特許第6125796号(P6125796)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6125796
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】広角レンズおよび広角レンズユニット
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/04 20060101AFI20170424BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   G02B13/04 D
   G02B13/18
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-239513(P2012-239513)
(22)【出願日】2012年10月30日
(65)【公開番号】特開2014-89349(P2014-89349A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 忠史
【審査官】 森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−113799(JP,A)
【文献】 特開2010−128100(JP,A)
【文献】 特開2007−233152(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/137739(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00−17/08
G02B 21/02−21/04
G02B 25/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4群6枚からなるレンズ群を備え、
前記レンズ群は、物体側から順に第1レンズ群、第2レンズ群、第3レンズ群、および第4レンズ群からなり、
前記第1レンズ群は、負のパワーをもつ単レンズからなり、
前記第2レンズ群は、負のパワーをもつ単レンズからなり、
前記第3レンズ群は、屈折率が異なるガラスレンズ同士を接合した正のパワーをもつ接合ガラスレンズであり、
前記第4レンズ群は、物体側および像側のうちの少なくとも一方側が非球面で、互いの屈折率が異なるプラスチックレンズ同士が接合された接合プラスチックレンズであり、
前記第3レンズ群と前記第4レンズ群との間に絞りを備え、
前記接合ガラスレンズでは、物体側のガラスレンズの屈折率が像側のガラスレンズの屈折率より大きく、
前記接合プラスチックレンズでは、像側のプラスチックレンズの屈折率が物体側のプラスチックレンズの屈折率より大きいことを特徴とする広角レンズ。
【請求項2】
前記接合プラスチックレンズは、正のパワーをもつプラスチックレンズと、負のパワーをもつプラスチックレンズとが接合されていることを特徴とする請求項1に記載の広角レンズ。
【請求項3】
前記レンズ群では、前記第3レンズ群以外のレンズ群が全てプラスチックレンズであることを特徴とする請求項1または2に記載の広角レンズ。
【請求項4】
前記第1レンズ群の像側の面が非球面であることを特徴とする請求項3に記載の広角レンズ。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の広角レンズがホルダに保持された広角レンズユニットであって、
前記レンズ群のうち、ガラスレンズからなるレンズ群は、リング状の枠体に保持された状態で前記ホルダに保持され、プラスチックレンズからなるレンズ群は、直接、前記ホルダに保持されていることを特徴とする広角レンズユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックレンズを用いた広角レンズ、および広角レンズユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の監視用途や車載用途で使用されるレンズには、高解像度が要求されている。かかる広角レンズにおいて、高解像度を得るには倍率色収差を補正する必要があるため、複数枚のレンズを組み合わせて広角レンズを構成することにより、倍率色収差補正をしている。かかる広角レンズに関して、複数枚のレンズの全てをプラスチックレンズとした構成が提案されている(特許文献1参照)。また、物体側から第1番目のレンズのみをガラスレンズとし、他の全てのレンズをプラスチックレンズとした構成が提案されている(特許文献2参照)。また、物体側から第3群目のレンズをガラス製の単レンズとし、かかるガラスレンズより像側にプラスチック製の単レンズを配置するとともに、かかる単レンズを非球面レンズとした構成が提案されている(特許文献3、4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−284620号公報
【特許文献2】特開2009−63877号公報
【特許文献3】特開2009−8867号公報
【特許文献4】特許第4864403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラスチックレンズを用いた場合には、ガラスレンズを用いた場合に比して低コスト化および軽量化が可能となる。しかしながら、図5に点線L96で示すように、ガラス材料は、温度が変化しても屈折率が略一定であるが、図5に実線L97で示すように、プラスチック材料は、温度が変化すると屈折率が大きく変化する。なお、図5に一点鎖線L98で示すように、他の種類のプラスチック材料の場合も、温度が変化すると屈折率が大きく変化する。すなわち、プラスチック材料の場合、種類にかかわらず、温度が変化した際の屈折率変化がガラス材料より大である。このため、プラスチックレンズを多用した広角レンズを用いると、環境温度によってピント位置が大きく変化し、解像度が変動するという欠点がある。
【0005】
例えば、図6に示すレンズユニット8は、広角レンズ80とホルダ30とを有しており、広角レンズ80は、物体側(被写体側/前側)から順に、負のパワーを持つ第1レンズ群11と、負のパワーを持つ第2レンズ群12と、正のパワーを有する第3レンズ群13と、正のパワーを有する第4レンズ群14とを有している。また、レンズユニット8は、第3レンズ群13と第4レンズ群14との間に絞り91を有している。なお、第4レンズ群14の後側(像側/被写体側とは反対側)には赤外線フィルタ92が配置されている。ここで、第1レンズ群11は、負のパワーをもつプラスチックレンズ81からなり、第2レンズ群12は、負のパワーをもつプラスチックレンズ82からなる。第3レンズ群13は、正のパワーをもつプラスチックレンズ83と負のパワーをもつプラスチックレンズ84との接合レンズからなり、第4レンズ群14は、正のパワーをもつプラスチックレンズ85と負のパワーをもつプラスチックレンズ86との接合レンズからなる。かかる構成によれば、4群6枚のレンズ構成において6枚のレンズの全てがプラスチックレンズであるため、低コスト化および軽量化を図ることができる。
【0006】
しかしながら、図6に示す広角レンズ80の−40℃、20℃、80℃におけるデフォーカスMTF(Modulation Transfer Function)特性は、図7(a)、(b)、(c)に示す通りであり、環境温度が20℃から変化すると、ピント位置がずれる結果、解像度が著しく低下する。ここで、図7の実線L91は、レンズ中心部におけるOTF(Optical Transfer Function)係数を示し、一点鎖線L92は、レンズ周辺部の放射方向におけるOTF係数を示し、点線L93は、レンズ周辺部の同心円方向におけるOTF係数を示しており、環境温度が20℃から変化すると、周辺部の解像度が著しく低下することがわかる。また、図3には、環境温度が変化した場合の中心部におけるピント位置の変化量を実線L71で示してある。なお、図5に示すレンズ構成は、本発明に対する比較例であり、従来例ではない。
【0007】
一方、引用文献3、4には、物体側から第3群目のレンズをガラスレンズとし、かかるガラスレンズより像側にプラスチックの単レンズを配置した構成が提案されているが、かかる構成では、倍率色収差を低減することが困難である。
【0008】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、温度変化に伴う解像度の低下を小さく抑えることのできるとともに、倍率色収差を低減することのできる広角レンズ、および広角レンズユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る広角レンズは、4群6枚からなるレンズ群を備え、前記レンズ群は、物体側から順に第1レンズ群、第2レンズ群、第3レンズ群、および第4レンズ群からなり、前記第1レンズ群は、負のパワーをもつ単レンズからなり、前記第2レンズ群は、負のパワーをもつ単レンズからなり、前記第3レンズ群は、屈折率が異なるガラスレンズ同士を接合した正のパワーをもつ接合ガラスレンズであり、前記第4レンズ群は、物体側および像側のうちの少なくとも一方側が非球面で、互いの屈折率が異なるプラスチックレンズ同士が接合された接合プラスチックレンズであり、前記第3レンズ群と前記第4レンズ群との間に絞りを備え、前記接合ガラスレンズでは、物体側のガラスレンズの屈折率が像側のガラスレンズの屈折率より大きく、前記接合プラスチックレンズでは、像側のプラスチックレンズの屈折率が物体側のプラスチックレンズの屈折率より大きいことを特徴とする。
【0010】
本発明では、4群以上のレンズ群のうち、解像度に最も影響を及ぼす正のパワーの第3レンズ群についてはガラスレンズを用いたため、プラスチックレンズを多用した場合でも、環境温度の変化に伴う解像度の低下を小さく抑えることができる。また、第3レンズ群(ガラスレンズ)の像側に、物体側および像側のうちの少なくとも一方側が非球面で互いの屈折率が相違するプラスチックレンズ同士が接合された接合プラスチックレンズが配置されているため、倍率色収差を低減することができる。また、接合プラスチックレンズでは、非球面のプラスチックレンズが接合されているため、球面収差等を低減することができる。それ故、解像度を高めることができる。
【0011】
また、前記第3レンズ群は、屈折率が異なるガラスレンズ同士を接合した接合ガラスレンズである。このため、第3レンズ群によっても倍率色収差を小さくすることができるので、解像度を高めることができる。
【0013】
本発明において、前記接合プラスチックレンズは、正のパワーをもつプラスチックレンズと、負のパワーをもつプラスチックレンズとが接合されている構成を採用することができる。
【0014】
本発明において、前記レンズ群のうち、前記第3レンズ群以外のレンズ群は全てプラスチックレンズであることが好ましい。かかる構成によれば、広角レンズの低コスト化および軽量化を図ることができる。
【0015】
本発明において、前記第1レンズ群の像側の面が非球面であることが好ましい。かかる構成によれば、最も物体側に位置するレンズによっても球面収差等の低減を図ることができる。
【0016】
本発明に係る広角レンズがホルダに保持された広角レンズユニットでは、前記レンズ群のうち、ガラスレンズからなるレンズ群は、リング状の枠体に保持された状態で前記ホルダに保持され、プラスチックレンズからなるレンズ群は、直接、前記ホルダに保持されていることが好ましい。かかる構成によれば、プラスチックレンズとガラスレンズとを共通のホルダに保持することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、4群以上のレンズ群のうち、第3レンズ群については、正のパワーをもつガラスレンズとする一方、他のレンズ群は全てプラスチックレンズである。このため、広角レンズの低コスト化および軽量化を図ることができる。また、4群以上のレンズ群のうち、解像度に最も影響を及ぼす正のパワーの第3レンズ群についてはガラスレンズを用いたため、プラスチックレンズを多用した場合でも、環境温度の変化に伴う解像度の低下を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係る広角レンズの説明図である。
図2】本発明の実施の形態に係る広角レンズのデフォーカスMTF特性を示す説明図である。
図3】本発明の実施の形態に係る広角レンズの温度特性を示す説明図である。
図4】本発明の比較例に係る広角レンズの説明図である。
図5】レンズ材料の温度特性を示す説明図である。
図6】本発明の参考例に係る広角レンズの説明図である。
図7】本発明の参考例に係る広角レンズのデフォーカスMTF特性を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照して、本発明を適用した広角レンズを説明する。なお、以下の説明においては、特別な指示がない限り、その単位はmmである。また、以下の説明においては、図6を参照して説明した構成との対応が分かりやすいように、対応する部分には同一の符号を付してある。さらに、以下の説明においては、物体側および像側のうちの少なくとも一方側が非球面であれば、他方側が球面であるか非球面であるかにかかわらず、「非球面レンズ」として説明する。
【0020】
実施の形態
(レンズユニットの構成)
図1は、本発明の実施の形態に係る広角レンズの説明図であり、図1(a)、(b)は、レンズユニットの断面図、および面番号の説明図である。なお、図1(b)では、面番号の後ろに付した「*」は、「*」が付された面が非球面であることを示す。
【0021】
図1に示すように、本形態のレンズユニット1(広角レンズユニット)は、広角レンズ20と、広角レンズ20を内側に保持する樹脂製のホルダ30とを有している。本形態において、広角レンズ20は、画角が190°の広角レンズとして構成されている。
【0022】
本形態において、広角レンズ20は、4群のレンズ群を備えている。より具体的には、広角レンズ20は、物体側(被写体側/前側)から順に、負のパワーを持つ第1レンズ群11と、負のパワーを持つ第2レンズ群12と、正のパワーを有する第3レンズ群13と、正のパワーを有する第4レンズ群14とを有しており、第3レンズ群13と第4レンズ群14との間に絞り91を有している。また、レンズユニット1は、第4レンズ群14より後側(像側/被写体側とは反対側)に赤外線フィルタ92を有しており、第2レンズ群12と第3レンズ群13との間に遮光シート93を有している。
【0023】
ここで、広角レンズ20は計6枚のレンズを有しており、4群6枚のレンズ構成を有している。広角レンズ20において、第3レンズ群13はガラスレンズからなり、他のレンズ群(第1レンズ群11、第2レンズ群12、および第4レンズ群14)は全て、プラスチックレンズからなる。
【0024】
より具体的には、第1レンズ群11は、負のパワーをもつプラスチックレンズ21からなり、第2レンズ群12は、負のパワーをもつプラスチックレンズ22からなる。第3レンズ群13は、正のパワーをもつガラスレンズ23と正のパワーをもつガラスレンズ24との接合レンズ(接合ガラスレンズ)からなり、ガラスレンズ23とガラスレンズ24とでは、レンズ材料の屈折率が異なっている。第4レンズ群14は、正のパワーをもつプラスチックレンズ25と負のパワーをもつプラスチックレンズ26との接合レンズ(接合プラスチックレンズ)からなり、プラスチックレンズ25とプラスチックレンズ26とでは、レンズ材料の屈折率が異なっている。かかる広角レンズ20においては、2組の接合レンズ(第3レンズ群13および第4レンズ群14)が絞り91を挟む両側に配置されている。
【0025】
かかる構成の広角レンズ20における各レンズデータおよび非球面係数は、表1および表2に示す通りである。表1には、各面(surf)の半径(Radius)、厚さ(Thickness)、屈折率(Nd)、およびアッベ数(Abbe数/νd)が示されている。なお、表2に示す非球面係数は、下記の非球面関数
X=(1/R)Y2/〔1+√{1−(K+1)(1/R)22}〕
+AY4+BY6+CY8+DY10
における各係数A、B、C、Dに相当する。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
表1および表2から分かるように、本形態の広角レンズ20において、第2面(2)、第3面(3)、第4面(4)、第9面(9)、第10面(10)、および第11面(11)の計6面が非球面である。
【0029】
より具体的には、プラスチックレンズ21(第1レンズ群11)は、物体側の面が凸状の球面であり、像側の面が凹状の非球面である。プラスチックレンズ22(第2レンズ群12)は、物体側の面が凸状の非球面であり、像側の面が凹状の非球面である。第3レンズ群13において、ガラスレンズ23は、物体側の面が凹状の球面であり、像側の面が凸状の球面であり、ガラスレンズ24は、物体側の面が凹状の球面であり、像側の面が凸状の球面である。第4レンズ群14において、プラスチックレンズ25は、物体側の面が凸状の非球面であり、像側の面が凸状の非球面であり、プラスチックレンズ26は、物体側の面が凹状の非球面であり、像側の面が凸状の非球面である。このため、第4レンズ群14は、プラスチックレンズ25の像側の非球面とプラスチックレンズ26の物体側の非球面とが接合された接合レンズである。このように、本形態では、広角レンズ20では、絞り91より像側に2枚以上のプラスチックレンズ(プラスチックレンズ25、26)が接合レンズとして設けられ、かかるプラスチックレンズ(プラスチックレンズ25、26)は非球面レンズである。
【0030】
(ホルダ30の構成)
ホルダ30は、樹脂製であり、光軸L方向において、最も後側に位置する底板部39と、底板部39の外周縁から前側(物体側)に延在する筒状胴部38と、筒状胴部38の前端で径方向外側に拡径する環状のフランジ部37と、筒状胴部38より大の径をもってフランジ部37の外周縁から前側(物体側)に延在する大径の筒部36とを有している。かかるホルダ30において、底板部39の後端面には赤外線フィルタ92が保持されている。
【0031】
ホルダ30の筒状胴部38の内部のうち、後側部分には第4レンズ群14の外周端部が底板部39の内面に当接し、光軸L方向で位置決めされている。第4レンズ群14の前側には、第3レンズ群13を保持するリング状の枠体33が配置されており、かかる枠体33の一部が第4レンズ群14の外周端部に当接することによって、第3レンズ群13の光軸L方向での位置決めが行われ、かつ、絞り91の位置決めが行われている。ホルダ30の筒状胴部38の前側部分には第2レンズ群12が配置されており、かかる第3レンズ群13の外周端部が枠体33に当接して、第2レンズ群12が光軸L方向で位置決めされている。筒部36の内面には段部360が形成されており、かかる段部360に第1レンズ群11の外周端部が当接することによって、第1レンズ群11の光軸L方向での位置決めが行われている。
【0032】
このように、本形態の広角レンズユニット1においては、レンズ群のうち、第3レンズ群13は、リング状の枠体33に保持された状態でホルダ30に保持され、第3レンズ群13以外のレンズ群は、直接、ホルダ30に保持されている。このため、プラスチックレンズとガラスレンズとを共通のホルダ30に保持することができる。
【0033】
(広角レンズ20の解像特性、および本形態の主な効果)
図2は、本発明の実施の形態1に係る広角レンズ20のデフォーカスMTF(Modulation Transfer Function)特性を示す説明図であり、図2(a)、(b)、(c)には、−40℃、20℃、80℃におけるデフォーカスMTF特性を示してある。図2において、実線L91は、レンズ中心部におけるOTF(Optical Transfer Function)係数を示し、一点鎖線L92は、レンズ周辺部の放射方向におけるOTF係数を示し、点線L93は、レンズ周辺部の同心円方向におけるOTF係数を示している。図3は、本発明の実施の形態1に係る広角レンズ20の温度特性を示す説明図であり、図3には、本発明の実施の形態1に係る広角レンズ20において環境温度が変化した場合の中心部におけるピント位置の変化量を一点鎖線L70で示し、比較として、図6を参照して説明した参考例に係る広角レンズ80において環境温度が変化した場合の中心部におけるピント位置の変化量を実線L71で示してある。
【0034】
以上説明したように、本形態の広角レンズ20では、4群のレンズ群のうち、第3レンズ群13については、正のパワーをもつガラスレンズとする一方、他のレンズ群は全てプラスチックレンズである。このため、広角レンズ20の低コスト化および軽量化を図ることができる。また、4群以上のレンズ群のうち、解像度に最も影響を及ぼす正のパワーの第3レンズ群13についてはガラスレンズを用いたため、プラスチックレンズを多用した場合でも、環境温度の変化に伴う解像度の低下を小さく抑えることができる。
【0035】
すなわち、図2および図3に示すように、環境温度が変化した場合にピント位置がずれる量が小さい。特に、図6を参照して説明した参考例に係る広角レンズ80と比較して、周辺部でのピント位置のずれ量が小さい。それ故、本形態によれば、環境温度が変化しても高い解像度を得ることができる。
【0036】
また、第3レンズ群13は、屈折率が異なるガラスレンズ23、24を接合した接合レンズである。このため、倍率色収差を小さくすることができるので、解像度を高めることができる。
【0037】
また、第4レンズ群14は、屈折率が異なるプラスチックレンズ25、26を接合した接合レンズであって、プラスチックレンズ25、26はいずれも非球面レンズである。このため、倍率色収差および球面収差を小さくすることができるので、解像度を高めることができる。
【0038】
また、絞り91より像側には2枚以上のプラスチックレンズ(プラスチックレンズ25、26)が設けられている。このため、第3レンズ群13を球面のガラスレンズ(ガラスレンズ23、24)にして環境温度の変化に伴う解像度の低下を小さく抑えた場合でも、プラスチックレンズ25、26を非球面レンズとすることにより、収差の補正が容易である。
【0039】
比較例
図4は、本発明の比較例に係る広角レンズの説明図である。図4に示す広角レンズ40は、画角が150°の広角レンズとして構成されている。本形態において、広角レンズ40は、4群のレンズ群を備えている。より具体的には、広角レンズ40は、物体側(被写体側/前側)から順に、負のパワーを持つ第1レンズ群11と、負のパワーを持つ第2レンズ群12と、正のパワーを有する第3レンズ群13と、正のパワーを有する第4レンズ群14とを有しており、第3レンズ群13と第4レンズ群14との間に絞り91を有している。
【0040】
ここで、広角レンズ40は計5枚のレンズを有しており、4群5枚のレンズ構成を有している。広角レンズ40において、第1レンズ群11および第3レンズ群13はガラスレンズからなり、他のレンズ群(第2レンズ群12、および第4レンズ群14)は全て、プラスチックレンズからなる。
【0041】
より具体的には、第1レンズ群11は、負のパワーをもつガラスレンズ41からなり、第2レンズ群12は、負のパワーをもつプラスチックレンズ42からなる。第3レンズ群13は、正のパワーをもつガラスレンズ43からなる。第4レンズ群14は、負のパワーをもつプラスチックレンズ44と正のパワーをもつプラスチックレンズ45との接合レンズからなり、プラスチックレンズ44とプラスチックレンズ45とでは、レンズ材料の屈折率が異なっている。
【0042】
かかる構成の広角レンズ40における各レンズデータおよび非球面係数は、表3および表4に示す通りである。
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
表3および表4から分かるように、本形態の広角レンズ40において、第3面(3)、第4面(4)、第8面(8)、第9面(9)、および第10面(10)の計5面が非球面である。
【0046】
より具体的には、ガラスレンズ41(第1レンズ群11)は、物体側の面が凸状の球面であり、像側の面が凹状の球面である。プラスチックレンズ42(第2レンズ群12)は、物体側の面が凹状の非球面であり、像側の面が凹状の非球面である。ガラスレンズ43(第3レンズ群13)は、物体側の面が凸状の球面であり、像側の面が凸状の球面である。第4レンズ群14において、プラスチックレンズ44は、物体側の面が凸状の非球面であり、像側の面が凹状の非球面であり、プラスチックレンズ45は、物体側の面が凸状の非球面であり、像側の面が凸状の非球面である。このため、第4レンズ群14は、プラスチックレンズ44の像側の非球面とプラスチックレンズ45の物体側の非球面とが接合された接合レンズ(接合プラスチックレンズ)である。かかる広角レンズ40では、絞り91より像側に2枚以上のプラスチックレンズ(プラスチックレンズ44、45)が設けられ、かかるプラスチックレンズ(プラスチックレンズ44、45)は非球面レンズである。
【0047】
以上説明したように、本形態の広角レンズ40でも、実施の形態と同様、4群のレンズ
群のうち、第1レンズ群11および第3レンズ群13については、ガラスレンズとする一方、他のレンズ群(第2レンズ群12および第4レンズ群14)は全てプラスチックレンズである。このため、広角レンズ40の低コスト化および軽量化を図ることができる。また、4群以上のレンズ群のうち、解像度に最も影響を及ぼす正のパワーの第3レンズ群13についてはガラスレンズを用いたため、プラスチックレンズを多用した場合でも、環境温度の変化に伴う解像度の低下を小さく抑えることができる。また、第4レンズ群14は、屈折率が異なるプラスチックレンズ44、45を接合した接合レンズであって、プラスチックレンズ44、45はいずれも非球面レンズである。このため、倍率色収差および球面収差を小さくすることができるので、解像度を高めることができる等、実施の形態と同様な効果を奏する。
【符号の説明】
【0049】
1 レンズユニット(広角レンズユニット)
20、40 広角レンズ
11 第1レンズ群
12 第2レンズ群
13 第3レンズ群
14 第4レンズ群
91 絞り
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7