特許第6125965号(P6125965)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6125965p‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6125965
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】p‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/08 20060101AFI20170424BHJP
   C07C 69/86 20060101ALI20170424BHJP
   C08F 18/12 20060101ALI20170424BHJP
   C08F 8/12 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   C07C67/08
   C07C69/86
   C08F18/12
   C08F8/12
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-201956(P2013-201956)
(22)【出願日】2013年9月27日
(65)【公開番号】特開2015-67562(P2015-67562A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000189659
【氏名又は名称】上野製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(72)【発明者】
【氏名】齋尾 大輔
(72)【発明者】
【氏名】谷水 はな
(72)【発明者】
【氏名】山本 貴志
(72)【発明者】
【氏名】大塚 良一
【審査官】 福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−206910(JP,A)
【文献】 特開2013−227258(JP,A)
【文献】 特開平11−292935(JP,A)
【文献】 特開昭59−096113(JP,A)
【文献】 特表2012−513039(JP,A)
【文献】 特開平02−121951(JP,A)
【文献】 Chinese Journal of Polymer Science,2001年,Vol. 19, No. 2,pp. 209-216
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 67/08
C07C 69/86−69/90
C08F 8/12
C08F 18/00−18/24
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)p‐アセトキシ安息香酸を酸塩化物化する工程、
(B)工程(A)で得られた生成物とアリルアルコールを反応させる工程、および
(C)工程(B)で得られた生成物中に含まれるp‐ヒドロキシ安息香酸アリルをアセチル化する工程
を含む、式(I)で表されるp‐アセトキシ安息香酸アリルの製造方法:
【化1】

式(I)

[式中、Acはアセチル基を表す]。
【請求項2】
(D)請求項1に記載の製造方法によって得られたp‐アセトキシ安息香酸アリルを重合する工程、および
(E)工程(D)で得られた重合物を脱アセチル化する工程
を含む、式(II)で表されるp‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーの製造方法:
【化2】

式(II)

[式中、nは、n≧5を満たす整数である]。
【請求項3】
塩基を用いる加水分解によって工程(E)の脱アセチル化を行う、請求項2に記載のp‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い抗菌性を有するp‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活環境において高度な安全性の維持が求められており、様々な用途に、抗菌、防黴性を有するプラスチックが使用されている。例えば、台所用品(まな板、包丁の柄、スポンジ、洗剤ボトル等)、風呂用品(シャワーホース、シャワーヘッド、シャワーカーテン、浴槽、シャンプーボトル等)、繊維製品(合繊、天然繊維、衣類、カーペット、カーテン、皮革等)、家電製品(冷蔵庫、エアコン部品、空調機、加湿器、掃除機等)、更にゴム材、コンテナ、発泡スチロール、食品包装材、履物、文具、玩具、自動車内装材等の製品に抗菌、防黴性を有するプラスチックが使用されている。
【0003】
従来、このような抗菌、防黴性を有する製品は、抗菌剤をプラスチックに混練する、あるいは抗菌剤を分散した塗料を製品表面にコーティングするなどの物理的な方法のほか、抗菌剤を化学的修飾によりプラスチックに導入する、あるいは抗菌性を有するモノマーを重合するなどの化学的方法が用いられている。特に化学的方法では、抗菌成分の溶出が少なく、安全でかつ経時的な抗菌活性の低下が少ないプラスチックが提供される。
【0004】
パラオキシ安息香酸エステル類は従来より抗菌剤として知られている。例えば、特許文献1には、パラオキシ安息香酸エステル類を含有する抗菌性樹脂組成物が記載されている。特許文献1の抗菌性樹脂組成物は、樹脂中にパラオキシ安息香酸エステル類を添加し、混合したものであり、抗菌成分の溶出が避けられない。
【0005】
一方、パラオキシ安息香酸エステル類をポリマー原料として用いると、重合反応の効率が低く、樹脂の生成が困難となる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−237317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高い抗菌性を有するp‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーを効率よく製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、p‐ヒドロキシ安息香酸アリルのポリマー化について鋭意検討した結果、p‐アセトキシ安息香酸アリルを重合した後、脱アセチル化することによって、抗菌性を有するポリマーを効率よく得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
また、本発明者らは、p‐アセトキシ安息香酸を酸塩化物化した後、アリルアルコールと反応させ、さらに副生したp‐ヒドロキシ安息香酸アリルをアセチル化することにより、p‐アセトキシ安息香酸アリルが高い収率で得られることを見出した。
【0010】
すなわち本発明は、(A)p‐アセトキシ安息香酸を酸塩化物化する工程、(B)工程(A)で得られた生成物とアリルアルコールを反応させる工程、および(C)工程(B)で得られた生成物中に含まれるp‐ヒドロキシ安息香酸アリルをアセチル化する工程を含む、式(I)で表されるp‐アセトキシ安息香酸アリルの製造方法を提供する:
【化1】

式(I)

[式中、Acはアセチル基を表す]。
【0011】
また、本発明は、(D)p‐アセトキシ安息香酸アリルを重合する工程、および(E)工程(D)で得られた重合物を脱アセチル化する工程を含む、式(II)で表されるp‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーの製造方法を提供する:
【化2】

式(II)

[式中、nは、n≧5を満たす整数である]。
【0012】
また、本発明は上記製造方法によって得られたp‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーを含む抗菌性樹脂組成物、および該p‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーまたは該抗菌性樹脂組成物を成形して得られる成形品を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のp‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーの製造方法は、モノマーとしてp‐アセトキシ安息香酸アリルを用いることにより、ヒドロキシル基含有モノマーに起因するラジカル重合の阻害が起こらず、高い抗菌性を有するp‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーを効率よく製造することができる。また、該方法においてモノマーとして用いるp‐アセトキシ安息香酸アリルを、本発明のp‐アセトキシ安息香酸アリルの製造方法を用いて製造することにより、p‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーの製造効率をさらに高めることができる。
【0014】
また、本発明の製造方法によって得られたp‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーは、高い抗菌効果を有する。また、その構造より抗菌成分の溶出が少なく、安全でかつ経時的な抗菌活性の低下が少ないものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、p‐アセトキシ安息香酸アリルの製造方法、およびp‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーの製造方法に関する。以下、かかる製造方法における各工程を詳細に説明する。
【0016】
(p‐アセトキシ安息香酸アリルの合成)
本発明のp‐アセトキシ安息香酸アリルの製造方法における工程(A)は、p‐アセトキシ安息香酸を酸塩化物化する工程である。かかる工程に用いるp‐アセトキシ安息香酸は、市販のものであってもよく、また、当業者に知られた方法を用いて製造したものであってもよい。かかる方法としては、例えば、p‐ヒドロキシ安息香酸を、無水酢酸、塩化アセチル、酢酸メチル、N,N‐メチルアセトアミド等のアセチル化剤によりアセチル化してアセトキシ安息香酸を得る方法が挙げられる。
【0017】
工程(A)の酸塩化物化は、p‐アセトキシ安息香酸に塩化チオニル、塩化オキサリル、三塩化リン、五塩化リンなどの塩素化剤を反応させる方法により行うことができる。かかる反応に供するp‐アセトキシ安息香酸と塩素化剤のモル比は、1:1〜1:10であるのが好ましい。
【0018】
かかる反応に際し、触媒としてN,N‐ジメチルホルムアミド(DMF)やピリジンなどの有機塩基を用いることができる。また、溶媒は必ずしも必要ではないが、トルエンやキシレンなどの有機溶媒を用いることができる。
【0019】
反応条件は、酸塩化物化が進行する条件であれば特に制限されないが、窒素気流下または窒素バブリング下において行うのが好ましく、反応温度は50〜100℃、反応時間は1〜10時間であるのが好ましい。
【0020】
酸塩化物化工程終了後、減圧下で溶媒及び副生成物を留去し、得られた酸塩化物を工程(B)のアリルアルコールとの反応に供する。
【0021】
本発明のp‐アセトキシ安息香酸アリルの製造方法における工程(B)は、工程(A)で得られた生成物(p‐アセトキシ安息香酸塩化物)とアリルアルコールを反応させてp‐アセトキシ安息香酸アリルを生成させる工程である。
【0022】
工程(B)の反応に供するp‐アセトキシ安息香酸塩化物とアリルアルコールのモル比は、1:1〜1:10であるのが好ましい。
【0023】
溶媒は必ずしも必要ではないが、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)、DMF、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの有機溶媒を用いることができる。反応条件は、p‐アセトキシ安息香酸塩化物とアリルアルコールとの反応が進行する条件であれば特に制限されないが、窒素気流下、または窒素バブリング下において行うのが好ましく、反応温度は0〜50℃、反応時間は1〜10時間であるのが好ましい。
【0024】
反応終了後は、反応生成物に抽出溶媒を添加し、通常の分液操作によってp‐アセトキシ安息香酸アリルを含む溶媒層を回収することができる。抽出溶媒としては一般的な有機溶媒を用いることができるが、酢酸エチル、ジエチルエーテル等を用いるのが好ましい。
【0025】
なお、p‐アセトキシ安息香酸塩化物とアリルアルコールとの反応によって、p‐アセトキシ安息香酸アリルと共に、少量のp‐ヒドロキシ安息香酸アリルが副生する。そのため、上記工程(B)で得られる生成物中にはp‐アセトキシ安息香酸アリルと少量のp‐ヒドロキシ安息香酸アリルが含まれ得る。
【0026】
本発明のp‐アセトキシ安息香酸アリルの製造方法における工程(C)は、工程(B)で得られた生成物中に含まれるp‐ヒドロキシ安息香酸アリルをアセチル化してp‐アセトキシ安息香酸アリルに変換する工程である。p‐ヒドロキシ安息香酸アリルは、ピリジンやトリエチルアミンなどの塩基および溶媒の存在下、無水酢酸と反応させることによりアセチル化し、p‐アセトキシ安息香酸アリルとすることができる。
【0027】
工程(C)のアセチル化反応に供するp‐ヒドロキシ安息香酸アリルと無水酢酸のモル比は1:2〜1:50であるのが好ましい。反応条件は、アセチル化が進行する条件であれば特に制限されないが、窒素気流下または窒素バブリング下において反応を行うのが好ましく、反応温度は50〜150℃、反応時間は1〜10時間であるのが好ましい。
【0028】
アセチル化反応終了後、上記と同様の分液操作によって、p‐アセトキシ安息香酸アリルを回収することができる。
【0029】
p‐ヒドロキシ安息香酸アリルを重合反応に供すると、ヒドロキシ基がラジカル捕捉剤として作用し、重合反応を阻害するおそれがある。一方、上記工程(A)〜(C)を経て得られる生成物は、実質的にp‐ヒドロキシ安息香酸アリルを含まないものであるため、p‐アセトキシ安息香酸アリルのみを分離回収する操作を要することなく後述の重合反応に供することができる。
【0030】
(重合工程)
本発明のp‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーの製造方法における工程(D)は、p‐アセトキシ安息香酸アリルを重合反応に供する工程である。工程(D)においてモノマーとして用いるp‐アセトキシ安息香酸アリルは、市販のもの、上述した本発明の製造方法によって得られたもの、または当業者に公知の製造方法によって得られたもののいずれであってもよい。p‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーを高い収率で得るためには、上述した本発明の製造方法によって製造されたp‐アセトキシ安息香酸アリルを用いることが好ましい。
【0031】
工程(D)の重合工程は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などの公知の方法により行うことができるが、特に塊状重合および溶液重合により行うことが好ましい。
【0032】
塊状重合は、窒素気流下または窒素バブリング下において、重合開始剤の存在下、溶媒を用いずにモノマーを重合することにより行うことができる。重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイドなどの過酸化物や、2,2‐アゾビスイソブチロニトリル、2,2‐アゾビス‐2,4‐ジメチルバレロニトリルなどのアゾ系化合物を用いることができる。
【0033】
溶液重合は、トルエンや1,4‐ジオキサンなどの溶媒を用いる以外は、塊状重合と同様にして行うことができる。
【0034】
いずれの重合においても、反応温度は50〜150℃、反応時間は1〜50時間であるのが好ましい。
【0035】
重合終了後、ポリマーが不溶かつ、モノマーが可溶な溶媒を添加して、p‐アセトキシ安息香酸アリルポリマーを沈殿させて重合物を回収することができる。ポリマーの沈殿に用い得る溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン等が挙げられる。また、有機溶媒を添加して、分液操作によって重合物を有機層に抽出する方法によりp‐アセトキシ安息香酸アリルポリマーを回収することもできる。かかる抽出に用い得る溶媒としては、酢酸エチル、ジエチルエーテル等が挙げられる。
【0036】
(脱アセチル化工程)
本発明のp‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーの製造方法における工程(E)は、工程(D)で得られた重合物を脱アセチル化してp‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーを得る工程である。工程(E)の脱アセチル化は、例えば塩基を用いる加水分解によって行うことができるが、かかる方法には限定されない。
【0037】
塩基を用いる脱アセチル化は、p‐アセトキシ安息香酸アリルポリマーのモノマー単位に対して、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの塩基を1〜10モル倍添加して反応させることにより行うことができる。
【0038】
反応に際しては、必要によりアセトンやメタノールなどの溶媒を用いてもよい。反応条件は、脱アセチル化が進行する条件であれば特に制限されないが、反応温度は0〜100℃、反応時間は0.5〜5時間であるのが好ましい。
【0039】
脱アセチル化工程終了後は、塩酸などの酸を添加し、p‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーを析出させることにより回収することができる。また、未反応のモノマーが残存している場合は、再沈殿、透析などの公知の精製手段で除去することができる。
【0040】
本発明の製造方法によって得られたp‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーは、該ポリマーを構成する全てのモノマー単位がp‐ヒドロキシ安息香酸エステルの構造を有する。即ち、該ポリマーは、抗菌成分であるp‐ヒドロキシ安息香酸がアリルポリマー鎖に均一に共有結合して存在することにより、菌との接触がより効果的に行われるため抗菌効果が高い。また、該p‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーは抗菌成分が共有結合によって導入されているために、抗菌成分の系外への溶出が少なく、抗菌性の経時的な劣化が少ないものである。さらに、該ポリマーは環境汚染や人体への影響が極めて少なく、生体内で分解されることも無いなど安全性の高いものである。
【0041】
本発明の製造方法によって得られたp‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーは、これを抗菌成分として他の樹脂に混合して抗菌性樹脂組成物を得てもよい。該p‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーと混合し得る他の樹脂は特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ABS樹脂、ナイロン、ポリアセタール、ポリテトラフルオロエチレン、不飽和ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、メラミン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブタジエンゴム、アクリルゴム等を使用することができる。他の樹脂の配合量は、本発明の製造方法によって得られたp‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマー100重量部に対して、5〜300重量部であるのが好ましく、10〜250重量部であるのがより好ましい。
【0042】
本発明はまた、上記の製造方法によって得られたp‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーを成形して得られる成形品を提供する。本発明の製造方法によって得られたp‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーは、そのまま成形用樹脂として用い、射出成形などの公知の成形手段によって成形品とすることができるが、本発明の効果を損なわない範囲で他の成形性樹脂と混合して成形に供しても良い。この場合、他の成形性樹脂としては、抗菌性樹脂組成物を得るためにp‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーと混合し得る他の樹脂として上記したものを用いることができ、他の成形性樹脂100重量部に対して、本発明の製造方法によって得られたp‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーを1〜100重量部混合するのが好ましく、5〜50重量部混合するのがより好ましい。
【0043】
本発明の製造方法によって得られたp‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーは様々な工業用途に使用することができ、例えば、接着剤、化粧品、セラミクス、フィルム、レザー、布、繊維、被覆剤、塗布剤、耐油紙、重合安定剤及び合成スポンジ等の主要成分として使用することができる。これらの各用途に応じて、必要により、成形時に充填材、可塑剤、着色剤、発泡剤、滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、加工安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、難燃剤、離型剤、補強材などの添加剤を加えても良い。
【0044】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
実施例1(p‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーの合成)
p‐アセトキシ安息香酸塩化物とアリルアルコールの反応
窒素置換した1000mlの4つ口フラスコにトルエン225g、DMF3滴およびp‐アセトキシ安息香酸(AcPOB)90.0gを入れ、撹拌して溶解した。次いで、塩化チオニル89.2gを加えて、60℃で120分撹拌した後、減圧下でトルエンを留去し、p‐アセトキシ安息香酸塩化物を得た。このp‐アセトキシ安息香酸塩化物に、あらかじめN−メチル−2−ピロリドン100mlに溶解させたアリルアルコール68mlを0℃で滴下して室温で1時間撹拌した後、反応液を酢酸エチルを入れた分液ロートに移した。この反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて分液した後、さらに飽和塩化ナトリウム水溶液を加えて分液し、水層を廃棄することで未反応のカルボン酸、原料および無機成分を除去した。得られた酢酸エチル層に硫酸ナトリウムを加えて撹拌することで脱水し、ろ過処理後、ろ液を減圧濃縮することにより黄色液体107.2gを得た。
H NMR(400MHz,DMSO‐d)分析により、1.99(s,3H),4.80−4.82(d,J=3.9Hz,2H),5.26−5.29(dd,J=1.2Hz,7.8Hz,1H),5.38−5.43(dd,J=1.2Hz,12.9Hz,1H),6.01−6.04(m,1H)7.29−7.32(d,J=6.6Hz,2H),7.42−7.45(dd,J=4.7Hz,10.4Hz,1H),8.03−8.05(d,6.6Hz,2H)のシグナルを確認し、p‐アセトキシ安息香酸アリルであることを確認した。
また副生成物として、p‐ヒドロキシ安息香酸アリルをH NMRのプロトン比で13mol%確認した。
【0046】
p‐ヒドロキシ安息香酸アリルのアセチル化
窒素置換した500mlの4つ口フラスコに無水酢酸100ml、ピリジン50mlおよび上記で得られた黄色液体107.2gを入れて攪拌した。次いで、80℃に昇温して4時間反応させた後、反応液を酢酸エチルを入れた分液ロートに移した。この反応液に、1規定塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和硫酸銅水溶液、脱イオン水および飽和塩化ナトリウム水溶液を加えて順次分液し、水層を廃棄することで未反応の原料を除去した。得られた酢酸エチル層に硫酸ナトリウムを加えて撹拌することで脱水し、ろ過処理後、ろ液を減圧濃縮することにより黄色液体104.4gを得た。
H NMR(400MHz,DMSO‐d)分析により、2.30(s,3H),4.80−4.82(d,J=3.9Hz,2H),5.26−5.29(dd,J=1.2Hz,7.8Hz,1H),5.38−5.43(dd,J=1.2Hz,12.9Hz,1H),6.01−6.04(m,1H),7.29−7.32(d,J=6.6Hz,2H),8.03−8.05(d,J=6.6Hz,2H)のシグナルを確認し、p‐アセトキシ安息香酸アリルであることを確認した。
【0047】
p‐アセトキシ安息香酸アリルの重合
1000mlの4つ口フラスコに、上記で合成したp‐アセトキシ安息香酸アリル104.4gを入れ、窒素バブリング下、100℃で1時間撹拌した。次いで、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)8gを加え、窒素バブリング下、100℃で4時間反応させた後、再度AIBNを4g加えて5時間反応させ、反応液を酢酸エチルを入れた分液ロートに移した。この反応液に脱イオン水を加えて分液した後、さらに飽和塩化ナトリウム水溶液を加えて分液し、水層を廃棄することで反応生成物を酢酸エチル層に回収した。この反応生成物に硫酸ナトリウムを加えて撹拌することで脱水し、ろ過処理後、ろ液を減圧濃縮することにより黄褐色固体28.2gを得た。
【0048】
p‐アセトキシ安息香酸アリルポリマーの脱アセチル化
1000mlのナスフラスコにアセトン200gおよび上記で得られた黄褐色固体28.2gを入れ、撹拌して溶解した。次いで、30重量%水酸化ナトリウム水溶液200gを0℃で滴下した後、室温に戻して1時間撹拌し、さらに脱イオン水100gを加えて、減圧下でアセトンを留去した。反応液を0℃に保ちながら、15重量%塩酸をpH3になるまで添加して酸析した後、酢酸エチルを入れた分液ロートに移した。この反応液に、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、脱イオン水および飽和塩化ナトリウム水溶液を順次加えて分液し、水層を廃棄することで未反応の原料および無機成分を除去した。得られた酢酸エチル層に硫酸ナトリウムを加えて撹拌することで脱水し、ろ過処理後、減圧下でろ液から酢酸エチルを留去して黄褐色固体を得た。得られた黄褐色固体を、アセトン20mlに溶解させて、24時間透析(SPECTRUM LABORATORIES社製 Spectra/Por(登録商標) Dialysis Membrane MWCO 6−8,000を使用)を三回繰り返した。透析終了後、アセトンを減圧留去した後、真空乾燥して黄褐色固体24.4g(収率29%)を得た。
H NMR(400MHz,DMSO‐d)分析により、0.50−2.38(br,4H),3.78−4.35(br,1H),6.54−6.91(br,2H),7.53−7.90(br,2H),10.08−10.48(br,1H)のシグナルを確認し、p‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーの生成を確認した。
【0049】
比較例1(p‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーの合成)
50mlの三角フラスコに、実施例1と同様に合成したp‐アセトキシ安息香酸アリル1.1gおよびアセトン10gを入れ、撹拌した。次いで、30重量%水酸化ナトリウム水溶液2gを0℃で滴下した後、室温に戻して1時間撹拌し、さらに脱イオン水10gを加えて、減圧下でアセトンを留去した。反応液を0℃に保ちながら、15重量%塩酸をpH3になるまで添加して酸析した後、酢酸エチルを入れた分液ロートに移した。この反応液に、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、脱イオン水および飽和塩化ナトリウム水溶液を順次加えて分液し、水層を廃棄することで未反応の原料および無機成分を除去した。得られた酢酸エチル層に硫酸ナトリウムを加えて撹拌することで脱水し、ろ過処理後、減圧下でろ液から酢酸エチルを留去して黄白色固体(p‐ヒドロキシ安息香酸アリル)0.89gを得た。
50mlの2つ口フラスコにトルエン10mlおよび上記黄白色固体0.89gを入れ、窒素バブリング下、100℃で1時間撹拌した。次いでAIBN0.08gを加え、窒素バブリング下、100℃で4時間反応させ、再度AIBNを0.04g加えて5時間反応させた後、反応液を酢酸エチルを入れた分液ロートに移した。この反応液に脱イオン水を加えて分液した後、さらに飽和塩化ナトリウム水溶液を加えて分液し、水層を廃棄することで反応生成物を酢酸エチル層に回収した。得られた酢酸エチル層を減圧濃縮し、得られた固体0.88gをNMR分析したところ、ピークのブロード化は見られず、原料(p‐ヒドロキシ安息香酸アリル)の定量的な回収が確認された。かかる結果は、p‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーが得られなかったことを意味する。
【0050】
比較例2(安息香酸アリルポリマーの合成)
20mlの2つ口フラスコに、安息香酸アリル8.1gを入れ、窒素バブリング下、100℃で1時間撹拌した。次いで、AIBN0.4gを加え、窒素バブリング下、100℃で4時間反応させ、再度AIBNを0.4g加えて5時間反応させた後、反応液を酢酸エチルを入れた分液ロートに移した。この反応液に脱イオン水を加えて分液した後、さらに飽和塩化ナトリウム水溶液を加えて分液し、水層を廃棄することで生成物を酢酸エチル層に回収した。得られた酢酸エチル層に硫酸ナトリウムを加えて撹拌することで脱水し、ろ過処理後、ろ液を減圧濃縮することにより淡黄色固体を得た。この淡黄色固体を、アセトン20mlに溶解させて、24時間透析(SPECTRUM LABORATORIES社製 Spectra/Por(登録商標) Dialysis Membrane MWCO6−8,000を使用)を三回繰り返した。透析終了後、アセトンを減圧留去した後、真空乾燥して淡黄色固体1.1g(収率14%)を得た。
H NMR(400MHz,DMSO‐d)分析により、0.92−2.22(br,3H),3.82−4.48(br,2H),7.97−8.12(br,5H)のシグナルを確認し、安息香酸アリルポリマーの生成を確認した。
【0051】
実施例1および比較例1で得られた、p‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーの収率を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
本発明の製造方法により、p‐ヒドロキシ安息香酸アリルを重合させる方法よりも高収率で、p‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーを得ることができた。
【0054】
抗菌性試験
実施例1および比較例2で得られたポリマーについて、抗菌性試験を、JIS L 1902:2008(菌液吸収法)に準拠して、以下のようにして実施した。
菌株にはEscherichia coli NBRC 3972及びStaphylococcus aureus NBRC 12732を用いた。菌株を斜面培地(普通寒天培地(日水製薬株式会社製))に1白金耳移植し、35℃で21時間培養した。これを0.05%Tween80を添加した1/20普通ブイヨン培地(栄研化学株式会社製)に懸濁させ、分光光度計にてOD600を測定し、菌濃度を1×10〜3×10個/mlになるよう、調整した。
滅菌済みバイアル瓶に実施例1および比較例2において得られたポリマー粉末0.4gまたは無加工試験粉末(粒状ポリエチレン、Scientific Polymer Products社製)0.4gを入れ、調整した菌液を0.2ml添加した。これらをそれぞれ35℃の恒温器で21時間培養した。
菌液を添加した直後、または21時間培養後のバイアル瓶に、SCDLP培地(栄研化学社製)20mlを加え、キャップを締めて手振りで30回以上振とうし、試験菌を洗い出した。洗い出し液を生理食塩水で希釈し、滅菌済シャーレ2枚に分注した(各々1mlずつ)。それぞれに標準寒天培地(日水製薬株式会社製)15〜20mlを加えて混合し、培地が固まった後35℃で40〜48時間培養した。培養は3連ずつ行った。培養後にコロニー数を測定し、静菌活性値を以下のように算出した。結果を表2に示す。

生菌数の計算
M= Z×R×C
M:生菌数(個)
Z:2枚のシャーレのコロニー数の平均値(個)
R:生理食塩水による希釈倍率
C:洗い出しに用いたSCDLP培地の量(ml)

活性値の計算(静菌活性値Sが2.0以上で抗菌効果ありと判定。)
S= (M−M)−(M−M)≒ M −M
S:静菌活性値
:無加工試験粉末に菌液を添加した直後の生菌数の対数値の平均値
:無加工試験粉末に菌液を添加して21時間培養した後の生菌数の対数値の平均値
:実施例1および比較例2において得られたポリマー粉末に菌液を添加した直後の生菌数の対数値の平均値
:実施例1および比較例2において得られたポリマー粉末に菌液を添加して21時間培養した後の生菌数の対数値の平均値
試験の成立には、対照試験区で増殖値Fが1.0以上であることが必要である。
F= M − M ≧1.0
【0055】
【表2】
【0056】
本発明の製造方法により得られたポリマーは、比較例のポリマーと比べて高い静菌活性値を示した。

本発明の好ましい態様は以下を包含する。
〔1〕(A)p‐アセトキシ安息香酸を酸塩化物化する工程、
(B)工程(A)で得られた生成物とアリルアルコールを反応させる工程、および
(C)工程(B)で得られた生成物中に含まれるp‐ヒドロキシ安息香酸アリルをアセチル化する工程
を含む、式(I)で表されるp‐アセトキシ安息香酸アリルの製造方法:
【化3】

式(I)

[式中、Acはアセチル基を表す]。

〔2〕(D)p‐アセトキシ安息香酸アリルを重合する工程、および
(E)工程(D)で得られた重合物を脱アセチル化する工程
を含む、式(II)で表されるp‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーの製造方法:
【化4】

式(II)

[式中、nは、n≧5を満たす整数である]。

〔3〕 p‐アセトキシ安息香酸アリルが〔1〕に記載の製造方法によって得られたものである、〔2〕に記載のp‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーの製造方法。
〔4〕 塩基を用いる加水分解によって工程(E)の脱アセチル化を行う、〔2〕または〔3〕に記載のp‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーの製造方法。
〔5〕 〔2〕〜〔4〕のいずれかに記載の製造方法によって得られたp‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーを含む抗菌性樹脂組成物。
〔6〕 〔2〕〜〔4〕のいずれかに記載の製造方法によって得られたp‐ヒドロキシ安息香酸アリルポリマーを成形して得られる成形品。
〔7〕 〔5〕に記載の抗菌性樹脂組成物を成形して得られる成形品。