(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記裏材が微小孔性であり、そして前記直立柱の多孔性が裏材よりも低く、及び/又は前記裏材の不透明度が前記直立柱よりも大きい、請求項1又は2に記載の構造化フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の構造化フィルム及び/又は本開示によって作製された構造化フィルムは、半結晶性ポリオレフィンを包含する。種々のポリオレフィンが有用であり得る。典型的には、半結晶性ポリオレフィンはポリプロピレンを含む。ポリプロピレンを含む半結晶性ポリオレフィンは、プロピレン繰り返し単位を含有するポリプロピレンホモポリマー又はコポリマーであってよいと理解すべきである。コポリマーは、プロピレンと少なくとも1種の他のオレフィン(例えば、エチレン又は炭素原子数が4〜12又は4〜8のα−オレフィン)とのコポリマーであってよい。エチレン、プロピレン及び/又はブチレンのコポリマーが有用であり得る。いくつかの実施形態では、コポリマーは、ポリプロピレンを最大90、80、70、60、又は50重量%含有する。いくつかの実施形態では、コポリマーは、ポリプロピレン又はα−オレフィンのうち少なくとも一方を最大50、40、30、20、又は10重量%含有する。半結晶性ポリオレフィンはまた、ポリプロピレンを熱可塑性ポリマーのブレンドの一部であってもよい。好適な熱可塑性ポリマーとしては、典型的に従来のプロセス条件において溶融加工可能な結晶性ポリマーが挙げられる。即ち、加熱すると、ポリマーは典型的に軟化及び/又は融解して、シートを形成するために押出成形機などの従来の機器で加工することができる。結晶性ポリマーは、その溶融物を制御された条件下で冷却すると、幾何学的に規則正しく秩序立って並べられた化学構造を自然に形成する。好適な結晶性熱可塑性ポリマーの例としては、ポリオレフィンなどの付加重合体が挙げられる。有用なポリオレフィンとしては、エチレン(例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、若しくは直鎖低密度ポリエチレン)、α−オレフィン(例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、若しくは1−オクテン)のポリマー、スチレンポリマー、並びにかかるオレフィン2種以上のコポリマーが挙げられる。半結晶性ポリオレフィンは、かかるポリマーの立体異性体混合物、例えば、アイソタクチックポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンとの混合物、又はアイソタクチックポリスチレンとアタクチックポリスチレンとの混合物を含んでいてよい。いくつかの実施形態では、半結晶性ポリオレフィンブレンドは、ポリプロピレンを最大90、80、70、60、又は50重量%含有する。いくつかの実施形態では、ブレンドは、ポリプロピレン又はα−オレフィンのうち少なくとも一方を最大50、40、30、20、又は10重量%含有する。
【0018】
いくつかの実施形態では、構造化フィルムは、半結晶性ポリオレフィンを含み、そして0.1〜10デシグラム/分の範囲、例えば0.25〜2.5デシグラム/分の範囲のメルトフローインデックスを有する、ポリマー組成物から作製される。
【0019】
本開示の構造化フィルム及び/又は本開示によって作製される構造化フィルムは、β造核剤を包含する。β造核剤は、ポリオレフィンを含む溶融物形態のシート中にβ型球晶を生成し得る無機又は有機造核剤であってよい。有用なβ造核剤としては、ガンマキナクリドン、キニザリンスルホン酸のアルミニウム塩、ジヒドロキナクリジンージオン及びキナクリジン−テトロン、トリフェネオールジトリアジン(triphenenol ditriazine)、ケイ酸カルシウム、ジカルボン酸(例えば、スベリン酸、ピメリン酸、オルト−フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸)、前記ジカルボン酸のナトリウム塩、前記ジカルボン酸の周期表第IIA族金属(例えば、カルシウム、マグネシウム、又はバリウム)との塩、デルタ−キナクリドン、アジピン酸又はスベリン酸のジアミド、種々のインジゴゾル及びシバンチン有機顔料、キナクリドンキノン、N’,N’−ジシクロヘキシル(dicyclohexil)−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(例えばNew Japan Chemical Co.Ltd.から「NJ−Star NU−100」という商品名で入手可能)、アントラキノンレッド及びビスアゾイエロー顔料が挙げられる。押出成形フィルムの特性は、β造核剤の選択及びβ造核剤の濃度によって決まる。いくつかの実施形態では、β造核剤は、γキナクリドン、スベリン酸カルシウム塩、ピメリン酸カルシウム塩、並びにポリカルボン酸のカルシウム塩及びバリウム塩からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、β造核剤はキナクリドン系着色剤Permanent Red E3Bであって、これはQ染料とも呼ばれる。いくつかの実施形態では、β造核剤は、有機ジカルボン酸(例えば、ピメリン酸、アゼライン酸、O−フタル酸、テレフタル酸、及びイソフタル酸)とII族金属(例えば、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム)の酸化物、水酸化物又は酸性塩とを混合することによって形成される。いわゆる2成分開始剤としては、炭酸カルシウムと前に挙げた任意の有機ジカルボン酸との組み合わせ、及びステアリン酸カルシウムとピメリン酸との組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、β造核剤は、米国特許第7,423,088号(Maderら)に記載されているような芳香族トリカルボキシアミドである。
【0020】
本明細書に開示されている構造化フィルムを作製するのに有用な半結晶性ポリオレフィン中にβ造核剤を組み込む従来法は、濃縮物を利用している。濃縮物は、典型的には、最終的な構造化フィルム中で望ましい濃度より高濃度の造核剤を含有する、高濃度のペレット化ポリプロピレン樹脂である。造核剤は濃縮物中に、0.01重量%〜2.0重量%(100〜20,000ppm)の範囲で含まれており、いくつかの実施形態では、0.02重量%〜1重量%(200〜10,000ppm)の範囲で含まれている。典型的な濃縮物は、無核ポリオレフィンと、構造化フィルムのポリオレフィン総含量に対して0.5重量%〜50重量%の範囲(いくつかの実施形態では、1重量%〜10重量%)で混合される。最終的な構造化フィルム中のβ造核剤の濃度範囲は、0.0001重量%〜1重量%(1ppm〜10,000ppm)、いくつかの実施形態では、0.0002重量%〜0.1重量%(2ppm〜1000ppm)であってよい。濃縮物はまた、安定化剤、顔料及び加工材などの他の添加物を含有することも可能である。
【0021】
本開示で用いるβ造核剤は、溶融状態からポリマーの結晶化を誘起し、そしてポリマー結晶化サイトの開始を促進してポリマーの結晶化を加速するという、重要な機能を担っている。このため、造核剤は、ポリマーの結晶化温度にて固体であってもよい。造核剤剤は、ポリマーの結晶化速度を上げるので、結果として得られるポリマー粒子又は球晶のサイズは小さくなる。
【0022】
半結晶性ポリオレフィン中のβ型球晶の濃度は、例えばX線結晶学及び示差走査熱量測定法(DSC)を用いて測定され得る。DSCにより、α相及びβ相の両方の融点及び融解熱が本開示の構造化フィルム中で測定され得る。半結晶性ポリプロピレンでは、β相の融点はα相の融点よりも低い(例えば、約10〜15℃の差)。全融解熱に対するβ相の融解熱の割合によって、サンプル中のβ型球晶の割合が与えられる。いくつかの実施形態では、本開示の構造化フィルムの少なくとも一部におけるβ型球晶の濃度は、構造化フィルム中のα相とβ相の結晶総量に対して少なくとも10、20、25、30、40、又は50%である。これらの濃度のβ型球晶は、例えば直立柱に含まれていてよい。また、これらの濃度のβ型球晶は裏材が延伸される前の裏材に含まれていてよい。
【0023】
本開示の構造化フィルムには、追加成分が、所望の用途に応じて包含されてよい。例えば、界面活性剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、有機又は無機着色剤、安定化剤、難燃材、香料及び可塑剤を挙げることができる。構造化フィルムは、α造核剤を包含することも可能である。前記β造核剤の多くには色が付いている。追加の着色剤を、例えばカラーコンセントレート又は着色マスターバッチの形態で添加してもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、β造核剤を含有する半結晶性ポリオレフィンは、熱可塑性材料の多相又は多成分の溶融ストリームの一部であり得る。これは、裏材を主に形成するものとは異なる熱可塑性材料から、少なくとも部分的に形成された直立柱をもたらす可能性がある。多層構造の溶融ストリームから作製された直立柱の様々な構成は、例えば米国特許第6,106,922号(Cejkaら)に示されている。本発明の構造化フィルムは、多層フィルム又は多成分フィルムである実施形態では任意の従来法によって形成することができる。多層構造の溶融ストリームは、米国特許第4,839,131号(Cloeren)に示されているような多層フィードブロックによって形成することができる。異なる成分のドメイン又は領域を有する多成分溶融ストリームを使用することもできる。有用な多成分溶融ストリームは、包括的な共押出ダイ又は他の既知の方法(例えば、米国特許第6,767,492号(Norquistら)に示されているもの)を用いて形成することができる。別の有用な方法は、米国特許第5,429,856号(Kruegerら)に記載されている。この特許には、ポリマー溶融ストリームを複数のサブストリームにセグメント化し、そして次に別の溶融ストリームの中心に押すことで、その後、フィルムに形成されることが記載されている。この共押出方法により、別のポリマーのマトリックス内に複数のセグメント化されたフローを有するフィルムが生成される。
【0025】
本開示の構造化フィルム及び/又は本開示によって作製される構造化フィルムは、サイドバイサイド共押出されたフィルムにも可能である。サイドバイサイド共押出されたフィルムは、多数の有用な方法で作製することができる。例えば、米国特許第4,435,141号(Weisnerら)には、フィルムの横断方向に交互のセグメントを有する多成分フィルムを作製するためのダイ・バーの付いたダイが記載されている。ダイの出口領域に位置するダイ・バー(複数を含む)は、ダイ・バーの2つの外側面上に形成されるチャネルを用いて2つのポリマーフローをセグメント化する。これらのチャネル内のセグメント化された2セットのポリマーフローは、2つのダイ・バー面が対面するダイ・バーの先端で収束する。セグメント化されたポリマーフローは、2つのセグメント化されたポリマーフローがバー先端で収束する時に、それらが、交互に隣り合うポリマー領域を有するフィルムを形成するように配列される。2つの隣り合うダイ・バーの使用もまた検討されており、その場合、隣接したダイ・バーの2つの面が接合して、セグメント化されたポリマーフローの第3のセットを2つのダイ・バーが対面する先端の方へ方向付ける空洞部が形成される。3つのセグメント化されたポリマーフローは、収束してABCABCサイドバイサイドバイサイドポリマーフローを形成する。ダイ・バーは、単一ポリマーフローを、ダイ・バーの任意の所与の面に沿って側方にセグメント化された一連のフローにセグメント化する。米国特許第6,669,887号(Hilstonら)に記載されているような、連続した外側スキン層をサイドバイサイド共押出フィルムの片面又は両面に共押出することを更に含む同様の方法が有用な場合もある。
【0026】
いくつかの実施形態では、隣り合うレーンに向かう異なるポリマー組成物のフローの管理は、複数のダイがサイドバイサイド共押出成形を達成するのに求められるアプローチとは対照的に、配分プレートを有する単一のマニホールドダイを使用して有利に実行することができる。これら実施形態の一部では、そのダイは、第1のダイ部分における第1のダイ空洞部と、第2のダイ部分における第2のダイ空洞部と、第1のダイ空洞部の少なくとも一部分(例えば、大部分又は全て)と第2のダイ空洞部の少なくとも一部分(例えば、大部分又は全て)との間に介在する配分プレートと、を備える。配分プレートは、第1のダイ空洞部の境界を形成する第1の側面と、第2のダイ空洞部の境界を形成する第2の側面と、分配エッジと、複数個の第1の押出し成形チャネルと、複数個の第2の押出し成形チャネルと、を有する。第1の押出し成形チャネルは、第1のダイ空洞部における入口開口部から分配エッジ上の出口開口部に達しており、第2の押出し成形チャネルは、第2のダイ空洞部における入口開口部から分配エッジ上の出口開口部に達している。第1の押出し成形チャネルの出口開口部及び第2の押出し成形チャネルの出口開口部は、分配エッジに沿って交互に配置される。第1の押出し成形チャネルはそれぞれ、2つの対向する側壁と、2つの対向する側壁を接続する接合面と、を備え、第1の押出し成形チャネルのうちの少なくともいくつかの接合面は、典型的に、配分プレートの第1の側面に対して実質的に平行である。ダイ及び配分プレートについての更なる詳細は、PCT国際特許出願公開WO 2011/097436(Gormanら)に見出すことができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、構造化フィルムは、隣り合う第1及び第2レーンを有する共押出フィルムであって、第1レーンは、半結晶性ポリオレフィンとβ造核剤とを含み、そして第2レーンは別のポリマー組成物を含む。いくつかの実施形態では、構造化フィルムは、第1の層及び第2の層を有する多層フィルムであって、第1の層は半結晶性ポリオレフィン及びβ造核剤を含み、そして第2の層は異なるポリマー組成物を含む。異なるポリマー組成物に好適な熱可塑性材料には、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィンホモポリマー、エチレン、プロピレン、及び/又はブチレンのコポリマー、エチレンビニルアセテート及びアクリル酸エチレン等のエチレンを含有するコポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリエチレンブチラート及びポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)等のポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリ(ビニルアルコール)、ポリエーテルエーテルケトン等のケトン、ポリフェニレン硫化物、並びにそれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、(例えば、第2レーン又は第2の層中の)異なるポリマー組成物は、(例えばポリプロピレン中に)α造核剤を包含する。
【0028】
いくつかの実施形態では、(例えば、第2レーン又は第2の層中の)異なるポリマー組成物は、エラストマー材料を包含する。「エラストマー性」という用語は、延伸又は変形からの回復を呈するフィルム(0.002〜0.5mm厚)を作製することができる、ポリマーを指す。本明細書に開示されるセグメント化された多成分ポリマーフィルムで使用され得る代表的なエラストマー性ポリマー組成物としては、ABAブロックコポリマー、ポリウレタンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー(例えば、メタロセンポリオレフィンエラストマー)、ポリアミドエラストマー、エチレンビニルアセテートエラストマー、及びポリエステルエラストマー等の熱可塑性エラストマーが挙げられる。ABAブロックコポリマーエラストマーは、概して、Aブロックがポリスチレン系であり、かつBブロックが共役ジエン(例えば、低級アルキレンジエン)であるエラストマーである。Aブロックは、主に置換(例えば、アルキル化)若しくは非置換スチレン系部分(例えば、ポリスチレン、ポリ(アルファメチルスチレン)、又はポリ(t−ブチルスチレン))から概して形成され、1モル当たり約4,000〜50,000グラムの平均分子量を有する。Bブロックは、主に置換又は非置換であり得る共役ジエン(例えば、イソプレン、1,3−ブタジエン、又はエチレン−ブチレンモノマー)から概して形成され、1モル当たり約5,000〜500,000グラムの平均分子量を有する。Aブロック及びBブロックは、例えば、線状、放射状、又は星形構成で構成されてもよい。ABAブロックコポリマーは、複数のAブロック及び/又はBブロックを含有してもよく、ブロックは同一の又は異なるモノマーから作製されてもよい。典型的なブロックコポリマーは線状ABAブロックコポリマーであり、Aブロックは、同一若しくは異なっていてよく、又はAブロックで主に終端する3つ以上のブロックを有するブロックコポリマーであってもよい。マルチブロックコポリマーは、例えば、より粘着性のあるエラストマーフィルムセグメントを形成する傾向がある、ある特定の割合のABジブロックコポリマーを含有してもよい。エラストマー特性が悪影響を受けないという条件で、他のエラストマーをブロックコポリマーエラストマーとブレンドすることができる。多くのタイプの熱可塑性エラストマーは、商業的に入手可能であり、BASF製の商品名「STYROFLEX」、Shell Chemicals製の商品名「KRATON」、Dow Chemical製の商品名「PELLETHANE]又は「ENGAGE」、DSM製の商品名「ARNITEL」、DuPont製の商品名「HYTREL」等が挙げられる。米国特許第6,669,887号(Hilstonら)に記載の、テトラブロックスチレン/エチレン−プロピレン/スチレン/エチレン−プロピレンを包含する熱可塑性エラストマーもまた有用であり得る。
【0029】
本開示の構造化フィルム及び/又は本開示により作製される構造化フィルムにおいて、裏材と直立柱は典型的に一体をなしている(すなわち、同時に1単位の統一物として形成される)。裏材は、典型的には、裏材に直接付着された直立柱を有する、本質的に均一な厚さを有することができるシート又はウェブの形態である。本開示による構造化フィルムの作製方法では、ポリオレフィン溶融物及びβ造核剤を押出成形してフィルムの裏材を供給する。方法には、溶融物の少なくとも一部を、β型球晶を形成するのに十分な温度(例えば、60℃〜120℃又は90℃〜120℃の温度)まで冷却することと、直立柱をフィルムの裏材上に形成して構造化フィルムを供給することと、を含む。これら実施形態のうちのいくつかにおいて、直立柱をフィルムの裏材上に形成することは、溶融物の少なくとも一部を冷却した後で(例えば、フィルムをツールに暴露して加熱することによって)行われる。他の実施形態では、ポリオレフィン溶融物及びβ造核剤を、フィルムの少なくとも一部において裏材上に直立柱を有する構造化フィルムを供給するツールの存在下で押出成形する。構造化フィルムをその後、β型球晶を形成するのに十分な温度まで冷却する。
【0030】
裏材上の直立柱は、例えばダイキャスト成形技術による従来の押出成形によって作製することができる。いくつかの実施形態では、β造核剤を含有するポリオレフィン組成物を、直立柱と逆の形状の空洞部を有する連続移動する金型表面上に供給する。ポリオレフィン組成物は、ロールの少なくとも一方が空洞部を有する(すなわち、ロールの少なくとも一方がツールロールである)場合、2つのロールで形成されるニップ、又はダイフェースとロール表面との間のニップの間に通すことができる。ニップから付与される圧力によって、樹脂を空洞部に押し込む。いくつかの実施形態では、真空を使用して、空洞部をより容易に充填するために空洞部を空にすることができる。ニップは、典型的にコヒーレントな裏材を空洞部上に形成するように十分に大きい間隙を有する。金型表面及び空洞部は、場合により、β型球晶を形成するのに十分な温度(例えば、60℃〜120℃又は90℃〜120℃の範囲の温度)まで冷却された空気又は水であり得る。この実施形態では、構造化フィルムの少なくとも一部を、β型球晶を形成するのに十分な温度まで冷却することは、直立柱を形成するツールの存在下で行われる。一体形成された裏材と直立柱はその後、ストリッパーロールなどによって金型表面から取り外すことができる。
【0031】
好適なツールロールは、例えば、直立柱の逆の形状の一連の穴を金属金型又はスリーブの円筒状の面に形成することによって(例えば、穴開けのためのコンピュータ数値制御、フォトエッチング、グラビア印刷スリーブの使用、レーザ穴開け加工、電子線穴開け加工、金属パンチング、直接機械加工、又は失ろう法によって)作製することができる。他の好適なツールロールとしては、例えば、米国特許第4,775,310号(Fischer)に記載されているもの等の、複数の柱形成用空洞部をその周辺に画定する一連のプレートから形成されるものが挙げられる。空洞部は、例えば、穴開け加工又はフォトレジスト技法によってプレートに形成されてもよい。更に他の好適なツールロールとしては、例えば、米国特許第6,190,594(Gormanら)において、それらの作製方法とともに開示される、ワイヤーラップロールを挙げることができる。金型、スリーブ、プレート、又はワイヤの露出面は、例えば、増強された耐摩耗性、剥離制御特性、及び制御された表面粗さなどの表面特性を付与するために被覆することができる。コーティングは、存在する場合、典型的には、ツールロールへのポリオレフィン組成物の接着が、ツールロールから熱可塑性裏材を取り外す時のポリオレフィン組成物の凝集力よりも小さくなるように選択される。
【0032】
直立柱を有する裏材を形成するための別の代表的な方法は、米国特許第7,214,334号(Jensら)に記載される、直立柱形の空洞部のアレイを画定する可撓性成形型ベルトを使用することを含む。金型ベルトは、第1ロール及び第2ロールの周りに取り付けられている。溶融ポリオレフィン組成物の供給源は、ポリオレフィン組成物を金型ベルトに送るように配置することができる。装置は、間隙内の圧力によってベルトの柱形の空洞部内にプラスチック樹脂を押し込むことで、裏材を形成しながら直立柱のアレイを成形するように構築されている。
【0033】
直立柱(例えば、前述した方法のいずれかによって作られてもよい)の形状は、例えば、裏材に付着された基底部から遠位先端部に向けてテーパーになっていてもよい。基底部は遠位先端部よりも大きい幅寸法を有することができ、これは、上述の方法における金型表面からの柱の取り外しを容易にすることができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、前記方法のいずれかによって形成される直立柱の遠位先端部は、変形することでループ係合突出部を有するキャップを形成する。熱と圧力の組み合わせを連続して又は同時に用いて柱の遠位先端部を変形させることで、キャップを形成してもよい。いくつかの実施形態では、変形は、遠位先端部を加熱された表面と接触させることを含む。加熱された表面は、米国特許第6,708,378号(Parelladaら)又は同第5,868,987号(Kampferら)に開示されているような平坦な表面又は非平坦な表面であり得る。いくつかの実施形態では、直立柱を有する裏材は不定長のウェブであり、変形には、ウェブを、第1の方向に、加熱された表面部材及び対向する表面部材を有するニップを通して移動させて、加熱された表面部材が遠位先端部と接触するようにすることが含まれる。これらの実施形態では、加熱された表面は、例えば、キャッピングロールであってもよい。いくつかの実施形態では、遠位先端部と接触するのに用いられる表面は、加熱されていない。これらの実施形態では、変形は、熱を伴わずに圧力によって実行される。いくつかの実施形態では、加熱された表面は、例えば、米国特許第6,368,097号(Millerら)に記載されているような、可変のニップ長を有する可変のニップを形成する湾曲した支持面に対向する加熱されたロールであり得る。湾曲した支持面は、加熱されたロールの方向に湾曲することができ、加熱されたロールは、直立柱を有する裏材を可変ニップを通じて供給して、加熱されたロールと支持面との間にウェブを圧縮して係合するための供給機構を含むことができる。
【0035】
裏材に付着された直立柱を有する裏材を形成する別の好適な方法は、例えば米国特許第4,894,060号(Nestegard)に記載されている形状成形法である。この方法では、ポリオレフィン組成物のフローストリームは、パターン化ダイリップ(例えば、放電加工によって切断されたもの)を通過すると、下向きウェブ隆起部を有するウェブを形成する。隆起部は次いで、隆起部の延長線に沿って、離間した位置で横断方向に切断されて、その切断刃によってもたらされる小さい分離とともに直立柱を形成することができる。それらが切断される前は、「直立柱」はそのような隆起部を含んでいないことが理解されるべきである。しかし、パターニングされたダイリップは、裏材上に直立柱を有する構造化フィルムをもたらすツールと見なされることもある。直立柱間の分離は、その後、フィルムを隆起部の方向に、以降に記載される延伸法の一つを用いて延伸することによって拡大する。隆起部自体は、それらが切断及び延伸される前はループを係合することができないので、「ループ係合性」とはみなされない。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、(例えば、形状形成法によって作製される)リブを切断することを含まない。
【0036】
上述した連続的な方法に加えて、直立柱を有する裏材を備える構造化フィルムは、バッチプロセス(例えば、単一片射出形成)を用いて調製され得ることもまた想定される。裏材は、任意の好適な寸法を有し得るが、少なくとも10cmの長さ(L)及び幅(W)寸法が有用であり得る。
【0037】
本開示の構造化フィルム及び/又は本開示によって作製される構造化フィルムにおいて、直立柱は、例えば前記方法のいずれかによって作製されてよく、様々な断面形状を呈する可能性がある。例えば、柱の断面形状は、正多角形であってもそうでなくてもよい多角形(例えば、正方形、長方形、六角形、若しくは五角形)であり得、又は柱の断面形状は湾曲していてもよい(例えば、円形若しくは楕円形)。
【0038】
本開示の構造化フィルム及び/又は本開示によって作製される構造化フィルムにおいて、裏材は様々な厚さを有していてよい。例えば、裏材の初期厚さ(すなわち、延伸前)は、所望の用途に応じて、約750、500、400、250、又は150マイクロメートルまでとすることができる。いくつかの実施形態では、裏材の初期厚さは、所望の用途に応じて、少なくとも約50、75、又は100マイクロメートルである。いくつかの実施形態では、裏材の初期厚さは、50〜約225マイクロメートル、約75〜約200マイクロメートル、又は約100〜約150マイクロメートルの範囲内である。裏材は、本質的に均一な断面を有していてもよく、又は裏材は、直立柱によって提供されるものを超えた追加の構造を有してもよく、これは、例えば、上述の形成ロールの少なくとも1つによって付与され得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、直立柱は、3ミリメートル(mm)、1.5mm、1mm、又は0.5mmまでの最大高(裏材よりも上)を有し、いくつかの実施形態では、少なくとも0.05mm、0.075mm、0.1mm、又は0.2mmの最小高を有する。いくつかの実施形態では、柱は、少なくとも約2:1、3:1、又は4:1のアスペクト比(すなわち、高さ対幅寸法の比)を有する。アスペクト比は、いくつかの実施形態では最高10:1であり得る。キャップを有する柱では、キャップの面積は、典型的に、柱の断面積よりも大きい。キャップの幅寸法対キャップの真下で測定された柱の比は通常、少なくとも1.5:1又は3:1であり、最大5:1以上であってもよい。キャップされた柱は通常、キャップされる前の柱よりも短い。いくつかの実施形態では、キャップされた柱は、高さ(裏材より上)が少なくとも0.025mm、0.05mm、又は0.1mmであり、いくつかの実施形態では、最大2mm、1.5mm、1mm又は0.5mmである。柱は、キャップされていてもキャップされていなくてもよく、最大幅寸法が最大1(いくつかの実施形態では、0.75、0.5又は0.45)mmの断面を有していてよい。いくつかの実施形態では、柱は、10μm〜250μmの幅寸法を有する断面を有する。用語「幅寸法」は、円形断面を有する柱の直径を含むものと理解されるべきである。柱が複数の幅寸法を有するとき(例えば、上述のようにテーパーのついた、矩形又は楕円形の断面形状の柱において)、本明細書に記載されるアスペクト比は高さ対最大幅寸法である。
【0040】
直立柱は、典型的に、裏材上に離間配置されている。用語「離間配置された」は、柱同士の間に距離を有するように形成された柱を指す。「離間配置された」柱の底部は、裏材に付着されており、裏材が湾曲していない構造である場合、裏材を延伸する前又は後では互いに接触していない。本開示の構造化フィルム及び/又は本開示によって作製される構造化フィルムにおいて、離間配置された直立柱は、少なくとも10/平方センチメートル(cm
2)(63/平方インチ(in
2))の初期密度(すなわち、フィルムの延伸前)を有する。例えば、柱の初期密度は、少なくとも100/cm
2(635/in
2)、248/cm
2(1600/in
2)、394/cm
2(2500/in
2)、又は550/cm
2(3500/in
2)であってよい。いくつかの実施形態では、柱の初期密度は、最高1575/cm
2(10000/in
2)、最高約1182/cm
2(7500/in
2)、又は最高約787/cm
2(5000/in
2)であってもよい。例えば、10/cm
2(63/in
2)〜1575/cm
2(10000/in
2)又は100/cm
2(635/in
2)〜1182/cm
2(7500/in
2)の範囲の初期密度が有用であり得る。直立柱の間隙は均一である必要はない。
【0041】
いくつかの実施形態では、本開示の構造化フィルムの作製方法は、裏材を延伸して裏材に微小孔を付与することを含む。理論に束縛されたくはないが、フィルムを少なくとも一方向に延伸すると、例えば、裏材中において半結晶性ポリプロピレンはβ型結晶構造からα型結晶構造へ変換され、そして微小孔がフィルムの裏材に形成されると考えられる。直立柱は典型的に、延伸によって影響を受けない又はフィルムの裏材ほど大きく影響を受けないので、β型結晶構造を保持する。本開示の構造化フィルム及び/又は本開示によって作製される構造化フィルムの、延伸後の断面についての走査型電子顕微鏡画像を
図1aに示す。
図1aからは、裏材10aは多孔性であるが、直立柱12aは微小孔性ではないことが分かる。
【0042】
結果として得られる延伸されたフィルムは、いくつかの特異な性質を有している可能性がある。例えば、応力白化によって裏材に形成された微小孔は、不透明な白色フィルムをもたらす可能性があるが、直立柱は透明である。裏材と直立柱との視覚的なコントラストは、構造化フィルム中の着色剤の存在によって増強されることがある。着色剤は、フィルム形成前に、例えばカラーコンセントレートを用いてポリオレフィンに添加されてよい。着色裏材はまた、延伸すると応力白化して微小空洞を形成し、これらの変化は典型的に、裏材の色強度の視覚的な低下として現れる。その結果、延伸された裏材はパステルカラーの場合があるが、直立柱の色強度は保持される。例えば、十分に低い濃度のカラーコンセントレートを用いると、結果として得られる延伸されたフィルムは、着色された直立柱を有するほぼ白色の裏材を出現させる可能性がある。本開示の構造化フィルムの間の延伸前後の外観の変化を
図2a及び2bにそれぞれ示す。
図2bに示されるように、延伸された構造化フィルムにおける裏材と直立柱との外観の違いが、特有の魅力的な審美性を与える。
【0043】
本開示の構造化フィルムの作製方法のいくつかの実施形態では、β型球晶を含有する構造化フィルムの延伸は、構造化フィルムの不透明度を少なくとも10%増加させる。いくつかの実施形態では、この延伸は、不透明度を少なくとも15、20、25、又は30%増加させる。不透明度の増加は、例えば、最大90、85、80、75、70、65、60、55、又は50%であってよい。構造化フィルムの初期の不透明度は、例えばフィルムの厚さによって影響を受ける。フィルムを延伸することにより、典型的には厚さが低下し、そのことが、典型的には不透明度の低下を引き起こす。しかし、本明細書に開示される構造化フィルムにおいて、応力白化及び微小孔の形成は不透明度の増強を引き起こす。この実施形態では、不透明度は、「L」値が黒色背景及び白色背景それぞれに対して別個に測定される分光光度計を用いて測定される。不透明度は、(黒色背景に対して測定されたL/白色背景に対して測定されたL)×100として計算される。「L」値は、国際照明委員会(International Commission on Illumination)によって確立されたCIELAB色空間スケールにおける3種の標準パラメータのうちの一つである。「L」は、輝度値であり、0(黒)〜100(最大強度)までの範囲である。試験方法についての更なる詳細は、以降の実施例に提示する。不透明度の変化率は構造化フィルムを延伸することによって生じ、[(延伸後の不透明度−延伸前の不透明度)/延伸前の不透明度]×100で計算される。
【0044】
本開示の構造化フィルムの作製方法のいくつかの実施形態では、β型球晶を含有する構造化フィルムの延伸は、フィルムのグレースケール値の少なくとも20%の低下をもたらす。いくつかの実施形態では、延伸は、グレースケール値の少なくとも25、30、40、50%の低下をもたらす。グレースケール値の低下は、例えば、最高90、85、80、75、70、65、又は60%であってよい。これら実施形態では、グレースケール値は、以降の「実施例」欄に記載の方法を用いて透過モードで測定される。延伸により、典型的にはフィルムの厚さの低下が生じ、それは、典型的には透過モードで測定されるグレースケール値の増加に導く。しかし、本明細書に開示される構造化フィルムでは、応力白化は及び微小孔の形成が、透過モードのグレースケール値の低下を引き起こす。フィルムの延伸によって生じるグレースケール値の変化率は、[(延伸後のグレースケール値−延伸前のグレースケール値)/延伸前のグレースケール値]×100によって計算される。
【0045】
本開示の構造化フィルムのいくつかの実施形態では、微小孔性の構造化フィルムのグレースケール値は、最大40(いくつかの実施形態では、最大35、30、25、20又は15)である。これらの実施形態では、グレースケール値は、以降の「実施例」に記載の方法を用いて透過モードで測定される。本明細書に開示される微小孔性の構造化フィルムにおけるグレースケール値は、二酸化チタンなどの従来の量のIR遮断剤を組み込んだこと以外は同様の組成のポリオレフィンフィルムで達成される値と同等又はそれ以上である。
【0046】
構造化フィルムの不透明度及びグレースケール測定値は、その光透過能力と関係がある。本明細書で使用するとき、用語「光」は、人が裸眼で見える見えないにかかわらず、電磁波を指す。紫外線は、約250ナノメートル(nm)〜380nmまでの範囲の波長を有する光である。可視光は、380ナノメートル(nm)〜700nmまでの範囲の波長を有する光である。赤外線は、約700nm〜300マイクロメートルまでの範囲の波長を有する。本開示の構造化フィルムは、延伸した後、紫外線、可視光及び赤外線の透過率が低下する。延伸された構造化フィルムの微小孔は、紫外域、可視域及び赤外域の光を散乱させる傾向がある。
【0047】
本開示の構造化フィルム及び/又は本開示によって作製される構造化フィルムのいくつかの実施形態では、微小孔性の構造化フィルムの透過率は、250nm〜2250nmの範囲の波長において8%〜60%の範囲である。延伸前の、同様のフィルムの透過率は、同様の波長範囲において40%〜約80パーセントの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、以降の「実施例」に示すように、β造核剤を包含する代表的な構造化フィルムの透過率は、延伸時に、延伸の程度、延伸温度及び波長範囲(例えば、紫外域、可視域、又は赤外域)に応じて少なくとも25%及び最大60%、70%、又は75%低下する。いくつかの実施形態では、微小孔性の構造化フィルムの反射率は、250nm〜2250nmの範囲の波長において約20パーセント〜約80パーセントまでの範囲である。延伸前の、同様のフィルムの反射率は、同様の波長範囲において3%〜約30パーセントの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、以降の「実施例」に示すように、β造核剤を包含する代表的な構造化フィルムの反射率は、延伸時に、延伸の程度、延伸温度及び波長範囲に応じて少なくとも55%又は80%及び最大150%、200%、又は250%増加する。すなわち、延伸時の反射率の増加割合は、少なくとも55%又は80%及び最大150%、200%、又は250%である。
【0048】
延伸された構造化フィルムの(例えば、散乱によって)光の透過を妨げる能力は、基板に光を当てて基板の照射領域から受ける光の量を検出することに依存する検査システムで検出することが可能である。例えば、複合品の製造において、本明細書に開示されている延伸された構造化フィルムの存在又は位置或いは複合品に組み込まれるその一部は、紫外線、可視光及び/又は赤外線を遮断するその能力のために検出され得る。複合品は、例えば使い捨ての吸収物品であってよく、そして構造化フィルムは、使い捨て吸収物品に組み込まれる機械的締結パッチであってよい。紫外線、可視光、又は赤外線のうち少なくとも1つによって照射されたことに対する機械的締結パッチの反応が評価される。その後、製造中に複合物品を照射することができ、照射された複合品から受けた紫外線、可視光、赤外線のうち少なくとも1つを、機械的締結パッチの所定の反応を検出して分析することができる。機械的締結パッチの位置は、例えば機械的締結パッチ及び他の構成要素の位置に相当するグレースケール値の所定の変動を検出可能な画像分析器を用いて決定することができる。本明細書に開示される延伸された構造化フィルムの赤外線散乱能力は、赤外線が複合物品中の他の物質層間にある場合でも検出可能である。複合品における微小孔性フィルムの検出方法に関する更なる情報については、2011年12月13日出願の同時継続中の米国特許出願番号13/323,980(Chandrasekaranら)を参照のこと。
【0049】
赤外線の検出に依存する検査システムを用いた構成要素の存在又は位置の検出については先に説明したが、構成要素は、赤外線を吸収又は反射し得るIR遮断剤を含有していた。米国特許第6,927,857号(Koeleら)を参照のこと。驚くことに、本明細書に開示される延伸された構造化フィルムは、同様のポリオレフィン材料から調製されかつIR遮断剤が添加されたフィルムと同等の量の又はそれよりも多くの赤外線を遮断することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される構造化フィルムは、IR遮断剤(例えば、吸収剤又は反射材)を本質的に含まない。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される構造化フィルムは、IR吸収材を本質的に含まない。IR遮断剤を「本質的に含まない」構造化フィルムは、IR吸収剤を全く有さなくてもよく、又はIR吸収剤を1、0.5、又は0.01重量%未満又は10ppm又は10ppb未満の量で有していてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される構造化フィルムは、IR反射剤又は散乱剤を本質的に含まない。IR反射剤又は散乱剤を「本質的に含まない」構造化フィルムは、IR反射剤又は散乱剤を全く有さなくてもよく、又はIR反射剤又は散乱剤を2、1.5、1、又は0.5重量%未満の量で有していてもよい。これら実施形態のうちのいくつかにおいて、構造化フィルムは、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ポリテトラフルオロエチレンマイクロビーズ、及びポリオレフィンマイクロビーズからなる群から選択されるIR反射剤又は散乱剤を本質的に含まない。
【0050】
本明細書に開示される延伸された構造化フィルムの裏材に微小孔が形成されると、フィルムの密度が低下する。結果として得られる低密度の、延伸された構造化フィルムの感触は、厚さは同等だが密度が更に高いフィルムよりも柔らかく感じられる。フィルムの密度は、常套法を用いて、例えばピクノメータ中のヘリウムを用いて、測定することができる。本開示の構造化フィルムの作製方法のいくつかの実施形態では、β型球晶を含有する構造化フィルムの延伸により、構造化フィルムの密度が少なくとも3%低下する。いくつかの実施形態では、この延伸により、密度が少なくとも5又は7.5%低下する。例えば、延伸により、密度が3〜15%又は5〜10%の範囲で低下する。構造化フィルムの延伸によって生じる密度の変化率は、[(延伸前の密度−延伸後の密度)/延伸前の密度]×100によって計算される。フィルムの柔軟性は、例えば以降の「実施例」に記載のガーレー剛性を用いて測定することができる。
【0051】
本明細書に開示される構造化フィルムの延伸は、ウェブの二軸的方向又は一軸的方向に行うことができる。二軸的延伸は、裏材の平面内の2つの異なる方向に延伸することを意味する。常にとは限らないが、典型的には、第1の方向は長手方向「L」であり、第2の方向は幅方向「W」である。二軸的延伸は、例えば、先ずは第1又は第2の方向のいずれかに、続いて残りの第1又は第2の方向に、熱可塑性裏材を延伸することによって順次行ってもよい。また、二軸的延伸は、両方の方向に実質的に同時に行ってもよい。一軸的延伸は、裏材の平面において一方向にのみ延伸することを指す。典型的には、一軸的延伸は「L」又は「W」のうちの1つの方向に行われるが、それら以外の方向の延伸も利用可能である。
【0052】
ポリプロピレンと共にβ型球晶を含む非構造化フィルムは、延伸すると微小孔性となって不透明度が増強すると実証されたが、所望の程度の多孔性又は不透明度を達成するには高延伸比が必要であると報告されている。場合により、5:1、10:1或いは20:1の延伸比が報告されている。例えば、米国特許第6,815,048号(Davidsonら)、米国特許出願公開第2006/0177632(Jacoby)、及び1998年9月23日発行の英国特許出願番号GB 2323325を参照のこと。場合により、二軸的延伸が好ましい。予想外にも、半結晶性ポリオレフィンとβ造核剤とを含む構造化フィルムであって、本明細書に開示されているような裏材と裏材に付着された直立柱とを備える構造化フィルムは、比較的低延伸比で延伸でき、そして場合により、高程度の多孔性及び不透明度が得られるように一方向のみに延伸することもできる。以降の「実施例」に示されるように、本開示の構造化フィルムは、延伸比2:1で一軸的方向に延伸されると、同様の材料を用いて、直立柱を有さないこと以外は同様の方法を用いて作製された平坦なフィルムよりも低密度で不透明度の高いフィルムを提供することができる。
【0053】
高度の多孔性及び不透明度は、炭酸カルシウムなどの他のキャビテーション剤又は半結晶性ポリオレフィンから分相している希釈剤の不存在下でも低延伸比で達成される。したがって、いくつかの実施形態では、本開示の構造化フィルム及び/又は本開示によって作製される構造化フィルムは、半化粧性ポリオレフィンの融点未満で分相している希釈剤を実質上含まない。かかる希釈剤としては、炭化水素系ワックス、ワセリン、鉱油、ミネラルスピリット、ジオクチルフタレート、及びパラフィンろうが挙げられる。いくつかの実施形態では、本開示の構造化フィルム及び/又は本開示によって作製される構造化フィルムは、キャビテーション剤を実質上含まない。希釈剤又はキャビテーション剤を指す場合の用語「実質上含まない」とは、構造化フィルム中のいずれかの希釈剤又はキャビテーション剤が、構造化フィルムの総重量に対して5、2.5、1、0.5、又は0.1重量%の濃度で含まれ得ることを意味する。希釈剤又はキャビテーション剤を「実質上含まない」には、希釈剤又はキャビテーション剤を「含まない」ことが包含される。
【0054】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、延伸は、裏材の長さ(「L」)又は幅(「W」)の少なくとも一方を少なくとも1.2倍(いくつかの実施形態では、少なくとも1.5、2、又は2.5倍)増加させる。いくつかの実施形態では、延伸は、裏材の長さ(「L」)又は幅(「W」)の両方を、少なくとも1.2倍(いくつかの実施形態では、少なくとも1.5、2、又は2.5倍)増加させる。いくつかの実施形態では、延伸は、裏材の長さ(「L」)又は幅(「W」)の少なくとも一方を最大5倍(いくつかの実施形態では、最大2.5)増加させる。いくつかの実施形態では、延伸は、裏材の長さ(「L」)又は幅(「W」)の両方を最大5倍(いくつかの実施形態では、最大2.5倍)増加させる。予想外にも、最大2.5、2.25、2.2、或いは2の延伸比における一軸的延伸でさえも、炭酸カルシウムなどの他のキャビテーション剤の不存在下でも高度の多孔性及び不透明度を付与することが可能であることを見出した。
【0055】
本開示の構造化フィルムは、β造核剤を用いずに作製された半結晶性ポリオレフィンフィルムと比べると特有の複屈折率特性を有する。複屈折率とは、異なる方向で異なる有効反射率を有する材料の特性を指す。本出願において、複屈折率は、Lot−Oriel GmbH & Co.,Darmstadt,Germanyから商品名「LC−POLSCOPE」として入手可能な位相遅延画像システムを用い、Leica Microsystems GmbH,Wetzlar,Germanyから商品名「DMRXE」として入手可能な顕微鏡及びQImaging,Surrey,BC,Canadaから商品名「RETIGA EXi FAST 1394」として入手可能なデジタルCCDカラーカメラで評価される。顕微鏡には、Cambridge Research & Instrumentation,Inc.,Hopkinton,Mass.製の546.5nm干渉フィルター及び10x/0.25対物レンズが装備されている。本明細書に開示される構造化フィルムでは、以降の「実施例」に示されるように、裏材の複屈折率は延伸によってほとんど変化しないが、β造核剤を含有さない半結晶性ポリプロピレンからなるフィルムでは、裏材の複屈折率測定値は延伸後に増加する。該柱の複屈折率測定値は、本明細書に開示される構造化フィルム及びβ造核剤を含有さない半結晶性ポリプロピレンからなるフィルムのどちらにおいても、延伸によってほとんど変化しない。
【0056】
延伸する前に、本明細書に開示される構造化フィルムの裏材及び直立柱は、以降で説明する実施例5及び6それぞれの画像である
図6a及び6bにおいて斑点の付いた外観(すなわち、明領域と暗領域)で実証されるように、正負両方の複屈折率域を示す。延伸後、フィルムの裏材は斑点の少ない外観を呈するが、これは
図6bと
図6aを比較すると明白である。β造核剤を含有さない半結晶性ポリプロピレンからなる同等のフィルムでは、延伸前、裏材と直立柱が共に、以降で説明する比較例1の画像である
図5aに示すように正の複屈折率のほぼ一様なパターンを示す。斑点の付いた外観は認められない。延伸後、比較例2の画像である
図5bに示すように、フィルムの裏材は、フィルムの裏材の、より明るい外観で実証されるように、延伸誘発性の複屈折を有する。
【0057】
一般に、熱可塑性フィルムは、熱可塑性材料の融点を下回る温度、特にフィルムの線延伸温度を下回る温度で一軸的に又は二軸的に延伸されると、熱可塑性フィルムは不均一に延伸する場合があり、延伸部分と非延伸部分との間に明確な境界が形成される。この現象は、ネッキング又は線延伸と称される。しかしながら、十分に高い程度まで延伸されると、熱可塑性裏材は実質上その全体が均一に延伸される。これが起こる延伸比は、「自然な延伸比」又は「自然な延伸倍率」と称される。自然な延伸比を上回る延伸により、厚さ、引張り強度、及び弾性率等の更に一様な特性又は特徴が有意に付与されることが分かる。任意の所与の熱可塑性裏材及び延伸条件では、自然な延伸比は、熱可塑性裏材を形成する熱可塑性樹脂の組成物、例えばツールロール上の急冷条件によって形成された熱可塑性裏材の形態学、並びに延伸温度及び延伸速度等の要因によって決定される。更に、二軸的に延伸された熱可塑性裏材において、一方向の自然な延伸比は、最終延伸比を含む他方向の延伸条件によって影響される。したがって、一方向の自然な延伸比が他方向の固定延伸比を前提とするものといえ、或いは一対の延伸比(1つは第1の方向、及び1つは第2の方向)が自然な延伸比をもたらすともいえる。用語「延伸比」とは、延伸前の同一部分の線状寸法に対する、延伸後の熱可塑性裏材の所与の部分の線状寸法の比を指す。ポリプロピレンの最も一般的な結晶形態であるα型の自然延伸比は約6:1であると報告されている。
【0058】
主にα型のポリプロピレンを有し、β造核剤を有さない、構造化フィルムの、2:1〜2.5:1の範囲の低延伸比での延伸により、シミの多い外観のフィルムが得られるが、β型球晶を包含する同等の構造化フィルムの、前記の低延伸比での延伸は、一様な外観のフィルムをもたらすことを見出した。フィルムの一様な外観は、直立柱がフィルムの唯一の構造要素である場合でも達成され得る。言い換えれば、フィルムは、米国特許第6,582,642号(Buzzellら)に記載されているような延伸限定形成を必要としない。
【0059】
主にα型のポリプロピレンを有し、β型造核剤を有さない、構造化フィルムと、本開示の構造化フィルムとの他の違いも、以降の「実施例」に詳しく記載するように観察されている。例えば、主にα型のポリプロピレンを有し、β型造核剤を有さない、構造化フィルムの延伸比2:1でのネックダウン(neck down)は、約15%〜20%の範囲である。対照的に、半結晶性ポリオレフィンとβ造核剤とを含む本開示の構造化フィルムの延伸比2:1におけるネックダウンは、約10%である。さらに、延伸比2:1で延伸する際のフィルム厚の減少は、主にα型のポリプロピレンを有し、β型造核剤を有さない、構造化フィルム用よりも本開示の構造化フィルム用の方が少ない。本開示の構造化フィルムを延伸した後の裏材の厚さは、例えば、5〜200μm、10〜100μm、又は30〜70μmの範囲であってよい。
【0060】
本開示に方法における構造化フィルムの延伸は、様々な方法で行うことが可能である。構造化フィルムが不定長のウェブであるとき、例えば、機械方向の一軸的延伸は、構造化フィルムをロールの上で漸増速度によって推進させることによって行うことができる。構造化フィルムの一軸的連続延伸、及び同時二軸的延伸を可能にする最も汎用的な延伸方法は、フラットフィルムテンター装置を用いることである。そのような装置は、複数のクリップ、グリッパー、又は他のフィルム端把持手段を、構造化フィルムの対向する端部に沿って使用して、分岐レールに沿って異なる速度で把持手段を推進させることによって、所望の方向に一軸的延伸、連続二軸的延伸、又は同時二軸的延伸がなされるように、熱可塑性ウェブを把持する。クリップ速度を機械方向に増加させると、一般に、機械方向の延伸が生じる。分岐レール等の手段は、一般に、横断方向の延伸を生じる。一軸的延伸及び二軸的延伸は、例えば米国特許第7,897,078号(Petersenら)及びそれに引用される参照文献に開示された方法及び装置によって達成できる。フラットフィルムテンター延伸装置は、例えば、Bruckner Maschinenbau GmbH,Siegsdorf,Germanyから市販されている。
【0061】
構造化フィルムの延伸は、典型的には高温で、例えば最高150℃で行われる。構造化フィルムを加熱することで、裏材が、延伸のために更に柔軟になる可能性がある。加熱は、例えば、赤外線照射、熱気処理によって、又は加熱チャンバ内で延伸を行うことによって提供することができる。いくつかの実施形態では、加熱は、裏材の第2の表面(すなわち、直立柱が突出する第1の表面とは反対の表面)にのみ適用され、加熱によって生じ得る直立柱へのいかなる損傷をも最小限にする。例えば、この実施形態では、裏材の第2の表面と接触しているローラーのみを加熱する。いくつかの実施形態では、構造化フィルムの延伸は、50℃〜130℃の温度範囲で行われる。以降の「実施例」に示すように、本明細書に開示される延伸された構造化フィルムの多孔性及び不透明度の程度は、延伸温度が減少するにつれて増加することを見出した。いくつかの実施形態では、温度範囲は50℃〜110℃、50℃〜90℃、又は50℃〜80℃である。いくつかの実施形態では、低温での延伸は、例えば25℃〜50℃までの範囲で行える場合がある。予想外にも、本明細書に開示される構造化フィルムの延伸は、先に記載したβ造核剤を包含する平坦なフィルムよりも低温で行うことができることを見出した。例えば、β造核剤を含有する、半結晶性ポリオレフィンからなる構造化フィルムは、最高70℃(例えば、50℃〜70℃又は60℃〜70℃の範囲)において延伸することができる。
【0062】
直立柱の延伸後の密度は、直立柱の初期密度よりも低い。本開示の構造化フィルム及び/又は本開示によって作製される構造化フィルムのいくつかの実施形態では、直立柱の延伸後の密度は、少なくとも2/平方センチメートル(cm
2)(13/平方インチ(in
2))である。例えば、該柱の延伸後の密度は、少なくとも62/cm
2(400/in
2)、124/cm
2(800/in
2)、248/cm
2(1600/in
2)、又は394/cm
2(2500/in
2)であってよい。いくつかの実施形態において、前記柱の延伸後の密度は、最高約1182/cm
2(7500/in
2)又は約787/cm
2(5000/in
2)までであり得る。例えば、2/cm
2(13/in
2)〜1182/cm
2(7500/in
2)又は124/cm
2(800/in
2)〜787/cm
2(5000/in
2)の範囲の延伸後の密度が有用であり得る。この場合も、柱の間隙は均一である必要はない。
【0063】
以降の「実施例」において詳述するように、主にα型のポリプロピレンを有し、β造核剤を有さない、構造化フィルムと本開示の構造化フィルムとは機械特性が異なる。本開示の構造化フィルムは、延伸されているかどうかにかかわらず、主にα型のポリプロピレンを有し、β造核剤を有さない対応する構造化フィルムよりも引張強度が低く、剛性も低い。延伸された構造化フィルムの場合、本開示のフィルムの横断方向の引裂強さは、主にα型のポリプロピレンを有し、β造核剤を有さない延伸された構造化フィルムよりも高い。主にα型のポリプロピレンを有し、β造核剤を有さない同様の構造化フィルムと本開示の構造化フィルムとの引き裂き特性の違いを、
図4a及び4bに例示する。本開示の延伸された構造化フィルムの略図である
図4aにおいて、フィルムの横断方向に作製されたノッチ40は、引き裂きが伝搬すると横断方向に引き継がれていく。対照的に、主にα型のポリプロピレンを有し、β造核剤を有さない、延伸された構造化フィルムの略図である
図4bにおいて、フィルムの横断方向に作製されたノッチ40は、引き裂きが伝搬すると方向を変えて、結果として機械方向の引き裂きを引き起こす。本開示の延伸された構造化フィルムの引き裂き特性は、同等の構造化フィルムよりも有意な製造上の利点をもたらす。連続延伸された本開示のフィルムの製造時に発生する可能性のある引き裂きはいずれも、同等の構造化フィルムにおける引き裂きのように機械方向には迅速に伝播しない。
【0064】
例えばサイドバイサイド共押出成形フィルムにおいて、β造核剤を包含するポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン)とα造核剤を包含するポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン)の両方を含む本開示の構造化フィルムは、特有の外観を有する可能性がある。いくつかの実施形態では、第1レーンは、半結晶性ポリオレフィンとβ造核剤とを含み、そして第2レーンは、半結晶性ポリオレフィンとα造核剤とを含む。第1レーンで形成される微小孔は第2レーンには存在しないので、隣り合うレーンの色が、延伸後、異なる場合がある。さらに、延伸後、第1レーンにおける裏材の高さは、第2レーンの裏材の高さよりも高い場合がある。これらの用途において直立柱が延伸後にキャップされていれば、第1レーンの柱が優先的にキャップされ、第2レーンではキャップされない可能性もある。
【0065】
本開示の構造化フィルム及び/又は本開示によって作製される構造化フィルムの実施形態のいずれかにおいて、裏材はロール形態であってよく、当該ロール形態の裏材から、より小さなパッチ(例えば、機械締結パッチ)を、所望の用途にふさわしい寸法で切断することもできる。この用途では、構造化フィルムは、所望の寸法に切断されたパッチであってもよく、また、構造化フィルムの製造方法は、フィルムを所望の寸法に切断することを含むことができる。いくつかの実施形態では、裏材の第2の表面(すなわち、直立柱が突出する第1の表面とは反対の表面)には、接着剤(例えば、感圧接着剤)がコーティングされてもよい。そのような実施形態では、裏材がロール形態の場合、剥離ライナーを、露出された接着剤に適用してもよい。
【0066】
本明細書に開示される構造化フィルムの作製方法のいくつかの実施形態では、方法は、裏材の第2の表面(すなわち、直立柱が突出する第1の表面とは反対の表面)を支持材料に接合することを更に含む。裏材は、例えば、積層(例えば、押出し積層)、接着(例えば、感圧性接着剤)、又は他の接合方法(例えば、超音波接合、圧着、又は表面結合)によって、支持材料に接合されてもよい。かかる接合方法は、所望により、裏材の延伸前に行われてもよく、又は裏材の延伸後に行われてもよい。裏材は、直立柱を有する裏材の形成中に、支持材料に接合されてもよい。結果として得られる物品は、締結積層体、例えば、吸収性物品の前側腰部領域と後側腰部領域とを接合するために有用な吸収性物品の後板に接合された締結タブであってもよい。
【0067】
いくつかの実施形態において裏材の第2の表面に接合され得る支持材料は、連続的(すなわち、貫通穴が一切ない)であっても不連続(例えば、貫通する穿孔又は細孔を含む)であってもよい。支持材料は、織布ウェブ、不織布ウェブ(例えば、スパンボンドウェブ、スパンレースウェブ、風成ウェブ、メルトブローンウェブ、及び固着カードウェブ)、布地、プラスチックフィルム(例えば、単層又は多層フィルム、共押出フィルム、側方積層フィルム、又は発泡層を含むフィルム)、並びにそれらの組み合わせを包含する、種々の好適な材料から構成されてよい。いくつかの実施形態では、支持材料は、繊維性材料(例えば、織布、不織布、又はニット材料)である。支持材料又はウェブを指す時、「不織布」という用語は、重なり合っているが、編物におけるように特定可能な方式で重なっていない個々の繊維又は糸の構造を有するものを意味する。不織布又は不織ウェブは、メルトブローンプロセス、スパンボンドプロセス、スパンレースプロセス、及び固着カードウェブプロセス等の種々のプロセスから形成され得る。いくつかの実施形態では、支持材料は、例えば、少なくとも1つのメルトブローン不織布層、及び少なくとも1つのスパンボンド不織布の層、又は不織布材料の任意の他の好適な組み合わせを有する、多層の不織布材を含む。例えば、支持材料は、スパンボンド−メルトボンド−スパンボンド、スパンボンド−スパンボンド、又はスパンボンド−スパンボンド−スパンボンドの多層材料であってもよい。あるいは、支持材料は不織布層と高密度フィルム層とを含む複合ウェブであり得る。
【0068】
有用な支持材料を提供する繊維性材料は、天然繊維(例えば、木製又は綿繊維)、合成繊維(例えば、熱可塑性繊維)、又は天然繊維及び合成繊維の混合から作製されてもよい。熱可塑性繊維を形成するための代表的な材料には、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、エチレンコポリマー、プロピレンコポリマー、ブチレンコポリマー、並びにこれらのポリマーのコポリマー及びブレンド)、ポリエステル、及びポリアミドが挙げられる。繊維は、例えば、ある熱可塑性材料のコアと、別の熱可塑性材料のシースとを有する、多成分繊維であってもよい。
【0069】
有用な支持材料は、特定の用途に望ましい任意の好適な坪量又は厚さを有し得る。繊維性支持材料について、坪量は、例えば、1平方メートル当たり少なくとも約20、30、又は40グラムから、1平方メートル当たり約400、200、又は100グラムまでの範囲であってもよい。支持材料は、最大約5mm、約2mm、若しくは約1mmまでの厚さ、及び/又は少なくとも約0.1、約0.2、若しくは約0.5mmの厚さであり得る。
【0070】
支持材料の1つ以上の領域は、力を加えたときに少なくとも一方向に延伸して、力を取り除いた後にほぼ元の寸法に戻る、1種以上の弾性的延伸性材料を含んでもよい。用語「弾性」は、延伸又は変形からの回復を呈する任意の材料を指す。同様に、延伸又は変形からの回復を呈さない「非弾性」材料もまた、支持材料として有用であり得る。支持材料が弾性的で、構造化フィルム作製方法が延伸を含む実施形態では、裏材の第2の表面への支持材料の接合は典型的に、延伸後に行われる。
【0071】
本明細書に開示される構造化フィルムを支持材料に接合した後に形成され得る締結積層体は、例えば、吸収性物品において有用であり得る。代表的な吸収性物品は、少なくとも前側腰部領域、後側腰部領域、及び前側腰部領域と後側腰部領域を二等分する長手方向中心線を有し、前側腰部領域又は後側腰部領域の少なくとも一方は、本開示の構造化フィルム及び/又は本開示によって作製される構造化フィルムを含む。締結積層体は、吸収性物品の左長手方向縁部又は右長手方向縁部の少なくとも一方から外側に延びる、前側腰部領域又は後側腰部領域の少なくとも一方に結合される、締結タブの形態であってもよい。他の実施形態では、締結積層体は、吸収性物品の一体型耳部分であり得る。締結積層体は、例えば、生理用ナプキン等の使い捨て物品にも有用であり得る。生理用ナプキンは、典型的に、着用者の下着に隣接して配置することを目的として作られたバックシートを含む。バックシートは、本開示の構造化フィルム及び/又は本開示によって作製される構造化フィルムであって、生理用ナプキンを下着に固定して付着させることができ、キャップされた柱と機械的に係合する。
【0072】
支持材料が繊維ウェブであるいくつかの実施形態では、熱可塑性裏材の第2の表面を支持材料に接合することは、加熱ガス状流体(例えば、周囲空気、脱湿空気、窒素、不活性ガス、又は他のガス混合)を、繊維ウェブが移動している間に繊維ウェブの第1の表面の上に衝突させることと、加熱流体を、連続ウェブが移動している間に裏材の第1の表面とは反対の裏材の第2の表面の上に衝突させることと、繊維ウェブの第1の表面が、裏材の第2の表面に融解結合(例えば、表面結合、又はロフト維持結合によって結合)されるように、繊維ウェブの第1の表面を裏材の第2の表面と接触させることと、を含む。加熱したガス状流体を繊維ウェブの第1の表面の上に衝突させることと、加熱したガス状流体を裏材の第2の表面上に衝突させることと、は、連続的又は同時に実行されてもよい。用語「表面結合」は、繊維性材料の結合を指すとき、繊維の少なくとも一部分の繊維表面の部分が、裏材の第2の表面の元の(結合前の)形状を実質的に保存し、曝露条件で裏材の第2の表面の少なくとも幾つかの部分を実質的に保存するような方法で、表面結合された領域において、裏材の第2の表面に溶融結合されることを意味する。定量的に、表面結合された繊維は、表面結合された繊維の表面積の少なくとも約65%が、繊維の結合部分における裏材の第2の表面の上に見えるという点で、埋め込まれた繊維と区別され得る。複数の角度からの検査は、繊維の表面積の全体を可視化するために必須であり得る。用語「ロフト維持結合」は、繊維性材料の結合を指すとき、結合された繊維材料が、結合プロセスに先立って、又は結合プロセスがない場合に、材料によって呈されるロフトの少なくとも80%のロフトを含むことを意味する。本明細書では、繊維材料のロフトは、ウェブによって占有される全体積(繊維、並びに、繊維によって占有されない材料の間隙を含む)と繊維の材料のみによって占有される体積との比である。繊維ウェブの一部分のみが、そこに結合される裏材の第2の表面を有する場合、維持されたロフトは、結合領域の繊維ウェブのロフトを、非結合領域のウェブのロフトと比較することによって容易に確認することができる。場合によっては、例えば、繊維ウェブの全体がそこに結合される裏材の第2の表面を有するのであれば、結合されたウェブのロフトを、結合される前の同一ウェブのサンプルのロフトと比較することが便宜的なこともある。
【0073】
加熱したガス状流体を使用して連続ウェブを繊維状の支持材料ウェブと接合するための方法及び装置は、米国特許出願公開2011−0151171(Bieglerら)及び同2011−0147475(Bieglerら)に見出すことができる。
【0074】
本開示の一部の実施形態
第1の実施形態では、本開示は、半結晶性ポリオレフィンとβ造核剤とを含む構造化フィルムであって、構造化フィルムが、裏材と、裏材に付着された直立柱と、を備える、構造化フィルムを提供する。
【0075】
第2の実施形態では、本開示は、構造化フィルムがβ型球晶を含む、実施形態1に記載の構造化フィルムを提供する。
【0076】
第3の実施形態では、本開示は、裏材と、裏材に付着された直立柱と、を備える、半結晶性ポリオレフィンからなる構造化フィルムであって、少なくとも直立柱が、半結晶性ポリオレフィンのβ型球晶を含む、構造化フィルムを提供する。
【0077】
第4の実施形態では、本開示は、裏材が微小孔性である、実施形態1〜3のうちのいずれか一つに記載の構造化フィルムを提供する。
【0078】
第5の実施形態では、本開示は、直立柱の密度が2/平方センチメートル〜1182/平方センチメートルの範囲である、実施形態4に記載の構造化フィルムを提供する。
【0079】
第6の実施形態では、本開示は、構造化フィルムの透過率が、250ナノメートル〜2250ナノメートルの波長域において最高65%である、実施形態4又は5に記載の構造化フィルムを提供する。
【0080】
第7の実施形態では、本開示は、半結晶性ポリオレフィンが赤外線遮断剤を本質的に含まない、実施形態1〜6ののうちのいずれか一つに記載の構造化フィルムを提供する。
【0081】
第8の実施形態では、本開示は、直立柱が裏材よりも多孔性が低く及び/又は不透明度が低い、実施形態1〜7のうちのいずれか一つに記載の構造化フィルムを提供する。
【0082】
第9の実施形態では、本開示は、半結晶性ポリオレフィンがポリプロピレンを含む、実施形態の1〜8のうちのいずれか一つに記載の構造化フィルムを提供する。
【0083】
第10の実施形態では、本開示は、半結晶性ポリオレフィンが、プロピレンホモポリマー、プロピレンと他のオレフィンとのコポリマー、又はポリプロピレンホモポリマーと別のポリオレフィンとのブレンドのうち少なくとも1種を含む、実施形態9に記載の構造化フィルムを提供する。
【0084】
第11の実施形態では、本開示は、β造核剤が、構造化フィルムの重量に対して1ppm〜10,000ppmの範囲で構造化フィルム中に含まれる、実施形態1〜10のうちのいずれか一つに記載の構造化フィルム提供する。
【0085】
第12の実施形態では、本開示は、第1〜第11のうちのいずれか一つの実施形態の構造化フィルムであって、β造核剤が、γキナクリドン、キニザリンスルホン酸のアルミニウム塩、ジヒドロキナクリジンージオン、キナクリジン−テトロン、トリフェネノールジトリアジン(triphenenol ditriazine)、炭酸カルシウムと有機酸との組み合わせ、ステアリン酸カルシウムとピメリン酸との組み合わせ、ケイ酸カルシウム、ジカルボン酸の周期表第11A族金属塩、デルタ−キナクリドン、アジピン酸又はスベリン酸のジアミド、スベリン酸又はピメリン酸のカルシウム塩、インジゴゾル又はシバンチン有機顔料、キナクリドンキノン、N’,N’−ジシクロヘキシル(dicyclohexil)−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド、アントラキノンレッド顔料、及びビスアゾイエロー顔料からなる群から選択される、構造化フィルムを提供する。
【0086】
第13の実施形態では、本開示は、直立柱の密度が10/平方センチメートル〜1575/平方センチメートルの範囲である、実施形態1〜3のうちのいずれか一つに記載の構造化フィルムを提供する。
【0087】
第14の実施形態では、本開示は、着色剤を更に含む、実施形態1〜13のうちのいずれか一つに記載の構造化フィルムを提供する。
【0088】
第15の実施形態では、本開示は、構造化フィルムが機械的締結具である、実施形態1〜14のうちのいずれか一つに記載の構造化フィルムを提供する。
【0089】
第16の実施形態では、本開示は、直立柱が、裏材から遠位にキャップを有し、キャップがループ係合突出部を有する、実施形態1〜15ののうちのいずれか一つに記載の構造化フィルムを提供する。
【0090】
第17の実施形態では、本開示は、構造化フィルムが多層フィルムである、実施形態1〜16ののうちのいずれか一つに記載の構造化フィルムを提供する。
【0091】
第18の実施形態では、本開示は、構造化フィルムが、隣り合う第1レーン及び第2レーンを有する共押出成形フィルムであり、第1レーンが半結晶性ポリオレフィンとβ造核剤とを含み、第2レーンが別のポリマー組成物を含む、実施形態1〜16のうちのいずれか一つに記載の構造化フィルムを提供する。
【0092】
第19の実施形態では、本開示は、第2レーンがα造核剤を含む、実施形態18に記載の構造化フィルムを提供する。
【0093】
第20の実施形態では、本開示は、第2レーンがエラストマー材料を含む、実施形態18に記載の構造化フィルムを提供する。
【0094】
第21の実施形態では、本開示は、透過モードで測定されるグレースケール値が最大40である、第1〜第20の実施形態のうちのいずれか一つに記載の構造化フィルムを提供する。
【0095】
第22の実施形態では、本開示は、構造化フィルムが正及び負の複屈折率域を有する、実施形態1〜21のうちのいずれか一つに記載の構造化フィルムを提供する。
【0096】
第23の実施形態では、本開示は、構造化表面の作製方法であって、該方法が、
ポリオレフィン溶融物及びβ造核剤を押出成形することでフィルムの裏材を供給することと、
溶融物の少なくとも一部を、β型球晶を形成するのに十分な温度まで冷却することと、
フィルムの裏材の上に直立柱を形成して構造化フィルムを提供することと、を含む、方法を提供する。
【0097】
第24の実施形態では、本開示は、押出成形が、裏材上に直立柱を有する構造化フィルムを供給するツールの存在下で行われる、実施形態23に記載の方法を提供する。
【0098】
第25の実施形態では、本開示は、フィルムの裏材の上に直立柱を形成することが、溶融物の少なくとも一部を冷却した後で行われる、実施形態23に記載の方法を提供する。
【0099】
第26の実施形態では、本開示は、フィルムの裏材を延伸することを更に含み、フィルムの裏材の上に直立柱を形成することが、フィルムの裏材を延伸した後で行われる、実施形態23に記載の方法を提供する。
【0100】
第27の実施形態では、本開示は、構造化フィルムの作製方法であって、該方法が、
ポリオレフィン溶融物及びβ造核剤を、裏材の上に直立柱を有する構造化フィルムを提供するツールの存在下で押出成形することと、
構造化フィルムの少なくとも一部を、β型球晶を形成するのに十分な温度まで冷却することと、を含む、方法を提供する。
【0101】
第28の実施形態では、本開示は、β型球晶を含有する構造化フィルムを延伸して裏材に多孔性を付与することを更に含む、実施形態27に記載の方法を提供する。
【0102】
第29の実施形態では、本開示は、延伸が、50℃〜90℃の範囲の温度で行われる、実施形態26又は28に記載の方法を提供する。
【0103】
第30の実施形態では、本開示は、延伸が一軸的である、実施形態26、28又は29に記載の方法を提供する。
【0104】
第31の実施形態では、本開示は、延伸が、最大3:1の合計延伸比を付与するように行われる、実施形態26又は28〜30のうちのいずれか一つに記載の方法を提供する。
【0105】
第32の実施形態では、本開示は、延伸が機械方向になされる、実施形態26又は28〜31ののうちのいずれか一つに記載の方法を提供する。
【0106】
第33の実施形態では、本開示は、延伸が不透明度を少なくとも15%増加させる、実施形態26又は28〜32のうちのいずれか一つに記載の方法を提供する。
【0107】
第34の実施形態では、本開示は、延伸が透過モードにおけるグレースケール測定値を少なくとも25%減少させる、実施形態26又は28〜33のうちのいずれか一つに記載の方法を提供する。
【0108】
第35の実施形態では、本開示は、β型球晶を形成するのに十分な温度が、90℃〜120℃の範囲である、実施形態23〜34のうちのいずれか一つに記載の方法を提供する。
【0109】
第36の実施形態では、本開示は、実施形態1〜22ののうちのいずれか一つに記載の、又は実施形態23〜35のうちのいずれか一つに記載の方法によって作製される、構造化フィルムを含む吸収性物品を提供する。
【0110】
第37の実施形態では、本開示は、該吸収物品が、少なくとも前側腰部領域と、後側腰部領域と、前側腰部領域と後側腰部領域とを二分する長手方向の中心線と、を有し、前側腰部領域又は後側腰部領域のうち少なくとも一つが構造化フィルムを含む、実施形態36に記載の吸収性物品を提供する。
【0111】
本開示をより十分に理解できるように、以下の実施例を記載する。これら実施例は単に例示を目的とするものであって、本開示はどのような形でも限定されるものではないと解されるべきである。特に指示がない限り、部及び割合は全て、重量を基準とする。
【実施例】
【0112】
材料
フィルムグレードのポリプロピレン(PP)コポリマーである、ポリプロピレン耐衝撃性コポリマーは、Dow Chemical Company,Midland,MIから商品名「DOW C700−35N POLYPROPYLENE RESIN」として入手した。ポリマーの密度は、ASTM D972に従って測定しとき、0.902g/ccであると報告され、メルトフローインデックス(MFI)は、ASTM D1238に従って測定したとき、35(230℃及び2.16kgの負荷の下)であると報告された。β造核剤マスターバッチは、Mayzo Corporation,Alpharetta,GAから商品名「MPM 1114」として入手した。β造核剤マスターバッチはペレット化されており、ポリプロピレンホモポリマー樹脂中に分散された高性能β核形成製剤を含有していた。
【0113】
サンプル調製
熱可塑性樹脂からなる実質上連続的な裏材と、裏材と一体化された直立柱のアレイと、を有する構造化フィルムを調製した。実施例1〜4及び比較例1〜4の直立柱はキャップされていた。実施例1〜4及び比較例1〜4におけるキャップ形状は楕円形であり、米国特許第6,132,660号(Kampfer)に記載の手順を用いて変形させることで「下向きに突出している繊維係合部分を有する、フックヘッド」を提供した。
【0114】
(実施例1)
キャップされた柱を有する構造化フィルムは、C700−35Nポリプロピレン樹脂のストリーム(98重量%)とβ造核マスターバッチ(2重量%)とを2インチ(5cm)の一軸スクリュー押出機から供給することによって調製した。バレル領域1〜7はそれぞれ、176℃、170℃、180℃、190℃、200℃、218℃、及び218℃に設定した。溶融樹脂を次いで、シートダイを通って回転式円筒形金型へと送り込んだ。ダイの温度は218℃に設定し、円筒形金型の温度は90℃に設定した。スクリュー回転数は80rpmに設定した。金型の空洞部へ樹脂を迅速に流し込むことで、流れ方向と平行に分子配向を生じさせた。金型を水冷して急冷することで、ポリマーの配向を維持した。柱の密度は5200/平方インチ(806/平方センチメートル)であり、アレイが交互に配列されており、柱の形状は円錐形であった。ウェブはキャップ形成装置に直接送り込んだ。柱は、米国特許第5,845,375号(Millerら)に記載の手順を用いて、楕円形状のキャップでキャップした。キャップは、その後、米国特許第6,132,660号(Kampfer)に記載の手順を用いて変形させた。
【0115】
(実施例2)
キャップされた柱の構造化フィルムは、実施例1と同様のプロセス条件を用いて調製した。さらに、実施例1で得た構造化フィルムは、一方のロールがもう一方のロールの上に配置された一対のロールにサンプルを通過させることで延伸倍率2:1を用いて機械方向に延伸した。ロール温度は130℃に設定した。
【0116】
(実施例3)
キャップされた柱を有する構造化フィルムは、延伸中のロール温度を130℃ではなく70℃に設定したこと以外は実施例2に記載と同様のプロセス条件を用いて調製した。
【0117】
(実施例4)
キャップされた柱を有する構造化フィルムは、延伸中のロール温度を130℃ではなく60℃に設定したこと以外は実施例2に記載と同様のプロセス条件を用いて調製した。
【0118】
比較例1
キャップされた柱を有する構造化フィルムは、β造核マスターバッチを供給物流から取り除いたこと以外は実施例1に従って調製した。
【0119】
比較例2
キャップされた柱を有する構造化フィルムは、比較例1と同様のプロセス条件を用いて調製した。さらに、比較例1で得た構造化フィルムは、一方のロールがもう一方のロールの上に配置された一対のロールにサンプルを通過させることで延伸倍率2:1を用いて機械方向に延伸した。ロール温度は130℃に設定した。
【0120】
比較例3
キャップされた柱を有する構造化フィルムは、延伸中のロール温度を130℃ではなく70℃に設定したこと以外は比較例2に記載と同様のプロセス条件を用いて調製した。
【0121】
比較例4
キャップされた柱を有する構造化フィルムは、延伸中のロール温度を130℃ではなく60℃に設定したこと以外は実施例2に記載と同様のプロセス条件を用いて調製した。
【0122】
表1には、実施例1〜4及び比較例1〜4に関する総厚、フィルムの裏材の厚さ、坪量、ウェブの幅、横断方向(CD)のキャップ直径、及び機械方向(MD)のキャップ直径を記す。
【0123】
【表1】
【0124】
実施例2〜4及び比較例2〜4に関して、延伸後のウェブ幅の減少率に関する値(「ネッキング率」)及び延伸後のフィルムの裏材の厚さの減少率を算出した(表2)。延伸後のウェブ幅の減少率は、対応する比較例2〜4よりも実施例2〜4の方が小さかった。同様に、延伸後のフィルム裏材の厚さの減少率も、対応する比較例2〜4よりも実施例2〜4の方が小さかった。
【0125】
【表2】
【0126】
X線回折
実施例1〜4及び比較例1〜4におけるβ型結晶とα型結晶の相対濃度は、X線回折を用いて測定した。各構造化フィルムの一部を、アルミニウム製の後面開放型試料ホルダーに、両端に両面粘着テープを用いて貼付した。Philips垂直型回折計(PANalytical、Natick、MA)、銅Kα放射線、及び比例検出器の散乱線レジストリーを用いてサーベイスキャンの形で反射配置データを集めた。回折計には、可変の入射ビームスリット、固定回折ビームスリット、及びグラファイト回折ビームモノクロメータが装備されていた。サーベイスキャンは、0.04度のステップサイズ及び6秒の滞留時間を使用して5〜55度(2θ)で行った。45kV及び35mAのX線発生装置設定を使用した。
【0127】
各ピーク位置の同定は、Turner Jones、J.M.Aizlewood、及びD.R.Beckett著の参考文献(Die Makromolekulare Chemie,Vol 75,Issue 1(1964)p134)に報告された値と比較することによって行った。
【0128】
回折パターンは、解析ソフトウェアJADE version 9.0(Materials Data,Inc.、Livermore、CA)を用いてプロファイルフィッティングを行うことで、α相(110)面、(040)面、及び(130)面の最大値、並びにβ相(300)面の最大値を評価した。存在するβ相水準は、ファクター(K)として、次の式:K=I(300)
β/[I(300)
β+I(110)
α+I(040)
α+I(130)
α]を用いて求めた。
【0129】
式の各項は次の通り定義される。I(300)
βは、βフォーム(300)面の最大強度であり、I(110)
αは、αフォーム(110)の最大強度であり、I(040)
αは、αフォーム(040)の最大強度であり、そしてI(130)
αは、αフォーム(130)の最大強度である。算出されたK値は、0(β型結晶を有さないサンプル)〜1.0(全てβ型結晶のサンプル)まで幅がある。
【0130】
【表3】
【0131】
熱解析
実施例1〜4及び比較例1〜4に関する熱解析測定は、モデルQ−2000示差走査熱量計(DSC)(TA instruments、New Castle、DE)を用いて昇温速度10℃/分で行い、前記熱量計の温度及びエンタルピーが較正されて、融点が165.5℃のインジウム標準物質を用いて行った。各スキャンでは約10mgのサンプルを用いた。最初の熱分析スキャン中、サンプルをスキャン速度10℃/分で200℃まで加熱し、この温度を一定温度で1分間保持することで熱履歴を消去した。サンプルをその後、10℃/分で室温まで冷却した。サンプルを10℃/分で200℃まで再加熱して、二回目のスキャン結果を記録して報告した。α相及びβ相の両方に関する融点(T
m(℃))及び融解熱データ(ΔH
f(ジュール/グラム)を記録した。β型結晶の融点は一般に、α型結晶よりも約10℃〜15℃低かった。実施例1〜4及び比較例1〜4の結果を表4に示す。実施例1〜4は二重融点を示し、これは、α型結晶相とβ型結晶相の両方が存在することと一致していた。比較例1〜4は単一の融点を示し、これは、α型結晶相のみが存在することと一致していた。
【0132】
【表4】
【0133】
比較例5
比較例5は、柱を形成する円筒形ツールを用いる代わりに平滑な非構造化クローム製ロールを用いてフィルムを急冷したこと以外は実施例1と同じプロセス条件で行った。比較例5は、β造核剤を2%含有する、延伸されていない非構造化フィルムであった。
【0134】
比較例6
比較例6は、比較例5と同様のプロセス条件で行った。さらに、比較例5のフィルムサンプルは、一方のロールがもう一方のロールの上に配置された一対のロールにサンプルを通過させることで延伸倍率2:1を用いて機械方向に延伸した。ロール温度は60℃に設定した。
【0135】
かさ密度
実施例1及び4並びに比較例4、5及び6のかさ密度測定(グラム(g)/立方センチメートル(cc))は、モデルAccuPyc 1330ガスピクノメータ(Micromeritics、Norcross、GA)により、作動ガスとしてヘリウムを用いて測定した。サンプルは、ウェブから小さなリボン状に切断して巻き取ってから、精密てんびんを用いて秤量した。サンプルを10ccの試料室に入れた。その後、ピクノメータの容積解析プログラムを開始して、サンプルの容積を5回測定した。5回の相加平均をサンプルの容積として報告した。サンプルの密度は、サンプルの質量を平均容積測定値で除することにより算出した。サンプルの密度は24.8℃で測定した。実施例1及び4並びに比較例4、5及び6についての結果を表5に記す。
【0136】
【表5】
【0137】
孔径
実施例4の裏材フィルムの孔径(μm)は、ASTM F−316−80に従って泡立ち点を測定することにより求めた。最大有効口径測定値は0.16μmであった。比較例4も泡立ち点試験法を行ったが、その孔径は、この方法を用いて求めることができなかった(ND)。
【0138】
機械的特性
実施例1〜4及び比較例1〜4の引張強度測定は、ASTM D−3759に従って、引張試験材料固定具を装備するInstronモデル1122万能試験機(Instron Engineering Corporation、Canton、MA)を用いて行った。MD方向の引張強度を測定するために、10.2cm(MD)×2.5cm(CD)の試験サンプルを調製した。CD方向の引張強度を測定するために、10.2cm(CD)×2.5cm(MD)の試験サンプルを調製した。MD及びCDの両方における降伏荷重(MPa)をサンプルの引張強度として記録した。
【0139】
実施例1〜4及び比較例1〜4の引裂強さ測定は、ASTM D−1922に従って、エルメンドルフ型(振り子)引き裂強さ試験機(ProTearモデル、Thwing−Albert Instruments、Philadelphia、PA)を用いて求めた。MD方向の引裂き伝搬力(tear force)(グラム)は、6.3cm(MD)×5.1cm(CD)の試験サンプルを用いて測定した。CD方向の引裂き伝搬力(tear force)(グラム)は、6.3cm(CD)×5.1cm(MD)の試験サンプルを用いて測定した。各サンプルの引裂き強さ(グラム/ミル)は、引裂き伝搬力測定値をフィルムの裏材の厚さ(厚み)で除することにより算出した。
【0140】
実施例1〜4及び比較例1〜4の剛性測定は、ASTM D−6125に従って求めた。剛性は、ガーレー剛性単位として測定した。次の式によって、ガーレー剛性単位を力に対応させる。
力(mN)=(9.807×10
−3)×(ガーレー単位)
【0141】
実施例1〜4及び比較例1〜4のMD方向及びCD方向両方に関する引張強度(MPa)、引裂き強さ(g/ミル)、及び剛性測定値(ガーレー単位)を表6及び7に記す。
【0142】
【表6】
【0143】
【表7】
【0144】
光学顕微鏡技術
実施例4及び比較例4について撮影した光学顕微鏡画像を、
図3a及び3bに示す。Keyence VHS−500モデルデジタル顕微鏡を用い、写真を撮るときにサンプルを黒色背景を背にして配置した。
【0145】
不透明度
実施例1〜4の構造化フィルムの不透明度測定は、ASTM E−284に従ってLabScan XE分光光度計(Hunterlab,Reston,VA)を用いて行った。装置のセンサーを標準化した後、試料ポートの下にサンプルを黒色のバックアップタイルを背にして配置して、色測定の「L」値を記録した。「L」値は、International Commission on Illuminationによって確立されたCIELAB色空間スケールにおける3種の標準パラメータのうちの1つである。「L」は、0(黒)〜100(最大強度)までの範囲の輝度値である。この手順は、白色タイルを背にして配置したサンプルについても繰り返した。各工程において、サンプルを90度回転させて、2つの読みの平均を記録した。不透明度(%で記す)は、次の式で算出した。不透明度(%)=(L
黒色/L
白色)×100不透明度測定値を表8に記す。
【0146】
【表8】
【0147】
グレースケール測定
実施例1〜4及び比較例1〜4の構造化フィルムについてのグレースケール測定は、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)イメージセンサー及びIMPACT Software Suiteを装備するIMPACT A20デジタルカメラ(PPT Vision、Bloomington、MN)を用いて収集した。機械方向(MD)の長さが1メートルのサンプルを、2本のロールの間に手で張力を掛け続けた。サンプルには、フィルム側面(すなわち、柱のない面)後方から波長940nmの光源を照射した。検出カメラは、構造化フィルムサンプルの約5フィート上に、柱面がカメラに向くようにして取り付けた。グレースケール強度の測定は、透過モードで、0(高い不透明度)〜255(低い不透明度)の範囲の数字メモリを用いて行った。異なる3つのMDサンプル点においてグレースケール強度を記録した。平均値を算出して、表9に記す。
【0148】
【表9】
【0149】
比較のために、キャップされた柱を有する構造化フィルムは、二酸化チタンマスターバッチ(Clariant Corporation,Minneapolis,MN製)を供給物流に添加したこと以外は比較例1に従って調製した。二酸化チタンマスターバッチは二酸化チタン50重量%であり、ポリプロピレンとマスターバッチの総重量の2重量%で供給物流に添加された。このフィルムに関する平均グレースケール強度は、上述の試験法に従って求めたところ、30であった。キャップされた柱を有する別の構造化フィルムは、二酸化チタンマスターバッチ(Clariant Corporation製、上述のように2重量%で添加)を供給物流に添加したこと以外は比較例1に従って調製し、そしてそのフィルムを、一方のロールがもう一方のロールの上に配置された一対のロールにサンプルを通過させることで延伸倍率2:1を用いて機械方向に配向させた。ロール温度は130℃に設定した。このフィルムに関する平均グレースケール強度は、上述の試験法に従って求めたところ、39であった。
【0150】
UV/Vis/NIR分光法
実施例1〜4及び比較例1〜4によるUV/Vis/NIR(紫外/可視/近赤外)放射線の透過及び反射は、Lambda 1050 UV/Vis/NIR分光光度計(Perkin Elmer、San Jose、CA)と共に積分球を用いて測定した。透過スペクトル及び反射スペクトルは、250nmから2500nmまで5nm単位で記録した。積分球の直径は15cmであった。サンプルは、透過モードでは入射放射線に対して90度で保持され、また、反射モードでは8度で保持された。空気リファレンスを使用した。透過測定では、サンプルを、柱のない面が入射放射線に向くように取り付ける。反射率データは、白い板(すなわち、ライトトラップ)を用いずに収集し、そしてサンプルのフィルム面(柱のない面)を入射ビームに向けて取り付ける。解析では、スペクトルを3つの領域に分けた[250〜380nm(紫外域)、380〜760nm(可視域)及び760〜2250nm(近赤外)]。各領域における透過率及び反射率として記録された値域を、表10〜11に記す。
【0151】
【表10】
【0152】
【表11】
【0153】
(実施例5)
実施例5の構造化フィルムは、キャッピング手順を行わなかったこと以外は、実施例1に記載と同様のプロセス条件を用いて調製した。
【0154】
(実施例6)
実施例6の構造化フィルムは、実施例5と同様のプロセス条件を用いて調製した。さらに、構造化フィルムは、一方のロールがもう一方のロールの上に配置された一対のロールにサンプルを通過させることで延伸倍率2:1を用いて機械方向に延伸した。ロール温度は130℃に設定した。
【0155】
複屈折
実施例5〜6及び比較例1〜2の柱とフィルムの裏材の両方に関する複屈折率値を求めた。各構造化フィルムにおいて、CD方向に隣接する3つの柱を含むサンプルをフィルムから切り取った。MD方向に隣接する3つの柱を含む別のサンプルも各フィルムから切り取った。サンプルは、3つの柱を貫く横断面で縦方向(フィルムの裏材の表面と垂直)に切断して、その切断面を撮像した。10x/0.25対物レンズの付いたA DMRXE顕微鏡(Leica Microsystems GmbH,Wetzlar,Germany)には、LC−POLSCOPE位相遅延画像システム(Lot−Oriel GmBH & Company,Darmstadt,Germany)、RETIGA EXI FAST 1394デジタルカラーカメラ(QIMAGING,Surrey BC,Canada)及び546.5nm干渉フィルター(Cambridge Research and Instrumentation,Inc.,Hopkinton,MA)が装備されていた。6つの柱それぞれに対し、撮像システムを設定して、柱の中心にある7336ピクセルの撮像面積の平均位相遅延、方位マップ、水平線スキャン、及び疑似カラー位相遅延マップを記録した。各柱に対する複屈折値は、記録された位相遅延測定値を用いて算出した。柱要素に対する平均複屈折値(n=6)を求めて、表12に示す。実施例5及び6の画像をそれぞれ
図6a及び6bに示す。比較例1及び2の画像をそれぞれ
図5a及び5bに示す。
【0156】
フィルムの裏材の切断面もさらに、1775ピクセルの位相遅延ボックスで画定された撮像領域を用いて撮像した。合計6つの撮像面積を、フィルム裏材の、柱間に位置する区分でランダムに選択した。各撮像ボックスにおいて、撮像システムは、ボックス面積の平均位相遅延、方位マップ、水平線スキャン、及び疑似カラー位相遅延マップを記録するように設定した。各ボックスで画定された面積の複屈折率値を、記録された位相遅延測定値を用いて算出した。フィルム裏材に対する平均複屈折率(n=6)を求めて、表13に示す。
【0157】
【表12】
【0158】
【表13】
【0159】
CD引裂き伝播
CD方向の引裂き伝播を、実施例4及び比較例4について試験した。試験サンプル(6.3cm(CD)×5.1cm(MD))を調製し、Elmendorf(振り子)引裂き試験機(ProTearモデル、Thwing−Albert Instruments,Philadelphia,PA)のジョーに固定して配置し、サンプルの底辺が2つのジョーの底部に均一に設置したことを確かめた。約2.0cmのノッチは、機器のCD方向に(幅5.1cmの中間点に)ナイフブレードを用いて作製した。振り子は、試験片を引裂くように動かされた。引裂かれた2枚のサンプルを集めて、引裂き伝搬方向を記録した。実施例4では、引裂き方向がCD方向(ノッチ方向)に引き継がれ、比較例4では、引裂き伝播が直ぐに方向を変えてMD方向(ノッチの方向とおおよそ垂直な方向)に引き継がれた。実施例4及び比較例4の結果をそれぞれ
図4a及び4bに示す。
【0160】
この開示は、趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な修正及び変更が可能である。したがって、本開示は、上記の実施形態に限定されないが、以下の請求項及び全てのその等価物に詳述する制限によって規制される。本開示は、本明細書に具体的に開示されていない要素を欠いても適宜実施され得る。