(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明では、便宜上、図示の状態を基準に各構成要素の位置関係を表現する場合があるが、各構成要素の位置関係を限定するものではない。
【0013】
[第1の実施の形態]
図1は第1実施形態に係る吐水管10が用いられる自動水栓100の構成図を示す。自動水栓100は、吐水管10と、電磁弁120と、物体検知センサ130と、制御部140を備える。
【0014】
吐水管10は、洗面台のカウンター11(基体)に基端部20aが固定される吐水管本体20を備える。吐水管本体20は、カウンター11の上面側(一面側)から法線方向に突出するように固定される。カウンター11は、平板状に形成され、後述のボルト50の軸部51を挿通するための取付孔13が形成される。
【0015】
吐水管本体20は、本例では、その中間部が湾曲して逆U字状に形成され、いわゆるグースネック状に形成される。吐水管本体20は、金属材料を素材とする鋳物により構成される。吐水管本体20は、その先端部20bに水を吐き出すための吐水口21が設けられる。吐水管本体20は、その基端部20aから先端部20bにかけて単一の部材により形成される。
【0016】
吐水管本体20の先端部には、センサユニット23と吐水口部材25が取り付けられる。センサユニット23は、制御部140に可撓性のあるセンサケーブル27を介して接続され、物体検知センサ130の発光部と受光部を内蔵する。吐水口部材25は、電磁弁120に可撓性のある給水ホース29を介して接続され、給水ホース29内の給水路121を通じて上水道から供給される水を吐き出す吐水口21となる流出口25aが設けられる。
【0017】
電磁弁120は、吐水管本体20の吐水口21に給水するための給水路121の途中に設置される。電磁弁120は、制御部140による制御のもと、給水路121を開閉する。
【0018】
物体検知センサ130は、本例では、発光部と受光部を有する赤外線式測距センサである。物体検知センサ130は、発光部から投光された光の被検知物からの反射光を受光し、吐水管本体20の吐水口21に対して所定の範囲内にある検知エリア内に人体の手等の被検知物が有るか否かを検知する。物体検知センサ130は、被検知物の検知結果を示す信号をセンサケーブル27を介して制御部140に出力する。
【0019】
制御部140は、本例では、マイコンを搭載した回路基板により構成される。制御部140は、物体検知センサ130からの検知結果を示す出力信号に基づき電磁弁120を開閉するように制御し、吐水管本体20の吐水口21からの給水の有無を切り替える。このとき、電磁弁120は、物体検知センサ130からの出力信号に基づき、吐水管本体20の吐水口21への給水の有無を切り替えるように制御される。なお、制御部140は、コンピュータのCPU、メモリをはじめとする素子や回路を組み合わせて実現されていればよい。
【0020】
図2は吐水管10の固定構造40について吐水管10の正面から見た断面図を示し、
図3はその分解図を示す。固定構造40は、吐水管本体20の他に、ボルト50と、固定ナット60と、固定具70と、締結ナット80を備える。
【0021】
吐水管本体20は、その基端部20a内に被締結部31と突き当て部33が設けられる。被締結部31と突き当て部33は、本実施形態において、吐水管本体20の内周面から径方向内側に突出するように形成され、吐水管本体20と一体成形により設けられる。被締結部31と突き当て部33は、吐水管本体20の軸直交断面において、給水ホース29やセンサケーブル27を挿通可能な挿通空間35が残るように設けられる。
【0022】
被締結部31は、吐水管本体20の軸方向と交差する方向に平行な板状に形成される。被締結部31には、吐水管本体20の軸方向に貫通する切欠孔37が形成される。
【0023】
図4(a)はボルト50を正面側からみた斜視図を示し、(b)は背面側からみた斜視図を示し、(c)は(a)のB−B線断面図を示し、(d)は(a)のC−C線断面図を示す。ボルト50は、軸部51と、頭部53を有する。軸部51は、その上端側(一端側)に設けられる回り止め部55と、回り止め部55より軸部51の下端側(他端側)に設けられる雄ねじ部57と、雄ねじ部57の軸方向の途中位置に設けられる縮径部59とを含む。縮径部59は、雄ねじ部57より縮径して形成される。頭部53は、軸部51の上端側にて軸部51より拡径して形成される。頭部53は、軸部51と一体成形により設けられる。
【0024】
図2に戻り、ボルト50の回り止め部55は被締結部31の切欠孔37に挿通される。回り止め部55は、その外周面にねじ山が設けられていない。ボルト50の雄ねじ部57は、被締結部31の切欠孔37から下端側に突き出た部分に下端側から固定ナット60がねじ込まれる。固定ナット60の締め付けにより、ボルト50の頭部53と固定ナット60の間で被締結部31が挟み込まれ、ボルト50が被締結部31に固定される。ボルト50の雄ねじ部57は、吐水管本体20の基端側の開口部から下端側に突き出た部分がカウンター11の取付孔13に挿通される。
【0025】
固定具70は、カウンター11に対して吐水管本体20と反対側となるカウンター11の下面側に配置される。吐水管本体20と固定具70は、カウンター11を厚さ方向の両側から挟むように配置される。
【0026】
図5(a)は固定具70の斜視図を示し、(b)はその平面図を示し、(c)は
図2のD−D線断面図を示す。固定具70は、平面視にて円形状の截頭錘状に形成され、その上方に向かうにつれて中心軸A1に近づくようなテーパー面70aが外周側に形成される。
【0027】
固定具70には、吐水管本体20の軸方向に貫通する軸孔71と引出孔73が形成される。軸孔71は、固定具70の平面視にて中心軸A1から偏心した位置に形成される。
図2に戻り、ボルト50の雄ねじ部57は、カウンター11の取付孔13から下端側に突き出た部分が固定具70の軸孔71に挿通される。引出孔73は、その貫通方向と交差する方向(
図2では左右方向)に開口するように切り欠いて形成される。固定具70は、引出孔73が形成されることにより平面視にて馬蹄状を呈する。給水ホース29やセンサケーブル27(
図2では省略)は、吐水管本体20内に先端側から基端側にかけて挿通され、カウンター11の取付孔13や固定具70の引出孔73を通してカウンター11の下面側に引き出される。
【0028】
固定具70は、
図3に示すように、下側の金属部材70Aと、上側のゴム等の弾性部材70Bとを上下に重ね合わせ、これらを接着等により固着して一体化した複層構造により構成される。弾性部材70Bは、金属部材70Aの上面を覆うように配置される。固定具70は、弾性部材70Bの軸孔71の内径がボルト50の雄ねじ部57の外径より僅かに小さくなるように形成される。弾性部材70Bは、その軸孔71に挿通されるボルト50の雄ねじ部57と弾性変形を伴い接触し、その弾性変形した部分によりボルト50に対して固定具70が仮保持可能となる。
【0029】
図2に戻り、ボルト50の雄ねじ部57は、固定具70の軸孔71から突き出た部分に下端側から締結ナット80がねじ込まれる。固定具70は、締結ナット80の締め付けにより、被締結部31とボルト50により締結される。これにより、吐水管本体20と固定具70の間でカウンター11が挟み込まれ、吐水管本体20がカウンター11に固定される。このとき、固定具70の弾性部材70Bのテーパー面70aが弾性変形を伴い取付孔13の下側の周縁部に当接する。また、吐水管本体20の基端部20aの開口縁とカウンター11の間には環状のパッキン41が挟み込まれる。
【0030】
図6(a)は
図2のA−A線断面図を示し、(b)は(a)からボルト50の頭部53を省略した図を示す。吐水管本体20の切欠孔37は、ボルト50の軸部51の軸方向と交差する方向に開口するように形成される。切欠孔37は、開口側から奥側に向けて溝状に延びて設けられ、被締結部31の側方に開口するボルト出入口37aと、ボルト出入口37aとは反対側の奥側に設けられる奥底部37bを含む。切欠孔37は、開口側であるボルト出入口37aから奥側である奥底部37bにかけて、ボルト50の回り止め部55を通過可能な大きさに形成される。
【0031】
ボルト50の回り止め部55には、その外周面に一対の係合部56が形成される。係合部56は、軸部51の軸直交断面の外周面に形成される平坦面により形成される。一対の係合部56は、軸部51の中心軸A2を挟んで平坦面が平行に並ぶように形成される。回り止め部55の外周面は、係合部56から周方向にずれた位置にて円弧状に形成される。回り止め部55は、軸部51の中心軸A2から外周面までの径方向長さが周方向で異なる非円形状に形成されることになる。被締結部31の切欠孔37は、回り止め部55の係合部56が切欠孔37の内壁面と周方向に係合可能な大きさに形成される。回り止め部55の係合部56が切欠孔37の内壁面と周方向に係合して、切欠孔37に対する軸部51の相対回転が規制される。
【0032】
吐水管本体20の切欠孔37は、互いに対向する一対の内壁面37c間の幅寸法Wが、開口側のボルト出入口37aから奥底部37bにかけて同じとなるように定められる。これにより、切欠孔37を通してボルト出入口37aから奥底部37bにかけてボルト50の回り止め部55を通過させるとき、切欠孔37の内壁面37cと周方向にボルト50の係合部56が係合してボルト50の回転が規制される。
【0033】
図4に戻り、回り止め部55に設けられる一対の係合部56のうちの一方の係合部56は、軸部51の雄ねじ部57を含む範囲にまで連続して設けられる。雄ねじ部57は、周方向の一部に亘る範囲、つまり、係合部56の設けられる範囲にねじ山が設けられず、それ以外の範囲にねじ山が設けられる。雄ねじ部57は、軸部51の中心軸A2から外周面までの径方向長さが周方向で異なり、軸直交断面が中心軸A2に対して非対称な非円形状に形成されることになる。
図5(c)に示すように、固定具70の軸孔71は雄ねじ部57と嵌合する形状に形成される。雄ねじ部57の係合部56は軸孔71の内壁面と周方向に係合し、固定具70の軸孔71に対するボルト50の軸部51の相対回転が規制される。雄ねじ部57の軸直交断面が中心軸A2に対して非対称に形成されるため、固定具70の軸孔71に雄ねじ部57が嵌合したとき、雄ねじ部57に対する固定具70の周方向の向きが一定となる。よって、雄ねじ部57に対して固定具70の周方向の向きを合わせる作業が不要となり、吐水管本体20の固定作業時の作業性が良好となる。
【0034】
図2に戻り、吐水管本体20の突き当て部33は、吐水管本体20の軸方向と交差する方向に平行な板状に形成される。突き当て部33は、被締結部31と間隔を空けて吐水管本体20に設けられ、ボルト50の上端側の上端面50aに対向する。突き当て部33は、被締結部31より吐水管本体20内の奥側に設けられることになる。突き当て部33は、被締結部31の切欠孔37や切欠孔37との間で、吐水管本体20の軸方向に位置が重なるように設けられる。吐水管本体20の基端側の開口部からボルト50が挿入されるとき、突き当て部33にボルト50の上端部を突き当て可能であり、吐水管本体20の軸方向へのボルト50の変位が規制される。
【0035】
次に、本実施形態に係る吐水管10の固定構造40を用いて吐水管10をカウンター11に固定するための方法を説明する。
【0036】
図7(a)は吐水管本体20にボルト50を固定する作業の途中状態を示す断面図であり、(b)は(a)のD−D線断面図である。まず、ボルト50の下端側を作業員が把持した状態で、吐水管本体20の基端部20aの開口部からボルト50の上端部を挿入する。このとき、吐水管本体20の突き当て部33にボルト50の上端部を突き当てて、吐水管本体20の軸方向にボルト50を位置合せしてもよい。
【0037】
ボルト50の軸部51は、その回り止め部55の周方向の向きを合わせたうえで、被締結部31の切欠孔37にボルト出入口37aから挿入する。ボルト50の軸部51は、切欠孔37の内壁面37cに回り止め部55の係合部56をスライドさせながら奥底部37bに接触するまで移動させる。このとき、切欠孔37の内壁面37cと周方向にボルト50の係合部56が係合してボルト50の回転が規制される。よって、ボルト50の軸部51は、その周方向の向きを一定とした状態のまま、切欠孔37の奥底部37bに接触するまで移動可能となる。このとき、吐水管本体20の突き当て部33にボルト50の上端部を突き当てた状態でボルト50を移動させてもよい。
【0038】
図2に戻り、ボルト50の雄ねじ部57には、被締結部31の切欠孔37から突き出た部分に下端側から固定ナット60がねじ込まれ、固定ナット60の締め付けにより、ボルト50が被締結部31に固定される。
【0039】
ボルト50の雄ねじ部57は、固定ナット60から下端側に突き出た部分をカウンター11の取付孔13に挿通する。このとき、吐水管本体20の基端部20aの開口部から引き出される給水ホース29やセンサケーブル27は、カウンター11の取付孔13を通して下面側に引き出される。
【0040】
ボルト50の雄ねじ部57には、カウンター11の取付孔13から突き出た部分に下端側から固定具70の軸孔71が挿通される。このとき、給水ホース29やセンサケーブル27は引出孔73の開口から引出孔73内に配置できる。
【0041】
ボルト50の雄ねじ部57には、固定具70の軸孔71から突き出た部分に下端側から締結ナット80がねじ込まれ、締結ナット80の締付けにより、吐水管本体20と固定具70の間でカウンター11が挟み込まれ、吐水管本体20がカウンター11に固定される。
【0042】
以上の実施形態に係る吐水管10によれば、被締結部31に形成される切欠孔37にボルト50が挿通されるため、吐水管本体20内に基端側の開口部から奥側に作業員が指等を進入させずに、被締結部31の切欠孔37内にボルト50の軸部51を配置できる。よって、吐水管本体20にボルト50を固定するときの作業性が向上する。
【0043】
また、吐水管本体20内の奥側に作業員が指等を進入させずに作業するための構造として、吐水管本体20を分割等して複数の部材により構成し、吐水管本体20にボルト50を挿入するための開口部を基端部とは別に設けたものが考えられる。この点、本実施形態に係る固定構造40によれば、吐水管本体20を複数の部材により構成しなくともよくなるため、吐水管本体20の外観に複数の部材間の継ぎ目が現われず、吐水管本体20の意匠性が良好となる。
【0044】
また、ボルト50の軸部51の下端側から固定ナット60がねじ込まれるため、吐水管本体20内に基端側の開口部から奥側に指等を進入させずに、ボルト50を被締結部31に固定できる。
【0045】
また、吐水管本体20に突き当て部33が設けられるため、ボルト50の軸部51を切欠孔37内に配置するとき、突き当て部33にボルト50を突き当てて、吐水管本体20の軸方向にボルト50を位置合せできる。また、突き当て部33にボルト50を突き当てた状態でボルト50を移動でき、その作業時の作業性が良好となる。
【0046】
また、被締結部31の切欠孔37や固定具70の軸孔71に対するボルト50の軸部51の相対回転を規制する係合部56が設けられるため、被締結部31とボルト50や固定ナット60、締結ナット80が一体に回転できる。よって、固定ナット60や締結ナット80の緩みが生じ難くなり、固定ナット60や締結ナット80による締め付け力を長期間に亘り発揮できる。また、ボルト50の回り止めのために接着が不要となり、吐水管本体20にボルト50を固定するときの作業性や、吐水管本体20をカウンター11に固定するときの作業性が良好となる。
【0047】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示すにすぎない。また、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
【0048】
吐水管10は、建物、船舶等に設置される設備に用いられてよく、洗面台の他に、キッチン、手洗器、浴室等に用いられてもよい。また、吐水管10が固定される基体としてカウンター11を例示した。この基体は、洗面台やキッチンではカウンターが例示されるが、この他にも、浴室等の設備の外内を区画する壁部材等が含まれる。また、吐水管10は、自動水栓に用いられる場合を例示したが、レバー水栓等の他の水栓に用いられてもよい。
【0049】
吐水管本体20は、その形状についてグースネック状に限定されず、公知の形状に形成されていてもよい。また、吐水管本体20は、単一の部材ではなく複数の部材を組み合わせて構成されてもよい。また、ボルト50の頭部53は、軸部51と一体成形により設けられずに、軸部51にナットをねじ込んで設けられてもよい。
【0050】
また、切欠孔37の幅寸法Wは、切欠孔37の開口側から奥側に向けてボルト50の軸部51を通過させるとき、切欠孔37の内壁面37cと周方向に係合部56が係合してボルト50の回転が規制されるように定められばよい。よって、切欠孔37の幅寸法Wは、ボルト出入口37aから奥底部37bにかけて同じでなくともよく、その途中位置での長さが変化してもよい。
【0051】
また、固定具70は、その形状について馬蹄形に限定されない。また、固定具70は、ナットにより構成されてもよい。