に座屈が引き起こされる可能性も想定されるため、芯材41の局部的な塑性化の発生を回避するために、
図7、
図8に示すように必要により空隙に芯材41を補剛するための付加内側補剛材47が溶接等により接合される。いずれの配置例においても付加内側補剛材47は内側拘束材43の軸方向の一部区間において内側拘束材43を不在にしたことによる、芯材41が負担する圧縮力の、内側拘束材43への伝達回避の効果が失われないよう、内側拘束材43に接触しない状態に配置される。
【0029】
図7は対向する芯材(フランジ)41,41間に、芯材41の幅と同程度の幅を持つ板状の付加内側補剛材47を内側補剛材45に平行に配置し、両芯材41,41に接合した場合、
図8は内側拘束材43の空隙(内側拘束材構成材43a,43a間の間隔)と同程度の幅を持つ付加内側補剛材47を内側拘束材43に平行に配置し、両芯材41,41に接合した場合である。
図7では付加内側補剛材47の幅が芯材41の幅に等しく、
図8では付加内側補剛材47の幅が内側拘束材43の空隙の幅に等しいが、それぞれの幅の大きさは任意である。
図7、
図8では付加内側補剛材47を分かり易くするために、便宜的に網目を掛けて示している。
【0030】
前記のようにブレース4の端部4Bには、芯材41(フランジ)に接合されて一体となる端部拘束材44が配置されるが、請求項3において端部拘束材44を内側拘束材43(ウェブ)が兼用する
図1〜
図3に示す例の場合には、内側拘束材43が芯材41の一部区間と接合されることに伴い、接合部分(接合区間)を通じて内側拘束材43が芯材41の負担している圧縮力の一部を負担することがあり得る。
【0031】
この場合には、内側拘束材43が圧縮力を負担する状態になり得るため、内側拘束材43はブレース4の中間部4C区間のいずれかの部分において軸方向に分離し(請求項3)、分割された複数本の内側拘束材構成材43a,43aから構成されることになる(
図1、
図3)。
図1、
図3ではブレース4の軸方向中央部において内側拘束材43(ウェブ)が不在になり、軸方向中央部に関して両側に、2本の内側拘束材構成材43a,43aに分割されているが、内側拘束材43(ウェブ)が不在になる軸方向の位置は任意であり、内側拘束材構成材43aの軸方向の分割数も任意である。
【0032】
但し、
図6、
図9〜
図11に示すように内側拘束材43(ウェブ)が端部拘束材44を兼用せず、内側拘束材43とは別の端部拘束材44が芯材41に接合される場合には、内側拘束材43はその全長に亘って芯材41から分離した状態になるため、中間部4C区間のいずれかの部分において分離する必要はなく、複数本の内側拘束材構成材43aから構成される必要はない。内側拘束材43が全長に亘って芯材41から分離した状態は、
図6に示すように例えば後述の内側補剛材45が内側拘束材43に接合されると共に、内側拘束材43(ウェブ)と内側補剛材45の上下端が芯材41に接触した状態に置かれることで維持される。
【0033】
図6、
図9〜
図11に示す例の場合、芯材41がブレース4を構成する鋼材のフランジであり、端部拘束材44と内側拘束材43は前記のように同一の断面形状の、または異なる断面形状のウェブになるが、中間部4Cから端部4Bにまで連続する芯材41(フランジ)には端部拘束材44のみが溶接等により接合される。
図6では端部拘束材44と芯材41との接合(溶接)区間を太線で示している。この場合の端部4B側のウェブ(端部拘束材44)から分離した中間部4C側のウェブ(内側拘束材43)には芯材41(フランジ)から軸方向力が伝達されることがないため、中間部4C側のウェブ(内側拘束材43)は
図1〜
図3に示す例のように必ずしも中間部4Cの区間において軸方向に分離する必要はない。内側拘束材43とは異なる別の端部拘束材44を芯材41に接合することは、
図6、
図9〜
図11に示す例の他、H形鋼等のウェブとは異なる断面形状の端部拘束材44を使用することによっても可能である。
【0034】
このように請求項1では内側拘束材43とは別部品の端部拘束材44が芯材41に接合されることもあるが、請求項2では内側拘束材43がブレース4の端部4B区間にまで連続し、端部拘束材44を兼ねる
図1〜
図3に示す例、あるいは内側拘束材43と端部拘束材44がブレース4の端部4B区間において分離する
図6に示す例のいずれの場合にも、例えばH形鋼を構成するウェブプレートとフランジプレートを配置し、軸方向の一部区間においてウェブプレートとフランジプレートを溶接すればよいことになる。すなわち、ウェブプレートとフランジプレートを組み立ててH形鋼を完成させる組立H形鋼の製造要領でブレース4を製作することが可能であり、ブレース4の製作作業性がよい。
【0035】
内側拘束材43はブレース4の本体(芯材41(フランジ)+内側拘束材43(ウェブ))がH形断面、もしくは十字形断面等である場合のウェブに相当する部分であるから、芯材41(フランジ)の曲げ変形を軸方向の全長に亘って拘束するため、主に芯材41が接触し得る部分(芯材41の幅方向中心部)の曲げ変形を拘束する。芯材41が内側拘束材43に接触しない部分(芯材41の幅方向中心部以外の部分)における曲げ変形をも拘束する必要性がある場合は、その曲げ変形は内側拘束材43の軸方向に沿い、間隔を置いて断続的に配置される、例えば
図1、
図3、
図10に示す板状等の内側補剛材45によって拘束される(請求項4、請求項5)。
【0036】
図1、
図3、
図10に示す板状の内側補剛材45は芯材41(ブレース4)の軸方向に断続的に配置される点で断続型内側補剛材と、あるいは板部分の面内方向が芯材41(ブレース4)の幅方向を向く点で幅方向型内側補剛材と呼ぶことができる。この断続型、もしくは幅方向型の内側補剛材45はブレース4の幅方向には、内側拘束材43の両側に配置されることで、主として内側拘束材43の幅方向の変形を拘束する働きをする。
【0037】
断続型の内側補剛材45は芯材41が内側拘束材43に接触しない部分(芯材41の幅方向中心部以外の部分)における曲げ変形を拘束する働きをするから、芯材41の、内側拘束材43に接触しない部分に接触し得る形状をすればよいため、
図1、
図3、
図10に示すように面内方向が芯材41の幅方向を向く板状の形状をすることが使用鋼材量の点から合理的である。但し、断続型の内側補剛材45は必ずしも板状である必要はなく、芯材41の軸方向に一定の長さを持つ溝形鋼、山形鋼等の使用も可能である。内側補剛材45は板状の場合には、内側拘束材43の軸方向(面内方向)に交差する方向を向いて配置されるが、形鋼の場合には、その軸方向が内側拘束材43の軸方向を向いて配置される。
【0038】
断続型の内側補剛材45は機能的には内側拘束材43と同様に外側拘束材42の断面上の内周側から芯材41を拘束する働きをするため、芯材41が負担する軸方向力の一部を負担することがないよう、原則として、あるいは実質的に芯材41から分離した状態に置かれる(請求項4、請求項5)。内側補剛材45の少なくとも一部は基本的には内側拘束材43(ウェブ)に接合され、内側補剛材45は内側拘束材43に保持されることにより、芯材41から分離しながら、内側拘束材43の軸方向に間隔を置いて断続的に配置される状態を維持する(請求項4)。「内側補剛材45の少なくとも一部」とは、内側拘束材43(ウェブ)に接触し得る部分、あるいは内側拘束材43に対向する部分の少なくとも一部を言う。
【0039】
但し、内側拘束材43が芯材41から分離した状態にある(芯材41と接合されない状態にある)限り、断続型の、特に面内方向が芯材41の幅方向を向く板状の内側補剛材45の少なくとも一部が芯材41と接触した状態にあっても、芯材41が圧縮力を負担するときに芯材41から内側補剛材45を通じて内側拘束材43に伝達される圧縮力による影響はないか、小さい。また内側拘束材43が芯材41から分離している限り、断続型の内側補剛材45の少なくとも一部が
図9〜
図11に示すように芯材41に接合された状態にあっても、内側補剛材45と内側拘束材43が分離していれば(接合されていなければ)、芯材41が圧縮力を負担するときに芯材41から内側補剛材45を通じて内側拘束材43に伝達される圧縮力による影響はないか、小さい。この場合も、「内側補剛材45の少なくとも一部」とは、芯材41に接触し得る部分、あるいは芯材41に対向する部分の少なくとも一部を言う。
【0040】
このことから、内側補剛材45を芯材41の軸方向に間隔を置いて断続的に配置した状態を維持する役目を内側拘束材43に代わって芯材41に持たせるために、内側補剛材45の少なくとも一部は芯材41に接合されることもある(請求項5)。この場合、内側補剛材45は内側拘束材43から分離しながら、芯材41の軸方向に間隔を置いて断続的に配置され、少なくとも一部において芯材41に接合される(請求項5)。内側補剛材45は芯材41の変形時に内側補剛材45を経て芯材41から内側拘束材43に圧縮力が伝達されることがないよう、芯材41に接合される場合は、芯材41にのみ接合され、内側拘束材43には接合(溶接)されない。
【0041】
この場合の内側補剛材45は請求項4における内側拘束材43に代わり、芯材41に接合されることで、内側拘束材43(芯材41)の軸方向に間隔を置いて断続的に配置される状態を維持する。「内側補剛材45が内側拘束材43から分離すること」とは、内側補剛材45から内側拘束材43に芯材41の圧縮力が伝達されない程度に分離していればよい趣旨であり、内側補剛材45が内側拘束材43に接触していることを含む。
図10−(a)、(b)では内側補剛材45と芯材41との接合(溶接)区間、及び端部拘束材44と芯材41との接合(溶接)区間を太線で示している。
図10−(c)は(b)における内側補剛材45部分を拡大して示している。
【0042】
断続型の内側補剛材45が内側拘束材43と共に芯材41の周囲に配置される請求項4、請求項5では、芯材41が内側拘束材43と内側補剛材45に拘束されることで、芯材41の全体曲げ座屈と局部座屈に対する安定性が向上するため、芯材41が圧縮力を負担するときの降伏後の塑性変形能力が高まり、エネルギ吸収能力も上昇する。
【0043】
外側拘束材42は請求項1では内側拘束材43と対になって芯材41を拘束する働きをすればよいため、前記のように芯材41と共に中間部4Cから端部4Bにまで連続する場合と、連続に近い状態で断続的に(不連続に)配置される場合がある。外側拘束材42は芯材41と同じく、ブレース4の中間部4Cから端部4Bにまで連続するか、連続的に配置されることで、芯材41の変形を全長に亘って断面上の外周側から拘束する。
【0044】
外側拘束材42は芯材41の変形を拘束する機能のみを発揮すればよいため、軸方向に連続する場合は、芯材41と共に、軸方向力を負担することがないよう、芯材41からは芯材41の全長に亘って実質的に分離する。「実質的に分離する」とは、外側拘束材42の全長の内の一部において芯材41に接触する、あるいは接合されることがあっても、そのことが芯材41の変形を阻害しなければ、接触、もしくは接合を含む趣旨である。外側拘束材42が芯材41の軸方向に断続的に配置される場合は、少なくとも不連続区間においては隣接する外側拘束材42,42間で軸方向力が伝達されることはないため、必ずしも全外側拘束材42が芯材41から分離する必要はない。
【0045】
外側拘束材42が断続的に配置される場合、全外側拘束材42は芯材41の外周面との間にクリアランスを置いて芯材41から分離する場合と、接触した状態で分離する場合がある。外側拘束材42が軸方向に断続的に配置される場合に、各外側拘束材42が軸方向の一部において芯材41に接合されていたとしても、芯材41の軸方向の伸縮や曲げ変形に全長が追従することはないため、全外側拘束材42の全体としては芯材41から分離しているに等しい。
【0046】
外側拘束材42と芯材41間にクリアランスが確保される場合は、そのクリアランスの範囲での芯材42の曲げ変形が許容される。クリアランスは芯材41の断面上、芯材41のいずれかの部分との間に確保される場合と、芯材41の全外周面(表面)との間に確保される場合がある。クリアランスが芯材41の断面上、芯材41のいずれかの一部との間に確保される場合は、芯材41の他のいずれかの部分は外側拘束材42に接触する。
【0047】
請求項1では芯材41の断面上の外周に外側拘束材42が配置され、内周に、芯材41から分離した内側拘束材43が配置されることで、芯材41の全体曲げ座屈と局部座屈が防止される。芯材41の局部座屈防止の効果は芯材41に断面上の中心側から接触し得る断続型の内側補剛材45が配置される場合(請求項4、請求項5)に向上する。
【0048】
請求項1ではまた、ブレース4の端部4Bにおいてその端部4Bの区間に配置される端部拘束材44と芯材41とが接合され、一体になっていることで、端部4Bにおける芯材41の断面積が中間部4Cにおける断面積より増大し、ブレース4の端部4Bの区間における芯材41の剛性と強度が増加するため、塑性ヒンジの形成が回避される。
【0049】
芯材41から分離し、内側拘束材43に接合される断続型の内側補剛材45、もしくは芯材41に接合される断続型の内側補剛材45は内側拘束材43(芯材41)の軸方向に間隔を置いて断続的に配置されるが(請求項4、請求項5)、内側補剛材45が断続型でない場合は、
図12〜
図14に示すように中間部4Cの区間から端部4Bの区間にまで連続的に(連続して、もしくは連続に近い状態で断続的に)配置されることもある(請求項6)。後者の場合、内側補剛材46は中間部4Cの区間から端部4Bの区間にまで連続的に配置されるから、請求項4、請求項5における内側拘束材43に接触し得る区間では内側拘束材43を兼ねることができるため、
図12〜
図14に示すように内側拘束材43自体を不在にすることが可能である。
【0050】
すなわち、請求項6に記載の発明の座屈拘束型ブレースは、軸方向両側部分に位置する端部4B,4Bと、この両側の端部4B,4B間の中間区間に位置し、軸方向力を負担し、塑性化が想定される中間部4Cとに軸方向力の作用方向に区分され、中間部4Cが
、ブレース4の断面上の中心から放射方向の外側に分散して複数配置され
て軸方向力を負担する芯材41と、この芯材41を断面上の外周側から包囲しながら軸方向に連続的に配置され、芯材41から実質的に分離し、芯材41の変形を拘束する筒状の外側拘束材42と、この外側拘束材42の断面上の内周側から前記芯材41を拘束し、軸方向に連続的に配置され、少なくとも前記中間部4Cの区間において前記芯材から分離し、芯材41の軸方向に連続的に配置される内側補剛材46とを備える。芯材41は中間部4Cから端部4Bにまで連続し、少なくとも端部4Bの区間に、外側拘束材42の断面上の内周側から芯材41を拘束する端部拘束材44が配置され、この端部拘束材44が芯材41に接合され、端部4Bにおいて芯材41と端部拘束材44が一体になる。
【0051】
請求項6では内側補剛材46と外側拘束材42が、請求項1における外側拘束材42と内側拘束材43の関係と同じく、互いに対になって芯材41を拘束する働きをすればよいため、いずれも芯材41と共に中間部4Cから端部4Bにまで連続する場合と、連続に近い状態で断続的に(不連続に)配置される場合がある。連続する場合は芯材41から分離するが、断続的な場合は必ずしもその必要はない。
【0052】
請求項6の内側補剛材46は芯材41(ブレース4)の軸方向に連続的に配置される点で連続型、もしくは軸方向型内側補剛材と呼ぶことができ、この連続型の内側補剛材46は中間部4Cの区間においては
図12−(a)に示すように芯材41を外側拘束材42の断面上の内周側から拘束し、端部4Bの区間においては
図12−(b)に示すように端部拘束材44をその厚さ方向両側から拘束する。連続型(軸方向型)の内側補剛材46はコンクリートブロック(部材)のような中実断面材の他、溝形鋼、山形鋼等の開放形の鋼材、あるいは角形鋼管等の閉鎖形の中空断面材等が使用される。
【0053】
いずれの形状の場合も、連続型の内側補剛材46は芯材41の変形を拘束するために芯材41に接触し得る状態に置かれる。芯材41には芯材41からの軸方向力が伝達されないよう、接合されない。内側補剛材46が例えば図示するようにブロック状等の場合には、内側補剛材46は外側拘束材42よりも剛性が圧倒的に高いことで、芯材41の変形を拘束することに伴う外側拘束材42の変形を拘束する働きもし得るため、その働きが期待される場合には、内側補剛材46は外側拘束材42にも接触し得る状態に置かれる。
【0054】
請求項6では内側補剛材46が芯材41の軸方向に沿って連続する形状をするか、連続的に配置され、請求項1〜5における内側拘束材43を兼ねることで、請求項1〜5で必要とされた内側拘束材43が不要になるため、ブレース4の構成部材の種類が削減され、ブレース4の組み立てが単純化される。