特許第6125816号(P6125816)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6125816
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】電気錠システム
(51)【国際特許分類】
   E05B 49/00 20060101AFI20170424BHJP
【FI】
   E05B49/00 J
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-271263(P2012-271263)
(22)【出願日】2012年12月12日
(65)【公開番号】特開2014-114656(P2014-114656A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037028
【氏名又は名称】美和ロック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】堀畑 哲男
【審査官】 小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−012852(JP,A)
【文献】 特開2009−002114(JP,A)
【文献】 特開2009−030400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触媒体の固有の識別情報を認証することで扉の施解錠を有効又は無効に制御する電気錠システムであって、
前記扉を電動で施解錠する電気錠装置と、
前記非接触媒体から前記識別情報を受信する受信部と、
前記電気錠装置の施解錠を操作する操作部と、
前記受信部で受信した前記識別情報を認証して、前記識別情報が正当である場合に、前記操作部による施解錠操作を有効にし、一方、前記識別情報が認証不可の場合に、前記操作部による施解錠操作を無効にする制御部とを備え、
前記制御部は、前記操作部によって室外で解錠操作された後に室内で手動により施錠操作された場合に、前記操作部による室外での解錠操作を前記識別情報の認証結果に拘らず強制的に無効化することを特徴とする電気錠システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記操作部による室外での解錠操作を強制的に無効化してから、所定時間経過後に、前記操作部による室外での解錠操作の強制的な無効化を解除することを特徴とする請求項1に記載の電気錠システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記操作部による室外での解錠操作を強制的に無効化した後、前記受信部で受信した前記識別情報が正当である場合に前記操作部によって室内で解錠操作されたときに、前記操作部による室外での解錠操作の強制的な無効化を解除することを特徴とする請求項1又は2に記載の電気錠システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触媒体の識別情報を認証することで扉の施解錠を有効又は無効に制御する電気錠システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ホテルやオフィスビル等の商業施設又は公共施設の出入口や、集合住宅又は一般住宅のエントランスや玄関等では、その部屋又は領域への入退室又は入退場を制限するために、ICカード等の非接触媒体に記憶された識別情報を認証することで扉を施解錠する電気錠システムが採用されている。
【0003】
電気錠システムは、例えば、電動で扉を施解錠する電気錠を扉に内蔵すると共に、この扉の施錠及び解錠を操作する施錠ボタン及び解錠ボタンを室内外の扉面や壁面に設け、また、非接触媒体から識別情報を受信する受信機を扉の近傍に設け、更に、受信した識別情報の認証及び電気錠の施解錠制御を行う制御部を備えて構成される。
【0004】
この電気錠システムでは、非接触媒体が受信機の通信可能領域内に入ると、その非接触媒体の識別情報が受信機によって受信される。更に、制御部によって、受信した識別情報の正当性を判別し、正当であると認証した場合には、電気錠の解錠操作を有効に設定する。この場合、利用者は解錠ボタンを操作して扉を解錠し、開扉することができる。一方、制御部は、識別情報が不当であると認証した場合(認証不可の場合)には、電気錠の解錠操作を無効に設定する。この場合、利用者は解錠ボタンを操作しても扉を解錠することができず、開扉不可能である。
【0005】
従って、例えば、非接触媒体を所持した利用者が玄関内側等の扉付近に居たり、非接触媒体を玄関付近に置き忘れた場合等、非接触媒体が受信機の通信可能領域内にある場合には、電気錠の解錠操作が有効に設定されたままとなる。このとき、非接触媒体を所持しない者でも扉を解錠することができるため、不正に開扉や入室がされてしまう。
【0006】
そこで、近年の電気錠システムでは、室内側に人感センサーを備えて、この人感センサーにより室内の人の存在を感知した場合には、制御部が、非接触媒体からの識別情報の受信に拘らず、電気錠の解錠操作を無効に設定している(特許文献1、特許文献2参照)。これにより、正当利用者の入室直後に、非接触媒体を所持しない者の不正な開扉や入室を避けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−2114号公報
【特許文献2】特開2009−30400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した電気錠システムでは、室内に人やペットがいる場合には、人感センサーの作用により扉が解錠無効に設定されるため、正当な識別情報を記憶した非接触媒体を所持する利用者でも、扉を解錠することができず、入室できなくなってしまう。また、受信機の通信可能領域に合わせて人感センサーを設ける必要があるため、設備コストの増加する懸念がある。
【0009】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、人感センサー等の外部機器を設けることなく、利用者の入室後に他者の不正入室を防ぐことができる電気錠システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の電気錠システムは、非接触媒体の固有の識別情報を認証することで扉の施解錠を有効又は無効に制御する電気錠システムであって、前記扉を電動で施解錠する電気錠装置と、前記非接触媒体から前記識別情報を受信する受信部と、前記電気錠装置の施解錠を操作する操作部と、前記受信部で受信した前記識別情報を認証して、前記識別情報が正当である場合に、前記操作部による施解錠操作を有効にし、一方、前記識別情報が認証不可の場合に、前記操作部による施解錠操作を無効にする制御部とを備え、前記制御部は、前記操作部によって室外で解錠操作された後に室内で手動により施錠操作された場合に、前記操作部による室外での解錠操作を前記識別情報の認証結果に拘らず強制的に無効化することを特徴とする。
【0011】
上述した本発明の第1の電気錠システムによれば、操作部が室外で解錠操作された後に室内で施錠操作されたときに、操作部による室外での解錠操作を強制的に無効化することにより、非接触媒体を所持した利用者が扉付近に留まる等、正当な識別情報を記憶した非接触媒体が受信部の通信可能領域内にある場合でも、室外での扉の解錠を不能にしたため、人感センサー等の外部機器を設けることなく、不正な開扉や入室を防ぐことができる。これにより、低コストでセキュリティを向上した電気錠システムを提供することができる。
【0012】
また、本発明の第2の電気錠システムは、上述した本発明の第1の電気錠システムにおいて、前記制御部は、前記操作部による室外での解錠操作を強制的に無効化してから、所定時間経過後に、前記操作部による室外での解錠操作の強制的な無効化を解除することを特徴とする。
【0013】
上述した本発明の第2の電気錠システムによれば、操作部による室外での解錠操作を強制的に無効化してから所定時間経過後に、操作部による室外での解錠操作の強制的な無効化を解除することにより、利用者の入室後に不正な開扉や入室を防ぐ十分な時間を確保することができる。また、扉が2つ以上ある場合に、正当な識別情報を有する非接触媒体を保持する利用者が、一方の扉から入室して他方の扉から退室したときでも、所定時間経過後に室外解錠操作が有効となった操作部を操作して解錠することができるため、部屋から閉め出されることなく、安心して電気錠システムを利用することができる。
【0014】
本発明の第3の電気錠システムは、上述した本発明の第1又は第2の電気錠システムにおいて、前記制御部は、前記操作部による室外での解錠操作を強制的に無効化した後、前記受信部で受信した前記識別情報が正当である場合に前記操作部によって室内で解錠操作されたときに、前記操作部による室外での解錠操作の強制的な無効化を解除することを特徴とする。
【0015】
上述した本発明の第3の電気錠システムによれば、室外解錠操作の強制的な無効化を利用者の意思に基づいて解除することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、人感センサー等の外部機器を設けることなく、利用者の入室後に他者の不正入室を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る電気錠システムの概略を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る電気錠システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る電気錠システムについて、添付の図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電気錠システムの構成の概略を示すブロック図、図2は、本発明の一実施形態に係る電気錠システムの動作を示すフローチャートである。
【0019】
電気錠システム1は、入退室を制限する部屋の扉を電動で施解錠する電気錠装置2と、識別情報を記憶した非接触媒体3a、3bと、非接触媒体3a、3bから識別情報を受信する室外受信部4及び室内受信部5と、電気錠装置2の施解錠を操作する室外操作部6及び室内操作部7と、室外受信部4又は室内受信部5で受信した識別情報に基づいて電気錠装置2を制御する制御ユニット8とを備える。
【0020】
電気錠装置2は、扉に内蔵され、施解錠機構9と、該施解錠機構9を駆動する駆動部10とを備える。施解錠機構9は、例えば、デッドボルト(図示せず)と、駆動部10によって駆動してデッドボルトを移動させる電動アクチュエータ(図示せず)とを備える。デッドボルトは、扉から突出するように移動して扉枠のストライク内に固定されることにより扉を施錠して開扉不能にし、他方、ストライクから抜脱するように移動して扉内に引き込まれることにより扉を解錠して開扉可能にする。駆動部10は、制御ユニット8から施錠又は解錠を指示する制御信号を受けて、この制御信号に応じて施解錠機構9、例えば電動アクチュエータを駆動する。
【0021】
非接触媒体3a及び3bは、電磁波や電波によって室外受信部4及び室内受信部5と非接触通信可能であり、各種情報を読み出し/書き込み可能に記憶する記憶領域を有するICチップ等の電子部品を設けている。非接触媒体3a及び3bは、特に、扉の施解錠許可の認証に必要な情報として、利用者情報等の固有の識別情報を記憶領域に記憶している。
【0022】
これらの非接触媒体3a及び3bは、例えば、室外受信部4又は室内受信部5からの電波に応じて電力を発生させるパッシブタグを備えたICカード等のカード状記憶媒体や、内蔵した電池等の電源より電力が供給されるアクティブタグを備えたリモコンキーでよい。非接触媒体3a及び3bは、室外受信部4及び室内受信部5と非接触通信可能で利用者が携帯可能な記憶媒体であればこれらに限定されない。
【0023】
室外受信部4及び室内受信部5は、電磁波や電波によって非接触媒体3a及び3bと非接触通信可能な室外アンテナ11及び室内アンテナ12をそれぞれ備え、部屋の外側及び内側で扉面又はその周囲の壁面等に設けられる。例えば、室外アンテナ11及び室内アンテナ12は、それぞれ通信可能な領域の範囲内で検知電波を送信し、この検知電波に対して非接触媒体3a又は3bで発生する反射波を受信する。また、室外アンテナ11及び室内アンテナ12は、非接触媒体3a又は3bから識別情報を受信する。
【0024】
室外操作部6は、室外で扉を施錠するための室外施錠ボタン13と、室外で扉を解錠するための室外解錠ボタン14とを備え、部屋の外側で扉面又はその周囲の壁面等に設けられる。室内操作部7は、室内で扉を施錠するための室内施錠ボタン15と、室内で扉を解錠するための室内解錠ボタン16とを備え、部屋の内側で扉面又はその周囲の壁面等に設けられる。室外施錠ボタン13及び室内施錠ボタン15は、例えば、その操作に応じて扉の施錠を指示する指示信号を制御ユニット8に入力する。室外解錠ボタン14及び室内解錠ボタン16は、例えば、その操作に応じて扉の解錠を指示する指示信号を制御ユニット8に入力する。
【0025】
制御ユニット8は、電気錠システム1の全体の動作を統括制御するCPU(Central Processing Unit)等の制御部17と、この制御部17による制御に必要な情報を記憶する記憶部18とを備える。記憶部18は、例えば、非接触媒体3a及び3bの識別情報の認証に用いられる認証情報(図示せず)を記憶する。
【0026】
制御部17は、室外受信部4で受信された非接触媒体3aの識別情報を記憶部18の認証情報と比較して認証し、識別情報が正当であると認証すると、室外操作部6の室外施錠ボタン13及び室外解錠ボタン14の操作を有効にして、この操作に応じて扉を施解錠するように電気錠装置2を制御し、一方、非接触媒体3aを検知できなかったり、識別情報が認証不可であると、室外施錠ボタン13及び室外解錠ボタン14の操作を無効にする。
【0027】
例えば、記憶部18が室外施解錠の有効又は無効を示すフラグ等の室外施解錠有効情報19を記憶し、制御部17は、室外受信部4で受信した識別情報を正当と認証した場合に室外施解錠有効情報19を有効に設定し、一方、認証不可である場合に室外施解錠有効情報19を無効に設定する。そして、制御部17は、室外施錠ボタン13又は室外解錠ボタン14から指示信号を受けたとき、室外施解錠有効情報19が有効を示す場合にはこの指示信号を有効に処理して電気錠装置2の施解錠を制御し、一方、無効を示す場合にはこの指示信号を無効にして電気錠装置2の制御を行わない。
【0028】
また、制御部17は、室内受信部5で受信された非接触媒体3bの識別情報を記憶部18の認証情報と比較して認証し、識別情報が正当であると認証すると、室内操作部7の室内施錠ボタン15及び室内解錠ボタン16の操作を有効にして、この操作に応じて扉を施解錠するように電気錠装置2を制御し、一方、非接触媒体3bを検知できなかったり、識別情報が認証不可であると、室内施錠ボタン15及び室内解錠ボタン16の操作を無効にする。
【0029】
例えば、記憶部18が室内施解錠の有効又は無効を示すフラグ等の室内施解錠有効情報20を記憶し、制御部17は、室内受信部5で受信した識別情報を正当と認証した場合に室内施解錠有効情報20を有効に設定し、一方、認証不可である場合に室内施解錠有効情報20を無効に設定する。そして、制御部17は、室内施錠ボタン15又は室内解錠ボタン16から指示信号を受けたとき、室内施解錠有効情報20が有効を示す場合にはこの指示信号を有効に処理して電気錠装置2の施解錠を制御し、一方、無効を示す場合にはこの指示信号を無効にして電気錠装置2の制御を行わない。
【0030】
更に、制御部17は、室外解錠ボタン14の解錠操作により電気錠装置2の解錠制御を行った後、室内施錠ボタン15の施錠操作により電気錠装置2の施錠制御を行った場合には、識別情報の認証結果に拘らず室外解錠ボタン14の解錠操作を強制的に無効化する。
【0031】
例えば、記憶部18が、室外施解錠有効情報19の変更の許可又は禁止を示すフラグ等の変更許否情報21を記憶し、制御部17は、室外解錠操作後に室内施錠操作があったときに、室外施解錠有効情報19を無効に設定すると共に変更許否情報21を禁止に設定する。そして、制御部17は、変更許否情報21が許可を示す場合には、室外受信部4で受信した識別情報を正当と認証したときに、室外施解錠有効情報19を有効に変更できるが、変更許否情報21が禁止を示す場合には、識別情報の認証結果に拘らず室外施解錠有効情報19の変更を禁止する。
【0032】
また、制御部17は、室内施錠ボタン15の施錠操作による電気錠装置2の施錠制御に伴って室外解錠ボタン14の解錠操作を強制的に無効化してから、所定時間、例えば5分〜10分経過後に、室外解錠ボタン14の解錠操作の強制的な無効化を解除して有効に戻してもよい。例えば、制御部17は、室外解錠ボタン14の解錠操作を強制的に無効化してから所定時間経過後に、変更許否情報21を許可に設定する。
【0033】
なお、制御部17は、室外解錠ボタン14の解錠操作が強制的に無効化されている場合に、室内受信部5で受信された非接触媒体3bの識別情報が正当であって室内解錠ボタン16が操作されたときに、室外解錠ボタン14の解錠操作を有効に戻してもよい。例えば、制御部17は、変更許否情報21が禁止を示す場合に室内解錠ボタン16から解錠指示信号を受けたときに、変更許否情報21を許可に設定する。
【0034】
次に、このような構成を備えた電気錠システム1の動作について図2のフローチャートを参照しながら説明する。
【0035】
まず、電気錠システム1では、制御ユニット8、並びに非接触媒体3a及び3bについて初期設定を行い、制御ユニット8に所定の認証情報を登録して記憶部18に記憶させ、この認証情報に対応した識別情報を非接触媒体3a及び3bに記憶させる(ステップS1)。
【0036】
次に、室外受信部4及び室内受信部5では、室外アンテナ11及び室内アンテナ12からそれぞれの通信可能領域に送信された検知電波によって、非接触媒体3a又は3bの検知が行われる(ステップS2)。
【0037】
非接触媒体3aを保持した利用者が室外から室外受信部4に接近すると、室外受信部4によってこの非接触媒体3aが検知され、更に非接触媒体3aから識別情報を読み取り、又は識別情報を有する無線信号を受信する。この識別情報は、制御ユニット8に送られて制御部17によって認証が行われ、正当な識別情報であるか否が判定される(ステップS3)。
【0038】
ステップS3において、識別情報が認証不可である場合(正当な識別情報を有する非接触媒体3aを検知できなくなった場合)には、制御部17において室外施錠ボタン13及び室外解錠ボタン14の操作(指示信号)は無効と判断され、非接触媒体3a又は3bの検知が繰り返される(ステップS2)。
【0039】
一方、識別情報が正当である場合には、制御部17において室外施錠ボタン13及び室外解錠ボタン14の操作が有効に処理される(ステップS4)。
【0040】
ここで、利用者が室外解錠ボタン14を操作すると、解錠操作が制御ユニット8の制御部17に指示され、制御部17では電気錠装置2が解錠されるように制御される。
【0041】
このようにして電気錠装置2の解錠された扉は開扉可能になり、利用者は、部屋に入室することができ、室内操作部7の室内施錠ボタン15を操作可能となる(ステップS5)。
【0042】
利用者が室内施錠ボタン15を操作すると、施錠操作が制御ユニット8の制御部17に指示され、制御部17では電気錠装置2が施錠されるように制御される。このとき、制御部17において、室外解錠ボタン14の解錠操作が識別情報の認証結果に拘らず強制的に無効化される(ステップS6)。
【0043】
なお、利用者が室内施錠ボタン15を操作しない場合、制御部17では、所定時間の経過や、正当な識別情報を有する非接触媒体3aの非検知に応じて、自動的に電気錠装置2を施錠してもよいが、このとき、室外解錠ボタン14の解錠操作は有効のままとなる(ステップS4)。
【0044】
また、制御部17では、ステップS6で室外解錠ボタン14の解錠操作が強制的に無効化されてからの時間経過が計測され(ステップS7)、所定時間の経過後に、室外解錠ボタン14の解錠操作の強制的な無効化が解除される(ステップS8)。
【0045】
本実施形態では上述のように、室外解錠ボタン14を操作して電気錠装置2を解錠した後、室内施錠ボタン15を操作して電気錠装置2を施錠した場合に、識別情報の認証結果に拘らず室外解錠ボタン14による解錠操作を強制的に無効化することにより、非接触媒体3a又は3bを所持した利用者が扉付近に留まる等、正当な識別情報を記憶した非接触媒体3a又は3bが室外受信部4又は室内受信部5の通信可能領域内にある場合でも、室外で扉を解錠することができないため、人感センサー等の外部機器を設けることなく、不正な開扉や入室を防ぐことができる。これにより、低コストでセキュリティを向上した電気錠システム1を提供することができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、室内施錠ボタン15の施錠操作による電気錠装置2の施錠制御に伴って室外解錠ボタン14の解錠操作を強制的に無効化してから、所定時間経過後に、室外解錠ボタン14の解錠操作の強制的な無効化を解除することにより、利用者の入室後に不正な開扉や入室を防ぐ十分な時間を確保することができる。また、例えば、扉が2つ以上ある場合に、正当な識別情報を有する非接触媒体3a又は3bを保持する利用者が、一方の扉から入室して他方の扉から退室したときでも、所定時間経過後に解錠操作が有効となった室外解錠ボタン14を操作して解錠することができるため、部屋から閉め出されることなく、安心して電気錠システム1を利用することができる。
【0047】
本実施形態では、室外受信部4及び室内受信部5を部屋の外側及び内側にそれぞれ設け、制御ユニット8がそれぞれで受信した識別情報に基づいて部屋の外側及び内側での施解錠を制御することを説明したが、他の異なる実施形態では、部屋の外側及び内側の両方に通信可能領域を有する受信部を部屋の扉付近に1つだけ設けて、制御ユニット8が、この受信部で受信した識別情報を正当と認証した場合に、室外操作部6の室外施錠ボタン13及び室外解錠ボタン14の操作、並びに室内操作部7の室内施錠ボタン15及び室内解錠ボタン16の操作を有効にし、一方、識別情報が認証不可である場合にこれらの操作を無効にするように構成してもよい。なお、この場合でも、室外解錠ボタン14による解錠後に室内施錠ボタン15による施錠を行ったときには、識別情報の認証結果に拘らず室外解錠ボタン14の解錠操作を強制的に無効化する。また、この1つの受信部と制御ユニット8とを一体的に構成してもよい。
【0048】
また、本実施形態では、記憶部18が室外施解錠有効情報19、室内施解錠有効情報20及び変更許否情報21を記憶して、制御部17がこれらの情報に応じて室外操作部6及び室内操作部7の操作による指示信号を有効化又は無効化することを説明したが、室外操作部6及び室内操作部7の操作を有効化又は無効化する構成はこれに限定されない。例えば、他の異なる実施形態では、制御ユニット8に、室外操作部6及び室内操作部7の操作による指示信号が伝達されるスイッチ回路等の電気回路を備えて、制御部17が、室外受信部4及び室内受信部5で受信した識別情報の認証結果や、室外操作部6及び室内操作部7の操作に応じて、この電気回路を切り換えることにより、室外操作部6及び室内操作部7の操作を有効化又は無効化するように構成してもよい。
【0049】
本発明の電気錠システムは、複数の扉のそれぞれに認証機能を有する制御ユニットを設けて、非接触媒体を各扉に共通に使用して施解錠できるように構成することもできる。また、本発明の電気錠システムは、ホテルやオフィスビル等の商業施設又は公共施設の出入口や、集合住宅又は一般住宅のエントランスや玄関等だけでなく、病院、リクリエーション施設、店舗、ショッピングセンター、学校等、様々な建物や、自動車等の乗物に適用することが可能である。
【0050】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気錠システムもまた本発明の技術思想に含まれる。

図1
図2