(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような表面増強ラマン散乱ユニットには、微小金属構造体の酸化や、微小金属構造体への異物や不純物の付着等に起因して、使用前に表面増強ラマン散乱効果が劣化し易いという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、使用前における表面増強ラマン散乱効果の劣化を防止することができる表面増強ラマン散乱ユニット及びその使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットは、基板と、基板上に形成され、表面増強ラマン散乱を生じさせる光学機能部と、光学機能部を不活性な空間中に収容し、空間を不可逆的に開放させるパッケージと、を備える。
【0008】
この表面増強ラマン散乱ユニットでは、表面増強ラマン散乱を生じさせる光学機能部がパッケージによって不活性な空間中に収容されている。したがって、使用直前にパッケージを開封して空間を不可逆的に開放させることで、使用前における表面増強ラマン散乱効果の劣化を防止することができる。
【0009】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットでは、パッケージは、光学機能部上に試料を配置するために、空間を不可逆的に開放させてもよい。この構成によれば、上述したように使用直前にパッケージを開封して光学機能部上に試料を配置することで、使用前における表面増強ラマン散乱効果の劣化を防止することができる。
【0010】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットでは、パッケージは、基板上に取り付けられたキャップであってもよい。この構成によれば、基板を利用することで、光学機能部を不活性な空間中に収容し且つ空間を不可逆的に開放させるパッケージの構造の単純化を図ることができる。
【0011】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットでは、キャップは、空間とキャップの外部との圧力差によって変形する変形部を有してもよい。この構成によれば、例えば真空度を高めることで不活性な空間を実現した場合に、変形部の変形状態に基づいてパッケージが開封されたか否か、或いは使用前におけるリークの発生の有無を判断することができる。
【0012】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットでは、キャップは、キャップの一部が取り除かれることにより、空間を不可逆的に開放させてもよい。この構成によれば、光学機能部上への試料の安定的な配置等のために、キャップのうち基板上に残った部分を利用することができる。
【0013】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットでは、キャップは、光学機能部を包囲した状態で基板上に取り付けられた筒状の包囲部と、光学機能部と対向した状態で包囲部の開口を封止する対向部と、を有し、対向部は、キャップの一部として包囲部から取り除かれてもよい。この構成によれば、光学機能部上への試料の安定的な配置等のために、基板上に残った包囲部を利用することができる。
【0014】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットでは、対向部の厚さは、包囲部の厚さよりも薄くなっていてもよい。この構成によれば、使用前には、光学機能部が収容された不活性な空間を確実に維持しつつ、使用時には、対向部を包囲部から容易に取り除くことができる。
【0015】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットでは、包囲部と対向部との境界部分には、弱化部が形成されていてもよい。この構成によれば、使用前には、光学機能部が収容された不活性な空間を確実に維持しつつ、使用時には、対向部を包囲部から容易に取り除くことができる。
【0016】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットでは、光学機能部は、基板上に複数形成されており、包囲部及び対向部は、光学機能部ごとに設けられていてもよい。この構成によれば、使用すべき光学機能部に対応する対向部のみを取り除くことで、他の光学機能部を不活性な空間中に維持することができる。また、同一の基板上にて複数種類の試料が混ざり合うことなく計測することが可能となる。更に、計測時に表面増強ラマン散乱ユニットの差し替え等の手間を省くことができ、作業効率の向上を図ることが可能となる。
【0017】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットは、キャップの一部に取り付けられた把持部材を更に備えてもよい。この構成によれば、把持部材を用いて、キャップの一部を容易に且つ確実に取り除くことができる。
【0018】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットでは、把持部材は、樹脂層を介してキャップの一部に取り付けられていてもよい。この構成によれば、キャップの一部に撓み等が生じていても、キャップの一部に把持部材を容易に且つ確実に取り付けることができる。
【0019】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットでは、キャップは、キャップの全体が基板上から取り除かれることにより、空間を不可逆的に開放させてもよい。この構成によれば、使用前において、光学機能部が収容された不活性な空間をより確実に維持することができるように、キャップの全体の強度を向上させることができる。
【0020】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットでは、光学機能部は、基板上に複数形成されており、キャップは、光学機能部ごとに基板上に複数取り付けられていてもよい。この構成によれば、使用すべき光学機能部に対応するキャップのみを取り除くことで、他の光学機能部を不活性な空間中に維持することができる。また、同一の基板上にて複数種類の試料が混ざり合うことなく計測することが可能となる。更に、計測時に表面増強ラマン散乱ユニットの差し替え等の手間を省くことができ、作業効率の向上を図ることが可能となる。
【0021】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットは、キャップに取り付けられた把持部材を更に備えてもよい。この構成によれば、把持部材を用いて、キャップを容易に且つ確実に取り除くことができる。
【0022】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットでは、把持部材は、樹脂層を介してキャップに取り付けられていてもよい。この構成によれば、キャップに撓み等が生じていても、キャップに把持部材を容易に且つ確実に取り付けることができる。
【0023】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットは、基板が取り付けられたハンドリング基板を更に備え、パッケージは、ハンドリング基板上に取り付けられたキャップであってもよい。この構成によれば、ハンドリング基板を利用することで、光学機能部を不活性な空間中に収容し且つ空間を不可逆的に開放させるパッケージの構造の単純化を図ることができる。
【0024】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットでは、キャップは、空間とキャップの外部との圧力差によって変形する変形部を有してもよい。この構成によれば、例えば真空度を高めることで不活性な空間を実現した場合に、変形部の変形状態に基づいてパッケージが開封されたか否か、或いは使用前におけるリークの発生の有無を判断することができる。
【0025】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットでは、キャップは、キャップの一部が取り除かれることにより、空間を不可逆的に開放させてもよい。この構成によれば、キャップのうち基板上に残った部分を利用して、光学機能部上に試料を安定的に配置することができる。
【0026】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットでは、キャップは、基板及び光学機能部を包囲した状態でハンドリング基板上に取り付けられた筒状の包囲部と、基板及び光学機能部と対向した状態で包囲部の開口を封止する対向部と、を有し、対向部は、キャップの一部として包囲部から取り除かれてもよい。この構成によれば、包囲部を、光学機能部上への試料の安定的な配置に利用することができる。
【0027】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットでは、対向部の厚さは、包囲部の厚さよりも薄くなっていてもよい。この構成によれば、使用前には、光学機能部が収容された不活性な空間を確実に維持しつつ、使用時には、対向部を包囲部から容易に取り除くことができる。
【0028】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットでは、包囲部と対向部との境界部分には、弱化部が形成されていてもよい。この構成によれば、使用前には、光学機能部が収容された不活性な空間を確実に維持しつつ、使用時には、対向部を包囲部から容易に取り除くことができる。
【0029】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットでは、基板は、ハンドリング基板上に複数取り付けられており、包囲部及び対向部は、基板ごとに設けられていてもよい。この構成によれば、使用すべき光学機能部に対応する対向部のみを取り除くことで、他の光学機能部を不活性な空間中に維持することができる。また、同一のハンドリング基板上にて複数種類の試料が混ざり合うことなく計測することが可能となる。更に、計測時に表面増強ラマン散乱ユニットの差し替え等の手間を省くことができ、作業効率の向上を図ることが可能となる。
【0030】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットは、キャップの一部に取り付けられた把持部材を更に備えてもよい。この構成によれば、把持部材を用いて、キャップの一部を容易に且つ確実に取り除くことができる。
【0031】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットでは、把持部材は、樹脂層を介してキャップの一部に取り付けられていてもよい。この構成によれば、キャップの一部に撓み等が生じていても、キャップの一部に把持部材を容易に且つ確実に取り付けることができる。
【0032】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットでは、キャップは、キャップの全体がハンドリング基板上から取り除かれることにより、空間を不可逆的に開放させてもよい。この構成によれば、使用前において、光学機能部が収容された不活性な空間をより確実に維持することができるように、キャップの全体の強度を向上させることができる。
【0033】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットでは、基板は、ハンドリング基板上に複数取り付けられており、キャップは、基板ごとにハンドリング基板上に複数取り付けられていてもよい。この構成によれば、使用すべき光学機能部に対応するキャップのみを取り除くことで、他の光学機能部を不活性な空間中に維持することができる。また、同一のハンドリング基板上にて複数種類の試料が混ざり合うことなく計測することが可能となる。更に、計測時に表面増強ラマン散乱ユニットの差し替え等の手間を省くことができ、作業効率の向上を図ることが可能となる。
【0034】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットは、キャップに取り付けられた把持部材を更に備えてもよい。この構成によれば、把持部材を用いて、キャップを容易に且つ確実に取り除くことができる。
【0035】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットでは、把持部材は、樹脂層を介してキャップに取り付けられていてもよい。この構成によれば、キャップに撓み等が生じていても、キャップに把持部材を容易に且つ確実に取り付けることができる。
【0036】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットでは、パッケージは、基板及び光学機能部を収容し且つ基板が内面に取り付けられた凹部を有するハンドリング基板と、凹部の開口を封止するシートと、を有し、パッケージは、シートがハンドリング基板から取り除かれることにより、空間を不可逆的に開放させてもよい。この構成によれば、ハンドリング基板を利用することで、光学機能部を不活性な空間中に収容し且つ空間を不可逆的に開放させるパッケージの構造の単純化を図ることができる。更に、凹部を利用して、光学機能部上に試料を安定的に配置することができる。
【0037】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットでは、ハンドリング基板は、基板及び光学機能部を収容し且つ基板が内面に取り付けられた凹部を複数有してもよい。この構成によれば、使用すべき光学機能部が収容された凹部のみを開封することで、他の凹部に収容された光学機能部を不活性な空間中に維持することができる。また、同一のハンドリング基板上にて複数種類の試料が混ざり合うことなく計測することが可能となる。更に、計測時に表面増強ラマン散乱ユニットの差し替え等の手間を省くことができ、作業効率の向上を図ることが可能となる。
【0038】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットでは、シートは、凹部ごとに複数設けられていてもよい。この構成によれば、使用すべき光学機能部が収容された凹部のみについてシートをハンドリング基板から取り除くことで、当該凹部の開封、及び他の凹部の封止を容易に且つ確実に実現することができる。
【0039】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットでは、パッケージは、基板及び光学機能部を収容するキャップと、キャップの開口を封止するシートと、を有し、パッケージは、外力の作用によってキャップが変形させられ、基板を介してシートが破られることにより、空間を不可逆的に開放させてもよい。この構成によれば、パッケージから取り出した後における基板及び光学機能部の取り扱いの自由度を向上させることができる。
【0040】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットでは、キャップの内面には、光学機能部と対向するように凹部が形成されていてもよい。この構成によれば、基板及び光学機能部がパッケージに収容されている際や、基板及び光学機能部がパッケージから取り出される際に、キャップと光学機能部とが干渉するのを防止することができる。
【0041】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットでは、キャップの内面には、光学機能部の周囲において基板と対向するように凸部が形成されていてもよい。この構成によれば、基板及び光学機能部がパッケージに収容されている際や、基板及び光学機能部がパッケージから取り出される際に、キャップと光学機能部とが干渉するのを防止することができる。
【0042】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットは、パッケージであるキャップが取り付けられたハンドリング基板を更に備え、基板は、光学機能部がハンドリング基板と対向するようにキャップの内面に取り付けられており、キャップは、キャップの全体がハンドリング基板上から取り除かれることにより、空間を不可逆的に開放させてもよい。この構成によれば、キャップの全体をハンドリング基板上から取り除く際に、光学機能部に異物や不純物が付着するのを抑制することができる。
【0043】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットでは、キャップは、ハンドリング基板上に複数取り付けられており、基板は、キャップごとにキャップの内面に取り付けられていてもよい。この構成によれば、使用すべき光学機能部が収容されたキャップのみを開封することで、他のキャップに収容された光学機能部を不活性な空間中に維持することができる。また、同一のハンドリング基板上にて複数種類の試料が混ざり合うことなく計測することが可能となる。更に、計測時に表面増強ラマン散乱ユニットの差し替え等の手間を省くことができ、作業効率の向上を図ることが可能となる。
【0044】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットは、キャップに取り付けられた把持部材を更に備えてもよい。この構成によれば、把持部材を用いて、キャップを容易に且つ確実に取り除くことができる。
【0045】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットでは、把持部材は、樹脂層を介してキャップに取り付けられていてもよい。この構成によれば、キャップに撓み等が生じていても、キャップに把持部材を容易に且つ確実に取り付けることができる。
【0046】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットの使用方法は、基板と、基板上に形成され、表面増強ラマン散乱を生じさせる光学機能部と、光学機能部を不活性な空間中に収容し、空間を不可逆的に開放させるパッケージと、を備える、表面増強ラマン散乱ユニットの使用方法であって、パッケージを開封することにより、空間を不可逆的に開放させる第1工程と、第1工程の後に、光学機能部上に試料を配置する第2工程と、第2工程の後に、試料に励起光を照射する第3工程と、を備える。
【0047】
本発明の一側面の表面増強ラマン散乱ユニットの使用方法では、使用前には、表面増強ラマン散乱を生じさせる光学機能部がパッケージによって不活性な空間中に収容されている。したがって、使用直前にパッケージを開封して空間を不可逆的に開放させることで、使用前における表面増強ラマン散乱効果の劣化を防止することができる。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、使用前における表面増強ラマン散乱効果の劣化を防止することができる表面増強ラマン散乱ユニット及びその使用方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】本発明の第1実施形態の表面増強ラマン散乱ユニットの平面図である。
【
図2】
図1のII−II線に沿っての断面図である。
【
図4】
図1の表面増強ラマン散乱ユニットの使用工程を示す断面図である。
【
図5】
図1の表面増強ラマン散乱ユニットの使用工程を示す一部拡大断面図である。
【
図6】
図1の表面増強ラマン散乱ユニットの製造工程を示す断面図である。
【
図7】
図1の表面増強ラマン散乱ユニットの製造工程を示す断面図である。
【
図8】
図1の表面増強ラマン散乱ユニットの製造工程を示す断面図である。
【
図9】本発明の第1実施形態の表面増強ラマン散乱ユニットの変形例の使用工程を示す断面図である。
【
図10】本発明の第1実施形態の表面増強ラマン散乱ユニットの変形例の一部拡大断面図である。
【
図11】本発明の第1実施形態の表面増強ラマン散乱ユニットの変形例の一部拡大断面図である。
【
図12】本発明の第1実施形態の表面増強ラマン散乱ユニットの変形例の断面図である。
【
図13】本発明の第1実施形態の表面増強ラマン散乱ユニットの変形例の断面図である。
【
図14】本発明の第1実施形態の表面増強ラマン散乱ユニットの変形例の断面図である。
【
図15】
図14の表面増強ラマン散乱ユニットの使用工程を示す断面図である。
【
図16】本発明の第2実施形態の表面増強ラマン散乱ユニットの平面図である。
【
図17】
図16のXVII−XVII線に沿っての断面図である。
【
図18】
図16の表面増強ラマン散乱ユニットの使用工程を示す断面図である。
【
図19】本発明の第2実施形態の表面増強ラマン散乱ユニットの変形例の使用工程を示す断面図である。
【
図20】本発明の第2実施形態の表面増強ラマン散乱ユニットの変形例の断面図である。
【
図21】本発明の第2実施形態の表面増強ラマン散乱ユニットの変形例の断面図である。
【
図22】本発明の第3実施形態の表面増強ラマン散乱ユニットの平面図である。
【
図23】
図22のXXIII−XXIII線に沿っての断面図である。
【
図24】
図22の表面増強ラマン散乱ユニットの使用工程を示す断面図である。
【
図25】本発明の第4実施形態の表面増強ラマン散乱ユニットの断面図である。
【
図26】本発明の第4実施形態の表面増強ラマン散乱ユニットの変形例の断面図である。
【
図27】本発明の第4実施形態の表面増強ラマン散乱ユニットの変形例の断面図である。
【
図28】本発明の第1実施形態の表面増強ラマン散乱ユニットの変形例の断面図である。
【
図29】本発明の第2実施形態の表面増強ラマン散乱ユニットの変形例の断面図である。
【
図30】本発明の第3実施形態の表面増強ラマン散乱ユニットの変形例の断面図である。
【
図31】本発明の第2実施形態の表面増強ラマン散乱ユニットの変形例の断面図である。
【
図32】本発明の第2実施形態の表面増強ラマン散乱ユニットの変形例の断面図である。
【
図33】本発明の第5実施形態の表面増強ラマン散乱ユニットの断面図である。
【
図34】
図33の表面増強ラマン散乱ユニットの使用工程を示す断面図である。
【
図35】本発明の第3実施形態の表面増強ラマン散乱ユニットの変形例の断面図である。
【
図36】
図1の表面増強ラマン散乱ユニットの光学機能部のSEM写真である。
【
図37】本発明の第3実施形態の表面増強ラマン散乱ユニットの変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1実施形態]
【0051】
図1及び
図2に示されるように、SERSユニット(表面増強ラマン散乱ユニット)1Aは、ハンドリング基板2と、ハンドリング基板2上に取り付けられたSERS素子(表面増強ラマン散乱素子)3と、を備えている。ハンドリング基板2は、矩形板状のスライドガラス、樹脂基板又はセラミック基板等である。SERS素子3は、ハンドリング基板2の長手方向における一方の端部に片寄った状態で、ハンドリング基板2の表面2aに配置されている。
【0052】
SERS素子3は、ハンドリング基板2上に取り付けられた基板4と、基板4上に形成された成形層5と、成形層5上に形成された導電体層6と、を備えている。基板4は、シリコン又はガラス等によって矩形板状に形成されており、数百μm×数百μm〜数十mm×数十mm程度の外形及び100μm〜2mm程度の厚さを有している。基板4の裏面4bは、ダイレクトボンディング、半田等の金属を用いた接合、共晶接合、レーザ光の照射等による溶融接合、陽極接合、又は樹脂を用いた接合によって、ハンドリング基板2の表面2aに固定されている。
【0053】
図3に示されるように、成形層5は、微細構造部7と、支持部8と、枠部9と、を含んでいる。微細構造部7は、周期的パターンを有する領域であり、成形層5の中央部において基板4と反対側の表層に形成されている。微細構造部7には、数nm〜数百nm程度の太さ及び高さを有する複数のピラーが数十nm〜数百nm程度のピッチで周期的に配列されている。微細構造部7は、基板4の厚さ方向から見た場合に、数百μm×数百μm〜数十mm×数十mm程度の矩形状の外形を有している。支持部8は、微細構造部7を支持する領域であり、基板4の表面4aに形成されている。枠部9は、支持部8を環状に包囲する領域であり、基板4の表面4aに形成されている。支持部8及び枠部9は、数十nm〜数十μm程度の厚さを有している。このような成形層5は、例えば、基板4上に配置された樹脂(アクリル系、フッ素系、エポキシ系、シリコーン系、ウレタン系、PET、ポリカーボネート、無機有機ハイブリット材料等)又は低融点ガラスをナノインプリント法によって成形することで、一体的に形成される。
【0054】
導電体層6は、微細構造部7から枠部9に渡って形成されている。微細構造部7においては、導電体層6は、基板4と反対側に露出する支持部8の表面に達している。導電体層6は、数nm〜数μm程度の厚さを有している。このような導電体層6は、例えば、ナノインプリント法によって成形された成形層5に金属(Au,Ag、Al、Cu又はPt等)等の導電体を蒸着することで、形成される。SERS素子3では、微細構造部7、及び基板4と反対側に露出する支持部8の表面に形成された導電体層6によって、表面増強ラマン散乱を生じさせる光学機能部10が構成されている。
【0055】
参考として、光学機能部10のSEM写真を示す。
図36に示される光学機能部は、所定のピッチ(中心線間距離360nm)で周期的に配列された複数のピラー(直径120nm、高さ180nm)を有するナノインプリント樹脂製の微細構造部に、導電体層として、膜厚が50nmとなるようにAuを蒸着したものである。
【0056】
図1及び
図2に示されるように、SERSユニット1Aは、基板4上に形成された光学機能部10を不活性な空間S中に収容するパッケージ20Aを更に備えている。パッケージ20Aは、ラマン分光分析の対象となる試料を光学機能部10上に配置するために、空間Sを不可逆的に開放させる。空間Sは、真空度が高められたり、不活性ガスが充填されたり、或いは、異物や不純物の少ない雰囲気中においてパッケージ20Aの構成(ここでは、後述のキャップ21の実装)が行われたりすることで、不活性な空間とされている。なお、「パッケージが空間を不可逆的に開放させる」とは、パッケージは、開封されたら再び元の状態に戻れないもの(すなわち、再構成不能なもの)であり、パッケージの開封によって開放された空間も、再び元の不活性な空間に戻れないことを意味する。
【0057】
図3に示されるように、パッケージ20Aは、SERS素子3上に取り付けられたキャップ21である。キャップ21は、成形層5の枠部9及び導電体層6を介して基板4上に取り付けられている。キャップ21は、光学機能部10を包囲した状態で基板4上に取り付けられた矩形筒状の包囲部22と、光学機能部10と対向した状態で包囲部22の開口を封止する膜状の対向部23と、を有している。包囲部22における基板4側の端面22bは、ダイレクトボンディング、半田等の金属を用いた接合、共晶接合、レーザ光の照射等による溶融接合、陽極接合、又は樹脂を用いた接合によって、導電体層6の表面に固定されている。包囲部22及び対向部23は、シリコン又はガラス等によって一体的に形成されており、基板4側に向かって広がる四角錐台状の空間Sを画定している。
【0058】
図1及び
図2に示されるように、SERSユニット1Aは、キャップ21の一部に取り付けられたシール部材(把持部材)11を更に備えている。シール部材11の基端部11aは、ハンドリング基板2の表面2aに貼り付けられている。シール部材11の先端部11bは、キャップ21の対向部23における基板4と反対側の表面23aに貼り付けられており(
図3参照)、先端部11bの一部は、キャップ21上からはみ出している。なお、シール部材11の基端部11aは、ハンドリング基板2の表面2aに貼り付けられていなくてもよい。
【0059】
図3に示されるように、キャップ21において、対向部23の厚さは、包囲部22の厚さよりも薄くなっている。一例として、包囲部22の厚さが0.3mm〜2mm程度であるのに対し、対向部23の厚さは数μm〜百μm程度となっている。更に、包囲部22と対向部23との境界部分には、弱化部24が形成されている。これにより、
図4に示されるように、シール部材11の先端部11bの一部を把持して引き上げると、シール部材11の先端部11bが貼り付けられた対向部23も引き上げられる。このとき、包囲部22と対向部23との境界部分においてキャップ21が弱化部24を起点として破断され、シール部材11の先端部11bが貼り付けられた対向部23が包囲部22から取り除かれる。このように、対向部23が包囲部22から取り除かれることで、パッケージ20Aは、空間Sを不可逆的に開放させる。なお、シール部材11の先端部11bに代えて、シール部材11の基端部11aを把持して引き上げてもよい。
【0060】
なお、弱化部24とは、強度が弱められていたり、応力が集中し易くなっていたりする領域であって、キャップ21の破断の起点となる領域である。弱化部24としては、包囲部22と対向部23との境界部分に沿って当該境界部分の内部に形成された改質領域や、包囲部22と対向部23との境界部分に沿って当該境界部分の表面に形成された切り込み、クラック又は溝等がある。改質領域は、レーザ光の照射によって形成される。切り込み、クラック及び溝は、機械加工やエッチングによって形成される。
【0061】
次に、SERSユニット1Aの使用方法について説明する。まず、
図4に示されるように、シール部材11の先端部11bの一部を把持して引き上げ、対向部23を包囲部22から取り除く。このようにしてパッケージ20Aを開封することにより、空間Sを不可逆的に開放させる(第1工程)。
【0062】
続いて、
図5に示されるように、ピペット等を用いて、包囲部22の内側に溶液の試料12(或いは、水又はエタノール等の溶液に粉体の試料を分散させたもの)を滴下し、光学機能部10上に試料12を配置する(第2工程)。このように、キャップ21の一部である包囲部22を溶液の試料12のセル(チャンバ)として利用することができる。続いて、レンズ効果を低減させるために、包囲部22における基板4と反対側の端面22aにカバーガラス13を載置し、溶液の試料12と密着させる。このように、キャップ21の一部である包囲部22をカバーガラス13の載置台として利用することができる。
【0063】
続いて、SERSユニット1Aをラマン分光分析装置にセットし、光学機能部10上に配置された試料12に、カバーガラス13を介して励起光を照射する(第3工程)。これにより、光学機能部10と試料12との界面で表面増強ラマン散乱が生じ、試料12由来のラマン散乱光が例えば10
8倍程度にまで増強されて放出される。よって、ラマン分光分析装置では、高感度・高精度なラマン分光分析が可能となる。
【0064】
なお、光学機能部10上への試料の配置の方法には、上述した方法の他に、次のような方法がある。例えば、ハンドリング基板2を把持して、溶液である試料(或いは、水又はエタノール等の溶液に粉体の試料を分散させたもの)に対してSERS素子3を浸漬させて引き上げ、ブローして試料を乾燥させてもよい。また、溶液である試料(或いは、水又はエタノール等の溶液に粉体の試料を分散させたもの)を光学機能部10上に微量滴下し、試料を自然乾燥させてもよい。また、粉体である試料をそのまま光学機能部10上に分散させてもよい。そして、これらの場合には、測定時にカバーガラス13を配置しなくてもよい。
【0065】
次に、SERSユニット1Aの製造方法について説明する。まず、
図6に示されるように、SERS素子3となる部分を複数含むウェハ300を準備する。ウェハ300において、SERS素子3となる部分は、マトリックス状に配置されている。このようなウェハ300は、ウェハレベルで、ナノインプリント法による成形及び金属の蒸着等を実施することで作成される。その一方で、キャップ21となる部分を複数含むウェハ200を準備する。ウェハ200において、キャップ21となる部分は、ウェハ300におけるSERS素子3となる部分と同様に、マトリックス状に配列されている。このようなウェハ200は、ウェハレベルでエッチングやブラスト加工等を実施することで作成される。
【0066】
続いて、
図7に示されるように、真空中、不活性ガス雰囲気中、或いは、異物や不純物の少ない雰囲気中において、SERS素子3となる部分とキャップ21となる部分とを対応させ、ダイレクトボンディング、半田等の金属を用いた接合、共晶接合、レーザ光の照射等による溶融接合、陽極接合、又は樹脂を用いた接合によって、ウェハ300とウェハ200とを互いに固定する。これにより、各光学機能部10が不活性な空間S中に収容されることになる。
【0067】
続いて、
図8に示されるように、SERS素子3となる部分ごとに(換言すれば、キャップ21となる部分)ごとにウェハ300及びウェハ200をダイシングする。これにより、キャップ21が固定されたSERS素子3が複数作成される。このように、ウェハ300及びウェハ200のダイシング時には、各光学機能部10が不活性な空間S中に収容されているため、異物や不純物の付着等に起因する光学機能部10の劣化を防止することができる。続いて、ダイレクトボンディング、半田等の金属を用いた接合、共晶接合、レーザ光の照射等による溶融接合、陽極接合、又は樹脂を用いた接合によって、SERS素子3をハンドリング基板2上に固定する。更に、シール部材11の基端部11aをハンドリング基板2の表面2aに貼り付け、シール部材11の先端部11bをキャップ21の対向部23の表面23aに貼り付ける。以上により、SERSユニット1Aが製造される。
【0068】
次に、SERSユニット1Aによって奏される効果について説明する。まず、SERSユニット1Aでは、表面増強ラマン散乱を生じさせる光学機能部10がパッケージ20Aによって不活性な空間S中に収容されている。したがって、使用直前にパッケージ20Aを開封して空間Sを不可逆的に開放させることで、使用前における表面増強ラマン散乱効果の劣化(例えば、光学機能部10への異物や不純物の付着等に起因する表面増強ラマン散乱効果の劣化)を防止することができる。
【0069】
ここで、SERSユニット1Aでは、ラマン分光分析の対象となる試料(例えば分子試料)が光学機能部10における導電体層6の表面に密着することで、効果的な表面増強ラマン散乱が生じ得ることから、当該導電体層6の表面の汚染を防止することが極めて重要になる。例えば、当該汚染には、大気中の有機物の付着、水分の付着、水分を吸着することによる当該導電体層6の表面の酸化、微小なパーティクルの付着等があり、これらによって当該導電体層6の表面が汚染されると、当該導電体層6の表面への試料の接触が阻害され、効果的な表面増強ラマン散乱が生じ得なくなる。したがって、不活性な空間Sとは、例えば、真空度が高められたり、不活性ガスが充填されたり、或いは、異物や不純物の少ない雰囲気中においてパッケージ20Aの構成が行われたりすることで、開放直前まで外部雰囲気との流通が遮断され、上述したような汚染が生じ難くなっている空間(つまり、外部雰囲気中に比べ、光学機能部10における導電体層6の表面の汚染が生じ難くなっている空間)である。
【0070】
また、パッケージ20Aが、SERS素子3の基板4上に取り付けられたキャップ21であるため、基板4を利用して、光学機能部10を不活性な空間S中に収容し且つ空間Sを不可逆的に開放させるパッケージ20Aの構造の単純化を図ることができる。
【0071】
また、キャップ21が、対向部23が包囲部22から取り除かれることにより、空間Sを不可逆的に開放させるので、光学機能部10上への試料の安定的な配置等のために、基板4上に残った包囲部22を利用することができる。
【0072】
また、対向部23の厚さが包囲部22の厚さよりも薄くなっており、更に、包囲部22と対向部23との境界部分に弱化部24が形成されているので、使用前には、光学機能部10が収容された不活性な空間Sを確実に維持しつつ、使用時には、対向部23を包囲部22から容易に取り除くことができる。なお、使用時において、対向部23を包囲部22から容易に取り除くことができれば、対向部23の薄型化又は弱化部24の形成のいずれか一方の実施であってもよい。
【0073】
また、使用時にキャップ21から取り除かれる対向部23にシール部材11が取り付けられているので、使用時には、シール部材11を用いて、キャップ21から対向部23を容易に且つ確実に取り除くことができ、光学機能部10への対向部23の脱落等に起因して光学機能部10が汚染されるのを回避することが可能となる。
【0074】
次に、上述したSERSユニット1Aの変形例について説明する。
図9に示されるように、キャップ21は、キャップ21の全体が基板4上から取り除かれることにより、空間Sを不可逆的に開放させるものであってもよい。つまり、使用時において、シール部材11の先端部11bの一部を把持して引き上げたときに、包囲部22の端面22bとSERS素子3の導電体層6の表面との接合が破断されて、キャップ21の全体が基板4上から取り除かれるようにする。この場合、包囲部22と対向部23との境界部分には弱化部24を形成しない。更に、対向部23の厚さを薄くする必要もない。なお、溶液の試料12(或いは、水又はエタノール等の溶液に粉体の試料を分散させたもの)を光学機能部10上に配置する際には、例えばシリコーン等により包囲部22と同等の形状に形成されたスペーサを基板4上に配置すればよい。
【0075】
この構成によれば、使用時に対向部23を包囲部22から取り除き易くするために、弱化部24を形成したり、対向部23を必要以上に薄くしたりする必要がなくなる。したがって、使用前において、光学機能部10が収容された不活性な空間Sをより確実に維持することができるように、キャップ21の全体の強度を向上させることができる。
【0076】
また、
図10に示されるように、導電体層6は、基板4の表面4aに直接形成されていてもよい。この場合には、ナノインプリント法、エッチング、陽極酸化又はレーザアブレーション等によって、基板4の表面4aに微細構造部を形成し、その後に、金属の蒸着等によって基板4の表面4aに導電体層6を形成する。また、
図11に示されるように、包囲部22の端面22bは、光学機能部10以外の部分において露出させられた基板4の表面4aに固定されていてもよい。この構成によれば、パッケージ20Aの開封時に、導電体層6に外力が作用して導電体層6が剥がれるような事態を防止することができる。なお、包囲部22及び対向部23は、四角錐台状ではなく、四角柱状の空間Sを画定していてもよい。この構成によれば、包囲部22と対向部23との境界部分に亀裂が生じ易くなるため、対向部23を包囲部22から取り除く場合に有効である。
【0077】
キャップ21を導電体層6に固定する場合と、キャップ21を基板4に固定する場合とでは、例えばダイレクトボンディングを利用することによって、後者のほうが前者よりも固定力が高くなり易い。そのため、キャップ21の一部を取り除くことでパッケージ20Aの開封する場合には、キャップ21を基板4に固定することが好ましいともいえる。一方、キャップ21の全体を取り除くことでパッケージ20Aの開封する場合には、キャップ21を導電体層6に固定することが好ましいもといえる。
【0078】
また、キャップ21を導電体層6に固定する場合と、キャップ21を基板4に固定する場合とにかかわらず、樹脂を用いた接合によってキャップ21を固定する場合には、ダイレクトボンディング、半田等の金属を用いた接合、共晶接合、又は陽極接合によってキャップ21を固定する場合に比べ、気密性を維持し難い。そのため、樹脂を用いた接合によってキャップ21を固定する場合には、真空度を高めることで不活性な空間Sを実現するよりも、大気圧と同等の圧力となるように不活性ガスを充填したり、或いは、異物や不純物の少ない雰囲気中においてパッケージ20Aの構成を行ったりすることで、不活性な空間Sを実現するほうが好ましいともいえる。
【0079】
また、
図12に示されるように、基板4上に取り付けられたキャップ21は、空間Sとキャップ21の外部との圧力差によって変形する変形部25を有してもよい。ここでは、包囲部22の厚さよりも薄い厚さを有する対向部23が変形部25を兼ねており、真空度を高めることで不活性な空間Sを実現している。したがって、変形部25が凹むように変形している。なお、大気圧を超える圧力となるように不活性ガスを充填することで不活性な空間Sを実現すれば、変形部25が膨らむように変形することになる。この構成によれば、変形部25の変形状態に基づいてパッケージ20Aが開封されたか否か、或いは使用前におけるリークの発生の有無を判断することができる。
【0080】
また、
図13に示されるように、シール部材11は、樹脂層26を介してキャップ21の一部に取り付けられていてもよい。ここでは、シール部材11の先端部11bが樹脂層26を介して対向部23に取り付けられている。この構成によれば、対向部23に撓み等が生じていても、対向部23にシール部材11の先端部11bを容易に且つ確実に取り付けることができる。
【0081】
また、
図14に示されるように、対向部23が包囲部22から取り除かれることでパッケージ20Aが開封される場合において、光学機能部10が基板4上に複数形成されているときには、包囲部22及び対向部23は、光学機能部10ごとに設けられていてもよい。この場合には、隣り合う包囲部22同士は、連続して一体的に形成されていてもよいし、離間して別体として形成されていてもよい。この構成によれば、シール部材11を対向部23ごとに取り付けておき、
図15に示されるように、使用すべき光学機能部10に対応する対向部23のみを包囲部22から取り除くことで、他の光学機能部10を不活性な空間S中に維持することができる。更に、複数の対向部23を包囲部22から取り除き、光学機能部10ごとに異なる試料を配置することもできる。このように、同一の基板4上にて複数種類の試料が混ざり合うことなく計測することが可能となる。更に、計測時にSERSユニット1Aの差し替え等の手間を省くことができ、作業効率の向上を図ることが可能となる。
【0082】
なお、キャップ21の全体が基板4上から取り除かれることでパッケージ20Aが開封される場合において、光学機能部10が基板4上に複数形成されているときには、キャップ21は、光学機能部10ごとに基板4上に複数取り付けられていてもよい。この場合には、隣り合う包囲部22同士は、離間して別体として形成されている必要がある。この構成によっても、シール部材11をキャップ21ごとに取り付けておき、使用すべき光学機能部10に対応するキャップ21のみを基板4上から取り除くことで、他の光学機能部10を不活性な空間S中に維持することができる。更に、複数のキャップ21を基板4上から取り除き、光学機能部10ごとに異なる試料を配置することもできる。このように、同一の基板4上にて複数種類の試料が混ざり合うことなく計測することが可能となる。更に、計測時にSERSユニット1Aの差し替え等の手間を省くことができ、作業効率の向上を図ることが可能となる。
[第2実施形態]
【0083】
図16及び
図17に示されるように、SERSユニット1Bは、キャップ21がハンドリング基板2上に取り付けられている点で、上述したSERSユニット1Aと主に相違している。SERSユニット1Bにおいては、基板4上に形成された光学機能部10を不活性な空間S中に収容するパッケージ20Bは、ハンドリング基板2上に取り付けられたキャップ21である。キャップ21の包囲部22の端面22bは、ダイレクトボンディング、半田等の金属を用いた接合、共晶接合、レーザ光の照射等による溶融接合、陽極接合、又は樹脂を用いた接合によって、ハンドリング基板2の表面2aに固定されている。
【0084】
SERSユニット1Bにおいても、対向部23の厚さは、包囲部22の厚さよりも薄くなっており、更に、包囲部22と対向部23との境界部分には、弱化部24が形成されている。これにより、
図18に示されるように、シール部材11の先端部11bの一部を把持して引き上げると、シール部材11の先端部11bが貼り付けられた対向部23も引き上げられる。このとき、包囲部22と対向部23との境界部分において弱化部24を起点としてキャップ21が破断され、シール部材11の先端部11bが貼り付けられた対向部23が包囲部22から取り除かれる。このように、対向部23が包囲部22から取り除かれることで、パッケージ20Bは、空間Sを不可逆的に開放させる。
【0085】
以上のように構成されたSERSユニット1Bによれば、上述したSERSユニット1Aと共通の効果の他に、次のような効果が奏される。すなわち、SERSユニット1Bでは、パッケージ20Bが、ハンドリング基板2上に取り付けられたキャップ21であるため、ハンドリング基板2を利用して、光学機能部10を不活性な空間S中に収容し且つ空間Sを不可逆的に開放させるパッケージ20Bの構造の単純化を図ることができる。
【0086】
次に、上述したSERSユニット1Bの変形例について説明する。
図19に示されるように、キャップ21は、キャップ21の全体がハンドリング基板2上から取り除かれることにより、空間Sを不可逆的に開放させるものであってもよい。つまり、使用時において、シール部材11の先端部11bの一部を把持して引き上げたときに、包囲部22の端面22bとハンドリング基板2の表面2aとの接合が破断されて、キャップ21の全体がハンドリング基板2上から取り除かれるようにする。この場合、包囲部22と対向部23との境界部分には弱化部24を形成しない。更に、対向部23の厚さを薄くする必要もない。なお、溶液の試料12(或いは、水又はエタノール等の溶液に粉体の試料を分散させたもの)を光学機能部10上に配置する際には、例えばシリコーン等により包囲部22と同等の形状に形成されたスペーサをハンドリング基板2上に配置すればよい。
【0087】
この構成によれば、使用時に対向部23を包囲部22から取り除き易くするために、弱化部24を形成したり、対向部23を必要以上に薄くしたりする必要がなくなる。したがって、使用前において、光学機能部10が収容された不活性な空間Sをより確実に維持することができるように、キャップ21の全体の強度を向上させることができる。
【0088】
また、
図20に示されるように、ハンドリング基板2上に取り付けられたキャップ21は、空間Sとキャップ21の外部との圧力差によって変形する変形部25を有してもよい。ここでは、包囲部22の厚さよりも薄い厚さを有する対向部23が変形部25を兼ねており、真空度を高めることで不活性な空間Sを実現している。したがって、変形部25が凹むように変形している。なお、大気圧を超える圧力となるように不活性ガスを充填することで不活性な空間Sを実現すれば、変形部25が膨らむように変形することになる。この構成によれば、変形部25の変形状態に基づいてパッケージ20Bが開封されたか否か、或いは使用前におけるリークの発生の有無を判断することができる。
【0089】
また、
図21に示されるように、シール部材11は、樹脂層26を介してキャップ21の一部に取り付けられていてもよい。ここでは、シール部材11の先端部11bが樹脂層26を介して対向部23に取り付けられている。この構成によれば、対向部23に撓み等が生じていても、対向部23にシール部材11の先端部11bを容易に且つ確実に取り付けることができる。
【0090】
また、対向部23が包囲部22から取り除かれることでパッケージ20Bが開封される場合において、SERS素子3がハンドリング基板2上に複数形成されているときには、包囲部22及び対向部23は、SERS素子3ごとに設けられていてもよい。この場合には、隣り合う包囲部22同士は、連続して一体的に形成されていてもよいし、離間して別体として形成されていてもよい。この構成によれば、シール部材11を対向部23ごとに取り付けておき、使用すべき光学機能部10に対応する対向部23のみを包囲部22から取り除くことで、他の光学機能部10を不活性な空間S中に維持することができる。更に、複数の対向部23を包囲部22から取り除き、光学機能部10ごとに異なる試料を配置することもできる。このように、同一のハンドリング基板2上にて複数種類の試料が混ざり合うことなく計測することが可能となる。更に、計測時にSERSユニット1Bの差し替え等の手間を省くことができ、作業効率の向上を図ることが可能となる。
【0091】
なお、キャップ21の全体がハンドリング基板2上から取り除かれることでパッケージ20Bが開封される場合において、SERS素子3がハンドリング基板2上に複数形成されているときには、キャップ21は、SERS素子3ごとにハンドリング基板2上に複数取り付けられていてもよい。この場合には、隣り合う包囲部22同士は、離間して別体として形成されている必要がある。この構成によっても、シール部材11をキャップ21ごとに取り付けておき、使用すべき光学機能部10に対応するキャップ21のみをハンドリング基板2上から取り除くことで、他の光学機能部10を不活性な空間S中に維持することができる。更に、複数のキャップ21をハンドリング基板2上から取り除き、光学機能部10ごとに異なる試料を配置することもできる。このように、同一のハンドリング基板2上にて複数種類の試料が混ざり合うことなく計測することが可能となる。更に、計測時にSERSユニット1Bの差し替え等の手間を省くことができ、作業効率の向上を図ることが可能となる。
[第3実施形態]
【0092】
図22及び
図23に示されるように、SERSユニット1Cは、ハンドリング基板2及びシート14によってパッケージ20Cが構成されている点で、上述したSERSユニット1Aと主に相違している。SERSユニット1Cにおいては、SERS素子3を収容する断面矩形状の凹部15がハンドリング基板2の表面2aに形成されている。凹部15内において、SERS素子3の基板4の裏面4bは、ダイレクトボンディング、半田等の金属を用いた接合、共晶接合、レーザ光の照射等による溶融接合、陽極接合、又は樹脂を用いた接合によって、凹部15の底面(内面)15aに固定されている。この状態で、凹部15の開口15bは、ハンドリング基板2の表面2aに貼り付けられたシート14によって封止されている。SERSユニット1Cでは、
図24に示されるように、シート14がハンドリング基板2から取り除かれることにより、パッケージ20Cが空間Sを不可逆的に開放させる。なお、凹部15を有するハンドリング基板2は、ガラス、セラミック又はシリコン等からなる基板にエッチングやブラスト加工等により凹部15を形成したものであってもよいし、PET若しくはポリカーボネート、ポリプロピレン、スチロール樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン、PMMA、シリコーン、液晶ポリマー等のプラスチック又はモールドガラス等を成型したものであってもよい。
【0093】
以上のように構成されたSERSユニット1Cによれば、上述したSERSユニット1Aと共通の効果の他に、次のような効果が奏される。すなわち、SERSユニット1Cでは、ハンドリング基板2を利用することで、光学機能部10を不活性な空間S中に収容し且つ空間Sを不可逆的に開放させるパッケージ20Cの構造の単純化を図ることができる。更に、ハンドリング基板2の凹部15を利用して、光学機能部10上に試料を安定的に配置することができる。
[第4実施形態]
【0094】
図25に示されるように、SERSユニット1Dは、キャップ16及びシート17によってパッケージ20Dが構成されている点で、上述したSERSユニット1Aと主に相違している。SERSユニット1Dにおいては、SERS素子3の基板4がキャップ16の底面(内面)16aと反対側に位置した状態で、SERS素子3がキャップ16に収容されている。キャップ16の開口16bには、外向きのフランジ部16cが設けられている。キャップ16の開口16bは、フランジ部16cに貼り付けられたシート17によって封止されている。キャップ16内において、SERS素子3は、キャップ16の側壁部16dによって、キャップ16の底面16aと平行な方向への動きが規制されている。この状態で、キャップ16の底面16aには、SERS素子3の光学機能部10と対向するように凹部18が形成されている。キャップ16は、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリオロフェン等の高防湿性プラスチックによって、一体的に形成されている。シート17は、アルミニウム箔等である。
【0095】
SERSユニット1Dでは、キャップ16を押し潰すような外力の作用によってキャップ16が変形させられ、基板4を介してシート17が破られることにより、パッケージ20Dが空間Sを不可逆的に開放させる。これにより、SERS素子3を取り出すことができる。パッケージ20DからSERS素子3を取り出す際には、キャップ16の底面16aが光学機能部10の周囲の導電体層6(すなわち、成形層5の枠部9上に形成された導電体層6)に接触するものの、光学機能部10に対しては凹部18が逃げ領域となるため、キャップ16の底面16aが光学機能部10に接触することはない。
【0096】
以上のように構成されたSERSユニット1Dによれば、上述したSERSユニット1Aと共通の効果の他に、次のような効果が奏される。すなわち、パッケージ20Dから取り出した後におけるSERS素子3の取り扱いの自由度を向上させることができる。更に、SERS素子3がパッケージ20Dに収容されている際や、SERS素子3がパッケージ20Dから取り出される際に、キャップ16と光学機能部10とが干渉するのを防止することができる。なお、フランジ部16c同士を繋げることで、複数のSERSユニット1Dをマトリックス状に接続することもできる。このとき、改質領域、切り込み、クラック又は溝等の弱化部を、隣り合うフランジ部16cの境界部分に形成すれば、SERSユニット1Dを必要な分だけ分離することができる。
【0097】
次に、上述したSERSユニット1Dの変形例について説明する。
図26に示されるように、キャップ16の底面16aに凸部19が形成されていてもよい。凸部19は、光学機能部10の周囲において基板4と対向するように矩形環状に形成されている。これにより、パッケージ20DからSERS素子3を取り出す際には、凸部19が光学機能部10の周囲の導電体層6(すなわち、成形層5の枠部9上に形成された導電体層6)に接触するものの、キャップ16の底面16a及び凸部19が光学機能部10に接触することはない。したがって、SERS素子3がパッケージ20Dに収容されている際や、SERS素子3がパッケージ20Dから取り出される際に、キャップ16と光学機能部10とが干渉するのを防止することができる。なお、凸部19は、光学機能部10の周囲において基板4と対向するように複数設けられていてもよい。また、凸部19は、パッケージ20Dに収容されたSERS素子3がシート17に接触している状態において、SERS素子3に接触するように設けられていてもよいし、SERS素子3から離間するように設けられていてもよい。
【0098】
また、
図27に示されるように、光学機能部10以外の部分において基板4の表面4aが露出させられたSERS素子3がパッケージ20Dに収容される場合には、SERS素子3がパッケージ20Dに収容されている際や、SERS素子3がパッケージ20Dから取り出される際に、露出させられた基板4の表面4aに凹部18の周囲のキャップ16の底面16aを接触させたり(
図27の(a))、また、露出させられた基板4の表面4aに凸部19を接触させたり(
図27の(b))すればよい。
[第5実施形態]
【0099】
図33に示されるように、SERSユニット1Eは、SERS素子3がキャップ21に取り付けられている点で、
図19に示されたSERSユニット1Bの変形例と主に相違している。SERSユニット1Eにおいては、基板4上に形成された光学機能部10を不活性な空間S中に収容するパッケージ20Eは、ハンドリング基板2上に取り付けられたキャップ21である。キャップ21の包囲部22の端面22bは、ダイレクトボンディング、半田等の金属を用いた接合、共晶接合、レーザ光の照射等による溶融接合、陽極接合、又は樹脂を用いた接合によって、ハンドリング基板2の表面2aに固定されている。
【0100】
SERS素子3の基板4は、光学機能部10がハンドリング基板2の表面2aと対向するようにキャップ21の内面に取り付けられている。基板4の裏面4bは、ダイレクトボンディング、半田等の金属を用いた接合、共晶接合、レーザ光の照射等による溶融接合、陽極接合、又は樹脂を用いた接合によって、キャップ21の対向部23の内面に固定されている。
【0101】
図34に示されるように、SERSユニット1Eでは、使用時において、シール部材11の先端部11bの一部を把持して引き上げたときに、包囲部22の端面22bとハンドリング基板2の表面2aとの接合が破断されて、キャップ21の全体がハンドリング基板2上から取り除かれるようにする。このように、キャップ21は、キャップ21の全体がハンドリング基板2上から取り除かれることにより、空間Sを不可逆的に開放させる。なお、シール部材11は、樹脂層26を介してキャップ21に取り付けられていてもよい。
【0102】
以上のように構成されたSERSユニット1Eによれば、
図19に示されたSERSユニット1Bの変形例と共通の効果の他に、次のような効果が奏される。すなわち、SERSユニット1Eでは、キャップ21の全体をハンドリング基板2上から取り除く際に、光学機能部10に異物や不純物が付着するのを抑制することができる。
【0103】
なお、キャップ21は、ハンドリング基板2上に複数取り付けられており、SERS素子3の基板4は、キャップ21ごとにキャップ21の内面に取り付けられていてもよい。この構成によれば、使用すべき光学機能部10が収容されたキャップ21のみを開封することで、他のキャップ21に収容された光学機能部10を不活性な空間S中に維持することができる。また、それぞれのキャップ21において、複数種類の試料が混ざり合うことなく計測することが可能となる。更に、計測時にSERSユニット1Bの差し替え等の手間を省くことができ、作業効率の向上を図ることが可能となる。
【0104】
以上、本発明の第1〜第5実施形態について説明したが、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではない。例えば、空間Sの形状は、四角錘台状の他に、円柱状、円錐台状、四角柱状等、種々の形状とすることができる。また、SERSユニット1A〜1Eは、例えば第1実施形態及び第2実施形態において複数の光学機能部10に対して1つの(同一の)対向部23が対応する構成等、複数の光学機能部10が同一のパッケージ20A〜20Eに収容されるような構成をとってもよい。以上のように、SERSユニット1A〜1Eの各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を適用することができる。
【0105】
また、微細構造部7は、例えば支持部8を介して、基板4の表面4a上に間接的に形成されていてもよいし、基板4の表面4a上に直接的に形成されていてもよい。また、導電体層6は、微細構造部7上に直接的に形成されたものに限定されず、微細構造部7に対する金属の密着性を向上させるためのバッファ金属(Ti、Cr等)層等、何らかの層を介して、微細構造部7上に間接的に形成されたものであってもよい。
【0106】
また、
図28に示されるように、第1実施形態のSERSユニット1Aにおいて、シール部材11に代えて、リジット部材(把持部材)31をキャップ21に取り付けてもよい。リジット部材31は、樹脂、金属、セラミック又はガラス等によって矩形板状に形成されている。リジット部材31の基端部31aは、ダイレクトボンディング、半田等の金属を用いた接合、共晶接合、レーザ光の照射等による溶融接合、陽極接合、又は樹脂を用いた接合によって、キャップ21の対向部23の表面23aに固定されており、リジット部材31の先端部31bは、自由端となっている。この場合、リジット部材31の先端部31bをハンドリング基板2に対して進退させることで、キャップ21の対向部23、又はキャップ21の全体をリジット部材31と共に取り除く。なお、キャップ21にリジット部材31を一体的に形成してもよい。また、第2実施形態のSERSユニット1Bにおいて、シール部材11に代えて、リジット部材31をキャップ21に取り付けてもよい。
【0107】
また、
図29に示されるように、第2実施形態のSERSユニット1Bにおいて、シール部材11に代えて、突起部材(把持部材)32をキャップ21に取り付けてもよい。突起部材32は、樹脂、金属、セラミック又はガラス等からなり、ダイレクトボンディング、半田等の金属を用いた接合、共晶接合、レーザ光の照射等による溶融接合、陽極接合、又は樹脂を用いた接合によって、キャップ21の対向部23の表面23aに固定されている。半田等の金属、又は樹脂を用いて接合する場合、キャップ21の包囲部22の端面22aが、対向部23の表面23aに対してハンドリング基板2と反対側に突出していると、対向部23の表面23a上において包囲部22に包囲された領域Rに、半田等の金属、又は樹脂を留め、突起部材32を対向部23の表面23aに容易に且つ確実に固定することができる。この場合、突起部材32を把持して引き上げることで、キャップ21の対向部23を突起部材32と共に取り除く。
【0108】
なお、領域Rの広さは、基板4の厚さ方向から見た場合に、空間Sの広さと同等であってもよいし(
図29の(a))、空間Sの広さよりも大きくてもよいし(
図29の(b))、空間Sの広さよりも小さくてもよい(
図29の(a))。また、キャップ21に突起部材32を一体的に形成してもよい。また、第1実施形態のSERSユニット1Aにおいて、シール部材11に代えて、突起部材32をキャップ21に取り付けてもよい。また、
図30に示されるように、第3実施形態のSERSユニット1Cにおいて、シート14に代えて、樹脂、金属、セラミック又はガラス等からなるカバー33によって凹部15の開口15bを封止し、そのカバー33に突起部材32を取り付けてもよい。また、
図31に示されるように、第2実施形態のSERSユニット1Bにおいて、SERS素子3がハンドリング基板2上に複数形成されており、包囲部22及び対向部23がSERS素子3ごとに設けられている場合には、各対向部23に突起部材32を取り付けてもよい。
【0109】
また、
図32に示されるように、第2実施形態のSERSユニット1Bにおいて、シール部材11に代えて、爪部33をキャップ21に一体的に形成してもよい。この場合、爪部33にピンセット等を引っ掛けて爪部33を引き上げることで、キャップ21の全体を取り除く。なお、爪部33は、フランジ状に形成されていてもよいし(
図32の(a))、突起状に一つ又は複数形成されていてもよい(
図32の(b))。また、第1実施形態のSERSユニット1Aにおいて、シール部材11に代えて、爪部33をキャップ21に一体的に形成してもよい。
【0110】
また、
図35に示されるように、第3実施形態のSERSユニット1Cにおいて、ハンドリング基板2は、基板2及び光学機能部10を収容し且つ基板2が内面に取り付けられた凹部15を複数有してもよい。この構成によれば、使用すべき光学機能部10が収容された凹部15のみを開封することで、他の凹部15に収容された光学機能部10を不活性な空間S中に維持することができる。また、同一のハンドリング基板2上にて複数種類の試料が混ざり合うことなく計測することが可能となる。更に、計測時にSERSユニット1Cの差し替え等の手間を省くことができ、作業効率の向上を図ることが可能となる。
【0111】
更に、SERSユニット1Cでは、シート14は、凹部15ごとに複数設けられていてもよい。この構成によれば、使用すべき光学機能部10が収容された凹部15のみについてシート14をハンドリング基板2から取り除くことで、当該凹部15の開封、及び他の凹部15の封止を容易に且つ確実に実現することができる。
【0112】
また、
図37に示されるように、第3実施形態のSERSユニット1Cのハンドリング基板2の裏面2bに、ハンドリング基板2の厚さ方向に垂直な方向に延在する壁部41,42が形成されるように、複数の肉抜き部43が設けられていてもよい。ここでは、壁部41は、ハンドリング基板2の外縁に沿って環状に形成されており、壁部42は、壁部41の内側において格子状に形成されている。一例として、各肉抜き部43は、直方体状に形成されている。
【0113】
この構成によれば、ハンドリング基板2に反りが生じることが防止されるため、ラマン分光分析を行う場合において、ハンドリング基板2をラマン分光分析装置のステージ上に配置するときに、光学機能部10に励起光の焦点を精度良く合わせることができる。特に、凹部15をハンドリング基板2に形成する場合には、ハンドリング基板2の材料に、凹部15の形成が容易となる樹脂等の材料が選択されるが、そのような材料ほど反りが生じ易くなるので、上述したような肉抜き部43を設けることは極めて有効である。ただし、上述したいずれの形態のハンドリング基板2にも、反りが生じるのを防止するために、上述したような肉抜き部43を設けることは可能である。
【0114】
なお、ハンドリング基板2の表面2aには、ハンドリング基板2の外縁に沿って環状に切欠き部44が形成されている。この切欠き部44は、別のSERSユニット1Cの壁部41が配置されるように形成されているため、搬送時等に、複数のSERSユニット1Cをスタックすることができる。
【0115】
また、
図37に示されるSERSユニット1Cにおいても、シート14の端部14aを把持してシート14を凹部15と反対側に引き上げることで、シート14をハンドリング基板2から取り除く。これにより、光学機能部10に損傷が生じるのを確実に防止しつつ、パッケージ20C内の空間Sを不可逆的に開放させることができる。このように、シート14のうち、その端部14aは、ハンドリング基板2の表面2aに貼り付けられておらず、シート14をハンドリング基板2から取り除く際に把持部として機能する。