(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6125879
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】配管支持構造
(51)【国際特許分類】
F16L 3/16 20060101AFI20170424BHJP
【FI】
F16L3/16 D
F16L3/16 Z
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-77301(P2013-77301)
(22)【出願日】2013年4月3日
(65)【公開番号】特開2014-202241(P2014-202241A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】水多 怜子
(72)【発明者】
【氏名】鉛口 清文
【審査官】
礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−142586(JP,U)
【文献】
特開2003−294883(JP,A)
【文献】
実開平02−077698(JP,U)
【文献】
特開2000−161582(JP,A)
【文献】
特開2009−150527(JP,A)
【文献】
実公昭56−006134(JP,Y2)
【文献】
実開昭57−024597(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/00 − 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠型に形成した架構内に配管を配置し、架構内に配管を間隙をもって支持するための複数の支持部材を備えた配管支持構造であって、
前記支持部材は、ボルトと、該ボルトと螺合関係にある第1のロックナットと、ナット抑えプレートと一体にされ前記ボルトと螺合関係にある第2のロックナットとで構成され、
前記ボルトの一方側である前記ナット抑えプレート側が前記架構に固定され、前記ボルトの他方側が前記配管側に面するとともに、前記ボルトと前記ナット抑えプレートの間が前記第1のロックナットと第2のロックナットにより伸縮可能に取り付けられていることを特徴とする配管支持構造。
【請求項2】
請求項1記載の配管支持構造において、
前記ナット抑えプレートは、その中央部に円形の穴を有し、かつその上部に前記第2のロックナットを溶接して前記ボルトを螺合させ、前記第1のロックナットで前記ボルトの長さを調節することを特徴とする配管支持構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の配管支持構造において、
前記支持部材は、前記ボルトの一方側である前記ナット抑えプレート側の端部に磁石が備えられており、前記磁石を介して前記支持部材を前記架構に固定することを特徴とする配管支持構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の配管支持構造において、
前記支持部材は、前記ボルトの他方側の前記配管側の面に薄板を備えることを特徴とする配管支持構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の配管支持構造において、
前記支持部材の底面に磁石を用いることにより、固定を可能にしたことを特徴とする配管支持構造。
【請求項6】
請求項1または請求項2記載の配管支持構造において、
前記ボルトの一方側である前記ナット抑えプレート側は、取付金具により前記架構に固定されることを特徴とする配管支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管を支持構造物(サポート)により支持する配管支持構造に係り、特に間隙量を微調整する機構を備えた配管支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
各種のプラントなどでは、内部流体を移送するための配管を適宜の位置に取り付けるための配管支持構造が採用されている。配管支持構造としては各種のものが提案、実用化されており、例えば配管、棒材等(以下単に配管という)の被取付物を構築物等の支持体に固定する場合には、一般にUボルトが用いられる。
【0003】
これに対しプラントによっては、配管を固定支持するのではなく、間隙を介して支持することが求められる場合がある。例えば高温環境下で用いられる配管などにおいては、配管の熱膨張が生じるため、構築物等に固定する場合、配管などを完全に抑えつけてしまわず若干隙間を設ける必要がある。係る間隙支持のための実現手法として特許文献1では、支持構造物の間隙に薄板(ライナー)を挿入し溶接して、間隙量を調整している。
【0004】
また、特許文献2では、間隙量の調整方法として、レベル調節ライナーを平板上のライナー取付け座に嵌め込み式で取り付けるようにしており、火器を用いないで固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−213118号公報
【特許文献2】特開平11−190466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献には配管と支持構造物の間隙調整方法について記載されている。然しながら、支持構造物と配管の間に薄板を挿入し、溶接して間隙量を調整する特許文献1の方法は、溶接機や、切断機を使用する大掛かりな作業となり、設計変更に対する対応が困難である。また、火器を用いず嵌め込み式で間隙量を調整する方法は、間隙量調整のため厚みの異なる複数の調節ライナーを用意する必要がある。
【0007】
そこで本発明は、火器を用いず、間隙量の調節を容易にする間隙量微調整機構を持つ、配管支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明においては、枠型に形成した架構内に配管を配置し、架構内に配管を間隙をもって支持するための複数の支持部材を備えた配管支持構造であって、支持部材はボルトで構成され、ボルトの一方端が架構に固定され、ボルトの他方端側のナット抑えプレートが配管側に面するとともに、ボルトとナット抑えプレートの間がロックナットにより伸縮可能に取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ボルトを調節することにより、配管と架構で必要な間隙量を容易に得
ることができ、調節ライナーを固定するための現地溶接、作業量削減により作業工数を低
減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】間隙量微調整機構を備えた配管支持構造の構成例を示す図。
【
図2】間隙量を調整する間隙量微調整機構を備える支持部材の一例を示す図。
【
図3】ボルトを締めたときと緩めた時の位置関係を示す図。
【
図4】取付金具による支持部材の固定方法を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0012】
本実施例では、容易に間隙量を調節する微調整機構の例を説明する。
【0013】
図2は、本実施例の間隙量微調整機構を備えた配管支持構造の構成例を示す図である。ここでは、架構8を門型のような枠型に構成している。具体的には例えば角型の鋼材を用いて、左右架構部8R,8Lと上下架構部8O,8Uから構成された架構8を組み上げる。門型の架構8の内部には、配管7が図示せぬリフトなどにより、仮位置決めして配置される。また門型の架構8の各架構部8R,8L、8O,8Uから内部の配管方向に向けて支持部材6が取り付けられる。仮位置決めされた配管7は、架構8と支持部材6により最終的な位置決めが行なわれる。このため支持部材6により、間隙量微調整機構を構成する。その後リフトなどが取り除かれて据え付け完了とされる。
【0014】
なお
図2において、架構8は固定点101に固定されている状態である。また配管7は下架構部8Uから上方向に取り付けられた支持部材6Uに対しては着座する形になる。しかし他の左右と上の支持部材6R,6L、6Oに対しては、支持部材6の長さL1を夫々調整することにより、既定の間隙量t1を得るように調整される。
【0015】
既定の間隙量t1を得るように長さ調整する間隙量微調整機構を備える支持部材の一例が
図1に示されている。
図1において支持部材6は、配管7側から順に、薄板1、ボルト20、ロックナット(メス)30、ロックナット(オス)31、ナット抑えプレート4、磁石5を有するように構成される。
【0016】
支持部材6を構成する各部は、以下のように接続され、構成され、あるいは機能する。まずロックナット30,31を用いることにより運転時の振動や、地震によるナットの緩みを防止する。ナット抑えプレート4は、その中央に円形の穴を有し、同じく中央に円形の穴を有する強力磁石5を貼り付け、支持部材6の土台とする。またナット抑えプレート4は、その上部にロックナット(オス)31を溶接しており、そこにボルト20を螺合させ、ロックナット(メス)30でボルト長さを調節する。ボルト20の頭頂部20Aには、応力が一点集中しないよう接触面積を増やすため、薄板1を溶接点100の位置で溶接する。
【0017】
この構成から明らかなように、支持部材6は大略的にはボルト20と、ボルトと螺合関係にあるロックナット(メス)30と、ナット抑えプレート4と一体にされボルトと螺合関係にあるロックナット(オス)31とで構成され、ナット抑えプレート4の中央の円形の穴にボルトが侵入する形とされている。
【0018】
図3は、ボルト20を締めたときと緩めた時の位置関係を示す図である。
図3右のボルト20を締めたときの状態では、ボルト20の先端部はナット抑えプレート4の中央の円形の穴に深く進入している。ただしボルト20の先端部は、ナット抑えプレート4の中央の円形の穴からさらに外部にはみ出さない位置とされる。
図3左のボルト20を緩めたときの状態では、ボルト20の先端部はナット抑えプレート4の中央の円形の穴に浅く進入している。2つの状態を対比して
図3に示すように、ボルト20を上下させることにより磁石5の部分から薄板1までの距離が変化する。これにより、間隙量微調整のためのスムーズな長さ調整が可能である。
【0019】
図2の支持部材6の使用に際しては、ボルト20を締めた状態の支持部材6(
図3右)の磁石5側を、架構8を構成する各架構部8R,8L、8O,8Uの配管7側に取り付ける。次にボルト20を緩めて、その長さを長くする方向に伸ばして、支持部材6と配管7の間隙量t1を調節する。
【0020】
本発明によれば、支持構造物の設置後に、地震などの影響や施工ズレにより配管の位置が若干ずれたとしても、ボルトを調節することにより必要な間隙を得ることが容易である。また、火器を用いないため現地での工数が削減可能である。
【実施例2】
【0021】
本発明の他の実施例を
図4により説明する。本実施例では、
図2の実施例1の磁石による架構8への取付け(火器を使用しない固定方法)の代わりに、取り付金具12を用いて架構8への取付を行う。
【0022】
図4において、支持部材6を架構8への取付けるための取り付金具12では、ナット抑えプレート4の部分の機能が長手方向に延伸した延伸部材4Aと、架構8を支持するための架構支持部材4Bと、延伸部材4Aと架構支持部材4Bを連結するボルト21により実現されている。
【0023】
このうち延伸部材4Aの両端には、ねじ穴をあけてボルト21をねじ込み、緩み止めとして先端に平座金11、ばね座金10を取り付け、延伸部材4Aと架構支持部材4Bを連結する。延伸部材4Aと架構支持部材4Bを連結するボルト21のトルクを管理することにより、十分な締め付けを得る。なお、
図1の支持部材6のうち、既に説明した同一の機能を有する部分については、説明を省略する。本発明によれば、火器を用いないため、現地での工数が削減可能である。
【0024】
なお、本発明は上記した実施例1、実施例2に限定されるものではなく、さまざまな応用例が含まれる。
【0025】
例えば、上記した実施例は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部をほかの実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成にほかの実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、ほかの構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0026】
1:薄板
20:ボルト
21:ボルト
30:ロックナット(メス)
31:ロックナット(オス)
4:ナット抑えプレート
5:固定用磁石
6:支持部材
7:配管
8:架構
9:ナット
10:ばね座金
11:平座金
12:取り付金具
100:溶接点
101:固定点
t1:間隙量
L1:支持部材の長さ