(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、
図1〜
図10を参照して、タッチ式入力装置の第1の実施形態について説明する。
【0019】
図1に示すように、ダッシュボード1の中央部(センタークラスタ)にはディスプレイ2が設けられている。センターコンソール4には、シフトレバー5が設けられており、その手前側には、タッチ式入力装置10のタッチパネル11がその操作面11aを露出させる態様で埋設されている。すなわち、本実施形態のタッチ式入力装置10は車両に搭載されている。そして、ユーザは、指やスタイラス等の導電体を用いてタッチパネル11をタッチ操作することにより、ディスプレイ2に表示された所望の機能項目の選択及び決定を行い、エアコンディショナやカーナビゲーション等の車載機器に所望の動作を実行させることが可能となっている。なお、タッチ操作には、単に操作面11aに接触する操作だけでなく、例えばタッチパネル11の操作面11aをある一方向へなぞったり払ったりするなぞり操作(フリック操作)も含まれる。
【0020】
図2及び
図3に示すように、タッチパネル11には、複数の駆動電極12と複数のセンサ電極13とをこれらの間の絶縁を保ちつつ格子状に重ねたセンサパターン14が設けられている。なお、
図2では、説明の便宜上、駆動電極12を7本、センサ電極13を5本だけ示している。
【0021】
具体的には、タッチパネル11は、駆動電極12が配置される駆動基板15と、駆動基板15上に設けられるとともにセンサ電極13が配置されるセンサ基板16と、センサ基板16上に設けられるカバー17とを備えている。駆動基板15、センサ基板16及びカバー17は、それぞれ絶縁性材料からなる。そして、カバー17の上面の一部がタッチパネル11の操作面11aを構成している。
【0022】
駆動電極12及びセンサ電極13は、それぞれ導電性材料からなり、帯状に形成されている。そして、駆動電極12は、駆動基板15における操作面11aと対向する範囲内で互いに平行になるように一方向(X方向)に沿って配置されている。一方、センサ電極13は、センサ基板16における操作面11aと対向する範囲内で互いに平行になるように上記一方向と直交する方向(Y方向)に沿って配置されている。これにより、駆動電極12及びセンサ電極13によって格子状のセンサパターン14が操作面11a内に形成されるとともに、
図3において二点鎖線で示すように、駆動電極12とセンサ電極13との交点部分にはコンデンサCが形成されている。なお、本実施形態では、駆動電極12及びセンサ電極13は、それぞれ接着剤18により駆動基板15及びセンサ基板16に固定されている。
【0023】
図4に示すように、タッチ式入力装置10は、上記タッチパネル11と、そのセンサパターン14に駆動信号(パルス信号)を印加してタッチ操作を検出するコントローラ21とを備えている。なお、本実施形態のコントローラ21は、上記交点部分に形成されたコンデンサC毎の静電容量が変化することにより生じる充放電電流に基づいてタッチ位置を検出する相互容量方式を採用している。
【0024】
具体的には、コントローラ21は、各駆動電極12に接続される駆動部22と、各センサ電極13に接続される検出部23と、駆動部22及び検出部23の動作を制御する制御部24とを有している。駆動部22は、制御部24からの制御信号に基づいて、駆動信号を生成するとともに、駆動電極12を少なくとも1本ずつ選択して生成した駆動信号を印加する。検出部23は、制御部24からの制御信号に基づいて、センサ電極13を少なくとも1本ずつ選択し、駆動電極12に印加された駆動信号に応じて該センサ電極13に流れる充放電電流を出力信号として受信する。また、検出部23は、センサ電極13のそれぞれから出力される出力信号に基づいてコンデンサC毎の静電容量を検出し、これらコンデンサC毎の静電容量を示す検出信号を制御部24に出力する。そして、制御部24は、検出信号に基づいてタッチ操作及びその座標を検出し、その検出結果をディスプレイ2に出力する。
【0025】
ここで、制御部24は、例えば水滴や硬貨等の導電性の異物が操作面11aに接触したままの状態でも、タッチ操作を検出可能に構成されている。なお、本実施形態では、指等が接触した場合に静電容量が変化する極性をプラスとし、導電性の異物が接触した場合に静電容量が変化する極性をマイナスとする。
【0026】
詳述すると、制御部24にはメモリ24aが設けられている。メモリ24aには、センサパターン14の交点部分に形成されるコンデンサC毎に予め設定された初期基準値が記憶されている。なお、本実施形態では、初期基準値は、操作面11a上に物体が何も接触していない状態での静電容量の値(ゼロ)に設定されている。また、メモリ24aには、コンデンサC毎に異物の有無によって変更される制御基準値が記憶されている。
【0027】
制御部24は、検出部23から検出信号が入力されると、初期基準値に対するコンデンサC毎の静電容量の変化量を示す素データ群に基づいて導電性の異物の有無、すなわち操作面11aに異物が接触したか否かを判定する。具体的には、素データ群の少なくとも1つのデータ(初期基準値に対する各コンデンサCのうちの少なくとも1つの静電容量)の変化量が所定のマイナスの値に設定された異物判定閾値以下となった場合に異物が有ると判定する。また、制御部24は、素データ群に基づいて異物が有ると判定された場合には、制御基準値に対するコンデンサC毎の静電容量の変化量を示す制御データ群に基づいて導電性の異物の有無、すなわち操作面11aに別の異物が接触したか否かを判定する。具体的には、制御データ群の少なくとも1つが異物判定閾値以下となった場合に異物が有ると判定する。そして、制御部24は、制御データ群に基づいてタッチ操作の有無を判定する。具体的には、制御データ群の少なくとも1つが所定のプラスの値に設定されたタッチ判定閾値以上となった場合に、タッチ操作が有った、すなわちタッチ操作が行われたと判定する。
【0028】
コンデンサC毎の制御基準値は、素データ群に基づいて操作面11aに異物が有ると判定された場合には、このときの素データ群の対応する交点のデータ(コンデンサCの静電容量)と同一の値(以下、素データ基準値)にそれぞれ設定される。つまり、制御基準値が素データ基準値に設定されると、制御データは、操作面11aに異物が接触した状態をゼロ点にしたコンデンサC毎の静電容量を示すことになる。一方、コンデンサC毎の制御基準値は、素データ群に基づいて操作面11aに異物が無いと判定された場合には、初期基準値にそれぞれ設定される。また、コンデンサC毎の制御基準値は、制御データ群に基づいて操作面11aに異物が有ると判定された場合には、このときの制御データ群の対応する交点のデータ(コンデンサCの静電容量)と同一の値(以下、制御データ基準値)にそれぞれ設定される。つまり、制御基準値が制御データ基準値とされると、制御データは、操作面11aに別の異物が接触した状態をゼロ点にしたコンデンサC毎の静電容量を示すことになる。一方、コンデンサC毎の制御基準値は、制御データ群に基づいて操作面11aに異物が無いと判定された場合には、素データ基準値にそれぞれ設定される。
【0029】
次に、
図5を参照して、タッチ式入力装置10の状態遷移について説明する。
図5に示すように、タッチ式入力装置10のコントローラ21は、電源がONされて起動されると、まず初期設定を行う初期設定状態(ステップS100)に移行する。初期設定では、静電検出ICの設定、及び寄生容量値の補正が行われる。コントローラ21の制御部24は、寄生容量値の補正として制御基準値を取得する。制御部24は、基準値の取得が完了すると、タッチ操作の検出を待つ検出待機状態(ステップS101)となる。
【0030】
制御部24は、タッチ操作がない(タッチOFF)状態(ステップS102)においては、温度変化によって基準値が変化するので、制御基準値を温度変化に対応する基準値に更新する。制御部24は、素データ群に基づいて異物が有ると判定された場合には、ノイズ検出・異物検出中状態(ステップS103)に移行する。制御部24は、ノイズ検出・異物検出中状態において、制御基準値に対するコンデンサC毎の静電容量の変化量を示す制御データ群に基づいて導電性の異物の有無、すなわち操作面11aに別の異物が接触したか否かを判定する。制御部24は、ノイズ検出・異物検出中状態において、素データ群に基づいて異物がないと判定された場合には、タッチ操作がない(タッチOFF)状態に移行する(ステップS102)。
【0031】
制御部24は、タッチOFF状態(ステップS102)において、制御データ群に基づいてタッチ操作が有ると判定すると、指の検出ありとしてタッチ操作がある(タッチON)状態(ステップS104)に移行する。制御部24は、タッチON状態において、タッチ操作の座標位置を演算し、その検出結果をディスプレイ2に出力する。
【0032】
制御部24は、ノイズ検出・異物検出中状態(ステップS103)において、異物がありながら、制御データ群に基づいてタッチ操作が有ると判定すると、指の検出ありとしてタッチ操作があるタッチON状態(ステップS104)に移行する。
【0033】
制御部24は、タッチOFF状態(ステップS102)と、ノイズ検出・異物検出中状態(ステップS103)と、タッチON状態(ステップS104)との各状態において、基準値の更新条件が成立すると、初期設定状態(ステップS100)に移行する。ここで、基準値の更新条件とは、基準値に異常があると判定した場合であって、本実施形態では、制御データ群の変動幅が所定範囲内にあるとともに、所定時間継続される場合である。
【0034】
次に、
図6を参照して、制御部24による基準値更新条件成立判定処理を説明する。制御部24は、タッチOFF状態(ステップS102)と、ノイズ検出・異物検出中状態(ステップS103)と、タッチON状態(ステップS104)との各状態において、基準値の更新が必要であるか否かを判定している。
【0035】
図6に示されるように、制御部24は、検出部23から検出信号が入力されると(ステップS21)、検出値の変動幅が所定範囲W内であるか否かを判定する(ステップS22)。すなわち、制御部24は、素データ群又は制御データ群のいずれかのデータ値の変動幅が所定範囲W内であるか否かを判定する。この所定範囲Wの変動幅は、指を検出するときのタッチ判定閾値よりも小さく、例えばタッチ判定閾値の1/10以下である。これは、ユーザのタッチ操作や外来ノイズ、操作面11aに異物がある状態で操作面11aに変化がない場合に、上記のような所定範囲Wの変動幅のデータ値が検出される。
【0036】
その結果、制御部24は、検出値の変動幅が所定範囲Wよりも大きいと判定した場合には(ステップS22:NO)、所定時間T継続するか否かを判定する必要がないので、タイマーをリセットして(ステップS26)、ステップS25に移行する。
【0037】
また、制御部24は、検出値の変動幅が所定範囲W内であると判定した場合には(ステップS22:YES)、所定時間T継続するか否かを判定するためにタイマーをカウントアップする(ステップS23)。所定時間Tは、通常のタッチ操作で継続しないであろう時間であって、例えば20秒である。そして、制御部24は、検出値の変動幅が所定範囲W内の状態で所定時間T継続したか否かを判定する(ステップS24)。
【0038】
その結果、制御部24は、検出値の変動幅が所定範囲W内の状態で所定時間T継続しないと判定した場合には(ステップS24:NO)、ユーザのタッチ操作や外来ノイズを検出しているので、基準値の更新を行わず、各状態において通常処理を行う(ステップS25)。
【0039】
また、制御部24は、検出値の変動幅が所定範囲W内の状態で所定時間T継続したと判定した場合には(ステップS24:YES)、基準値に異常があるので、基準値の更新を行うべく、初期設定状態(ステップS100)に移行して基準値取得処理を行う(ステップS27)。なお、基準値取得処理は、入力された検出信号に基づいて制御基準値を設定する処理である。本実施形態の基準値更新条件成立判定処理では、各交点において、異常を判定するので、高精度に判定することができる。
【0040】
次に、
図7を参照して、タッチ式入力装置10において基準値に異常がある状態でのタッチ操作の検出について説明する。ここで、センサパターン14の各交点のコンデンサCをそれぞれセンサとして制御基準値に対するコンデンサC毎の静電容量の変化量を各センサの検出値とする。
【0041】
図7に示されるように、例えばセンサAのように、センサ検出値である静電容量値が所定範囲W内の変動幅となって、所定時間T継続して検出される場合には、制御部24によって制御基準値に異常があると判定される。一方、例えばセンサBのように、静電容量値の変動幅が所定範囲W内に収まらない場合には、制御部24によってユーザのタッチ操作や外来ノイズを検出していると判定される。
【0042】
次に、
図8を参照して、制御部によるタッチ操作の検出処理を説明する。なお、制御部24は、所定のサンプリング周期(検出周期)で検出処理を実行し、タッチ操作を検出する。
【0043】
図8に示すように、制御部24は、検出部23から検出信号が入力されると(ステップS1)、素データ群に基づいて導電性の異物の有無を判定する(ステップS2)。その結果、制御部24は、操作面11aに異物が有ると判定すると(ステップS3:YES)、制御基準値が初期基準値以外の値に設定されていることを示すフラグがセットされているか否かを判定する(ステップS4)。制御部24は、このフラグがセットされていない場合には(ステップS4:NO)、制御基準値を素データ基準値に設定し(ステップS5)、フラグをセットする(ステップS6)。
【0044】
続いて、制御部24は、制御データ群に基づいて導電性の異物の有無を判定する(ステップS7)。なお、制御部24は、フラグがセットされている場合には(ステップS4:YES)には、ステップS5,S6の処理を実行せずに、ステップS7に移行して制御データ群に基づく異物判定を行う。その結果、制御部24は、操作面11a上に別の異物が有ると判定すると(ステップS8:YES)、制御基準値を制御データ基準値に設定とする(ステップS9)。そして、制御部24は、制御データ群に基づいてタッチ操作の有無を検出する(ステップS10)。なお、制御部24は、制御データ群に基づく異物判定(ステップS7)の結果、操作面11a上に異物が無いと判定した場合には(ステップS8:NO)、ステップS9の処理を実行せずに、ステップS10に移行して制御データ群に基づくタッチ操作の検出を行う。
【0045】
一方、制御部24は、素データ群に基づく異物判定(ステップS2)の結果、操作面11a上に異物が無いと判定すると(ステップS3:NO)、制御基準値を初期基準値に設定し直して(ステップS11)、フラグをクリアする(ステップS12)。その後、制御部24は、ステップS10に移行して制御データ群に基づくタッチ操作の検出を行う。
【0046】
次に、
図9〜
図10を参照して、タッチ式入力装置10における操作面11aに異物が接触した状態でのタッチ操作の検出について説明する。
図9(a)に示すように、タッチパネル11の操作面11aに異物が接触すると、
図9(b)に示すように、異物の接触した範囲の素データ群の各データ値(各コンデンサCの静電容量)はマイナス側に変化するとともに、当該異物周辺の素データ群の値はプラス側に変化する。また、
図9(c)において二点鎖線で示すように、制御基準値が初期基準値に設定されている状態では、制御データ群の各データは、素データ群の各データと同様に変化する。なお、図面では、説明の便宜上、素データ群及び制御データ群のうち、異物を通る一方向(X方向)に沿った各データのみをそれぞれ点で示している。そして、
図9に示す状態では、素データ群の少なくとも1つの値が異物判定閾値以下となるため、操作面11aに異物が無いと判定され、制御基準値がこのときの素データ群と同一の素データ基準値に設定されることで、
図9(c)において太線で示すように、制御データ群の各データはゼロとなる。そして、異物以外の位置にタッチ操作が行われると、制御データ群のうちの指が接触した範囲のデータがプラスに変化することで、適切にタッチ操作が検出される。
【0047】
また、
図9に示す状態から操作面11aに別の異物(図示略)が接触すると、制御データ群は、
図9(c)において二点鎖線で示すように変化する。すると、制御データ群に基づいて操作面11aに別の異物が有ると判定されるため、制御基準値がこのときの制御データ群と同一の制御データ基準値に設定されることで、同図において太線で示すように、制御データ群の各データはゼロとなる。これにより、異物以外の位置にタッチ操作が行われると、制御データ群のうちの指が接触した範囲のデータがプラスに変化することで、適切にタッチ操作が検出される。
【0048】
続いて、
図9に示す状態から
図10(a)に示すように、操作面11aに接触した異物に指が接触すると、
図10(b)に示すように、素データ群のうちの指及び異物の接触する範囲全体のデータがプラス側に変化する。換言すると、素データ群は、大きな指が操作面11aに接触したときと略同じ態様で変化する。このとき、
図10(c)において二点鎖線で示すように、制御データ群の各データは、素データ基準値を基準にしたコンデンサCの静電容量、すなわち素データ基準値からの静電容量の変化を示す。そして、
図10に示す状態では、素データ群の各データは、異物判定閾値以下とならないため、該素データ群に基づいて操作面11aに異物が無いと判定され、制御基準値が初期基準値に設定し直される。これにより、
図10(c)において太線で示すように、制御データ群は、初期基準値を基準にしたコンデンサCの静電容量の変化量を示すことになる。すなわち、制御データ群は、素データ群と同一のデータ群となる。
【0049】
このように、本実施形態のタッチ式入力装置10は、異物の有無によって制御基準値を変更することで異物があったとしてもタッチ操作を検出できるようにしているので、基準値は重要である。そこで、タッチ式入力装置10は、起動時に基準値を更新することで、温度変化や経年劣化等による静電容量(寄生容量)の変化に合わせるようにしている。しかしながら、この更新時にユーザが操作していたり、外来ノイズが存在していたり、操作面11aに異物が存在すると、誤った基準値を取得することとなる。そこで、検出データ値の変動に異常がある場合には、基準値を再度更新することで、正しい基準値として、タッチ操作を的確に検出することができるようになる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)制御基準値は、素データ群に基づいて操作面11aに異物が有ると判定されると、この状態での素データ群に応じた素データ基準値に設定される。そのため、制御データ群は、操作面11aに異物が接触した状態を基準にしたコンデンサCの静電容量の変化量を示すことになる。したがって、コントローラ21は、操作面11aに導電性の異物が接触したままの状態でも、操作面11aに指等が接触したときのコンデンサCの静電容量の変化を的確に把握でき、タッチ操作を適切に検出することができる。また、制御基準値を起動時に更新することで、温度等の周囲環境や経年劣化による静電容量(寄生容量)の変化に対応した基準値を取得して、静電容量の変化量を検出するための基準値が変化してもタッチ操作を検出することができる。ここで、起動時に誤った制御基準値を取得する可能性があるため、制御基準値に異常があると判定した場合には制御基準値を更新することで、タッチ操作を的確に検出することができる。
【0051】
(2)制御基準値に対する静電容量の変化量を示す制御データ群の変動幅が所定範囲W内にあるとともに、所定時間T継続される場合には、ユーザが操作していたり、外来ノイズを検出していた時に誤った制御基準値を取得したり、操作面11aに異物が接触している状態であったりする。このため、このような静電容量の変化を検出した場合に制御基準値に異常があると判定して、制御基準値を更新することで、タッチ操作を的確に検出することができるようになる。
【0052】
(3)制御データ群に基づいて異物の有無を判定するため、操作面11aに異物が接触した状態から時間を空けてさらに別の異物が接触したか否かを判定することができる。そして、制御基準値は、制御データ群に基づいて操作面11aに異物が有ると判定されると、この状態での制御データ群に応じた制御データ基準値に設定される。これにより、制御データ群は、複数の異物が操作面11aに接触した状態を基準にしたコンデンサ毎の静電容量の変化量を示すことになる。そのため、コントローラ21は、時間を空けて操作面11aに複数の異物が接触した場合でも、操作面11aに指等が接触したときのコンデンサの静電容量の変化を的確に把握でき、タッチ操作を適切に検出することができる。
【0053】
(第2の実施形態)
以下、
図11及び
図12を参照して、タッチ式入力装置の第2の実施形態について説明する。この実施形態のタッチ式入力装置は、基準値の更新成立条件が上記第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0054】
制御部24は、タッチOFF状態(ステップS102)と、ノイズ検出・異物検出中状態(ステップS103)と、タッチON状態(ステップS104)との各状態において、基準値の更新条件が成立すると、初期設定状態(ステップS100)に移行する。ここで、基準値の更新条件とは、基準値に異常があると判定した場合であって、本実施形態では、制御データ群に基づいてタッチ操作がある検出エリア(センサエリア)が所定時間T変化しない場合に、基準値に異常があると判定して、基準値更新条件成立判定処理を行う。
【0055】
次に、
図11を参照して、制御部24による基準値更新条件成立判定処理を説明する。
図11に示されるように、制御部24は、検出部23から検出信号が入力されると(ステップS21)、検出値の符号に変化があるか否かを判定する(ステップS32)。すなわち、制御部24は、制御データ群のデータ値の符号が変化したか否かを判定する。これは、データ値を検出しながら、符号の変化が継続してないということは、誤った基準値に設定されているおそれがある。なお、データ値の符号の変化は、指を検出したときと同じ方向でも逆方向でもよい。
【0056】
その結果、制御部24は、制御データ群のデータ値の符号が変化したと判定した場合には(ステップS32:NO)、所定時間T継続するか否かを判定する必要がないので、タイマーをリセットして(ステップS26)、ステップS25に移行する。
【0057】
また、制御部24は、制御データ群のデータ値の符号が変化しないと判定した場合には(ステップS32:YES)、所定時間T継続するか否かを判定するためにタイマーをカウントアップする(ステップS23)。そして、制御部24は、制御データ群のデータ値の符号の変化がない状態で所定時間T継続したか否かを判定する(ステップS24)。
【0058】
その結果、制御部24は、制御データ群のデータ値の符号の変化がない状態で所定時間T継続しないと判定した場合には(ステップS24:NO)、ユーザのタッチ操作や外来ノイズを検出しているので、基準値の更新を行わず、各状態において通常処理を行う(ステップS25)。
【0059】
また、制御部24は、制御データ群のデータ値の符号の変化がない状態で所定時間T継続したと判定した場合には(ステップS24:YES)、基準値に異常があるので、基準値の更新を行うべく、初期設定状態(ステップS100)に移行して基準値取得処理を行う(ステップS27)。なお、基準値取得処理は、入力された検出信号に基づいて制御基準値を設定する処理である。本実施形態の基準値更新条件成立判定処理では、センサエリア毎に判定するので、各交点のセンサを判定するよりも演算処理量を抑制して判定することができる。
【0060】
次に、
図12を参照して、タッチ式入力装置10において基準値に異常がある状態でのタッチ操作の検出について説明する。ここで、タッチパネル11の操作面11aを格子状に区画した検出エリア(センサエリア)においてタッチ操作が検出されているエリアをドットやハッチで示している。
【0061】
図12に示されるように、例えばセンサエリア3bのように、データ値の符号の変化がなく、所定時間T継続して検出される場合には、制御部24によって制御基準値に異常があると判定される。一方、例えばセンサエリア2cのように、データ値の符号の変化がある場合には、制御部24によって制御基準値に異常がないと判定される。
【0062】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1の実施形態の(1)及び(3)の効果に加え、以下の効果を奏することができる。
(4)操作面11aを分割した検出エリア(センサエリア)のうちタッチ操作があるセンサエリアが所定時間T変化しない場合には、ユーザがセンサエリアを操作していたり、外来ノイズを検出していた時に誤った制御基準値を取得したり、センサエリアに異物が接触している状態であったりする。このため、このようなセンサエリアを検出した場合に制御基準値に異常があると判定して、制御基準値を更新することで、タッチ操作を的確に検出することができるようになる。
【0063】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもができる。
・上記実施形態では、タッチOFF状態(ステップS102)と、ノイズ検出・異物検出中状態(ステップS103)と、タッチON状態(ステップS104)との各状態において、基準値の更新条件が成立すると、初期設定状態(ステップS100)に移行する。しかしながら、これらの状態のうち少なくとも1つの状態において、基準値の更新条件が成立すると、初期設定状態(ステップS100)に移行するようにしてもよい。
【0064】
・上記実施形態において、制御部24が制御データ群に基づく異物判定を行わない構成としてもよい。つまり、
図8に示すフローチャートにおけるステップS7〜S9を実行しなくてもよい。なお、この場合において、素データ群に基づいて異物が有ると判定される度に、コンデンサC毎の制御基準値を、この判定したときの素データ群に応じた素データ基準値に設定してもよい。
【0065】
・上記実施形態では、制御部24は、素データ群に基づいてその少なくとも1つのデータが異物判定閾値以下となった場合に異物が接触したと判定した。しかし、これに限らず、例えば素データ群の少なくとも1つのデータが異物判定閾値以下になるとともに、他の少なくとも1つのデータがプラス側に設定された閾値以上となった場合等、他の条件で素データ群に基づく異物判定を行ってもよい。同様に、他の条件で制御データ群に基づく異物判定を行ってもよい。また、タッチ操作の検出も、制御データ群の少なくとも1つがタッチ判定閾値以上となる以外の条件で行ってもよい。
【0066】
・上記実施形態では、素データ基準値を、操作面11aに異物が接触したと判定されたときの素データ群の各データと同一の値としたが、このときの素データに応じた値であれば完全に同一でなくてもよい。同様に、制御データ基準値は、操作面11aに異物が接触したと判定されたときの制御データ群の各データと完全に同一の値でなくてもよい。また、初期基準値は、操作面11a上に物体が何も接触していない状態での静電容量の値と完全に同一の値でなくてもよい。