(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6126064
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】スチルベン骨格を有する化合物を含有するフィルムコーティング錠
(51)【国際特許分類】
A61K 36/48 20060101AFI20170424BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20170424BHJP
A61K 9/36 20060101ALI20170424BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20170424BHJP
A61K 31/09 20060101ALI20170424BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20170424BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20170424BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
A61K36/48
A61K31/05
A61K9/36
A61K47/38
A61K31/09
A61P17/00
A61P35/00
A61P39/06
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-229314(P2014-229314)
(22)【出願日】2014年11月11日
(65)【公開番号】特開2016-88921(P2016-88921A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2016年12月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】服部 祐子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 綾
【審査官】
鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0163580(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00−36/9068
A61K 9/00−9/72
A61K 31/00−31/80
A61K 47/00−47/69
A61P 17/00
A61P 35/00
A61P 39/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチルベン骨格を有する化合物を含むインドキノキ抽出物を含有する素錠と、該素錠を被覆する被覆層からなり、該被覆層がヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有し、前記素錠が前記スチルベン骨格を有する化合物を15質量%以上含有し、
前記スチルベン骨格を有する化合物と、前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースとの質量比が15:1〜1:10であることを特徴とする、フィルムコーティング錠。
【請求項2】
前記スチルベン骨格を有する化合物が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の、フィルムコーティング錠(式中、R1〜R6は、それぞれ独立して水素、ヒドロキシ基、又はアルコキシ基を表す)。
【化1】
(1)
【請求項3】
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の、フィルムコーティング錠(式中、R7〜R9は、それぞれ独立して水素、又は炭素数1〜3のアルキル基を表す)。
【化2】
(2)
【請求項4】
前記一般式(2)で表される化合物がレスベラトロール及び/又はプテロスチルベンであることを特徴とする、請求項3に記載のフィルムコーティング錠。
【化3】
(レスベラトロール)
【化4】
(プテロスチルベン)
【請求項5】
前記スチルベン骨格を有する化合物を1〜200mg含有し、錠径が6〜11mm、錠厚が2〜7mmであることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載のフィルムコーティング錠。
【請求項6】
前記被覆層が着色料を含有することを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載のフィルムコーティング錠。
【請求項7】
スチルベン骨格を有する化合物を含むインドキノキ抽出物を含有し、前記スチルベン骨格を有する化合物を15質量%以上含有する素錠と、該素錠を被覆する被覆層からなるフィルムコーティング錠の変色及び/又は変形を防止する方法であって、
前記素錠をヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する被覆層により被覆し、前記スチルベン骨格を有する化合物と前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースとの質量比が15:1〜1:10となるようにすることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチルベン骨格を有する化合物を含有するフィルムコーティング錠に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会となる中、健康の維持と長寿のため栄養補助食品を常用する高齢者が増加しており、高齢者であっても飲みやすい錠剤が求められている。錠剤を飲みやすくする手段としては、素錠をコーティングする技術が広く知られている。
従来、錠剤のコーティングには糖衣が主に用いられてきた。糖衣は素錠の持つ苦みを抑え、さらには保存性も向上させるという効果がある。
しかし、糖衣コーティングでは、素錠を糖により厚く被覆する必要があるため、結果、錠剤の粒径及び厚みが増え重量及び体積が大きくなり飲みにくいという問題があった。
【0003】
そこで、粒径を小さくし、飲用性を向上するため、水溶性の高分子からなるコート剤によって素錠を被覆する、フィルムコーティングの技術が開発された。フィルムコーティングは糖衣コーティングに比して素錠を薄く被覆することができるため、体積が小さく飲用性に優れた錠剤を提供することができる。
フィルムコーティング錠は糖衣錠同様に、素錠の持つ苦みを抑制する効果や保存性を向上させる効果を有しており汎用されている(例えば特許文献1)。また、フィルムコーティング錠は、着色が容易である点も特徴である。
【0004】
ところで、プテロスチルベンやレスベラトロールといったスチルベン骨格を有する化合物には、抗癌作用(例えば特許文献2)、美白作用(例えば特許文献3)及び抗酸化作用(例えば特許文献4)といった有利な生理作用があることが近年報告されている。
これらスチルベン骨格を有する化合物は、マメ科植物のインドキノキに豊富に含まれていることが知られている。インドキノキは、インド中南部からスリランカに密生し、太陽が照りつけるインドの過酷な環境でも生育することが知られている植物であり、健康によいとされ古来より摂取されてきた。
また、スチルベン骨格を有する化合物はブドウにも豊富に含まれることが知られている。近年、ワインに含まれるスチルベン骨格を有する化合物の生理活性に関する研究が注目され、健康のためにワインを飲用することが流行した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−125331号公報
【特許文献2】特開2013−43878号公報
【特許文献3】特開平1−38009号公報
【特許文献4】特表2012−516834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スチルベン骨格を有する化合物を含むインドキノキ抽出物を配合した糖衣錠が知られているが、糖衣の厚みに起因する体積の大きさから、飲用性の面では改善の余地があった。そのため、小さくコンパクトで飲用性に優れたスチルベン骨格を有する化合物を含む錠剤が求められてきた。
【0007】
このような状況の下、本発明者らは飲用性の向上を目的に、スチルベン骨格を有する化合物を含有するフィルムコーティング錠の作製を検討してきた。しかしながら、スチルベン骨格を有する化合物を含有するフィルムコーティング錠は、長期間の保存や高温下での保存によって、変色や変形を生じる場合があるという課題に直面した。
特に、素錠にスチルベン骨格を有する化合物が高濃度で含有されていると、フィルムコーティング錠の変色や変形は顕著であった。
【0008】
そこで、本発明は、スチルベン骨格を有する化合物を含有するフィルムコーティング錠の変色や変形を抑制させる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、スチルベン骨格を有する化合物を含有する素錠を、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む被覆層により被覆すると、保存安定性に優れたフィルムコーティング錠が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明はスチルベン骨格を有する化合物を含有する素錠と、該素錠を被覆する被覆層からなり、該被覆層がヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有することを特徴とする、フィルムコーティング錠である。
本発明のフィルムコーティング錠は、長期間又は高温下における保存によって変色や変形を生じにくい。また、本発明は飲用性に優れた、スチルベン骨格を有する化合物を含有するフィルムコーティング錠を提供することができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記スチルベン骨格を有する化合物が、下記一般式(1)で表される化合物である(式中、R1〜R6は、それぞれ独立して水素、ヒドロキシ基、又は炭素数が1〜3であるアルコキシ基を表す)。
【0011】
【化1】
(1)
【0012】
このような形態の本発明は、長期間又は高温下における保存によって変色や変形を起こしにくく、特に優れた生理活性を有するフィルムコーティング錠を提供することができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記スチルベン骨格を有する化合物が、下記一般式(2)で表される化合物である(式中、R7〜R9は、それぞれ独立して水素、又は炭素数1〜3のアルキル基を表す)。
【化2】
(2)
【0014】
このような形態の本発明は、長期間又は高温下における保存によって変色や変形を起こしにくく、特に優れた生理活性を有するフィルムコーティング錠を提供することができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記スチルベン骨格を有する化合物がプテロスチルベン及び/又はレスベラトロールである。
【0016】
【化3】
(レスベラトロール)
【0017】
【化4】
(プテロスチルベン)
【0018】
このような形態の本発明は、長期間又は高温下における保存によって変色や変形を起こしにくく、特に優れた生理活性を有するフィルムコーティング錠を提供することができる。
【0019】
本発明の好ましい形態では、前記素錠が前記化合物を1質量%以上含有する。
素錠におけるスチルベン骨格を有する化合物の濃度が1質量%以上、特に5質量%以上、中でも10質量%以上である素錠をフィルムコーティングした場合、長期間又は高温下における保存によって特に変色や変形が生じやすい。
そのため、本発明は前記化合物が1質量%以上、特に5質量%以上、特に10質量%以上、例えば10〜20質量%含有されているフィルムコーティング錠を提供する場合に、特に好ましく適用することができる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、フィルムコーティング錠は、前記化合物を1〜200mg含有し、錠径が6〜11mm、錠厚が2〜7mmである。
このような形態の本発明のフィルムコーティング錠は、小さく飲用性に優れ、かつ、スチルベン骨格を有する化合物を有効量摂取することを可能とする。
【0021】
本発明の好ましい形態では、前記被覆層が着色料を含有する。
このような形態の本発明は、着色料に起因する色味を長期間又は高温下において維持することができる。
【0022】
本発明の好ましい形態では、前記素錠が前記化合物を含む植物抽出物を含有し、該植物抽出物がインドキノキ及び/又はブドウの抽出物である。
このような形態の本発明は、長期間又は高温下における保存によって変色や変形を起こしにくく、特に優れた生理活性を有するフィルムコーティング錠を提供することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、長期間又は高温下における保存によって変色や変形を生じにくい、スチルベン骨格を有する化合物を含有するフィルムコーティング錠を提供することができる。
本発明の好ましい形態では、高い濃度のスチルベン骨格を有する化合物を含有しながらも、長期間又は高温下における保存によって変色や変形を起こしにくく、飲用性に優れるフィルムコーティング錠を提供することができる。
また、本発明の好ましい形態では、着色料による色味を活かすことができる、スチルベン骨格を有する化合物を含有するフィルムコーティング錠を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、スチルベン骨格を有する化合物を含有する素錠と、該素錠を被覆する被覆層からなり、該被覆層がヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有することを特徴とする、フィルムコーティング錠である。
以下、本発明のフィルムコーティング錠について説明するが、本発明の技術的範囲は、以下の具体的な実施形態にのみ限定されるものではない。
【0025】
本発明において、スチルベン骨格を有する化合物とは、トランス−スチルベン又はシス−スチルベンを含む構造を有する化合物のことをいう。
スチルベン骨格を有する化合物としては、ピセアタンノール、ピノシルビン、プテロスチルベン、レスベラトロール等のスチルベン誘導体;α-ビニフェリン、アンペロプシンA、アンペロプシンE、ジプトインドネシンC、ジプトインドネシンF、ε-ビニフェリン、フレクスオソールA、グネチンH、ヘムスレヤノールD、ホペアフェノール、ジプトインドネシンB、バチカノールB等のスチルベノイドの多量体;アストリンギン及びピセイド等の配糖体;ジプトインドネシンA、グネモノシドA、グネモノシドC、グネモノシドD、グネモノシドE、グネモノシドH、グネモノシドI、グネモノシドJ、グネモノシドL等の配糖体の多量体等を好適に例示することができる。
スチルベン骨格を有する化合物としては、スチルベン骨格中のベンゼン環が置換基として、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上のヒドロキシ基又はアルコキシ基を有していることが好ましい。
【0026】
本発明の好ましい実施の形態では、前記スチルベン骨格を有する化合物が、上記一般式(1)で表される化合物である。
上記一般式(1)で表される化合物においては、R1〜R6のうち、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上がヒドロキシ基、又はアルコキシ基であることが好ましい。
【0027】
また、本発明のより好ましい形態では、前記スチルベン骨格を有する化合物が、上記一般式(2)で表される化合物である。
上記一般式(2)で表される化合物においては、R7〜R9のうち、少なくとも1つは炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい。また、該炭素数1〜3のアルキル基としてはメチル基が好ましい。
【0028】
また、本発明のさらに好ましい形態では、前記スチルベン骨格を有する化合物がプテロスチルベン及び/又はレスベラトロールである。
プテロスチルベン及びレスベラトロールは、特に有用な生理活性を有していることが知られている。したがって、このような実施の形態の本発明のフィルムコーティング錠は、長期間又は高温下における保存によって変色や変形を起こしにくく、特に優れた生理活性を有する。
【0029】
本発明においては、任意の方法で得たスチルベン骨格を有する化合物を使用することが可能である。例えば、スチルベン骨格を有する化合物は、インドキノキ、ブドウ、ブルーベリー、ラズベリー、リンゴンベリー、カウベリー、及びメリンジョの植物体から抽出することが可能である。その他、特開2000−344622号公報にて開示されているスチルベン系化合物を含有する植物体から抽出することが可能である。
本発明の好ましい実施の形態では、素錠はインドキノキ及び/又はブドウの抽出物を含有する。
インドキノキとブドウは、スチルベン骨格を有する化合物の中でも特に優れた生理活性を有するプテロスチルベン及びレスベラトロールを豊富に含有する。
したがって、インドキノキ及び/又はブドウの抽出物を含有する形態の本発明のフィルムコーティング錠は、長期間又は高温下における保存によって変色や変形を起こしにくく、特に優れた生理活性を有する。
【0030】
スチルベン骨格を有する化合物を、上述のように植物体から抽出して得る場合には、通常の抽出方法により抽出し、さらに疎水性樹脂カラムやシリカゲルカラムを用いて精製することができる。特にエタノール、含水エタノール等の溶媒による抽出が好ましく例示できる。
【0031】
本発明の好ましい実施の形態では、前記素錠がスチルベン骨格を有する化合物を1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上含有する。
素錠におけるスチルベン骨格を有する化合物の濃度が高い素錠をフィルムコーティングした場合、長期間又は高温下における保存によって特に変色や変形が生じやすい。しかし、このような実施の形態の本発明は、有利な生理活性を有するスチルベン骨格を有する化合物を高濃度で含有しながらも、長期間又は高温下における保存によって変色や変形を生じにくい。
【0032】
本発明の好ましい実施の形態では、フィルムコーティング錠は、スチルベン骨格を有する化合物を1〜200mg、より好ましくは5〜150mg、さらに好ましくは10〜100mg含有し、錠径は6〜11mm、より好ましくは7〜9mmである。錠厚としては2〜7mmであることが好ましい。
このような形態の本発明のフィルムコーティング錠は、高い濃度のスチルベン骨格を有する化合物を含有しながらも、長期間又は高温下における保存によって変色や変形を起こしにくく、飲用性に優れる。
【0033】
本発明においては、素錠を被覆する被覆層がヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する。
本発明において、被覆層におけるヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上とする。
被覆層におけるヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量を前記範囲としたフィルムコーティング錠は、長期間又は高温下における保存によって変色や変形を生じにくい。
【0034】
また、本発明の好ましい実施の形態では、素錠に含まれるスチルベン骨格を有する化合物と、被覆層におけるヒドロキシプロピルメチルセルロースの質量比を、20:1〜1:20、より好ましくは15:1〜1:10、さらに好ましくは10:1〜1:5、さらに好ましくは9:1〜1:2とする。
スチルベン骨格を有する化合物と、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの質量比を前記範囲とすることにより、スチルベン骨格を有する化合物に起因するフィルムコーティング錠の経時的な色や形状の変化を効果的に抑制することができる。
【0035】
本発明の好ましい実施の形態では、前記被覆層が着色料を含有する。
このような形態の本発明は、着色料に起因する色味を長期間又は高温下において維持することができる。そのため、このような形態の本発明は、着色料による色味を活かしたフィルムコーティング錠を提供することができる。
被覆層における着色料の含有量は、通常1〜30質量%、好ましくは5〜25質量%、より好ましくは10〜20質量%としてもよい。
【0036】
着色料としては、経口摂取することが可能なものであれば特に限定されず、フラボノイド色素、アントシアニン色素、βカロチン、カロチノイド色素、トウガラシ色素、アナトー色素、アカネ色素、オレンジ色素、カカオ色素、クチナシ色素、クロロフィル、シコン色素、エリスロシン、タートラジン、タマネギ色素、トマト色素、マリーゴールド色素、ルテイン、カラメル色素、銅クロロフィル、ブドウ果皮色素、リボフラビン、およびリボフラビン5’リン酸エステルナトリウムなどが挙げられる。これらの着色料は、1種単独で使用することも2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0037】
本発明における素錠は、常法により調製することができる。すなわち、各原料をそれぞれ計量後、混合機で混合し、混合粉末を打錠機で打錠して素錠を調製することができる。
また、本発明においては、常法により素錠を被覆層によって被覆することができる。すなわち、被覆層を構成する成分を水に溶解又は分散させコーティング液を調製する。そして、素錠をコーティング機に投入し、温風を当てながら、調製したコーティング液をスプレー噴霧することによって、素錠を被覆層によって被覆することができる。
【0038】
本発明における被覆層の被覆厚は、好ましくは1〜100μm、より好ましくは5〜70μm、さらに好ましくは10〜50μmとする。
被覆層の被覆厚を前記範囲とすることにより、経時的な色や形状の変化を生じにくく、かつ、飲用性に優れたフィルムコーティング錠を提供することができる。
【0039】
本発明のフィルムコーティング錠においては、前記の成分以外に、通常の食品、栄養補助食品、医療用食品等で使用される任意の成分を含有することが出来る。かかる任意成分としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステルや、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどの界面活性剤、α化されていても良いデンプン、結晶セルロース、乳糖などの賦形剤、アラビアガム、糖アルコール、還元麦糖水あめ等の結合剤、ステアリン酸マグネシウムやステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの滑沢剤、クエン酸トリエチル、カプリン酸モノグリセリドなどの可塑剤などが例示出来る。
【0040】
本発明のフィルムコーティング錠の1錠あたりの重量は、好ましくは450mg以下、さらに好ましくは350mg以下である。例えば、200〜350mg程度の重量とすることにより、十分に有効成分を含有させながら、飲用性を高めることが可能となる。
【0041】
本発明のフィルムコーティング錠は、特に美白のために用いることが好ましい。
【実施例】
【0042】
<製造例>
表1に示す配合で、フィルムコーティング錠(実施例1及び2、並びに比較例1〜4)の製造を行った。
【0043】
【表1】
インドキノキ抽出物:株式会社サビンサジャパンコーポレーション「プテロノールP」(含水エタノール抽出物)
ブドウ抽出物:オリザ油化株式会社「レスベラトロール−P5」(含水エタノール抽出物)
着色料:二酸化チタン及びクチナシ青色素
【0044】
まず、表1に示す素錠の各成分をそれぞれ計量後、混合機で混合し、混合粉末を打錠機で打錠して素錠を調製した。また、表1に示す配合率で被覆層に含まれる各成分を計量後、精製水に溶解又は分散させて、コーティング液を調製した。
そして、調製した素錠をHICOATER(登録商標、フロイント産業製)に投入し、調製したコーティング液をスプレー噴霧し、固形分として表1に示す配合となるように被覆した。
このようにして製造したフィルムコーティング錠の重量は290mg、錠径は9mm、錠厚は4.8mmであった。
【0045】
<試験例>
実施例及び比較例のフィルムコーティング錠について、40℃で4週間及び12週間、50℃で1週間及び2週間、並びに60℃で48時間保管した際の経時的な外観変化を観察した。
観察は、評価員2名以上による官能評価により行った。評価は色、形状(表面に生じる凹凸の程度)、及び総合的評価の3項目について行った。2名以上の評価員によって、それぞれの項目について0.5刻みで0〜3までの評点を付し、その平均値を評価値とした。各評点の評価レベルは以下の通りである。
0:変化なし
1:比較すれば変化がわかる
2:比較しなくても変化がわかる
3:同一性に疑問が生じる変化
【0046】
また、60℃にて保管した場合のフィルムコーティング錠の色の変化については、簡易型分光光度計NF333(日本電色工業社製)を用い、経時前サンプルとの色差(ΔE(ab)値)を計測した。当該計測値が大きいほど、経時的に色が濃くなっていることを示す。
官能評価による評価値と、分光光度計による計測値を表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
表2に示すように、スチルベン骨格を有する化合物を含有しない素錠を、被覆層により被覆したフィルムコーティング錠(比較例3及び4)は、いずれの温度下で保管しても経時的な変化をほとんど生じなかった。一方、スチルベン骨格を有する化合物を含有する素錠を、ヒドロキシプロピルセルロースを含む被覆層により被覆したフィルムコーティング錠(比較例1及び2)は、いずれの温度下において保管した場合であっても、色の変化、形状の変化、又はこれら両方の変化が見られた。特に、60℃下において保管した場合には、同一性に疑問が生じるほど顕著な外見の変化が見られた。
また、表2に示すように、素錠に含まれるスチルベン骨格を有する化合物の含有量が、約1.6質量%である比較例2のフィルムコーティング錠と比較して、約19質量%である比較例1のフィルムコーティング錠の方が、外見の変化が生じやすい傾向にあった(50℃下1週間保管、及び60℃下48時間保管)。つまり、スチルベン骨格を有する化合物の濃度に依存するように、フィルムコーティング錠の外見の変化の程度が大きくなっている。
これらの結果は、素錠に含まれるスチルベン骨格を有する化合物が、フィルムコーティング錠の色や形状の経時的な変化を引き起こすことを示している。
【0049】
一方、スチルベン骨格を有する化合物を含有する素錠を、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する被覆層により被覆したフィルムコーティング錠(実施例1及び2)は、何れの温度下において保管した場合であっても、経時的な変化をほとんど生じなかった。
この結果は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する被覆層によれば、スチルベン骨格を有する化合物に起因するフィルムコーティング錠の色や形状の経時的な変化を抑制することができることを示している。
【0050】
また、上述の通り、素錠におけるスチルベン骨格を有する化合物の含有量が多いほど、フィルムコーティング錠の色や形状の変化を生じやすい傾向にある(比較例1及び2)。一方、実施例1のフィルムコーティング錠は、素錠がスチルベン骨格を有する化合物を約19質量%含有しているにも関わらず、何れの温度下に保管した場合であっても評価値は0又は0.5であった。
この結果は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する被覆層による被覆は、素錠がスチルベン骨格を有する化合物を高濃度に含有する形態の場合に特に有用であることを示している。
【0051】
以上の結果より、本発明のフィルムコーティング錠は長期間又は高温下における保存によって変色や変形を生じにくいことがわかった。特に本発明のフィルムコーティング錠は、高濃度のスチルベン骨格を有する化合物を含有する形態とする場合に有用であることがわかった。さらに、本発明は、経時的な変色を生じにくいため、色味を活かしたフィルムコーティング錠を提供することができることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、スチルベン骨格を有する化合物を高配合したフィルムコーティング錠を提供することができる。