特許第6125959号(P6125959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6125959
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】耐摩耗板
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/44 20060101AFI20170424BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20170424BHJP
   F27B 15/06 20060101ALI20170424BHJP
   F23B 40/00 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   F23G5/44 BZAB
   F23G5/44 D
   F27D1/00 D
   F27B15/06
   F23B40/00
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-192182(P2013-192182)
(22)【出願日】2013年9月17日
(65)【公開番号】特開2015-59674(P2015-59674A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513234019
【氏名又は名称】川崎バイオマス発電株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501395960
【氏名又は名称】住友共同電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 功
(72)【発明者】
【氏名】岡 政道
(72)【発明者】
【氏名】村上 弘
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−263636(JP,A)
【文献】 実公昭58−018034(JP,Y2)
【文献】 特開平02−140594(JP,A)
【文献】 特開平10−061917(JP,A)
【文献】 特開2000−146138(JP,A)
【文献】 特開2000−325777(JP,A)
【文献】 実開昭57−046237(JP,U)
【文献】 国際公開第02/035151(WO,A1)
【文献】 米国特許第05829368(US,A)
【文献】 米国特許第05910290(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/44
F23B40/00
F27B15/06
F27D 1/00
F27D 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室に導入される固形物が通過する導入口に設けられる耐摩耗板であって、
前記固形物を斜め下方に搬送する搬送手段における前記燃焼室側の先端部と、前記導入口における前記燃焼室側の端部との間で、前記導入口の下側内周面の耐火物を覆っていることを特徴とする耐摩耗板。
【請求項2】
前記搬送手段のケーシングの前記先端部は、前記導入口に挿入され、
前記ケーシングの前記先端部に固定され、前記固形物の流れの下流側へ延びていることを特徴とする請求項1に記載の耐摩耗板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導入口を通じて導入された固形物を燃焼する燃焼室を備えた燃焼炉の耐摩耗板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送手段によって搬送された固形物を燃焼室内に導入して、導入された固形物を燃焼する燃焼炉がある。以下の特許文献1に記載のガス化炉(燃焼炉)は、ガス化炉に接続された搬送手段としてスクリューフィーダを用いて、ごみ(固形物)を燃焼室内に供給している。
【0003】
また、バイオマス燃料として建築廃材(固形物)などを燃焼室に導入して、導入された建築廃材を燃焼する燃焼炉がある。このような燃焼炉では、燃焼室を形成する炉壁が内側から耐火物によって覆われている。搬送手段によって搬送された固形物は、燃焼室に形成された導入口を通じて燃焼室内に導入されて処理される。燃焼炉の炉壁は、耐火物によって覆われて摩耗環境から保護されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−333116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、搬送手段によって搬送された固形物は、導入口を通じて燃焼室内に導入され、導入口を通過する際に、導入口の内面の耐火物に当たり、耐火物を摩耗させていた。固形物中に、他の物よりも堅い物が混入していると、耐火物の摩耗を進行させることになる。耐火物が摩耗し、炉壁を構成するチューブが露出し損傷するおそれがある。そのため、燃焼炉の運転を停止して耐火物の状態を確認するために内部点検を行ったり、点検結果によっては摩耗した耐火物を補修したりする必要があった。
【0006】
そこで、固形物を導入するための導入口の内面の耐火物の摩耗を防止して、信頼性の向上を図ることが可能な耐摩耗板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、燃焼室に導入される固形物が通過する導入口に設けられる耐摩耗板であって、固形物を斜め下方に搬送する搬送手段における燃焼室側の先端部と、導入口における燃焼室側の端部との間で、導入口の下側内周面の耐火物を覆っている。
【0008】
燃焼室に導入される固形物は搬送手段によって搬送されて、導入口を通じて燃焼室内に導入される。導入口の下側内周面には、耐摩耗板が施工されて、導入口の下側内周面の耐火物は耐摩耗板によって覆われている。このため、搬送手段によって搬送された固形物は耐摩耗板に当たって耐火物が保護されるので、導入口の下側内周面の耐火物の摩耗が防止される。
【0009】
ここで、搬送手段のケーシングの先端部は、導入口に挿入され、耐摩耗板は、ケーシングの先端部に固定され、固形物の流れの下流側へ延びている構成が挙げられる。この構成の耐摩耗板は、搬送手段のケーシングの先端部に固定され、固形物の流れの下流側へ延びているので、耐摩耗板を耐火物や炉壁などに固定する必要がない。燃焼室内の熱により耐摩耗板の温度が上昇して耐摩耗板が伸びても、耐摩耗板を固定するためのアンカーなどによって耐摩耗板の伸びが拘束されず、耐摩耗板に割れが生じるおそれがない。耐摩耗板が熱によって延びても、搬送手段のケーシングの先端部から固形物の流れ方向の下流側に伸びるだけである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、固形物を導入するための導入口の内面の耐火物の摩耗を防止して、信頼性の向上を図ることが可能な耐摩耗板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る燃焼炉の要部を示す概略断面構成図である。
図2図1中の導入口の縦断面図である。
図3図1中の導入口の下側内周部の横断面図である。
図4】導入口の下側内周面に施工された耐摩耗板を燃焼室側から示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明による耐摩耗板の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る燃焼炉の要部を示す概略断面構成図である。燃焼炉1は、例えば発電所に用いられる循環流動床ボイラ100の流動床燃焼炉に適用されるものである。
【0014】
図1に示すように、循環流動床ボイラ100は、上下端を閉じた矩形筒状の燃焼炉(火炉)1を有し、その下部は、下方に行くに従って幅方向(図1の左右方向)に狭まり矩形筒が小さくなる形状とされている。この燃焼炉1は、炉壁2内が燃焼室3とされている。燃焼室3は、炉壁2によって囲まれた領域に形成されている。燃焼炉1は、この燃焼室3に、完全燃焼を促す目的で例えば珪砂等の流動材を予め収容し、燃焼室3の底部に設けた複数の開口4から当該燃焼室3に燃焼空気を導入すると共に外部から燃焼室3の下部に例えばバイオマス燃料(固形物)を導入し、これらを流動させながら流動床を形成しバイオマス燃料を燃焼するものである。バイオマス燃料として、建築廃材を使用することができる。建築廃材には、例えば木材の小片(チップ)が含まれていると共に、建具など金属が異物として混入している。
【0015】
循環流動床ボイラ100では、燃焼炉1の上部のガス出口にサイクロンが接続されている。このサイクロンは、燃焼室3での燃焼反応により生じた燃焼ガス(排ガス)、及び燃焼ガスに随伴される灰や流動材等の粒子を導入し、当該粒子を燃焼ガスから固気分離する。サイクロンの下部と燃焼炉1の下部とは接続され、サイクロンで固気分離した分離粒子は燃焼炉1内の流動床に戻される。分離粒子が分離された排ガスは、排ガス処理設備に供給される。
【0016】
燃焼炉1の炉壁2は、炉壁周方向(図の左右方向)に並設し上下方向に延びる炉壁チューブ(水管)同士を平板状のフィンで連結した所謂メンブレンパネルで構成されている。炉壁2は、燃焼室3の内側から耐火物6によって覆われている。燃焼室3で発生した熱は、炉壁チューブに伝達され、炉壁チューブ内を流れる水を加熱する。加熱により生じたスチームは、発電用タービンに供給されて発電に利用される。
【0017】
耐火物6は、耐火性及び耐熱性を有するものであり、不定形耐火物で成形され炉壁2を覆う耐火ライニングである。耐火物6の厚さは、例えば80mmである。不定形耐火物としては、アルミナセメントなどが配合されたキャスタブル耐火物を適用することができる。
【0018】
燃焼炉1の下部には、燃焼室3内にバイオマス燃料を導入するための導入口7が形成されている。導入口7には、バイオマス燃料を搬送するスクリューコンベヤ(搬送手段)8が接続されている。導入口7は、燃焼炉1の側面に配置され、導入口7の近傍において、炉壁チューブは、導入口7を避けるように湾曲して配置されている。導入口7の中心線方向から見た場合に、導入口7の上方に配置された炉壁チューブは、導入口7の左右何れかに湾曲して導入口7の側方を通り、上下方向において導入口7を通り過ぎたあとで再び湾曲して、導入口7の下方に配置される。
【0019】
図2は、図1中の導入口の縦断面図である。導入口7は、耐火物6に形成された貫通孔であり、燃焼室3の内部とスクリューコンベヤ8とを連通している。導入口7は、燃焼室3の外部から内部へ斜め下方に延びている。また、導入口7の中心線と直交する断面形状は、円形となっている。なお、導入口7の断面形状は、矩形でもよく、その他の形状でもよい。
【0020】
ここで、燃焼炉1は、導入口7の下側内周面7aの耐火物6を覆う耐摩耗板14を備えている。耐摩耗板14は、導入口7の内周面に沿うように湾曲している(図3及び図4参照)。耐摩耗板14は、導入口7の中心線方向に所定の長さを有し、スクリューコンベヤ8のケーシング10の先端から前方へ張り出すように配置されている。なお、耐摩耗板14は、導入口7の下側内周面7aを覆うように配置されていればよく、内周面に沿って湾曲していないものでもよい。
【0021】
耐摩耗板14は、幅方向(導入口7の周方向)の両端部に接続された保持部材15と共に筒状に形成されている。耐摩耗板14及び保持部材15は、周方向の端部同士が例えば溶接によって接合されて筒状に形成されている。耐摩耗板14は、周方向において導入口7の下側部分の1/3程度に配置され、保持部材15は残りの2/3程度を占めている。図2に示されるように、保持部材15は、耐摩耗板14の端部から離れるにつれて、バイオマス燃料の流れ方向に沿う長さが短くなっている。これは、導入口7の燃焼室3側の端部7bの位置に対応している。使用状態において、保持部材15の先端は、燃焼室3内に張り出していないことが好ましい。燃焼室3の下部では流動材がバブリングしているので、保持部材15が燃焼室3に張り出すと、流動材が保持部材15に当たって減耗するおそれがある。
【0022】
耐摩耗板14は、例えばクラッド鋼板であり、クラッド鋼板としてイングプレート(商品名)を用いることができる。耐摩耗板14は、母材と、母材の表面を覆う耐摩耗材とを有する。母材は軟鋼板であり、耐摩耗材は耐摩耗性を有する合金(超耐摩耗合金)である。母材の厚さは、例えば9mmであり、耐摩耗材の厚さは、例えば6mmである。
【0023】
次に、このように構成された燃焼炉1の作用について説明する。
バイオマス燃料は、スクリューコンベヤ8によって搬送されて、導入口7内を通り燃焼室3内に供給される。導入口7内には耐摩耗板14が施工され、耐摩耗板14は、スクリューコンベヤ8の先端部8aから前方に張り出すと共に、導入口7の下側内周面7aに沿って配置されているので、スクリューコンベヤ8の先端部8aから排出されたバイオマス燃料は、耐摩耗板14に当たり耐摩耗板14の裏面側の耐火物6に当たらない。これにより、導入口7の下側内周面7aの耐火物6の摩耗を防止することができる。その結果、耐火物6の損傷を防止することができ、燃焼炉1の点検周期の延長及び修繕費の抑制を図ることができる。
【0024】
ここで、スクリューコンベヤ8の先端部8aは、導入口7内に挿入され、耐摩耗板14は、ケーシング10の先端部に固定されているので、耐摩耗板14を耐火物6や炉壁2に固定する必要がない。そのため、燃焼室3内の熱により耐摩耗板14が伸びても、アンカーなどによって耐摩耗板14の伸びが拘束されず、耐摩耗板14に割れが生じるおそれがない。耐摩耗板14は、熱によって前方に伸び、燃焼室3側の端部7bに接近する位置まで配置されることになる。
【0025】
また、耐摩耗板14は、保持部材15と共に筒状に形成されて、ケーシング10の外管10bの全周に溶接されているので、この接合部において応力集中部をなくして、割れの発生を防止することができる。
【0026】
燃焼炉1では、導入口7内に耐摩耗板14が施工されているので、バイオマス燃料に建具などの金属異物が混入していても、導入口7の下側内周面7aが保護されて耐火物6の損傷が抑制される。これにより、信頼性の向上された燃焼炉1を実現することができる。
【0027】
本発明は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、下記のような種々の変形が可能である。
【0028】
例えば、上記実施形態においては、燃焼対象を熱を発生させる固形物の燃料としているが、例えば廃タイヤがごみ等の焼却目的の廃棄物(固形物)であっても良く、要は、燃料や廃棄物を始めとした燃焼するための原料であればよい。また、このように、燃料に代えて廃タイヤやごみ等の廃棄物を原料として燃焼する場合には、上記スクリューコンベヤ8が燃料に代えて廃棄物を導入口7を通して炉内に供給することになる。
【0029】
また、上記実施形態では、固形物を燃焼室3内に搬送するための搬送手段として、スクリューコンベヤ8を使用しているが、搬送手段は、スクリューコンベヤ8に限定されず、導入口7に連通されたシュート(筒体)などでもよく、その他の搬送手段でもよい。
【0030】
また、上記実施形態では、導入口7は、燃焼炉1の側部に設けられているが、導入口7は、燃焼炉の底部に形成されているものでもよく、天井部に形成されているものでもよい。また、上記実施形態では、導入口7は、燃焼室3側へ斜め下方に傾斜しているが、水平方向に貫通するものでもよく、斜め上方に傾斜するものでもよい。また、導入口7は、その中心線が直線的に配置されるものでもよく、湾曲するものでもよい。
【0031】
また、耐摩耗板14は、導入口7の下側内周面7aのみを覆うように配置されているものでもよく、例えば、全周に配置されているものでもよい。
【0032】
また、上記実施形態では、耐摩耗板14として、クラッド鋼板を用いているが、耐摩耗板14は、母材上に耐摩耗材が溶射されているものでもよく、その他の方法により、母材上に耐摩耗材が配置されているものでもよい。また、耐摩耗板14と耐火物6との間に隙間が形成されていないものでもよい。
【符号の説明】
【0033】
100…循環流動床ボイラ、1…燃焼炉、3…燃焼室、6…耐火物、7…導入口、7a…下側内周面、8…スクリューコンベヤ(搬送手段)、8a…先端部、10…ケーシング、14…耐摩耗板、15…保持部材。
図1
図2
図3
図4