(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一定のエリアごとに分散して配置される複数の電源調光ユニットを備え、各電源調光ユニットによりパルス調光されたLED光を照射して植物を栽培する分散型植物栽培システムであって、
前記電源調光ユニットは、
三相交流電源の各相に接続され、絶縁トランスを介して入力された各相の交流電圧を全波整流する三相全波整流回路と、
前記三相全波整流回路に接続され、全波整流された脈流により点灯する赤色LED、緑色LED、及び青色LEDからなる3色LED照明回路と、
前記3色LED照明回路に接続され、PWM制御された調光信号に基づいて前記3色LED照明回路に出力される電流をON/OFFし、前記赤色LED、前記緑色LED、及び前記青色LEDを個別にパルス調光するパルス調光回路と、
前記3色LED照明回路と前記パルス調光回路との間に配置された検出コイルにより、前記赤色LED、前記緑色LED、及び前記青色LEDに流れる電流を非接触で検出する電流検出回路とを備え、
電流値をコンピュータにフィードバックさせることで、電流値および光量を制御することを特徴とする分散型植物栽培システム。
前記3色LED照明回路に流れる最大電流を制限する電流制限回路を更に備えていることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の分散型植物栽培システム。
前記三相交流電源の各相の交流電圧を分割、低電圧化して出力する三相の電圧分割トランスを更に備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の分散型植物栽培システム。
複数の電源調光ユニットを一定のエリアごとに分散して配置し、前記複数の電源調光ユニットの各々により、三相交流電源から絶縁トランスを介して入力された各相の交流電圧を全波整流し、
前記全波整流された脈流により点灯する赤色LED、緑色LED、及び青色LEDからなる3色LED照明回路を駆動し、
前記3色LED照明回路を駆動する電流をPWM制御された調光信号に基づいてON/OFFし、
前記3色LED照明回路とパルス調光回路との間に配置された検出コイルにより、前記赤色LED、前記緑色LED、及び前記青色LEDに流れる電流を非接触で検出し、電流値をコンピュータにフィードバックさせることで、電流値および光量を制御することにより、
前記赤色LED、前記緑色LED、及び前記青色LEDを個別にパルス調光したLED光を照射して植物を栽培することを特徴とする分散型植物栽培方法。
【背景技術】
【0002】
従来の植物工場における栽培システムの構成を
図15に示す。同図に示すように、従来の栽培システムは、電源回路としての直流安定化電源と、照明回路としての複数の栽培用LEDと、栽培用LEDを調光する調光回路を備えて構成されている。
【0003】
直流安定化電源は、
図16に示すようにスイッチング方式の電源回路であって、商用電源から入力された交流電圧を整流平滑回路で整流し、電解コンデンサで脈流を平滑化する。そして、スイッチング回路、高周波トランス、整流平滑回路からなる安定化回路で電圧変動を取り除き、安定化した直流電圧を栽培用LEDに出力してLEDを点灯させるようになっている。
【0004】
調光回路は、
図17に示すようにD/A変換回路と電流制御回路からなり、調光回路に入力されたデジタルの調光信号をD/A変換回路でアナログに変換して出力する。また、出力されたアナログの調光信号に基づいて、電流制御回路でLED両端の直流電圧を変換することでLEDの光量を制御し、栽培用LEDを調光するようになっている。
【0005】
なお、このような直流安定化電源を使用した栽培システムとして、下記の特許文献に開示された植物栽培用LED照明システムが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、前記のような従来の栽培システムによると、以下のような問題点があった。
【0008】
電源回路において、電解コンデンサや安定化回路等多くの部品を使用したスイッチング方式の直流安定化電源を使用しているため、電源が高価であり、かつ、寿命が短くなる。また、電源回路にジュール熱が発生するため、
図16に示すように冷却ファン等の設備が別途必要となり、システム全体が大型化する。さらに、電源回路が集中型であるため、電源回路と負荷の栽培用LEDとの間の距離が長くなり、しかも電源回路が故障した場合にはシステム全体を停止しなければならず、生産性に支障を来す恐れがある。
【0009】
調光回路において、LED両端の直流電圧を変換して調光しているため、変換による調光ロスが発生するとともに、消費電力が減少すると変換効率が悪くなってしまう。また、LED両端の電圧が直流であるため、負荷の栽培用LEDに流れる電流を検出するのが難しく、植物工場全体の管理をシステム化することができない。
【0010】
栽培は光量ONの時間帯と光量OFFの時間帯の組み合わせで構成されているが、光量OFFの時間帯はメインの電源スイッチをOFFせずに調光回路により光量をOFFしているため、待機電力ロスが発生する。また、栽培工場内の空調は、暖房時は栽培用LEDの発熱でまかなえるが、冷房時には電源の変換ロス、調光ロス、待機電力ロス、LED発熱等の要因により空調電力の増加を招いている。
【0011】
そこで、本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、低コストかつ高寿命で植物工場全体の管理を効率良くシステム化することができる分散型植物栽培システム及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するため、本発明は、一定のエリアごとに分散して配置される複数の電源調光ユニットを備え、各電源調光ユニットによりパルス調光されたLED光を照射して植物を栽培する分散型植物栽培システムであって、前記電源調光ユニットは、三相交流電源の各相に接続され、絶縁トランスを介して入力された各相の交流電圧を全波整流する三相全波整流回路と、前記三相全波整流回路に接続され、全波整流された脈流により点灯する赤色LED、緑色LED、及び青色LEDからなる3色LED照明回路と、前記3色LED照明回路に接続され、PWM制御された調光信号に基づいて前記3色LED照明回路に出力される電流をON/OFFし、前記赤色LED、前記緑色LED、及び前記青色LEDを個別にパルス調光するパルス調光回路と、を備えて構成されていることを特徴とする。
【0013】
また、前記構成からなる分散型植物栽培システムにおいて、前記3色LED照明回路と前記パルス調光回路との間に配置された検出コイルにより、前記赤色LED、前記緑色LED、及び前記青色LEDに流れる電流を非接触で検出する電流検出回路を更に備えていても良い。
【0014】
また、前記構成からなる分散型植物栽培システムにおいて、前記調光信号の周波数が10Hz〜2kHzの範囲内に制限されていることが好ましい。
【0015】
また、前記構成からなる分散型植物栽培システムにおいて、前記3色LED照明回路に流れる最大電流を制限する電流制限回路を更に備えていても良い。
【0016】
また、前記構成からなる分散型植物栽培システムにおいて、前記三相交流電源の各相の交流電圧を分割、低電圧化して出力する三相電圧分割トランスを更に備えていても良い。
【0017】
また、本発明は、複数の電源調光ユニットを一定のエリアごとに分散して配置し、前記複数の電源調光ユニットの各々により、三相交流電源から絶縁トランスを介して入力された各相の交流電圧を全波整流し、前記全波整流された脈流により点灯する赤色LED、緑色LED、及び青色LEDからなる3色LED照明回路を駆動し、前記3色LED照明回路を駆動する電流をPWM制御された調光信号に基づいてON/OFFすることにより、前記赤色LED、前記緑色LED、及び前記青色LEDを個別にパルス調光したLED光を照射して植物を栽培することを特徴とする分散型植物栽培方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の分散型植物栽培システム及び方法によれば、以下のような効果が得られる。
【0019】
電源調光ユニットを分散することにより、電源を標準化することができ、設備のコストダウンを図ることができる。また、電源を分散・標準化することにより、予備電源を用意しておくことが可能になり、栽培規模の拡大や栽培種の追加等にも迅速に対応することができる。
【0020】
電源回路において、絶縁トランスとダイオードを使用し、従来のような電解コンデンサや安定化回路等の高価な部品を使用していないため、低コストかつ高寿命なシステムを提供することができる。また、電源回路にジュール熱が発生しないため、冷却ファン等の設備が不要になり、システム全体を小型化することができ、電源の移動や設置場所の制約が少なくなる。
【0021】
調光回路において、絶縁トランスで降圧してパルス調光するため、従来のような変換による調光ロスが発生しない。また、パルス調光することにより、回路各部やLEDに流れる電流を非接触で検出することが可能になり、電流や光量等を制御しやすくなり、全体をシステム化することができる。さらに、光量データ等から栽培植物の生育状態等を全体としてコンピュータ制御することにより、植物工場全体の省エネ化、省人化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る分散型植物栽培システムの一例を示す概略図である。
【
図2】同システムの全体構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】同システムにおける電源調光ユニットの構成を示す回路図である。
【
図4】同システムにおける調光信号発生器の構成を示す回路図である。
【
図5】同システムにおける調光信号発生器の出力波形図である。
【
図6】同システムにおける電源回路の変形例を示す機能ブロック図である。
【
図7】同システムにおける電圧分割トランスの構成を示す回路図である。
【
図8】栽培実験におけるEVD電源とDC電源の消費電力を比較した表である。
【
図9】栽培実験1におけるEVD試験区の苗とDC試験区の苗の様子を示す写真である。
【
図10】栽培実験1における草丈、根長、株の最大径、新鮮重量、SPAD値の測定結果を示す表である。
【
図11】栽培実験1における可食部新鮮重量を比較したグラフ図である。
【
図12】栽培実験2におけるEVD試験区の苗の様子を示す写真である。
【
図13】栽培実験2における草丈、根長、株の最大径、新鮮重量、SPAD値の測定結果を示す表である。
【
図14】栽培実験2における可食部新鮮重量を比較したグラフ図である。
【
図15】従来の植物栽培システムの全体構成を示す機能ブロック図である。
【
図16】従来のシステムにおける直流安定化電源の構成を示す機能ブロック図である。
【
図17】従来のシステムにおける調光回路の構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施形態の分散型植物栽培システム1は、閉鎖型の植物工場における植物栽培用LED照明に適用可能なシステムであり、複数個の電源調光ユニット2,2,…を備えていることが特徴である。電源調光ユニット2は、一定のエリアごと、例えば多段型の栽培棚3の一列に1個ずつ分散して配置されており、それぞれの電源調光ユニット2で調光されたLED光を照射し、各段の棚上に植栽された植物を栽培するように構成されている。なお、
図1では本システム1を薄膜水耕(NFT)の栽培棚3に適用したが、これに代えて、湛液型水耕(DFT)装置に適用することも可能である。
【0025】
この分散型植物栽培システム1によれば、複数個の電源調光ユニット2,2,…を分散配置することで電源装置を標準化することが可能になる。また、電源装置を分散・標準化することによって、設備のコストダウンを図ることができるとともに、予備電源を用意しておくことが可能になり、栽培規模の拡大や栽培種の追加等にも迅速に対応することができる。
【0026】
図2に示すように、分散型植物栽培システム1は三相交流電源4に接続されており、三相交流電源4からの交流電圧が、ユニット化された各電源調光ユニット2,2,…に供給される。供給された交流電圧は三相全波整流回路5で直流電圧に変換されて3色LED照明回路6に出力され、赤色、緑色、青色の3色のLEDを点灯させる。
【0027】
また、電源調光ユニット2には調光信号発生器9が接続されており、コンピュータ10からの指令に基づいて調光信号発生器9で生成された調光信号が電源調光ユニット2に入力される。電源調光ユニット2では、入力された調光信号に基づいて3色LED照明回路6に流れる電流を直接ON/OFFし、赤色、緑色、青色の3色のLEDが個別に調光される。なお、3色LED照明回路6に流れる電流値は、電流検出回路8で検出される。
【0028】
図3に示すように、電源調光ユニット2は、三相全波整流回路5と、3色LED照明回路6と、パルス調光回路7と、電流検出回路8を備えて構成されている。
【0029】
三相全波整流回路5は、位相が互いに120°ずれたU相、V相、W相の三系統の交流からなる三相交流電源4に対し、U−V相、V−W相、W−U相のそれぞれに接続された三相の絶縁トランス11を有する。この三相の絶縁トランス11の出力側には、それぞれ図のように結線されたダイオードブリッジ型の全波整流回路12が接続されており、各相の交流電圧を全波整流して出力する。本実施形態では、電源を絶縁トランス11と全波整流回路12で構成することにより、電解コンデンサや安定化回路等の高価な部品を使用していないため、低コストで高寿命な電源回路とすることができる。また、従来の直流安定化電源に比べて消費電力を削減することも可能となり、しかも負荷の大小に関わらず変換効率が変化しない。
【0030】
三相全波整流回路5には、3色LED照明回路6が接続されている。3色LED照明回路6は、赤色LED13、緑色LED14、及び青色LED15をそれぞれ複数個ずつ直列接続してなる3列のLEDモジュールからなり、三相全波整流回路5で全波整流された脈流により点灯する。
【0031】
3色LED照明回路6には、電流検出回路8を介してパルス調光回路7が接続されている。パルス調光回路7は、調光信号発生器9に接続されたON/OFF回路16と、LEDモジュールに接続された最大電流制限回路17を備えて構成されている。
【0032】
ON/OFF回路16は、電流制限抵抗R1とフォトカプラからなり、調光信号発生器9から出力されるパルス信号に応じて、電流制限抵抗R1に流れる電流が制限値を超えると発光素子のダイオードDが点灯して受光素子のフォトトランジスタQ1がONし、制限値よりも低いとダイオードDが消灯してフォトトランジスタQ1がOFFする。これにより、各色のLEDモジュールへ出力される電流のONとOFFが切り替えられる。
【0033】
最大電流制限回路17は、バイアス抵抗R2、電界効果トランジスタ(FET)Q2、トランジスタQ3、及び電流制限抵抗R3からなり、電流制限抵抗R3に流れる電流が制限値を超えるとトランジスタQ3がONし、電界効果トランジスタQ2がOFFする。これにより、3色LED照明回路6への電流の供給が遮断され、各色のLEDモジュールに流れる電流の最大値が制限される。
【0034】
また、本実施形態の調光信号発生器9は、
図4に示すようにPWM(パルス幅変調)制御によるパルス調光方式を採用しており、三角波発生回路18と、可変抵抗VRと、コンパレータUとからなる。
【0035】
調光信号発生器9では、三角波発生回路18から出力された三角波電圧と可変抵抗VRで分圧された基準電圧をコンパレータUで比較し、
図5に示すように三角波電圧が基準電圧より高いと電源電圧Vccを出力し、低いと0Vを出力するPWM波形が生成される。そして、このPWM波形からなる調光信号(赤色調光信号、緑色調光信号、青色調光信号)をパルス調光回路7に出力し、そのデューティ比(ON時間とOFF時間の割合)を0〜100%とすることで各色のLEDの点灯時間と消灯時間を個別に調整し、その明るさを0〜100%まで制御することができる。
【0036】
このように、本実施形態ではPWM制御によるパルス調光方式を採用したことにより、3色LED照明回路6に流れる電流を直接ON/OFFすることができるため、変換による調光ロスが発生しない。また、このパルス調光方式によれば、調光信号のデューティ比と光量が比例するので、デューティ比の制御によりLEDの光量を容易に管理することができる。
【0037】
ここで、PWM波形からなる調光信号は、その周波数が10Hz(電圧100V、電流2〜10A)未満であると、植物栽培の管理者にLEDの点滅が感じられるため適していない。一方、その周波数が2kHz(電圧100V、電流2〜10A)を超えると、パルス信号で直接LED電流(2〜10A)をON/OFFするためには回路が複雑になり調光ロスが発生する。また、ON/OFF電流が大きいため、絶縁トランス11が共振して大きなノイズが発生してしまう。さらに、調光信号のデューティ比と光量が比例しなくなり、特に0〜20%、80〜100%において誤差が大きくなる。したがって、調光信号の周波数は10Hz〜2kHzの範囲内に制限されていることが好ましい。
【0038】
3色LED照明回路6とパルス調光回路7の間には、
図3に示す電流検出回路8が設けられている。電流検出回路8は、強磁性体のコア材にコイルを巻いた中空の検出コイルからなり、コイルの穴に導線を通して配置することにより、赤色LED13、緑色LED14、及び青色LED15に流れる電流を非接触で検出する。そして、電源調光ユニット2,2,…ごとに検出された電流値のアナログデータは、A/D変換回路においてデジタルデータに変換され、
図2に示すコンピュータ10にフィードバックされる。なお、電流検出回路8では、三相全波整流回路5の出力電圧も検出される。この検出された電圧値のアナログデータも同様に、A/D変換回路でデジタルデータに変換されてコンピュータ10に出力される。
【0039】
このように、3色LED照明回路6をパルス調光することにより、LEDに流れる電流を非接触で検出することができる。そして、電流を非接触で検出することが可能になるので、電流や光量等を制御しやすくなり、全体をシステム化することができる。また、
図2に示すように、負荷の3色LED照明回路6に流れる電流や時間等のデータを電源調光ユニット2,2,…単位で収集蓄積し、栽培植物の生育状況等を全体としてコンピュータ10で管理することにより、植物工場全体の省エネ化、省人化を図ることが可能になる。
【0040】
なお、本実施形態の変形例として、
図6に示すように電源調光ユニット2と等電圧分配(EVD: Equal Voltage Distributor)方式の電源回路を組み合わせた構成を採用しても良い。この電源回路は、三相交流電源4の各相の交流電圧を分割、低電圧化する三相の電圧分割トランス20,20,20を備えたものである。
【0041】
図7に示すように、三相の電圧分割トランス20はすべて単巻トランスからなり、U−V入力端子間、V−W入力端子間、W−U入力端子間にそれぞれ入力導線21を介して巻線22が直列に接続されており、巻線22の始端と終端の間の巻数が均等(
図7の例では2等分)に分割され、その分割された個別巻線23の両端に出力導線24を介して絶縁トランス11が接続されている。
【0042】
このため、三相交流電源4から入力されたAC200Vの交流電圧は各電圧分割トランス20,20,…により均等に2分割され、その結果AC100Vに低電圧化された交流電圧がそれぞれ絶縁トランス11,11,…を介して全波整流回路12に出力される。
【0043】
最後に、本実施形態のパルス調光が植物の生育に及ぼす影響について、栽培実験による検証に基づいて説明する。
【0044】
<光量と周波数、デューティ比の関係>
調光信号の周波数が5Hz,100Hz,200Hz,500Hz,1kHzの各周波数において、デューティ比を0から5%刻みで100%まで変化させたときの赤色LED、青色LED、緑色LEDでの光量を、LEDパネルの27cm下、分光放射計:MS−720(英弘精機株式会社製)で測定した。最大光量は、赤色LEDで211μmol/m
-2/s
-1 、青色LEDで53μmol/m
-2/s
-1 、緑色LEDで19μmol/m
-2/s
-1 であり、ほぼデューティ比に比例した値を示した。
【0045】
<消費電力>
図6に示す等電圧分配(EVD)電源と、
図16に示すスイッチング方式の直流安定化(DC)電源での光量を変化させたときの消費電力の比較を実施した。EVD電源は三相200V、DC電源は単相100Vであり、使用したLED素子も異なるため単純な比較はできないが、EVD電源とDC電源を等光量となる条件下で測定した電力(W)のEVD電源/DC電源比は、
図8に示すように赤色LEDで62%(180μmol/m
-2/s
-1 )〜56%(50μmol/m
-2/s
-1 )、青色LED、緑色LEDでは光量に関わらずそれぞれ52%、62%前後であった。
【0046】
<栽培実験1>
供試植物としてリーフレタス(グリーンウェーブ)を用いた。発芽後、白色蛍光灯(150μmol/m
-2/s
-1 、明暗期16h/8h)下の湛液型水耕(DFT)装置で13日間育苗し、薄膜水耕(NFT)装置のEVD試験区とDC試験区に定植した。定植は、50株の苗から、生育の良いもの12株(L)、遅れているもの12株(S)を選別、それぞれの試験区に12株(S+L)を割り付けた。EVD試験区の苗とDC試験区の苗の様子を
図9に示す。EVD電源の周波数は500Hzとし、赤色150μmol/m
-2/s
-1 +青色15μmol/m
-2/s
-1 、DC電源も同じ光量となるように調光して明期24hで17日間の栽培をした。
【0047】
<栽培実験1の結果と考察>
草丈、根長、株の最大径、新鮮重量(可食部、根部)、SPAD値を測定した。その結果を
図10に示す。EVD試験区とDC試験区では、草丈、根長、株の最大径、SPAD値の平均値に大きな相違はなかった。可食部新鮮重量の平均値に相違が出たので、差を比較するためにt検定を実施した。各試験区(EVD、DC)、苗サイズ(S、L)での可食部新鮮重量を
図11に示す。検定結果は、EVD(S)対DC(S)がP(T<=t)0.057>0.05、EVD(L)対DC(L)がP(T<=t)0.1134>0.05となった。これらの結果から、S個体群では「有意傾向である」がL個体群では「有意差はない」ことが推察される。定植時の苗選択のバラツキを考慮すると両方式での明確な有意性を認めることはできないが、パルス調光が生育初期において生育を促進する可能性を示唆したものとも言える。
【0048】
<栽培実験2>
供試植物としてリーフレタス(グリーンウェーブとレッドファイア)を用いた。発芽後、白色蛍光灯(150μmol/m
-2/s
-1 、明暗期16h/8h)下の湛液型水耕(DFT)装置で17日間育苗し、薄膜水耕(NFT)装置のEVD試験区に定植した。定植は、50株の苗から、グリーンウェーブ、レッドファイアそれぞれ生育が同程度のもの6株を選別した。その苗の様子を
図12に示す。EVDの周波数は50Hz、100Hz、200Hzとし、周波数を変えて14日間の栽培実験を実施した。栽培時の光量は、赤色150μmol/m
-2/s
-1 +青色15μmol/m
-2/s
-1 とした。
【0049】
<栽培実験2の結果と考察>
草丈、根長、株の最大径、新鮮重量(可食部、根部)、SPAD値を測定した。その結果を
図13に示す。草丈、根長、株の最大径、可食部新鮮重量、SPAD値の平均値に有意水準を超えるような大きな相違はなかった。しかしながら、グリーンウェーブとレッドファイアの可食部新鮮重量の平均値では、グリーンウェーブでは周波数が増加すると生育が促進され、レッドファイアでは抑制される傾向が見られた(
図14を参照)。これは、栽培品種によってパルス光の周波数が生育に影響する可能性を示唆する結果とも言える。
【0050】
<まとめ>
EVD電源を植物工場LED照明システムに適用し、レタスの栽培実験を通した評価した。その結果、交流電源でも十分な光量が得られるとともに、PWM制御により細かな調光が可能なことが検証できた。また、厳密な比較ではないが、電源部での消費電力の削減の可能性があることを示せた。さらに、レタス栽培において、パルス調光が幼苗期に生育を促進する可能性を示唆する結果が得られた。