(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記製氷皿が前記離氷位置に位置する状態で前記駆動源を他方に駆動したときに前記差動歯車機構によって前記駆動源の動力が前記検氷部材駆動部材を通じて前記検氷部材に伝達されるようにするために、前記離氷位置からの移動を妨げる前記製氷皿に作用する抵抗力の少なくとも一部は、前記製氷皿に作用する前記接点部材を弾性変形させる力であることを特徴とする請求項4に記載の製氷装置。
前記製氷皿が前記製氷位置に位置する状態で前記駆動源が一方へ駆動し始めてから、前記製氷皿が前記第一の方向へ所定量回転したことが検出されたとき、その検出時点までの時間または前記駆動源の一方への駆動量により、前記貯氷容器内の氷量の過不足を判断することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の製氷装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記問題に鑑みて、本発明は、従来の構成より小型化に適した構造の製氷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明にかかる製氷装置は、駆動源と、製氷位置と離氷位置との間を移動可能に設けられた製氷皿と、この製氷皿から離氷した氷を貯める貯氷容器と、この貯氷容器内の氷に接触して貯氷容器内の氷量の過不足を検知する検氷部材と、前記駆動源の動力が入力され、当該動力を前記製氷皿または前記検氷部材に出力する差動歯車機構と、を備え、前記製氷皿が前記製氷位置に位置する状態で前記駆動源を一方に駆動させると前記製氷位置からの移動を妨げる前記製氷皿に作用する抵抗力によりその動力が前記差動歯車機構を介して前記検氷部材に伝達されて前記検氷部材が前記貯氷容器内に進入し、この検氷部材の移動が前記貯氷容器内の氷または氷が不足していると判断される位置よりも下方に設けられた検氷部材ストッパにより妨げられると前記差動歯車機構の出力が切り替わり前記駆動源の動力が前記製氷皿に伝達されてこの製氷皿が第一の方向に回転し、当該製氷皿が前記第一の方向へ所定量回転した後、前記駆動源を他方に駆動させると再び前記差動歯車機構の出力が切り替わり前記駆動源の動力が前記検氷部材に伝達されてこの検氷部材が原位置に向かって移動し、当該検氷部材が原位置に到達して移動が妨げられることにより、再び前記差動歯車機構の出力が切り替わり前記駆動源の動力が前記製氷皿に伝達されてこの製氷皿が前記第一の方向の反対方向である第二の方向に回転して前記離氷位置に向かうことを特徴とする。
【0006】
上記本発明によれば、差動歯車機構によって一つの駆動源により検氷部材および製氷皿の両方を駆動させることができるため、従来よりも装置を小型にできる。具体的には、貯氷容器内の氷の過不足を検出するための検氷部材が、氷または検氷部材ストッパに接触することで移動が阻止される構成を、差動歯車機構の出力の切替(検氷部材から製氷皿への出力対象の切替)に巧みに利用した点で優れるものである。
【0007】
また、貯氷容器内の氷の過不足を検出するための検氷部材が貯氷容器内に進入し、この検氷部材が貯氷容器外である原位置まで移動してから製氷皿が離氷位置に向かって移動する構成であるため、検氷部材が新たに離氷した氷で埋もれてしまい原位置に戻すことができなくなってしまうことや、新たに離氷した氷で破損してしまうことが防止できる。
【0008】
前記差動歯車機構の前記製氷皿までの減速比は、前記検氷部材までの減速比よりも大きく設定されていればよい。
【0009】
上記のように、本発明にかかる製氷装置では、製氷皿を離氷位置に向けて移動させるために検氷部材を往復動作させる。そのため、検氷部材の動作速度を高めることで、製氷皿が離氷動作を行うまでの時間を縮めることができる。
【0010】
また、前記製氷皿は前記離氷位置で捻られて変形することで、前記離氷が行われる構成にするとよい。
【0011】
このような構成とすれば、製氷皿を捻るために大きなトルクが必要であっても、製氷皿と検氷部材を同じ駆動源で駆動することができる。
【0012】
弾性を有する接点部材の接触・非接触状態が切り替わることにより前記製氷皿が製氷位置に位置することを検出する検出手段をさらに備え、前記製氷皿が前記製氷位置に位置する状態で前記駆動源を一方に駆動したときに前記差動歯車機構によって前記駆動源の動力が前記検氷部材駆動部材を通じて前記検氷部材に伝達されるようにするために、前記製氷位置からの移動を妨げる前記製氷皿に作用する抵抗力の少なくとも一部は、前記製氷皿に作用する前記接点部材を弾性変形させる力であればよい。
【0013】
上記構成は、製氷皿が製氷位置および離氷位置に位置することを検出するための接点部材を、検氷部材の移動が阻止されてはじめて製氷皿を移動させるように差動歯車機構を機能させるための負荷(抵抗)としても巧みに利用したものである。
【0014】
また、前記製氷皿が前記製氷位置に位置する状態で前記駆動源が一方へ駆動し始めてから、前記製氷皿が前記第一の方向へ所定量回転したことが検出されたとき、その検出時点までの時間または前記駆動源の一方への駆動量により、前記貯氷容器内の氷量の過不足を判断するようにするとよい。
【0015】
このような構成とすれば、貯氷容器内の氷量(過不足)を判断するために別の検知部材を用いる必要がない。
【0016】
また、前記駆動源および前記差動
歯車機構が収容されるケースをさらに備え、前記検氷部材は、前記ケースの外側に設けられた検氷部材取付部に回転可能に取り付けられるとともに、前記氷に接触する氷接触部と前記検氷部材取付部の回転を前記氷接触部に伝達する接続部を備え、前記接続部および検氷部材取付部は、前記検氷部材の回転軸線方向における前記ケースの最も外側の面よりも内側に位置するように設けられているとよい。
【0017】
このような構成によれば、検氷部材を含めた装置全体がコンパクトになり、冷蔵庫等への配置の自由度が向上する。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかる製氷装置は、差動歯車機構によって一つの駆動源により検氷部材および製氷皿の両方を駆動させることができるものであるため、従来よりも装置を小型にできる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1および
図2に全体を示す本発明の一実施形態にかかる製氷装置1は、駆動源10、製氷皿20、貯氷容器30、検氷部材40、および差動歯車機構50を備える。以下、各構成について説明する。
【0021】
(製氷装置の構成)
駆動源10として、本実施形態ではステッピングモータを用いている。
図3に示すように、この駆動源10の動力は、差動歯車機構50を構成する歯車列を介して、検氷部材40または製氷皿20に出力される。本実施形態の歯車列の構成は次の通りである。駆動源10であるステッピングモータの出力軸と一体的に回転するモータ歯車11には、一番車12の大径歯部121が噛み合っている。この一番車12の小径歯部122には、二番車13の大径歯部131が噛み合っている。二番車13の小径歯部132は、三つの遊星歯車14に噛み合っている。この三つの遊星歯車14は、検氷部材側出力車15が有する内歯151に噛み合っている。検氷部材側出力車15が有する外歯152は、検氷部材支持体16が有する歯車161に噛み合っている。一方、三つの遊星歯車14は、製氷皿側出力車17と一体的に構成された遊星歯車支持軸171に回転自在に支持されている。なお、これら遊星歯車14は、抜け止めプレート172によって遊星歯車支持軸171からの脱落が防止されている。製氷皿側出力車17が有する外歯173は、製氷皿支持体18が有する歯車181に噛み合っている。
【0022】
上記歯車列において、小径歯部132(太陽歯車)を有する二番車13、それに噛み合う三つの遊星歯車14、これらに噛合する内歯151(リング歯車)を有する検氷部材側出力車15、および三つの遊星歯車14を支持する製氷皿側出力車17は、差動歯車機構50を構築する。つまり、後述の動作説明にて説明するように、二番車13まで伝達(入力)された駆動源10の動力は、出力側の負荷の程度に応じて、検氷部材側出力車15または製氷皿側出力車17に出力されることとなる。
【0023】
図4に示す製氷皿20は、水を貯めることのできる複数の区画された空間21を有する弾性変形可能な部材である。製氷皿20の長手方向における一方側の端部(側面)には、製氷皿支持体18の製氷皿取付部182が挿入可能な係合凹部23が形成されている。製氷皿取付部182は、軸方向に沿う二つの平面が形成された(このような平面が形成されるように切り欠かれた)軸(円柱)状の部分である。製氷皿20の係合凹部23の断面形状は、製氷皿取付部182の断面形状と略同じに形成されている。このような形状の製氷皿取付部182が係合凹部23に挿入された状態にあるため、製氷皿支持体18が回転すると、そのまま製氷皿20も一体となって回転する。製氷皿20は、長手方向に沿う軸(駆動源10であるステッピングモータの回転軸と平行な軸)を中心として回転する。
【0024】
この製氷皿支持体18には、製氷皿取付部182と歯車181との間に周方向外側を向いたカム部183が形成されている。カム部183には、回転中心からの径が等しい大径部分1833と、大径部分1833より相対的に径方向に小さい二箇所の窪み(第一の窪み1831および第二の窪み1832)が形成されている。
図5に示すように、このカム部183には、接点部材の一方である可動接点部材62が、カム部183を周方向外側から付勢しながら接触している。この可動接点部材62の内側(カム部183側)には、二つの接点部材の他方である固定接点部材61が設けられ、可動接点部材62と固定接点部材61は弾性を有する金属板をプレス加工することで形成され、有接点スイッチを構成する。この有接点スイッチとカム部183で製氷皿の移動を検出する検出手段を構成する。可動接点部材62の略「V」字状に形成されたカム摺接部の先端がカム部183の大径部分1833(窪み1831,1832以外の部分)に接触しているときには可動接点部材62は外側に弾性変形し、可動接点部材62と固定接点部材61とが非接触の状態となる。一方、可動接点部材62の略「V」字状に形成されたカム摺接部の先端が窪み1831,1832の内側に入り込んでいるときには可動接点部材62の弾性変形量が小さくなり(または弾性変形せず)、可動接点部材62と固定接点部材61は接触した状態となる。これら接点部材は図示されない制御手段(製氷装置1または製氷装置1が搭載される冷蔵庫の制御手段)に接続されている。この制御手段は、可動接点部材62と固定接点部材61が接触している状態(以下単にON(状態)ということもある)にあるか非接触の状態(以下単にOFF(状態)ということもある)にあるかが判別可能である。
【0025】
貯氷容器30は、製氷皿20の下(重力方向を上下方向とする。以下同じ)に設置された、製氷皿20側(上方)が開口した箱である。後述の動作説明で述べるように、貯氷容器30内に所定量以上の氷が貯められていない(不足している)と判断されたときには、製氷皿20内で作成された氷がこの貯氷容器30内に落下する。貯氷容器30内に所定量以上の氷が存在するか否かは、貯氷容器30内に存在する氷の高さ(後述するように厳密には検氷部材40が接触した位置における氷の高さ)によって決まる。つまり、貯氷容器30内に存在する氷の高さがある高さ以上であれば氷の量は十分であるとされ、ある高さ未満であれば氷の量が不足していると判断される。本実施形態では、貯氷容器30の当該「高さ」よりも低い位置に、検氷部材ストッパ31が形成されている。
【0026】
図6に示す検氷部材40は、貯氷容器30内に貯められている氷の過不足を判別するための部材である。この検氷部材40は、水平方向に延びる氷接触部42と、この氷接触部42に略直交し、後述する検氷部材取付部162の回転を氷接触部42に伝達する接続部41とを有する。接続部41の端部には貫通孔411が形成されており、この貫通孔411に検氷部材支持体16における検氷部材取付部162が挿入されることにより、検氷部材支持体16と検氷部材40が接続されている。本実施形態では、検氷部材取付部162はケースはケース70の外側に位置し、検氷部材取付部162がいわゆるスナップフィットによって貫通孔411に挿入されることにより、両部材が接続されている。検氷部材支持体16が回転すると、接続部41に形成された貫通孔411の中心を回転中心として検氷部材40も回転する。具体的には、当該回転中心軸に沿って見たときに、氷接触部42が当該回転中心軸を中心とする円を描くように移動する。検氷部材40が一方に回転したとき、少なくとも氷接触部42が貯氷容器30内に進入する。この氷接触部42の具体的な形状については後述する。
【0027】
(製氷装置の動作)
1)検氷動作
上記構成を備える製氷装置1の動作について
図7および
図8の動作説明図、
図9のフローチャートを参照しつつ説明する。図示されない温度センサ等により、製氷皿20内の水が凍ったことを確認した制御手段は、まず貯氷容器30内に貯められている氷の過不足を検知する。製氷時には、製氷皿20は製氷位置(空間21の開口が上に向いた状態)に位置し、検氷部材40は貯氷容器30の外である原位置に位置する。製氷皿20が製氷位置に位置しているとき、可動接点部材62の略「V」字状の先端部はカム部183の第一の窪み1831の内側に入り込む。制御手段は、可動接点部材62と固定接点部材61がON状態にあることを確認する。
【0028】
この状態から駆動源10であるステッピングモータを一方側に回転させる(正転させる)(S1)と、その動力は一番車12を介して二番車13まで伝達される。つまり、駆動源10の動力が差動歯車機構50に入力される。製氷皿20が製氷位置に位置し、検氷部材40が原位置に位置するとき(可動接点部材62のカム摺接部の先端が、第一の窪み1831と大径部分1833との間の段差を乗り越えようとしているとき)には、製氷皿20に対し製氷皿20を回転させようとすることを妨げる抵抗力が作用する一方、検氷部材40に対しては検氷部材40を貯氷容器30内に進入する方向に回転させようとすることを妨げる抵抗力がほとんど作用しないように設定されている。そのため、差動歯車機構50まで伝達された駆動源10の動力は、その抵抗力が極めて小さい検氷部材40側に出力される。つまり、二番車13が回転することによってこれに噛み合う各遊星歯車14は自転し、これにより内歯151を有する検氷部材側出力車15が回転する。
【0029】
検氷部材側出力車15が回転するとその外歯152に噛み合う歯車161を有する検氷部材支持体16が回転する。検氷部材支持体16が回転すると検氷部材支持体16に接続された検氷部材40が回転する(
図7(a)、
図8(a)参照)。具体的には、氷接触部42が貯氷容器30に近づく方向に回転し始め、やがて氷接触部42が貯氷容器30内に進入する。
【0030】
貯氷容器30内に進入した検氷部材40の氷接触部42は、貯氷容器30内を徐々に下降していき、氷または検氷部材ストッパ31に接触してその移動が妨げられる位置まで移動する。氷が十分に貯められている(所定量以上存在する)場合には、氷接触部42がある高さ以上の位置に存在する氷に接触する(
図7(b)参照)。一方、氷が不足している場合には、氷接触部42がある高さ未満の位置に存在する氷または当該ある高さ未満であって氷接触部42の移動軌跡と重なる位置に設けられる検氷部材ストッパ31に接触する(
図8(b)参照)。このとき、氷接触部42は製氷皿20の開口の下方に位置する。つまり、氷接触部42は後述する離氷位置において氷が落下する軌跡に位置する。このように、氷が十分に貯められている場合、不足している場合のいずれにおいても、氷接触部42が貯氷容器30内の氷または貯氷容器30に設けられた検氷部材ストッパ31に接触するまで検氷部材40が移動する。
【0031】
検氷部材40のそれ以上の移動が妨げられると、差動歯車機構50の出力が切り替わり、駆動源10の動力は製氷皿20側に伝達される。つまり、二番車13が回転することによってこれに噛み合う各遊星歯車14は公転し、これにより遊星歯車支持軸171を有する製氷皿側出力車17が回転する。
【0032】
製氷皿側出力車17が回転するとその外歯173に噛み合う歯車181を有する製氷皿支持体18が回転する。製氷皿支持体18が回転すると製氷皿支持体18に接続された製氷皿20が第一の方向(本実施形態では
図7および
図8における反時計回り方向をいう)に回転する(
図7(b)および(c)、
図8(b)および(c)参照)。製氷皿支持体18にはカム部183が形成されているため、製氷皿支持体18が回転すると可動接点部材62の略「V」字状の先端部はカム部183の第一の窪み1831の内側に入り込んだ状態から大径部分1833に接触した状態に移行する。これにより可動接点部材62が弾性変形し固定接点部材61と非接触の状態となる。つまり、制御手段は可動接点部材62と固定接点部材61がON状態からOFF状態になったことをもって製氷皿20が製氷位置から移動したことを検出する。
【0033】
ここで、上述した、検氷部材40が原位置に位置するときに、製氷皿20に対し製氷皿20が回転しようとすることを妨げる抵抗力は、その少なくとも一部が可動接点部材62を弾性変形させる力によってもたらされる。つまり、製氷位置に位置する製氷皿20が回転しようとするとき、可動接点部材62が弾性変形して、カム部183の第一の窪み1831の内側に入り込んだ可動接点部材62の略「V」字状の先端部が、その第一の窪み1831と大径部分1833との間の段差を乗り越える必要がある。可動接点部材62の略「V」字状の先端部がこの段差を乗り越えようとすると、可動接点部材62が第一の窪み1831の内側に留まろうとする力(可動接点部材62を弾性変形させる力の反力)、すなわち製氷皿20が回転しようとすることを妨げる力が製氷皿支持体18に作用することになる。このように、本実施形態では、製氷皿20の位置を検出するための接点部材を、駆動源10の動力が差動歯車機構50を介して検氷部材40に出力されるようにするために製氷皿20に作用させる抵抗力をもたらす部材としても利用している。
【0034】
なお、上記製氷皿20に作用する抵抗力は、可動接点部材62を弾性変形させる力のみであってもよいし、その他の抵抗力が作用する構成であってもよい。その他の抵抗力を作用させる構成としては、摩擦ブレーキ、おもりの固定等が例示できる。具体的には、製氷皿支持体18または製氷皿側出力歯車17とケース70との間にフリクション機構を設け、当該フリクション機構を製氷皿20に作用する摩擦ブレーキとすることができる。
【0035】
本実施形態では、製氷皿20が製氷位置から第一の方向に回転し始めたこと、すなわち可動接点部材62と固定接点部材61がON状態からOFF状態に切り替わったことに基づき、貯氷容器30内に貯められていた氷の過不足を判断する。つまり、駆動源10が一方に駆動し始めてから、製氷皿20が製氷位置から第一の方向に回転し始める(接点がOFF状態になるまで第一の方向に回転する)までの駆動源10の駆動量に基づき判断する。本実施形態では、駆動源10が駆動を開始してから当該駆動源10であるステッピングモータのステップ数がN1を超えるかどうか(S2)で判断する。つまり、貯氷容器30内の氷が十分であると判断される場合における最低の氷の高さを基準として、氷がその高さである場合に駆動源10が一方に駆動し始めてから、製氷皿20が製氷位置から第一の方向に回転し始めるまで(接点がOFF状態となるまで)の駆動量が閾値として設定されている。駆動量が当該閾値未満であれば、当該高さ以上の氷が貯氷容器30内に存在しており、その当該高さ以上の氷に検氷部材40の氷接触部42が接触したということになるから、貯氷容器30内の氷の量は十分であると判断される。一方、駆動量が当該閾値以上であれば、当該高さ未満の氷しか貯氷容器30内に存在しておらず、その当該高さ未満の氷または当該高さ未満に設定される検氷部材ストッパ31に検氷部材40の氷接触部42が接触したということになるから、貯氷容器30内の氷は不足していると判断される。
【0036】
なお、当該閾値は変更することができる。例えば、季節の変化に伴う氷の需要の変化等に応じて、不足とされる量と十分とされる量の閾を適宜設定することができるようにすればよい。
【0037】
ステップ数がN1を超えることなく接点がOFF状態となったことが検出された場合(S3)には、貯氷容器30内の氷の量が十分であり現時点では製氷皿20内の氷を離氷させる必要がないということであるから、駆動源10を他方へ駆動させ(逆転させ)(S4)、検氷部材40を原位置に、製氷皿20を製氷位置に戻す。具体的には、駆動源10を他方へ駆動させると、検氷部材40が原位置に戻ってケース70に接触し、それ以上の移動が妨げられる(
図7(d)参照)。これにより、差動歯車機構50の出力が切り替わり、駆動源10の動力が製氷皿20に伝達されて製氷皿20は第一の方向の反対方向である第二の方向(本実施形態では
図7および
図8における時計回り方向をいう)に回転する。第二の方向に回転すると製氷皿20は製氷位置に戻る(
図7(e)参照)。製氷皿20が製氷位置に戻ると、接点がON状態となる(S5)ため、それを検出したことを契機として製氷皿20が製氷位置に戻ったと判断し、駆動源10を停止する(S6)。具体的には、可動接点部材62と固定接点部材61がOFF状態からON状態になってから、駆動源10をさらに所定の駆動量だけ駆動してから停止する。
【0038】
ここで、検氷部材40は原位置に戻ると、その接続部41が駆動源10や各歯車が収容されたケース70に接触する。本実施形態では、ケース70に段差72が形成されており、検氷部材40の回転軸方向において一段低くなった部分に、原位置に位置する検氷部材40の接続部41が位置するように構成されている。具体的には、当該一段低くなった部分から外側に向かって検氷部材支持体16の検氷部材取付部162が突出しており、その突出した部分に検氷部材40の接続部41が接続されている。検氷部材40(接続部41)およびそれを支持する検氷部材支持部(検氷部材取付部162)は、検氷部材40の回転軸方向におけるケース70の最も外側の面よりも内側に位置するように設けられている(
図10参照)。換言すれば、上記段差72の大きさは、検氷部材40の接続部41の厚みより大きくなるように設定されている。このようにすることで、装置全体がよりコンパクトなものとなる。検氷部材40が原位置に戻ると、その検氷部材40の移動は、上記ケース70の段差72に接続部41が接触することによって妨げられる。このように、本実施形態では、ケース70に段差72を設け、その段差72によって低くなった部分に検氷部材40の少なくとも一部を位置させることで、装置全体をコンパクトにしつつ、その段差72を原位置に戻った検氷部材40のストッパ(差動歯車機構50の出力の切替要素)としても利用している。
【0039】
一方、上記S2において駆動源10が駆動を開始してから当該駆動源10であるステッピングモータのステップ数がN1を超えた場合、すなわち貯氷容器30内の氷が不足していると判断されるときには、製氷皿20が製氷位置から第一の方向に回転し始めたこと、すなわち可動接点部材62と固定接点部材61がON状態からOFF状態に切り替わったこと(S7)に基づき、駆動源10を他方へ駆動させる(逆転させる)(S8)。そうすると、検氷部材40が原位置に戻ってケース70に接触し、それ以上の移動が妨げられる(
図8(c)および(d)参照)。これにより、差動歯車機構50の出力が切り替わり、駆動源10の動力が製氷皿20に伝達されて製氷皿20は第一の方向の反対方向である第二の方向に回転する。第二の方向に回転すると製氷皿20は製氷位置に戻る。製氷皿20が製氷位置に戻ると接点がON状態となる(S9)が、これが検出された後も当該方向への駆動源10の駆動を継続する。つまり、製氷皿20の第二の方向への回転を継続する。すると、可動接点部材62の略「V」字状の先端部はカム部183の第一の窪み1831の内側に入り込んだ状態から大径部分1833に接触した状態に移行する。これにより可動接点部材62が弾性変形し再び接点がOFF状態となる(S10)。
【0040】
そのまま製氷皿20の第二の方向への回転を継続すると、製氷皿20が略180度回転し、空間21の開口が下側に向けられた離氷位置に到達する)。離氷位置に到達した製氷皿20は、それに設けられた突起22が図示されない枠体(製氷皿20の一方側端部(製氷皿支持体18に支持された側の反対側)を支持する部材)の一部に接触する。このようにして突起22が枠体の一部に接触した状態でさらに製氷皿20の第二の方向への回転を継続することにより、製氷皿20が捻られて変形する。これにより、製氷皿20内の氷が貯氷容器30内に落下(離氷)する(
図8(e)参照)。製氷皿20が離氷位置まで移動すると、可動接点部材62の略「V」字状の先端部はカム部183の第二の窪み1832の内側に入り込む。つまり、製氷皿20が捻られて変形する状態では可動接点部材62がカム部183の段差を乗り上げることがないため、製氷皿20の回転を妨げる抵抗力が小さい。このため、製氷皿20を変形させるための駆動源10であるステッピングモータの駆動トルクを低減することができる。制御手段は、OFF状態であった可動接点部材62と固定接点部材61がON状態となったこと(S11)をもって、製氷皿20が離氷位置まで移動したことを検出する。
【0041】
製氷皿20が離氷位置まで移動したことを確認した後、駆動源10を一方へ駆動させる(S12)。このとき、製氷皿20に対し製氷皿20を製氷位置に向けて回転させようとすることを妨げる抵抗力が作用する一方、検氷部材40に対しては検氷部材40を原位置に戻す方向に回転させようとすることを妨げる抵抗力がほとんど作用しないように設定されている。そのため、差動歯車機構50まで伝達された駆動源10の動力は、その抵抗力が極めて小さい検氷部材40側に出力される。つまり、検氷部材40が貯氷容器30内に進入する方向に動作を開始する。
【0042】
このときに製氷皿20に作用する抵抗力の少なくとも一部は、可動接点部材62を弾性変形させる力によってもたらされる。つまり、製氷位置に位置する製氷皿20が離氷位置に回転しようとするとき、カム部183の第二の窪み1832の内側に入り込んだ可動接点部材62の略「V」字状の先端部が、その第二の窪み1832と大径部分1833との間の段差を乗り越える必要がある。可動接点部材62の略「V」字状の先端部がこの段差を乗り越えようとすると、可動接点部材62が弾性変形し第二の窪み1832の内側に留まろうとする力、すなわち製氷皿20が製氷位置に向けて回転しようとすることを妨げる力が製氷皿支持体18に作用することになる。このように、本実施形態では、検氷を開始する前および離氷後のそれぞれの場合において、製氷皿20より先に検氷部材40を動作させるための抵抗力の少なくとも一部を、製氷皿20の位置を検出するための接点部材を弾性変形させる力(カム部183に形成された段差を乗り越えようとする際に生ずる抵抗)より得ている。
【0043】
なお、上記製氷皿20に作用する抵抗力が、上述した摩擦ブレーキやおもりによってももたらされるものである場合、これらの部材による抵抗力も製氷皿20に作用することになる。
【0044】
検氷部材40が貯氷容器30内に進入すると、製氷皿20からの離氷によって新たな氷が補充された後の貯氷容器30内の氷または当該高さ未満に設定される検氷部材ストッパ31に検氷部材40の氷接触部42が接触する(
図8(f)参照)。これにより、差動歯車機構50の出力が切り替わり、製氷皿20が第一の方向に回転し始める。つまり、検氷部材40が下降した状態のまま製氷皿20が回転する。そうすると、可動接点部材62の略「V」字状の先端部が第二の窪み1832の内側に位置した状態から大径部分1833に接触した状態になり、接点がOFF状態となる(S13)。そこからさらに回転すると可動接点部材62の略「V」字状の先端部が第一の窪み1831の内側に入り込み、接点がON状態となる(S14)。つまり、製氷皿20が製氷位置に戻ったことが検出される。さらに回転すると、再び可動接点部材62の略「V」字状の先端部が第一の窪み1831の内側に位置した状態から大径部分1833に接触した状態になり、接点がOFF状態となる(S15)。つまり、製氷皿20は第一の方向に回転することにより離氷位置から製氷位置に一旦戻る(
図8(g)参照)ことになるが、そのまま製氷位置を通り過ぎる(
図8(h)参照)まで回転する。
【0045】
接点がOFF状態となったことが検出された後、再度駆動源10を他方へ駆動させる(S16)。そうすると、検氷部材40には原位置に向かう方向への移動を妨げる抵抗力が殆ど作用していないため、差動歯車機構50によって駆動源10の動力が検氷部材40に出力される。つまり、検氷部材40が原位置に向かって移動し始める。検氷部材40が原位置に到達する(
図8(i)参照)とケース70に接触し、それ以上の移動が妨げられるため、差動歯車機構50の出力が切り替わり、駆動源10の動力が製氷皿20に出力される。つまり、製氷皿20が製氷位置に向かって第二の方向に回転し始める。製氷皿20が製氷位置に戻る(
図8(j)参照)と、接点がON状態となる(S17)ため、それを検出したことをもって製氷皿20が製氷位置に戻ったと判断し、駆動源10を停止する(S18)。
【0046】
上記のように動作する本実施形態にかかる製氷装置1において、駆動源10の動力を検氷部材40または製氷皿20に伝達する差動歯車機構50を有する歯車列は、駆動源10から製氷皿20までの減速比よりも、駆動源10から検氷部材40までの減速比の方が低い。このようにすることにより、駆動に大きな力を要しない検氷部材40の動作を速め、動作開始から終了までの時間を短くすることができる。さらに、製氷皿20の駆動トルクを検氷部材40の駆動トルクよりも大きくできるので、大きな力で製氷皿20を捻ることができる。
【0047】
以上説明した本実施形態にかかる製氷装置1によれば、次のような作用効果が奏される。
【0048】
本実施形態にかかる製氷装置1は、差動歯車機構50によって一つの駆動源10により検氷部材40および製氷皿20の両方を駆動させることができるため、従来よりも装置を小型化できる。具体的には、貯氷容器30内の氷の過不足を検出するための検氷部材40が、氷または検氷部材ストッパ31に接触することで移動が阻止される構成を、差動歯車機構50の出力の切替(検氷部材40から製氷皿20への出力対象の切替)に巧みに利用した点で優れる。
【0049】
また、氷が不足していると判断される場合には、貯氷容器30内に進入している検氷部材40が貯氷容器30外である原位置まで移動してから製氷皿20が離氷位置に向かって移動する(離氷動作が行われる)構成であるため、検氷部材40が新たに離氷した氷で埋もれてしまい原位置に戻すことができなくなってしまうこと(原位置に戻すために大きなトルクが必要になってしまうこと)や、新たに離氷した氷で破損してしまうことが防止できる。
【0050】
また、製氷皿20が製氷位置または離氷位置に位置することを検出するための可動接点部材62を、検氷部材40の移動が阻止された状態となったことを契機として製氷皿20を移動させるように差動歯車機構50を機能させるための負荷(抵抗)としても利用することができる。
【0051】
また、貯氷容器30内の貯氷量(過不足)は、製氷皿20が製氷位置に位置する状態で駆動源10が一方へ駆動し始めてから、検氷部材40が貯氷容器30内の氷または検氷部材ストッパ31に接触することにより差動歯車機構50の出力が切り替わって製氷皿20が前記離氷位置に向けて移動し始めるまで(接点部材がON状態からOFF状態になるまで)の駆動源10の駆動量(本実施形態ではステップ数)により判断することができるため、貯氷容器30内の氷量を判断するために別の検知部材を用いる必要がない。
【0052】
また、離氷後、検氷部材40が原位置に戻ったかどうかは、製氷皿20が製氷位置に位置する状態から離氷位置に位置する状態までの駆動源10の一方への駆動量よりも、製氷皿20が離氷位置に位置する状態から製氷位置に位置する状態までの駆動源10の他方への駆動量が小さいかどうかで判断することができるため、検氷部材40が原位置に戻っているか否かを検知するために、別の検知部材を用いる必要がない。
【0053】
また、検氷部材40は、ケース70の最も外側の面よりも内側に位置するように設けられているため、検氷部材40を含めた装置全体がコンパクトになり、冷蔵庫等への配置の自由度が向上する。
【0054】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0055】
上記実施形態では、動作開始後、接点がOFF状態状態となるまでに、駆動源10であるステッピングモータのステップ数がN1を超えるか否か、すなわち駆動源10の駆動量で貯氷容器30内の氷の過不足を判断していることを説明したが、動作開始後、接点がOFF状態となるまでの時間によって貯氷容器内の氷の過不足を判断するようにしてもよい。
【0056】
上記実施形態では、検氷部材ストッパ31を貯氷容器30に設けたが、ケース70に設けてもよい。