【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施例、比較例および各種測定方法について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0040】
[測定方法]
(クッション率)
ダイアルゲージ(三豊製作所製)に直径10mm平型の標準測定子を取り付け、ポリオレフィン微多孔膜の厚みを測定するに当たり、50g荷重を加えた場合の厚みT1(μm)と500g荷重を加えた場合の厚みT2(μm)を測定し、下記式によりクッション率を求めた。
クッション率(%)=(1−T2/T1)×100
なお、厚み測定は荷重を加えた後、30秒後に測定を行った。この測定は測定位置を変えて10点を測定し、その平均値を用いた。
【0041】
(熱収縮率)
ポリオレフィン微多孔膜を各辺が長手方向(MD)と幅方向(TD)に平行になるように100mm四方の大きさに切出し、温度を130℃に調節したオーブン内に1時間放置した後の幅方向(TD)の収縮率(寸法変化率)を下記式により算出した。
熱収縮率(%)=(|熱処理前寸法−熱処理後寸法|/熱処理前寸法)×100
【0042】
(孔閉塞温度)
非イオン性界面活性剤(花王社製;エマルゲン210P)を3重量%溶解したメタノール溶液に切り出したポリオレフィン微多孔膜基材を浸漬し、風乾した。風乾したサンプルを所定の大きさのSUS板に挟み、電解液である1MのLiBF
4 プロピレンカーボネート/エチレンカーボネート(1/1重量比)を含浸させた。これを2032型コインセルに封入した。コインセルからリード線をとり、熱電対を付けてオーブンの中に入れ、昇温速度1.6℃/分で昇温させながら、交流インピーダンス法で振幅10mV、周波数100kHzにて、該セルの抵抗を測定した。抵抗値が1000Ω・cm
2に達した時点の温度を孔閉塞温度とした。
【0043】
(バブルポイント)
ポリオレフィン微多孔膜のバブルポイントは、ASTM E−128−61に準拠し、測定溶媒にエタノールを用いて測定した。
【0044】
(厚さ)
接触式の膜厚計(ミツトヨ社製)にてポリオレフィン微多孔膜の膜厚を20点測定し、これらを平均することで求めた。ここで接触端子は底面が直径0.5cmの円柱状のものを用いた。測定圧は0.1Nとした。
【0045】
(空孔率)
ポリオレフィン微多孔膜の空孔率(ε)は、下記式により算出した。
ε(%)={1−Ws/(ds・t)}×100
Ws:ポリオレフィン微多孔膜の目付け(g/m
2)
ds:ポリオレフィンの真密度(g/cm
3)
t:ポリオレフィン微多孔膜の膜厚(μm)
なお、ポリオレフィン微多孔膜の目付けは、サンプルを10cm×10cmに切り出し、その質量を測定し、質量を面積で割ることで目付を求めた。
【0046】
(透水性能(水流量))
予めポリオレフィン微多孔膜をエタノールに浸漬し、室温下で乾燥した。このポリオレフィン微多孔膜を、直径37mmのステンレス製の透液セル(透液面積Scm
2)にセットした。透液セル上の該ポリオレフィン微多孔膜を少量(0.5ml)のエタノールで湿潤させた後、90kPaの差圧で予め計量した純水V(100ml)を透過させて、純水全量が透過するのに要した時間Tl(min)を計測した。その純水の液量と純水の透過に要した時間から、90kPa差圧下における単位時間(min)・単位面積(cm
2)当たりの透水量Vsを以下の式より計算し、これを透水性能(ml /min・cm
2) とした。測定は室温24℃ の温度雰囲気下で行った。
Vs=V/(Tl×S)
【0047】
(捕集性能)
下記粒子(1)〜(3)のいずれかを含有する水溶液100mlを、差圧10kPaでポリオレフィン微多孔膜を介してろ過を行った。ろ過前の粒子を含む水溶液100mlの質量(M1)とポリオレフィン微多孔膜を通過したろ液の質量(M2)との差から、下記(式1)または(式2)により粒子の捕集率を求めた。(式1)は、粒子(1)を用いた場合の捕集率の計算式である。(式2)は、粒子(2)または粒子(3)を用いた場合の捕集率の計算式である。なお、捕集率が90%以上である場合を最良(◎)、80%以上90%未満の場合を良好(○)、80%未満の場合を不良(×)と判定した。
粒子(1)金コロイド 平均粒子径 3nm 粒子濃度0.0045質量%
粒子(2)ポリスチレン粒子 平均粒子径30nm 粒子濃度0.1質量%
粒子(3)ポリスチレン粒子 平均粒子径70nm 粒子濃度0.1質量%
捕集率(%)=((M1−M2)/(M1×45×10
−6))×100 …(式1)
捕集率(%)=((M1−M2)/(M1×0.1×10
−2))×100…(式2)
【0048】
(透水量変化率(送液安定性))
予めポリオレフィン微多孔膜をエタノールに浸漬し、室温下で乾燥した。このポリオレフィン微多孔膜を、直径37mmのステンレス製の透液セル(透液面積Scm
2)に0.5mm間隔に5枚を重ねてセットし、透液セル上の該ポリオレフィン微多孔膜を少量(0.5ml)のエタノールで湿潤させた後、40kPaの差圧下で純水200mlを透過させ、全量が透過するのに要した時間(T1)を計測し、その後直ちに差圧状態を開放した。引き続き同一サンプルを使って、40kPaの差圧下で純水200mlを透過させ、直ちに差圧を開放する操作を100回繰り返した。100回目の純水200mlの透過に要した時間(T100)を計測して、以下の式より計算し、透水量変化率(%)とした。なお、透水量変化率が10%以下である場合を最良(◎)、10%超15%以下の場合を良好(○)、15%超の場合を不良(×)と判定した。
透水量変化率(%)= (T100−T1)/Tl × 100
【0049】
(破膜耐性)
予めポリオレフィン微多孔膜をエタノールに浸漬し、室温下で乾燥した。このポリオレフィン微多孔膜を、直径37mmのステンレス製の透液セル(透液面積Scm
2)に1.0mm間隔に3枚を重ねてセットし、30kPaの差圧下でエタノール100mlを透過させ、全量透過後直ちに差圧を開放した。引き続き同一サンプルを使って、30kPaの差圧下でエタノール100mlを透過させ、直ちに差圧を開放する操作を200回繰り返した。その間に破膜が発生しなかったものを破膜耐性が良好(○)と判断し、その間に破膜が発生したものを破膜耐性が不良(×)と判断した。
【0050】
(耐溶出性)
ポリオレフィン微多孔膜を塩化メチレンに所定の時間浸漬した後に、ポリオレフィン微多孔膜を取り除き、浸漬後の塩化メチレン溶液の重量を計測した。これとは別に前述した計測した重量と継続同重量の新品の塩化メチレンを準備し、各々から塩化メチレンを蒸発させて完全に溶媒を除去した(乾固)後に、各々の重量を測定した。新品の塩化メチレンを完全に除去した後の重量増分を基準として、ポリオレフィン微多孔膜を浸漬した後の塩化メチレン溶液を乾固させた後の重量増分の比を算出し、1.05倍以下を耐溶出性が良好(ろ液汚染なし、○)と判断し、1.05倍を超える場合を耐溶出性が不良(×)と判断した。
【0051】
(実施例1)
重量平均分子量が460万の超高分子量ポリエチレン(PE1)6重量部と、重量平均分子量が56万の高密度ポリエチレン(PE2)22重量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が28重量%となるようにして、予め準備しておいた流動パラフィン69重量部とデカリン(デカヒドロナフタレン)3重量部の混合溶剤と混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
このポリエチレン溶液を温度160℃でダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で25℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ゲル状シート(ベーステープ)を作製した。該ベーステープを55℃で10分、さらに、95℃で10分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、85℃に加熱したローラー上を20kgf/mの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度100℃にて倍率5.8倍で延伸し、引き続いて幅方向に温度100℃にて倍率14倍で延伸し、その後直ちに118℃で熱処理(熱固定)を行った。
次にこれを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して該ベーステープを浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)とした。その後、45℃で塩化メチレンを乾燥除去し、110℃に加熱したローラー上を搬送させながらアニール処理をすることでポリオレフィン微多孔膜を得た。
得られたポリオレフィン微多孔膜は、粒径3nmの金コロイド粒子の捕集率が90%以上の優れた捕集性能を有し、優れた送液安定性を有し、かつ優れた破膜耐性を有するポリオレフィン微多孔膜であった。
上記の製造条件を表1に示し、得られたポリオレフィン微多孔膜の物性を表2に示す。なお、以下の実施例および比較例についても同様に、表1,2にまとめて示す。
【0052】
(実施例2)
実施例1において、ベーステープを40℃に加熱したローラー上で40kgf/mの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した後、長手方向に温度90℃にて倍率5.8倍で延伸し、引き続いて幅方向に温度90℃にて倍率14倍で延伸し、その後直ちに124℃で熱処理(熱固定)を行った以外は同様にポリオレフィン微多孔膜を得た。
得られたポリオレフィン微多孔膜は、粒径3nmの金コロイド粒子の捕集率が80%以上の優れた捕集性能を有し、優れた送液安定性を有し、かつ優れた破膜耐性を有するポリオレフィン微多孔膜であった。
【0053】
(実施例3)
実施例1において、重量平均分子量が460万の超高分子量ポリエチレン(PE1)8重量部と、重量平均分子量が56万の高密度ポリエチレン(PE2)22重量部とを混合したポリエチレン組成物を用いて、ポリエチレン樹脂総量の濃度が30重量%となるようにして、予め準備しておいた流動パラフィン55重量部とデカリン(デカヒドロナフタレン)15重量部の混合溶剤と混ぜ、ポリエチレン溶液を調製し、押出により得られたゲル状シートを長手方向に4倍、横方向に15倍で延伸した以外は同様にポリオレフィン微多孔膜を得た。
得られたポリオレフィン微多孔膜は、粒径3nmの金コロイド粒子の捕集率が90%以上の優れた捕集性能を有し、優れた送液安定性を有し、かつ優れた破膜耐性を有するポリオレフィン微多孔膜であった。
【0054】
(実施例4)
重量平均分子量が460万の超高分子量ポリエチレン(PE1)12重量部と、重量平均分子量が56万の高密度ポリエチレン(PE2)8重量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が20重量%となるようにして、予め準備しておいた流動パラフィン55重量部とデカリン(デカヒドロナフタレン)25重量部の混合溶剤と混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
このポリエチレン溶液を温度160℃でダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で25℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ゲル状シート(ベーステープ)を作製した。該ベーステープを55℃で10分、さらに、95℃で10分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、85℃に加熱したローラー上を20kgf/mの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度100℃にて倍率5倍で延伸し、引き続いて幅方向に温度100℃にて倍率14倍で延伸し、その後直ちに128℃で熱処理(熱固定)を行った。
次にこれを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)である。その後、45℃で塩化メチレンを乾燥除去し、110℃に加熱したローラー上を搬送させながらアニール処理をすることでポリオレフィン微多孔膜を得た。
得られたポリオレフィン微多孔膜は、粒径30nmのポリスチレン粒子の捕集率が90%以上の優れた捕集性能を有し、優れた送液安定性を有し、かつ優れた破膜耐性を有するポリオレフィン微多孔膜であった。
【0055】
(実施例5)
重量平均分子量が460万の超高分子量ポリエチレン(PE1)6.5重量部と、重量平均分子量が56万の高密度ポリエチレン(PE2)18.5重量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が25重量%となるようにして、予め準備しておいた流動パラフィン50重量部とデカリン(デカヒドロナフタレン)25重量部の混合溶剤と混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
このポリエチレン溶液を温度160℃でダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で25℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ゲル状シート(ベーステープ)を作製した。該ベーステープを55℃で10分、さらに、95℃で10分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、95℃に加熱したローラー上を10kgf/mの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度100℃にて倍率6倍で延伸し、引き続いて幅方向に温度100℃にて倍率12倍で延伸し、その後直ちに136℃で熱処理(熱固定)を行った。
次にこれを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)である。その後、45℃で塩化メチレンを乾燥除去し、110℃に加熱したローラー上を搬送させながらアニール処理をすることでポリオレフィン微多孔膜を得た。
得られたポリオレフィン微多孔膜は、粒径70nmのポリスチレン粒子の捕集率が90%以上の優れた捕集性能を有し、優れた送液安定性を有し、かつ優れた破膜耐性を有するポリオレフィン微多孔膜であった。
【0056】
(比較例1)
重量平均分子量が460万の超高分子量ポリエチレン(PE1)32重量部と、重量平均分子量が56万の高密度ポリエチレン(PE2)8重量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が40重量%となるようにして、予め準備しておいた流動パラフィン60重量部と混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
このポリエチレン溶液を温度160℃でダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で25℃で冷却するとともに、水浴の表層に水流を設け、水浴中でゲル化したシートの中から放出されて水面に浮遊する混合溶剤がシートに再び付着しないようにしながら、ゲル状シート(ベーステープ)を作製した。該ベーステープを55℃で10分、さらに、95℃で10分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した後、引き続き、85℃に加熱したローラー上を20kgf/mの押圧を掛けながら搬送させて、ベーステープ内から流動パラフィンの一部を除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度100℃にて倍率5.8倍で延伸し、引き続いて幅方向に温度100℃にて倍率14倍で延伸し、その後直ちに105℃で熱処理(熱固定)を行った。
次にこれを2槽に分かれた塩化メチレン浴にそれぞれ30秒間ずつ連続してベーステープを浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。なお、浸漬を開始する側を第1槽とし、浸漬を終了する側を第2槽とした場合の洗浄溶媒の純度は(低)第1層<第2槽(高)である。その後、45℃で塩化メチレンを乾燥除去し、110℃に加熱したローラー上を搬送させながらアニール処理をすることでポリオレフィン微多孔膜を得た。
得られたポリオレフィン微多孔膜は、クッション率が過度に低く、粒径70nmのポリスチレン粒子の捕集率が90%以上の優れた捕集性能を有したが、破膜耐性が不十分であり、液体フィルター用基材として適さなかった。
【0057】
(比較例2)
重量平均分子量が460万の超高分子量ポリエチレン(PE1)2重量部と、重量平均分子量が56万の高密度ポリエチレン(PE2)28重量部とを混合したポリエチレン組成物を用いた。ポリエチレン樹脂総量の濃度が30重量%となるようにして、予め準備しておいた流動パラフィン45重量部とデカリン(デカヒドロナフタレン)25重量部の混合溶剤と混ぜ、ポリエチレン溶液を調製した。
このポリエチレン溶液を温度148℃でダイよりシート状に押出し、ついで前記押出物を水浴中で20℃で冷却し、ゲル状シート(ベーステープ)を作製した。該ベーステープを60℃で8分、さらに、95℃で15分乾燥してデカリンをベーステープ内から除去した。その後、該ベーステープを長手方向に温度90℃にて倍率5.5倍で延伸し、引き続いて幅方向に温度105℃にて倍率11倍で延伸し、その後直ちに130℃で熱処理(熱固定)を行った。
次にこれを塩化メチレン浴に10秒間浸漬させながら、流動パラフィンを抽出した。その後、50℃で塩化メチレンを乾燥除去し、120℃に加熱したローラー上を搬送させながらアニール処理をすることでポリオレフィン微多孔膜を得た。
得られたポリオレフィン微多孔膜は、クッション率が過度に高く、粒径70nmのポリスチレン粒子の捕集率が80%未満であり捕集性能が不十分であり、かつ送液安定性が不十分であり、液体フィルター用基材として適さなかった。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】