(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、既存の平板瓦に直接釘打ち固定すると、釘打ちの際に、既存の平板瓦が破損したり、釘打ちが甘く、新たな平板瓦に浮きが生じ、クラックが発生してしまうなど、屋根としての性能である強度や防水性などが低下してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、既存平板瓦が葺設された屋根上に、新規平板瓦を重ねて葺設するにあたり、既存平板瓦が破損しにくく、新規平板瓦に浮きが生じにくい重ね葺き屋根構造、及び重ね葺き方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様に係る重ね葺き屋根構造は、既存平板瓦が葺設された屋根上に、新規平板瓦を重ね葺きした屋根構造において、
第一の新規平板瓦の棟側端部と、第一の既存平板瓦の軒側端部との間に間隙が設けられ、
前記間隙に接着剤が配置され、
第二の新規平板瓦が、前記第一の新規平板瓦上から前記第一の既存平板瓦上に亘って配置されると共に、前記接着剤で接着されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の第二の態様に係る重ね葺き屋根構造は、第一の態様において、前記接着剤が、発泡性の接着剤である。
【0010】
本発明の第三の態様に係る重ね葺き屋根構造は、第一又は第二の態様において、前記新規平板瓦のうち、最も軒側に配置されている新規平板瓦と、前記既存平板瓦のうち、最も軒側に配置されている既存平板瓦との間に、調整瓦が介在している。
【0011】
本発明の第四の態様に係る重ね葺き屋根構造は、第一乃至三のいずれか一つの態様において、前記新規平板瓦のうち、軒棟方向と直交する方向に隣設する2つの新規平板瓦間の突き付け部が、前記既存平板瓦のうち、軒棟方向と直交する方向に隣接するいずれの二つの既存平板瓦間の突き付け部とも重なっていない。
【0012】
本発明の第五の態様に係る重ね葺き屋根構造は、第一乃至四のいずれか一つの態様において、前記第二の新規平板瓦に、この第二の新規平板瓦を貫通するピンが設けられ、前記ピンが前記第一の新規平板瓦の棟側端部と接する。
【0013】
本発明の第六の態様に係る重ね葺き方法は、既存平板瓦が葺設された屋根上に、新規平板瓦を重ね葺きする方法において、
前記屋根に第一の新規平板瓦を敷設すると共に、この第一の新規平板瓦の棟側端部と、第一の既存平板瓦の軒側端部との間に間隙を設ける工程と、
前記間隙に接着剤を配置する工程と、
第二の新規平板瓦を、前記第一の新規平板瓦上から前記第一の既存平板瓦上に亘って配置すると共に、前記接着剤で接着する工程とを備えることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の第七の態様に係る重ね葺き方法は、第六の態様において、前記第一の既存平板瓦と、この第一の既存平板瓦上に重なっている第二の既存平板瓦との間に押さえ込み治具の一端を差し込むと共に、前記押さえ込み治具の他端を前記第二の新規平板瓦上に重ねることで、前記第二の新規平板瓦を押さえ込み、接着状態を保持する工程を備える。
【0015】
本発明の第八の態様に係る重ね葺き方法は、第六又は第七の態様において、前記第二の新規平板瓦に、この第二の新規平板瓦を貫通するピンを設け、前記ピンが前記第一の
新規平板瓦の棟側端部と接するようにする。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、既存平板瓦と新規平板瓦とを、接着剤で固定するため、既存平板瓦にクラックが生じにくく、且つ新規平板瓦に浮き上がりが生じにくい。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施形態に係る重ね葺き屋根構造は、既存平板瓦2が葺設された屋根上に、新規平板瓦1を重ね葺きした屋根構造において、
第一の新規平板瓦11の棟側端部と、第一の既存平板瓦21の軒側端部との間に間隙3が設けられ、
間隙3に接着剤4が配置され、
第二の新規平板瓦12が、第一の新規平板瓦11上から第一の既存平板瓦21上に亘って配置されると共に、接着剤4で接着されている。
【0019】
本実施形態に係る重ね葺き屋根構造では、接着剤4が、発泡性の接着剤であってもよい。
【0020】
本実施形態に係る重ね葺き屋根構造では、新規平板瓦1のうち、最も軒側に配置されている新規平板瓦13(以降、一段目の新規平板瓦と表示する)と、既存平板瓦2のうち、最も軒側に配置されている既存平板瓦23(以降、一段目の既存平板瓦と表示する)との間に、調整瓦5が介在していてもよい。
【0021】
本実施形態に係る重ね葺き屋根構造では、新規平板瓦1のうち、軒棟方向と直交する方向に隣設する2つの新規平板瓦1間の突き付け部が、既存平板瓦2のうち、軒棟方向と直交する方向に隣接するいずれの二つの既存平板瓦2間の突き付け部とも重なっていない。
【0022】
本実施形態に係る重ね葺き屋根構造では、第二の新規平板瓦12に、この第二の新規平板瓦12を貫通するピン6が設けられ、ピン6が第一の新規平板瓦11の棟側端部と接してもよい。
【0023】
本実施形態に係る重ね葺き方法は、既存平板瓦2が葺設された屋根上に、新規平板瓦1を重ね葺きする方法において、
前記屋根に第一の新規平板瓦11を敷設すると共に、この第一の新規平板瓦11の棟側端部と、第一の既存平板瓦21の軒側端部との間に間隙3を設ける工程と、
間隙3に接着剤4を配置する工程と、
第二の新規平板瓦12を、第一の新規平板瓦11上から第一の既存平板瓦21上に亘って配置すると共に、接着剤4で接着する工程とを備える。
【0024】
本実施形態に係る重ね葺き方法は、第一の既存平板瓦21と、この第一の既存平板瓦21上に重なっている第二の既存平板瓦22との間に押さえ込み治具7の一端72(以降、第二端部と表示する)を差し込むと共に、押さえ込み治具7の他端71(以降、第一端部と表示する)を第二の新規平板瓦12上に押し当てることで、第二の新規平板瓦12を押さえ込み、接着状態を保持する工程を備えてもよい。
【0025】
本実施形態に係る重ね葺き方法は、第二の新規平板瓦12に、この第二の新規平板瓦12を貫通するピン6を設け、ピン6が第一の新規平板瓦11の棟側端部と接してもよい。
【0026】
尚、本明細書において、軒側とは、屋根の傾斜に沿った斜め下側のことであり、棟側とは、屋根の傾斜に沿った斜め上側のことであり、軒棟方向とは、屋根の傾斜に沿った方向である。
【0027】
以下、本実施形態を更に詳しく説明する。
【0028】
まず、本実施形態における既存平板瓦2の葺設構造について説明する。
【0029】
既存平板瓦2は、平面視略矩形状のスレート瓦である。既存平板瓦2は、全て同一の形状に形成される。既存平板瓦2は、屋根下地9上において、
図7に示すように、屋根の軒棟方向に複数葺設される。更に、既存平板瓦2は、屋根下地9上において、
図7に示すように、屋根の軒棟方向と直交する方向に複数葺設される。
【0030】
この既存平板瓦2の葺設構造において、既存平板瓦2(例えば
図7に示される既存平板瓦24)の棟側端部の上には、その軒棟方向の棟側に位置する別の既存平板瓦2(例えば
図7に示される既存平板瓦25)の軒側端部が重なっている。この軒棟方向に隣り合う二つの既存平板瓦2のうち、棟側の既存平板瓦2の、軒棟方向と直交する方向の配置位置は、軒側の既存平板瓦2の配置位置に対して軒棟方向と直交する方向に、既存平板瓦2の軒棟方向と直交する方向の働き幅aの1/2だけずれている。なお、本実施形態のように1/2ずらす以外に、1/3など任意のずらし幅を選択することことができる。
【0031】
続いて、既存平板瓦2が葺設された屋根上に、新規平板瓦1を重ね葺きする方法及び重ね葺きした構造について説明する。
【0032】
本実施形態において、新規平板瓦1は、既存平板瓦2と同様平面視略矩形状のスレート瓦であり、外形寸法においても既存平板瓦2と略同じ縦幅及び横幅を有する。尚、新規平板瓦1の寸法形状は、これに限られるものではない。
【0033】
まず、第一の調整瓦51、及び第二の調整瓦52を葺設し、更に、調整瓦51、52に重ねて、一段目の新規平板瓦13を葺設する工程について説明する。
【0034】
図3に示すように、屋根下地9上の最も軒側には、一段目の既存平板瓦23が葺設され、一段目の既存平板瓦23の軒棟方向の棟側には一段目の既存平板瓦23の棟部に二段目の既存平板瓦24の軒部を重ねて二段目の既存平板瓦24が葺設され、二段目の既存平板瓦24の軒棟方向の棟側には二段目の既存平板瓦24の棟部に三段目の既存平板瓦25の軒部を重ねて三段目の既存平板瓦25が葺設され、更に、三段目の既存平板瓦25の軒棟方向の棟側には三段目の既存平板瓦25の棟部に四段目の既存平板瓦26の軒部を重ねて四段目の既存平板側26が葺設されている。更に、一段目の既存平板瓦23と屋根下地9との間には、一段目の既存平板瓦23の傾斜を調整するスタータ90が挿入されている。
【0035】
本実施形態では、既存平板瓦2上に新規平板瓦1を重ねて葺設するにあたり、既存平板瓦2のうち一段目の既存平板瓦23上に、第一の調整瓦51及び第二の調整瓦52が配置される。
【0036】
本実施形態では、
図2に示すように、調整瓦51、52(第一の調整瓦51、及び第二の調整瓦52)を配置する前に、軒先カバー230及び防水テープ233を設置する。
【0037】
軒先カバー230は、一段目の既存平板瓦23とスタータ90の軒側端部を覆う覆い部231と、覆い部から下方に突出する垂下部232とを備える部材である。軒先カバー230は、例えば、釘等を用いて、一段目の既存平板瓦23上に取り付けられる。
【0038】
一段目の既存平板瓦23上に軒先カバー230を取り付けた後、一段目の既存平板瓦23上から軒先カバー230上に亘って、防水テープ233を張り付ける。これにより、防水テープ233が、一段目の既存平板瓦23と軒先カバー230との間の防水性を高めることができる。
【0039】
一段目の既存平板瓦23上に、軒先カバー230及び防水テープ233を設置したのち、第一の調整瓦51を配置する。
【0040】
本実施形態では、第一の調整瓦51及び第二の調整瓦52は、新規平板瓦1と同様の材料で成形されたスレート瓦である。
【0041】
第一の調整瓦51は平面視略矩形状に形成され、軒棟方向と直交する方向の寸法は、既存平板瓦2及び新規平板瓦1の軒棟方向と直交する方向の働き幅aと略同じである。第一の調整瓦51の軒棟方向の寸法は、既存平板瓦2の軒棟方向の働き幅bより短い。
【0042】
第二の調整瓦52の軒棟方向と直交する方向の寸法は、第一の調整瓦51と略同じである。第二の調整瓦52の軒棟方向の寸法は、既存平板瓦2の軒棟方向と直交する方向の働き幅bより長く、かつ働き幅bの2倍よりも短い。
【0043】
第一の調整瓦51及び第二の調整瓦52は、
図7に示すように、屋根の軒棟方向と直交する方向に複数葺設される。
【0044】
第一の調整瓦51の、軒棟方向と直交する方向の配置位置は、一段目の既存平板瓦23の配置位置を基準として軒棟方向と直交する方向に、既存平板瓦2の働き幅aの1/4だけずれている。
【0045】
第一の調整瓦51の棟側端部と、二段目の既存平板瓦24の軒側端部との間には、間隙30が設けられる。
【0046】
一段目の既存平板瓦23上に、第一の調整瓦51が配置された後、この第一の調整瓦51を固定する。
【0047】
本実施形態では、
図3に示すように、第一の調整瓦51と吊り子8が同時に一段目の既存平板瓦23上に固定される。
【0048】
吊り子8は、
図4に示すように、固定部80、第一の支持片82、及び第二の支持片83を備える。固定部80の軒棟方向の寸法は、第一の調整瓦51の釘止め箇所よりも棟側まで設けられるよう設計されている。第一の支持片82は、固定部80の軒側端部から下方に突出し、更に先端部を棟側に折り返したフック型の形状を有する。第二の支持片83は、固定部80の軒側端部から上方に突出し、更に先端部を棟側に折り返したフック型の形状を有する。
【0049】
本実施形態では、吊り子8の第一の支持片82の先端部はフック型の形状を有するが、これに限られるものではない。例えば、
図5に示すように、第一の支持片82の先端部が棟側に折り返されず、下方に突出していてもよい。
【0050】
吊り子8は、その第一の支持片82に第一の調整瓦51の軒側端部を挿入して当接し、その固定部80が第一の調整瓦51上に配置され、固定部80に釘800が打込まれることにより吊り子8は第一の調整瓦51と同時に屋根下地9に固定され、更に、第一の調整瓦51の軒側端部が第一の支持片82で挿入支持される。また異なる態様として、第一の支持片82を一段目の既存平板瓦23の軒側端部と当接する位置まで設けることにより、第一の調整瓦51と一段目の既存平板瓦23の軒先端部の位置を容易に揃えることができるものである。
【0051】
一段目の既存平板瓦23上に第一の調整瓦51が葺設された後、間隙30に接着剤4が配置される。接着剤4は、間隙30における軒棟方向と直交する方向に、間隔を空けながら複数箇所に配置される。これにより、接着剤間に隙間が形成されるため、雨水が第二の調整瓦52の裏面に回りこんだ場合も、軒側に排水することができるものである。接着剤4は、発泡性の接着剤であることが好ましい。接着剤4としては、例えば、硬質ウレタン系の発泡性の接着剤を用いることが好ましい。
【0052】
接着剤4が発泡性の接着剤であることにより、接着剤4が間隙30の内部で適度に膨張して第二の調整瓦52と一段目の既存平板瓦23とを、間隙30に配置された接着剤4を介して接着することができる。
【0053】
間隙30に接着剤4が配置された後、第二の調整瓦52が配置される。第二の調整瓦52は、第一の調整瓦51上から二段目の既存平板瓦24上に亘って配置される。第二の調整瓦52は、間隙30に配置された接着剤4によって接着されると共に棟側端部が吊り子8の第二の支持片83に引っ掛けられることで支持される。
【0054】
第二の調整瓦52の、軒棟方向と直交する方向の配置位置は、第一の調整瓦51の配置位置に対して軒棟方向と直交する方向に、既存平板瓦2の働き幅aの1/2だけずれている。また、第二の調整瓦52の棟側端部と三段目の既存平板瓦25の軒側端部との間には、間隙3が設けられる。
【0055】
第二の調整瓦52が第一の調整瓦51上に葺設された後、一段目の新規平板瓦13が葺設される。一段目の新規平板瓦13は、複数の新規平板瓦1のうち、最も軒側に配置される瓦である。
【0056】
一段目の新規平板瓦13は、第二の調整瓦52上から、三段目の既存平板瓦25上に亘って配置される。一段目の新規平板瓦13の、軒棟方向と直交する方向の配置位置は、第二の調整瓦52の配置位置に対して軒棟方向と直交する方向に、既存平板瓦2の働き幅aの1/2だけずれている。
【0057】
第二の調整瓦52上に一段目の新規平板瓦13を配置するにあたり、間隙3に接着剤4が配置される。これにより、接着剤間に隙間が形成されるため、雨水が一段目の新規平板瓦13の裏面に回りこんだ場合も、軒側に排水することができるものである。接着剤4は、間隙3における軒棟方向と直交する方向に、間隔を空けながら複数箇所に配置される。接着剤4は、発泡性の接着剤であることが好ましい。接着剤4としては、例えば、硬質ウレタン系の発泡接着剤を用いることが好ましい。
【0058】
接着剤4が発泡性の接着剤であることにより、接着剤4が間隙3の内部で適度に膨張して、一段目の新規平板瓦13と二段目の既存平板瓦24とを、間隙3に配置された接着剤4を介して接着することができる。
【0059】
一段目の新規平板瓦13には、一段目の新規平板瓦13を貫通するピン6が設けられ、このため一段目の新規平板瓦13の位置合わせがされる。ピン6は、一段目の新規平板瓦13の所定位置に、軒棟方向と直交する方向に並んで、複数設けられている。一段目の新規平板瓦13を第二の調整瓦52上に配置する際に、ピン6が第二の調整瓦52の棟側端部と接するようにする。これにより、一段目の新規平板瓦13のピン6を設けた位置と第二の調整瓦52の棟側端部を一致させ、瓦の位置合わせを容易に行うことができ、更に、屋根の勾配が急である場合に、一段目の新規平板瓦13が滑り落ちることを防ぐことができる。
【0060】
一段目の新規平板瓦13の棟側端部と四段目の既存平板瓦26の軒側端部との間には、間隙3が設けられる。
【0061】
ピン6によって位置合わせされた一段目の新規平板瓦13は、接着剤4によって、接着される。
【0062】
本実施形態では、発泡性の接着剤4の膨張による一段目の新規平板瓦13の浮き上がりを防止するため、
図8に示すように、押さえ込み治具7を利用する。
【0063】
押さえ込み治具7は、間隙3の軒棟方向の幅よりも長い板状の部材である。押さえ込み治具7は、例えば、弾性を有する金属板等から形成される。押さえ込み治具7はその第一端部71に、上方に突出した取っ手73を有する。このため、押さえ込み治具7の差し込み時及び取り除き時において、作業者が取っ手73を手で掴むことで押さえ込み治具7を保持することが容易となり、このため、押さえ込み治具7の差し込み、及び取り外しが容易となる。
【0064】
一段目の新規平板瓦13を接着剤4で接着するにあたり、三段目の既存平板瓦25の棟側の上部と四段目の既存平板瓦26の軒側の下部との間に、押さえ込み治具7の第一端部71とは反対側の第二端部72を差し込むと共に、押さえ込み治具7の第一端部71を一段目の新規平板瓦13上に押し当て、一段目の新規平板瓦13の浮き上がりを抑制する。接着剤4による一段目の新規平板瓦13の接着が完了すると、押さえ込み治具7を、取っ手73を保持することで、取り除く。
【0065】
このようにして、一段目の新規平板瓦13が葺設されると、一段目の新規平板瓦13の軒側部分の高さが、第一の調整瓦51及び第二の調整瓦52で調整されるため、一段目の新規平板瓦13と三段目の既存平板瓦25との間に隙間が生じにくくなる。このため、防水性が向上すると共に、踏み割れが起こりにくくなる。
【0066】
一段目の新規平板瓦13が葺設された後、更にその棟側に複数の新規平板瓦1が順次葺設される。新規平板瓦1を葺設するにあたり、既に葺設された新規平板瓦1(第一の新規平板瓦11)の棟側に、別の新規平板瓦1(第二の新規平板瓦12)を葺設する工程について、
図1を参照して説明する。
【0067】
ここで、軒側に葺設された新規平板瓦を第一の新規平板瓦11、第一の新規平板瓦11の棟部側に重ねて葺設される新規平板瓦を第二の新規平板瓦12、第二の新規平板瓦12の棟部側が重ねて葺設される既存平板瓦を第一の既存平板瓦21、第一の既存平板瓦21の棟部側に重ねて葺設される既存平板瓦を第二の既存平板瓦22とする。
【0068】
図1に示すように、第一の既存平板瓦21の棟側には、第一の既存平板瓦21に重ねて第二の既存平板瓦22が葺設されている。第一の新規平板瓦11は、第一の既存平板瓦21に対して軒側に葺設されている。第一の新規平板瓦11の棟側端部と、第一の既存平板瓦21の棟側端部との間には、間隙3が設けられている。
【0069】
第二の新規平板瓦12は、第一の新規平板瓦11上から第一の既存平板瓦21上に亘って配置される。
【0070】
第二の新規平板瓦12の、軒棟方向と直交する方向の配置位置は、第一の既存平板瓦21の配置位置に対して軒棟方向と直交する方向に、既存平板瓦2の軒棟方向と直交する方向の働き幅aの1/2だけずれている。
【0071】
第一の新規平板瓦11上に第二の新規平板瓦12を配置する前に、間隙3に接着剤4が配置される。接着剤4は、間隙3における軒棟方向と直交する方向に、間隔を空けながら複数箇所に配置される。接着剤4は、発泡性の接着剤であることが好ましい。接着剤4としては、例えば、硬質ウレタン系の発泡接着剤を用いることが好ましい。
【0072】
接着剤4が発泡性の接着剤であることにより、接着剤4が間隙3の内部で適度に膨張して第二の新規平板瓦12と既存平板瓦20とを、間隙3に配置された接着剤4を介して接着することができる。
【0073】
第二の新規平板瓦12には、第二の新規平板瓦12を貫通するピン6が設けられ、このため、第二の新規平板瓦12の位置合わせがされる。ピン6は、第二の新規平板瓦12の所定位置に、軒棟方向と直交する方向に並んで、複数設けられる。第二の新規平板瓦12を第一の新規平板瓦11上に配置する際に、ピン6の先端部が第一の新規平板瓦11の棟側端部と接するようにする。これにより、第二の新規平板瓦12のピン6を設けた位置と第一の新規平板瓦11の棟側端部を一致させ、瓦の位置合わせを容易に行うことができ、更に、屋根の勾配が急である場合に、第二の新規平板瓦12が滑り落ちることを防ぐことができる。
【0074】
ピン6によって位置合わせされた第二の新規平板瓦12は、接着剤4によって、接着される。
【0075】
本実施形態では、発泡性の接着剤4の膨張による第二の新規平板瓦12の浮き上がりを抑制するため、
図8と同様に、第一の既存平板瓦21の棟側の上部と第二の既存平板瓦22の軒側の下部との間に、押さえ込み治具7の第二端部72を差し込むと共に、押さえ込み治具7の第一端部71を第二の新規平板瓦12上に押し当て、第二の新規平板瓦12の浮き上がりを抑制する。
【0076】
接着剤4による、第二の新規平板瓦12の接着が完了すると、押さえ込み治具7を取り除く。これらの工程を繰り返すことで、複数の新規平板瓦1が、屋根の軒側から棟側まで多段に葺設される。尚、第二の新規平板瓦12の接着が完了するとピン6を取り除いてもよく、このピン6を他の新規平板瓦1を葺設する際に用いることができる。
【0077】
上記のようにして葺設された新規平板瓦1の軒棟方向と直交する方向に隣設する新規平板瓦1間の突き付け部は、既存平板瓦2の軒棟方向と直交する方向に隣接するいずれの既存平板瓦2間の突き付け部とも重ならないようにすることが好ましい。
【0078】
本実施形態では、第一の調整瓦51の軒棟方向と直交する方向の配置位置が、一段目の既存平板瓦23の配置位置に対して軒棟方向と直交する方向に、既存平板瓦2の働き幅aの1/4だけずらすことにより、全ての新規平板瓦1の軒棟方向と直交す方向の配置位置も、既存平板瓦2の働き幅aの1/4だけずらすことができ、このため、突き付け部同士が重ならないようになっている。
【0079】
新規平板瓦1の突き付け部と、既存平板瓦2の突き付け部が重ならないことにより、屋根の防水性、耐踏み割れ性等を向上することができる。
【0080】
尚、本実施形態では、新規平板瓦1と既存平板瓦2の突き付け部とが既存平板瓦2の働き幅aの1/4だけずれているが、これに限られるものではなく、新規平板瓦1と既存平板瓦2の突き付け部とが重ならないようにすればよい。
【0081】
本実施形態では、第一の調整瓦51及び第二の調整瓦52を固定するために、吊り子8を併用しているが、吊り子8を利用せずに、第一の調整瓦51及び第二の調整瓦52を固定してもよい。例えば、
図6に示す変形例では、第一の調整瓦51が、一段目の既存平板瓦23に、釘510が打込まれて直接.固定される。
【0082】
また、第二の調整瓦52を固定するにあたり、予め第一の調整瓦51及び一段目の既存平板瓦23に下孔520を形成する。第一の調整瓦51の上面に、下孔520を塞ぐ補助シート521を張り付けた後、第二の調整瓦52が配置され、下孔520に対して釘522を打ち込むことにより、第二の調整瓦52が固定される(
図6)。
【0083】
本変形例では、第二の調整瓦52が下孔520形成後に釘522を打ち込むことで固定されるため、一段目の既存平板瓦23に破損が生じにくい。また、下孔520に張り付けた補助シート521により、防水性が確保される。
【0084】
本変形例でも第二の調整瓦52を敷設した後、先の実施形態と同様に、一段目の新規平板瓦13及び、他の新規平板瓦1が順次葺設される。
【0085】
また、本実施形態においては、一段目の既存平板瓦23と一段目の新規平板瓦13との間に、調整瓦5を2枚介在させているが、これに限られるものではない。例えば、本実施形態において、第二の調整瓦52に代えて一段目の新規平板瓦13を用いてもよい。この場合、調整瓦5が1枚のみ介在することになる。