(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表面が周期的もしくは非周期的な圧力変化を起こす測定対象物の当該表面に、盤状の圧電体と該圧電体の両側表面のそれぞれに備えられた電極とからなる圧電振動子、そして一方の表面に膨出部を備え、該膨出部が該圧電振動子の一方の電極の表面に接触した状態で配置されている盤状の接触子を含む圧力振動体、但し該圧力振動体の接触子の膨出部は、その接触子の膨出部が備えられた表面とは反対側の表面が測定対象物の当該表面に接触状態に置かれた場合に、該測定対象物の表面で発生する圧力変化に応じて接触子の膨出部と圧電振動子との接触面積が変化を示すような物性を持つ有機高分子弾性材料から形成されている、を測定対象物の表面に、該圧力振動体の接触子の膨出部が備えられた表面とは反対側の表面にて接触した状態で配置する工程、該圧力振動体の圧電振動子に、該圧電振動子に固有の共振周波数に相当する周波数の交流電圧を印加することにより、圧電振動子を振動状態とする工程;振動状態にある圧電振動子から電流を取り出す工程;上記測定対象物の表面の圧力変化に連動して発生する該電流の電流値の変化と圧電振動子に印加した交流電圧の電圧値とから圧電振動子のインピーダンスの変化を算出する工程;及び該インピーダンスの変化を圧力の変化に換算する工程を含む測定対象物の表面の圧力の変化を検知する方法において、上記測定対象物の温度変化に起因して発生する圧電振動子の固有の共振周波数の変化によって引き起こされるインピーダンスの誤差を下記の工程を含む操作を行なうことにより補正する方法:
(1)上記圧電振動子の固有の共振周波数の温度依存性を予め測定して、その温度依存性を表す検量線を作成する工程;
(2)上記の圧電振動子を振動状態とする工程における圧電振動子の温度を測定する工程;
(3)工程(1)で作成された検量線と工程(2)で測定された圧電振動子の温度とから、当該温度における圧電振動子の共振周波数を算出する工程;そして
(4)圧電振動子に印加する交流電圧の周波数を、工程(3)で算出された共振周波数に変える工程。
表面が周期的もしくは非周期的な圧力変化を起こす測定対象物の当該表面に、盤状の圧電体と該圧電体の両側表面のそれぞれに備えられた電極とからなる圧電振動子、そして一方の表面に膨出部を備え、該膨出部が該圧電振動子の一方の電極の表面に接触した状態で配置されている盤状の接触子を含む圧力振動体、但し該圧力振動体の接触子の膨出部は、その接触子の膨出部が備えられた表面とは反対側の表面が測定対象物の当該表面に接触状態に置かれた場合に、該測定対象物の表面で発生する圧力変化に応じて接触子の膨出部と圧電振動子との接触面積が変化を示すような物性を持つ有機高分子弾性材料から形成されている、を測定対象物の表面に、該圧力振動体の接触子の膨出部が備えられた表面とは反対側の表面にて接触した状態で配置する工程、該圧力振動体の圧電振動子に、該圧電振動子に固有の共振周波数に相当する周波数の交流電圧を印加することにより、圧電振動子を振動状態とする工程;振動状態にある圧電振動子から電流を取り出す工程;上記測定対象物の表面の圧力変化に連動して発生する該電流の電流値の変化と圧電振動子に印加した交流電圧の電圧値とから圧電振動子のインピーダンスの変化を算出する工程;及び該インピーダンスの変化を圧力の変化に換算する工程を含む測定対象物の表面の圧力の変化を検知する方法において、上記測定対象物の温度変化に起因して発生する固有の共振周波数の変化によって引き起こされるインピーダンスの誤差を下記の工程を含む操作を行なうことにより補正する方法:
(1)上記の圧電振動子を振動状態とする工程における圧電振動子の温度を測定する工程;
(2)工程(1)で測定された温度における圧電振動子の共振周波数を、圧電振動子に印加する交流電圧の周波数を変化させることによりインピーダンスのピークが現れる共振周波数として検出する工程;そして、
(3)圧電振動子に印加する交流電圧の周波数を、上記の工程(2)で検出された共振周波数に変える工程。
表面が周期的もしくは非周期的な圧力変化を起こす測定対象物の当該表面に、盤状の圧電体と該圧電体の両側表面のそれぞれに備えられた電極とからなる圧電振動子、そして一方の表面に膨出部を備え、該膨出部が該圧電振動子の一方の電極の表面に接触した状態で配置されている盤状の接触子を含む圧力振動体、但し該圧力振動体の接触子の膨出部は、その接触子の膨出部が備えられた表面とは反対側の表面が測定対象物の当該表面に接触状態に置かれた場合に、該測定対象物の表面で発生する圧力変化に応じて接触子の膨出部と圧電振動子との接触面積が変化を示すような物性を持つ有機高分子弾性材料から形成されている、を測定対象物の表面に、該圧力振動体の接触子の膨出部が備えられた表面とは反対側の表面にて接触した状態で配置する工程、該圧力振動体の圧電振動子に、該圧電振動子に固有の共振周波数に相当する周波数の交流電圧を印加することにより、圧電振動子を振動状態とする工程;振動状態にある圧電振動子から電流を取り出す工程;上記測定対象物の表面の圧力変化に連動して発生する該電流の電流値の変化と圧電振動子に印加した交流電圧の電圧値とから圧電振動子のインピーダンスの変化を算出する工程;及び該インピーダンスの変化を圧力の変化に換算する工程を含む測定対象物の表面の圧力の変化を検知する方法において、上記測定対象物の温度変化に起因して発生する固有の共振周波数の変化によって引き起こされるインピーダンスの誤差を下記の工程を含む操作を行なうことにより補正する方法:
上記の圧電振動子に固有の共振周波数に相当する周波数の交流電圧を印加することにより、圧電振動子を振動状態とする工程において、上記の固有の共振周波数に相当する周波数の交流電圧の印加に続いて、該周波数に近似する二以上の互いに異なる周波数の交流電圧の印加を実施し、前記の固有の共振周波数でのインピーダンスと後者の二以上の互いに異なる周波数の交流電圧の印加でのインピーダンスとを比較することにより、決定された最小のインピーダンスを前記の圧電振動子のインピーダンスの変化を算出する工程で用いるインピーダンスとする工程。
表面が周期的もしくは非周期的な圧力変化を起こす測定対象物の当該表面に、盤状の圧電体と該圧電体の両側表面のそれぞれに備えられた電極とからなる圧電振動子を、その一方の電極表面にて接触した状態で配置する工程;該圧電振動子に、該圧電振動子に固有の共振周波数に相当する周波数の交流電圧を印加することにより、圧電振動子を振動状態とする工程;振動状態にある圧電振動子から電流を取り出す工程;上記測定対象物の表面の圧力変化に連動して発生する該電流の電流値の変化と圧電振動子に印加した交流電圧の電圧値とから圧電振動子のインピーダンスの変化を算出する工程;及び該インピーダンスの変化を圧力の変化に換算する工程を含む測定対象物の表面の圧力の変化を検知する方法において、上記測定対象物の温度変化に起因して発生する圧電振動子の固有の共振周波数の変化によって引き起こされるインピーダンスの誤差を下記の工程を含む操作を行なうことにより補正する方法:
(1)上記圧電振動子の固有の共振周波数の温度依存性を予め測定して、その温度依存性を表す検量線を作成する工程;
(2)上記の圧電振動子を振動状態とする工程における圧電振動子の温度を測定する工程;
(3)工程(1)で作成された検量線と工程(2)で測定された圧電振動子の温度とから、当該温度における圧電振動子の共振周波数を算出する工程;そして
(4)圧電振動子に印加する交流電圧の周波数を、工程(3)で算出された共振周波数に変える工程。
表面が周期的もしくは非周期的な圧力変化を起こす測定対象物の当該表面に、盤状の圧電体と該圧電体の両側表面のそれぞれに備えられた電極とからなる圧電振動子を、その一方の電極表面にて接触した状態で配置する工程;該圧電振動子に、該圧電振動子に固有の共振周波数に相当する周波数の交流電圧を印加することにより、圧電振動子を振動状態とする工程;振動状態にある圧電振動子から電流を取り出す工程;上記測定対象物の表面の圧力変化に連動して発生する該電流の電流値の変化と圧電振動子に印加した交流電圧の電圧値とから圧電振動子のインピーダンスの変化を算出する工程;及び該インピーダンスの変化を圧力の変化に換算する工程を含む測定対象物の表面の圧力の変化を検知する方法において、上記測定対象物の温度変化に起因して発生する圧電振動子の固有の共振周波数の変化によって引き起こされるインピーダンスの誤差を下記の工程を含む操作を行なうことにより補正する方法:
(1)上記の圧電振動子を振動状態とする工程における圧電振動子の温度を測定する工程;
(2)工程(1)で測定された温度における圧電振動子の共振周波数を、圧電振動子に印加する交流電圧の周波数を変化させることによりインピーダンスのピークが現れる共振周波数として検出する工程;そして、
(3)圧電振動子に印加する交流電圧の周波数を、上記の工程(2)で検出された共振周波数に変える工程。
表面が周期的もしくは非周期的な圧力変化を起こす測定対象物の当該表面に、盤状の圧電体と該圧電体の両側表面のそれぞれに備えられた電極とからなる圧電振動子を、その一方の電極表面にて接触した状態で配置する工程;該圧電振動子に、該圧電振動子に固有の共振周波数に相当する周波数の交流電圧を印加することにより、圧電振動子を振動状態とする工程;振動状態にある圧電振動子から電流を取り出す工程;上記測定対象物の表面の圧力変化に連動して発生する該電流の電流値の変化と圧電振動子に印加した交流電圧の電圧値とから圧電振動子のインピーダンスの変化を算出する工程;及び該インピーダンスの変化を圧力の変化に換算する工程を含む測定対象物の表面の圧力の変化を検知する方法において、上記測定対象物の温度変化に起因して発生する圧電振動子の固有の共振周波数の変化によって引き起こされるインピーダンスの誤差を下記の工程を含む操作を行なうことにより補正する方法:
上記の圧電振動子に固有の共振周波数に相当する周波数の交流電圧を印加することにより、圧電振動子を振動状態とする工程において、上記の固有の共振周波数に相当する周波数の交流電圧の印加に続いて、該周波数に近似する二以上の互いに異なる周波数の交流電圧の印加を実施し、前記の固有の共振周波数でのインピーダンスと後者の二以上の互いに異なる周波数の交流電圧の印加でのインピーダンスとを比較することにより、決定された最小のインピーダンスを前記の圧電振動子のインピーダンスの変化を算出する工程で用いるインピーダンスとする工程。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているのは気体の圧力変化を圧電振動子のインピーダンスの変化から測定する方法であって、例えば、生体のように、表面が周期的もしくは非周期的な圧力変化を起こす固体の物体の圧力変化を測定する方法についての記載はない。本発明者の検討によると、測定対象物が人間のように体調や外部環境によって温度変化が起こり易い場合、その測定対象物の圧力変化をその表面に接触させた圧電振動子のインピーダンスの変化から測定すると、測定対象物の温度変化に起因して圧電振動子の固有の共振周波数がドリフト(変化)してインピーダンスに誤差が生じて、測定対象物の圧力変化を正確に測定することが難しくなることがあることが判明した。
【0005】
従って、本発明の目的は、測定対象物の圧力変化をその表面に接触させた圧電振動子のインピーダンスの変化から測定するに際して、測定対象物の温度変化によって引き起こされるインピーダンスの誤差を補正できる方法を開発して、測定対象物の温度変化が起こり易い場合でも、測定対象物の圧力の変化を精度良く検知できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、測定対象物の圧力変化をその表面に接触させた圧電振動子のインピーダンスの変化から検知する方法として、下記の第一と第二の圧力変化検知方法を発明した。
[第一の圧力変化検知方法]
表面が周期的もしくは非周期的な圧力変化を起こす測定対象物の当該表面に、盤状の圧電体と該圧電体の両側表面のそれぞれに備えられた電極とからなる圧電振動子、そして一方の表面に膨出部を備え、該膨出部が該圧電振動子の一方の電極の表面に接触した状態で配置されている盤状の接触子を含む圧力振動体、但し該圧力振動体の接触子の膨出部は、その接触子の膨出部が備えられた表面とは反対側の表面が測定対象物の当該表面に接触状態に置かれた場合に、該測定対象物の表面で発生する圧力変化に応じて接触子の膨出部と圧電振動子との接触面積が変化を示すような物性を持つ有機高分子弾性材料から形成されている、を測定対象物の表面に、該圧力振動体の接触子の膨出部が備えられた表面とは反対側の表面にて接触した状態で配置する工程、該圧力振動体の圧電振動子に、該圧電振動子に固有の共振周波数に相当する周波数の交流電圧を印加することにより、圧電振動子を振動状態とする工程;振動状態にある圧電振動子から電流を取り出す工程;上記測定対象物の表面の圧力変化に連動して発生する該電流の電流値の変化と圧電振動子に印加した交流電圧の電圧値とから圧電振動子のインピーダンスの変化を算出する工程;及び該インピーダンスの変化を圧力の変化に換算する工程を含む方法。
【0007】
[第二の圧力変化検知方法]
表面が周期的もしくは非周期的な圧力変化を起こす測定対象物の当該表面に、盤状の圧電体と該圧電体の両側表面のそれぞれに備えられた電極とからなる圧電振動子を、その一方の電極表面にて接触した状態で配置する工程;該圧電振動子に、該圧電振動子に固有の共振周波数に相当する周波数の交流電圧を印加することにより、圧電振動子を振動状態とする工程;振動状態にある圧電振動子から電流を取り出す工程;上記測定対象物の表面の圧力変化に連動して発生する該電流の電流値の変化と圧電振動子に印加した交流電圧の電圧値とから圧電振動子のインピーダンスの変化を算出する工程;及び該インピーダンスの変化を圧力の変化に換算する工程を含む方法。
【0008】
そして、本発明者は、上記第一と第二のいずれの圧力変化検知方法においても、下記の第一乃至第三の補正方法を採用することによって、測定対象物の温度変化によって引き起こされるインピーダンスの誤差を補正できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
[第一の補正方法]
下記の(1)乃至(4)の工程を含む操作を行なう方法である。この方法では、工程(2)乃至(4)の工程を繰り返し行なうことが好ましい。
(1)上記圧電振動子の固有の共振周波数の温度依存性を予め測定して、その温度依存性を表す検量線を作成する工程。
(2)上記の圧電振動子を振動状態とする工程における圧電振動子の温度を測定する工程。
(3)工程(1)で作成された検量線と工程(2)で測定された圧電振動子の温度とから、当該温度における圧電振動子の共振周波数を算出する工程。そして
(4)圧電振動子に印加する交流電圧の周波数を、工程(3)で算出された共振周波数に変える工程。
【0010】
[第二の補正方法]
下記の(1)乃至(3)の工程を含む操作を行なう方法である。この方法では、工程(1)乃至(3)の工程を繰り返し行なうことが好ましい。
(1)上記の圧電振動子を振動状態とする工程における圧電振動子の温度を測定する工程;
(2)工程(1)で測定された温度における圧電振動子の共振周波数を、圧電振動子に印加する交流電圧の周波数を変化させることによりインピーダンスのピークが現れる共振周波数として検出する工程;そして、
(3)圧電振動子に印加する交流電圧の周波数を、上記の工程(2)で検出された共振周波数に変える工程。
【0011】
[第三の補正方法]
上記の圧電振動子に固有の共振周波数に相当する周波数の交流電圧を印加することにより、圧電振動子を振動状態とする工程において、上記の固有の共振周波数に相当する周波数の交流電圧の印加に続いて、該周波数に近似する二以上の互いに異なる周波数の交流電圧の印加を実施し、前記の固有の共振周波数でのインピーダンスと後者の二以上の互いに異なる周波数の交流電圧の印加でのインピーダンスとを比較することにより、決定された最小のインピーダンスを前記の圧電振動子のインピーダンスの変化を算出する工程で用いるインピーダンスとする工程を含む操作を行なう方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法を利用することによって、測定対象物の温度変化が発生した場合でも、測定対象物の圧力の変化を精度良く検知できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
始めに、測定対象物の圧力変化の検知方法について説明する。本発明では測定対象物の圧力変化の検知方法として、上記の第一と第二のいずれかの圧力変化検知方法を用いる。
【0015】
[第一の圧力変化検知方法]
第一の圧力変化検知方法では、最初に、表面が周期的もしくは非周期的な圧力変化を起こす測定対象物の当該表面に、盤状の圧電体と該圧電体の両側表面のそれぞれに備えられた電極とからなる圧電振動子、そして一方の表面に膨出部を備え、該膨出部が該圧電振動子の一方の電極の表面に接触した状態で配置されている盤状の接触子を含む圧力振動体、但し該圧力振動体の接触子の膨出部は、その接触子の膨出部が備えられた表面とは反対側の表面が測定対象物の当該表面に接触状態に置かれた場合に、該測定対象物の表面で発生する圧力変化に応じて接触子の膨出部と圧電振動子との接触面積が変化を示すような物性を持つ有機高分子弾性材料から形成されている、を測定対象物の表面に、該圧力振動体の接触子の膨出部が備えられた表面とは反対側の表面にて接触した状態で配置する工程を行う。
【0016】
図1は、上記の第一の圧力変化検知方法に従って測定対象物の圧力変化の検出する際に使用できる圧力振動体の一例の断面図である。
図1において、圧力振動体1は圧電振動子10と接触子20とを含む。
圧電振動子10は、盤状の圧電体11と圧電体11の両側表面のそれぞれに備えられた電極12、13とからなる。圧電振動子10の上側面は、接着剤(図示せず)を介して振動子ケース14に貼り付けられている。圧電振動子10の上側面の電極12は、折り返し電極12aによって圧電体11の下側面に引き延ばされている。折り返し電極12aと下側面の電極13にはそれぞれリード線15a、15bが接続されている。圧電振動子10は、円盤状であることが好ましい。圧電振動子のサイズは、一般には、直径が1〜50mmの範囲、好ましくは5〜20mmの範囲である。盤状圧電体11の材料の例としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウムなどの強誘電体セラミックを挙げることができる。振動子ケース14は、圧電振動子と共に振動可能な材料で形成されていることが好ましい。振動子ケースの材料の例としては、金属及び後述の接触子20の膨出部21よりも硬い硬質性有機高分子弾性材料を挙げることができる。金属の材料の例としては、アルミニウム、ステンレススチールを挙げることができる。
【0017】
接触子20は、一方の表面に膨出部21を備えた盤状体からなる。接触子20の膨出部21が備えられた表面と反対側の表面は圧力変化の測定対象物に接触する測定対象物接触面22である。接触子20は円盤状であることが好ましい。接触子20の直径と厚さの比は、1:1〜1:1/5の範囲にあることが好ましい。接触子20の厚さは膨出部の先端から膨出部が備えられた表面とは反対側の表面までの厚さを意味する。接触子の膨出部21は半球状であることが好ましい。半球状とは、球を平面で切り取った形状を意味するが、厳密な半球の形であることを要しない。圧電振動子10が円盤状である場合、接触子20の膨出部21と圧電振動子10とは、圧電振動子10の中央に膨出部21の先端が接触するように配置されていることが好ましい。なお、
図1に示した圧力振動体1では、接触子20の膨出部21と圧電振動子10の電極12とは、振動子ケース14を介して接触しているが、膨出部21と圧電振動子10の電極12とは直接接触させてもよい。
【0018】
接触子20の膨出部21は、測定対象物接触面22が測定対象の物体の表面に接触状態に置かれた場合に、測定対象の物体の圧力変化に応じて膨出部21と圧電振動子10との接触面積(圧電振動子10が振動子ケース14に収納されている場合は、膨出部21と振動子ケース14との接触面積)が変化を示す物性を持つ有機高分子弾性材料から形成されている。有機高分子弾性材料は、ゴム、熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーのいずれかであることが好ましく、ゴムであることが特に好ましい。接触子20は、全体が同一の有機高分子弾性材料から形成されていてもよい。また、測定対象物接触面22は、膨出部21の材料よりも硬い硬質性有機高分子弾性材料あるいは金属から形成されていてもよい。金属の例としては、アルミニウム、鉄、ステンレススチールを挙げることができる。ゴムの例としては、天然ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ポリブタジエン系ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴム及びアクリロニトリル・ブタジエンゴムを挙げることができる。熱可塑性樹脂の例としては、ポリアセタール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂及びポリエステル樹脂を挙げることができる。
【0019】
図2は、圧力振動体の測定対象物接触面を測定対象物の表面に接触させた状態を示す図である。なお、
図2において、圧力振動体1は
図1と同様に断面図で示している。圧力振動体1の測定対象物接触面22は、測定対象物2の表面に加圧状態で接触させることが好ましい。なお、加圧状態とは、測定対象物の圧力の変化に応じて、接触子の膨出部と圧電振動子との接触面積が変化するように、接触子の測定対象物接触面と動物の体表面とが接触していることを意味する。圧力振動体1の測定対象物接触面22は、測定対象物の表面に直接的に配置してもよいし、介在物を介して間接的に配置してもよい。介在物は、測定対象物の圧力の変化を減衰させるものあるいは増幅させるものを用いることができる。また、圧力振動体は、衣服を介して、人間などの動物の体の表面に装着しても、高感度で圧力を検知できるため、特に人間を対象とする各種の測定に有利に利用できる。
【0020】
図3は、圧力振動体の接触子に圧力を付与したときの接触子の変形状態を示す断面図であり、(a)は接触子に圧力を付与する前の状態を、(b)は接触子に圧力を付与した後の状態を示す。
図3に示すように、圧力振動体1の測定対象物接触面22に圧力が付与されると、膨出部21の先端が振動子ケース14の表面で押し潰されて、膨出部21と振動子ケース14との接触面積Sが変化する。圧力振動体1の圧電振動子10に、共振周波数の電圧を印加して圧電振動子10を振動させた状態で、膨出部21と圧電振動子10との接触面積(接触子20の膨出部21と圧電振動子10の電極12とが振動子ケース14を介して接触している場合は、接触子20の膨出部21と振動子ケース14との接触面積)が変化すると、圧電振動子10のインピーダンスが変化する。圧電振動子10のインピーダンスが変化する理由は、圧電振動子10の振動エネルギー(圧電振動子10が振動子ケース14に収納されている場合は、圧電振動子10から伝播した振動子ケース14の振動エネルギー)が、膨出部21を通って接触子20に伝搬することによって、圧電振動子10の振動エネルギーが減少するためであると考えられる。通常は、圧電振動子10と膨出部21との接触面積が広くなると、圧電振動子10のインピーダンスは大きくなる。
【0021】
本発明では、この圧電振動子10のインピーダンスの変化を算出し、このインピーダンスの変化を測定対象物の圧力の変化に換算する。測定対象物の圧力の変化は、圧電振動子10に、圧電振動子に固有の共振周波数に相当する周波数の交流電圧を印加することにより、圧電振動子を振動状態とする工程;振動状態にある圧電振動子から電流を取り出す工程;測定対象物の表面の圧力変化に連動して発生する電流の電流値Iの変化と圧電振動子に印加した交流電圧の電圧値Vとから圧電振動子のインピーダンスの変化を算出する工程及び該インピーダンスの変化を圧力の変化に換算する工程を含む方法により検知することができる。電流値Iは、圧電振動子10を流れた電気エネルギーの量に、電圧値Vは、圧電振動子10に印加された電圧の強さに相当する。
【0022】
図4は、圧力振動体の圧電振動子のインピーダンスの変化から測定対象物の圧力の変化を求めるのに有利に使用できる圧力検知回路のブロック図である。圧力検知回路30は、一定の周波数の交流電圧を発生させる電源31、リード線15aとリード線15bとの間に生じる電圧の電圧値を測定するための電圧計32、リード線15aの間に挿入された抵抗33(抵抗:R)、抵抗33の両端に生じる電圧の電圧値を測定する電圧計34、そして演算装置35を含む。電源31は、圧力振動体1に固有の共振周波数に相当する周波数の交流電圧を発生させ、リード線15a、15bを介して圧電振動子に交流電圧を印加する。圧電振動子が円盤状である場合は、共振周波数は拡がり振動モードの共振周波数とすることが好ましい。圧電振動子に固有の共振周波数に相当する周波数とは、共振周波数±10%の範囲、好ましくは共振周波数±5%の範囲にある周波数を意味する。圧電振動子に印加する交流電圧の周波数は、一般に、20kHz〜10MHzの範囲、好ましくは20kHz〜5MHzの範囲、より好ましくは20kHz〜1MHzの範囲、さらに好ましくは20〜500kHzの範囲、特に好ましくは20〜100kHzの範囲にある。圧電振動子に印加する交流電圧の電圧は、一般に実効値で5V以下、好ましくは1〜3Vの範囲である。電圧計32は、リード線15aとリード線15bとの間に生じる電圧の電圧値、すなわち圧電振動子に印加された電圧の電圧値Vを測定する。電圧計34は、抵抗33の両端に生じる電圧の電圧値V
2を測定する。演算装置35は、電流の電流値Iを式:I=V
2/Rより算出する。そして、得られた電流値Iと上記の電圧値Vとから、圧電振動子のインピーダンスZを式:Z=V/Iより算出して、インピーダンスZの変化を測定対象物の圧力の変化に換算する。測定対象物の圧力変化の周期は、インピーダンスの変化の周期から換算することができる。測定対象物の圧力変化の周期は、例えば、インピーダンスの変化をグラフとして表した場合にグラフ上に周期的に現れるインピーダンスの複数のピークを検出し、隣接するピーク間の時間間隔とすることができる。測定対象物の圧力変化の強さは、インピーダンスのピークの高さもしくは深さから換算することができる。測定対象物の圧力変化の強さは、例えば、インピーダンスの変化をグラフとして表した場合にグラフ上に周期的に現れるインピーダンスのピークを検出し、隣接するピーク間でのピークの高さもしくは深さの差異とすることができる。また、予め、圧力振動体に付与した圧力値とその圧力を付与したときの圧電振動子のインピーダンス値との関係を予め調べて検量線を作成しておき、圧電振動子のインピーダンスと検量線とから圧力振動体に付与した圧力を算出してもよい。
【0023】
図5は、圧力振動体を人間(被験者)の腹部表面に接触させて測定した、圧電振動子のインピーダンスの経時変化を示すグラフである。
図5のグラフは、アルミニウム製の振動子ケース(直径:14mm、厚さ:3mm)の中央に、ニトリルゴム製の接触子(膨出部の球曲率半径:50mm、直径:14.5mm、厚さ:9.8mm)の膨出部の先端を接触した状態で配置した構成の圧力振動体を、被験者の腹部表面に接触させ、圧電振動子に周波数が320kHzの交流電圧を印加したときの圧電振動子のインピーダンスの経時変化である。被験者には、測定開始から70秒間までは通常の呼吸をしてもらい、その後、深呼吸をしてもらった。このグラフに示すように、測定開始から60秒までの間では、圧電振動子のインピーダンスのピークの周期は6秒であった。このピークの周期は、被験者の呼吸の周期と一致していた。また、被験者が深呼吸をしたときのインピーダンスのピークは、通常の呼吸時のピークよりも明らかに幅が大きくなった。この結果から、上記の圧力振動体を利用することによって、呼吸によって生じるような速い圧力の変化を測定することが可能であることが分かる。さらに、上記の圧力振動体を利用することによって、通常の呼吸により発生する圧力と深呼吸により発生する圧力のようなわずかな圧力の違いを検出できることが分かる。
【0024】
図6は、圧力振動体の接触子に付与した圧力と、圧電振動子のインピーダンスとの関係を示すグラフである。
図6のグラフは、アルミニウム製の振動子ケース(直径:14mm、厚さ:3mm)の中央に、接触子の膨出部の先端を接触した状態で配置した構成の圧力振動体の圧電振動子に、周波数が320kHzの交流電圧を印加しながら、接触子に所定の圧力を付与した時の圧電振動子のインピーダンスの変化を表している。
図6中のA〜Dは、接触子にそれぞれ下記の表1に記載の構成の接触子A〜Dを用いた圧力振動体のデータである。このグラフに示すように、接触子に付与された圧力に対する圧電振動子のインピーダンスの変化量は、接触子の材料及び形状によって大きく変わる。圧力振動体の圧電振動子のインピーダンスの変化として測定される圧力変化のダイナミックレンジは、圧力振動体の接触子の材料及び形状などの構成を変えることによって調整できることが分かる。以上のグラフのデータから、圧力振動体の接触子の材料及び形状などの構成を、測定対象の物体の圧力変化の範囲に応じて設計することにより、圧力振動体を用いて種々の物体の圧力の変化を迅速にかつ高い精度で測定できることが分かる。
【0025】
表1
────────────────────────────────────────
形状
──────────────────────────
膨出部の 測定対象物接触
接触子 材料 球曲率半径 面の球曲率半径 直径 厚さ
────────────────────────────────────────
A NBR(硬度40度) 50mm 50mm 14.5mm 9.8mm
B NBR(硬度40度) 20mm 50mm 14.5mm 9.8mm
C NBR(硬度70度) 20mm 50mm 14.5mm 9.8mm
D POM 50mm 50mm 14.5mm 9.8mm
────────────────────────────────────────
NBR:ニトリルゴムブタジエンゴム、即ちニトリルゴム
POM:ポリオキシメチレン、即ちポリアセタール樹脂
【0026】
[第二の圧力変化検知方法]
第二の圧力変化検知方法では、最初に、表面が周期的もしくは非周期的な圧力変化を起こす測定対象物の当該表面に、盤状の圧電体と該圧電体の両側表面のそれぞれに備えられた電極とからなる圧電振動子を、その一方の電極表面にて接触した状態で配置する工程を行う。この工程は、圧力振動体の代わりに圧電振動子を用いること以外は第一の圧力変化検知方法と同じである。圧電振動子は、通常、ケースに収容して測定対象物の表面に配置する。
【0027】
図7は、第二の圧力変化検知方法に従って測定対象物の圧力変化の検出する際の実施態様を示す図である。
図7において、測定対象物2は人間である。圧電振動子10は、ケース40に収容されて、測定対象物の表面に固定具41によって固定されている。ケース40の材料の例としては、各種の樹脂(例、エポキシ樹脂)、ゴム(例、硬質ゴム)、コルク及びベーク材を挙げることができる。これらの材料には、超音波を吸収もしくは反射する物質を分散させてもよい。固定具41は、ベルトや粘着テープを用いることができる。
【0028】
第二の圧力変化検知方法において、圧電振動子のインピーダンスの変化を算出して、このインピーダンスの変化を測定対象物の圧力の変化に換算する方法は、第一の圧力変化検知方法の場合と同じ方法を用いることができる。
【0029】
次に、インピーダンスの誤差の補正方法について説明する。
図8は、圧電振動子の共振周波数の温度依存性を示す一例のグラフである。このグラフから、0℃における共振周波数が322kHzの圧電振動子は、温度が20℃になると共振周波数が320kHzに、温度が40℃になると共振周波数が318kHzにあり、圧電振動子の温度が高くなるに伴って、共振周波数が低周波側にドリフト(変化)することが分かる。このため、測定対象物が人間のように体調や外部環境によって温度変化が起こり易い場合には、測定対象物の温度変化によって引き起こされるインピーダンスの誤差を補正することが必要となる。
【0030】
本発明では、インピーダンスの誤差の補正方法として、前記の第一乃至第三の補正方法を用いる。以下、これらの補正方法について説明する。
【0031】
[第一の補正方法]
第一の補正方法は、下記の(1)乃至(4)の工程を含む操作を行なう方法である。
(1)上記圧電振動子の固有の共振周波数の温度依存性を予め測定して、その温度依存性を表す検量線を作成する工程。
(2)上記の圧電振動子を振動状態とする工程における圧電振動子の温度を測定する工程。
(3)工程(1)で作成された検量線と工程(2)で測定された圧電振動子の温度とから、当該温度における圧電振動子の共振周波数を算出する工程。そして
(4)圧電振動子に印加する交流電圧の周波数を、工程(3)で算出された共振周波数に変える工程。
【0032】
工程(1)において、検量線は、圧電振動子の温度とその温度での圧電振動子の共振周波数との関係を表した線である。工程(1)で作成した検量線は記憶して、工程(2)乃至(4)の工程を繰り返し行なうことが好ましい。この補正方法の実施頻度は、連続的、周期的、間欠的のいずれでもよい。例えば、工程(2)を連続的に実施して、得られた温度を記憶し、その温度の変化が所定値(例、±0.1℃)を超えた場合に工程(3)と工程(4)を実施してもよい。また、所定の時間毎に工程(2)乃至(4)の工程を実施してもよい。
【0033】
図9は、第一の補正方法を有利に実施できる温度補正回路の一例のブロック図である。
図9において、温度検出回路50は、圧電振動子10の温度を測定して、温度の情報を制御回路51に送る。制御回路51は、予め記録されている圧電振動子の温度依存性を表す検量線と送られた温度情報から、当該温度における圧電振動子の共振周波数を算出し、その共振周波数の情報を周波数可変回路52に送る。周波数可変回路52は、共振周波数の交流電圧を発生させるための指示信号を作成して発振回路53に送る。発振回路53は、指示信号に従って、電源(図示せず)にて発生する交流電圧の周波数を共振周波数に変更する。交流電圧信号はフィルタ54に送られる。フィルタ54は、交流電圧信号のノイズを除去する。フィルタを通過した交流電圧信号は、増幅回路55に送られる。増幅回路55は、交流電圧信号を増幅して圧電振動子10に送る。交流電圧信号が送られる(すなわち、交流電圧が印加される)ことによって、圧電振動子10のインピーダンスが変化する。この圧電振動子10のインピーダンスは、上記の方法により測定される。
【0034】
[第二の補正方法]
下記の(1)乃至(3)の工程を含む操作を行なう方法である。
(1)上記の圧電振動子を振動状態とする工程における圧電振動子の温度を測定する工程。
(2)工程(1)で測定された温度における圧電振動子の共振周波数を、圧電振動子に印加する交流電圧の周波数を変化させることによりインピーダンスのピークが現れる共振周波数として検出する工程。そして、
(3)圧電振動子に印加する交流電圧の周波数を、上記の工程(2)で検出された共振周波数に変える工程。
【0035】
工程(2)において、圧電振動子に印加する交流電圧の周波数の範囲は、測定対象物の通常の温度における圧電振動子の共振周波数に対して一般に±20%の周波数の範囲、好ましくは±10%の周波数の範囲にある。インピーダンスのピークが現れる周波数は、圧電振動子に印加する交流電圧の周波数を、上記の周波数範囲にて、低周波数側から高周波数側もしくは高周波数側から低周波数側に順次、所定の間隔で変化させ、得られた圧電振動子のインピーダンスの中で最小のインピーダンスが得られた周波数とすることが好ましい。周波数を変化させる間隔は、一般に0.01〜0.5kHzの範囲、好ましくは0.02〜0.3kHzである。
【0036】
工程(1)乃至(3)の工程は繰り返し行なうことが好ましい。各工程の繰り返しの頻度は、周期的、連続的、間欠的のいずれでもよい。例えば、工程(1)を連続的に実施して得られた温度を記憶し、その温度の変化が所定値(例、±0.1℃)を超えた場合に工程(2)乃至(3)の工程を実施してもよい。また、所定の時間毎に工程(1)乃至(3)の工程を実施してもよい。
【0037】
さらに、工程(1)で得られた温度と、工程(2)で検出された当該温度における圧電振動子の共振周波数とを記憶して検量線を作成し、その検量線と工程(1)で測定される圧電振動子の温度とから、当該温度における圧電振動子の共振周波数を算出してもよい。
【0038】
図10は、第二の補正方法を有利に実施できる回路の一例のブロック図である。
図10において、温度検出回路60は、圧電振動子10の温度を測定して、温度の情報を制御回路61に送る。制御回路61は、送られた温度情報を記憶する。周波数可変回路62は、圧電振動子に印加する交流電圧の周波数を変化させるように指示信号を作成して発振回路63に送る。発振回路63は、指示信号に従って電源(図示せず)にて発生する交流電圧の周波数を変更する。交流電圧信号はフィルタ64に送られる。フィルタ64は、交流電圧信号のノイズを除去する。フィルタ64を通過した交流電圧信号は、増幅回路65に送られる。増幅回路65は、交流電圧信号を増幅して圧電振動子10に送る。交流電圧信号が送られる(すなわち、交流電圧が印加される)ことによって、圧電振動子10のインピーダンスが変化する。この圧電振動子10のインピーダンスは、上記の方法により測定される。圧電振動子10のインピーダンスの信号は、増幅回路66に送られる。増幅回路66は、インピーダンス信号を増幅して検波回路67に送る。検波回路67は、インピーダンス信号の包絡線を検出して、その包絡線情報を増幅回路68に送る。増幅回路68は、包絡線情報を増幅してサンプリング回路69に送る。サンプリング回路69は、包絡線情報をデジタル信号に変換して制御回路61に送る。制御回路61は、包絡線情報のデジタル信号から、圧電振動子10に印加された交流電圧の波数範囲の中で最小のインピーダンスが得られた周波数を、温度検出回路60に測定された温度での共振周波数として検出し、その共振周波数の情報を周波数可変回路62に送る。周波数可変回路62は、共振周波数の情報を受けた後は、共振周波数の交流電圧を発生させるための指示信号を作成して発振回路63に送る。共振周波数の変更を行なう場合、制御回路61は、共振周波数の変更命令を周波数可変回路62に送る。変更命令が送られた周波数可変回路62は、圧電振動子に印加する交流電圧の周波数を変化させるように指示信号を作成して発振回路63に送る。
【0039】
[第三の補正方法]
下記の工程を含む操作を行なう方法である。
上記の圧電振動子に固有の共振周波数に相当する周波数の交流電圧を印加することにより、圧電振動子を振動状態とする工程において、上記の固有の共振周波数に相当する周波数の交流電圧の印加に続いて、該周波数に近似する二以上の互いに異なる周波数の交流電圧の印加を実施し、前記の固有の共振周波数でのインピーダンスと後者の二以上の互いに異なる周波数の交流電圧の印加でのインピーダンスとを比較することにより、決定された最小のインピーダンスを前記の圧電振動子のインピーダンスの変化を算出する工程で用いるインピーダンスとする工程。
【0040】
圧電振動子の固有の共振周波数に相当する周波数は、測定対象物の通常の温度における圧電振動子の共振周波数を意味する。共振周波数に相当する周波数に近似する二以上の周波数は、共振周波数に相当する周波数に対して一般に±20%の波長の範囲、好ましくは±10%の波長の範囲にある。最小のインピーダンスは、圧電振動子に印加する交流電圧の周波数を、上記の波長範囲にて、低波長側から高波長側もしくは高波長側から低波長側に順次、所定の間隔で変化させ、得られた圧電振動子のインピーダンスの中で最小のインピーダンスとすることが好ましい。周波数を変化される間隔は、一般に0.01〜0.5kHzの範囲、好ましくは0.02〜0.3kHzである。
【0041】
図11は、第三の補正方法を有利に実施できる回路の一例のブロック図である。
図11において、周波数可変回路70は、圧電振動子に固有の共振周波数に相当する周波数の交流電圧と、その周波数に近似する二以上の互いに異なる周波数の交流電圧を発生させるための指示信号を作成して発振回路71に送る。発振回路71は、指示信号に従って、電源(図示せず)にて発生する交流電圧の周波数を変更する。交流電圧信号はフィルタ72に送られる。フィルタ72は、交流電圧信号のノイズを除去する。フィルタを通過した交流電圧信号は、増幅回路73に送られる。増幅回路73は、交流電圧信号を増幅して圧電振動子10に送る。交流電圧信号が送られる(すなわち、交流電圧が印加される)ことによって、圧電振動子10のインピーダンスが変化する。この圧電振動子10のインピーダンスは、上記の方法により測定される。圧電振動子10のインピーダンスの信号は、増幅回路74に送られる。増幅回路74は、インピーダンス信号を増幅して検波回路75に送る。検波回路75は、インピーダンス信号の包絡線を検出して、その包絡線情報を最小値検出回路76に送る。最小値検出回路76は、包絡線情報からインピーダンスの最小値を検出して、そのインピーダンスの最小値の信号を増幅回路77に送る。増幅回路77は、インピーダンスの最小値を増幅してサンプリング回路78に送る。サンプリング回路78は、インピーダンスの最小値をデジタル信号に変換して制御回路79に送る。制御回路79は、インピーダンスの最小値を圧電振動子のインピーダンスの変化を算出する工程で用いるインピーダンスとして記憶する。