(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6125868
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】吸気冷却システム
(51)【国際特許分類】
F02C 7/143 20060101AFI20170424BHJP
F02C 7/05 20060101ALI20170424BHJP
F01D 25/32 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
F02C7/143
F02C7/05
F01D25/32 C
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-66829(P2013-66829)
(22)【出願日】2013年3月27日
(65)【公開番号】特開2014-190253(P2014-190253A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】藤井 慶太
(72)【発明者】
【氏名】富田 康意
(72)【発明者】
【氏名】朝來野 二郎
(72)【発明者】
【氏名】高松 優
(72)【発明者】
【氏名】西尾 忠邦
(72)【発明者】
【氏名】長島 達直
(72)【発明者】
【氏名】堀田 克広
(72)【発明者】
【氏名】西村 将史
【審査官】
瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第03/071113(WO,A1)
【文献】
特開2006−37877(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0094384(US,A1)
【文献】
特開平11−72029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/05−7/055,7/143
F01D 25/32
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンの吸気冷却システムであって、
吸気入口から取り込まれた吸気を前記ガスタービンの圧縮機に導く吸気ダクトと、
前記吸気ダクト内に設けられ、外部から導入された冷却媒体との熱交換により前記吸気を冷却する冷却部と、
前記吸気ダクトの下流側に有する鉛直ダクトを介して設けられ、前記吸気を前記圧縮機に導くマニホールド部と、
前記マニホールド部の入口側に設けられ、前記鉛直ダクトを介して導入される吸気に含まれる不純物を取り除くフィルタ部と、
前記フィルタ部の直上に前記鉛直ダクトの内壁面に沿うように設けられる樋部材であって、前記内壁面を伝って流れるドレンを回収可能なドレンキャッチャと、を備えることを特徴とする吸気冷却システム。
【請求項2】
前記鉛直ダクトの断面は、矩形であり、
前記ドレンキャッチャ部は、
前記鉛直ダクトの断面の長手方向の内壁面に沿ってそれぞれ設けられる第1のドレンキャッチャと、
前記鉛直ダクトの断面の短手方向の内壁面に沿って第1のドレンキャッチャと連結するように設けられる第2のドレンキャッチャと、を備え、
少なくとも前記第1のドレンキャッチャは、前記鉛直ダクトの長手方向の内壁面の中心部から前記鉛直ダクトの短手方向の内壁面に向けて水平方向に対して下方に傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の吸気冷却システム。
【請求項3】
前記第1のドレンキャッチャ又は前記第2のドレンキャッチャの端部に前記ドレンを前記鉛直ダクトの系外に排出可能な排出部を更に備えることを特徴とする請求項2に記載の吸気冷却システム。
【請求項4】
少なくとも前記鉛直ダクトの内壁面に吸音材が更に設けられ、
前記ドレンキャッチャは、前記吸音材の下端部から所定距離を隔てた地点に設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の吸気冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンの吸気を冷却する吸気冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機、燃焼器、及びタービン等から構成される発電用ガスタービンでは、圧縮機へ吸気される吸気の温度によってタービンにおける出力が影響を受ける。例えば、大気温度が高い夏季には、吸気の密度が低下して質量流量が低下するため、タービンの出力が低下する。このようなタービンの出力低下を抑止するために、外気から吸気する空気温度を冷媒との熱交換によって下げる吸気冷却コイルを備えた吸気冷却システムや、吸気された空気に水を噴霧して、当該水の気化熱を利用して吸気冷却を行う吸気冷却システムが開発されている。吸気冷却コイルを備えた吸気冷却システムを適用すると、大気中の水分は、吸気冷却コイルとの熱交換による冷却によって凝縮されてドレン水となる。ドレン水は、吸気冷却コイルの下部に設けられるドレンパンにて回収して、ドレン配管から排出される。
【0003】
しかしながら、かかる吸気冷却システムを使用すると、吸気冷却コイルの表面に付着したドレンが吸気冷却コイルを通過した吸気と共に下流側に飛散したり、ドレンパンで回収しきれずにドレンパンから漏れることがある。このため、ドレンがガスタービンの吸気側となる圧縮機に流入して、圧縮機がロックすることやエロージョンの発生によって圧縮機翼を損傷させることが問題となっている。ガスタービンの圧縮機へのドレン流入を低減させる従来技術として、特許文献1には、噴霧器の吸気ダクト内の下流側に蒸発していないミストを捕獲して吸気からミストを除去するミスト除去手段が設けられるガスタービン吸気冷却装置が開示されている。また、特許文献2には、水が供給された作動空気が流通する流通経路の内壁面、ガスタービンのロータ若しくはケーシング流路面に回転対称な溝を設けて、内壁面や流路面に付着したミストを回収するガスタービンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−120479号公報
【特許文献2】特開2006−037877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧縮機に吸気を導入する吸気ダクトとして、圧縮機に導入される吸気の整流化を図って、圧力損失の発生を抑制すると共に圧縮機の性能低下を抑制するために、外気からの導入部の口径と比べて、圧縮機の入側の口径を縮小させたマニホールド部を有するものがある。マニホールド部は、例えば、吸気ダクト内の冷却コイルが設けられる水平ダクトに対して鉛直方向の下向きに屈曲した鉛直ダクトを介して、冷却コイルの設置面より高さが低い方向に向けて延出する構成となっている。
【0006】
このような構成の吸気ダクトを備える吸気冷却システムで吸気冷却を行えば、過冷却時等において冷却コイルの表面に凝結して発生するドレンが後流側に飛散して、鉛直ダクトの壁面上を流れて、マニホールド部に到達して溜まることが懸念される。当該ドレンの溜まり水が限度を超えると、ガスタービンの圧縮機内へ侵入して、圧縮機のロックや故障、圧縮機翼の損傷等を起こすリスクがある。前述の特許文献1や特許文献2では、吸気ダクトを通るドレンや吸気ダクトの壁面に付着したドレンを捕集することに関しては、言及しているが、吸気ダクトの下流側に有する鉛直ダクトの壁面を伝って流れるドレン対策に関してまでは、言及していない。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、吸気ダクトの下流側に有する鉛直ダクトの壁面を伝って流れるドレンを捕集することの可能な、新規かつ改良された吸気冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、ガスタービンの吸気冷却システムであって、吸気入口から取り込まれた吸気を前記ガスタービンの圧縮機に導く吸気ダクトと、前記吸気ダクト内に設けられ、外部から導入された冷却媒体との熱交換により前記吸気を冷却する冷却部と、前記吸気ダクトの下流側に有する鉛直ダクトを介して設けられ、前記吸気を前記圧縮機に導くマニホールド部と、前記マニホールド部の入口側に設けられ、前記鉛直ダクトを介して導入される吸気に含まれる不純物を取り除くフィルタ部と、前記フィルタ部の直上に前記鉛直ダクトの内壁面に沿うように設けられる樋部材であって、前記内壁面を伝って流れるドレンを回収可能なドレンキャッチャと、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様によれば、吸気ダクトの下流側に有する鉛直ダクトの内壁面に沿うようにドレンキャッチャを設けたので、鉛直ダクトの内壁面を伝って流れるドレンを直接回収することができる。
【0010】
このとき、本発明の一態様では、前記鉛直ダクトの断面は、矩形であり、前記ドレンキャッチャ部は、前記鉛直ダクトの断面の長手方向の内壁面に沿ってそれぞれ設けられる第1のドレンキャッチャと、前記鉛直ダクトの断面の短手方向の内壁面に沿って第1のドレンキャッチャと連結するように設けられる第2のドレンキャッチャと、を備え、少なくとも前記第1のドレンキャッチャは、前記鉛直ダクトの長手方向の内壁面の中心部から前記鉛直ダクトの短手方向の内壁面に向けて水平方向に対して下方に傾斜していることとしてもよい。
【0011】
このようにすれば、第1のドレンキャッチャで回収されたドレンを当該第1のドレンキャッチャ内で滞留せずに、鉛直ダクトの短手方向の内壁面に向けて流れるので、ドレンの回収効率が向上する。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記第1のドレンキャッチャ又は前記第2のドレンキャッチャの端部に前記ドレンを前記鉛直ダクトの系外に排出可能な排出部を更に備えることとしてもよい。
【0013】
このようにすれば、排出部を介して、第1のドレンキャッチャ又は第2のドレンキャッチャで捕集したドレンを鉛直ダクトの系外に排出できる。
【0014】
また、本発明の一態様では、少なくとも前記鉛直ダクトの内壁面に吸音材が更に設けられ、前記ドレンキャッチャは、前記吸音材の下端部から所定距離を隔てた地点に設けられることとしてもよい。
【0015】
このようにすれば、吸音材に沿って流れたドレンを確実に捕集することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、吸気ダクトの下流側に有する鉛直ダクトの壁面を伝って流れるドレンを捕集できる。このため、過冷却時等において冷却コイルの表面に凝結して発生するドレンが後流側に飛散して、下流側の鉛直ダクトに流れた場合でも、ドレンを確実に捕集して圧縮機の故障や損傷を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る吸気冷却システムを備えるガスタービンプラントの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る吸気冷却システムに備わるドレンキャッチャの概略構成図であり、(a)は、
図1のA−A方向からの断面図であり、(b)は、
図2(a)のB−B方向からの断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る吸気冷却システムに備わるドレンキャッチャとドレン排出ラインの詳細説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0019】
まず、本発明の一実施形態に係る吸気冷却システムの構成について、図面を使用しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る吸気冷却システムを備えるガスタービンプラントの構成を示すブロック図である。
【0020】
発電プラントとなるガスタービンプラント10は、吸気ダクト12と、圧縮機14と、燃焼器16と、ガスタービン18と、発電機20とを備えている。また、ガスタービンプラント10には、ガスタービン18の吸気を冷却するための吸気冷却システム100を備える。本実施形態では、吸気冷却システム100は、少なくとも吸気ダクト12と、冷却コイル26(冷却部)と、冷凍機32と、冷却塔38と、ドレン排出ライン102と、水封部104と、ドレンキャッチャ110とを備える。ここで、吸気冷却システム100の他の実施形態として、吸気された空気に水を噴霧して、当該水の気化熱を利用して吸気冷却を行う構成であっても良い。
【0021】
吸気ダクト12は、吸気入口22から取り込まれた吸気(外気:空気)を圧縮機14に導く。圧縮機14は、吸気ダクト12を介して供給された吸気を圧縮する。燃焼器16は、圧縮機14から供給された吸気を用いて燃料を燃焼させる。ガスタービン18は、燃焼器16から供給された燃焼ガスにより回転する。発電機20は、ガスタービン18の回転により発電を行う。
【0022】
吸気ダクト12は、
図1に示すように、上流側から水平ダクト12a、カーブダクト12b、鉛直ダクト12cを備え、鉛直ダクト12cの下流側には、吸気を整流させながら圧縮機14に導くマニホールド部12dが設けられている。本実施形態では、マニホールド部12dは、水平ダクト12aに対して鉛直方向の下向きに屈曲した鉛直ダクト12cを介して、下向きに延出する構成となっている。
【0023】
また、吸気ダクト12の吸気入口側には、吸気入口22から取り込まれた吸気から比較的大きい粉塵等を除去するプレフィルタ24が設けられている。また、吸気ダクト12(水平ダクト12a)内のプレフィルタ24の後段には、プレフィルタ24を通過した吸気を外部から導入された冷却媒体との熱交換により冷却する冷却コイル26が設けられている。冷却コイル26の下部には、吸気の冷却コイル26との熱交換による冷却によって凝縮されてドレン水を回収するためのドレンパン(図示せず)が設けられ、ドレンパンで回収したドレン水は、ドレン配管(図示せず)から吸気ダクト12の系外に排出される。
【0024】
冷却コイル26には、第1の循環路28、第1の循環ポンプ30を介してターボ冷凍機や吸収式冷凍機等の冷凍機32から冷たい循環水(冷却媒体)が供給されるようになっている。吸気冷却コイル26で吸気との熱交換で温められた循環水は、第1の循環路29を介して冷凍機32に戻されるようになっている。冷凍機32には、第2の循環路34、35、第2の循環ポンプ36を介して、冷却塔38から冷たい循環水が供給されるようになっている。冷凍機32で第1の循環路28、29を循環する循環水と熱交換された循環水は、第2の循環路34を介して冷却塔38に戻され、冷却塔38で再び冷却されるようになっている。
【0025】
また、吸気ダクト12の水平ダクト12a内には、冷却コイル26よりも下流側に吸気の際に発生する音を含む振動を抑制するサイレンサ40が設けられている。また、吸気ダクト12の鉛直ダクト12cと連結するマニホールド部12dの入口側には、鉛直ダクト12cを介して導入される吸気に含まれる不純物や、吸気ダクト内での作業中等に落下させたネジ等を取り除くためのフィルタ部として、フィルタ42が設けられている。
【0026】
吸気冷却システム100は、冷却コイル26での熱交換による吸気の冷却によって発生したドレンの圧縮機14への侵入を防止するために、ドレンを回収する機能を備える。本実施形態では、冷却コイル26の表面で発生したドレンが後流側への飛散等により、鉛直ダクト12cの内壁面に沿って流れたものを回収可能なドレンキャッチャ110が鉛直ダクト12cの内壁面に沿うようにして、フィルタ42の直上に設けられることを特徴とする。
【0027】
ドレンキャッチャ110は、
図1に示すように、鉛直ダクト12cの軸方向の断面形状がL字形状を成している。ドレンキャッチャ110は、L字形状の一辺が鉛直ダクト12cの内壁面に略平行になるように、鉛直ダクト12cの内壁面との間に空間を有するように設けられている。また、ドレンキャッチャ110は、鉛直ダクト12cの上流側に開口するように設けられている。これにより、鉛直ダクト12cの内壁面を流動しているドレンをドレンキャッチャ110によって捕集することができる。なお、ドレンキャッチャ110で捕集されたドレンは、ドレンキャッチャ110に接続されたドレン排出ライン102より、鉛直ダクト12cの系外へと排出される。
【0028】
次に、本発明の一実施形態に係る吸気冷却システムに備わるドレンキャッチャの構成について、図面を使用しながら説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る吸気冷却システムに備わるドレンキャッチャの概略構成図であり、(a)は、
図1のA−A方向からの断面図であり、(b)は、
図2(a)のB−B方向からの断面図である。
【0029】
ドレンキャッチャ110は、フィルタ42の直上に鉛直ダクト12cの内壁面12c1、12c2に沿うように設けられ、内壁面12c1、12c2を伝って流れるドレンを回収可能なる樋部材である。本実施形態では、
図2(a)に示すように、鉛直ダクト12cの断面は、矩形であり、ドレンキャッチャ部110は、長辺側となる第1のドレンキャッチャ110aと、短辺側となる第2のドレンキャッチャ110bで構成される。
【0030】
また、本実施形態では、
図2(a)に示すように、ドレンキャッチャ110の四隅にドレンを鉛直ダクト12cの系外に排出する排出部112が設けられている。すなわち、第1のドレンキャッチャ110aと第2のドレンキャッチャ110bの端部に、第1のドレンキャッチャ110a又は第2のドレンキャッチャ110bで捕集したドレンを鉛直ダクト12cの系外に排出する排出部112が設けられている。
【0031】
第1のドレンキャッチャ110aは、鉛直ダクト12cの断面の長手方向の内壁面12c1に沿ってそれぞれ設けられる。第2のドレンキャッチャ110bは、鉛直ダクト12cの断面の短手方向の内壁面12c2に沿って第1のドレンキャッチャ110aと連結するように設けられる。
【0032】
また、本実施形態では、
図2(b)に示すように、第1のドレンキャッチャ110aは、鉛直ダクト12cの長手方向の内壁面12c1の中心部12c3から鉛直ダクト12cの短手方向の内壁面12c2に向けて水平方向に対して下方に傾斜している。すなわち、第1のドレンキャッチャ110aの底面110a2は、中央部110a1が高くなり、排出部112を有する端部に向かって下方に傾斜する斜面となっている。
【0033】
鉛直ダクト12cは、例えば、長手方向の長さが7m程度の大きさに形成する場合には、第1のドレンキャッチャ110aで捕集したドレンが当該第1のドレンキャッチャ110a内で滞留することが懸念される。このため、本実施形態では、捕集したドレンを第1のドレンキャッチャ110a内で滞留させないようにするために、第1のドレンキャッチャ110aの底面110a2を斜面にして、ドレンが排出部112に向けて流動可能な構成とした。これによって、捕集したドレンがドレンキャッチャ110aに滞留しなくなるので、ドレンの回収効率が向上する。
【0034】
なお、本実施形態では、第1のドレンキャッチャ110aのみ底面を斜面としているが、第2のドレンキャッチャ110bの底面も斜面として、第2のドレンキャッチャ110bで捕集したドレンを排出部112に流動可能な構成としてもよい。
【0035】
次に、本発明の一実施形態に係る吸気冷却システムに備わるドレンキャッチャとドレン排出ラインの詳細について、図面を使用しながら説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る吸気冷却システムに備わるドレンキャッチャとドレン排出ラインの詳細説明図である。
【0036】
吸気を圧縮機14に導入する際には、騒音や振動が発生するので、当該騒音や振動を抑制するために、吸引ダクト12の内壁面には、ウレタンやスポンジ、グラスウール等で形成される吸音材が設けられている。このため、鉛直ダクト12cの内壁面12c1、12c2にドレンキャッチャ10を設置する際には、吸音材の厚さを考慮した上で設置する必要がある。
【0037】
本実施形態では、
図3に示すように、ドレンキャッチャ110は、鉛直ダクト12cの内壁面12c1の吸音材13が設けられていない部位に設置され、かつ、吸音材13の下端部13aから所定距離lを隔てた地点に設置される。吸音材13の厚さを考慮して、ドレンキャッチャ110を設置すると、吸音材13の厚さ分、ドレンキャッチャ110の長手方向の幅を大きくする必要がある。このため、ドレンキャッチャ110の当該幅の拡大に伴い、鉛直ダクト12cの吸気通路が狭まって、吸気効率が低減することが懸念される。
【0038】
このため、本実施形態では、ドレンキャッチャ110は、吸音材13が鉛直ダクト12cの内壁面12c1、12c2に設けられていない部位に設置するようにしている。すなわち、ドレンキャッチャ110の長手方向の幅を吸音材13の厚さ分だけ拡大することなく、ドレンキャッチャ110を設置することができる。
【0039】
また、ドレンキャッチャ110を設置する際には、吸音材13の下端部13aの直下にドレンキャッチャ110を設けると、吸音材13の厚さがある分、吸音材13の表面を伝って流動したドレンがドレンキャッチャ110から反れてしまうことが懸念される。そこで、本実施形態では、吸音材13に沿って流れたドレンを確実に捕集するために、ドレンキャッチャ110は、吸音材13の下端部13aより所定距離lを離して設けるようにする。具体的には、ドレンキャッチャ110は、吸音材13の下端部13aから少なくとも1m程度離して設けることが好ましい。
【0040】
ドレンキャッチャ110で捕集されたドレンは、
図3に示すように、ドレンキャッチャ110に接続されたドレン排出ライン102より、鉛直ダクト12cの系外へと排出される。本実施形態では、ドレン排出ライン102には、開閉可能なバルブ106と、鉛直ダクト12cの系外からの不純物等の流入を防ぐ水封部104が設けられている。また、ドレン排出ライン102は、マニホールド部12dの底面12d1とバルブ107を介して接続され、マニホールド部12dで溜まったドレンも排出可能となっている。
【0041】
このように、本実施形態では、吸気ダクト12の下流側に有する鉛直ダクト12cの内壁面12c1、12c2に沿うようにドレンキャッチャ110を設けたので、鉛直ダクト12cの内壁面12c1、12c2を伝って流れるドレンを直接回収することができる。また、ドレンキャッチャ110をフィルタ42の直上に設けることによって、吸気の際にカーブダクト12bの壁面で衝突しながら、当該壁面で結露したドレンが鉛直ダクト12cを伝って流れてきたものも効率よく捕集できる。
【0042】
また、本実施形態のドレンキャッチャ110は、既設のガスタービンプラントが定検等で運転が停止している期間に、新たに設置することができる。この場合、ドレンキャッチャ110は、鉛直ダクトの内壁面に設けられた吸音材13の一部を取り除いた部位に設置し、かつ、吸音材の下端部から所定距離lを隔てた地点に設置するようにする。このように、本実施形態のドレンキャッチャ110は、既設のガスタービンプラントにも設置可能であり、鉛直ダクトを伝って流れてきたドレンを効率よく捕集できる。
【0043】
なお、上記のように本発明の一実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0044】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、ガスタービンプラント、ガスタービンの吸気冷却システムの構成、動作も本発明の一実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0045】
10 ガスタービンプラント
12 吸気ダクト
12a 水平ダクト
12b カーブダクト
12c 鉛直ダクト
12c1 (長手方向の)内壁面
12c2 (短手方向の)内壁面
12d マニホールド部
12d1 (マニホールド部の)底面
13 吸音材
14 圧縮機
14a (圧縮機の)入口
16 燃焼器
18 ガスタービン
20 発電機
22 吸気入口
24 プレフィルタ
26 冷却コイル(冷却部)
28、29 第1の循環路
30 第1の循環ポンプ
32 冷凍機
34、35 第2の循環路
36 第2の循環ポンプ
38 冷却塔
40 サイレンサ
42 フィルタ(フィルタ部)
100 吸気冷却システム
102 ドレン排出ライン
104 U字型管路(水封部)
106、107 バルブ
110 ドレンキャッチャ
110a 第1のドレンキャッチャ
110b 第2のドレンキャッチャ
112 排出部