(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に空調システムなどを設計する場合、予想される最大の熱負荷(言い換えると、設計想定冷房負荷)に対応できるように冷房負荷を設定している。ここでは電子機器から発生する最大の熱量を処理できる空調システムなどとして設計される。
【0007】
このように設計された空調システムなどは、電子機器から最大熱量が発生する場合は限られているため、設計想定冷房負荷がかかる状態で運用されることは少ない。また、冷房負荷は季節によっても変動するため、設計想定冷房負荷がかかる状態で空調システムが運用される状況は更に限られる。
【0008】
空調システムなどを安定して連続運転するためには、所定の冷房負荷がかかる状態で運用される必要がある。仮に、所定の冷房負荷よりも負荷が少ない低負荷状態で運用されると、空調システムなどは断続的に運転される(発停が繰り返される。)。データセンタなどにおいて電子機器の冷却に用いられる空調システムなどに対しては、他の用途に用いられるものと比較して、高い信頼性が求められる。そのため、冷房負荷の状態に関わらず安定して連続運転することができる空調システムなどが求められている。
【0009】
しかしながら、上述のように所定の冷房負荷よりも負荷が少ない低負荷状態で運用されると、空調システムなどは発停を繰り返してしまい、所定の温度を連続して維持することが難しくなるという問題があった。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、消費電力の低減を図るとともに、所定の温度を連続して維持することで信頼性の確保を図ることができる冷凍機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の冷凍機は、低温側の熱を高温側に移動させる冷凍装置において、高圧の冷媒を冷却する高圧熱交換器と、前記高圧熱交換器にて冷却された高圧の冷媒を減圧する第1減圧部と、前記第1減圧部にて減圧された低圧の冷媒を気体冷媒および冷媒液体に分離する気液分離器と、前記気液分離器により分離された前記液冷媒を更に減圧する第2減圧部と、前記第2減圧部にて減圧された冷媒を蒸発させる第1低圧熱交換器と、前記第1低圧熱交換器から流出した冷媒を圧縮して前記高圧熱交換器に向けて吐出する第1圧縮部と、前記第1減圧部にて減圧された前記低圧の冷媒を蒸発させる第2低圧熱交換器と、前記第2低圧熱交換器から流出した冷媒、および、前記気液分離器により分離された前記気体冷媒の少なくとも一方を圧縮して前記第1圧縮部および前記高圧熱交換器の間に吐出する第2圧縮部と、前記第1減圧部により減圧された前記低圧の冷媒が流入する先を前記気液分離器および前記第2低圧熱交換器から選択する選択部と、前記第1圧縮部および前記第2圧縮部の運転停止の制御、および、前記選択部による前記低圧の冷媒の流入先の制御を行うものであって、前記第1圧縮部を停止するとともに前記第2圧縮部を運転し、前記選択部により前記低圧の冷媒の流入先を前記第2低圧熱交換器とする低負荷時制御を少なくとも行う制御部と、が設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明の冷凍機によれば、冷凍機に求められる冷房能力が低い場合に、制御部が低負荷時制御を行うことにより冷凍機における消費電力の低減を図ることができる。低負荷時制御では、第1圧縮部を停止して第2圧縮部を運転する制御が行われるため、第1圧縮部および第2圧縮部の両者が運転される場合と比較して圧縮部で消費される電力が低減される。さらに、インジェクションサイクルで用いられる第2圧縮部は、第1圧縮部と比較して低容量となり、空調システムが低負荷の場合において第1圧縮部よりも高い負荷率で運転できるため、第1圧縮部を低負荷で運転するよりも高い効率で運転できる。そのため、運転時に消費される電力が小さい。その結果、冷凍機に求められる冷房能力が低い場合に行われる低負荷時制御において、運転する圧縮部を第2圧縮部のみとすることにより消費電力の低減を図りやすくなる。
【0013】
また、制御部が低負荷時制御を行うことにより冷凍機を安定して運転することが可能となり、冷凍機の信頼性確保を図ることができる。低負荷時制御では第1圧縮部を停止して第2圧縮部を運転する制御が行われるため、第1圧縮部および第2圧縮部の両者が運転される場合と比較して冷凍機の冷房能力が過剰となりにくい。さらに第1圧縮部を運転した場合と比較して、第2圧縮部を運転した場合には、第2圧縮部から吐出される冷媒の質量流量は少なくなるため、冷凍機の冷房能力が過剰になりにくい。言い換えると、冷凍機を連続運転した際の冷房能力を小さくすることができ、要求される冷房能力が小さい場合であっても冷凍機を発停させることなく連続して運転させることができる。
【0014】
上記発明において前記第2圧縮部は、前記第1圧縮部と比較して前記冷媒の圧縮容量が小さいことが好ましい。
このように第2圧縮部の圧縮容量を第1圧縮部の圧縮容量よりも小さくすることにより、冷凍機における消費電力の低減を更に図りやすくなるとともに、所定の温度を連続して維持しやすくなり信頼性を確保しやすくなる。一般に、圧縮部で消費される電力は、その圧縮容量が小さくなるに伴い減少する。そのため、低負荷時制御で運転される第2圧縮部の圧縮容量を小さくすることにより、低負荷時制御において消費される電力を低減しやすくなる。また、低負荷時制御において冷凍機を連続運転した際の冷房能力がさらに小さくなるため、要求される冷房能力が小さい場合であっても冷凍機を発停させることなく連続して運転させやすくなる。なお、低負荷時制御が行われていない場合において第2圧縮部は、冷凍機の冷房能力に寄与しない冷媒(第1低圧熱交換器を流れない冷媒)を圧縮するものであるため、第1圧縮部と比較して圧縮容量を小さく設定することができる。
【0015】
上記発明において前記制御部は、前記第1低圧熱交換器および前記第2低圧熱交換器のうち熱交換を行っている熱交換器において熱交換される前後の空気温度の差、および、前記第1低圧熱交換器により熱交換される前記空気の流量に基づく必要冷房能力、並びに、前記第1圧縮部から吐出される冷媒の流量が最低流量である場合の前記第1熱交換器または前記第2熱交換器に熱交換された後の第1空気温度を求め、前記熱交換後の第1空気温度および所定の空気温度を比較し、前記熱交換後の第1空気温度が前記所定の空気温度以下になると判定した際に、前記低負荷時制御を実行することが好ましい。
【0016】
このように熱交換後の第1空気温度および所定の空気温度に基づいて低負荷時制御を実行するか否かの判定を行うことにより、判定に要する演算量の増加を抑制することができる。例えば、低負荷時制御を実行した際の消費電力と、実行しない際の消費電力とを比較して低負荷時制御を実行するか否かの判定を行うと、判定に要する演算量が増加する。そのため、熱交換後の第1空気温度および所定の空気温度に基づいて上述の判定を行うことにより、制御部にかかる演算負荷の増加を抑制することができる。
【0017】
上記発明において前記制御部は、前記第1低圧熱交換器および前記第2低圧熱交換器のうち熱交換を行っている熱交換器において熱交換される前後の空気温度の差、および、前記第1低圧熱交換器により熱交換される前記空気の流量に基づく必要冷房能力、並びに、前記第2圧縮部から吐出される冷媒の流量が最大流量である場合の前記第1熱交換器または前記第2熱交換器に熱交換された後の第2空気温度を求め、前記熱交換後の第2空気温度および所定の空気温度を比較し、前記熱交換後の第2空気温度が前記所定の空気温度以下になると判定した際に、少なくとも前記第1圧縮部を運転した際の消費電力と、前記第2圧縮部のみを運転した際の消費電力とを比較し、前記第2運転部のみを運転した際の消費電力が小さいと判定した場合には、前記低負荷時制御を実行することが好ましい。
【0018】
このように熱交換後の第2空気温度と、所定の空気温度と、第1圧縮部および第2圧縮部の消費電力とに基づいて低負荷時制御を実行するか否かの判定を行うことにより、冷凍機の消費電力をより確実に抑制することができる。具体的には、熱交換後の第2空気温度が所定の空気温度以下になり、かつ、第2圧縮部のみを運転した際の消費電力が第1圧縮部を運転した場合よりも少なくなる場合にのみ低負荷時制御を実行している。そのため、冷凍機の消費電力を確実に抑制しつつ、冷凍機の信頼性も確保することができる。
【0019】
上記発明において前記制御部は、前記熱交換後の第2空気温度および所定の空気温度を比較し、前記熱交換後の第2空気温度が前記所定の空気温度以下になると判定した後、少なくとも前記第1圧縮部を運転した際の消費電力と、前記第2圧縮部のみを運転した際の消費電力とを比較する前に、前記空気温度の差および前記空気の流量に基づく必要冷房能力並びに前記第1圧縮部から吐出される冷媒の流量が最低流量である場合の前記第1熱交換器または前記第2熱交換器に熱交換された後の第1空気温度を求めて、前記熱交換後の第1空気温度および前記所定の空気温度を比較し、前記熱交換後の第1空気温度が前記所定の空気温度以下になると判定した際には、前記第1圧縮部の消費電力および前記第2圧縮部の消費電力の大小を判定することなく、前記低負荷時制御を実行することが好ましい。
【0020】
このように熱交換後の第1空気温度が所定の空気温度以下になる場合には、消費電力の大小を判定することなく低負荷時制御を実行することにより、制御部における演算量を抑制することができる。具体的には、第2圧縮部の運転のみで冷凍機が必要冷房能力を満たすことができ、かつ、第1圧縮部の運転では冷凍機の冷房能力が過剰になる場合には、消費電力の大小にかかわらず低負荷時制御を実行する必要がある。このような場合には、消費電力の大小を比較する演算を省略することができ、省略することにより制御部における演算量を抑制することができる。
【0021】
上記発明において前記制御部は、前記第1低圧熱交換器および前記第2低圧熱交換器のうち熱交換を行っている熱交換器において熱交換される前または熱交換された後の空気温度の測定値と、予め定められた空気温度の設定値と、の差である温度差が所定の閾値未満であり、かつ、前記第1圧縮部から吐出される冷媒の流量が最低流量であると判定した際に、前記低負荷時制御を実行することが好ましい。
【0022】
このように熱交換前または後の空気温度の測定値と予め定められた設定値との差である温度差が所定の閾値未満であることを、低負荷時制御を行うか否かの判定材料とすることにより、必要冷房能力や消費電力の推定を用いる判定方法と比較して、判定を行う際に制御部で行われる演算量を減らすことができる。さらに第1圧縮部から吐出される冷媒の流量が最低流量であること、言い換えると、第1圧縮部の運転周波数が最低周波数であることを、低負荷制御を行うか否かの判定材料とすることにより冷凍機を安定して運転することができる。つまり、第1圧縮部が発停されることを抑制し、冷凍機を安定して運転することができる。
【0023】
上記発明において前記制御部は、少なくとも前記必要冷房能力を求める前に、前記第1低圧熱交換器および前記第2低圧熱交換器のうち熱交換を行っている熱交換器において熱交換される前の空気温度、または、熱交換された後の空気温度の測定値と、予め定められた空気温度の設定値と、を比較し、前記測定値が前記設定値よりも低く、かつ、前記測定値と前記設定値との差が所定閾値以上と判定された後に、少なくとも前記必要冷房能力を求めることが好ましい。
【0024】
このように空気温度の測定値および設定値が所定の関係を満たしている場合にのみ、低負荷時制御を実行するか否かの判定を行うことにより、当該判定に係る演算を行う回数を抑制することができる。具体的には、測定値が設定値よりも低く、かつ、測定値と設定値との差が所定閾値以上である場合には、冷凍機の冷房能力が必要冷房能力を上回っていると推定されるため、低負荷時制御を実行するか否かの判定が開始される。これに対して、測定値が設定値以上である場合、または、測定値と設定値との差が所定閾値未満である場合には、冷凍機の冷房能力が必要冷房能力を上回っていない可能性があり、低負荷時制御を実行する必要がないと推定される。低負荷時制御を実行するか否かの判定と比較して演算が容易な測定値および設定値に基づく判定を先に行うことにより、制御部における演算量を抑制することができる。
【0025】
上記発明において前記制御部は、前記第1圧縮部および前記第2圧縮部の吸入側圧力と吐出側圧力との比である圧力比が、所定の圧力比以下になると判定された場合には、前記第2圧縮部の運転を停止する制御を行うことが好ましい。
【0026】
このように第1および第2圧縮部における吐出側圧力の値を吸入側圧力の値で割った値である圧力比が所定の圧力比以下になる場合には、第2圧縮部の運転を停止することにより、第1および第2圧縮部における圧力比を所定の圧力比よりも大きく保つことができる。その結果、第1および第2圧縮部が発停を繰り返すことを抑制し、安定して運転することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の冷凍機によれば、冷凍機に求められる冷房能力が低い場合に、第1圧縮部を停止して第2圧縮部を運転する低負荷時制御を行うことにより消費電力の低減を図るとともに、信頼性の確保を図ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る空調システム(冷凍機)1ついて
図1から
図7を参照しながら説明する。本実施形態の空調システム1はデータセンタの空調に用いられるものであり、データセンタのフロアに配置されたサーバやコンピュータなどの電子機器から発生する大量の熱を処理するものである。
【0030】
空調システム1の室外ユニット10は、例えばデータセンタの屋上などの外気と接する屋外に配置され、室内ユニット20は、サーバなどの電子機器が配置されたフロアに配置されるとともに、当該フロアの室内空気を冷却できるように配置されている。
図1では、説明を容易にするために室外ユニット10と、室内ユニット20とが1台ずつ備えた例が記載されているが、1台の室外ユニット10に対して複数台の室内ユニット20が備えられていてもよいし、複数台の室外ユニット10に対して複数台の室内ユニット20が備えられていてもよく、特に台数を限定するものではない。
【0031】
空調システム1には、
図1に示すように、室外ユニット10に配置された凝縮器(高圧熱交換器)11と、室内ユニット20に配置された第1膨張弁(第1減圧部)21、気液分離器22、第2膨張弁(第2減圧部)23、第1蒸発器(第1低圧熱交換器)24、第1圧縮機(第1圧縮部)25、第2蒸発器(第2低圧熱交換器)26、第2圧縮機(第2圧縮部)27、第1制御弁(選択部)28および第2制御弁(選択部)29と、制御部40と、から主に構成されている。
【0032】
凝縮器11は、第1圧縮機25および第2圧縮機27の少なくとも一方から吐出された高温高圧の気体冷媒が流入する熱交換器であり、流入した冷媒の熱を外気に放出させて凝縮させるものである。凝縮器11には、室外ユニット10に設けられたファンなどの送風手段(図示せず)によって外気が導かれている。凝縮器11としては公知の形式の熱交換器を用いることができ、特にその形式を限定するものではない。
【0033】
第1膨張弁21は、凝縮器11と、気液分離器22および第2蒸発器26との間に配置されるものであり、凝縮器11によって凝縮された冷媒を膨張させ、その圧力を減圧させるものである。第2膨張弁23は、気液分離器22と第1蒸発器24との間に配置されるものであり、気液分離器22から供給される液冷媒を膨張させ、その圧力をさらに減圧させるものである。第1膨張弁21および第2膨張弁23としては、公知の膨張弁または減圧機構を用いることができ、その形式などを特に限定するものではない。本実施形態では、第1膨張弁21および第2膨張弁23は、第1蒸発器24や第2蒸発器26から流出した冷媒が、所望のスーパーヒートを有するように減圧の程度を調整する機構を備えるものに適用して説明する。
【0034】
気液分離器22は、第1膨張弁21と、第2膨張弁23および第2圧縮機27との間に配置される容器であり、第1膨張弁21により減圧された気液二層の冷媒が流入し、気体冷媒と液体冷媒とを分離させるものである。気液分離器22から第2膨張弁23につながる配管は、気液分離器22の下側であって液体冷媒が貯留する領域に接続されている。その一方で、気液分離器22から第2圧縮機27につながる配管は、気液分離器22の上側であって気体冷媒が存在する領域に接続されている。
【0035】
第1蒸発器24は、第2膨張弁23と第1圧縮機25との間に配置される熱交換器であり、第2膨張弁23により減圧された冷媒と室内空気との間で熱交換を行うものである。第2蒸発器26は、第1膨張弁21と第2圧縮機27との間に配置される熱交換器であり、第1膨張弁21により減圧された冷媒と室内空気との間で熱交換を行うものである。第1蒸発器24または第2蒸発器26に流入した冷媒は、室内空気の熱を吸収することにより蒸発して気体冷媒となる。その一方で室内空気は冷媒に熱を奪われるため温度が低下する。
【0036】
第1蒸発器24および第2蒸発器26には、室内ユニット20に設けられた送風ファンなどの送風手段により室内空気が導かれている。そのため、ICT装置などを構成する電子機器から発生した熱を吸収して温度が上昇した室内空気は、室内ユニット20に吸い込まれて第1蒸発器24および第2蒸発器26により冷却される。冷却された室内空気は、室内ユニット20から室内に吹き出される。
【0037】
第1圧縮機25は、第1蒸発器24と凝縮器11との間に配置され、第1蒸発器24から流出した気体冷媒を吸入して圧縮し、高温高圧の冷媒を凝縮器11に向けて吐出するものである。第2圧縮機27は、第2蒸発器26および気液分離器22と、凝縮器11との間に配置され、第2蒸発器26から流出した気体冷媒および気液分離器22により分離された気体冷媒の少なくとも一方を吸入して圧縮し、高温高圧の冷媒を凝縮器11と第1圧縮機25との間に吐出するものである。第2圧縮機27の冷媒を圧縮する圧縮容積は、第1圧縮機25の圧縮容積と比較して小さくなっている。
【0038】
第1圧縮機25の吐出側には冷媒の逆流を防止する逆止弁25Aが配置され、第2圧縮機27の吐出側には冷媒の逆流を防止する逆止弁27Aが配置されている。逆止弁25Aは、第1圧縮機25が停止した場合に、第2圧縮機27や凝縮器11から冷媒が第1圧縮機25に逆流することを防止するものである。同様に逆止弁27Aは、第2圧縮機27が停止した場合に、第1圧縮機25や凝縮器11から冷媒が第2圧縮機27に逆流することを防止するものである。
【0039】
本実施形態では、第1圧縮機25および第2圧縮機27を、インバータ制御によって所定の範囲で回転数が制御される電動機によって駆動される固定容量の圧縮機である例に適用して説明する。第1圧縮機25および第2圧縮機27は後述する制御部40から出力される制御信号に基づいて制御される。より具体的には、制御信号に基づくインバータ制御によって電動機を制御することにより第1圧縮機25および第2圧縮機27の運転が制御される。なお、第1圧縮機25および第2圧縮機27としては公知の形式のものを用いることができ、特に形式を限定するものではない。
【0040】
第1制御弁28および第2制御弁29は、第1膨張弁21により減圧された冷媒の流入先を制御するものである。第1制御弁28は第1膨張弁21と第2蒸発器26とをつなぐ配管であって、気液分離器22へ延びる配管が分岐する分岐点と第2蒸発器26との間に配置される開閉弁である。第2制御弁29は、前述の分岐点と気液分離器22との間に配置される開閉弁である。本実施形態では第1制御弁28および第2制御弁29の開閉はそれぞれに設けられたサーボモータなどのアクチュエータ手段により制御されている例に適用して説明する。このアクチュエータ手段は後述する制御部40から入力される制御信号に基づいて動作が制御されるものである。
【0041】
なお、本実施形態のように開閉弁である第1制御弁28および第2制御弁29を設けて、第1膨張弁21によって減圧された冷媒が流入する先を気液分離器22および第2蒸発器26の一方に制御してもよいし、2つの開閉弁を用いる代わりに1つの三方弁を用いて冷媒が流入する先を制御してもよく、特に限定するものではない。
【0042】
制御部40は空調システム1における運転状態を制御するものであり、CPU(中央演算処理ユニット)、ROM、RAM、入出力インタフェース等を有するマイクロコンピュータである。制御部40が配置される場所は、例えば
図1に示すように、室内ユニット20および室外ユニット10以外の場所であってもよいし、室内ユニット20内であってもよく、特に限定するものではない。
【0043】
ROM等に記憶されている制御プログラムは、
図2の模式図に示すように、CPUを演算部41として機能させるものであり、ROM等を記憶部42として機能させるものである。制御部40による運転状態の制御は、従来の空調システムにおいて行われている室内空気の温度を設定温度とする制御や、本実施形態の特徴である低負荷時制御などを例示することができる。
【0044】
制御部40には外気温度を測定する外気温度センサ32と、室内ユニット20に吸い込まれる熱交換前の室内空気の温度を測定する吸込み温度センサ33と、室内ユニット20から吹出される熱交換後の室内空気の温度を測定する吹出し温度センサ34と、から測定した温度を示す測定信号が入力されている。さらに制御部40には、室内ユニット20に室内空気を吸い込ませ、熱交換後の室内空気を吹き出させる室内ファン部31から室内ファンの回転周波数を示す信号が入力されている。
【0045】
制御部40からは第1圧縮機25および第2圧縮機27の運転状態を制御する制御信号と、第1制御弁28および第2制御弁29の開閉を制御する制御信号と、が主に出力されている。なお、制御部40からは、これらの制御信号の他にも室内ファン部31における室内ファンの回転周波数を制御する制御信号など、従来の空調システムにおいて行われる制御に関する制御信号も出力されている。
【0046】
次に、上記の構成からなる空調システム1における制御などについて説明する。具体的には通常の運転時における制御、および、本実施形態の特徴である低負荷時の運転における低負荷時制御について説明する。なお、通常の運転とは、少なくとも第1圧縮機25の運転を行う空調システム1の運転を意味し、低負荷時の運転とは、第1圧縮機25の運転を停止し、第2圧縮機27のみの運転を行う空調システム1の運転を意味する。
【0047】
まず、空調システム1の通常の運転について
図3および
図4の回路図を参照しながら説明する。この時、制御部40は第1制御弁28に対して弁を閉じる制御信号を出力するとともに、第2制御弁29に対して弁を開く制御信号を出力している。なお図において、黒塗りは弁が閉じられた状態を示し、白抜きは弁が開かれた状態を示している。
【0048】
第2圧縮機27の圧力比が所定値よりも高い場合には、
図3に示すように、制御部40は第1圧縮機25および第2圧縮機27に対して運転を行う制御信号を出力する。ここで所定値とは、第2圧縮機27が安定して運転を継続できる値であり、具体的には1.2程度の値を例示することができる。
【0049】
なお、第2圧縮機27の圧力比は、センサなどの測定値に基づいて直接求めてもよいし、当該圧力比に影響を与える外気の温度に基づいて推定してもよい。外気温度から圧力比を推定する方法としては、実験などの方法により取得した外気温度と圧力比との関係を示すマップを利用してもよいし、理論的に求められる演算式を利用してもよい。
【0050】
第1圧縮機25および第2圧縮機27から吐出された高温高圧の気体冷媒は、凝縮器11において外気と熱交換して熱を放出する。熱を放出した冷媒は凝縮して液冷媒となり、凝縮器11から流出して第1膨張弁21に向かう。高圧の液冷媒は第1膨張弁21において減圧されて気液二相の冷媒となる。
【0051】
気液二相の冷媒は、開かれた第2制御弁29を介して、気液分離器22に流入して気体冷媒と液体冷媒とに分離される。液体冷媒は気液分離器22から第2膨張弁23により更に減圧されて第1蒸発器24に流入する。なお、気液二相の冷媒は、第1制御弁28は閉じられているため、第2蒸発器26には流入していない。図では第2蒸発器26を点線で表すことにより冷媒が流れていないことを示している。
【0052】
第1蒸発器24では、冷媒が室内ファン部31により導入された室内空気の熱を吸収する。吸収した熱により液体冷媒は蒸発して気体冷媒となる。その一方で、室内空気は熱を奪われることにより冷却され、室内ファン部31によってフロアに吹き出される。第1蒸発器24を流出した気体冷媒は、第1圧縮機25に吸入されて圧縮され、所定の圧力まで昇圧された高温高圧の冷媒として吐出される。
【0053】
その一方で、気液分離器22で分離された気体冷媒は、第2圧縮機27に吸入されて圧縮される。圧縮された冷媒は第2圧縮機27から吐出されて、第1圧縮機25から吐出された冷媒と合流し、凝縮器11に流入する。
【0054】
制御部40は、入力された室内空気の設定温度と、吸込み温度センサ33により測定された室内空気の温度とを比較し、室内空気の温度が設定温度となるように空調システム1の制御を行う。例えば、室内空気の温度が設定温度よりも高いと判定された場合には、空調システム1の冷房能力を高める制御を行う。具体的には、室内ファン部31における室内ファンの回転周波数を増やして熱交換される室内空気の流量を増やす制御、第1圧縮機25や第2圧縮機27の運転周波数を増やして空調システム1を循環する冷媒の流量を増やす制御などが行われる。
【0055】
また、室内空気の温度が設定温度よりも低いと判定された場合には、空調システム1の冷房能力を抑える制御を行う。具体的には、室内ファン部31における室内ファンの回転周波数を減らして熱交換される室内空気の流量を減らす制御、第1圧縮機25や第2圧縮機27の運転周波数を減らして空調システム1を循環する冷媒の流量を減らす制御などが行われる。
【0056】
第2圧縮機27の圧力比が所定値以下になる場合には、
図4に示すように、制御部40は第1圧縮機25のみの運転を行い、第2圧縮機27の運転を停止する制御信号を出力する。圧力比が所定値以下になる場合とは、季節の移り変わりによって外気温度が低下した場合や、空調システム1の熱負荷が低下した場合などを例示することができる。
【0057】
第2圧縮機27が停止されると、気液分離器22において分離された気体冷媒は第2圧縮機27に吸入されない。図では、第2圧縮機27を点線で表すことで停止していることを示し、気液分離器22と第2圧縮機27との間の回路を点線で表すことで冷媒が流れていないことを示している。この状態の空調システム1における冷媒の流れは、第2圧縮機27が停止している点を除き、
図3に示すものと同じであるため、その説明を省略する。
【0058】
空調システム1が運転されている間、制御部40は少なくとも第1圧縮機25の運転を行う通常運転時の制御、および、第1圧縮機25を停止して第2圧縮機27のみ運転する低負荷時制御のいずれを実行するか判定する処理を繰り返し行っている。
【0059】
上述の判定は、
図5に示すフローチャートに従って行われている。
まず制御部40の演算部41は、室内ユニット20から吹出される室内空気の温度が変化したか否かの判定を行う(S11)。具体的には、記憶部42に記憶された室内空気の設定温度に対して、吹出し温度センサ34から出力される吹出し温度に、所定期間(例えば5分間)以上、所定温度差(例えば−1℃)以上の差が出たか否かの判定を行う。
【0060】
吹出し温度が変化していないと判定された場合(NOの場合)には、演算部41はS11の判定を繰り返し行う。
その一方で、吹出し温度が変化したと判定された場合(YESの場合)には、演算部41は、必要冷房能力を推定する演算処理を実行する(S12)。具体的には、吸込み温度センサ33から出力される吸込み空気の温度、および、吹出し温度センサ34から出力される吹出し空気の温度の温度差と、室内ファン部31における室内ファンの回転周波数から算出される空気風量と、補正係数と、に基づいて必要冷房能力が推定される。
【0061】
なお、必要冷房能力の推定に用いられる演算式としては公知の式を用いることができる。また、演算式を用いて必要冷房能力を演算により求めてもよいし、温度差や空気風量等と必要冷房能力との対応を示すマップを予め求めておき、当該マップを用いて必要冷房能力を求めてもよい。更に予め求められたマップと計測値とを比較し、測定値に基づいて、マップの値を所定の間隔で自動的に更新してもよい。
【0062】
必要冷房能力が推定されると、演算部41は第1圧縮機25で対応可能か否かを判定する処理を実行する(S13)。つまり、第1圧縮機25が最低周波数で運転された場合に、室内ユニット20から吹出される空気の温度(第1空気温度)が、室内空気の設定値に対応する吹出し空気の温度(所定の空気温度)以下になるか否かを判定する処理を実行する。
【0063】
第1圧縮機25が所定の周波数で運転された場合に吹出される空気の温度は、次のように推定される。演算部41は、外気温度センサ32から外気の温度と、吸込み温度センサ33から吸込み空気の温度と、室内ファン部31から室内ファンの回転周波数と、記憶部42から配管長と、を取得する。ここで配管長は、空調システム1の冷媒が流れる配管の長さであり、空調システム1をデータセンタに設置する際などに予め記憶部42に記憶される値である。
【0064】
その後演算部41は、室内ファンの回転周波数から室内ユニット20で熱交換される室内空気の流量である空気風量を求める。さらに、外気温度と、吸込み空気温度と、空気風量と、配管長と、S12で算出された必要冷房能力とに基づいて、第1圧縮機25が所定の周波数で運転された場合に、室内ユニット20から吹出される空気の温度が、室内空気の設定値に対応する吹出し空気の温度以下になるか否かを判定する処理を実行する。
【0065】
なおS13の処理は、所定の演算式に基づいて演算処理によって行ってもよいし、外気温度と、吸込み空気温度と、空気風量と、配管長と、必要冷房能力と、室内空気の設定値などとの対応関係を予め取得しておき、これらの関係に基づくマップを用いて判定してもよい。
【0066】
S13の判定において第1圧縮機25で対応可能と判定された場合(YESの場合)、言い換えると、第1圧縮機25の運転周波数が最低周波数以上であり、室内ユニット20から吹出される空気の温度が室内空気の設定値に対応する吹出し空気の温度を維持できると判定された場合、または、第2圧縮機27の運転周波数が最高周波数であっても、室内ユニット20から吹出される空気の温度が室内空気の設定値に対応する吹出し空気の温度を維持できないと判定された場合には、制御部40は第1圧縮機25で運転する制御を実行する(S14)。言い換えると、空調システム1に対して通常の運転時における制御を行う。この場合、上述のように少なくとも第1圧縮機25の運転を行うとともに、第1制御弁28を閉じて、第2制御弁29を開く制御を行っている。その後、再びS11に戻り、上述の処理が繰り返し実行される。
【0067】
その一方で、第1圧縮機25で対応できないと判定された場合(NOの場合)、言い換えると、第1圧縮機25の運転周波数を最低周波数としても、室内ユニット20から吹出される空気の温度が室内空気の設定値に対応する吹出し空気の温度以下となり、第1圧縮機25が発停を繰り返すと判定された場合には、制御部40は第2圧縮機27で運転する制御を実行する(S15)。言い換えると、空調システム1に対して低負荷時の運転における制御を行う。低負荷時の制御については、以下に詳述する。その後、再びS11に戻り、上述の処理が繰り返し実行される。
【0068】
次に、空調システム1に対して低負荷時の制御を行った場合について、
図6を参照しながら説明する。低負荷時の制御が開始されると、制御部40は第1圧縮機25に停止の制御信号を出力し、かつ、第2圧縮機27には運転の制御信号を出力する。さらに、第1制御弁28に対して弁を開く制御信号を出力し、第2制御弁29に対して弁を閉じる制御信号を出力する。
【0069】
第2圧縮機27から吐出された高温高圧の気体冷媒は、凝縮器11において外気に熱を放出して凝縮する。凝縮した液冷媒は、第1膨張弁21において減圧されて気液二相の冷媒となる。気液二相の冷媒は、開かれた第1制御弁28を介して、第2蒸発器26に流入する。その一方で、第2制御弁29が閉じられているため、気液分離器22や、第1膨張弁21や、第1蒸発器24や、第1圧縮機25には冷媒が流入しない。図ではこれらの要素を点線で描くことにより、冷媒が流入していないことを示している。
【0070】
第2蒸発器26に流入した冷媒は、室内ファン部31により導入された室内空気から熱を吸収することにより、蒸発して気体冷媒となる。室内空気は冷媒に熱を奪われることにより冷却され、その後、室内ユニット20からフロアに吹出される。蒸発した気体冷媒は第2圧縮機27に吸入されて圧縮され、所定の圧力まで昇圧された高温高圧の冷媒として吐出される。
【0071】
低負荷時の運転においても、通常の運転と同様にフロアの室内空気の温度が設定温度となるように制御が行われる。具体的には、室内ファン部31における室内ファンの回転周波数や、第2圧縮機27の運転周波数を制御することにより、フロアの室内空気の温度が設定温度となるように制御が行われる。
【0072】
上記の構成の空調システム1によれば、空調システム1に求められる冷房能力が低い場合に、制御部40が低負荷時制御を行うことにより空調システム1における消費電力の低減を図ることができる。低負荷時制御では、第1圧縮機25を停止して第2圧縮機27を運転する制御が行われるため、第1圧縮機25および第2圧縮機27の両者が運転される場合と比較して圧縮機で消費される電力が低減される。さらに、インジェクションサイクルで用いられる第2圧縮機27は、第1圧縮機25と比較して低容量となり、空調システム1が低負荷の場合において第1圧縮機25よりも高い負荷率で運転できるため、第1圧縮機25を低負荷で運転するよりも高い効率で運転できる。そのため、運転時に消費される電力が小さい。そのため、空調システム1に求められる冷房能力が低い場合に行われる低負荷時制御において、運転する圧縮機を第2圧縮機27のみとすることにより消費電力の低減を図りやすくなる。
【0073】
また、制御部40が低負荷時制御を行うことにより空調システム1を安定して運転することが可能となり、空調システム1の信頼性確保を図ることができる。低負荷時制御では第1圧縮機25を停止して第2圧縮機27を運転する制御が行われるため、第1圧縮機25および第2圧縮機27の両者が運転される場合と比較して空調システム1の冷房能力が過剰となりにくい。さらに第1圧縮機25を運転した場合と比較して、第2圧縮機27を運転した場合には、第2圧縮機27から吐出される冷媒の質量流量は少なくなるため、空調システム1の冷房能力が過剰になりにくい。言い換えると、空調システム1を連続運転した際の冷房能力を小さくすることができ、要求される冷房能力が小さい場合であっても空調システム1を発停させることなく連続して運転させることができる。
【0074】
第2圧縮機27の圧縮容量を第1圧縮機25の圧縮容量よりも小さくすることにより、空調システム1における消費電力の低減を更に図りやすくなるとともに、信頼性をさらに確保しやすくなる。一般に、圧縮機で消費される電力は、その圧縮容量が小さくなるに伴い減少する。そのため、低負荷時制御で運転される第2圧縮機27の圧縮容量を小さくすることにより、低負荷時制御において消費される電力を低減しやすくなる。また、低負荷時制御において空調システム1を連続運転した際の冷房能力がさらに小さくなるため、要求される冷房能力が小さい場合であっても空調システム1を発停させることなく連続して運転させやすくなる。なお、通常の制御が行われる場合において第2圧縮機27は、空調システム1の冷房能力に寄与しない冷媒(第1蒸発器24を流れない冷媒)を圧縮するものであるため、第1圧縮機25と比較して圧縮容量を小さく設定することができる。
【0075】
第1圧縮機25が最低周波数で運転された場合の吹出し空気の温度、および、室内空気の設定値に対応する吹出し空気の温度に基づいて低負荷時制御を実行するか否かの判定を行うことにより、判定に要する演算量の増加を抑制することができる。例えば、低負荷時制御を実行した際の消費電力と、実行しない際の消費電力とを比較して低負荷時制御を実行するか否かの判定を行うと判定に要する演算量が増加する。そのため、第1圧縮機25が最低周波数で運転された場合の吹出し空気の温度、および、室内空気の設定値に対応する吹出し空気の温度に基づいて上述の判定を行うことにより、制御部40にかかる演算負荷の増加を抑制することができる。
【0076】
S11の判定で吹出し温度が変化したと判定された場合にのみS13の判定を行うことにより、S13の判定に係る演算を行う回数を抑制することができる。具体的には、室内空気の設定温度に対して、吹出し温度センサ34から出力される吹出し温度に、所定期間以上、所定温度差以上の差が出た場合には、空調システム1の冷房能力が必要冷房能力を上回っていると推定されるため、S13の判定が開始される。これに対して、室内空気の設定温度に対して、吹出し温度センサ34から出力される吹出し温度に所定温度差以上の差がない場合、所定温度以上の差があっても所定期間継続していない場合には、空調システム1の冷房能力が必要冷房能力を上回っていない可能性があり、低負荷時制御を実行する必要がないと推定される。低負荷時制御を実行するか否かの判定と比較して演算が容易なS11の判定を先に行うことにより、制御部40における演算量を抑制することができる。
【0077】
なお上述の実施形態のように、S13の判定を行う際に、外気温度、吸込み空気温度、空気風量、配管長および必要冷房能力に基づいて判定を行ってもよいし、
図7のブロック図に示すように、室内ユニット20に吸い込まれる空気の湿度を測定する湿度センサ35を更に設け、測定された湿度を加えてS13の判定を行ってもよい。
【0078】
さらに上述の実施形態のように、S11の判定を行う際に、室内ユニット20から吹出される室内空気の温度が変化したか否かの判定を行ってもよいし、
図8のフローチャートに示すように、室内ユニット20に吸い込まれる室内空気の温度が変化したか否かの判定(S11a)を行ってもよい。
【0079】
具体的には、記憶部42に記憶された室内空気の設定温度に対して、吸込み温度センサ33から出力される吸込み温度に、所定期間(例えば5分間)以上、所定温度差(例えば−1℃)以上の差が出たか否かに基づいて判定を行ってもよい。
【0080】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係る空調システムついて
図9から
図11を参照しながら説明する。本実施形態の空調システムの基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、制御部における通常制御および低負荷時制御のいずれを実行するか判定する処理が異なっている。よって、本実施形態においては、
図9から
図11を用いて制御部における制御について説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
【0081】
本実施形態に係る空調システム1の制御部40は、第1の実施形態の制御部40と同様に、空調システム1が運転されている間、少なくとも第1圧縮機25の運転を行う通常運転時の制御、および、第1圧縮機25を停止して第2圧縮機27のみ運転する低負荷時制御のいずれを実行するか判定する処理を繰り返し行っている。
【0082】
上述の判定は、
図9に示すフローチャートに従って行われている。
まず制御部40の演算部41は、室内ユニット20から吹出される室内空気の温度が変化したか否かの判定を行う(S11)。吹出し温度が変化していないと判定された場合(NOの場合)には、演算部41はS11の判定を繰り返し行う。
【0083】
その一方で、吹出し温度が変化したと判定された場合(YESの場合)には、演算部41は、必要冷房能力を推定する演算処理を実行する(S12)。
必要冷房能力が推定されると、演算部41は第2圧縮機27で対応可能か否かを判定する処理を実行する(S21)。つまり、第2圧縮機27が最大周波数で運転された場合に、室内ユニット20から吹出される空気の温度(第2空気温度)が、室内空気の設定値に対応する吹出し空気の温度(所定の空気温度)を満たせるか否かを判定する処理を実行する。
【0084】
第2圧縮機27が所定の周波数で運転された場合に吹出される空気の温度は、次のように推定される。演算部41は、外気温度センサ32から外気の温度と、吸込み温度センサ33から吸込み空気の温度と、室内ファン部31から室内ファンの回転周波数と、記憶部42から配管長と、を取得する。ここで配管長は、空調システム1の冷媒が流れる配管の長さであり、空調システム1をデータセンタに設置する際などに予め記憶部42に記憶される値である。
【0085】
その後演算部41は、室内ファンの回転周波数から室内ユニット20で熱交換される室内空気の流量である空気風量を求める。さらに、外気温度と、吸込み空気温度と、空気風量と、配管長と、S12で算出された必要冷房能力とに基づいて、第2圧縮機27が所定の周波数で運転された場合に、室内ユニット20から吹出される空気の温度が、室内空気の設定値に対応する吹出し空気の温度を満たすか否かを判定する処理を実行する。
【0086】
なおS21の処理は、所定の演算式に基づいて演算処理によって行ってもよいし、外気温度と、吸込み空気温度と、空気風量と、配管長と、必要冷房能力と、室内空気の設定値などとの対応関係を予め取得しておき、これらの関係に基づくマップを用いて判定してもよい。
【0087】
S21の判定において第2圧縮機27で対応可能と判定された場合(YESの場合)、言い換えると、室内ユニット20から吹出される空気の温度が、室内空気の設定値に対応する吹出し空気の温度を満たすと判定された場合には、演算部41は第1圧縮機25で対応可能か否かを判定する処理を実行する(S13)。
【0088】
S13の判定において第1圧縮機25で対応可能と判定された場合(YESの場合)、言い換えると、第1圧縮機25の運転周波数が最低周波数以上であり、室内ユニット20から吹出される空気の温度が室内空気の設定値に対応する吹出し空気の温度を維持できると判定された場合、または、第2圧縮機27の運転周波数が最高周波数以下であり、室内ユニット20から吹出される空気の温度が室内空気の設定値に対応する吹出し空気の温度を維持できると判定された場合には、制御部40は第1圧縮機25で消費される電力が、第2圧縮機27で消費される電力以下であるか否かを判定する処理を実行する(S22)。言い換えると、空調システム1に対して通常運転時の制御を行った際の消費電力が、低負荷時制御を行った際の消費電力以下であるか否かを判定する処理を実行する。
【0089】
具体的には、第1圧縮機25で消費される電力、および、第2圧縮機27で消費される電力は、次のように推定される。演算部41は、外気温度センサ32から外気の温度と、吸込み温度センサ33から吸込み空気の温度と、室内ファン部31から室内ファンの回転周波数と、記憶部42から配管長と、を取得する。その後演算部41は、室内ファンの回転周波数から室内ユニット20で熱交換される室内空気の流量である空気風量を求める。
【0090】
さらに、外気温度と、吸込み空気温度と、空気風量と、配管長と、S12で算出された必要冷房能力とに基づいて、室内ユニット20から吹出される空気の温度が、室内空気の設定値に対応する吹出し空気の温度を満たすために第1圧縮機25で消費される電力、および、第2圧縮機27で消費される電力を求める。
【0091】
なおS22の演算処理は、所定の演算式に基づいて演算処理によって行ってもよいし、外気温度と、吸込み空気温度と、空気風量と、配管長と、必要冷房能力と、室内空気の設定値などとの対応関係を予め取得しておき、これらの関係に基づくマップを用いる処理であってもよい。
【0092】
S22において第1圧縮機25で消費される電力が、第2圧縮機27で消費される電力以下であると判定された場合(YESの場合)、または、S21において第2圧縮機27で対応できないと判定された場合(NOの場合)には、制御部40は第1圧縮機25で運転する制御を実行する(S14)。言い換えると、空調システム1に対して通常の運転時における制御を行う。その後、再びS11に戻り、上述の処理が繰り返し実行される。
【0093】
その一方で、S22において第1圧縮機25で消費される電力が、第2圧縮機27で消費される電力よりも大きいと判定された場合(NOの場合)、S13の判定において第1圧縮機25で対応できないと判定された場合(NOの場合)には、制御部40は第2圧縮機27で運転する制御を実行する(S15)。言い換えると、空調システム1に対して低負荷時の運転における制御を行う。その後、再びS11に戻り、上述の処理が繰り返し実行される。
【0094】
なお、空調システム1における通常運転時の制御や冷媒の流れや、低負荷運転時の制御や冷媒の流れなどは、第1の実施形態における制御や冷媒の流れなどと同様であるため、その説明を省略する。
【0095】
本実施形態における低負荷時制御が行われる範囲を、第1の実施形態における範囲と比較すると、
図10に示す通りとなる。
図10では、横軸を空調システム1における圧縮機の圧縮容量または空調システム1の冷房能力とし、縦軸を効率としている。
【0096】
第1の実施形態では、通常制御および低負荷時制御の両者が適用可能な場合であっても、通常制御を優先して適用しているのに対して、第2の実施形態では、低負荷時制御における効率が通常制御における効率よりも高い範囲では低負荷時制御を優先している点が異なっている。
【0097】
上記の実施形態のように第2圧縮機27が最大周波数で運転している際の吹出し空気の温度と、室内空気の設定値に対応する吹出し空気の温度と、第1圧縮機25および第2圧縮機27の消費電力とに基づいて低負荷時制御を実行するか否かの判定を行うことにより、空調システム1の消費電力をより確実に抑制することができる。具体的には、第2圧縮機27が最大周波数で運転している際の吹出し空気の温度が室内空気の設定値に対応する吹出し空気の温度以下になり、かつ、第2圧縮機27のみを運転した際の消費電力が第1圧縮機25を運転した場合よりも少なくなる場合に低負荷時制御を実行している。そのため、空調システム1の消費電力を確実に抑制しつつ、空調システム1の信頼性も確保することができる。
【0098】
第1圧縮機25が最低周波数で運転している際の吹出し空気の温度が室内空気の設定値に対応する吹出し空気の温度以下になる場合には、消費電力の大小を判定することなく低負荷時制御を実行することにより、制御部40における演算量を抑制することができる。具体的には、第2圧縮機27の運転のみで空調システム1が必要冷房能力を満たすことができ、かつ、第1圧縮機25の運転では冷凍機の冷房能力が過剰になる場合には、消費電力の大小にかかわらず低負荷時制御を実行する必要がある。このような場合には、消費電力の大小を比較する演算を省略することができ、省略することにより制御部40における演算量を抑制して、素早い制御を行うことができる。
【0099】
なお、第1の実施形態と同様に、S13の判定を行う際に、室内ユニット20に吸い込まれる空気の湿度を測定する湿度センサ35および室内ユニット20から吹出される空気の湿度を測定する湿度センサ36を更に設け、測定された湿度を加えてS13の判定を行ってもよい(
図7参照)。
【0100】
さらにS11の判定を行う際に、室内ユニット20から吹出される室内空気の温度が変化したか否かの判定を行ってもよいし、
図11のフローチャートに示すように、室内ユニット20に吸い込まれる室内空気の温度が変化したか否かの判定(S11a)を行ってもよい。
【0101】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態に係る空調システムついて
図12を参照しながら説明する。本実施形態の空調システムの基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、制御部における通常制御および低負荷時制御のいずれを実行するか判定する処理が異なっている。よって、本実施形態においては、
図12を用いて制御部における制御について説明し、その他の構成要素等の説明を省略する。
【0102】
本実施形態に係る空調システム1の制御部40は、第1の実施形態の制御部40と同様に、空調システム1が運転されている間、少なくとも第1圧縮機25の運転を行う通常運転時の制御、および、第1圧縮機25を停止して第2圧縮機27のみ運転する低負荷時制御のいずれを実行するか判定する処理を繰り返し行っている。
【0103】
上述の判定は、
図12に示すフローチャートに従って行われている。
まず制御部40の演算部41は、室内ユニット20から吹出される室内空気の温度が変化したか否かの判定を行う(S11)。吹出し温度が変化していないと判定された場合(NOの場合)には、演算部41はS11の判定を繰り返し行う。
【0104】
その一方で、吹出し温度が変化したと判定された場合(YESの場合)には、演算部41は、吹出温度差が所定の閾値以上であるか否かを判定する演算処理を実行する(S31)。つまり、吹出し温度センサ34により測定された吹出し空気の温度と、記憶部42に予め記憶された設定値との差である吹出温度差を求める演算処理がまず実行される。その後、求められた吹出し温度差が、記憶部42に予め記憶された閾値以上であるか否かの判定処理が実行される。
【0105】
S31の判定において、吹出温度差が所定の閾値未満であると判定された場合(NOの場合)、演算部41は第1圧縮機25の運転周波数が最低周波数であるか否かを判定する処理を実行する(S32)。
【0106】
S32の判定において、第1圧縮機25が最低周波数で運転されていると判定された場合(YESの場合)、制御部40は第2圧縮機27で運転する制御を実行する(S15)。言い換えると、空調システム1に対して低負荷時の運転における制御を行う。この際、第2蒸発器26において熱交換が行われており、第2圧縮機27の運転周波数は最大周波数まで上昇する。その後、吹出し温度センサ34の測定値と、設定値との温度差に基づいて第2圧縮機27の運転周波数は制御される。その後、再びS11に戻り、上述の処理が繰り返し実行される。
【0107】
S31の判定において、吹出温度差が所定の閾値以上であると判定された場合(YESの場合)、または、S32の判定において、第1圧縮機25が最低周波数以上で運転されていると判定された場合(NOの場合)、制御部40は第1圧縮機25および第2圧縮機27の運転を行う制御を実行する(S14)。この際、第1蒸発器24において熱交換が行われており、第1圧縮機25および第2圧縮機27の回転数は低下する。その後、再びS11に戻り、上述の処理が繰り返し実行される。
【0108】
上記の実施形態のように吹出し温度センサ34により測定された吹出し空気の温度の測定値と予め定められた設定値との差である吹出温度差が所定の閾値未満であることを、低負荷時制御を行うか否かの判定材料とすることにより、必要冷房能力や消費電力の推定を用いる判定方法と比較して、判定を行う際に制御部40の演算部41で行われる演算量を減らすことができる。さらに第1圧縮機25から吐出される冷媒の流量が最低流量であること、言い換えると、第1圧縮機25の運転周波数が最低周波数であることを、低負荷制御を行うか否かの判定材料とすることにより空調システム1を安定して運転することができる。つまり、第1圧縮機25が発停されることを抑制し、空調システム1を安定して運転することができる。
【0109】
なお、上述の実施形態では、S11の処理において室内ユニット20から吹出される室内空気の温度が変化したと判定された場合には、続くS31の処理において吹出温度差が所定の閾値以上であるか否かを判定しているが、吹出温度差ではなく
図13に示すように室内ユニット20に吸い込まれる室内空気の温度が変化したと判定された場合(S11aのYESの場合)には、吸込温度差が所定の閾値以上であるか否かを判定してもよい(S31a)。ここで吸込温度差とは、室内ユニット20に吸い込まれる吸込み空気の温度と、記憶部42に予め記憶された設定値との差である。
【0110】
なお、上記の全ての実施形態において、
図14に示す構成を適用することにより第1圧縮機25や第2圧縮機27の吸入側および吐出側の圧力を計測して、吸入側圧力と吐出側圧力との比である圧力比が所定の最低許容圧力比(例えば1.2)以上となるように制御を行ってもよい。
【0111】
つまり、第1圧縮機25の吸入側に配置した圧力センサ25Nおよび吐出側に圧力センサ25Tのそれぞれから、第1圧縮機25の吸入側圧力および吐出側圧力の測定値が制御部40に入力されるように構成されている。また、第2圧縮機27の吸入側に配置した圧力センサ27Nおよび吐出側に圧力センサ27Tのそれぞれから、第2圧縮機27の吸入側圧力および吐出側圧力の測定値が制御部40に入力されるように構成されている。さらに、制御部40から第1圧縮機25および第2圧縮機27にそれぞれの回転数を制御する制御信号が入力されるように構成されている。
【0112】
制御部40は、第2圧縮機27をインジェクションサイクルの実現のために運転している場合に、第1圧縮機25または第2圧縮機27の圧力比が最低許容圧力比以下になると判定したとき、第2圧縮機27の運転を停止し、第1圧縮機25のみを運転する制御を行ってもよい。この場合、インジェクションサイクルは実現されない。
【0113】
このようにすることで、第1圧縮機25および第2圧縮機27における圧力比を所定の圧力比よりも大きく保つことができる。その結果、第1圧縮機25および第2圧縮機27が発停を繰り返すことを抑制し、両者を安定して運転することができる。
【0114】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記の実施形態においては、フロン系の冷媒等を用いた蒸気圧縮サイクルを備えた空調システム1により構成されている例に適用して説明したが、その他にも超臨界サイクルを用いた空調システムや、冷媒として二酸化炭素を用いた空調システムなどを適用することができるものである。
【0115】
さらに、上記の実施形態では、ICT装置などを構成する電子機器を、室内空気を介して冷却する例に適用して説明したが、室内空気の代わりにヒートシンクなどその他の媒体を介して冷却する例に適用することができるものである。