特許第6125989号(P6125989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6125989
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】センサ制御装置およびガス検知システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/419 20060101AFI20170424BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   G01N27/419 327R
   G01N27/416 331
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-265468(P2013-265468)
(22)【出願日】2013年12月24日
(65)【公開番号】特開2015-121466(P2015-121466A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2016年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】樋口 雄三
(72)【発明者】
【氏名】上村 朋典
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008-8667(JP,A)
【文献】 特開昭62-73154(JP,A)
【文献】 特開2006-275628(JP,A)
【文献】 特開2010-54307(JP,A)
【文献】 特開平11-6815(JP,A)
【文献】 特開平8-43347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26−27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ電流に応じて酸素の汲み入れまたは汲み出しを行う酸素ポンプセルを有するガスセンサを制御するセンサ制御装置であって、
前記酸素ポンプセルに通電するポンプ電流をデジタル制御で演算するポンプ電流演算部と、
前記ポンプ電流演算部の演算結果を示すデジタル信号に基づいて、前記酸素ポンプセルに対して通電するポンプ電流を生成するデジタルアナログ変換部と、
前記デジタルアナログ変換部にて生成可能な前記ポンプ電流の最大電流範囲を変更する最大電流範囲変更部と、
を備えることを特徴とするセンサ制御装置。
【請求項2】
前記デジタルアナログ変換部は、外部から供給される参照電圧に応じて前記最大電流範囲が変化する構成であり、
前記最大電流範囲変更部は、前記参照電圧を変更することで前記最大電流範囲を変更すること、
を特徴とする請求項1に記載のセンサ制御装置。
【請求項3】
前記デジタルアナログ変換部は、電気抵抗値が変化する抵抗値変化部を備えており、前記参照電圧が前記抵抗値変化部に印加されて生じる電流を前記ポンプ電流として生成すること、
を特徴とする請求項2に記載のセンサ制御装置。
【請求項4】
前記最大電流範囲変更部は、前記ガスセンサの特性または種類に応じて定められるセンサ情報に基づいて、前記最大電流範囲を変更しており、
前記センサ情報を記憶する記憶部を備えること、
を特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のセンサ制御装置。
【請求項5】
前記ガスセンサは、測定対象ガスに含まれる特定成分に応じた起電力を生じる検知セルを備えており、
前記起電力のアナログ値をデジタル値に変換するアナログデジタル変換部を備えており、
前記ポンプ電流演算部は、前記起電力のデジタル値に基づいて前記ポンプ電流を演算すること、
を特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のセンサ制御装置。
【請求項6】
ポンプ電流に応じて酸素の汲み入れまたは汲み出しを行う酸素ポンプセルを有するガスセンサと、
前記ガスセンサを制御するセンサ制御装置と、
を備えるガス検知システムであって、
前記センサ制御装置として、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のセンサ制御装置を備えること、
を特徴とするガス検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ電流に応じて酸素の汲み入れまたは汲み出しを行う酸素ポンプセルを有するガスセンサを制御するセンサ制御装置、およびガスセンサおよびセンサ制御装置を備えるガス検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポンプ電流に応じて酸素の汲み入れまたは汲み出しを行う酸素ポンプセルを有するガスセンサと、ガスセンサを制御するセンサ制御装置と、を備えるガス検知システムが知られている。
【0003】
ガスセンサの一例としては、酸素ポンプセルを用いて測定対象ガスに含まれる酸素の汲み入れまたは汲み出しを行い、測定対象ガスの酸素濃度が所定の目標濃度になるまでに通電したポンプ電流に基づいて、測定対象ガスに含まれていた酸素濃度を検出するリニアA/Fセンサが挙げられる。また、酸素ポンプセルを有するガスセンサの他の例としては、測定対象ガスに含まれるNOx濃度を検知するNOxセンサが挙げられる。
【0004】
そして、センサ制御装置は、このようなガスセンサのポンプ電流を制御するにあたり様々な演算機能を備える必要があり、他方で、装置の小型化の要求にも応える必要がある。これらを踏まえて、各種制御を行うアナログ回路に代えてデジタル制御部を採用したセンサ制御装置がある。
【0005】
このようなデジタル制御部を採用したセンサ制御装置は、演算結果としてのデジタル値をアナログ電流に変換するためのデジタルアナログ変換部を備えている。デジタルアナログ変換部の一例としては、アナログ値として電流の入出力を行う電流DAC(デジタル・アナログ・コンバータ)が挙げられる。
【0006】
センサ制御装置は、このようなデジタルアナログ変換部を備えることで、デジタル制御部でデジタル制御によりポンプ電流を演算しつつ、ガスセンサのポンプセルに通電するポンプ電流(アナログ値)を制御することが可能となる。
【0007】
また、デジタル制御部は、アナログ回路に比べて小型化できるとともに、アナログ回路に比べて制御定数の変更作業が容易となるため、デジタル制御部を採用したセンサ制御装置は、より多くの種類のガスセンサの制御や多様な特性のガスセンサの制御に適応することが容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−008667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、デジタル制御部の採用により多種類(あるいは、多様な特性)のガスセンサに適応できるセンサ制御装置は、デジタルアナログ変換部での量子化誤差の影響により、センサ最大電流が小さいガスセンサの制御時にポンプ電流の制御精度が低下する可能性がある。
【0010】
つまり、デジタルアナログ変換部により通電可能な最大電流範囲が一定範囲である場合、デジタル制御部を採用したセンサ制御装置においては、装置として通電可能なポンプ電流の最大電流範囲(換言すれば、デジタルアナログ変換部が通電可能な最大電流範囲)は、多種類(あるいは、多様な特性)のガスセンサのうちセンサ最大電流が最大の電流値を考慮して設定される。
【0011】
このようなセンサ制御装置は、センサ最大電流が小さいガスセンサの制御時には、デジタルアナログ変換部の最大レンジよりも狭い範囲でしかポンプ電流を通電しないため、相対的にポンプ電流の制御精度が低下してしまう。
【0012】
例えば、13[bit]のデジタルアナログ変換部をセンサ最大電流が±11.5[mA]のガスセンサに合わせて最大電流範囲を設定した場合、センサ最大電流が±4.0[mA]のガスセンサを制御する際には、実質的に有効なビット数が11〜12[bit]に低下する。
【0013】
ここで、図10に、13[bit]のデジタルアナログ変換部(電流DAC)において最大電流範囲を±11.5[mA]に設定した場合の特性を表した説明図を示す。図10に示すように、±4.0[mA]の範囲内でポンプ電流を出力する場合には、デジタルアナログ変換部の最大レンジ(13[bit])の領域W1に対して半分以下(約3分の1)の領域W2しか使用できないため、実質的に有効なビット数が11〜12[bit]に低下する。
【0014】
つまり、デジタルアナログ変換部により通電可能な最大電流範囲が一定範囲である場合、ガスセンサのセンサ最大電流が小さくなるに従い、ガスセンサのセンサ最大電流に対する1bitあたりの電流値が相対的に大きくなるため、ポンプ電流の精密な制御が難しくなり、ポンプ電流の制御精度が相対的に低下してしまう。
【0015】
そこで、本発明は、デジタル制御を採用してガスセンサを制御するセンサ制御装置において、相対的なポンプ電流の制御精度の低下を抑制できるセンサ制御装置を提供すること、およびそのようなセンサ制御装置を備えるガス検知システムを提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のセンサ制御装置は、ポンプ電流に応じて酸素の汲み入れまたは汲み出しを行う酸素ポンプセルを有するガスセンサを制御するセンサ制御装置であって、酸素ポンプセルに通電するポンプ電流をデジタル制御で演算するポンプ電流演算部と、ポンプ電流演算部の演算結果を示すデジタル信号に基づいて、酸素ポンプセルに対して通電する前記ポンプ電流を生成するデジタルアナログ変換部と、デジタルアナログ変換部にて生成可能なポンプ電流の最大電流範囲を変更する最大電流範囲変更部と、を備えることを特徴とするセンサ制御装置である。
【0017】
センサ制御装置は、最大電流範囲変更部を備えて、デジタルアナログ変換部にて生成可能なポンプ電流の最大電流範囲を変更可能な構成を採ることで、制御対象となるガスセンサの種類や特性に応じてポンプ電流の最大電流範囲を適切な範囲に変更できる。
【0018】
つまり、センサ最大電流が小さいガスセンサの制御時には、デジタルアナログ変換部の最大電流範囲をそのガスセンサのセンサ最大電流を考慮した範囲に変更することで、相対的なポンプ電流の制御精度の低下を抑制できる。
【0019】
よって、本発明のセンサ制御装置によれば、デジタル制御を採用してガスセンサを制御するにあたり、相対的なポンプ電流の制御精度の低下を抑制できる。
なお、デジタルアナログ変換部が酸素ポンプセルに対して通電するポンプ電流は、一方向ではなく双方向(正方向および逆方向の両方向)である。これにより、ポンプ電流の通電方向(正方向、逆方向)に応じて、酸素ポンプセルによる酸素の汲み入れ動作または汲み出し動作を切り替えることができる。
【0020】
次に、本発明のセンサ制御装置においては、デジタルアナログ変換部は、外部から供給される参照電圧に応じて最大電流範囲が変化する構成であり、最大電流範囲変更部は、参照電圧を変更することで最大電流範囲を変更する、という構成を採ることができる。
【0021】
このような構成のセンサ制御装置は、最大電流範囲変更部による参照電圧の変更により、デジタルアナログ変換部における最大電流範囲を任意に変更できる。
次に、本発明のセンサ制御装置においては、デジタルアナログ変換部は、電気抵抗値が変化する抵抗値変化部を備えており、参照電圧が抵抗値変化部に印加されて生じる電流をポンプ電流として生成する、という構成を採ることができる。
【0022】
つまり、このような抵抗値変化部をデジタルアナログ変換部に備えることで、ポンプ電流は、参照電圧が抵抗値変化部に印加されて生じる電流として生成することができる。
次に、本発明のセンサ制御装置においては、最大電流範囲変更部は、ガスセンサの特性または種類に応じて定められるセンサ情報に基づいて、最大電流範囲を変更しており、センサ情報を記憶する記憶部を備える、という構成を採ることができる。
【0023】
このようにガスセンサの特性または種類に応じてセンサ情報を定めることで、ガスセンサの特性または種類に応じた適切なポンプ電流の最大電流範囲を設定できる。
また、記憶部にセンサ情報を記憶する構成を採ることで、制御対象のガスセンサに応じて記憶部の記憶内容(センサ情報)を変更できる。
【0024】
これにより、本発明のセンサ制御装置は、多種類のガスセンサや多様な特性を有するガスセンサに適応できるとともに、相対的なポンプ電流の制御精度の低下を抑制できる。
次に、本発明のセンサ制御装置においては、ガスセンサは、測定対象ガスに含まれる特定成分に応じた起電力を生じる検知セルを備えてもよい。そして、センサ制御装置は、前記起電力のアナログ値をデジタル値に変換するアナログデジタル変換部を備えており、ポンプ電流演算部は、前記起電力のデジタル値に基づいてポンプ電流を演算する、という構成を採ることができる。
【0025】
このように酸素ポンプセルに加えて検知セルを備えるガスセンサは、酸素ポンプセルのみを備えるガスセンサに比べて、ガス検知の精度が向上する。
そして、アナログデジタル変換部を備えて、ポンプ電流演算部が起電力に基づいてポンプ電流を演算するセンサ制御装置は、酸素ポンプセルおよび検知セルを備えるガスセンサを制御できる。
【0026】
よって、本発明のセンサ制御装置は、酸素ポンプセルおよび検知セルを備えるガスセンサを制御でき、ガス検知の精度を向上できる。
本発明のガス検知システムは、ポンプ電流に応じて酸素の汲み入れまたは汲み出しを行う酸素ポンプセルを有するガスセンサと、ガスセンサを制御するセンサ制御装置と、を備えるガス検知システムであって、センサ制御装置として、上述のセンサ制御装置を備えること、を特徴とするガス検知システムである。
【0027】
このガス検知システムは、上述のセンサ制御装置を備えることから、上述したセンサ制御装置と同様に、センサ最大電流が小さいガスセンサの制御時には、デジタルアナログ変換部にて生成可能な最大電流範囲をそのガスセンサのセンサ最大電流を考慮した範囲に変更することで、相対的なポンプ電流の制御精度の低下を抑制できる。
【0028】
よって、本発明のガス検知システムによれば、デジタル制御を採用してガスセンサを制御するにあたり、相対的なポンプ電流の制御精度の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】ガス検知システム1の全体構成図である。
図2】電流DA変換部35の全体構成図である。
図3】電流DA変換部35におけるDAC制御信号S1とポンプ電流IPとの相関関係を表した説明図である。
図4】劣化補正処理の処理内容を表したフローチャートである。
図5】第2実施形態の第2ガス検知システム101の全体構成図である。
図6】第2電流DA変換部135に備えられる第2正方向通電部155の全体構成図である。
図7】第2電流DA変換部135に備えられる第2逆方向通電部157の全体構成図である。
図8】第4実施形態の第4ガス検知システム201の全体構成図である。
図9】第5実施形態の第5ガス検知システム301の全体構成図である。
図10】デジタルアナログ変換部(電流DAC)の特性を表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
尚、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
【0031】
[1.第1実施形態]
[1−1.全体構成]
図1は、本発明が適用された実施形態としてのガス検知システム1の全体構成図である。
【0032】
ガス検知システム1は、例えば、内燃機関の排気ガス中の特定ガス(本実施形態では、酸素)を検出する用途に用いられる。
ガス検知システム1は、酸素を検出するガスセンサ8と、ガスセンサ8を制御するセンサ制御装置2と、を備えている。ガス検知システム1は、検出した酸素濃度をエンジン制御装置9に通知する。
【0033】
エンジン制御装置9は、内燃機関を制御するための各種制御処理を実行するマイクロコントローラであり、各種制御処理の1つとして、ガス検知システム1で検出した酸素濃度を用いて内燃機関の空燃比制御を行う。
【0034】
ガスセンサ8は、内燃機関(エンジン)の排気管に設けられて、排気ガス中の酸素濃度を広域にわたって検出するものであり、リニアA/Fセンサとも呼ばれる。ガスセンサ8は、ポンプセル14と、起電力セル24と、を備えて構成されている。
【0035】
ポンプセル14は、部分安定化ジルコニア(ZrO)により形成された酸素イオン伝導性の固体電解質体15と、その表面と裏面のそれぞれに主として白金で形成された一対の多孔質電極16と、を有している。起電力セル24は、部分安定化ジルコニア(ZrO)により形成された酸素イオン伝導性の固体電解質体25と、その表面と裏面のそれぞれに主として白金で形成された一対の多孔質電極28と、を有している。
【0036】
なお、ガスセンサ8は、ポンプセル14と起電力セル24との間に、多孔質拡散層(図示省略)を介してガスセンサ8の内部に設けられた測定室(図示省略)を備えている。測定室には、多孔質拡散層を介して測定対象ガス(本実施形態では、排気ガス)が導入される。
【0037】
ガスセンサ8は、起電力セル24を用いて、測定室の酸素濃度(換言すれば、多孔質拡散層を介して測定室内に導入された測定対象ガスの酸素濃度)に応じた起電力(検知電圧Vs)が発生する。具体的には、起電力セル24には、表面の多孔質電極28と裏面の多孔質電極28との酸素濃度差に応じた検知電圧Vsが発生する。
【0038】
そして、起電力セル24の検知電圧Vsが所定の基準値(例えば、450mV程度)となるように、ポンプセル14を用いて、測定室の測定対象ガスに含まれる酸素の汲み入れまたは汲み出しを行う。具体的には、ポンプセル14の表面の多孔質電極16と裏面の多孔質電極16とにポンプ電流Ipを流して、測定室内の酸素の汲み入れまたは汲み出しを行い、測定室の酸素濃度の調整を行う。
【0039】
つまり、ガスセンサ8は、測定室の酸素濃度が所定の目標濃度(例えば、ストイキ)になるように、ポンプセル14に流したポンプ電流Ipに基づいて、測定対象ガスに含まれていた酸素濃度を検出する用途に用いられる。
【0040】
センサ制御装置2は、ガスセンサ8を駆動制御して排気ガス中の酸素濃度を検出し、検出した酸素濃度をSPI通信線44を介してエンジン制御装置9に通知する。
センサ制御装置2は、AD変換部31(アナログデジタル変換部31)、デジタル演算部33、電流DA変換部35(電流デジタルアナログ変換部35)、EEPROM37、RAM39、参照電圧生成部41、SPI制御部43、を備えている。
【0041】
AD変換部31は、ガスセンサ8の起電力セル24に生じる検知電圧Vsのアナログ値をデジタル値に変換し、検知電圧Vsのデジタル値をデジタル演算部33に通知する。なお、起電力セル24の両端に生じる検知電圧Vsは、測定室の酸素濃度に応じて値が変化する。
【0042】
デジタル演算部33は、各種演算制御処理を実行する中央演算処理装置(CPU)であり、演算制御処理の1つとして、起電力セル24の検知電圧Vsが目標制御電圧(本実施形態では、450mV)となるように、ポンプセル14に通電するポンプ電流Ipを制御するポンプ電流制御処理を実行する。
【0043】
具体的には、ポンプ電流制御処理を実行するデジタル演算部33は、目標制御電圧(450mV)と起電力セル24の検知電圧Vsとの偏差ΔVsに基づいてPID演算し、偏差ΔVsが0に近づくように(換言すれば、検知電圧Vsが目標制御電圧に近づくように)電流DA変換部35によってポンプセル14に通電されるポンプ電流Ipを制御する。
【0044】
なお、デジタル演算部33は、ポンプ電流Ipに関する情報を含んだDAC制御信号S1を、電流DA変換部35に対して送信する。DAC制御信号S1は、ポンプ電流Ipの電流値および通電方向(正方向、逆方向)に関する情報を含んだデジタル信号である。
【0045】
電流DA変換部35は、デジタル演算部33で演算されたポンプ電流Ipの情報が含まれるDAC制御信号S1に基づいて、DA変換を行い、ポンプセル14に対してポンプ電流Ipを通電する。なお、電流DA変換部35の詳細について後述する。
【0046】
EEPROM37は、演算制御処理の内容や演算制御処理に用いる各種パラメータなどを記憶する記憶部である。
EEPROM37は、少なくともポンプ電流Ipの最大電流範囲に対応する参照電圧Vrefに関する情報や、製造バラツキの補正に使用する情報などを含むセンサ情報を記憶している。このセンサ情報は、制御対象となるガスセンサ8の種類または特性に応じて定められるものであり、本実施形態では、センサ制御装置2の製造段階でEEPROM37に記憶され、出荷後のフィールドでも書き換えられることがある。
【0047】
RAM39は、各種演算制御処理に用いられる制御データ等を一時的に記憶する記憶部である。
参照電圧生成部41は、RAM39に一時的に記憶された「参照電圧Vrefに関する情報」に基づいて参照電圧Vrefを生成し、生成した参照電圧Vrefを電流DA変換部35に供給する。
【0048】
なお、RAM39に一時的に記憶された「参照電圧Vrefに関する情報」は、デジタル演算部33でのポンプ電流制御処理でも利用される情報である。つまり、ポンプ電流制御処理では、参照電圧Vrefに対応する最大電流範囲での最大電流値をDAC制御信号S1の最大値に対応する電流値として設定した上で、演算結果(ポンプ電流Ipの電流値)と最大電流範囲との比率に基づいて、演算結果(ポンプ電流Ipの電流値)に対応するDAC制御信号S1の値を演算する。
【0049】
このDAC制御信号S1が電流DA変換部35に通知されると、電流DA変換部35は、DAC制御信号S1に基づいて定められるポンプ電流Ipをポンプセル14に対して通電する。
【0050】
SPI制御部43は、シリアル・ペリフェラル・インターフェースによるデータ通信を制御しており、SPI通信線44を介したエンジン制御装置9とのデータ送受信を制御する。
【0051】
[1−2.電流DA変換部35]
次に、電流DA変換部35の構成について説明する。
図2は、電流DA変換部35の全体構成図である。
【0052】
電流DA変換部35は、デジタル信号制御部51と、正方向通電部55と、逆方向通電部57と、参照電圧端子59と、ポンプ電流端子61と、回路電源端子65と、を備えている。
【0053】
デジタル信号制御部51は、デジタル演算部33からのDAC制御信号S1に基づいて、後述する正方向通電部55のスイッチング素子Swa00〜Swa11の開状態(OFF状態)または閉状態(ON状態)と、後述する逆方向通電部57のスイッチング素子Swb00〜Swb11の開状態(OFF状態)または閉状態(ON状態)と、正方向通電部55での通電電流値と、逆方向通電部57での通電電流値と、をそれぞれ設定する。
【0054】
なお、DAC制御信号S1は、13bitのデータであり、そのうち1bitがポンプ電流Ipの通電方向に関する情報として用いられ、12bitがポンプ電流Ipの電流値に関する情報として用いられる。
【0055】
参照電圧端子59は、正方向通電部55および逆方向通電部57に電気的に接続されている。なお、参照電圧端子59は、参照電圧生成部41(図2では図示省略)に接続されており、参照電圧生成部41から参照電圧Vrefが供給される。
【0056】
つまり、参照電圧生成部41から供給される参照電圧Vrefが、参照電圧端子59を介して、正方向通電部55および逆方向通電部57に供給される。
回路電源端子65は、所定の電源電圧Vcを供給する回路電源(図示省略)に接続されており、回路電源から供給される電源電圧Vcを、正方向通電部55および逆方向通電部57に供給するための電力供給経路の一部を構成する。
【0057】
正方向通電部55は、オペアンプOPaと、可変抵抗回路63aと、複数のFET(FETa1、FETa2、FETa3)と、複数の抵抗素子Ra1,Ra2,Ra3、複数のコンデンサCa1,Ca2などを備えている。
【0058】
可変抵抗回路63aは、12個の抵抗素子Raa00〜Raa11と、12個のスイッチング素子Swa00〜Swa11と、を備えている。図2では、抵抗素子Raa00〜Raa11およびスイッチング素子Swa00〜Swa11のうち一部については図示を省略している。
【0059】
12個の抵抗素子Raa00〜Raa11は、各抵抗素子の長さもしくは幅もしくは本数が調整されることで、それぞれの抵抗値が「2のn乗」の比率となるように構成されている。例えば、抵抗素子Raa00の抵抗値が「Rref/(2の0乗)」の場合、抵抗素子Raa01の抵抗値が「Rref/(2の1乗)」であり、抵抗素子Raa02の抵抗値が「Rref/(2の2乗)」であり、抵抗素子Raa11の抵抗値が「Rref/(2の11乗)」である。
【0060】
12個のスイッチング素子Swa00〜Swa11は、DAC制御信号S1に基づいて、それぞれの状態(開状態(OFF状態)または閉状態(ON状態))が設定される。
つまり、可変抵抗回路63aは、DAC制御信号S1に基づいて、正方向通電部55および逆方向通電部57の切替状態、および回路全体としての電気抵抗値を変更可能に構成されている。
【0061】
デジタル信号制御部51の設定に基づいて、正方向通電部55のスイッチング素子Swa00〜Swa11の一部または全てを閉状態(ON状態)とすると共に、逆方向通電部57のスイッチング素子Swb00〜Swb11の全てを開状態(OFF状態)とする(以下、第1状態という)ことで、正方向通電部55では、オペアンプOPaによるフィードバック制御によって参照電圧Vrefが可変抵抗回路63aに印加される。
【0062】
また、正方向通電部55では、FETa1およびFETa2がカレントミラー回路を構成しており、本実施形態において2つのFETは同一サイズのものを使用している。そのため、参照電圧Vrefと可変抵抗回路63aの電気抵抗値とで決定される電流がFETa1に流れるとともに、同じ大きさの電流がFETa2にも流れる。このようにしてFETa2に流れる電流は、ポンプ電流端子61を介してポンプセル14に向かう方向(正方向)のポンプ電流Ipとしてポンプセル14に通電される。
【0063】
つまり、デジタル信号制御部51の設定に基づいて、第1状態とする場合、正方向通電部55によって、正方向のポンプ電流Ipがポンプセル14に対して通電される。
他方、デジタル信号制御部51の設定に基づいて、正方向通電部55のスイッチング素子Swa00〜Swa11の全てを開状態(OFF状態)とすると共に、逆方向通電部57のスイッチング素子Swb00〜Swb11の一部または全てを閉状態(ON状態)とする(以下、第2状態という)場合、オペアンプOPaによるフィードバック制御によって可変抵抗回路63aに印加される電圧が0[V]となり、可変抵抗回路63aには電流が流れない状態となる。つまり、デジタル信号制御部51の設定に基づいて、第2状態とする場合、正方向通電部55によるポンプ電流Ipの通電は行われない。
【0064】
次に、逆方向通電部57は、オペアンプOPbと、可変抵抗回路63bと、複数のFET(FETb1、FETb2、FETb3、FETb4、FETb5)と、複数の抵抗素子Rb1,Rb2,Rb3、複数のコンデンサCb1,Cb2などを備えている。
【0065】
このうち、オペアンプOPb、可変抵抗回路63b、複数の抵抗素子Rb1,Rb2,Rb3、複数のコンデンサCb1,Cb2については、正方向通電部55に備えられるオペアンプOPa、可変抵抗回路63a、複数の抵抗素子Ra1,Ra2,Ra3、複数のコンデンサCa1,Ca2と同様であるため、説明を省略する。
【0066】
デジタル信号制御部51の設定に基づいて、第2状態とすることで、逆方向通電部57では、オペアンプOPbによるフィードバック制御によって参照電圧Vrefが可変抵抗回路63bに印加される。
【0067】
また、逆方向通電部57では、FETb1およびFETb2がカレントミラー回路を構成し、FETb3およびFETb4がカレントミラー回路を構成しており、FETb1とFETb2は同一サイズのものを使用しており、また、FETb3とFETb4も同一サイズのものを使用している。
【0068】
このため、逆方向通電部57では、参照電圧Vrefと可変抵抗回路63bの電気抵抗値とで決定される電流がFETb1に流れるとともに、同じ大きさの電流がFETb2にも流れる。また、FETb2と同じ大きさの電流がFETb3にも流れるとともに、さらに、FETb3と同じ大きさの電流がFETb4にも流れる。このようにしてFETb4に流れる電流は、ポンプセル14からポンプ電流端子61を介してFETb4に向かう方向(逆方向)のポンプ電流Ipとしてポンプセル14に通電される。
【0069】
つまり、デジタル信号制御部51の設定に基づいて、第2状態とする場合、逆方向通電部57によって、逆方向のポンプ電流Ipがポンプセル14に対して通電される。
他方、デジタル信号制御部51の設定に基づいて、第1状態とする場合、オペアンプOPbによるフィードバック制御によって逆方向通電部57の可変抵抗回路63bに印加される電圧が0[V]となり、逆方向通電部57の可変抵抗回路63bには電流が流れない状態となる。つまり、デジタル信号制御部51の設定に基づいて、第1状態とする場合、逆方向通電部57によるポンプ電流Ipの通電は行われない。
【0070】
以上のことから、電流DA変換部35は、デジタル演算部33で演算されたポンプ電流Ipの情報(通電方向、電流値)が含まれるDAC制御信号S1を受信し、受信したデジタル情報についてDA変換を行い、DAC制御信号S1に基づき定められるポンプ電流をポンプセル14に対して通電する。
【0071】
詳細には、電流DA変換部35は、参照電圧生成部41から供給される参照電圧Vrefと可変抵抗回路63a,63bの電気抵抗値とに基づいて、ポンプ電流Ipの電流値を設定する。また、電流DA変換部35は、デジタル信号制御部51の設定に基づいて、第1状態または第2状態のいずれかに切り替えることで、ポンプ電流Ipの通電方向を設定している。
【0072】
なお、本実施形態において各カレントミラーFETは同一サイズのものを使用したが、FETの寸法比率を変えて電流増幅を行っても良い。
[1−3.ポンプ電流Ipの最大電流範囲]
ここで、センサ制御装置2が供給可能なポンプ電流Ipの最大電流範囲を変更することにより、ポンプ電流Ipの制御精度が向上する理由について説明する。
【0073】
図3に、センサ制御装置2の電流DA変換部35におけるDAC制御信号S1(13bitデータ)とポンプ電流Ipとの相関関係を表した説明図を示す。
なお、図3では、ポンプ電流Ipの最大電流範囲が「−11.5〜11.5[mA]」となるように参照電圧Vrefを設定した場合の相関関係を実線aで表しており、ポンプ電流Ipの最大電流範囲が「−4.0〜4.0[mA]」となるように参照電圧Vrefを設定した場合の相関関係を点線bで表している。
【0074】
図3から判るように、DAC制御信号S1が「0x0FFF」よりも大きい場合にはポンプ電流Ipは正方向の通電電流となり、DAC制御信号S1が「0x0FFF」よりも小さい場合にはポンプ電流Ipは逆方向の通電電流となり、DAC制御信号S1が「0x0FFF」の場合にはポンプ電流Ipは通電されない。
【0075】
そして、電流DA変換部35は、DAC制御信号S1が最大値「0x1FFF」の場合または最小値「0x0000」の場合に、ポンプ電流Ipの最大電流範囲のうち最大値または最小値に対応する電流を発生する。
【0076】
このため、ポンプ電流のセンサ最大電流値が4.0[mA]のガスセンサを制御するにあたり、ポンプ電流Ipの最大電流範囲が「−11.5〜11.5[mA]」に設定されているセンサ制御装置2を用いる場合には、DAC制御信号S1の1bitあたりに相当するポンプ電流Ipの大きさ(分解能)が2.8[μA]となる。
【0077】
これに対して、ポンプ電流Ipの最大電流範囲が「−4.0〜4.0[mA]」に設定されているセンサ制御装置2を用いて、ポンプ電流のセンサ最大電流値が4.0[mA]のガスセンサを制御する場合、DAC制御信号S1の1bitあたりに相当するポンプ電流Ipの大きさ(分解能)が0.98[μA]となる。
【0078】
つまり、センサ制御装置2が供給可能なポンプ電流Ipの最大電流範囲の上限値が、ガスセンサのセンサ最大電流値よりも大きく設定されている場合には、DAC制御信号S1の1bitあたりに相当するポンプ電流Ipの大きさ(分解能)が大きくなり、ポンプ電流Ipの制御精度が相対的に低下する。
【0079】
これに対して、センサ制御装置2が供給可能なポンプ電流Ipの最大電流範囲を、ガスセンサのセンサ最大電流値に応じて可能な範囲で小さく設定することで、DAC制御信号S1の1bitあたりに相当するポンプ電流Ipの大きさ(分解能)を小さくすることができ、ポンプ電流Ipの制御精度を相対的に向上できる。
【0080】
そして、本実施形態のセンサ制御装置2は、ガスセンサ8の種類や特性に応じて、予めEEPROM37での記憶情報(センサ情報のうち、ポンプ電流Ipの最大電流範囲に対応する参照電圧Vrefに関する情報)を適切に設定することで、多種類のガスセンサや多様な特性を有するガスセンサを制御することが可能となる。
【0081】
[1−4.劣化補正処理]
次に、エンジン制御装置9で実行される劣化補正処理について説明する。
なお、劣化補正処理は、経時変化などの影響によるガスセンサ8の劣化状態に応じて、EEPROM37およびRAM39に記憶されているセンサ情報のうち「参照電圧Vrefに関する情報」を書き換えるために実行される。
【0082】
劣化補正処理は、例えば、エンジン制御装置9が外部機器からの補正指令信号を受信すると実行される。なお、補正指令信号は、測定対象ガスの雰囲気が予め定められた劣化補正実施条件(本実施形態では、酸素濃度=16[vol%]で、気圧=100[kPa]、ガスセンサ活性後)を満足する状況下(具体的には、フューエルカット状態)で、エンジン制御装置9に通知される。
【0083】
図4に、劣化補正処理の処理内容を表したフローチャートを示す。
劣化補正処理が起動されると、まず、S110(Sはステップを表す)では、デジタル演算部33で実行されるポンプ電流制御処理での演算結果(DAC制御信号S1)を、SPI制御部43およびSPI通信線44を介して、デジタル演算部33から取得する。つまり、S110では、劣化補正実施条件を満たす環境下におけるポンプ電流制御処理での演算結果(DAC制御信号S1)を、デジタル演算部33から取得する。
【0084】
次のS120では、S110で取得したDAC制御信号S1に基づき算出されるポンプ電流Ip換算値と予め設定された劣化判定基準値との偏差を算出し、その偏差と予め定められたマップあるいは演算式を用いて、ガスセンサ8の検出誤差を演算するとともに、ガスセンサ8の劣化状態を判定する。なお、S120では、DAC制御信号S1に基づいてポンプ電流Ip換算値を算出する処理を併せて実行する。
【0085】
例えば、ポンプ電流Ip換算値が「2.87[mA]」であり、予め設定された劣化判定基準値が「2.90[mA]」である場合には、偏差が「−0.03[mA]」となる。そして、この偏差と予め定められたマップ(あるいは演算式)を用いて、ガスセンサ8の検出誤差(例えば、−1.0[%])を演算する。
【0086】
ガスセンサ8は、自身の劣化状態に応じて検出誤差が生じるため、S120での演算結果である検出誤差は、ガスセンサ8の劣化状態を表している。
次のS130では、S120での演算結果に基づいて、「参照電圧Vrefに関する情報」の補正値を演算する。具体的には、S120での演算結果(ガスセンサ8の検出誤差)と予め定められたマップあるいは演算式を用いて、「参照電圧Vrefに関する情報」の補正値を演算する。
【0087】
次のS140では、S130で演算した「参照電圧Vrefに関する情報」の補正値(例えば、2.7[V])をSPI通信線44を介してセンサ制御装置2に送信する。
そして、「参照電圧Vrefに関する情報」の補正値を受信したSPI制御部43は、RAM39に『「参照電圧Vrefに関する情報」の補正値』を「参照電圧Vrefに関する情報」として書き込む処理(上書きする処理)を実行する。これにより、参照電圧生成部41から電流DA変換部35に供給される参照電圧Vrefが変更されて、電流DA変換部35が供給可能なポンプ電流Ipの最大電流範囲と、DAC制御信号S1の1bitあたりに相当するポンプ電流Ipの大きさ(分解能)と、がガスセンサ8の劣化状態に応じた適切な値に変更される。
【0088】
[1−5.効果]
以上説明したように、本実施形態のガス検知システム1においては、センサ制御装置2は、参照電圧生成部41を備えており、電流DA変換部35におけるポンプ電流Ipの最大電流範囲を変更できる。
【0089】
このような構成を採るセンサ制御装置2は、制御対象となるガスセンサ8の種類や特性に応じてポンプ電流Ipの最大電流範囲を適切な範囲に変更できる。
つまり、センサ最大電流が小さいガスセンサ8の制御時には、電流DA変換部35の最大電流範囲をそのガスセンサ8のセンサ最大電流を考慮した範囲に変更することで、相対的なポンプ電流Ipの制御精度の低下を抑制できる。
【0090】
よって、本実施形態のガス検知システム1によれば、デジタル制御を採用してガスセンサを制御するにあたり、相対的なポンプ電流Ipの制御精度の低下を抑制できる。
また、センサ制御装置2に備えられる電流DA変換部35は、参照電圧生成部41から供給される参照電圧Vrefに応じてポンプ電流Ipの最大電流範囲が変化する構成である。このため、参照電圧生成部41が参照電圧Vrefを変更することで、電流DA変換部35からガスセンサ8のポンプセル14に通電されるポンプ電流Ipの最大電流範囲を任意に変更することできる。
【0091】
また、電流DA変換部35は、デジタル演算部33からのDAC制御信号S1に応じて電気抵抗値が変化する可変抵抗回路63a,63bを備えており、参照電圧Vrefが可変抵抗回路63a,63bに印加されて生じる電流をポンプ電流Ipとしてポンプセル14に通電する構成である。
【0092】
つまり、電流DA変換部35は、可変抵抗回路63a,63bを備えることで、デジタル演算部33で実行されるポンプ電流制御処理の演算結果(DAC制御信号S1)に応じて、自身の電気的特性(電気抵抗値)を変更できる。そして、ポンプ電流Ipは、参照電圧Vrefが可変抵抗回路63a,63bに印加されて生じる電流であるため、デジタル演算部33の演算結果に応じた任意の値となりうる。
【0093】
これにより、電流DA変換部35は、デジタル演算部33の演算結果に応じたポンプ電流Ipをポンプセル14に対して通電できる。
センサ制御装置2においては、EEPROM37は、ポンプ電流Ipの最大電流範囲に対応する参照電圧Vrefに関する情報などを含むセンサ情報を記憶している。このセンサ情報は、制御対象となるガスセンサ8の種類や特性に応じて定められるものであり、センサ制御装置2の製造段階でEEPROM37に記憶される。
【0094】
このようにガスセンサ8の種類や特性に応じて参照電圧Vrefに関する情報を定めておき、その参照電圧Vrefに関する情報をEEPROM37に記憶することで、センサ制御装置2は、ガスセンサ8の種類や特性に応じた適切なポンプ電流Ipの最大電流範囲を設定できる。
【0095】
また、EEPROM37に参照電圧Vrefに関する情報を含むセンサ情報を記憶する構成を採ることで、制御対象のガスセンサ8に応じてEEPROM37の記憶内容(参照電圧Vrefに関する情報を含むセンサ情報)を変更できる。
【0096】
これにより、本実施形態のセンサ制御装置2は、多種類のガスセンサや多様な特性を有するガスセンサに適応できるとともに、相対的なポンプ電流Ipの制御精度の低下を抑制できる。
【0097】
[1−6.特許請求の範囲との対応関係]
ここで、特許請求の範囲と本実施形態とにおける文言の対応関係について説明する。
内燃機関の排気ガスが測定対象ガスの一例に相当し、酸素が特定ガスの一例に相当し、ポンプセル14が酸素ポンプセルの一例に相当し、起電力セル24が検知セルの一例に相当する。
【0098】
また、デジタル演算部33がポンプ電流演算部の一例に相当し、電流DA変換部35がデジタルアナログ変換部の一例に相当し、参照電圧生成部41が最大電流範囲変更部の一例に相当し、可変抵抗回路63a,63bが抵抗値変化部の一例に相当し、EEPROM37およびRAM39が記憶部の一例に相当し、「参照電圧Vrefに関する情報」がセンサ情報の一例に相当し、AD変換部31がアナログデジタル変換部の一例に相当する。
【0099】
[2.第2実施形態]
第2実施形態として、ポンプ電流Ipの最大電流範囲に関する情報に関して、複数種類のガスセンサにそれぞれ対応した複数の情報がEEPROM37に記憶されており、複数の情報の中から選択される1つの情報を用いてポンプ電流を制御する第2センサ制御装置102を備える第2ガス検知システム101について説明する。
【0100】
なお、以下の説明では、第2実施形態の構成のうち第1実施形態と同様の構成については、第1実施形態と同一を付して説明を省略し、第2実施形態の構成のうち第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0101】
図5は、第2実施形態の第2ガス検知システム101の全体構成図である。
第2実施形態の第2センサ制御装置102は、第1実施形態のセンサ制御装置2に対してセレクタ部40が追加された構成である。
【0102】
EEPROM37は、ポンプ電流Ipの最大電流範囲に対応する参照電圧Vrefに関する情報に関して、複数種類のガスセンサにそれぞれ対応した複数の情報を記憶している。例えば、種類Aおよび種類Bの2種類のガスセンサに関する情報を記憶している場合、種類Aのガスセンサの参照電圧Vrefに関する情報(3.0[V])と、種類Bのガスセンサの参照電圧Vrefに関する情報(1.0[V])と、を記憶している。
【0103】
セレクタ部40は、EEPROM37とRAM39との間に設けられて、外部からの選択指令に基づいて、EEPROM37とRAM39との間で送受信される各種情報の選択処理を行う。
【0104】
つまり、セレクタ部40は、SPI制御部43およびSPI通信線44を介してエンジン制御装置9から受信したセンサ種別信号Ssに基づいて、EEPROM37に記憶された複数の情報の中から1つの情報を選択し、選択した情報をRAM39に書き込む処理を実行する。例えば、センサ種別信号Ssの内容が「種類Aの選択指令」である場合には、参照電圧Vrefに関する情報として「種類Aのガスセンサの参照電圧Vrefに関する情報(3.0[V])」をEEPROM37から読み出し、その情報をRAM39に書き込む処理を実行する。
【0105】
参照電圧生成部41は、センサ種別信号Ssに基づいてRAM39に一時的に記憶された「参照電圧Vrefに関する情報」に基づいて参照電圧Vrefを生成し、生成した参照電圧Vrefを電流DA変換部35に供給する。
【0106】
電流DA変換部35は、参照電圧Vrefに基づいてポンプ電流Ipの最大電流範囲が設定される。
このような構成の第2センサ制御装置102は、製造段階でガスセンサ8の種類を1種類に特定する必要が無く、実使用段階において、エンジン制御装置9からの選択指令(センサ種別信号Ss)を受信することで、ガスセンサ8の種類に応じたポンプ電流Ipの最大電流範囲を設定することが可能となる。
【0107】
なお、エンジン制御装置9は、ガスセンサ8の種類を入力可能に構成されており、入力された種類に応じて選択指令(センサ種別信号Ss)を送信するよう構成されている。
よって、第2実施形態の第2センサ制御装置102および第2ガス検知システム101によれば、エンジン制御装置9からの選択指令(センサ種別信号Ss)に基づいて、ガスセンサ8の種類に応じたポンプ電流Ipの最大電流範囲を設定することができ、相対的なポンプ電流Ipの制御精度の低下を抑制できる。
【0108】
[3.第3実施形態]
第3実施形態として、第1実施形態のガス検知システム1における電流DA変換部35を第2電流DA変換部135に置き換えて構成される第3ガス検知システムについて説明する。
【0109】
なお、以下の説明では、第3実施形態の構成のうち第1実施形態と同様の構成については、第1実施形態と同一を付して説明を省略し、第3実施形態の構成のうち第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0110】
第2電流DA変換部135は、図2に示す第1実施形態の電流DA変換部35のうち、正方向通電部55が第2正方向通電部155に置き換えられるとともに、逆方向通電部57が第2逆方向通電部157に置き換えられて構成される。
【0111】
図6は、第2電流DA変換部135に備えられる第2正方向通電部155の全体構成図であり、図7は、第2電流DA変換部135に備えられる第2逆方向通電部157の全体構成図である。
【0112】
図6に示すように、第2正方向通電部155は、オペアンプOPcと、可変電流回路163cと、複数のFET(FETc1、FETc2、FETc3、FETc4)と、複数の抵抗素子Rc11,Rc12,Rc13、複数のコンデンサCc11,Cc12などを備えている。
【0113】
デジタル信号制御部51の設定に基づいて、前述の第1状態とすることで、第2正方向通電部155では、オペアンプOPcによるフィードバック制御によって基準電流Iba1が発生する。なお、基準電流Iba1は、FETc3からFETc4にかけて流れる電流であり、「基準電流Iba1=参照電圧Vref/(抵抗素子Rc13の抵抗値)」の関係が成立する。つまり、基準電流Iba1は、参照電圧Vrefに応じて電流値が変化する。
【0114】
可変電流回路163cは、12個のFETc20〜FETc31と、12個の抵抗素子Rac20〜Rac31と、12個のスイッチング素子Swc20〜Swc31と、を備えている。図6では、FETc20〜FETc31、抵抗素子Rac20〜Rac31、スイッチング素子Swc20〜Swc31のうち一部については図示を省略している。
【0115】
FETc20〜FETc31は、ゲート長は全て同じ寸法であるが、ゲート幅がそれぞれ異なる寸法に調整されており、それぞれのゲート幅が「2のn乗」の比率となるように構成されている。例えば、FETc20のゲート幅が「W×(2の0乗)」の場合、FETc21のゲート幅が「W×(2の1乗)」であり、FETc22のゲート幅が「W×(2の2乗)」であり、FETc31のゲート幅が「W×(2の11乗)」である。なお、FETは、ゲート幅に比例したドレイン電流が流れる。
【0116】
また、FETc20〜FETc31は、それぞれ対応するスイッチング素子Swc20〜Swc31が閉状態(ON状態)になると、それぞれFETc4と同一のゲート電圧が印加される。このため、FETc20〜FETc31は、それぞれ基準電流Iba1に比例すると共にゲート幅に比例したドレイン電流が流れる。
【0117】
12個のスイッチング素子Swc20〜Swc31は、DAC制御信号S1に基づいて、それぞれの状態(開状態(OF状態)または閉状態(ON状態))が設定される。
つまり、可変電流回路163cは、DAC制御信号S1(詳細には、電流値に関する情報)に基づいて、FETc20〜FETc31の全体として通電可能な電流値を変更可能に構成されている。そして、FETc20〜FETc31に通電される合計電流値は、FETc1に通電される電流値と同等となる。
【0118】
なお、FETc20〜FETc31がそれぞれON状態の時のFETc20〜FETc31での電圧降下が、FETc1に流れる電流の制御分解能へ与える影響を低減させるために、抵抗素子Rac20〜Rac31の各抵抗値は、スイッチング素子Swc20〜Swc31のそれぞれのON時抵抗値よりも大きい値で構成されている。
【0119】
上記のことから、デジタル信号制御部51の設定に基づいて、前述の第1状態とすることで、第2正方向通電部155では、参照電圧Vrefに応じて定められる基準電流Iba1がFETc4に通電される。そして、可変電流回路163cでは、基準電流Iba1に比例すると共にDAC制御信号S1(詳細には、電流値に関する情報)に基づき定められる電流が、FETc20〜FETc31のそれぞれに通電されると共に、FETc1に通電される。
【0120】
つまり、デジタル信号制御部51の設定に基づいて、前述の第1状態とすることで、第2正方向通電部155では、参照電圧VrefおよびDAC制御信号S1に応じて定められる電流が、FETc1に通電される。
【0121】
また、第2正方向通電部155では、FETc1およびFETc2がカレントミラー回路を構成しており、本実施形態において2つのFETは同一サイズのものを使用している。そのため、FETc1に流れる電流と同じ大きさの電流がFETc2にも流れる。このようにしてFETc2に流れる電流は、ポンプ電流端子61を介してポンプセル14に向かう方向(正方向)のポンプ電流Ipとしてポンプセル14に通電される。
【0122】
つまり、デジタル信号制御部51の設定に基づいて、前述の第1状態とする場合、第2正方向通電部155によって、正方向のポンプ電流Ipがポンプセル14に対して通電される。
【0123】
他方、デジタル信号制御部51の設定に基づいて、前述の第2状態とする場合、オペアンプOPcのフィードバック制御による基準電流Iba1が0[A]となり、基準電流Iba1が発生しない状態となる。つまり、参照電圧Vrefが第2正方向通電部155に供給されない場合、第2正方向通電部155によるポンプ電流Ipの通電は行われない。
【0124】
次に、図7に示すように、第2逆方向通電部157は、オペアンプOPdと、可変電流回路163dと、複数のFET(FETd1、FETd2、FETd3、FETd4、FETd5、FETd6)と、複数の抵抗素子Rd11,Rd12,Rd13、複数のコンデンサCd11,Cd12などを備えている。
【0125】
このうち、オペアンプOPd、可変電流回路163d、複数の抵抗素子Rd11,Rd12,Rd13、複数のコンデンサCd11,Cd12については、第2正方向通電部155に備えられるオペアンプOPc、可変電流回路163c、複数の抵抗素子Rc11,Rc12,Rc13、複数のコンデンサCc11,Cc12と同様であるため、説明を省略する。
【0126】
デジタル信号制御部51の設定に基づいて、前述の第2状態とすることで、第2逆方向通電部157では、オペアンプOPdによるフィードバック制御によって第2基準電流Iba2が発生する。なお、第2基準電流Iba2は、FETd5からFETd6にかけて流れる電流であり、「第2基準電流Iba2=参照電圧Vref/(抵抗素子Rd13の抵抗値)」の関係が成立する。つまり、第2基準電流Iba2は、参照電圧Vrefに応じて電流値が変化する。
【0127】
そして、可変電流回路163dでは、第2基準電流Iba2に比例すると共にDAC制御信号S1(詳細には、電流値に関する情報)に基づき定められる電流が、FETd20〜FETd31のそれぞれに通電されると共に、FETd1に通電される。
【0128】
つまり、デジタル信号制御部51の設定に基づいて、前述の第2状態とすることで、第2逆方向通電部157では、参照電圧VrefおよびDAC制御信号S1に応じて定められる電流が、FETd1に通電される。
【0129】
また、第2逆方向通電部157では、FETd1およびFETd2がカレントミラー回路を構成し、FETd3およびFETd4がカレントミラー回路を構成しており、FETd1とFETd2は同一サイズのものを使用しており、また、FETd3とFETd4も同一サイズのものを使用している。
【0130】
このため、第2逆方向通電部157では、参照電圧VrefおよびDAC制御信号S1に応じて定められる電流が、FETd1に通電されるとともに、同じ大きさの電流がFETd2にも流れる。また、FETd2と同じ大きさの電流がFETd3にも流れるとともに、さらに、FETd3と同じ大きさの電流がFETd4にも流れる。このようにしてFETd4に流れる電流は、ポンプセル14からポンプ電流端子61を介してFETd4に向かう方向(逆方向)のポンプ電流Ipとしてポンプセル14に通電される。
【0131】
つまり、デジタル信号制御部51の設定に基づいて、前述の第2状態とする場合、第2逆方向通電部157によって、逆方向のポンプ電流Ipがポンプセル14に対して通電される。
【0132】
他方、デジタル信号制御部51の設定に基づいて、前述の第1状態とする場合、オペアンプOPdのフィードバック制御による第2基準電流Iba2が0[A]となり、第2基準電流Iba2が発生しない状態となる。つまり、参照電圧Vrefが第2逆方向通電部157に供給されない場合、第2逆方向通電部157によるポンプ電流Ipの通電は行われない。
【0133】
以上のことから、第2電流DA変換部135は、デジタル演算部33で演算されたポンプ電流Ipの情報(通電方向、電流値)が含まれるDAC制御信号S1を受信し、受信したデジタル情報についてDA変換を行い、DAC制御信号S1に基づき定められるポンプ電流をポンプセル14に対して通電する。
【0134】
そして、第2電流DA変換部135は、参照電圧生成部41から供給される参照電圧Vrefとデジタル演算部33からのDAC制御信号S1とに基づいて、ポンプ電流Ipの電流値を設定する。また、第2電流DA変換部135は、デジタル信号制御部51の設定に基づいて、第1状態または第2状態のいずれかに切り替えることで、ポンプ電流Ipの通電方向を設定している。
【0135】
このような構成の第2電流DA変換部135は、第1実施形態の電流DA変換部35の代わりとして利用できる。
ここで、特許請求の範囲と本実施形態とにおける文言の対応関係について説明する。
【0136】
第2電流DA変換部135がデジタルアナログ変換部の一例に相当する。
[4.他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0137】
例えば、上記の各実施形態では、センサ制御装置とエンジン制御装置との間における通信方法として、シリアル・ペリフェラル・インターフェースによるデータ通信方法を採用しているが、その他のデータ通信方法を採用しても良い。一例としては、CAN通信(Controller Area Network 通信)による通信方法が挙げられる。
【0138】
第1実施形態のガス検知システム1におけるSPI制御部43およびSPI通信線44をそれぞれCAN制御部143およびCAN通信線144に置き換えて構成した第4実施形態の第4ガス検知システム201の全体構成図を、図8に示す。なお、第4実施形態の第4ガス検知システム201に備えられるセンサ制御装置は、第4センサ制御装置202である。
【0139】
また、第2実施形態の第2ガス検知システム101におけるSPI制御部43およびSPI通信線44をそれぞれCAN制御部143およびCAN通信線144に置き換えて構成した第5実施形態の第5ガス検知システム301の全体構成図を、図9に示す。なお、第5実施形態の第5ガス検知システム301に備えられるセンサ制御装置は、第5センサ制御装置302である。
【0140】
これら第4ガス検知システム201や第5ガス検知システム301は、第1実施形態や第2実施形態と同様に、デジタル制御を採用してガスセンサを制御するにあたり、相対的なポンプ電流Ipの制御精度の低下を抑制できる。
【0141】
次に、ガスセンサは、酸素を検知するためのガスセンサに限られることはなく、酸素の汲み入れまたは汲み出しを行う酸素ポンプセルを備えるものであればよく、例えば、NOxを検知するためのNOxセンサであってもよい。また、起電力セル(検知セル)を備えることなく、酸素ポンプセルのみで酸素検知を行う構成のガスセンサであっても良い。
【0142】
次に、参照電圧生成部41は、「参照電圧Vrefに関する情報」に代えて、「ポンプセルのセンサ最大電流に関する情報」や「センサ最大電流に対応するポンプ電流Ipの最大電流範囲に関する情報」をRAM39から読み出して、その情報に基づく演算処理により参照電圧Vrefを演算して、演算結果に基づいて参照電圧Vrefを生成してもよい。
【0143】
次に、第2実施形態は、ポンプ電流Ipの最大電流範囲に対応する参照電圧Vrefに関する情報に関して、複数種類のガスセンサにそれぞれ対応した複数の情報をEEPROM37に記憶する構成であるが、複数の情報は「複数種類のガスセンサに関する情報」に限られることはない。例えば、複数の情報として、「同一種類のガスセンサにおける劣化状態に関する情報」や「同一種類のガスセンサにおける個体差に関する情報」などをEEPROM37に記憶する構成であってもよい。
【0144】
つまり、複数の情報として「同一種類のガスセンサにおける劣化状態に関する情報」を記憶する場合には、ガスセンサの劣化状態に応じて参照電圧Vrefを変更することで、ポンプ電流Ipの最大電流範囲をガスセンサの劣化状態に応じた範囲に設定することが可能となる。これにより、長期間にわたりガス検知を行う用途においても、ガスセンサの劣化に伴うポンプ電流Ipの制御精度の低下を抑制できる。
【0145】
また、複数の情報として「同一種類のガスセンサにおける個体差に関する情報」を記憶する場合には、ガスセンサの個体差に応じて参照電圧Vrefを変更することで、ポンプ電流Ipの最大電流範囲をガスセンサの個体差に応じた範囲に設定することが可能となる。これにより、個体差によりガスセンサの特性にバラツキがある場合であっても、ガスセンサの個体差に伴うポンプ電流Ipの制御精度の低下を抑制できる。
【符号の説明】
【0146】
1…ガス検知システム、2…センサ制御装置、8…ガスセンサ(酸素センサ)、9…エンジン制御装置、14…ポンプセル、24…起電力セル、31…AD変換部(アナログデジタル変換部)、33…デジタル演算部、35…電流DA変換部(電流デジタルアナログ変換部)、37…EEPROM、39…RAM、40…セレクタ部、41…参照電圧生成部、63a,63b…可変抵抗回路、101…第2ガス検知システム、102…第2センサ制御装置、135…第2電流DA変換部、163c,163d…可変電流回路、201…第4ガス検知システム、202…第4センサ制御装置、301…第5ガス検知システム、302…第5センサ制御装置。
図1
図2
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図9
図10