【文献】
STACHURA, L. T. et al., Blood, 2006, vol.107, no.1, p.87-97
【文献】
CHEN, T. W. et al., Experimental Hematology, 2009, vol.37, p.1330-1339.e5
【文献】
TAKAHASHI, S. et al., Blood, 1998, vol.92, no.2, p.434-42
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は胎児肝臓(FL)および骨髄(BM)由来巨核球の単離および受容マウスへの注入の概略図である。注入のための3つの異なる生成物:単離された野生型(WT)血小板、TPOの存在下で生育したFL細胞から得られた大細胞および小細胞が収集された。これらは、その後、マウスαIIb(mαIIb)の代わりにヒトαIIb(hαIIb)をその血小板表面上にマーカーとして有するマウス内に注入された。ドナー細胞の注入後の異なる時点およびその前に、hαIIb+レシピエントマウスから全血のフローサイメトリー分析が実行された。血液は標識された種−特異的(マウスまたはヒト)抗−αIIb抗体で染色された。
【
図2】
図2は、注入された巨核球およびその結果生体内で生成された血小板の特性評価を示す。
図2Aは小細胞および大細胞の代表的なフィールドを提供する。スケールバー:100μm。
図2Bは、FL小細胞および大細胞のDNA含有量の代表的な分析を提供する。
図2Cおよび2Dは、10
8WT血小板(2C)または10
6FL大細胞(2D)の注入の前後で、レシピエントマウスからのフローサイメトリーを提供するものである。
図2Eおよび2Fは、10
6の注入されたFL大細胞(2E)および10
6の注入された成体BM細胞(2F)のフローサイメトリー割合を提供するものである。WT血小板においてn=5、FL細胞においてn=9、BM研究においてn=5である。
図2Gは注入後、放射線処理された血小板減少マウスにおける血小板増大の割合を提供する。治療群につきn=5である。平均は±SDが示されている。3つの群における初期血小板数(10
8/ml)は、CATCH緩衝液,1.8±0.2;血小板,1.9±0.3;大細胞,1.0±0.2であった。
図2Hは、循環するレシピエントおよび注入された血小板の前方対側方散乱によるサイズ決定を提供する。
図2Iは、P−セレクチン、GPIbαおよびGPIXの表面発現を比較する注入された血小板およびFL由来血小板の代表的なフローサイメトリー分析を提供するものである。
【
図3】
図3は血小板が機能的であること、および、レーザー損傷後、動脈血栓内に取り込まれることができることを示している。
図3A〜Cは、血小板または表示された細胞(細胞の収集物は循環される)の注入後、血栓内に組み込まれる血小板の代表的な画像を提供する。任意で、FL細胞の注入後、ドナーWT血小板は、標識された抗−マウスαIIb Abを使用して検知された。
図3Dは、小細胞注入後、再循環するマウスαIIb+細胞(矢印)を強調する左から右に経時的な静止画を提供する。スケールバー:30μm。
図3Eは、WT血小板またはFL細胞のどちらかの注入後、成長する血栓内に組み込まれるドナー血小板のシミュレーションを提供する。20の動画がグラフにつき評価された。
【
図4】
図4は注入された巨核球およびそれらが血小板を流す臓器分布研究を示す。
図4Aは生理的食塩水またはBrdUで成長した小細胞または大細胞と注入されたhαIIb+マウスからの肺の染色を示す(矢印は染色された核を示す)。
図4Bは肺におけるBrdU−標識された大細胞の動態を示す。
図4Cは生理的食塩水またはBrdUで成長した小細胞または大細胞と注入されたhαIIb+マウスからの脾臓の染色を示す(矢印は染色された核を示す)。スケールバー:200μm。
図4Dは、肺に注入してから30分後の大FL細胞:BrdU標識された核(左)およびmαIIb標識された核(右)を示す。スケールバー:50μm。データは、3つの別々の研究の代表的なものである。
【
図5】
図5は、生体外で成長した巨核球から生成された血小板を流すためメタロプロテナーゼ損傷がないことを示す。WT FL−細胞は、メタロプロテナーゼ阻害剤GM6001(100μM、
図5A)またはTAP−1(10μM、
図5B)のいずれかの存在下において培養で成長し、その後、小細胞および大細胞に単離され、メタロプロテナーゼ阻害剤が非処理由来の血小板で観察された短い半減期が改善されたかどうかを見るためにhαIIb+レシピエントマウスに注入された。N=2、複製において実行された。
【
図6】
図6は、FL−大細胞の注入における眼窩後と尾部静脈の比較を示す。レシピエント動物に注入された〜10
6FL−大細胞のフローサイメトリー割合。治療群につきN=5研究、平均±1標準偏差(SD)が示されている。これらの研究は、血小板を流すことに巨核球の注入部位に影響を及ぼさないことを示している。
【
図7】
図7は、注入されたヒト生体外成長巨核球がマウス内に注入された後も血小板を流したことを示す。
図7Aは、免疫抑制NOD/SCID/インターフェロン−ガンマNSGマウス内に注入されたヒト血小板の経時的グラフを示す。
図7Bは、NSGマウスへの胎児肝臓巨核球の注入後の、ヒト血小板の割合の経時的グラフを提供する。
図7Cは、NSGマウスへのジメチルファスジル(diMF;5μM)、Rho/ROCK1キナーゼ阻害剤、処理されたヒト肝臓巨核球(大細胞)の注入後のヒト血小板の経時的グラフを提供する。
図7Dは、NSGマウスへのCD34+骨髄細胞からのヒト巨核球の注入後のヒト血小板の経時的グラフを提供する。
図7Eは、NSGマウスへのジメチルファスジル(2μM)処理されたヒトCD34+骨髄巨核球(大細胞)の注入後、ヒト血小板の経時的グラフを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述したように、現在の血小板輸血は、その短い貯蔵半減期、質および量の多様性、細菌汚染の高い危険性、および輸血された血小板に阻害を生じる患者の頻度によって制限される。血小板を生体外で発達させるための現在の努力は、非常に制限されているように見受けられ、臨床的に関連した結果ではない。本発明は、十分な血小板(生体外または生体内)、特にレシピエントに注入される生体外で成長した巨核球からの血小板の生成のための組成物および方法を提供する。特定の実施形態において、血小板は哺乳類の造血前駆細胞またはiPS細胞、特にヒト胚性幹細胞(例えばhESC)由来の巨核球に由来するものである。本明細書において、マウスに生体外で生成したマウス巨核球を注入することによって、レシピエント血小板の数がほぼ100倍の増加が従来の発表された結果に対して達成され、それによって、ドナー血小板の臨床的に関連した濃度を達成することがわかった。これらの血小板は、注入された血小板よりもわずかに短い半減期を有するが、サイズ、表面マーカーの発現、および機能において正常である。ヒトの生体外で生成された巨核球の同様の研究において、半減期は、NSGマウス内に注入された人血小板と同程度またはそれよりも良好である。注入された巨核球は、それらの細胞質を流す肺血管床内に捕捉されているように見える。本発明は患者への治療的な送達の方法(例えば血小板または巨核球注入を介する)も提供する。このような方法は、例えば、血管損傷の部位のような治療上の標的とした送達を可能にする。本発明の方法および組成物は、現在の血小板輸血の代わりに使用されることができ、これらは、止血、血栓症、線維素溶解、炎症、血管新生などの治療/阻害/予防のための標的とされた生成物を送達する派生血小板を使用する新しい臨床状況に応用されることができる。本発明の方法は、巨核球および/または血小板の大量生産を可能にするために直ちに拡張可能である。次に、これは、本発明の方法が注入される血小板の標準化を可能にし、それによって、血小板の反応性に対して制御を増加し、および、細菌汚染に関する問題を回避するとともに、血小板輸血への抵抗の発生率を低下させることを意味する。本発明の方法によって生じた血小板は、「新しく」もあり、および、生体内で生成された後、より持続することが可能である。
【0013】
本発明の特定の実施形態において、巨核球および/または血小板は、例えばヒトESおよびiPS細胞のような幹細胞から生成された。本発明の他の実施形態において、巨核球は胎児肝臓または成体骨髄から単離された。
【0014】
本発明の特定の実施形態において、例えばhESCのような造血前駆細胞における造血転写因子GATA−1(例えば遺伝子番号:2623)発現は自己複製不死化巨核球−赤血球前駆細胞(MEP)細胞株を生成するため、(例えばRNAiによって)著しく減少または除去される(例えば、Stachura et al. (2006) Blood 107:87−97を参照)。GATA−1発現は従来の遺伝子ターゲティングによって減少させられることができる(Shivdasani et al.(1997)EMBO J.,16:3965−73)。例えば、GATA1は遺伝子ターゲティング(例えばノックアウト)によって男性のヒトES細胞株H1(NIHコードWA01)から除去されることができる。GATA1がX連鎖遺伝子であるため、ターゲティングの1ラウンドのみが必要とされる。GATA1の発現は、アンチセンスおよび/またはRNAiを使用して調整されることもできる(例えばノックダウン)(Gropp et al. (2007) Cloning Stem Cells 9:339−45)。例えば、GATA−1アンチセンス、siRNAまたはshRNA(小ヘアピンRNA)または同じものを(例えばベクター、特にウイルスベクターを介して)コードする核酸分子は、GATA−1の発現を減少するために幹細胞に送達されることができる。本明細書で説明したように、自己複製MEPは巨核球内における最終的な分化に応じて調整されることができ、そのα−顆粒内に目的タンパク質の高濃度を貯蔵する。
【0015】
GATA−1発現の再誘導(特に天然レベルに近づけるため)は、多数の巨核球を生成するためにこれらのMEPを生じる。GATA−1発現は、GATA−1をコードする核酸分子を細胞に、特に発現ベクター(例えばヌクレオフェクション(nucleofection))またはウイルスベクター(例えばレントウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、およびエデノウイルスベクター)を介して、特にネイティブプロモーターの制御下で送達することにより、再活性化されることができる(例えばHohenstein et al.(2008)Stem Cells 26:1436−43)。特定の実施形態において、shRNAによるGATA−1抑制は、テトラサイクリンに制御された転写活性化システム(テトラサイクリン/Dox−オフシステム)(例えばGossen et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.,89:5547−5551を参照)または、抗−GATA−1shRNAがロックス部位により側面に配置され、および、Creリコンビナーゼ発現がshRNAコンストラクトを除去するために細胞に一時的に再誘導されるCre−ロックスシステムを使用することで、その天然レベルまで戻すことができる。
【0016】
ヒト巨核球は幹細胞、特にhESCまたはiPS細胞から直接的に生成されることができる。特定の実施形態において、GATA−1欠損幹細胞は、トロンボポエチン(TPO)のようなサイトカインの存在下、間質細胞(例えばOP9間質細胞)上で培養される(Gaur et al. (2006)J.Thromb.Haemost.,4:436−42;Takayama et al.(2008)Blood 111:5298−306)。TPOおよびOP9細胞の存在下で培養されると、幹細胞は、OP9独立/TPO依存となり、MEP細胞の性質を有する。これらのG1ME細胞の〜60%は、GATA−1の再発現で、同定可能な巨核球において成長する。
【0017】
本発明の他の実施形態において、幹細胞は、無血清条件において、胚様体(EB)ベースのプロトコルを介して巨核球内で分化される(Nostro et al.(2008)Cell Stem Cell 2:60−71; Yang et al.(2008)Nature 453:524−8)。EBプロトコル(実施例参照)は、原始線条様集団の形成(段階1)、中胚葉の誘導および特異化(段階2)、および巨核球系の拡張(段階3)を有する。この方法を使用すると、hESCおよびiPS細胞由来EBは、試験管内で巨核球ポテンシャルを示すKDR
neg/CD31
pos/CD41
pos集団を生成する(French et al.(2007)Blood 110:Abstract 1265)。
【0018】
本発明の巨核球は、血小板生成を刺激する、または最適化するために一つ以上の薬剤と接触させることができる。例えば、巨核球は、Srcキナーゼ阻害剤(例えばSU6656)および/またはプロスタグランジンJ2のような血小板前駆体形成を促進する少なくとも一つの薬剤と接触させることができる(Gandhi et al.(2005)Blood Cells Mol.Dis.,35:70−3;Akbiyik et al.(2004)Blood 104:1361−8)。巨核球は、ニッチ、間質由来因子−1、線維芽細胞成長因子−1、血管細胞接着分子−1などへの巨核細胞遊走に関係するサイトカインと接触/培養されることができる(Avecilla et al.(2004)Nat.Med.,10:64−71)。巨核球はジメチルファスジル(diMF)のようなRho/ROCK1キナーゼ阻害剤と接触させることができる。当該細胞は、骨髄血管における細孔径をシミュレーションするための条件下で特殊な培養皿で培養されることもできる。
【0019】
血小板減少NSGマウスは、本発明の細胞/血小板を研究するために使用されることができる(Newman et al.(2007)J.Thromb.Haemost.,5:305−9)。例えば、血小板減少NSGマウスは本発明の方法により生成された巨核球を注入されることができる。このモデルにおいて、新しい血小板の質的な(適切に活性化されることができる静止血小板)態様と同様に量的な(血小板数値上昇および半減期)態様の両方が測定されることができる。研究は正常な血小板数を有するNSGマウスにおいても行われることができる。二つの病的血栓モデル:1)FeCl
3頸動脈損傷(Gewirtz et al.(2008)J.Thromb.Haemost.,6:1160−6;Stachura et al.(2006)Blood 107:87−97)および2)光化学脳卒中モデル(Eichenbaum et al.(2002)J.Pharmacol.Toxicol.Methods 47:67−71))は、例えば、病的血栓を予防および/または溶解できるかどうか決定するために注入された修飾血小板を研究するのに使用されることができる。
【0020】
本発明によって、血小板減少および/または血小板減少に関連する出血性疾患を治療、阻害および/または予防するための方法が提供される。当該方法は、本発明の巨核球および/または血小板を、それを必要とする対象に投与する工程を有する。血小板減少は、例えば、患者の血液における血小板の濃度が健康な患者において正常であるとみなされるものよりも低い状態(例えば、血液のミリリットルあたり150,000,000および400,000,000は典型的に正常であるとみなされる)である、機能的血小板が異常な低量である任意の疾患である。個人の血小板数の減少は、例えば、20%、30%、40%、60%、80%、90%、95%またはそれ以上での減少であることができる。減少した血小板数は、例えば、血小板生成の減少または血小板破壊の増加によるものである。
【0021】
血小板減少は、感染症によって誘発された血小板減少、治療によって誘発された血小板減少、その他を含む。血小板減少は、原因不明でもよい。「感染症によって誘発された血小板減少」は、バクテリアまたはウイルスのような感染性因子によって生じる血小板減少である。「治療によって誘発された血小板減少」は化学療法(血小板減少を誘発する化学療法)、放射線治療(例えば、ガンマ照射、放射線への治療的な曝露)、および、これに限定されないが、細胞障害性薬、ベンゼンまたはアントラセンを含む化学製品、クロラムフェニコール、チオウラシル、およびバルビツール酸塩睡眠薬のような特定の薬への曝露によって生じる血小板減少である。血小板減少の他のタイプは、これに限定されないが、骨髄不全(例えば、先天性無巨核性低形成、および橈骨欠損(TAR症候群)による血小板減少、骨髄移植、骨髄癌および再生不良性貧血)、脾腫(例えば門脈圧亢進症)、肝臓疾患(肝硬変)、ゴーシェ病のようなマクロファージ貯蔵疾患、特発性または免疫性血小板減少紫斑病(ITP)のような自己免疫疾患、血管炎、容血性尿毒症症候群、血栓性血小板減少紫斑病(TTP)、播種性血管内凝固障害(DIC)および人工心臓弁膜によって生じる血小板減少である。
【0022】
本明細書で述べられたように、巨核球内に目的タンパク質(ポリペプチドおよびペプチドを含む)の少なくとも一つの発現は、様々な臨床用途において使用されることができる。例えば、修飾された巨核球/血小板は、止血、線維素溶解、血管新生の目的で使用されることができる。目的タンパク質を巨核球またはMEP細胞または幹細胞のような前駆体にコードする核酸分子を送達することにより、目的タンパク質は巨核球内に発現されることができる。核酸分子は、発現ベクター、特にレントウイルスベクターのようなウイルスベクター内に含まれることができる。対象の核酸分子は巨核球に特異な方法(例えば、GPIbアルファ遺伝子のような巨核球特異プロモーターによって運ばれた目的タンパク質のコード領域を有するpBSKベースプラスミドを使用する)で発現されることができる。特定の実施形態において、対象の核酸分子は、グリコプロテイン(GP)Ibαプロモーターに使用可能な状態で結合される。対象の核酸分子を有するベクターは、任意の方法(例えば、トランスフェクション、インフェクション、エレクトロポレーションなど)を介して細胞(ESまたはiPS細胞、MEP細胞または巨核球)に送達されることができる。特定の実施形態において、最終的な巨核球につき高濃度で目的タンパク質を発現するクローンが選択される。
【0023】
巨核球内で発現されることができる目的タンパク質の例は、これに限られることはないが、以下が含まれる。
【0024】
1)線維素溶解薬、血栓溶解薬または抗血栓薬は血栓(生体内)を溶解するのに使用されることができる。特定の実施形態において、抗−血栓症血小板は、フィブリノーゲン・レベルの減少またはフィブリン分解生成物の生成のような組織的変化を生じずに生体内で有効に血栓を溶解する。線維素溶解薬は、これに限定されないが、ウロキナーゼ(例えばウロキナーゼ型プラスミノゲン活性化因子、uPA)、組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)(例えば、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ)、プロウロキナーゼおよびストレプトキナーゼを含む。
【0025】
2)凝血原タンパク質は(例えば血管損傷による)出血、出血性疾患または出血体質を治療、阻害、および/または予防するのに使用されることができる。例えば、第VIII因子(FVIII)は、血友病Aの治療のために本発明の細胞を介して送達されることができる。凝血原タンパク質の例は、これに限定されないが、FVIIIおよび第IX因子を含む。治療される出血性疾患は、これに限定されないが、血友病A、血友病B、凝固因子欠乏(例えばFVII、FIX、FX、FXI、FV、FXII、FII、vWF)、ビタミンKエポキシドレダクターゼC1欠乏症、ガンマ−カルボキシラーゼ欠乏症および例えば、外傷、負傷、血小板減少および抗凝血剤による過剰処置に関連した出血を含む。
【0026】
3)抗−血管新生薬または化学療法薬は癌(例えば、白血病、リンパ腫のような血液癌)を治療、阻害、および/または予防するのに使用されることができる。特定の実施形態において、抗−血管新生薬または化学療法薬はCITにおける転移のような転移を治療、阻害、および/または予防するのに使用されることができる。血管新生薬の例は、これに限定されないが、溶解性血管内皮細胞増殖因子(VEGF)受容体(セルフ)、ニューロピリン−1(NRP−1)、アンジポイエチン2、トロンボスポンジン1、トロンボスポンジン2、アンジオスタチン、エンドスタチン、バソスタチン、カルレティキュリン、血小板因子−4、軟骨由来の血管新生阻害剤、組織メタプロテイナーゼ阻害(TIMP)、インターフェロン(α、βまたはγ)、インターロイキン(例えば、IL−4、IL−12、IL−18)、プロトロンビン、プロラクチン、アンチトロンビンIIIフラグメント、および血管内皮細胞増殖阻害(VEGI)を含む。
【0027】
4)抗−炎症性は血管炎を治療、阻害、および/または予防するのに使用されることができる。本明細書で使用されるように、抗−炎症性は炎症性疾患またはそれらに関連した症状の治療のための化合物に関する。特定の実施形態において、抗−炎症性は抗−炎症性ペプチド1のようなペプチドである。
【0028】
I.定義
以下の定義は、本発明の理解を容易にするために提供される。
【0029】
本明細書に用いられる「核酸」または「核酸分子」は、一本鎖または二重鎖、および一本鎖の場合、直鎖または環状形態のその相補的配列の分子である任意のDNAまたはRNA分子を指す。核酸分子を論ずる場合、特定の核酸分子の配列または構造は、3’から5’方向にシーケンスを提供する通常の慣例に準じ、本明細書に記述される可能性がある。本発明の核酸に関して、「単離した核酸」という用語が、時折用いられる。この用語は、DNAに適用される場合、それが由来する生物に天然に存在するゲノムにおいてすぐ隣接する配列から単離されるDNA分子を指す。例えば、「単離した核酸」は、プラスミドまたはウイルスベクターのようなベクターに挿入される、または原核生物または真核生物細胞または宿主生物のゲノムDNAにインテグレートするDNA分子を有する可能性がある。
【0030】
RNAに適用される場合、「単離した核酸」という用語は上に定義したように単離したDNA分子によりコード化されたRNA分子を指す可能性がある。あるいは、前記用語は、その天然の状態で(すなわち、細胞または組織で)関連する他の核酸から、十分に単離されたRNA分子を指す可能性がある。単離した核酸(DNAまたはRNA)はさらに、生物学的または合成的な方法で直接産生され、その産生の間、存在する他の構成要素から単離された分子を意味する可能性がある。
【0031】
「発現オペロン」はプロモーター、エンハンサー、翻訳開始点(例えば、ATGまたはAUGコドン)、ポリアデニル化信号、ターミネータ、などのような転写および翻訳制御配列を有する可能性があり、宿主細胞または生物においてポリペプチドコード配列の発現を促進する核酸部位を指す。
【0032】
プラスミド、コスミド、バクミド、ファージまたはウイルスのような「ベクター」はレプリコンであり、それに組み込まれた配列または因子の発現および/または複製を生じさせるよう、別の遺伝子配列または因子(DNAまたはRNA)が組み込まれる可能性がある。
【0033】
「遺伝子」という用語は、エクソンおよび(選択的に)イントロン配列を含むポリペプチドをコードしているオープンリーディングフレームを有する核酸を指す。核酸はまたプロモーターまたはエンハンサー配列のような非コード配列を選択的に含む可能性がある。「イントロン」という用語は、タンパク質に翻訳されず、エクソンの間で認められる任意の遺伝子に存在するDNA配列を指す。
【0034】
アンチセンス分子は、特定の遺伝子またはそのような遺伝子のmRNA転写に生理的状況下でハイブリダイズし、これにより、そのような遺伝子の転写および/またはそのようなmRNAの翻訳を阻害するオリゴヌクレオチドである。アンチセンス分子は標的遺伝子またはそのmRNAとのハイブリダイゼーションで標的遺伝子の転写または翻訳に干渉するように設計される。アンチセンス分子は一般的に約15〜約30のヌクレオチドであるが、アンチセンスオリゴヌクレオチドの的確な長さおよびその標的との相補性のその程度は選択する特定の標的に依存する。アンチセンスオリゴヌクレオチドは生理的状況下において選択的に標的核酸と結合するよう望ましくは構成される。アンチセンス分子はmRNA分子の翻訳出発点に及ぶ可能性がある。逆方向の全遺伝子配列を含むアンチセンスコンストラクトはまた作られる可能性がある。任意の既知のヌクレオチド配列を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドは標準的な方法に従いオリゴヌクレオチド合成により調製することが可能である。
【0035】
「siRNA」という用語は、RNA干渉(RNAi)経路を誘導するもののような低分子干渉RNA二量体を指す。siRNAは様々な長さで異なる可能性があるが、12−30であり、より一般的には約21ヌクレオチドの長さである(例えばAusubel et al.,eds.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Inc.を参照)。siRNAはセンス鎖および/またはアンチセンス鎖の5’または3’末端に不対突出塩基を有する可能性がある。本明細書に用いられるように、「siRNA」という用語は2つの別々の鎖の二量体および二量体領域を有するヘアピン構造を形成することが可能な一本鎖分子の二量体(shRNA)を含む。
【0036】
本明細書に用いられる「使用可能な関連する」という語句は、別の核酸配列との機能的な関係に置かれる核酸配列を指す可能性がある。使用可能な関連する可能性のある核酸配列の例は、これに限定されるものではないが、プロモーター、切断部位、精製タグ、転写ターミネータ、エンハンサーまたは活性化因子および異種遺伝子を含み、転写され、もし適していれば、翻訳される場合、タンパク質、リボザイムまたはRNA分子のような機能的な産物を産生する。「使用可能な関連する」という語句はまた、例えば、タンパク様形態のUblのカルボキシ末端領域の触媒的開裂活性が目的タンパク質の放出を誘導するようなUblのカルボキシ末端領域をコードしている核酸との機能的な関係に置かれる目的タンパク質をコードしている核酸配列を指す可能性がある。
【0037】
「単離した」という用語は、それが自然に関連する(例えば、「かなり純粋な」に存在するものとなるように)環境から十分に隔離されたタンパク質、核酸、化合物または細胞を指す可能性がある。「単離した」は、他の化合物または材料との人工または合成混合物の除去、または、例えば、不完全な精製に起因し、存在する可能性がある基本的な活性の阻害をしない不純物の存在を必ずしも意味するものではない。
【0038】
「かなり純粋である」という用語は、任意の材料(例えば、核酸、オリゴヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、細胞など)の少なくとも50−60重量%を有する調製物を指す。より望ましくは、調製物は任意の化合物の少なくとも75重量%を、最も望ましくは90−95重量%を有する。純度は任意の化合物に適切な方法により測定される。
【0039】
「薬理学的に許容される」は、動物およびより具体的にはヒトにおける使用において、連邦政府または州政府または米国薬局方にリストされているまたは薬局方に公認されたその他の監督機関による承認を意味する。
【0040】
「担体」は、本発明の活性薬剤を投与する、例えば希釈剤、補助剤、防腐剤(例えばチメロサール、ベンジルアルコール)、酸化防止剤(例えばアスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、可溶化剤(例えばTween80、ポリソルベート80)、乳化剤、緩衝液(例えばトリスHCl、アセテート、リン酸塩)、水、水溶液、油、充填物質(例えば、ラクトース、マンニトール)、賦形剤、助剤または基剤を指す。適当な医薬担体は"Remington’s Pharmaceutical Sciences"by E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,PA)、Gennaro,A.R.,Remington:The Science and Practice of Pharmacy,(Lippincott,Williams and Wilkins)、Liberman,et al.,Eds.,Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Decker,New York,N.YおよびKibbe,et al.,Eds.,Handbook of Pharmaceutical Excipients,American Pharmaceutical Association,Washingtonにおいて記述される。
【0041】
本明細書に用いられる「治療する」という用語は、(例えば1若しくはそれ以上の症状を持つ)患者の症状の改善、症状の進行の遅延などを含む、病気または疾患に苦しむ患者に利益を与える任意の種類の治療を指す。
【0042】
化合物または医薬品組成物の「治療的有効量」は、特定の疾患または病気の症状を防止、阻害、治療、または軽減するための有効量を指す。本明細書において病気または疾患の治療は、病気または疾患、それの症状、またはそれの傾向を治療すること、軽減すること、阻害すること、および/または防止することを指す可能性がある。
【0043】
「培養する」という用語は、培養液において適当な条件下で細胞集団を増殖または維持することを指す。
【0044】
II.投与
本発明の少なくとも1つの巨核球および/または血小板および少なくとも1つの薬理学的に許容される担体を有する組成物はまた、本発明に包含される。
【0045】
本発明は、その患者の必要とする、少なくとも本発明の1つの巨核球および/または血小板、および少なくとも1つの薬理学的に許容される担体を有する組成物の投与を有する血小板減少症および/または他の病気または疾患を治療する方法を包含する。本明細書に用いられる「患者」という用語は、ヒトまたは動物(特に哺乳類)の対象を指す。例えば、本発明の血小板は、本発明の巨核球から試験管内で生成し、それから対象に投与される可能性がある。別の実施形態において、本発明の巨核球は直接その対象に送達され、血小板は生体内でその後産生される。
【0046】
本発明の巨核球および/または血小板は、任意の薬理学的に許容される担体と共に投与のために都合の良いように製剤される可能性がある。例えば、ウイルスベクターは、水、緩衝食塩水、エタノール、多価アルコール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、油、洗浄剤、懸濁化剤、または適当なそれらの混合物のような許容できる培養液と共に製剤される可能性がある。選択した培養液中の本発明の巨核球および/または血小板の濃度は多様である可能性があり、培養液は医薬品の望ましい投与経路に基づいて選択される可能性がある。任意の従来の培養液または薬剤が投与される巨核球および/または血小板と不適合である場合以外は、その医薬品の使用が検討される。
【0047】
特定の患者への投与にふさわしい本発明による組成物の量および投与計画は、患者の年齢、性別、体重、全身病状、および本発明の巨核球および/または血小板が投与されている特定の条件およびその重症度を考慮し、医者/獣医/専門医により決定される可能性がある。医者/獣医/専門医はまた、投薬の経路、医薬担体、および巨核球および/または血小板の生物活性を考慮する可能性がある。
【0048】
適当な医薬品の選択はまた、選択される投与の方法に依存する。望ましくは培養液中で分散する本発明の巨核球および/または血小板を有する医薬品は注射部位と適合する。
【0049】
本発明の巨核球および/または血小板は、任意の方法により投与される可能性がある。特定の実施形態において、本発明の巨核球および/または血小板は、直接注射、特に血流への静脈注射により投与される。注射のための医薬品は、当該分野で周知である。巨核球および/または血小板を投与する方法として注射が選択される場合、生物学的効果を及ぼすために十分な量の巨核球および/または血小板が彼らの標的細胞に到達することを確実にするための処置を講ずるべきである。
【0050】
薬理学的に許容される担体に密接な混合物中の活性成分としての本発明の巨核球および/または血小板を含む医薬品組成物は、従来の製薬技術により調製することが可能である。投与、例えば静脈注射、のために求められる調製物の形態に従い、担体は多種多様な形態をとる可能性がある。
【0051】
本発明の医薬品は、投与の簡便性および投薬量の均一性のために投与単位の形態で製剤される可能性がある。本明細書に用いられるような投与単位の形態は、治療を受けている患者に適切な医薬品の物理的に個別である単位を指す。各々の投薬量は、選択した医薬担体に関連性のある望ましい影響を生じることを意図した活性成分の量を含むべきである。適切な投与単位を同定する手順は、当該分野の当業者に周知である。投与単位は患者の体重に基づき比例して増加または減少される可能性がある。当該分野で周知のように、特定の病状の緩和のための適切な濃度は投薬量濃度曲線計算により決定される可能性がある。
【0052】
本発明に従って、本発明の巨核球および/または血小板の投与のための適切な投与単位は、動物モデルで細胞の毒性を評価することにより決定される可能性がある。医薬品中の巨核球および/または血小板の様々な濃度は、マウスまたは他の動物に投与される可能性があり、治療の結果として観察される有益な結果および副作用に基づき、最小および最大投与量が決定される可能性がある。適切な投与単位はまた、他の標準的な薬剤と組み合わせて巨核球および/または血小板治療の有効性を評価することで測定される可能性がある。巨核球および/または血小板の投与単位は、個別に、または各々の治療と組み合わせて検出された影響により決定される可能性がある。
【0053】
以下の実施例は、本発明の様々な実施例を図示するため提供される。実施例は実例となり、任意の方法により本発明を制限することを意図するものではない。
【実施例1】
【0054】
材料および方法
研究に用いたマウスの特性評価
ドナー細胞および血小板はC57BL/6WTマウス(ジャクソン研究所)またはmUK−トランスジェニックマウスに由来し、巨核球内でマウスウロキナーゼを異所性に発現する(Kufrin et al.(2003)Blood 102:926−933)。レシピエントマウスはホモ接合的にhαIIbが遺伝子組換えされ、血小板マウスαIIbの発現がヌル(mαII−/−)で(Thornton et al.(2002)Blood 100:3588−3596)、hαIIb+マウスと呼ばれ、ヒト血小板において見られるCD41のレベルの20%を発現する(Wagner et al.(1996)Blood 88:907−914)。すべての動物実験は、フィラデルフィア小児病院における治験動物利用委員会の承認のもと行った。
血小板および巨核球の生体外単離
ホモジナイズしたE14のFL細胞から得た胎児の肝臓(FL)巨核球は、これまでに報告のあるとおり培養した(Lecine et al.(1998)J.Biol.Chem.,273:7572−7578)。成熟BM細胞は、C57BL/6マウスの大腿骨および脛骨から得た(Shivdasani et al.(2005)Curr.Protoc.Immunol.,Chapter 22:Unit 22F.6)。成熟巨核球は、二段階密度勾配(例えば、1.5%および3%のBSA段階勾配)を用い単離した(Shivdasani et al.(2005)Curr.Protoc.Immunol.,Chapter 22:Unit 22F.6)。クエン酸デキストロースで洗浄したC57BL/6マウスの下大静脈に由来する血小板はこれまでの報告にあるとおり調製した(Zhang et al.(2001)Blood 98:610−617)。血小板数はHemaVet(登録商標)カウンター(Triad Associates社)を用い測定した。血小板および/または巨核球は眼窩後部または尾静脈によりレシピエントマウスに注入し、その2つの手段は、類似した結果を示した(
図6)。
【0055】
巨核球の特性評価
血小板前駆体に対する巨核球数は、血球計算器で視覚的に決定した。DNA倍数性はこれまでに記述されているようにヨウ化プロピジウムで染色後、FACScan
TM(BD社)を用いてフローサイトメトリーにより評価された(Kanaji et al.(2004)Blood 104:3161−3168)。
注入したhαIIb+マウスにおけるフローサイトメトリー解析
モノクローナルFITC−コンジュゲートマウス抗−ヒトCD41 Ab(eBioscience社)およびモノクローナルフィコエリトリン−コンジュゲート(PE−コンジュゲート)ラット抗−マウスCD41 Ab(BD Biosciences社)で30分間染色し、フローサイトメトリーにより解析したところ、レシピエントマウスからの眼窩後部血液サンプルは二倍に染色された。注入した血小板の活性化は、モノクローナルマウス抗ヒトCD41(PerCP−Cy5.5)、PE−ラット抗マウスCD41、およびモノクローナルFITC−ラット抗−マウスP−セレクチン抗体(すべてBD Biosciences社製)を用い3色全血フローサイトメトリーにより評価した。レシピエントに対するドナーの血小板における膜レセプターの相対的な発現を分析するため、全血をマウス抗−ヒトCD41(PerCP−Cy5.5)、PE−ラット抗−マウスCD41、およびモノクローナルFITC標識ラット抗−マウスGPIbαまたはラット抗−マウスGPIX Ab(Emfret Analytics社)により染色した。
【0056】
血小板減少症hαIIb+マウスにおける注入解析
マウスを高線量の照射に曝した(合計1,000センチグレイ、2セッション、24時間間隔)。経時的な血小板プロファイルを決定するため血小板数を最初に毎日モニターした。これらの研究に含まれる動物は、照射後7日目および200μl CATCH緩衝液中の細胞注入の直前で1×10
8〜2×10
8/mlの血小板数を持った。さらなる数の測定は、注入後4、24、および48時間において行った。
【0057】
挙睾筋レーザー損傷の機能的研究
細胞注入の1時間後に、レシピエントhαIIb+雄マウスを用い挙睾筋レーザー損傷モデルの研究を行った(Neyman et al.(2008)Blood 112:1101−1108)。アレクサフルオ488(Pierce Biotechnology社)で標識した抗マウスCD41Fabフラグメントを、損傷の5分前に静脈内に注射した。データは毎秒5コマで2.5分間集積した。
【0058】
FeCl
3頸動脈損傷の機能的研究
注入の1時間後にFeCl
3誘導の動脈損傷をhαIIb+マウスで誘発させた。これまでに報告のあるとおり研究を行った(Yarovoi et al.(2003)Blood 102:4006−4013)が、20%のFeCl
3の損傷は3分間とした。総流量を30分間記録した。
【0059】
注入した巨核球運命の研究
FL由来の細胞を5日間培養し、それから注入前に48時間10μM BrdU(シグマアルドリッチ社)に暴露した。注入後、レシピエントマウスを屠殺し、それから単離した臓器を任意の時点でホルマリンで固定した。BrdU標識した核の検出は、2次Ab(Abcam社)としてラットポリクローナル抗BrdU Abおよびビオチン化ウサギポリクローナル抗ラットIgGで行い、続いてDAKO検出キット(EnVision社)で行った。肺における巨核球細胞質は、マウスαIIb(サンタクルーズバイオテクノロジー社)および2次ビオチン化ウサギポリクローナル抗ヤギIgG Ab(Abcam社)に対するヤギポリクローナルAbを用い同様に解析した。
【0060】
統計
グループ間の違いは、2−テイルドスチューデントのt検定を用い比較した。統計解析はマイクロソフトエクセルを用い行った。P値が0.05以下であった場合、差は有意であると考えた。
【0061】
結果
注入した巨核球が循環血小板を生じるかどうかに対処するため、胎児肝臓−(FL−)およびBM−由来の巨核球を発生させた(
図1)(Lecine et al.(1998)J.Biol.Chem.,273:7572−7578)。半分以上が50μmより大きな直径を有し、約2.5:1の血小板前駆体/細胞のみである、「大細胞」を生成するために2段階密度勾配を用い、他の細胞および血小板前駆体から成熟巨核球を単離した(
図2A)。残りの「小細胞」は、約10:1の血小板前駆体/細胞(
図2A)であった。倍数性解析は、FL大細胞と比較して、FL小細胞は低いDNA倍数性を持つことを示した(
図2B)。
【0062】
種特異的な抗−αIIb(CD41)抗体を用い注入した血小板のフローサイトメトリー検出をさせるため、陽性コントロールWT血小板を単離し、それらの血小板表面にヒトαIIbのみを持つhαIIb+レシピエントマウスに注入した(Thornton et al.(2002)Blood 100:3588−3596)。注入の後、全体的な半減期約36時間であるが、WT血小板は即座に(すなわち、5分の時点で)hαIIb+レシピエントマウスにおいて検出された(
図2C、2E、および2F)。対照的に、注入したFL大細胞は、約90分においてピークを持ち、血小板が遅くなるという結果となった(
図2Dおよび2E)。これらの血小板は、全体的により短い約20時間の半減期を有した。注入した細胞の数、血小板数のピークの増加、および約2mlのレシピエントマウス血液量に基づき、各々の大細胞由来の血小板は100−200個であると計算され、全細胞が血小板を生じさせるものと仮定される。血小板前駆体を増加させ注入したFL小細胞は、注入したWT血小板と類似した即座のピークを生じたが、これらの血小板は約2時間の切り詰められた半減期を有した(
図2E)。成熟BM巨核球の注入は、24時間のわずかにより長い半減期であったが、FL−由来の巨核球と同様に血小板の出現が遅れる結果となった(
図2F)。臨床血小板減少症を模倣するため、マウスに照射させ、誘導した血小板最下点近くでCATCH緩衝液(1×PBS、1.5%のBSA、1mMアデノシン、2mMテオフィリン、および0.38%クエン酸ナトリウム)、WT血小板またはFL大細胞を注入した。血小板および巨核球が24時間以上の時間的経過を超え、CATCH緩衝液と比較して血小板数を有意に増加することが認められた(
図2G)。
【0063】
注入した大細胞から誘導される血小板の半減期の短縮を理解するために、それらのサイズ分布を解析し、注入したWT血小板と微粒子を比較したが、差は認められなかった(
図2H)。血小板活性化の別の指標は表面のP−セレクチンの発現である(Hsu−Lin et al.(1984)J.Biol.Chem.,259:9121−9126)。表面のP−セレクチン濃度が、注入したFL細胞由来の血小板と注入したWT血小板において同程度であることをフローサイトメトリー解析法により示した(
図2I)。ADAM17は、血小板半減期を短縮させる培養中で検出されるメタロプロテナーゼであり(Bergmeier et al.(2004)Circ.Res.,95:677−683)、レセプター密度を変えることなくGPIb/IXレセプターを不活性化し、GPIbαのグリコカリシン細胞外部分を開裂する(Bergmeier et al.(2003)Blood 102:4229−4235)。注入したFL細胞由来の血小板および注入したWT血小板は同程度のGPIXに対する細胞外GPIbの比率を示した(
図2I)。このように、注入した大細胞から誘導される血小板のわずかに短くなった半減期は、ADAM17活性に依存するようではない。
【0064】
臨床的に、血小板数を増加させず、血小板減少症による出血性素因を食い止めるまたは防ぐために、血小板は典型的に輸注される。レーザーにより誘発させた挙睾筋細動脈損傷モデルにおいて、注入したWT血小板および注入したFL細胞由来の血小板の増大する凝血塊への取り込みを分析した。すべての設定において、血小板は成長する血栓に即座に取り込まれた。WT血小板およびFL大細胞由来の血小板は、同様に取り込まれた(
図3Aおよび3B)。再循環し、めったに凝血塊に取り込まれなかったCD41+細胞の異なる細胞集団で、FL小細胞由来の血小板はより少ない程度で取り込まれた(
図3Cおよび3D)。この現象は、FL大細胞の注入の後はめったに認められず(
図3B)、決して注入したWT血小板では認められなかった(
図3A)。
【0065】
CATCH緩衝液またはFL大細胞を、低いCD41表面密度に起因するものと思われる軽度の出血性素因を有するhαIIb+レシピエントマウスに注入した後に、FeCl
3頸動脈損傷モデルを用い血小板機能はまた分析された(Wagner et al.(1996)Blood 88:907−914)。FL大細胞の注入は、安定した閉塞の発生時間を有意に短縮した(表1)。mUKマウス由来のFL大細胞はまた、注入され、それらのα−顆粒において異所性にウロキナーゼを発現および貯蔵し(Kahr et al.(2001)Blood 98:257−265)、FeCl
3頸動脈損傷モデルにおける血栓症に抵抗性である。WTマウスへのmUK血小板の輸注は凝血塊の発生を阻害した(Kufrin et al.(2003)Blood 102:926−933)。注入したFL大細胞由来のmUK血小板が機能的である場合、それらはhαIIb+レシピエントマウスにおいて凝固を阻害するものと結論づけられた。実際、注入したmUK大細胞は、安定した閉塞を形成することが不可能であった(表1)。
【0066】
【表1】
【0067】
まず、注入した巨核球がどこで血小板を発生したかに対処するために、巨核球核をBrdU標識した。様々な臓器を注入の最高36時間後に単離した。実質的にBrdUで染色した全ての核は肺であった(
図4A)。染色された核は、最高24時間確認できた(
図4B)。数個の核は、脾赤色髄において確認できた(
図4C)。肝臓、心臓、脳、またはBMには一つも存在しなかった。BrdU標識した大細胞は肺微小血管において注入後最高30分間、それらの細胞質に保持されるように見え(
図4Bおよび4D)、FL大細胞注入後の血小板数のピークの遅延と一致する。この観察を追認するため、組織を抗−マウスCD41 Abで染色し、最大30分間まで陽性に染色された細胞質を検出した(
図4D)。本研究および過去の組織学的研究(Zucker−Franklin et al.(2000)Am.J.Pathol.,157:69−74)は、血小板が血管床内で直接循環巨核球、成熟巨核球、高い倍数性巨核球から放出されることが可能であることを示す。髄における血管ニッチで巨核球が大細胞質断片を発生していることを示す最近の研究(Junt et al.(2007)Science 317:1767−1770)を考慮すれば、試験管内の研究(Italiano et al.(1999)J.Cell.Biol.,147:1299−1312)により明らかにされたそれらと合致するメカニズムを用い、大細胞質断片および全巨核球は血管系に逃れ、肺床の中で血小板を発生する可能性があるが、同様に並流および局所血管因子が含まれる(Dunois−Larde et al.(2009)Blood 114:1875−1883)。
【0068】
ある人は、肺に詰まっている巨核球が心血管の難問を引き起こす可能性があると想定する。しかしながら、表2で示す計算に基づいて、全肺胞毛細血管床のわずか0.4%−1.7%が閉塞した。巨核球の流入を処理する肺血管系の能力に加えて、別の問題は、この床が血小板放出のために特殊化されるかどうかということである。右から左への重篤な心血管シャントをもつ人は少ない血小板数を有することが知られており、他は、循環巨核球よる肺バイパスに由来することが提案された(Lill et al.(2006)Am.J.Cardiol.,98:254−258)。しかしながら、肺床を自然に迂回する胎児循環においては、血小板は存在する(Van den Hof et al.(1990)Am.J.Obstet.Gynecol.,162:735−739)。
【0069】
【表2】
【0070】
注入した巨核球由来の血小板が表面レセプターのサイズおよび発現において正常であり、増殖する血栓に取り込まれることが可能なことを本明細書において示した。これまでにADAM17が培養液に存在し、生体外で産生される血小板の半減期が短くなることが示唆されている(Nishikii et al.(2008)J.Exp.Med.,205:1917−1927)。本研究では、巨核球をADAM17の2つの阻害剤、GM6001およびTAP−1の存在下で増殖後、由来する血小板の半減期において変化を示さなかった(
図5Aおよび5B)。半減期の短縮に対する他の説明は、大部分の研究がFL巨核球を用い行われたということであり、胎児の血小板は成熟血小板と比較し、より短い半減期を有する(Jilma−Stohlawetz et al.(2001)Br.J.Haematol.,112:466−468)。しかしながら、培養した注入した成熟BM巨核球は、見かけ上、同様の遅延および少しより長い半減期のみを生じた(
図2F)。
【0071】
生物学的に反応性を持つ多くの血小板の試験管内における生成は、依然として問題を含む。本研究はヒト細胞株を樹立させ、増加させることが可能あり、巨核球に分化させることが可能であり、血小板のドナー非依存的なソースとなることを示す。そのような細胞株、GATA−1を欠くES細胞に由来し、GATA−1の再発現後約50%の巨核球を形成するG1ME細胞、がマウス由来で存在する(Stachura et al.(2006)Blood 107:87−97)。巨核球形成の間、目的タンパク質を異所性に発現させるような細胞株の修飾は、その後の損傷部位への異所性タンパク質の標的となる送達に有用である(Yarovoi et al.(2003)Blood 102:4006−4013)。生体内で注入した修飾された巨核球から修飾された血小板を産生するこのさらなる利点は、mUKマウス巨核球に由来する血小板により有効な、標的とされたウロキナーゼの送達を示す研究により支持される(表1)。
【0072】
注入した巨核球は肺床中に血小板を放出することが可能であり、生体内において正常血小板のそれらに類似した特性を持つ生物活性血小板を形成することが可能である。その過程は積極的であり、血小板数を増加させることが可能で、止血を異所性タンパク質の標的とされた送達により改善および修飾することが可能となるよう十分な血小板が形成される。注入した巨核球につき発生する100−200個の血小板の推定値に基づき、平均的な70kgの患者において10%の血小板数の上昇もたらすため、10
9個の成熟巨核球が発生する可能性がある。
【実施例2】
【0073】
自己再生するマウスMEP細胞の樹立
GATA−1ヌルのマウスES細胞を作成し、GATA−1転写制御因子が赤血球および巨核球両方の発生に重要であることを示すのに用いた(Shivdasani et al.(1997)EMBO J.,16:3965−73)。OP9間質フィーダー細胞およびトロンボポエチン(TPO)の存在下における2週間のこれらの細胞の増殖は、自己再生する細胞株G1MEを誘導した。そのような自己再生する細胞株は同じ系統の野生型(WT)ES細胞を用いては認められなかった(Stachura et al.(2006)Blood 107:87−97)。GATA−1および緑色蛍光タンパク質(eGFP)の発現を誘導するレトロウイルスによりトランスフェクトする場合、〜60%のG1ME細胞が巨核球(成熟巨核球のGPIbα発現)に分化した。
【実施例3】
【0074】
hESC由来の巨核球の生成
hESC細胞株を巨核球に分化させる無血清状態での3段階の胚様体(EB)ベースのプロトコルが用いられた(French et al.(2007)Blood 110:Abstract 1265)。hESC細胞株の増殖、維持および分化のためのプロトコルは記述されている(Kennedy et al.(2007)Blood 109:2679−87)。巨核球系への分化には、以下のサイトカインが用いられた。BMP−4、bFGF、およびVEGF(全て10ng/mlで)。アクチビンA(0.5−3.0ng/ml)。hSCF(100ng/ml)、hTPO(50ng/ml)、hEPO(2U/ml)、h1L−6(20ng/ml)、h1L−3(40ng/ml)、およびh1L−11(5ng/ml)。血液生成を同定する初期マーカーとしてCD41および巨核球に特異的マーカーとしてCD42(GPlb)を用い、11日目のEBが〜10%CD41
HiCD42
+および〜20%CD41
LoCD42
±細胞集団を産生することを見出した。細胞をソートし、TPOを含有する培養液において培養後、両方の細胞集団は、増加したCD41およびCD42の発現および形態(メイ−グリュンワルド−ギムザ染色)により示されるように、さらに分化した。遺伝子発現プロファイル、および前駆細胞および機能的解析を用い、細胞のCD41
HiCD42
+細胞集団が巨核球系に関与することを明らかにした。
【実施例4】
【0075】
注入した巨核球からの血小板の放出
ヒトCD41のみを発現するマウスへ注入したWT血小板(Thornton et al.(2002)Blood 100:3588−96;Massberg et al.(2005)Circulation 112:1180−8)は、輸注された血小板の数およびレシピエントマウスの最初の血小板数と一致し、血小板の増大をもたらした。これらの血小板は〜30時間の半減期であった。培養した胎児肝臓由来のWT巨核球(TPO培養液における8日間の増殖後(Ikuta et al.(1990)Cell 62:863−74))を注入した場合、1つのマウス巨核球が103の血小板の増加を引き起こすと仮定すると、同じレシピエントマウスでの血小板の増加は期待される増加の〜70%であった。しかしながら、血小板出現の遅れが5分間あり、半減期は注入した血小板においてよりも短い可能性がある。血小板数上昇の遅れは、肺で血小板を放出する必要のある巨核球と一致する。より短い半減期は、GM6001の含有により阻害可能な培養基中に存在する最近報告されたメタロプロテナーゼによるものである可能性がある(Nishikii et al.(2008)J.Exp.Med.,205:1917−27)。注目すべきは、いずれの動物においても注入した巨核球によって呼吸器または血管の明らかな異常を生じず、注入している巨核球が臨床的に適したものであることを示している。
【実施例5】
【0076】
目的タンパク質の発現
異所性タンパク質は巨核球を発生させる際に発現させることが可能で、血小板α−顆粒に貯蔵させることが可能である。例えば、FVIIIを巨核球形成の間発現させる場合、FVIII
nullマウスの血漿において検出可能なFVIIIは認められず、それは循環血小板に貯蔵される(Gewirtz et al.(2008)J.Thromb.Haemost.,6:1160−6)。FVIII放出血小板(pFVIII)は、循環阻害剤の存在下においても効果的である。pFVIIIを発現するマウス由来の輸注した血小板は、FVIII
nullマウスにおける出血性素因を補正することが可能である(Yarovoi et al.(2003)Blood 102:4006−13;Yarovoi et al.(2005)Blood 105:4674−6)。
【0077】
同様に、巨核球形成の間、異所性に発現したuPAは循環血小板のα−顆粒に貯蔵されるが、全身性の線維素溶解を引き起こさなかった(Kufrin et al.(2003)Blood 102:926−33)が、顕著に血栓溶解が増進した。WTマウスへ輸注したuPAを含有する血小板はまた、レシピエントマウスにおいて線維素溶解を増進した(Kufrin et al.(2003)Blood 102:926−33)。
【実施例6】
【0078】
NSGマウス(Shultz et al.(2007)Nat.Rev.Immunol.,7:118−130;Shultz et al.(2005)J.Immunol.,174:6477−89)にヒト血小板を注入した。
図7Aにおいて見られるように、ヒト血小板の半減期は約10時間であった。ヒト胎児肝臓(FL)巨核球をNSGマウスに注入した場合、血小板のスパイクが注入の10時間以内で観察された(
図7B)。注入した200万個の大細胞は、巨核球につき約13個の血小板を産生した。ヒト巨核球はまた、成長する血栓に取り込まれた。
【0079】
血小板産生を増加させるため、ジメチルファスジル(diMF)、Rho/ROCK1キナーゼ阻害剤のヒトFL巨核球成熟を促進するその能力の試験を行った。FL−巨核球(大)をDiMF(5μm)で処理し、NSGマウスに注入した場合、血小板のスパイクは注入の約1時間以内で観察された(
図7C)。さらに、200万個の大細胞の注入は、巨核球につき約6個の血小板のみを産生した。次に、骨髄(BM)CD34+細胞由来のヒトMegs(大)をNSGマウスに注入した。
図7Dの中で見られるように、血小板は注入の数時間以内でピークに達した。さらに、200万個の大細胞の注入は、巨核球につき約70個の血小板を産生した。BM CD34+Megs(大)をDiMF(2μm)で処理し、NSGマウスに注入した場合、血小板のスパイクは即座に観察された(
図7E)。さらに、200万個の大細胞の注入は、巨核球につき約4個の血小板のみを産生した。
【0080】
本発明の好ましい実施形態のいくつかを記述し、特に上記を例示したが、本発明がそのような実施形態に限定されることを意図しない。以下の請求項に記載したように、様々な修正が本発明の範囲および趣旨を逸脱することなくそれになされる可能性がある。