特許第6125958号(P6125958)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6125958フィルムコンデンサ用の導電体蒸着フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6125958
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】フィルムコンデンサ用の導電体蒸着フィルム
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/015 20060101AFI20170424BHJP
   H01G 4/18 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   H01G4/24 321A
   H01G4/24 301F
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-190377(P2013-190377)
(22)【出願日】2013年9月13日
(65)【公開番号】特開2015-56582(P2015-56582A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大崎 明宏
(72)【発明者】
【氏名】島▲崎▼ 洋
【審査官】 田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第97/03452(WO,A1)
【文献】 特開2012−099747(JP,A)
【文献】 特開2005−191463(JP,A)
【文献】 特開2007−201313(JP,A)
【文献】 特開2007−103534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/015
H01G 4/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体フィルム上に、非蒸着スリットによって区画された複数の導電体蒸着セグメントが形成された、フィルムコンデンサ用の導電体蒸着フィルムであって、
前記非蒸着スリットは、前記誘電体フィルムの幅方向に延設された第1の波型曲線パターンと、前記第1の波型曲線パターンを前記誘電体フィルムの長手方向に反転させた第2の波型曲線パターンが、前記誘電体フィルムの長手方向に交互に設けられることで形成され、
前記第1及び第2の波型曲線パターンは、それぞれ、導電体が蒸着された複数のヒューズ部によって途切れ、
前記複数のヒューズ部は、前記第1及び第2の波型曲線パターンを途切れさせる離間距離が最小となる領域の前記波型曲線パターンの幅方向長さが、それぞれ等しくなるように形成され、
前記第1及び第2の波型曲線パターンは、一方のパターンの山部分と他方のパターンの谷部分とが重なるようにして形成されていることを特徴とする、フィルムコンデンサ用の導電体蒸着フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の、フィルムコンデンサ用の導電体蒸着フィルムであって、前記複数のヒューズ部は、それぞれ、前記第1及び第2の波型曲線パターンを途切れさせる離間距離が前記波型曲線パターンの幅方向に亘って同一となるように形成されていることを特徴とする、フィルムコンデンサ用の導電体蒸着フィルム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の、フィルムコンデンサ用の導電体蒸着フィルムであって、
前記第1及び第2の波型曲線パターンは、前記ヒューズ部を境に、上に凸の円弧と下に凸の円弧に分けられ、
前記第1の波型曲線パターンの下に凸の円弧及び前記第2の波型曲線パターンの上に凸の円弧の曲率半径が、前記第1の波型曲線パターンの上に凸の円弧及び前記第2の波型曲線パターンの下に凸の円弧の曲率半径の85%以上115%以下であることを特徴とする、フィルムコンデンサ用の導電体蒸着フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムコンデンサ用の導電体蒸着フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車載オーディオのフィルタ素子等に、フィルムコンデンサが用いられている。フィルムコンデンサは、例えば、誘電体フィルムの片面に導電体を蒸着させた導電体蒸着フィルムを2層積層して用いるものであり、一方の蒸着面に正負どちらかの極を接続し、他方の蒸着面に残りの極を接続する。
【0003】
導電体蒸着フィルムは、導電体領域を複数のセグメントに分割するとともに、隣接するセグメントを導電体のヒューズにて繋ぐことで、自己保安機能が得られることが知られている。誘電体フィルムに欠陥部(欠損部や肉薄部等)が含まれる場合に、当該欠陥部を含むセグメント(欠陥セグメント)に絶縁破壊が生じて電流が集中する。このとき、欠陥セグメントを流れる電流はヒューズを介して隣接するセグメントに流れ込む。大電流がヒューズに流れ込むことで、ジュール熱によってヒューズが溶融、飛散する。これによって欠陥セグメントは隣接するセグメントから切り離され、絶縁破壊を止めることができる。
【0004】
セグメントは、非蒸着領域である非蒸着スリットによって分割される。例えば特許文献1では、図4に示すように、非蒸着スリット100を、第1の波型曲線パターン100Aと、これを反転させた第2の波型曲線パターン100Bから構成している。また、これらの波型曲線パターン100A,100Bの一部に導電体を蒸着させてこれをヒューズ部102としている。さらに、波型曲線パターン100A,100Bが近づく狭隘部104の離間距離dを、ヒューズ部の離間距離dと等しくすることで、狭隘部104にヒューズ機能を持たせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−99747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図4に示すように、波型曲線パターン100に設けたヒューズ部102の離間距離がdである幅Wと、狭隘部104の離間距離がdである長さLとは、異なる場合がある。すなわち、波型曲線パターン100A,100Bがともに曲線形状であることを考慮すると、狭隘部104の離間距離がdとなるのは原理的には一点のみとなり、所定長さだけ離間距離をdに保つことは困難となる。つまり、狭隘部の離間距離がdとなる長さLは、ヒューズ部102の幅Wよりも短くなる。狭隘部104のごく短い区間がジュール熱によって加熱されても周辺に熱が逃げてしまうため、狭隘部104はヒューズ部102よりも導電体が溶融、飛散し難くなる。その結果、欠陥セグメントの分離が遅延または行われず、絶縁破壊を止めることが困難となる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、誘電体フィルム上に、非蒸着スリットによって区画された複数の導電体蒸着セグメントが形成された、フィルムコンデンサ用の導電体蒸着フィルムに関するものである。前記非蒸着スリットは、前記誘電体フィルムの幅方向に延設された第1の波型曲線パターンと、前記第1の波型曲線パターンを前記誘電体フィルムの長手方向に反転させた第2の波型曲線パターンが、前記誘電体フィルムの長手方向に交互に設けられることで形成され、前記第1及び第2の波型曲線パターンは、それぞれ、導電体が蒸着された複数のヒューズ部によって途切れ、前記複数のヒューズ部は、前記第1及び第2の波型曲線パターンを途切れさせる離間距離が最小となる領域の前記波型曲線パターンの幅方向長さが、それぞれ等しくなるように形成され、前記第1及び第2の波型曲線パターンは、一方のパターンの山部分と他方のパターンの谷部分とが重なるようにして形成されている。
【0008】
また、上記発明において、前記複数のヒューズ部は、それぞれ、前記第1及び第2の波型曲線パターンを途切れさせる離間距離が前記波型曲線パターンの幅方向に亘って同一となるように形成されていることが好適である。
【0009】
また、上記発明において、前記第1及び第2の波型曲線パターンは、前記ヒューズ部を境に、上に凸の円弧と下に凸の円弧に分けられ、前記第1の波型曲線パターンの下に凸の円弧及び前記第2の波型曲線パターンの上に凸の円弧の曲率半径が、前記第1の波型曲線パターンの上に凸の円弧及び前記第2の波型曲線パターンの下に凸の円弧の曲率半径の85%以上115%以下であることが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、欠陥セグメントの分離を従来よりも確実に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る導電体蒸着フィルムを例示する図である。
図2】本実施形態に係る導電体蒸着フィルムを用いたフィルムコンデンサを例示する斜視図である。
図3】本実施形態に係る導電体蒸着フィルムのパターン形状を説明する図である。
図4】従来技術に係る導電体蒸着フィルムを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に、本実施形態に係る導電体蒸着フィルム10を例示する。この図では、上段に平面図、下段に側面図を示している。導電体蒸着フィルム10は、誘電体フィルム12を備え、誘電体フィルム12上には、導電体蒸着セグメント14、非蒸着スリット16、メタリコン接続部18、及び非蒸着マージン20が形成されている。
【0013】
誘電体フィルム12は、誘電材料から形成されるシート状の部材である。また、後述するように、フィルムコンデンサ製造の際に、導電体蒸着フィルム10が巻き取られることから、誘電体フィルム12は柔軟性を備えた材料からなることが好適である。例えば、誘電体フィルム12は、ポリプロピレン等の樹脂材料から形成される。
【0014】
メタリコン接続部18は、誘電体フィルム12の幅方向の一端に設けられた導電体蒸着領域である。メタリコン接続部18は、誘電体フィルム12の長手方向に亘って設けられる。図1の下段に示されているように、メタリコン接続部18の膜厚は、導電体蒸着セグメント14の膜厚よりも厚くなるように形成されてよい。メタリコン接続部18を構成する導電体は、アルミ等の金属材料であってよい。
【0015】
非蒸着マージン20は、誘電体フィルム12の幅方向の他端に設けられた非蒸着領域である。非蒸着マージン20は、メタリコン接続部18と同様に、誘電体フィルム12の長手方向に亘って設けられる。
【0016】
図2に示すように、導電体蒸着フィルム10を積層することで、フィルムコンデンサ22が形成される。このとき、一方の層の導電体蒸着フィルム10Aと、他方の層の導電体蒸着フィルム10Bとで、メタリコン接続部18及び非蒸着マージン20の配置が入れ替わっていることが好適である。積層された導電体蒸着フィルム10A,10Bは巻き取られて円筒状となり、その両側面にメタリコン(金属溶射)が施される。これによって一方の側面のメタリコン金属膜と一方の層のメタリコン接続部18が導通し、他方の側面のメタリコン金属膜と他方の層のメタリコン接続部18が導通する。さらに一方のメタリコン金属膜に正負極の一方が接続され、他方に残りの極が接続される。
【0017】
図1に戻り、導電体蒸着セグメント14は、メタリコン接続部18と非蒸着マージン20との間に形成された、導電体蒸着領域である。導電体蒸着セグメント14はメタリコン接続部18と導通するように、メタリコン接続部18と連続的に導電体が蒸着される。導電体蒸着セグメント14を構成する導電体は、メタリコン接続部18と同一材料であってよく、アルミ等の金属材料であってよい。
【0018】
非蒸着スリット16は、それぞれの導電体蒸着セグメント14を区画する。非蒸着スリット16は、誘電体フィルム12上に形成された非蒸着部分である。非蒸着スリット16は、第1の波型曲線パターン24A及び第2の波型曲線パターン24Bが、誘電体フィルム12の長手方向に沿って交互に設けられるようにして形成されている。
【0019】
第1の波型曲線パターン24Aは、誘電体フィルム12の幅方向に延設される。第1の波型曲線パターン24Aは、誘電体フィルム12の幅方向に、円弧を反転させながら交互に並べたような形状であったり、または、正弦波型状であってよい。第1の波型曲線パターン24Aは、メタリコン接続部18から非蒸着マージン20に至るまで延設されていてよい。また、第2の波型曲線パターン24Bは、第1の波型曲線パターン24Aを、誘電体フィルム12の長手方向に反転させた形状となっている。
【0020】
非蒸着スリット16を曲線状に形成することで、導電体蒸着セグメント14の輪郭は曲線形状となる。導電体蒸着セグメント14を矩形状に形成すると、隅部を流れる電流が中央部に比較して少なくなるなど、電流分布の偏りが生じるが、導電体蒸着セグメント14を曲線状に形成することで、このような電流分布の偏りを改善することができる。
【0021】
また、図3に示すように、第1及び第2の波型曲線パターン24A,24Bの形状を微調整するようにしてもよい。第1の波型曲線パターン24Aを例にとると、ヒューズ部26を境にして、紙面から見て上に凸の円弧の曲率半径R1と、下に凸の円弧の曲率半径R2とで、曲率半径を変化させてもよい。例えば、下に凸の円弧の曲率半径R2が、上に凸の円弧の曲率半径R1の85%以上115%以下となっていてもよい。逆に、上に凸の円弧の曲率半径R1が、下に凸の円弧の曲率半径R2の85%以上115%以下となっていてもよい。また、このとき、曲率半径を変更させた第1の波型曲線パターン24Aを反転させて、第2の波型曲線パターン24Bとしてよい。
【0022】
発明者らの実験の結果、上記の範囲内で円弧の曲率半径を変化させても、フィルムコンデンサ22の自己保安機能は、曲率半径を変化させない場合と同等となることが明らかとなった。このように、曲率半径を微調整することで、誘電体フィルム12の幅寸法の変更時などに、この変更に合わせた波型曲線パターンの微調整が可能となり、設計の自由度が向上する。
【0023】
第1及び第2の波型曲線パターン24A,24Bは、それぞれ、導電体が蒸着された複数のヒューズ部26によって途切れている。ヒューズ部26は、波型曲線パターン24A,24Bの、パターンの山部分と谷部分の中間位置に設けられていてよい。図1〜3では、第1の波型曲線パターン24Aに2つのヒューズ部26A,26Bが設けられ、第2の波型曲線パターン24Bに2つのヒューズ部26C,26Dが設けられている。
【0024】
ヒューズ部26A〜26Dは、第1及び第2の波型曲線パターン24A,24Bを途切れさせる離間距離のうち最小離間距離dとなる領域の、波型曲線パターンの幅方向Wの長さが、それぞれ等しくなるように形成されている。例えば、ヒューズ部26A〜26Dは、それぞれ、離間距離dが、波型曲線パターンの幅方向Wに亘って同一となるように形成されていることが好適である。
【0025】
このようにすることで、最小離間距離とされた幅が、どのヒューズ部26A〜26Dでも等しくなり、電流の流れにくさ、言い換えるとヒューズ部の加熱傾向がどのヒューズ部26A〜26Dでも均一となる。このようにすることで、各ヒューズ部の溶断機能(フィルムコンデンサ22の自己保安機能)を均一に保つことが可能となる。
【0026】
また、各ヒューズ部の溶断機能を均一に保つという観点から、本実施形態では、第1及び第2の波型曲線パターン24A,24Bが向かい合う狭隘部を設けていない。つまり、第1及び第2の波型曲線パターン24A,24Bは、一方のパターンの山部分(極大点)と他方のパターンの谷部分(極小点)とが重なるようにして形成されている。上述したように、波型曲線パターン24A,24Bは曲線形状であることから、離間距離を一定幅に設けることは困難となる。そこで本実施形態では、波型曲線パターン同士の間隔を利用したヒューズ部を設けずに、波型曲線パターンの一部を途切れさせるような蒸着パターンのみにて、ヒューズ部を構成している。このようにすることで、ヒューズ部の機能を均一化、安定化することができ、欠陥セグメントの分離を従来よりも確実に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0027】
10 導電体蒸着フィルム、12 誘電体フィルム、14 導電体蒸着セグメント、16 非蒸着スリット、18 メタリコン接続部、20 非蒸着マージン、22 フィルムコンデンサ、24A 第1の波型曲線パターン、24B 第2の波型曲線パターン、26A〜26D ヒューズ部。
図1
図2
図3
図4