【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、多機能流体(例えば薬物もしくは他の治療薬等)の供与装置を含む。これらの装置によれば、例えば膀胱、膀胱頚部、腎臓、尿管、尿道、前立腺等の男性もしくは女性の尿路内の場所で、化学物質および生化学物質等の生物学的活性種および薬剤の局所的供与が可能である。前記装置は、単一装置を用いて、下尿路、腎臓および尿管内の種々の組織箇所、ならびに、複数の異なる組織箇所における薬剤の供与を可能にする。種々の泌尿器疾患状態の治療に対して、薬理学的、化学的および生物学的な薬剤の輸液、注入または滴注を提供する装置および方法が有用である。前記装置は、流体供与の精密さおよび精度に基づく優れた治療のために精確な場所に、注入もしくは滴注のために精確な量の流体を供与し得る。
【0009】
前記の多目的で多用途の経尿道薬剤供与装置によれば、医薬、蛋白質、遺伝子、化学物質および細胞の如き生体活性に影響し得る薬剤は、膀胱(本明細書で使用される“膀胱”とは膀胱頚部を含む)等下尿路の一つ以上の局所領域に対し、または、尿管、腎臓、前立腺、尿道等の内部に対し、精確に供与され得る。
【0010】
前記装置は、同一のまたは異なる種類の流体を供与するために、複数の種々の制御可能な深度による組織浸入、複数回の弧状屈曲(arc)、および、複数回の“投出(throw)”(即ち、目標組織内への流体量の浸入深度および場所)を提供し得る。前記装置は、流体供与の場所および量に関して流体供与の優れた設置および精度、患者の優れた快適性および安全性を可能にする、一つまたはそれ以上の可撓性もしくは剛性シャフト等の設計上の特徴、尿を排出するための選択的な流体排出機能、前記装置の先端を操縦して供与場所の精度を改善する機能、前記装置の先端で撮られた、組織および伸張した供与オリフィスの一つ以上の光景に対するユーザによるアクセスを可能にする光学的特徴、複数の流体供与オリフィス、伸張可能な流体供与オリフィス、二以上の異なる流体の供与を可能にする複数の流体供与システム、の内の一つ以上、または患者の快適性と治療の有効性との要求に依存した特徴の任意の組合せを含み得る。
【0011】
前記装置の利点として、医師による薬剤供与の容易さおよび精度が挙げられ、狭窄、尿路感染、BPH、前立腺炎、過活動膀胱、および、尿管の炎症および閉塞等の種々の男性および女性の泌尿器疾患状態の在室治療のための手段となる可能性が伴う。同様に前記装置は、更に患者をより一層快適にしかつ回復させる。
【0012】
一実施形態による装置の概略的特徴は以下の一つ以上を含み得る:可撓性および剛性の膀胱鏡もしくは供与装置の有用性と比較して優れた快適性および有用性、高供与効率、在室治療能力、大きなリザーバ容量による複数回の供与、注入、弧状屈曲および“投出”(前記の“投出”の定義を参照)、高融通性、即ち、尿路および膀胱の全体に亙る機能性、および、例えば異なる場所に複数種類の異なる薬剤、または多量の同一のもしくは異なる薬剤を供与する能力。
【0013】
一実施形態に依れば前記装置は、基端および先端を有するシャフトを含む実質的自蔵式の装置であって、前記先端に流体供与オリフィスおよび前記基端に本体を備えた装置であり得る。前記本体を含む前記装置は、前記先端に連結された光学機器、前記流体供与オリフィスと連通する流体リザーバ、前記流体リザーバと連通する圧力源、前記光学機器の照射使用のための光源、および、先端特徴を起動するアクチュエータ、トリガ等の関連機構であって、先端を操縦する基部操縦アクチュエータ、オリフィス延長部を移動する基部トリガ、または、流体の供与を引き起こす基部トリガの如き関連機構の如き特徴を含み得る。選択的実施形態は、前記装置の先端で、流体供与オリフィスの基端側に流体リザーバおよび圧力源を設置し得る。更なる他の選択的実施形態は、前記装置の基端から離間して遠隔コンソール等に圧力源、流体リザーバ、または両方を設置し得る。前記遠隔コンソールは、装置の基端もしくは本体の、一個以上の流体供与路と流体により連通するポートを介して前記基端または本体に連結できる。
【0014】
下尿路、腎臓、尿管等の組織に対して流体を供与する本発明に係る例示実施形態は、基端と、前記基端から先端まで延在する可撓性シャフトと、前記シャフトの先端で前記シャフトから伸張可能な流体供与オリフィスとを含み得る。前記流体供与オリフィスは、針もしくは無針式流体供与オリフィスであってよい。
【0015】
前記装置は、一つ以上の針もしくは無針式流体供与オリフィスであって、各々が前記シャフトから独立に突出もしくは伸張且つ収縮する供与オリフィスを含み得る。
【0016】
本明細書中に記述された他の任意の特徴と組み合わされた装置は、前記シャフトの長手に沿って配置された複数の無針式供与オリフィスを含み、各供与オリフィスは、組織に対する注入もしくは組織表面に対する滴注のために流体を独立に放出し得る。
【0017】
本明細書中に記述された他の任意の特徴と組み合わされた装置は、前記シャフトの周縁部の回りの複数の位置に配置された複数の供与オリフィスを含み、各流体供与オリフィスは、組織に対する注入もしくは組織表面に対する滴注のために流体を独立に放出し得る。
【0018】
本明細書中に記述された他の任意の特徴と組み合わされた装置は、先端から基端まで延在する排出管孔を含み、前記排出管孔は、前記装置が患者の体内に設置されたときに膀胱から尿を排出し得る。
【0019】
本明細書中に記述された他の任意の特徴と組み合わされた装置は、使用時に膀胱または膀胱頚部内への設置のために前記先端にバルーンまたは他の位置決め機構を含み得る。
【0020】
本明細書中に記述された他の任意の特徴と組み合わされた装置は、先端に、基端に、前記シャフトの長手に沿って、またはそれらの任意の組み合わせにより、一個または複数個の流体リザーバおよび圧力源を含み得る。複数の流体リザーバの各々に供与オリフィスが連結されることにより、異なる流体の供与が可能である。
【0021】
前記装置は、前記シャフトに沿ってまたは前記装置の最端、即ち、最先端に配置されたオリフィス延長部上で、前記シャフト装置から突出する一つ以上の無針式流体供与オリフィスを含み得る。
【0022】
例示装置は、基端における本体、前記本体から先端まで延在する可撓性(例えば操縦可能)なシャフト、前記シャフトの先端における複数の流体供与オリフィスであって一個以上の流体リザーバと流体により連通する流体供与オリフィス、一個以上の流体リザーバと連通する一つまたは複数の圧力源の如き、上述の特徴の組み合わせを含み、流体供与オリフィスは、前記装置の長手に沿って又は前記装置の最先端を越えて前記シャフトから伸張および収縮する伸縮可能部材に配置される。
【0023】
本明細書中で用いられる如く、経尿道流体供与方法における“経尿道(transurethral)”の用語は、尿道内腔の内空間を介して流体供与装置を投入することにより尿道を通りまたは経由して実施される処置を意味し、前記装置は道口(meatus)(男性もしくは女性)または会陰を介して尿道内腔に進入し得ると共に、前記装置の先端は尿道内腔の長手を貫通して、下尿路、腎臓、尿管等の箇所に流体を供与する。
【0024】
一局面において本発明は、尿路の組織へ流体を供与する装置に関する。前記装置は、基端と、前記基端から先端まで延在する可撓性シャフトと、前記シャフトの先端で前記シャフトから伸張可能な流体供与オリフィスとを含む。
【0025】
他局面において本発明は、尿路の組織へ流体を供与する方法に関する。前記方法は、本明細書中に記述された如き装置を用意し、前記先端を尿道内へ挿入して流体供与オリフィスを尿路の所定箇所に載置し、伸張可能な流体供与オリフィスを伸張させ、伸張した前記オリフィスを介して流体を尿路へ供与することを含む。
【0026】
別の局面において本発明は、尿路の組織へ流体を供与する装置に関する。前記装置は、基端と、前記基端から先端まで延在し操縦可能部を備えるシャフト、前記シャフトの先端に流体供与オリフィス、および前記基端と前記先端との間の光学的連通を可能にする光学機器を含む。別の局面は、本明細書において上述された装置の実施形態を使用することにより尿路の組織へ流体を供与する方法に関する。前記方法は、前記装置のシャフトの先端を尿道内へ挿入して流体供与オリフィスを尿路の所定箇所に載置し、前記光学機器を使用して供与箇所を観察し、前記シャフトの先端を操縦し、且つ尿路へ流体を供与することを含む。
【0027】
本発明の別の局面は尿路の組織へ流体を供与する装置に関し、前記装置は二種以上の異なる流体を供与し得る。前記装置は、基端と、前記基端から先端まで延在するシャフトと、前記先端における第一群の二つ以上の流体供与オリフィスであって、相互に流体により連通し且つ第一流体リザーバと流体により連通する第一群の二つ以上の流体供与オリフィスと、前記先端における第二群の二つ以上の第二流体供与オリフィスであって、相互に流体により連通し且つ第二流体リザーバと流体により連通する第二群の二つ以上の第二流体供与オリフィスと、一つ以上の第一流体供与オリフィスを選択的に開閉する第一カバーと、一つ以上の第二流体供与オリフィスを選択的に開閉する第二カバーと、流体リザーバを加圧し、例えば各流体供与オリフィスから独立に流体を供与し得る圧力源とを含む。関連方法は、本明細書中および上述された如き装置を準備し、前記シャフトの先端を尿道内へ挿入して流体供与オリフィスを尿路の所定箇所に載置し、前記シャフトの先端から複数種類の流体を供与することを含む。
【0028】
本発明は、例えば前立腺、腎臓、尿管、尿道組織、膀胱(膀胱頚部を含む)の組織等の下尿路又はその近傍の組織に対して流体を供与(例えば注入もしくは滴注)するに有用な装置に関する。前記装置は、尿道へ挿入された細長いシャフトの先端から治療用“流体”を放出する。前記装置は、複数の箇所に流体を放出するための複数のオリフィスであって、固定、または、前記装置のシャフトに対して移動可能な複数のオリフィスを含み得る。複数のオリフィスを含む設計の実施形態として、延在する、拡開された、または、伸張可能なチェーン、ストリング、アレイまたはシーケンス(例えば“デイジー・チェーン”)が挙げられる。各オリフィスは、延長可能なもしくは扇状拡開する針もしくは無針式流体供与オリフィスの如き突出機構(“オリフィス延長部”)に、および、膀胱の内部の回りに流体を供与するための針または複数の無針式注入もしくは放出機構を収容するバルーン等に配置され得る。
【0029】
本発明は、膀胱の如き下尿路における又はその近傍における組織内、組織等に接触するように、流体を供与(例えば、放出、注入または滴注)する装置、システムおよび方法に関する。前記システムは、例えば膀胱もしくは膀胱頚部の組織内への流体の経尿道的流体供与のために使用されてきた剛性シャフトの先端における単一針を使用するシステムおよび方法の望ましくない又は不都合な特徴を克服し得る。
【0030】
注入は、無針式流体供与システム(例えば無針注入器システム等)無針式流体供与システムにより、または、針を用いて実施され得る。無針注入器システムは、注入液(流体)を組織内へ浸入させるように加圧され得る流体供給源を含み得る。選択的に流体は、針もしくは無針式流体供与システムから比較的低い圧力で前記オリフィスから単に流出すると共に、例えば組織の表面への流体の“滴注”により、組織へそれほど浸入することなく組織の表面に接触してよい。
【0031】
装置の実施形態として、任意の有用な形態により配置された無針式もしくは針タイプの流体供与オリフィスの形態の如き複数の流体供与オリフィスが挙げられる。例示としての複数の流体供与オリフィスは、全てが先端に、装置・シャフトの長手に沿って配置され、前記シャフトの長手に沿い、または前記先端からの所望箇所に、前記シャフトから外方に延在もしくは外方に拡開し、且つ例えば尿道、膀胱頚部または膀胱組織の回りの複数の箇所等に、尿路の解剖学的構造の特定箇所に順次的なまたは同時的な複数回の流体供与(同一のまたは異なる流体)を行うべく設計され得る。
【0032】
例示実施形態に依れば、流体供与オリフィスは、シャフトの長軸を基準に、一つまたは複数の次元で運動し得る。流体供与オリフィスは、例えば前記シャフトの長手に沿って、または前記シャフトの端部または“最先端もしくは最先端部”から“遠方”のように、前記シャフトの長軸に沿う方向において長手方向に運動し得る。この例示実施形態において流体供与オリフィスは、前記先端を含む長軸の方向において前記シャフトの先端(もしくは“最先端”)から突出し得る。二者択一的に又はこれと組み合わせて、流体供与オリフィスは、前記シャフトの長手に沿って所定箇所で、または前記シャフトの前記先端(“最先端”)から遠方における所定場所に、前記シャフトから離れて側方に運動し得る。前記流体供与オリフィスは移動可能なオリフィス延長部(例えば機械的パドル、針、管孔(lumen)、バルーン、薄膜等)の構成要素とされ、前記構成要素は、前記シャフトの長手に沿って所定位置で前記シャフトの側部に沿ってもしくは前記シャフト内において所定位置から伸張および収縮し得るか、または前記シャフトの前記先端(“最先端”)から伸張され得る。
【0033】
本発明の流体供与オリフィスの特徴は、本発明の一部として含まれ、且つ個別的にまたは任意の所望の組み合わせで流体供与装置に含められ得る。例えば、本発明の実施形態は(例えば“位置決め機構”等の)位置決め用特徴を含む流体供与装置を包むが、特徴は、流体供与装置の適切な位置決めを促進することにより、所望の組織の近傍で流体供与のために流体供与オリフィス(針または無針注入器)の位置決めを促進する。位置決め用特徴は種々の性質であると共に、以下の一つ以上を含み得る。装置の先端を取付け固定するために前記装置の先端に配置された単一もしくは複数のバルーン、複数のオリフィス、移動可能オリフィス、装置の基端における、特徴的先端まで所定距離の区分目印(demarcation)、および内視鏡を位置決めするために使用される光ファイバの如き光学的特徴。例えば、2005年7月21日に出願され米国特許公開公報第2006/0129125号として公開され“無針式供与システム”の名称で同時係属中の本譲受人の米国特許出願第11/186,218号を参照されたく、その全開示内容は本明細書中に援用される。
【0034】
流体供与装置の他の実施形態は、流体供与オリフィスに対して所望箇所で組織に接触して選択的に圧力を付与する一個以上の組織引張器であって、組織の表面における注入物の供与のために所望される前記組織の緊張もしくは引張も選択的に行い得る組織引張器と共に、前記の特徴の一つ以上を含み得る。例えば全内容が本明細書中に援用される、本譲受人の米国特許公開公報第2006-0129125号を参照されたく、組織引張器の例として、バルーンの如き膨張可能もしくは伸張可能な特徴、または、パドルの如き機械的に伸張可能な特徴、金属ケージ、他の機械的に伸張可能な構造もしくは突起部、真空等が挙げられる。
【0035】
記述された如き流体供与装置は、流体の注入もしくは滴注の直接観察を可能にする方法であって流体供与オリフィスの内部箇所が視覚的に決定される方法、および流体供与オリフィスの箇所が間接的に決定されるブラインド供与方法と称される方法の如き、種々の供与方法と共に使用され得る。
【0036】
直接観察法は、内視鏡装置と共に使用される形式である例えば光ファイバ等の光学機構であって例えば前記シャフトの構成要素として流体供与装置に含まれる光学機構を使用して、供与部位を直接的に観察する光学的特徴の使用を伴う。光学的特徴または光学機構は、概ね、シャフト(例えば可撓性シャフト等)内に設置されて先端の箇所に対する基端からの観察を可能にし得る任意の光学的構造とされ得る。有用である可撓性光ファイバケーブルは公知であり且つ市販され、例えば、ガラス、または光を伝達する可撓性ポリマー材料から作成され得る。選択的かつ好適に、先端に、又は先端と光学的に連通して、光源が配置され得る。
【0037】
一実施形態において、光電球または他の光源(発光ダイオード)が、先端または基端に置かれると共に、光ファイバケーブルにより前記先端に連結され、前記先端と前記基端との間における第二光ファイバは、前記基端における観察のために光を後方へ搬送する。観察用光ケーブルは、レンズに対し、または、カメラもしくはコンピュータの如き電子的な画像捕捉装置に連結され得る。好適実施形態において、小型カメラもしくは電子的カメラチップ(例えば荷電結合素子即ち“CCD”チップ)の形態の電子画像センサ、および、光源が、前記先端に載置されると共に、電子的に前記基端に連結されて先端からの画像を電子的に提供し得る。
【0038】
ブラインド供与(blind delivery)を可能にする装置は、代わりに、一個以上の非光学的な特徴であって、例えば尿道、膀胱または膀胱頚部等の内部における装置の位置、特に流体供与オリフィスの位置を操作者(例えば医師等)が識別するのを可能にする非光学的な特徴を含むことから、注入もしくは滴注のための流体供与は所望場所で実施され得る。ブラインド供与技術は、装置の基端における区分目印であって、装置の既知寸法および関連する解剖学的構造と組み合わせて前記区分目印を使用することにより先端における特徴部の場所までの距離を参照する区分目印のような長さ測定用特徴の如き前記装置の特徴に基づき、供与箇所を特定し得る。区分目印はまた、例えば超音波式位置測定機器を使用する等の公知技術により前立腺、尿道、膀胱、膀胱頚部等の長さの如き解剖学的特徴の測定と組み合わされ得る。ブラインド供与技術はまた、位置決め用特徴(例えば、装置の先端におけるパドル、延長部、またはバルーンの如き“位置決め機構”等)、および移動可能な流体供与オリフィスの如き、本明細書中に記述された如き装置の他の特徴も含み得る。
【0039】
本発明の流体供与装置の種々の実施形態は、可撓性シャフト、(“可撓性シャフト”と見做される)操縦可能シャフト、剛性シャフト、使用に先立ちもしくは使用に追随して組立ておよび分解される設計の複数片式シャフト、使用に先立ちもしくは使用に追随して組立ておよび分解されるように設計されない一体的シャフト、および、それらの組み合わせ等の異なる形式のシャフトを含み得る。本発明の特定の装置および方法は可撓性の一体的シャフトであるシャフトを含み、前記装置は、内視鏡の如き光学装置を含まないが、バルーンの如き位置決め特徴を含み且つブラインド供与方法と共に用いられる。他の装置および方法は、内視鏡および本明細書中に記述された如き他の特徴を含む多重構成要素シャフトを含む。更なる他の実施形態は、操縦可能である一体的シャフトを含む。
【0040】
“操縦可能”シャフトとは、半剛性であり、更に、“可撓性”シャフトであって、装置の基端における一つ以上の操縦アクチュエータの操作により前記シャフトの先端で二次元もしくは3次元で制御(即ち操縦、関節運動、偏向、または、制御可能に屈曲)され得るシャフトを指している。操縦機構は種々の機械的設計形態を含み、一例は、シャフトの壁部内の複数本のケーブルの差動的な押出しおよび引き戻し(または緊張および圧縮)に基づき二次元の運動を可能にする。シャフトの端部の3次元の運動を可能にするために、単一シャフト内にこれらの機構の二つ以上が含まれてよい。
【0041】
操縦可能シャフトおよび機構は、内視鏡および他の医療装置の分野で知られ理解され、且つ二次元もしくは3次元の運動を可能にするように設計されて、シャフトの遠位先端即ち“最先端”の所定長を装置の基端に向けて直線状に後方に向けて少なくとも90°もしくは少なくとも180°の如く例えば少なくとも45°の所望量にて偏向させ得る。前記最先端の偏向時に生成される屈曲の曲率半径は、所望により選択されてよく、前記シャフトおよび操縦機構の全体的設計形態と、装置の所望用途とに依存し得る。一実施形態に依れば、前記曲率半径は、0.5〜2インチ(約1.27〜5.08cm)(例えば0.6〜1インチ(約1.524〜2.54cm))の長さを有する先端シャフトの一部が膀胱内で180°後方に屈曲するのを可能にする曲率半径であり得る。
【0042】
前記操縦可能部の長さは、概ね、例えば、0.5〜1.8インチ(約1.27〜4.572cm)または、0.6〜1インチの如くシャフトの端部における2インチのように、所望の如くとされ得る。典型的にシャフトの操縦可能部は、枢動連結部に沿う等、二次元で関節運動し得る。一実施形態に依ればシャフトは、相互に直交する平面である夫々の二次元において各々が操縦可能な二つの部分の如き、二つ以上の操縦可能部を有し得る。例えば、シャフトの端部の0.5〜2インチ(例えば0.6〜1インチ)は第一の二次元において操縦可能とされ、前記シャフトの隣接する0.5〜2インチ(例えば0.6〜1インチ)は第二の二次元において操縦可能とされ、選択的に第二の二次元は、前記第一の二次元により形成される平面に対して直交する平面を形成し得る。
【0043】
操縦機構の例として、シャフトの長手に沿って蝶番留めされた複数の偏向点を操作することによりシャフトの最先端もしくは一部の操縦(即ち関節運動、偏向など)を可能にする機構が挙げられる。シャフトを二次元で屈曲もしくは偏向させるために複数の制御ワイヤにより操作される。例えば、出願番号第10/955,930号である米国特許公開公報第2006/00784383号、出願番号第11/398,890号である米国特許公開公報第2006/0241564号、出願番号第09/969,927号である米国特許第6,610,007号を参照されたく、それらの各々の全内容は本明細書中に援用される。言及された如く、操縦機構の一つまたは二つ以上が操縦可能シャフトの長手の一つ以上の異なる部分に沿って含まれてよく、二次元もしくは多次元における一つまたは複数のシャフト部の操縦が可能である。
【0044】
本発明の種々の実施形態は選択的にまたは二者択一的に、装置からの流体の偶発的もしくは不適切な放出を防止する安全性特徴、トリガ機構の如き利便性または効率を付加する特徴、複数種類の流体供与または同一もしくは異なる流体の異なる量の複数回の放出を可能にするシステムおよび方法、注入量もしくは滴注量もしくは浸入深度を制御もしくはプログラムする方法、または一回もしくは複数回の流体供与のための他の特徴を含み得る。
【0045】
治療用流体の注入を可能にする装置、システムおよび方法が提供される。前記装置は、尿道、膀胱、腎臓、尿管、前立腺等の下尿路または近傍組織の疾患に関する種々の用途に使用され得る。特定実施形態において、医薬または他の活性化学作用物質または生体作用物質の如き流体が、尿道、前立腺、膀胱または膀胱頚部の組織内へ注入され得る。前記装置は、下尿路、腎臓、尿管等の内部の所望箇所に一つまたは複数の流体供与オリフィスを載置して、所望組織へ治療用流体の供与(例えば注入または滴注)を可能にするように設計される。
【0046】
本発明は、下尿路の組織に対する流体供与の他のモードに関する実際的問題を特定して対処する。例えば単一針を使用して剛性シャフトの先端で膀胱に流体を注入するには、1本の針のみを有する剛性シャフトの扱いにくい性質の故に、特に器用で経験のある医師が必要とされ得る。本明細書中に記載の流体供与装置および方法は、シャフトの選択的な可撓性、複数の針もしくは無針式流体供与オリフィスの使用、および、所望に応じて複数の針もしくは流体供与オリフィスを配置、移動、突出し、開閉して組織内へ流体を注入もしくは組織表面に流体を滴注するために流体を放出する能力等の種々の理由により、剛性シャフトの先端における単一針の使用と比較して好適である。
【0047】
装置および方法は本明細書中で論じられる種々の特徴を含み、それらの任意の特徴は、別個に、または他の特徴の任意の一つ以上と組み合わせて使用され得る。例示特徴は次のものを含む。複数の分離可能片または単一の“一体的”片による装置のシャフトの構成、剛性シャフトまたは可撓性シャフト、流体供与オリフィスを移動、突出、開閉する能力、複数の流体供与システム(例えば複数のオリフィスおよびリザーバ)、流体供与オリフィスの個数および位置決めに関する特徴であって、装置のシャフトの長手に沿って異なる位置に位置決めされた又は装置のシャフトの周縁部の回りの異なる位置に配置された複数の伸張可能針もしくは複数の伸張可能な無針式流体供与オリフィス、および移動可能な流体供与オリフィスであって、シャフトの長手に沿って、シャフトの周縁部の回りで、シャフトの長手に沿って且つ周縁部の回りで移動可能であるか、又はシャフトの端部から遠方またはシャフトから側方もしくは半径方向に突出する移動可能な流体供与オリフィスの如き特徴、例えば尿道、膀胱または膀胱頚部等の内部で装置の一部の箇所を固定するバルーンまたは他の機構の如き位置決め機構、および、装置の偶発的もしくは不適切な起動または装置からの流体の放出を防止する安全性特徴、および、本明細書中に記述された他の特徴。
【0048】
本発明の装置は、一つ以上の流体リザーバと流体により連通する一つ以上の流体供与オリフィスを含む。流体リザーバは、装置の先端で一つまたは複数の流体供与オリフィスから流体の一回または複数回の放出を可能にするに足りる分量の所定量の流体を含む。管孔が流体供与オリフィスを流体リザーバに連結してよく、前記管孔は、装置の基端もしくは先端に、または装置の基端から離間してコンソール内に位置決めされ得る。一本または複数本の流体供与管孔は、例えば、シャフトの先端に、シャフトの基端における箇所に、シャフトの基端に配置された本体に、または遠隔コンソールにおける如く前記シャフトおよび本体から離間する等の装置の任意の部分に配置された流体リザーバに流体供与オリフィスを連結してよい。
【0049】
一つの例示タイプの流体供与装置は、概ね、基端に本体を含み得る。前記本体は、例えば前記本体の操作により装置・シャフトを挿入する等、ユーザが前記装置を把持して操作するのを可能にする取手を含み得る。本体は、また、起動用特徴であって、例えば操縦可能シャフトの操縦可能先端を操縦して、流体供与を起動し、移動可能もしくは突出可能な流体供与オリフィス、選択的ポートを移動させて前記本体を遠隔コンソールに連結する起動用特徴、および、光学的特徴を介した観察を可能にするレンズの如き選択的な光学的特徴も含み得る(供与場所を観察するために)。
【0050】
本体は選択的に、一つ以上の流体チャンバ(例えばリザーバ)と、流体に対して圧力を付与する機構とを含み得る。前記本体にシャフトが取付けられる。流体チャンバは流体リザーバ、注入器もしくは注射器チャンバであってよく、または装置はその両方を基端または先端に含み得る。リザーバとは、流体のための固定容積の保持空間を指し得るが、必ずしも、例えば流体供与管孔を経由して針もしくは無針式流体供与オリフィスから流体を起動もしくは放出するために加圧される等低圧もしくは中圧もしくは高度に加圧され得る必要はない(但し、されてもよい)。前記圧力は、流体が組織へ浸入するために、または浸入せずに組織の表面に付与されるに十分とされ得る。リザーバは、一回分または複数回の分量の流体を収容するように寸法設定され得ると共に、取外し可能または交換可能な小瓶の形態とされ得る。
【0051】
流体チャンバもしくはリザーバの別のタイプの例示注入器チャンバが説明される。前記チャンバは可変容積を有し、チャンバの容積(および圧力)を増加もしくは減少させるプランジャ、ピストン、ベローズまたは他の機構等に基づいて可変する。注入器チャンバは、前記注入器チャンバ内に収容された流体が前記注入器チャンバから圧力下で放出され、例えば、装置を起動し、または、供与オリフィスから流体を放出することにより流体を滴注し組織へ浸入せずに組織の組織表面と接触して組織表面を被覆し、または圧力により流体を放出して組織への浸入により流体を注入するように、プランジャ、ベローズまたはピストンに取付けられた圧力源により加圧され得る。前記圧力源は、スプリング、ソレノイド、圧縮空気、手動注入器、電力、油圧、空気圧源等の任意のエネルギ源(例えば機械的、電気的等)とされ得る。
【0052】
前記本体に取付けられた例示流体供与装置は、例えば道口を通り、または会陰切開部を通り、好適には道口を通り、尿道内へ挿入される細長いシャフトを含み得る。好適には、外部切開の代わりに道口を介して装置を設置する能力によれば、患者は外来患者をベースに治療される。可撓性シャフトの使用は、患者の快適さを改善する。
【0053】
前記装置は先端および基端を含む。シャフトを含む先端は、概ね、治療処置の間に患者の体内内部に位置決めされる装置の部分を含むと考えられる。先端は典型的に、使用の間に流体もしくは組織に対して作用する機能的特徴であって、一つ以上の流体供与オリフィス、一つ以上の供与オリフィスを支持もしくは収容する供与ヘッドもしくは延長部(“オリフィス延長部”)、使用されるならば一個以上のバルーンまたは他の形態の位置決め装置または位置決め機構、排出管孔に連結された選択的な排出オリフィス、無針式流体供与オリフィスに対するアクセスを可能にする選択的な開閉機構、光学機器等の機能的特徴を含む。先端は、また、流体リザーバ、加圧機構、流体リザーバを流体供与オリフィスに連結する流体供与管孔、またはこれらの二つ以上の任意の組合せ等の流体供与手段も含み得る。
【0054】
オリフィス延長部は、流体供与オリフィスをシャフトから所定距離だけ移動させるように操作および制御され得る任意の構造であり得る。一例は機械的パドルであり、前記パドルは、起動されてシャフトから離間拡開し且つシャフトに向けて引き戻され得ると共に、前記パドルの移動可能端部に前記パドル自体上の流体供与オリフィスを含み、また前記パドルの他端は前記シャフトに設置されている。オリフィス延長部の別の例は、前記シャフトの長手に沿って所定場所または前記シャフトの端部(“最先端”)における所定箇所から伸縮する伸張可能な管孔である。オリフィス延長部の更に別の例は、前記バルーン上の所定場所における一つまたは複数の流体供与オリフィスと、前記流体供与オリフィスをシャフトに連結する管孔(例えば伸張可能な管孔等)とを含むバルーン、扇(fan)または他の薄膜(membrane)構造である。前記バルーン、扇または薄膜は、膨張、外方拡開または展開されて、流体供与オリフィスを前記バルーン、扇または薄膜と共にシャフトから離間し移動させる。
【0055】
伸張可能管孔を含むかまたは伸張可能管孔の形態であるオリフィス延長部に関し、“伸張可能管孔”とはシャフトから伸張され得る管孔である。伸張可能管孔は、シャフトの長軸に沿って長手方向で構成要素を含む方向において、またはシャフトの長軸から側方に構成要素を含む方向において、または両方向に構成要素を含む方向において、シャフトから所定距離へ前記管孔のオリフィスを伸張させるように(即ちオリフィスをシャフトから離す)移動する。
【0056】
伸張可能管孔は、概ね本明細書中に記述された如き流体を供与し得る任意の管孔であり得ると共に、必然的に、所望の運動、機械的特性および流体供与を可能にするに適宜寸法および構造および機械的特性とされ得る。縮小寸法、所望の可撓性および弾性、および大きな流体圧力に耐える強度および能力を組み合わせることが有用である。管孔の材料、壁厚、および、内径および外径等の特徴が組み合わされて、所望の強度および可撓性が得られる。内径は好適には圧力低下を少なくするために十分に大寸とされ、所望の壁厚および材料は所望の圧力抵抗および可撓性を可能にする。
【0057】
管孔構造は、管孔の全長に沿って、連続的な内径、外径および壁厚を呈し得る。選択的に管孔は、基端に大きな壁厚(更に大寸の外径)および先端には小さな壁厚(更に小寸の外径)として、前記管孔の長手に沿って寸法(例えば壁厚等)が変化してもよい。本明細書中に記述された管孔に対する例示寸法は、全体的なシステム設計形態に依存し、且つ流体が注入により供与されるのか滴注により供与されるかに依存し、圧力低下、強度および可撓性を含む特性のバランスに適した任意寸法とされ得る。所定のバランスは、例えば、比較的に小寸の内径は圧力低下を大きくし、薄い管孔壁は可撓性を高めるが強度を低下させ得るから必要である。遠隔コンソール(後述を参照)を含む装置に対し、流体の注入(滴注と比較して)のために、内径の例は、例えば0.022〜0.030インチ等の0.020インチ超とされ(以下におけるポリエーテルエーテルケトン即ち“PEEK”で作成された管孔に対して)、同一例示管孔についての例示外径は、少なくとも0.032インチ、例えば0.034〜0.045インチとされ得る(1インチ=約2.54cm)。
【0058】
管孔は、適宜可撓性、弾性かつ強力である任意の材料であって、金属(例えばニチノール、ステンレス鋼、または医療装置に有用な他の金属)、金属強化ポリマー、ポリマー複合材料、またはポリマー材料で作成され得る。代表的な管孔は、ポリイミドの如き高強度ポリマー、Ultem(登録商標)の商標名でゼネラル・エレクトリック社から入手可能なポリエーテルイミド、およびVictrex plc社から入手可能なPEEK(登録商標)(ポリエーテルエーテルケトン)等の直鎖芳香ポリマーで作成され得る。幾つかの実施形態において、非金属ポリマー管孔は、ナノ粒子、粘土もしくはガラス等の材料を含めることにより補強され得る。現在において企図される幾つかの実施形態において非金属ポリマー管孔は、例えばケブラーまたは他の高強度ポリマーにより編組された管材の如く、一種類以上のポリマー、カーボン、グラファイトまたはガラス繊維により補強され得る。例えば、2006年11月21日にクランクにより出願されて“噴射注入装置のための注入管”と称された米国仮特許出願第60/866,741号を参照されたく、その全内容は参考として本明細書中に援用される。
【0059】
管孔は、少なくとも約2,000ポンド/平方インチ(psi)を超える破裂強度、および、一実施形態において約2,000psi〜約5,000psiの範囲内の破裂強度を有するように製作されてよい。管孔は膨張特性を有するように製作され、その場合に管孔の先端に配置されたオリフィスもしくは噴射ポートは、治療流体を供与するために使用される流体噴射上に悪影響を与える膨潤を伴わない形状および寸法を保持する。
【0060】
例示流体供与装置の基端は、使用時に患者の外部に留まる本体を含み得る。基端は、装置の使用時にシャフトの操作等の装置の取り扱いを可能にする構造(例えば取手または他の形式の把持体)を含み得る。基端は、また、治療処置時に内部となる必要のない又は内部となり得ないという他の特徴も含み得る。基端の一部であり得る本体等の特徴の例としては、流体供給源およびその流体に対する圧力源、装置に含まれるなら、内視鏡と共に使用される形式の接眼鏡、または、他の光学的特徴、管孔、管孔延長部、流体供与手段、または、先端における別の特徴を保持もしくは起動するためのトリガもしくは取手の如き、機械的特徴、電源、圧力源、流体供給源または真空源の如き、付属機器に基端を取付けるアダプタ、排出管孔に連結される排出ポート等が挙げられる。
【0061】
本体は、また、選択的もしくは付加的に、外部もしくは遠隔の圧力源、真空源または外部もしくは遠隔の流体リザーバの如き外部および選択的には遠隔の構成要素に本体を取付けるための一つ以上の取付ポートも含み得る。例えば本体は、流体供給源を含むコンソールに遠隔的に取付けられる流体ポートを有し得る。前記コンソールは、流体リザーバと、流体を加圧して前記コンソールから、本体を通り、シャフトにおける流体供与管孔を通り、その後に流体供与オリフィスを通る前記流体を加圧する圧力源とを含み得る。
【0062】
流体供与装置のシャフトは細長い構成要素であってよく、前記細長い構成要素は、概ね、基端から先端まで延在し、且つ前記細長い構成要素は、基端または他の外部特徴の使用および操作により先端の特徴の使用および操作を可能にする特徴および構成要素を含む。シャフトは、概ね、所望に応じて種々の構成にされ、例えば、使用に先立ち、使用時に、または使用後に組立ておよび分解されるように設計されない一体的構成とされ得るか、または手術処置において使用されるべく組立てられた全体物として相互に嵌合する複数の細長いシャフト構成要素もしくは要素を含む複数片構成であって所望により使用の前後に組立ておよび分解される複数片構成とされ得る。例えば、可撓性、剛性、一体的または複数片で構成される異なるタイプのシャフトを記述する米国特許公開公報第2006/0129125号を参照されたい。
【0063】
多構成要素または一体的構造型のシャフトはいずれも、可撓性、操縦可能または剛性であり、任意の斯かるタイプのシャフトは、本明細書中に記載された装置の特徴の内の任意の特徴を含み得る。
【0064】
任意タイプのシャフトに対し、または任意タイプのシャフトの構成要素に対して、金属またはポリマー材料が有用であり得る。剛性な複数片シャフトに対して特に有用であり得る材料としては、硬質プラスチックまたは剛性金属材料または剛性セラミック材料または複合材料等の剛性ポリマー材料が挙げられる。特定例としては、ニチノール、ポリカーボネート、ステンレス鋼、ABS、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ナイロン、PEEK等が挙げられる。
【0065】
可撓性シャフト、または複数片シャフトの可撓性構成要素に対して有用な材料は、(例えばフォーリー・カテーテル等の)尿道カテーテルの如きカテーテル装置に対して有用であると知られたポリマー材料等の、相対的に可撓性のポリマー材料であり得る。可撓性ポリマー材料の特定例として、シリコーン、ポリウレタン、ポリエーテル・ブロック・アミド等のブロック共重合体、ゴム、ラテックス等が挙げられる。
【0066】
操縦可能シャフトに対して有用であり得る材料として、可撓性シャフトに対して上に列挙された同一材料の幾つかが挙げられ、金属もしくは剛性ポリマー(例えば蝶番)、支持部もしくは外層用の剛性もしくは可撓性ポリマー、金属強化ポリマー等が含まれる。
【0067】
流体供与装置のための単一構成要素、もしくは“一体的”シャフトは、装置製造時点で実質的にもしくは完全に組立てられるシャフトであって、使用に先立ちまたはその後に組立てもしくは分解されるようには設計されない。前記シャフトは、可撓性、操縦可能または剛性であり、金属もしくはポリマー材料または斯かる材料の組み合わせにより製作され得る。可撓性一体的シャフトは、流体供与装置の基端から先端まで延在する可撓性の細長い構成要素であり、一つ以上の針もしくは無針式流体供与オリフィスもしくは斯かるオリフィスのための開孔、管孔、トリガ、起動機構、操縦機構、操縦可能シャフトのための蝶番、光学機器等の必要な機能要素を形成しもしくは含み、先端における特徴を基端からもしくは遠隔的に操作する。一体的シャフトのこれらの特徴は、シャフトから取り外されるように又はシャフトの複数の構成要素へ分解されるようには設計されない装置の実質的永続的特徴であり得る。
【0068】
一実施形態に依れば、一体的シャフトは、可撓性ポリマーから製作された可撓性シャフトであり、管孔(例えば流体供与管孔、排出管孔、膨張管孔等)、起動機構、光ファイバの如き光学機器、および先端の特徴もしくは機構を装置の基端に連結する他の任意の必要機械的特徴を含み得る。前記各管孔は、シャフト、またはシャフトの内壁もしくは外壁もしくは表面により形成され又はそれらの内部に埋設された可撓管孔であり得る。
【0069】
必要であれば管孔は、先端における流体供与オリフィスを基端における流体の加圧供給源に連結する流体供与管孔の場合のように、動作圧力に耐えるに十分な強度を有する。例示的な高圧(“注入圧力”)は、2000ポンド/平方インチ以上とされ得る。流体供与管孔は、斯かる注入圧力に耐え得る可撓材料(例えば金属もしくはポリマー管材)であり、例えば、本明細書中の他の箇所に記述された如きニチノール、ステンレス鋼、補強ポリマー(例えば編組された)で製作され得る。
【0070】
流体供与管孔は、また、本明細書中に記述された如く流体供与オリフィスの運動を可能にするように構成され且つ組立てられ得る。一例として流体供与管孔は、シャフトの長手に沿って長手方向に移動し、前記流体供与管孔は、先端方向、および選択的に例えばシャフトの最先端から側方に伸張され得る。選択的もしくは付加的に流体供与管孔は、シャフトの長手に沿って所定位置で前記シャフトから離れ、前記シャフトの側部から離れ、シャフトに対して運動する流体供与オリフィス延長部を屈曲もしくは偏向させることにより、シャフトの長軸から離間する前記流体供与オリフィスの側方運動を可能にする。
【0071】
起動機構は、所望に応じて針(または他の流体供与オリフィス延長部)を伸張させ、先端における注入器もしくは圧力源を起動し、流体供与オリフィスを含む流体供与オリフィスもしくはオリフィス延長部を移動させ、基端と先端との間で装置を操作するために使用されるワイヤ、ヒンジ、レバー、または他の連結もしくは機械的装置の如き機械的もしくは電子的な特徴もしくは連結を含みまたはそのような形態にされ得る。基端における起動機構の他の例としては、注入液を圧力下で流体供与管孔を介して針もしくは無針式流体供与オリフィスへ流し組織に滴注もしくは注入を行うために有用なプランジャまたは他のアクチュエータが挙げられる。
【0072】
“可撓性シャフト”の用語は十分に柔軟なシャフトを指し、前記シャフトは、道口または外部切開部を介して尿道内へシャフトが挿入されるのを可能にすべく屈曲および撓曲し、且つフォーリー・カテーテルにより行われ得る如く尿道、および選択的には膀胱頚部もしくは膀胱内へシャフトの先端の一部が案内されるのを可能にする。可撓性シャフトは、フォーリー型カテーテルにおける如く患者の解剖学的構造に適合もしくは部分的に適合する十分に軟質かつ柔軟であり得る。対照的に、“剛性”シャフトは実質的に剛性であり、複数片構造に使用され、使用時における基端の操作による先端の制御を可能にする。剛性シャフトは典型的には、例えば剛性内視鏡もしくは腹腔鏡手術装置と共に使用される金属もしくは同様の剛性タイプのシャフトであってよい。“操縦可能”シャフトは非剛性かつ可撓性であり、記載目的から操縦可能シャフトは“可撓性”であると考えられるが、操縦機構を含む構成の故に、典型的なフォーリー型カテーテルのシャフトよりも僅かに撓曲性が低くなり得る。“操縦可能”シャフトは、操縦可能な内視鏡または他の操縦可能な医療装置について使用される形式とされ得る。
【0073】
操縦可能もしくは可撓性装置・シャフト等のための一体的シャフトは、フォーリー・カテーテル、操縦可能な内視鏡装置等の公知の尿道カテーテル・装置の製作に使用されるのと類似の材料および方法により構成され得るが、一つまたは複数の流体供与オリフィス(例えば針もしくは無針式流体供与オリフィス)および選択的に本明細書中に記述された如き他の特徴を装置が含むように構成され得る。一体的シャフトは以下の内の任意の一つ以上を含み得る。一つまたは複数の流体供与オリフィス(例えば可撓性)、シャフトの長手もしくは周縁部に沿って移動する移動可能な流体供与オリフィス、シャフトから離間して側方もしくは長手方向に流体供与オリフィスの突出を可能にするオリフィス延長部((例えばパドル等)機械的延長部、バルーン、針、または、伸張可能管孔等)、組織引張器、装置を位置決めするバルーン、可撓性光ファイバケーブルの如き光学的特徴、無針式流体供与オリフィスを選択的に露出して、複数の流体供与オリフィスの内の任意の一つまたはその他から流体の放出(注入または滴注)を可能にするポートもしくは他の開閉機構、一つまたは複数の流体供与オリフィス(即ち並列もしくは直列のオリフィス)を各々が含む一本または複数本の管孔延長部、シャフトから別個にまたは共働して伸張可能な管孔延長部のアレイ等。これらの特徴の任意の一つ以上は、装置の所望長さに沿って、または装置の先端の所定箇所に、または一体的シャフトに沿って配置され、管孔または起動機構により基端に機能的に連結され得る。
【0074】
一体的シャフトは、可撓性シャフトを含む装置であって、使用時に装置を位置決めするために先端に一つ以上のバルーンの如き装置位置決め機構を含む装置に特に有用である。装置位置決め機構を使用すると、内視鏡の如き光学的特徴に対する必要性が好適に排除され得ることから、流体供与はブラインド観察法により実施され得る。(装置の更に他の実施形態は、光学的特徴と組み合わせて可撓性シャフト(例えば操縦可能)を含む。)本発明の特定装置は、一体的な可撓性シャフト、装置の先端から複数回の流体供与を行い、選択的にシャフトの長手もしくは周縁部に沿って移動可能であり又はシャフトから伸張可能な複数の針もしくは無針式流体供与オリフィス、複数種類の異なる流体の供与を可能にする複数の流体供与システム、および先端における一つ以上の膨張可能バルーン、および最先端部における排出オリフィス、および膀胱(設置されたときに)から装置の基端に通じる排出管孔の如き、尿道カテーテルの他の特徴を含み得る。可撓性シャフト、膀胱から尿を排出する排出管孔(例えばフォーリー・カテーテルが行うように)、および選択的バルーンを含む斯かる装置は、本発明において“流体供与カテーテル”形態と称され得る。使用に際して“流体供与カテーテル”形態は、剛性シャフトによる流体供与装置における如く外部切開部および組織通路を介して尿道へ挿入されるのと対照的に、フォーリー・カテーテルによるのと同様に、尿道の外部オリフィス(道口)を介して挿入され得る。
【0075】
一体的シャフトは、また、可撓性操縦可能シャフトを含む装置であり、ユーザが流体供与場所を観察し且つユーザが供与場所で所望により前記装置の先端もしくは最先端を操縦するのを可能にし、流体供与の精確な載置を可能にする光学機構(供与箇所を照射するライトを含む)を含む装置に特に有用であり得る。本発明の特定の装置は、一体的な操縦可能シャフト、装置の先端からの複数回の流体供与(同一のまたは複数の異なる種類の流体)を行う一つまたは複数の針もしくは無針式流体供与オリフィスを含み、各流体供与オリフィスは選択的且つ好適には、装置の長手もしくは周縁部に沿って移動可能であり、またはシャフトから離間して長手方向に、先端方向にまたは側方に伸張可能であり得る。前記装置は選択的に、先端における排出オリフィス、および膀胱(設置されたときに)から装置の基端まで通ずる排出管孔の如き、尿道カテーテルの他の特徴を含み得る。使用に際し、操縦可能シャフト、排出管孔および光学的特徴を含むこれらの装置形態は、剛性シャフトによる流体供与装置における外部切開部および組織通路を介して尿道へ挿入されるのと対照的に、フォーリー・カテーテルによるのと同様に、尿道の外部オリフィス(道口)を介して挿入され得る。
【0076】
一体的シャフトと対照的に、“多重構成要素”シャフトと称されるシャフトは、組立てられた全体物として相互に嵌合する二個以上の細長い部材片もしくは構成要素であって使用に先立ちまたは使用後に分解され得る二個以上の細長い部材片もしくは構成要素を含み得る。多重構成要素シャフトの典型的な構成要素は、細長い剛性中空鞘の形態である外シャフトもしくは“鞘”と、前記外シャフトと一体的に組立てられて機能的な組立て済み多重構成要素シャフトを形成し得る一個以上の付加的な内シャフト構成要素とを含む。
【0077】
多重構成要素シャフトの外シャフトもしくは“鞘”は、一個以上の内シャフト構成要素を含み、尿道内に載置される寸法および形状にされた基本的鞘であり得る。複数片シャフトの鞘構成要素は、中空で剛性な鞘のみを含み得るか、または複数の針もしくは無針式流体供与オリフィス、一つ以上の組織引張器、流体供与管孔もしくは供与ヘッド、一つ以上のバルーンの如き位置決め構成要素、および鞘の先端における機能的特徴を基端に連結する一本以上の管孔の如き、装置の機能的特徴を有する中空で剛性な鞘を含み得る。例示外シャフトは、尿道を介し、または会陰領域における外部切開部を介して患者の体内へ挿入され得る剛性スリーブ(例えば金属または剛性プラスチック製)であり得る。挿入されたとき、一つ以上の内シャフト構成要素は、所望に応じて外シャフト内へ挿入され得る。
【0078】
多重構成要素シャフトの内シャフト構成要素は、外シャフト構成要素もしくは鞘内に嵌合され得ると共に、針もしくは無針式流体供与オリフィス、一本以上の管孔、一つ以上の供与ヘッド、またはレンズ、開放観察チャネルの如き光学的特徴、組織引張器等の、装置の一つまたは複数の機能的特徴を含み得る。針もしくは無針式流体供与オリフィスを含む内シャフトは、例えば内“流体シャフト”と特に称され、内シャフト構成要素の基端に一本または複数本の流体供与管孔を介して連結された先端における一つまたは複数の針もしくは無針式流体供与オリフィスを含み得る。選択的に内シャフト構成要素(または針、流体供与オリフィスまたは供与ヘッドの如き前記構成要素の特徴)は、使用時に供与ヘッドまたは流体供与オリフィスの移動を可能にする等の任意の理由により、概ね外シャフト構成要素またはシャフト内で移動可能である。
【0079】
同様に選択的に、本発明の実施形態は、複数の装置特徴を単一の剛性シャフト構成要素へ組み合わせてよい。例えば剛性シャフト構成要素は、外鞘を内流体シャフトに組み合わせ、内視鏡を受容する寸法および形状にされ得る。選択的に剛性シャフト構成要素は、外剛性鞘を内視鏡と組み合わせ、流体供与管孔と流体供与オリフィスとを収容する内“流体シャフト”を受容する寸法および形状にされ得る。更に別の代替策として内視鏡は、また、組立ておよび分解されるように設計されない単一剛性シャフトへ、外シャフト構成要素および注入特徴を組み合わせることができる。
【0080】
概ね、種々のシャフト設計の任意設計が、ブラインド観察法または直接観察法のいずれにも一緒に使用され得る。光学的特徴は、内視鏡型装置に有用であると知られた光ファイバ装置または他の光学装置の任意形態の光学的特徴等と共に、公知の材料および構成を用いて、多重構成要素シャフト、一体的シャフト、剛性シャフト、操縦可能シャフトまたは可撓性シャフトの内の任意シャフトに取入れられ得る。装置の基端には接眼鏡が配置され得ると共に、一つ以上の開放観察チャネル、光ファイバ、レンズ、複数レンズ、ミラー、屈折もしくは反射装置、またはこれらの組み合わせが使用され、装置の基端と先端における場所との間の視覚的連通が形成され得る。例えば可撓性シャフト(操縦可能である等の)に関し、可撓性光ファイバは、装置の基端における接眼鏡から装置の先端まで、シャフトに沿って所定箇所に延在し得る。前記光ファイバは、例えば流体供与オリフィスを観察する場所等で、シャフトの先端の観察を可能にする。
【0081】
直接観察法に依れば、光ファイバの如き光学的特徴は、選択的には操縦可能シャフトの先端と組み合わせて内部尿道、膀胱、膀胱頚部、尿管もしくは腎臓の如き内部組織を観察するために使用され、直接観察法は、所望に応じて例えば前立腺嚢、膀胱頚部、膀胱、尿管、腎臓等の内部における流体供与オリフィスまたは複数の流体供与オリフィスの精確な載置を促進し得る。
【0082】
他方、ブラインド観察法は、光学的特徴に対する必要性を排除し得ると共に、代わりに、装置の既知寸法等の他の特徴を使用することにより注入針または無針式流体供与オリフィスの位置決めに依存し、または一個以上の先端バルーン等の装置の先端の特徴、もしくは基端バルーン、または所望の組織箇所にブラインド流体供与を共に可能にする他の位置決め機構、装置の基端における距離区分目印、組織引張器、移動可能オリフィスを位置決めすることに依存してよい。
【0083】
シャフト特性(例えば剛性または可撓性シャフト(例えば操縦可能な)等の)および本明細書中に記述された他の特徴の任意の組合せは、所望に応じて流体供与装置に有用であり得る。幾つかの特殊な特徴または各特徴の組み合わせは、剛性もしくは可撓性シャフトの設計のいずれかに特に有用であり得る。剛性の多重構成要素シャフトまたは操縦可能な一体的シャフトは、直接観察特徴と組み合わされれば特に有用であり、装置の先端における一つ以上のバルーンの如き他のタイプの位置決め特徴の使用を選択的に排除し得る。
【0084】
装置の一定の一体的可撓性シャフトの実施形態は、可撓性シャフトを含むので有用であり、可撓性シャフトにより患者に快適さを与え、尿道にアクセスするための外部切開部の必要性の排除し(剛性シャフト設計により通常的に使用される如き)、かつ、移動可能もしくは伸張可能な針またはシャフトから側方もしくは先端方向に突出する無針式流体供与オリフィス、または装置の先端における注入バルーンの如き位置決め特徴の使用に基づくブラインド観察流体供与法を選択的に使用できる利点を有する。可撓性シャフト・装置は、所望に応じて、例えば膀胱内に装置の先端を設置かつ固定して一つ以上の針もしくは無針式流体供与オリフィスを配置する特徴(即ち“位置決め特徴”または“焦点合わせ特徴”)を含む可撓性シャフトを含み得る。好適には前記可撓性シャフトは、外部切開部、または、外部切開部から尿道までの組織通路を必要とせずに(例えばフォーリー・カテーテルに使用される挿入方法)外部尿道オリフィス(道口)を介して挿入され得る。位置決め特徴を使用すると、先端を位置決めする光学的構成要素に対する必要性が回避され得る(但し、他の可撓性シャフト形態は直接観察のために光学的特徴を好適に含み得る)。例示の非光学的位置決め特徴は、基端における観察可能な距離区分目印であって、先端、流体供与オリフィス、または膀胱もしくは膀胱頚部もしくは膀胱に対して位置決めする特徴(バルーンまたは他の特徴等)の場所を測定するために使用される距離区分目印、装置の既知寸法、一つ以上のバルーン、シャフトから膀胱内へ突出して膀胱内における所望の載置を可能にする針もしくは無針式流体供与オリフィス、またはシャフトの先端における他の位置決め用特徴、の内の一つ又は組み合わせを含む。また、光学的特徴に対する必要性を回避するには、複数のもしくは移動可能(例えば突出可能)な流体供与オリフィスの如き複数のまたは移動可能な特徴が有用である。複数の流体供与オリフィスは、装置の先端の長手もしくは周縁部に沿って複数の位置に配置され得ると共に、針もしくは無針式流体供与オリフィスの複数の箇所の内の任意の場所に流体を供与すべく独立に使用され得る。移動可能な針もしくは無針式流体供与オリフィスは、装置が内部にある程度まで固定された後、装置の長手もしくは周縁部に沿って針もしくは無針式流体供与オリフィスの移動を可能にする。選択的に、突出可能な流体供与オリフィスは、装置のシャフトの先端もしくは最先端から遠方へ突出し、シャフトに沿って側方に突出し、またはシャフトに沿って側方且つ基端方向もしくは先端方向のいずれかの方向(長手方向)に突出し得る。
【0085】
本発明の装置の実施形態に依れば、複数の針もしくは無針式流体供与オリフィス(集合的に“流体供与オリフィス”)は、シャフトに沿って単一もしくは複数の場所であって、設置時に、例えば膀胱(膀胱頚部を含む)内または下尿路の他の箇所等の患者の体内の所望箇所に前記針もしくは無針式流体供与オリフィスを載置する場所で装置の先端に位置決めされる。前記針もしくは無針式流体供与オリフィスは、組織内へ流体を注入し又は内部組織の表面を滴注もしくは被覆するために流体供与オリフィスから流体を放出するように加圧され得る流体供給源(複数のオリフィスに対する一つまたは複数の流体供給源)に流体により連通される(例えば流体供与管孔を介して)。前記複数のオリフィスは、記述された如く、装置の長手に沿って先端方向もしくは側方に、一体的もしくは別個に移動し得る。針もしくは無針式流体供与オリフィスの各々は装置の基端における機構に連結されて前記オリフィスの移動もしくは突出が可能になり、複数のオリフィスは一緒にまたは独立に移動可能もしくは突出可能である。各オリフィスは、また、流体供給源(例えば装置の基端もしくは先端における)と、基端における起動機構に流体により連通して、前記オリフィスからの流体の放出を可能にし、流体を各オリフィスから別個にまたは共働して放出する。
【0086】
流体供与オリフィスは、所望の射出速度、流体量、流体分散(例えば注入粒子の集団の寸法および形状等)の如き注入の所望特性を生成するために有用な任意の寸法(例えば長さおよび直径)を有し得る。有用なオリフィス直径例は、流体が組織へ浸入するように注入されるのか組織表面に接触するように滴注されるか等の要因、および注入される場合に、注入パラメータおよび注入される組織の種類および寸法(例えば深度)に依存して、約0.001〜0.05インチの範囲内とされ得る。流体供与オリフィスは、所望により流体供与オリフィスの近傍の流体供与管孔よりも大寸もしくは小寸とされ、前記流体供与オリフィスにおける流体の射出速度に影響してよい。有用なオリフィス形状の例として、ベンチュリ、オリフィスの長手に沿って連続的に均一な直径、漏斗形等の特徴が挙げられる。多くの場合に、相対的に小寸の直径のオリフィスは、大径オリフィスと比較して(同一の注入圧力を以て)組織内へ相対的に深く浸入する注入深度を生成し得る。一般的に、注入オリフィスの寸法および形状は、特定の薬剤供与作業(注入、滴注等)および組織特性に対して選択され得る。
【0087】
流体供与オリフィスからの放出のために流体を加圧する圧力源は、理解される如く機械的(スプリングまたはソレノイドの如き)、空気圧式、二酸化炭素の如き加圧気体、油圧式、電気的とされ、シャフトの基端、先端、または、シャフトに沿って配置され得る。前記圧力源は、機械的もしくは電子的に制御され得る。前記圧力源は流体リザーバ(例えば固定容積もしくは可変容積のチャンバ)に収容された流体を、流体供与オリフィスにおける過渡的圧力であって、組織を被覆するか組織内へ浸入するに十分な力を以て流体供与オリフィスから所望量の流体の流れを生成するに十分に高い過渡的圧力へ加圧し得る。
【0088】
本明細書中に記載された他の特徴と組み合わせて選択的に使用される本発明の流体供与装置の付加的な選択的特徴として、例えば“位置決め特徴”として装置のシャフトの先端に配置された膨張可能バルーンが挙げられる。流体供与装置は先端における一つまたは複数のバルーンを含み、使用時に装置が所望位置に載置かつ固定されることを可能にし得る。流体供与装置を位置決めするバルーンは、装置の流体供与オリフィスの如き先端特徴の操作を直接観察する内視鏡の如き一切の光学的特徴を含まない装置と組み合わされることが特に有用である。流体供与オリフィスから既知距離で、装置の先端にバルーンを設置することは、バルーンの位置決めに基づき、膀胱頚部等への流体供与オリフィスの適正載置を促進する。
【0089】
所望により医師が流体供与装置を位置決めするのを可能にするバルーンの例は、装置が設置されたときに膀胱内または膀胱頚部に載置され得るバルーンである。前記バルーンは、フォーリー・カテーテルにおいて使用されるタイプであってよいが、流体供与装置の剛性もしくは可撓性シャフトの端部で本明細書中に記述された如く機能するように構成され得る。前記バルーンは、使用時に装置の全体的箇所を固定し、即ち装置のシャフトを所望箇所に載置して、一つ以上の流体供与オリフィスを例えば膀胱もしくは膀胱頚部内に所望に応じて位置決めする上で有用である。前記バルーンは前記シャフト上で、流体供与オリフィスの先端方向もしくは基端方向に位置決めされ得る。装置が設置されたとき、前記バルーンは、膀胱もしくは膀胱頚部内にあり、治療時に装置を適切に位置決めし、且つ膀胱から膀胱頚部または膀胱頚部をシールする。
【0090】
本明細書中に記述された他の特徴と選択的に組み合わせて使用される流体供与装置の別の特徴は、装置の先端に配置される組織引張器である。組織引張器は、例えば尿道もしくは膀胱内で、流体供与オリフィスの幾分近傍で、且つ装置が設置されたときに流体供与オリフィスの近傍で、シャフトに配置され得る。組織引張器は、例えば尿道もしくは膀胱組織等の組織に接触し得る機構であって、流体供与オリフィスに対して所定位置に組織の所望部分を保持し、且つ注入時に流体が組織へ浸入して組織内に分散される方法に影響し得るように組織上に緊張もしくは応力を選択的に与える機構であり得る。組織引張器は装置の剛性シャフト形態等の本明細書中に記述された他の特徴の内の任意の特徴と組み合わせて使用され得る一方、組織引張器は、可撓性シャフトを含む装置と共に使用されたときに特に有用である。前記組織引張器は、組織が固定されかつ注入を受けるために所望量の緊張を確実に有することにより、下部尿路の組織を介した流体の注入時の良好な結果を促進し得る。
【0091】
組織引張器のタイプの例として、流体供与オリフィスの近傍でシャフトに配置された膨張可能バルーン、および、パドル、突出部、レバー、金属ケージの如き機械的に伸張可能もしくは収縮可能な構成要素が挙げられ、それらの任意のものが流体供与装置のシャフトから伸張して、例えば膀胱もしくは膀胱頚部内の尿道組織上等の内部組織上に圧力を付与し得る。組織引張器は、2005年7月21日に出願されて“無針式供与システム”と称された本譲受人の同時係属の米国特許出願第11/186,218号に説明されており、その全開示内容は参考として本明細書中に援用される。
【0092】
本明細書中において特定された装置の内の任意の装置と共に使用され得る選択的特徴の別の例は、クランク等により2006年11月9日に出願され“注入装置のための機械的容量制御法”と称された本譲受人の米国仮出願第60/856,035号に説明され、その全内容は参考として本明細書中に援用される。調節可能な容量制御特徴によれば、前記特徴が本明細書中に記載された装置に含まれたときに流体供与の調節可能な制御が可能になる。前記調節可能な容量制御法は概ねプランジャ部材および停止部材を備えた機械的停止システムを含み、その場合に前記プランジャ部材および停止部材は物理的に相互作用し、プランジャの挿入長を制限し、前記プランジャにより排出される治療流体の量を同時に制御する。ある実施形態において前記停止部材はプランジャ運動と同軸的に起動されるように構成される一方、他の実施形態において前記停止部材はプランジャ運動に対して交差する方向に起動され得る。機械的停止システムに対する例示設計は、
図14および
図15に示される。
【0093】
装置は、位置決め機構、または、ユーザが先端を下部尿路内の所望箇所に載置するのを可能にする位置決め機構を含み得る。その例は、前記構造が膀胱内に配置されたときに前記構造が膀胱頚部に接触するのを可能にするために伸張もしくは膨張する、装置の先端に配置されたバルーン、パドル、または、他の延長部もしくは伸張可能な特徴であり得る。使用に際して位置決め機構は、尿道、膀胱および膀胱頚部内へ装置の先端を挿入する間にシャフト内にまたはシャフトに当接して収縮する。先端が挿入されて位置決め機構を膀胱もしくは膀胱頚部内に一旦配置したなら、前記位置決め機構はシャフトから離間して拡張すると共に、装置(シャフトおよび位置決め機構を含む)は操作者により基端方向に移動し(例えば引張られ)得る。前記位置決め機構を基端方向に引張ると、前記位置決め機構は膀胱頚部に接触し、操作者は、膀胱頚部におけるこの抵抗を感知すると共に、前記位置決め機構が膀胱頚部と接触して所望箇所に在ることを認識する。
【0094】
本発明の装置は、先端に複数の流体供与オリフィスを選択的に含み、その幾つかもしくは全ては突出可能または不能とされ得る。各流体供与オリフィスは、流体の移動もしくは放出のために独立に起動され得る。複数の流体供与オリフィスの実施形態は、相互に連通すると共に、共通の流体供給源に連通する。他の実施形態において二つ以上の流体供与オリフィスが別個の流体供給源と各々連通して装置の先端における複数種類の異なる流体の供与が可能になり、即ち単一の装置が複数の流体供与システムを含み得る(例えば、単一の流体供与システムは、一つの流体供与リザーバと連通する一つの流体供与オリフィスを含み得る)。複数の流体供与システムは、単一装置の先端から二種類以上の異なる流体の供与を可能にする。各流体は、異なるか同一とされ得ると共に、供与量、供与圧力、注入のための供与、滴注のための供与、異なる組織に対する供与等の同一もしくは異なるパラメータを用いて供与され得る。一例として装置は、尿路の組織に対して二種類の異なる薬剤を供与し、選択的に一方の薬剤は組織の表面に対して付与され且つ他方は組織内部に付与(即ち注入)され得る。選択的に、二種類の異なる流体が、例えば、尿管の円周の回りの組織の二つの異なる箇所、または、尿道の長さに沿って異なる場所に供与され得る。二種以上の流体が、同一圧力、異なる圧力、同一の供与量、異なる供与量等で供与され得る。
【0095】
複数種類の異なる流体の供与は、例えば、供与のために流体の供給物を独立に収容し得る複数の流体リザーバであって、各々が異なる流体供与オリフィスを介して異なる流体を供与し得る複数の流体リザーバ等の二つ以上の流体リザーバを含む装置を含んでよい。一つ以上のリザーバは、装置の先端、装置の基端、遠隔コンソール、または先端、基端または遠隔コンソールの任意の組合せの場所に配置され得る。
【0096】
本明細書中で用いられる如く、先端流体リザーバとは、装置のシャフトの先端で所定容積を有し、典型的な流体供与管孔に必要な量より大量の流体を収容できる。先端流体リザーバの容積の例は、流体注入の量に匹敵する規模の容積であり得る。先端流体リザーバは典型的には必要でないが、流体の移動を向上させるために好適である。例えば先端流体リザーバは、供与オリフィスの基端方向で装置の先端に所定量の流体を収容し、注入もしくは放出時に装置の長手に沿った流体移動の必要性を低減する。流体の移動量の低減は、更に効率的な流体供与に帰着し得る。