(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード(OLED)はフラットパネル型表示装置や面照明ランプとして有望な技術である。この技術は、基板上にコーティングされた材料薄膜に依存する。しかしながら、周知であるように、OLEDの発光層からの光出力の多くが当該デバイス内で吸収されてしまう。OLEDからの発光はランバートの余弦則に従い、全方向に均等に放出されるため、その光には、当該デバイスから直接放出されるもの、当該デバイス内に放出され、反射されて戻り出てくるか又は吸収されるもの、そして横方向に放出され、当該デバイスを構成する各種層によりトラップされて吸収されるものがある。一般に、光の最大80%がこのようにして失われ得る。
【0003】
薄膜型発光デバイスからの光のアウトカプリング(out-coupling)を改良する技法が各種提案されている。例えば、発光層内を横方向に案内される光のブラッグ散乱を誘発することによりポリマー薄膜からの発光の属性を制御するための回折格子が提案されている。Safonoらの「Modification of polymer light emission by lateral microstructure」(Synthetic Metals 116, 2001, pp. 145-148)及びLuptonらの「Bragg scattering from periodically microstructured light emitting diodes」(Applied Physics Letters, Vol. 77, No. 21, November 20, 2000, pp. 3340-3342)を参照されたい。回折特性並びに表面及び体積拡散体を有する明るさ向上用薄膜が、国際公開第02/37568号(発明の名称「Brightness and Contrast Enhancement of Direct View Emissive Displays」、Chouら、2002年5月10日発行)に記載されている。
【0004】
マイクロキャビティ及び散乱技法を使用することも知られている。例えば、Tsutsuiらの「Sharply directed emission in organic electroluminescent diodes with an optical-microcavity structure」(Applied Physics Letters 65, No. 15, October 10, 1994, pp. 1868-1870)を参照されたい。しかしながら、これらの方法の中で、発生した光の全部、又はほとんど全部、を当該デバイスから放出させるものはない。
【0005】
発光領域又は画素を取り囲む反射構造体が、1998年11月10日発行のBulovicらの米国特許第5834893号明細書に記載されている。それには、各画素の縁部に、角度を付けた、すなわち傾斜した反射壁を設けることが記載されている。同様に、2000年7月18日発行のForrestらの米国特許第6091195号明細書に、傾斜した壁体を具備した画素が記載されている。これらの方法は、発光領域の縁部に配置された反射体を使用する。しかしながら、1個の画素又は発光領域の内部において基板に平行な複数の層内を横方向に進行する際の光の吸収によって、なおも相当量の光が失われる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照する。従来技術のOLED10には、2つの電極14及び16(例、カソード及びアノード)の間に配置された発光層12が含まれる。有機電場発光層12は、これらの電極間に電源18から電圧が印加された際に光を放出する。OLED10は、ガラス又はプラスチックのような基板20を含むことが典型的である。電極14及び16の相対位置を当該基板に関して反対にしてもよいことは理解されている。発光層12は、当該技術分野において知られているように、電子又は正孔の注入層のような他の層を含むことができる。このようなOLEDを、画像を表示するため個別にアドレス可能な画素を含む発光領域を有する表示装置において、又は1もしくは2以上の発光領域を有する面照明ランプにおいて、使用することができる。
【0013】
図2を参照する。従来技術の上面発光型アクティブマトリクス式OLED表示装置40には、基板20及び、OLED要素に電力を提供するTFTアレイを含む薄膜トランジスタ(TFT)アクティブマトリクス層22が含まれる。TFTアクティブマトリクス層の上にはパターン化第1絶縁層24が設けられ、そしてその平坦化された絶縁層24の上に、当該TFTアクティブマトリクス層と電気接触するように第1電極16のアレイが設けられている。第1電極16のアレイの上には、各第1電極16の少なくとも一部が露出されるように、パターン化第2絶縁層24’が設けられている。
【0014】
第1電極及び絶縁層の上には、赤色発光性有機OLED材料12R、緑色発光性有機OLED材料12G及び青色発光性有機OLED材料12Bが設けられている。これらの要素は、より詳細に後述するように、さらに複数の層からなる。本明細書では、正孔注入層26、正孔輸送層27、電子注入層29及び電子輸送層28をはじめとするOLED要素の集合体を発光層12と称する場合もある。一般に、発光領域は、第1電極16の当該OLED要素と接している領域によって画定される。発光層12の上には、生じた赤色光、緑色光及び青色光を透過せしめるに十分な光学的透明性を有する透明な共通第2電極14が設けられている。必要に応じて、当該電極とその下方の層を保護するため、第2電極保護層32を設けることができる。本明細書では、各第1電極にその関連するOLED要素及び第2電極を組み合わせたものをOLEDと称する。典型的な上面発光型OLED表示装置は、各OLEDが赤色光、緑色光又は青色光を放出するアレイ状OLEDを含んで成る。間隙34は、一般には不活性ガス又は透過性高分子材料で充填されているが、電極保護層と封入カバー36とを分離する。封入カバー36は、共通第2電極14又は任意第2電極保護層32の上に直接付着した層であってもよい。
【0015】
動作に際しては、TFT層22の薄膜トランジスタが、個別選択的にアドレス可能な第1電極16と共通第2電極14との間の電流を制御する。OLED要素の内部で正孔と電子が再結合することにより、発光要素12から光が放出される。これらの層は非常に薄く、典型的には数百オングストロームであるため、十分に透過性である。
【0016】
図3を参照する。本発明の一態様による上面発光型アクティブマトリクス式表示装置には、基板20、TFT層22、絶縁層24及び第1電極16が含まれる。電極16及び絶縁層24の上には従来型の発光層12が配置される。発光層12の上には、第2共通電極14及び保護層32が配置される。慣例的に、当該デバイスは封入カバー又は封入層(図示なし)で封入される。絶縁層24は、当該デバイスの発光領域(本例では画素)の内部に配置された地形的特徴25を含む。地形的特徴25は、例えば、デバイスの発光領域の内部に配置され、好ましくは当該デバイスの平面に対する垂線から45°傾斜した(基板面からは実質的に135°の角度となる)側面を有し、さらに好ましくは
図4に示したようにグリッドパターンをなして分布されている、複数のリッジを含んで成る。
【0017】
地形的特徴の幾何学形状は、電極層16及び14並びに/又は発光層12における導波を効果的に破壊するように設計される。層12、14及び16を合わせた典型的な厚さは0.2又は0.3μmであり、そして当該地形的特徴の高さは0.5μm以上であることが好ましい。従来のリソグラフィ手法を使用することにより、例えば、参照した特許明細書に詳しく記載されているフォトレジスト法、マスク露光法及びエッチング法を使用して、当該地形的特徴を造り出すことができる。例えば、
図3−Aに示したように、既知のフォトリソグラフィ法を使用して、デバイス40の上にパターン化された二酸化珪素層50を形成させることができる。その二酸化珪素層50の上に、各リッジ25の上部の位置を画定するため、フォトレジストのラインパターン52を形成する。エッチング法を使用して、二酸化珪素層に地形的特徴を造り出す。その後、フォトレジストパターン52を除去し、そして当該二酸化珪素の上に電極と発光層を堆積させる。後続の堆積層は、当該地形的特徴25に整合する。
【0018】
発光領域内での地形的特徴25の間隔は、電極14、16及び有機材料12による導波光の吸収性に依存して、調整されることができる。例えば、青色光は最も容易に吸収され得るため、当該光が吸収される前に光伝送層から放出されることを確実にするため、青色発光領域におけるリッジの頻度を高めることができる。一般に、回折効果及び結果として生じる周波数に関連した放出の角度変動を避けるため、当該地形的特徴の間隔は2〜100μmの範囲内にすべきである。
【0019】
地形的特徴の配置は、周期において、及び形状において、調整することもできる。
図4に二次元角形グリッドを示す。例えば、六角形配置を採用することができ、より少ない地形的特徴でより大きな領域を包囲することができる点で有利である。別法として、
図4−A及び
図4−Bに示したように、地形的特徴は完全に連続している必要はない。
【0020】
このような地形的特徴について遭遇し得る1つの問題は、当該特徴が関連するシャープな縁部において電極が開放されない傾向になり得ることである。
図4−A及び
図4−Bに示したように、地形的特徴25を周期的に中断することにより、電極が発光領域において電気的に連続することを確保することができる。
【0021】
地形的特徴25は、後続の電極層16、発光材料層12及び電極層14が堆積するに際し、その形状を維持するに十分な大きさを有する。上部電極層14の上面が当該地形的特徴の形状を維持する必要はない。このため、電極層14は、その他の層よりも厚くすることができ、当該デバイスにおいて平坦化層として機能することもできる。
【0022】
動作に際しては、OLED材料及び電極が従来様式で作用して光を放出する。その光の一部は当該デバイスから直接放出され、別の一部は電極又は平坦化層24で反射され、さらに一部が横方向に導波される。層12、14及び16は、導波路として作用し、当該デバイスの表面に沿って光を伝導する。その光は、地形的特徴25に当たる時に、反射又は屈折されて当該デバイスから出てくる。本質的には、地形的特徴25のため、層12、14及び16は漏れやすい導波路として作用する。
【0023】
典型的には、OLED表示装置に含まれる画素は角形で、その縁長は50〜200μmである。簡単な場合、例えば、50μm×200μmの発光領域を、それを横断するように配置され、それを2つの50μm×100μmの領域に分割する単一の地形的特徴によって2つの二次区画へと分割することができる。より複雑な場合として、当該発光領域を4つの50μm平方の同等領域へと分割することもできる。
【0024】
地形的特徴の間隔が狭ければ狭いほど、光が導波性材料内を伝播する際に吸収される光量は少なくなる。しかしながら、反射性構造体の面上に堆積された材料から放出される光は、発光領域の残余部分からの光と同一の方向には放出されない。したがって、地形的特徴の頻度と、当該表示装置の表面に対して直交方向に放出される光量との間には、トレードオフが存在し得る。その上、地形的特徴は、回折効果を生ぜしめるような頻度で配置されてはならない。なぜなら、このような回折効果により、放出光の周波数に対する角度依存性が生じるからである。一般に、2μmより大きな周期で十分である。当該構造体を、当該周期を可変とし、当該構造体が平行にならないように配置することによっても、上記効果を防止することができる。
【0025】
各種の地形的特徴を創出することができ、そしてそれは当該プロセスの性能に左右される。例えば、
図3に示した地形的特徴は、絶縁層をエッチングすることにより形成される。別法として、地形的特徴は、
図5に示したような谷形とすることや、
図6に示したような谷形内部の局部的リッジとすることもできる。上述した地形的特徴は、いずれも、基板平面に対して45°で配置された側面を有するほぼ三角形の横断面を有する。その他の横断面や角度配置も可能であり、例えば、側面が湾曲しているリッジ又は谷形を本発明に採用することもできる。地形的特徴は、電極間の短絡の可能性を低くするため、丸みをつけたトップが付与されていてもよい。
【0026】
図7を参照する。本発明の底面発光型態様であって、TFT層を発光領域の下方ではなく側部に配置することができるものには、基板20、TFT層22及び、絶縁体で又は単に間隙で分離された第1電極16が含まれる。電極16の上には従来型の発光層12が堆積される。発光層12の上には、第2共通電極14及び任意保護層32が堆積される。当該デバイスは慣例的に封入カバー又は封入層(図示なし)で封入される。基板20には、発光領域の表面に間隔を置いて並べられた地形的特徴25が含まれる。当該地形的特徴は、従来の電極16及び14並びに有機材料12の層を介して導波される光を妨害するのに十分な大きさである。先に上面発光型態様について説明した配置、寸法、形状、組成及びパターンは、底面発光型態様において同様に適用可能である。地形的特徴25が基板20に由来し又はその上に直接創出される必要のないことに留意されたい。別の代わりの層、例えば上面発光型態様の絶縁層24又は電極16、を使用することにより当該必須構造を形成してもよい(図示なし)。
【0027】
図8を参照する。第1電極16の内部における電気的開放の問題を避けるため、地形的特徴23が、第1電極16の下方ではなく、その上部に形成されている。地形的特徴23の上には、有機層(複数可)12及び第2電極14が整合的に堆積されている。この配置は、上面発光型、底面発光型のいずれの構成においても採用することができる。
【0028】
本発明は、パッシブマトリックス式OLEDデバイス、すなわち各画素にTFT素子が組み合わされていないデバイス、について実施することもできる。このようなより簡素な態様では、局部的なTFT素子とは関係なく、底面発光型態様におけるように、発光領域の上に地形的特徴を分布させる。ここまで、本発明をOLED表示装置に適用することについて参照してきた。本発明は、他のOLEDデバイス用途、例えば、薄膜トランジスタ構造や画素化された表示要素を一切含まないかもしれない面照明装置、に適用することも可能である。
【0029】
以下、OLED材料、各種層及び構成の詳細を説明する。
本発明は、ほとんどのOLEDデバイス構成に採用することができる。これらには、単一アノードと単一カソードを含む面照明用の非常に簡素な構造から、より一層複雑なデバイス、例えば、複数のアノードとカソードを直交配列させて画素を形成してなるパッシブマトリクス式表示装置や、各画素を、例えば薄膜トランジスタ(TFT)で独立制御する、アクティブマトリクス式表示装置が含まれる。
【0030】
本発明を成功裏に実施することができる有機層の構成はいくつかある。典型的な構造は、
図9に示したように、アノード層103、正孔注入層105、正孔輸送層107、発光層109、電子輸送層111及びカソード層113を含む。これらの層については、以下に詳述する。基板をカソードに隣接するように配置できること、また基板が実際にアノード又はカソードを構成し得ることに、留意されたい。アノードとカソードの間の有機層を、便宜上、有機電場発光(EL)要素と称する。当該有機層の全体厚は500nm未満であることが好ましい。
【0031】
OLEDのアノードとカソードは、電気導体260を介して電源250に接続されている。アノードとカソードの間に、アノードがカソードより正極となるように電位差を印加することによりOLEDを動作させる。アノードから正孔が有機EL要素に注入され、また、カソードから電子が有機EL要素に注入される。サイクル中の一定期間、電位差バイアスを反転させて電流を流さないようにするACモードでOLEDを動作させると、デバイスの安定性が向上する場合がある。AC駆動式OLEDの一例が米国特許第5552678号明細書に記載されている。
【0032】
本発明のOLEDデバイスは、先に説明したようにTFTエレクトロニクスや絶縁層のような他の層をさらに含むことができる支持基板101の上に設けられることが典型的である。基板の上に設けられる電極を、便宜上、底部電極と称する。底部電極をアノードにすることが慣例的であるが、本発明はそのような構成に限定されるものではない。基板は、意図される発光方向に依存して、透光性又は不透明のいずれかであることができる。基板を介してEL発光を観察する場合には透光性が望まれる。このような場合、透明なガラス又はプラスチックが通常用いられる。EL発光を上部電極を介して観察する用途の場合には、底部支持体の透過性は問題とならないため、透光性、吸光性又は光反射性のいずれであってもよい。この場合の用途向け支持体には、ガラス、プラスチック、半導体材料、シリコン、セラミックス及び回路基板材料が含まれるが、これらに限定はされない。もちろん、このようなデバイス構成には、透光性の上部電極を提供する必要はある。
【0033】
EL発光をアノード103を介して観察する場合には、当該アノードは当該発光に対して透明又は実質的に透明であることが必要である。本発明に用いられる一般的な透明アノード材料はインジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)及び酸化錫であるが、例示としてアルミニウム又はインジウムをドープした酸化亜鉛、マグネシウムインジウム酸化物及びニッケルタングステン酸化物をはじめとする他の金属酸化物でも使用することができる。これらの酸化物の他、窒化ガリウムのような金属窒化物、セレン化亜鉛のような金属セレン化物、及び硫化亜鉛のような金属硫化物をアノードとして使用することもできる。アノードが反射性である用途の場合、導体の例として、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム及び白金が挙げられるが、これらに限定はされない。典型的なアノード材料は、透過性であってもそうでなくても、4.1eV以上の仕事関数を有する。望ましいアノード材料は、一般に、蒸発法、スパッタ法、化学的気相成長(CVD)法又は電気化学法のような適当な手段のいずれかによって付着される。アノードは、周知のフォトリソグラフ法によってパターン化することもできる。
【0034】
アノード103と正孔輸送層107との間に正孔注入層105を設けることがしばしば有用となる。正孔注入性材料は、後続の有機層のフィルム形成性を改良し、かつ、正孔輸送層への正孔注入を促進するのに役立つことができる。正孔注入層に用いるのに好適な材料として、米国特許第4720432号明細書に記載されているポルフィリン系化合物や、米国特許第6208075号明細書に記載されているプラズマ蒸着フルオロカーボンポリマーが挙げられる。有機ELデバイスに有用であることが報告されている別の代わりの正孔注入性材料が、欧州特許出願公開第0891121号及び同第1029909号明細書に記載されている。
【0035】
正孔輸送層107は、芳香族第三アミンのような正孔輸送性化合物を少なくとも一種含有する。芳香族第三アミン類は、少なくとも一つが芳香環の員である炭素原子にのみ結合されている3価窒素原子を少なくとも1個含有する化合物であると理解されている。一態様として、芳香族第三アミンはアリールアミン、例えば、モノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン又は高分子アリールアミン基であることができる。単量体トリアリールアミンの例がKlupfelらの米国特許第3180730号明細書に記載されている。Brantleyらの米国特許第3567450号及び同第3658520号明細書には、1個以上の活性水素含有基を含み、かつ/又は、1個以上のビニル基で置換されている、他の適当なトリアリールアミンが開示されている。
【0036】
より好ましい種類の芳香族第三アミンは、米国特許第4720432号及び同第5061569号に記載されているような芳香族第三アミン部分を2個以上含有するものである。正孔輸送層は、芳香族第三アミン化合物の単体又は混合物で形成することができる。以下、有用な芳香族第三アミンを例示する。
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン
4,4’-ビス(ジフェニルアミノ)クアドリフェニル
ビス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)-フェニルメタン
N,N,N-トリ(p-トリル)アミン
4-(ジ-p-トリルアミノ)-4’-[4(ジ-p-トリルアミノ)-スチリル]スチルベン
N,N,N’,N’-テトラ-p-トリル-4,4’-ジアミノビフェニル
N,N,N’,N’-テトラフェニル-4,4’-ジアミノビフェニル
N,N,N’,N’-テトラ-1-ナフチル-4,4’-ジアミノビフェニル
N,N,N’,N’-テトラ-2-ナフチル-4,4’-ジアミノビフェニル
N-フェニルカルバゾール
4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ビフェニル
4,4”-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]-p-ターフェニル
4,4’-ビス[N-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’-ビス[N-(3-アセナフテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン
4,4’-ビス[N-(9-アントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4”-ビス[N-(1-アントリル)-N-フェニルアミノ]-p-ターフェニル
4,4’-ビス[N-(2-フェナントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’-ビス[N-(8-フルオルアンテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’-ビス[N-(2-ピレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’-ビス[N-(2-ナフタセニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’-ビス[N-(2-ペリレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4’-ビス[N-(1-コロネニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
2,6-ビス(ジ-p-トリルアミノ)ナフタレン
2,6-ビス[ジ-(1-ナフチル)アミノ]ナフタレン
2,6-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ナフタレン
N,N,N’,N’-テトラ(2-ナフチル)-4,4”-ジアミノ-p-ターフェニル
4,4’-ビス{N-フェニル-N-[4-(1-ナフチル)-フェニル]アミノ}ビフェニル
4,4’-ビス[N-フェニル-N-(2-ピレニル)アミノ]ビフェニル
2,6-ビス[N,N-ジ(2-ナフチル)アミン]フルオレン
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン
【0037】
別の種類の有用な正孔輸送性材料として、欧州特許第1009041号に記載されているような多環式芳香族化合物が挙げられる。さらに、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン及びPEDOT/PSSとも呼ばれているポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)のようなコポリマー、といった高分子正孔輸送性材料を使用することもできる。
【0038】
米国特許第4769292号及び同第5935721号に詳述されているように、有機EL要素の発光層(LEL)109は発光材料又は蛍光材料を含み、その領域において電子-正孔対が再結合する結果として電場発光が生じる。発光層は、単一材料で構成することもできるが、より一般的には、ホスト材料に単一又は複数種のゲスト化合物をドーピングしてなり、そこで主として当該ドーパントから発光が生じ、その発光色にも制限はない。発光層に含まれるホスト材料は、後述する電子輸送性材料、上述した正孔輸送性材料、又は正孔-電子再結合を支援する別の材料もしくはその組合せ、であることができる。ドーパントは、通常は高蛍光性色素の中から選ばれるが、リン光性化合物、例えば、国際公開第98/55561号、同第00/18851号、同第00/57676号及び同第00/70655号に記載されているような遷移金属錯体も有用である。ドーパントは、ホスト材料中、0.01〜10質量%の範囲内で塗布されることが典型的である。ホスト材料として、ポリフルオレンやポリビニルアリーレン(例、ポリ(p-フェニレンビニレン)、PPV)のような高分子材料を使用することもできる。この場合、高分子ホスト中に低分子量ドーパントを分子レベルで分散させること、又はホストポリマー中に二次成分を共重合させることによりドーパントを付加すること、が可能である。
【0039】
ドーパントとしての色素を選定するための重要な関係は、当該分子の最高被占軌道と最低空軌道との間のエネルギー差として定義されるバンドギャップポテンシャルの対比である。ホストからドーパント分子へのエネルギー伝達の効率化を図るためには、当該ドーパントのバンドギャップがホスト材料のそれよりも小さいことが必須条件となる。
【0040】
有用性が知られているホスト及び発光性分子として、米国特許第4769292号、同第5141671号、同第5150006号、同第5151629号、同第5405709号、同第5484922号、同第5593788号、同第5645948号、同第5683823号、同第5755999号、同第5928802号、同第5935720号、同第5935721号及び同第6020078号に記載されているものが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0041】
8-ヒドロキシキノリン(オキシン)及び類似の誘導体の金属錯体は、電場発光を支援することができる有用なホスト化合物の一種である。以下、有用なキレート化オキシノイド系化合物の例を示す。
CO-1:アルミニウムトリスオキシン〔別名、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)〕
CO-2:マグネシウムビスオキシン〔別名、ビス(8-キノリノラト)マグネシウム(II)〕
CO-3:ビス[ベンゾ{f}-8-キノリノラト]亜鉛(II)
CO-4:ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)-μ-オキソ-ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)
CO-5:インジウムトリスオキシン〔別名、トリス(8-キノリノラト)インジウム〕
CO-6:アルミニウムトリス(5-メチルオキシン)〔別名、トリス(5-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)〕
CO-7:リチウムオキシン〔別名、(8-キノリノラト)リチウム(I)〕
CO-8:ガリウムオキシン〔別名、トリス(8-キノリノラト)ガリウム(III)〕
CO-9:ジルコニウムオキシン〔別名、テトラ(8-キノリノラト)ジルコニウム(IV)〕
【0042】
有用なホスト材料の別の種類として、9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセン及びその誘導体のようなアントラセン誘導体、米国特許第5121029号に記載されているジスチリルアリーレン誘導体、並びに2,2’,2”-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンズイミダゾール]のようなベンズアゾール誘導体が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0043】
有用な蛍光性ドーパントとして、例えば、アントラセン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン及びキナクリドンの誘導体、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体並びにカルボスチリル化合物が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0044】
本発明の有機EL要素の電子輸送層111を形成するのに用いられる好適な薄膜形成性材料は、オキシン(通称8-キノリノール又は8-ヒドロキシキノリン)自体のキレートをはじめとする、金属キレート化オキシノイド系化合物である。当該化合物は、電子の注入・輸送を助長し、高い性能レベルを発揮すると共に、薄膜加工が容易である。オキシノイド系化合物の例は既述した通り。
【0045】
他の電子輸送性材料として、米国特許第4356429号明細書に記載されている各種ブタジエン誘導体、及び米国特許第4539507号明細書に記載されている各種複素環式蛍光増白剤が挙げられる。ベンズアゾール及びトリアジンもまた有用な電子輸送性材料である。
【0046】
場合によっては、必要に応じて、層111及び層109を、発光と電子輸送の両方を支援する機能を発揮する単一層にすることが可能である。これらの層は、低分子型OLEDシステム及び高分子型OLEDシステムのどちらにおいても一体化することが可能である。例えば、高分子型システムの場合、PEDOT-PSSのような正孔輸送層をPPVのような高分子発光層との組合せで採用することが通例である。このシステムにおいては、PPVが発光と電子輸送の両方を支援する機能を発揮する。
【0047】
発光をアノードのみを介して観察する場合には、本発明に用いられるカソード113は、ほとんどすべての導電性材料を含んでなることができる。望ましい材料は、下部の有機層との良好な接触が確保されるよう良好なフィルム形成性を示し、低電圧での電子注入を促進し、かつ、良好な安定性を有する。有用なカソード材料は、低仕事関数金属(<4.0eV)又は合金を含むことが多い。好適なカソード材料の1種に、米国特許第4885221号明細書に記載されているMg:Ag合金(銀含有率1〜20%)を含むものがある。別の好適な種類のカソード材料として、有機層(例、ETL)に接している薄い電子注入層(EIL)に、これより厚い導電性金属層をキャップしてなる二層形が挙げられる。この場合、EILは低仕事関数の金属又は金属塩を含むことが好ましく、その場合には、当該より厚いキャップ層は低仕事関数を有する必要はない。このようなカソードの一つに、米国特許第5677572号明細書に記載されている、薄いLiF層にこれより厚いAl層を載せてなるものがある。その他の有用なカソード材料のセットとして、米国特許第5059861号、同第5059862号及び同第6140763号明細書に記載されているものが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0048】
カソードを介して発光を観察する場合には、当該カソードは透明又はほぼ透明でなければならない。このような用途の場合、金属が薄くなければならないか、又は透明導電性酸化物もしくはこれら材料の組合せを使用しなければならない。透光性カソードについては、米国特許第4885211号、米国特許第5247190号、JP3,234,963、米国特許第5703436号、米国特許第5608287号、米国特許第5837391号、米国特許第5677572号、米国特許第5776622号、米国特許第5776623号、米国特許第5714838号、米国特許第5969474号、米国特許第5739545号、米国特許第5981306号、米国特許第6137223号、米国特許第6140763号、米国特許第6172459号、欧州特許第1076368号及び米国特許第6278236号に詳しく記載されている。カソード材料は、蒸発法、スパッタ法又は化学的気相成長法により付着させることが典型的である。必要な場合には、例えば、マスク介在蒸着法、米国特許第5276380号及び欧州特許出願公開第0732868号明細書に記載の一体型シャドーマスク法、レーザーアブレーション法及び選択的化学的気相成長法をはじめとする多くの周知の方法により、パターンを形成させてもよい。
【0049】
上述した有機材料は昇華法のような気相法により適宜付着されるが、流体から、例えばフィルム形成性を高める任意のバインダーと共に溶剤から、付着させてもよい。当該材料がポリマーである場合には、溶剤付着法が有用であるが、スパッタ法やドナーシートからの感熱転写法のような別の方法を利用することもできる。昇華法により付着すべき材料は、例えば、米国特許第6237529号明細書に記載されているように、タンタル材料を含むことが多い昇華体「ボート」から気化させてもよいし、当該材料をまずドナーシート上にコーティングし、その後これを基板に接近させて昇華させてもよい。複数材料の混合物を含む層は、独立した複数の昇華体ボートを利用してもよいし、予め混合した後単一のボート又はドナーシートからコーティングしてもよい。パターン化付着は、シャドーマスク、一体型シャドーマスク(米国特許第5294870号明細書)、ドナーシートからの空間画定型感熱色素転写(米国特許第5851709号及び同第6066357号明細書)及びインクジェット法(米国特許第6066357号明細書)を利用して達成することができる。
【0050】
ほとんどのOLEDデバイスは湿分もしくは酸素又はこれら双方に対して感受性を示すため、窒素又はアルゴンのような不活性雰囲気において、アルミナ、ボーキサイト、硫酸カルシウム、クレー、シリカゲル、ゼオライト、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、スルフェート、金属ハロゲン化物及び金属過塩素酸塩のような乾燥剤と一緒に、封止されることが一般的である。封入法及び乾燥法として、2001年5月8日発行のBorosonらの米国特許第6226890号明細書に記載されている方法が挙げられるが、これらに限定はされない。さらに、当該技術分野では、封入用として、SiOx、テフロン(登録商標)及び無機/高分子交互層のようなバリア層が知られている。