(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1には、例示の電気化学電池電極100が示されている。電気化学電池電極100は、第1の主面103及び第2の概して対向する主面104を有するナノ構造触媒担体層102を含む。第1の面103は、第1の面103から離れる方向に突出する担体ウィスカ108を含むナノ構造要素106を含む。担体ウィスカ108は、その上に第1のナノスケール電極触媒層110を有し、第2の面104には、第2のナノスケール電極触媒層112を有する。第2のナノスケール電極触媒層112は、貴金属合金を含む。
【0012】
担体ウィスカは、米国特許第4,812,352号(Debe)、同第5,039,561号(Debe)、同第5,338,430号(Parsonageら)、同第6,136,412号(Spiewakら)、及び同第7,419,741号(Verstromら)に記載される技法など当該技術分野において既知の技法によって設けられてもよく、これらの開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる。一般に、担体ウィスカは、例えば、有機材料又は非有機材料の層を基材(例えば、ミクロ構造触媒移動ポリマー)上に(例えば、昇華によって)真空蒸着させてから、熱アニールによってこの材料をナノ構造ウィスカに転化することによって設けられてもよい。典型的には、真空蒸着工程は、約10
−3TORR(0.1パスカル)以下の全圧で実行される。例示のミクロ構造は、有機顔料C.I.顔料レッド149(即ち、N,N’−ジ(3,5−キシリル)ペリレン−3,4:9,10−ビス(ジカルボキシイミド))の熱昇華及び真空アニールによって作製される。有機ナノ構造層の作製方法は、例えば、Materials Science and Engineering,A158(1992),pp.1〜6、J.Vac.Sci.Technol.A,5(4),July/August,1987,pp.1914〜16、J.Vac.Sci.Technol.A,6,(3),May/August,1988,pp.1907〜11、Thin Solid Films,186,1990,pp.327〜47、J.Mat.Sci.,25,1990,pp.5257〜68、Rapidly Quenched Metals,Proc.of the Fifth Int.Conf.on Rapidly Quenched Metals,Wurzburg,Germany(Sep.3〜7,1984),S.Steeb et al.,eds.,Elsevier Science Publishers B.V.,New York,(1985),pp.1117〜24、Photo.Sci.and Eng.,24,(4),July/August,1980,pp.211〜16、並びに米国特許第4,340,276号(Maffittら)及び同第4,568,598号(Bilkadiら)に開示されており、これらの開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる。炭素ナノチューブアレイを用いた触媒層の特性は、論文「High Dispersion and Electrocatalytic Properties of Platinum on Well−Aligned Carbon Nanotube Arrays」、Carbon 42(2004年)191〜197頁に開示されている。草のような又は逆立ったケイ素を使用する触媒層の特性は、米国特許出願公開第2004/0048466 A1号(Goreら)に記載されている。
【0013】
真空蒸着は、任意の好適な装置内で実行され得る(例えば、米国特許第5,338,430号(Parsonageら)、同第5,879,827号(Debeら)、同第5,879,828号(Debeら)、同第6,040,077号(Debeら)、及び同第6,319,293号(Debeら)、並びに米国特許出願公開第2002/0004453 A1号(Haugenら)を参照。これらの開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる)。米国特許第5,338,430号(Parsonageら)の
図4Aには、ある例示の装置が概略的に示され、付随するテキストで説明されている。ここでは、基材がドラム上に取り付けられ、次いで、このドラムは、有機前駆体(例えば、未転化ペリレンレッド顔料)をナノ構造ウィスカに堆積させるための昇華源又は蒸発源上で回転する。
【0014】
典型的には、堆積される未転化ペリレンレッド顔料の公称厚さは、約50nm〜800nmの範囲である。典型的には、ウィスカは、20nm〜60nmの範囲の平均断面寸法及び0.3マイクロメートル〜3マイクロメートルの範囲の平均長さを有する。
【0015】
いくつかの実施形態では、ウィスカは裏材に取り付けられている。例示の裏材には、ポリイミド、ナイロン、金属箔、又は未転化ペリレンレッドの最高300℃の熱アニール温度、若しくは記載の他の方法によって担体ナノ構造を生成するために必要な最高温度に耐え得る他の材料が挙げられる。
【0016】
いくつかの実施形態では、第2の面上の第1の材料は、10nm〜200nm(いくつかの実施形態では、25nm〜175nm)の範囲の厚さを有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、裏材は、25マイクロメートル〜125マイクロメートルの範囲の平均厚さを有する。
【0018】
いくつかの実施形態では、裏材は、その表面の少なくとも1つの上にミクロ構造を有する。いくつかの実施形態では、ミクロ構造は、ナノ構造ウィスカの平均寸法の少なくとも3倍(いくつかの実施形態では、少なくとも4倍、5倍、10倍、又はそれ以上)の実質的に均一の形状及び寸法の機構で構成される。ミクロ構造の形状は、例えば、V型の溝部と頂部(例えば、参照することにより本明細書に組み込まれる、米国特許第6,136,412号(Spiewakら))又はピラミッド(例えば、参照することにより本明細書に組み込まれる、米国特許第7,901,829号(Debeら))であり得る。いくつかの実施形態では、ミクロ構造の機構の一部は、31個のV型溝頂部ごとに、その両側の頂部よりも25%、又は50%、又は更には100%高いなど周期的にミクロ構造頂部の平均又は大部分の上方に延出する。いくつかの実施形態では、ミクロ構造頂部の大部分の上方に延出するこの機構の一部は、最大10%(いくつかの実施形態では、最大3%、2%、又は更には最大1%)であり得る。たまに高いミクロ構造機構を用いると、ローツーロールコーティング作業中にコーティングされた基材がロール表面を移動する際の、均一に小さいミクロ構造頂部の保護に役立ち得る。たまに存在する高い機構は、小さいミクロ構造の頂部よりもロール表面に接触するため、ナノ構造材料、つまりウィスカが擦り切れる可能性がかなり低くなる。このような構造でなければ、ナノ構造材料、つまりウィスカは、基材でのコーティングプロセスが進行するにつれて乱されるであろう。いくつかの実施形態では、ミクロ構造機構は、膜電極接合体(MEA)の作製時に触媒の移動先となる膜の厚さの半分よりも実質的に小さい。これは、触媒移動プロセス中に、高いミクロ構造機構が、膜の反対側で電極を重ね得る膜を貫通しないようにするためである。いくつかの実施形態では、最も高いミクロ構造機構は、膜厚の1/3又は1/4未満である。最薄のイオン交換膜(例えば、約10〜15マイクロメートル厚)の場合、約3〜4.5マイクロメートルを超えない高さのミクロ構造機構を備える基材を有することが望ましいであろう。いくつかの実施形態では、V型又は他のミクロ構造機構の面の傾斜、つまり隣接する機構間の夾角は、積層移動プロセス中の触媒移動を容易にするために約90°であることが望ましい場合があり、基材の裏材の平坦な幾何学的表面に対して、ミクロ構造層の2の平方根(1.414)の表面積によってもたらされる電極の表面積の利得を有する。
【0019】
いくつかの実施形態では、第1のナノスケール電極触媒層は、ナノ構造ウィスカ上に直接コーティングされているが、他の実施形態では、所望の触媒特性を付与し、導電性及び機械的特性(例えば、ナノ構造層を含むナノ構造の強化及び/又は保護)並びに低蒸気圧特性も付与する機能層などの中間層(典型的には、コンフォーマル層)が存在してもよい。中間層はまた、以降の交互層の堆積方法及び結晶形態の発達方法に影響を及ぼす核形成部位をもたらしてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、中間層は、ポリマー材料など無機材料又は有機材料を含む。例示の有機材料には、導電性ポリマー(例えば、ポリアセチレン)、ポリ−p−キシリレン由来のポリマー、及び自己組織化層を形成できる材料が挙げられる。典型的には、中間層の厚さは、約0.2〜約50nmの範囲である。中間層は、米国特許第4,812,352号(Debe)及び同第5,039,561号(Debe)に記載の技法など従来の技法を使用してナノ構造ウィスカ上に堆積させてもよく、これらの開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる。通常、中間層を設けるために使用されるいずれの方法も、機械的力によってナノ構造ウィスカを乱さないことが望ましい。例示の方法には、蒸気相蒸着(例えば、真空蒸発、スパッタリング(イオンスパッタリングなど)、陰極アーク蒸着、蒸気凝縮、真空昇華、物理的蒸気輸送、化学的蒸気輸送、有機金属化学気相成長、原子層蒸着、及びイオンビームアシスト蒸着)ソリューションコーティング又は分散コーティング(例えば、ディップコーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、注入コーティング(即ち、表面に液体を注ぎ、液体がナノ構造ウィスカ上を流れ、溶剤を除去できる)、浸漬コーティング(即ち、層が溶液から分子、又は分散系からコロイド若しくは他の分散した粒子を吸収できるように十分な時間、ナノ構造ウィスカを溶液に浸漬させる)、並びに電気めっき及び無電解めっきなどの電着が挙げられる。いくつかの実施形態では、中間層は、触媒金属、合金、それらの酸化物又は窒化物である。更なる詳細は、例えば、米国特許第7,790,304号(Hendricksら)に見ることができ、この開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0021】
一般に、電極触媒層は、例えば、米国特許第5,879,827号(Debeら)、同第6,040,077号(Debeら)、及び同第7,419,741号(Vernstromら)に記載される、化学蒸着(CVD)法及び物理蒸着(PVD)法など本明細書に記載の例示の方法のいずれかによって、適用可能な表面に堆積でき、これらの開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる。例示のPVD法には、マグネトロンスパッタ蒸着、プラズマ蒸着、蒸発、及び昇華蒸着が挙げられる。
【0022】
いくつかの実施形態では、第1の電極触媒層は、貴金属(例えば、Pt、Ir、Au、Os、Re、Pd、Rh、又はRuの少なくとも1つ)、非貴金属(例えば、遷移金属(例えば、Ni、Co、及びFe))、又はその合金の少なくとも1つを含む。第1の電極触媒層は、典型的には、スパッタリングによって設けられる。1つの例示の白金合金、白金ニッケル、及びそれを堆積させる方法は、例えば、国際出願PCT/US2011/033949号(2011年4月26日出願)に記載されており、この開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる。例示の白金ニッケル合金には、Pt
1−xNi
xが挙げられ、式中、xは、0.5〜0.8原子の範囲である。例示の三元貴金属及びその堆積方法は、例えば、米国特許出願公開第2007−0082814号(2005年10月12日出願)に記載されており、この開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる。所望により、第1の電極触媒層は、貴金属、非貴金属、及びこれらの組み合わせの多層を含んでもよい。例示のこれを蒸着させる多層法は、例えば、米国特許出願第61/545409号(2011年10月11日出願)に記載されており、この開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる。酸素発生反応に良好な活性を示す電極触媒には、Pt、Ir、及びRuを含む触媒が挙げられる。
【0023】
いくつかの実施形態では、第2の電極触媒層の貴金属合金は、例えば、Pt、Ir、Au、Os、Re、Pd、Rh、又はRuの少なくとも1つ(いくつかの実施形態では、Pt、Ir、又はRuの少なくとも1つ)を含む。いくつかの実施形態では、第2の主面上の貴金属合金はまた、少なくとも1種類の遷移金属(例えば、Ni、Co、Ti、Mn、又はFeの少なくとも1つ)を含む。
【0024】
第2の電極触媒層は、マグネトロンスパッタ蒸着による物理蒸着など第1の電極触媒層を設けるための上記の技法によって設けられてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、第1及び第2の電極触媒層は同一材料であり(即ち、同一組成を有する)、他の実施形態では、これらは異なっている。いくつかの実施形態では、第2の主面上の貴金属合金は、Ptと、少なくとも1種類の他の異なる金属(例えば、Ni、Co、Ti、Mn、又はFeの少なくとも1つ)と、を含む。いくつかの実施形態では、白金と第2の主面上の貴金属合金に含まれるすべての他の金属の合計との原子%は、1:20(0.05)〜95:100(0.95)の範囲である。
【0026】
いくつかの実施形態では、第1及び第2のナノスケールの電極触媒層は、独立して、0.1nm〜50nmの範囲の平均平面相当厚を有する。「平面相当厚」は、不均一に分布され得る、及び表面が不均一面であり得る、表面に分布された層(例えば、地表全体に分布した雪の層、又は真空蒸着のプロセスで分布した原子の層など)に関して、層の全質量が表面と同一の突出した面積に及ぶ平面上に均一に広がっていると仮定して計算される厚さを意味する(不均一な特徴及びコンボリューションを無視した場合、表面によって覆われる突出した面積は表面の全表面積以下であることに注意する)。
【0027】
いくつかの実施形態では、第1及び第2のナノスケール電極触媒層は、独立して、最大0.5mg/cm
2(いくつかの実施形態では、最大0.25、又は更には最大0.1mg/cm
2)の触媒金属を含む。いくつかの実施形態では、ナノスケール電極触媒層は、0.15mg/cm
2のPtを含み、0.05mg/cm
2のPtがアノード上に、0.10mg/cm
2のPtがカソード上に分配される。
【0028】
所望により、第1及び第2のナノスケール電極触媒層の少なくとも1つは、例えば、国際公開第2011/139705号(2011年11月10日公開)に記載のようにアニールされてもよく、この開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる。アニールの例示の方法は、走査型レーザーによるものである。
【0029】
いくつかの実施形態では、第1及び第2の両面にPtを有する、本明細書に記載の電気化学電池電極は、第1の面に0よりも大きい第1のPt表面積を有し、第1及び第2のナノスケール電極触媒層は、それぞれPtを含み総Pt含有量を有しており、第1の面のみに存在する場合、総Pt含有量は0よりも大きい第2のPt表面積を有し、第1のPt表面積は、第2のPt表面積よりも少なくとも10(いくつかの実施形態では、少なくとも15、20、又は更には25)%大きい。
【0030】
いくつかの実施形態では、第1及び第2の両面にPtを有する、本明細書に記載の電気化学電池電極は、それぞれPtを含み、第1の面に0よりも大きい第1のPt比活性度を有し、第1及び第2のナノスケール電極触媒層は、総Pt含有量を有しており、第1の面のみに存在する場合、総Pt含有量は0よりも大きい第2のPt比活性度を有し、第1のPt比活性度は、第2のPt比活性度よりも少なくとも10(いくつかの実施形態では、少なくとも15、20、又は更には25)%大きい。
【0031】
いくつかの実施形態では、第1及び第2の両面上にPtを有する、本明細書に記載の電気化学電池電極は、第1のナノスケールの電極触媒層が0よりも大きい第1の絶対活量を有し、第2のナノスケール電極触媒層が0よりも大きい第2の絶対活量を有し、第1の絶対活量は、第2の絶対活量よりも少なくとも10(いくつかの実施形態では、少なくとも15、20、又は更には25)%大きい。
【0032】
いくつかの実施形態では、第1及び第2の両面上にPtを有する、本明細書に記載の電気化学電池電極は、第1のナノスケール電極触媒層が0よりも大きい第1のPt含有量と、0よりも大きい第1のPt表面積を有し、第2のナノスケール電極触媒層が第2のPt含有量を有し、0よりも大きい第2のPt表面積を有し、第1及び第2のPt表面積の合計は、第2のPt表面積よりも少なくとも10(いくつかの実施形態では、少なくとも15、20、又は更には25)%大きい。
【0033】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の電気化学電池電極は第1及び第2の両面上にPtを有し、第1のナノスケール電極触媒層が0よりも大きい第1のPt含有量と、0よりも大きい第1のPt比活性度とを有し、第2のナノスケール電極触媒層が第2のPt含有量と、0よりも大きい第2のPt比活性度とを有し、第1及び第2のPt比活性度の合計は、第2のPt比活性度よりも少なくとも10(いくつかの実施形態では、少なくとも15、20、又は更には25)%大きい。
【0034】
本明細書に記載の電気化学電池電極は、例えば、燃料電池、電解槽、又はフロー電池のアノード電極又はカソード電極として有用である。
【0035】
図2には、例示の燃料電池が示されている。
図2に示される電池10は、第1の流体輸送層(FTL)12と、隣接するアノード14と、を含む。アノード14に隣接するのは、電解質膜16である。カソード18は電解質膜16に隣接して位置しており、第2の流体輸送層19はカソード18に隣接して位置している。FTL 12及び19は、ディフューザ/集電体(DCC)又はガス拡散層(GDL)と呼ばれることもある。動作中、水素が電池10のアノード部分に導入され、第1の流体輸送層12を通過し、アノード14を横切る。アノード14において、水素燃料は、水素イオン(H
+)と電子(e
−)とに分けられる。
【0036】
電解質膜16は、水素イオン、つまり陽子のみに電解質膜16を通過させて、燃料電池10のカソード部分に到達させる。電子は電解質膜16を通過できないが、電流の形態で外部電気回路を流れることができる。この電流は、電動モーターなどの電気負荷17に給電することができ、充電式電池などのエネルギー蓄積装置へと方向付けられることもできる。
【0037】
本明細書に記載の触媒電極は、米国特許第5,879,827号(Debeら)及び同第5,879,828号(Debeら)などに記載の燃料電池に組み込まれた触媒コーティングされた膜(CCM)又は膜電極接合体(MEA)の製造に使用され、これらの開示は、参照することにより、本明細書に組み込まれる。
【0038】
MEAは、燃料電池で使用されてもよい。MEAは、水素燃料電池のようなプロトン交換膜燃料電池の中心要素である。燃料電池は、水素などの燃料の触媒電気化学的酸化及び酸素などの酸化剤の還元によって、使用可能な電気を発生させる電気化学電池である。典型的なMEAは、固体電解質として機能するポリマー電解質膜(PEM)(イオン導電膜(ICM)としても既知である)を含む。PEMの一方の面はアノード電極層と接触し、反対側の面はカソード電極層と接触する。典型的な使用では、プロトンが、水素酸化を介してアノードにおいて形成され、PEMをわたってカソードに輸送されて酸素と反応し、電極を接続する外部回路内に電流を流す。各電極層は、典型的には白金金属を含む電気化学触媒を含む。PEMは、反応ガス間に、耐久性のある無孔の非導電性機械的障壁を形成するが、それでもやはりH+イオン及び水を容易に通過させる。ガス拡散層(GDL)が、アノード及びカソード電極材料の間を行き来するガス輸送を促進して、電流を伝導する。GDLは、多孔質及び導電性の両方であり、典型的には炭素繊維から構成される。またGDLは、流体輸送層(FTL)又は拡散体/集電体(DCC)と呼ばれる場合もある。いくつかの実施形態では、アノード及びカソード電極層をGDLに適用し、結果として生じる触媒コーティングされたGDLでPEMを挟んで、5層MEAを形成する。5層MEAの5層は、アノードGDL、アノード電極層、PEM、カソード電極層、及びカソードGDLの順である。他の実施形態では、アノード及びカソード電極層をPEMのいずれの側にも適用し、結果として生じる触媒コーティングされた膜(CCM)を2つのGDL間に挟んで、5層MEAを形成する。
【0039】
本明細書に記載のCCM又はMEAで使用されるPEMは、任意の好適なポリマー電解質を含んでもよい。例示の有用なポリマー電解質は、典型的に共通の骨格鎖に結合するアニオン性官能基を持ち、これは、典型的にスルホン酸基であるが、カルボン酸基、イミド基、アミド基、又は他の酸性官能基を含んでもよい。例示の有用なポリマー電解質は、典型的には、高度にフッ素化されており、最も典型的にはペルフルオロ化されている。例示の有用な電解質には、テトラフルオロエチレンのコポリマー、及び少なくとも1つのフッ素化された、酸官能性コモノマーが挙げられる。典型的なポリマー電極には、「NAFION」という商品名でDuPont Chemicals(Wilmington,DE)から入手可能なもの、「FLEMION」という商品名でAsahi Glass Co.Ltd.(Tokyo,Japan)から入手可能なものが挙げられる。ポリマー電極は、米国特許第6,624,328号(Guerra)及び同第7,348,088号(Hamrockら)、並びに米国特許出願公開第2004/0116742号(Guerra)に記載のテトラフルオロエチレン(TFE)及びFSO
2−CF
2CF
2CF
2CF
2−O−CF=CF
2のコポリマーであってもよく、これらの開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる。ポリマーは、典型的には、最大1200(いくつかの実施形態では、最大1100、1000、900、800、700、又は更には最大600)の当量(EW)を有する。
【0040】
ポリマーは、任意の好適な方法により膜に形成することができる。ポリマーは、典型的には、懸濁液からキャスティングされる。バーコーティング、スプレーコーティング、スリットコーティング、はけ塗りなど任意の好適なキャスティング法を使用することができる。あるいは、膜は、純粋なポリマーから押出成形のような溶融プロセスにより形成してもよい。形成後、膜は、典型的には少なくとも120℃(いくつかの実施形態では、少なくとも130℃、150℃、又はそれ以上)の温度でアニールしてもよい。膜は、典型的には最大50マイクロメートル(いくつかの実施形態では、最大40マイクロメートル、30マイクロメートル、15マイクロメートル、20マイクロメートル、又は更には最大15マイクロメートル)の厚さを有する。
【0041】
MEAの製造では、GDLをCCMのいずれかの側面に適用することができる。GDLを任意の適切な手段で適用してもよい。好適なGDLには、使用する電極電位において安定なGDLが挙げられる。典型的には、カソードGDLは、織布又は不織布炭素繊維構造の炭素繊維構造である。例示の炭素繊維構造には、例えば、Toray(Japan)(商品名「TORAY」、炭素紙)、Spectracorb(Lawrence,MA)(「SPECTRACARB」、炭素紙)、(St.Louis,MO)(「ZOLTEK」、炭素布)、並びにMitibushi Rayon Co(Japan)、Freudenberg(Germany)、及びBallard(Vancouver,Canada)から入手可能なものが挙げられる。GDLには、様々な材料をコーティング又は含浸させてもよく、炭素粒子コーティング、親水性化処理、及び疎水化処理、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)によるコーティングが挙げられる。
【0042】
使用する際、本明細書に記載のMEAは、典型的には、分配プレートとして既知の、またバイポーラプレート(BPP)又はモノポーラプレートとしても既知の2枚の剛性プレートの間に挟む。GDLと同様に、分配プレートは導電性であって、配置される電極GDLの電位において安定でなくてはならない。分配プレートは、典型的には、炭素複合材、金属、又はめっき金属などの材料で作製される。分配プレートは、反応物質又は製品流体を、典型的には、MEAに面する表面に刻まれたか、フライス処理されたか、成型されたか、又は型打ちされた1つ以上の流体伝達チャネルを介してMEA電極表面に、又はMEA電極表面から分配する。これらのチャネルは、流動フィールド(flow field)と呼ばれることもある。分配プレートは、スタック内の2つの連続したMEAとの間で流体を分配してもよく、片面は空気つまり酸素を第1のMEAのカソードへと移動させ、もう一方の面は、水素を次のMEAのアノードへと移動させるため、用語「バイポーラプレート」が使用される。スタック構造では、バイポーラプレートは、多くの場合、冷却流体を運ぶための内部チャネルを有しており、隣接しているMEAの電極での電気化学プロセスによって生成される過剰な熱を除去する。あるいは、分配プレートは、片面のみにチャネルを有して、その面のMEAの間のみで流体を分配してもよい。この場合、「モノポーラプレート」と呼ばれる。当該技術分野において使用される用語「バイポーラプレート」は、通常、モノポーラプレートも包含する。典型的な燃料電池スタックは、バイポーラプレートと交互にスタックされた複数のMEAを含む。
【0043】
例示的な実施形態
1.第1の主面及び第2の概ね対向する主面を有するナノ構造触媒担体層を含む電気化学電池電極であって、第1の面が、第1の面から離れる方向に突出する担体ウィスカを含むナノ構造要素を含み、担体ウィスカが、その上に第1のナノスケール電極触媒層を有し、第2の面上の第2のナノスケール電極触媒層が貴金属合金を含む、電気化学電池電極。
2.第2のナノスケール電極触媒層の貴金属が、Pt、Ir、Au、Os、Re、Pd、Rh、又はRuの少なくとも1つ(いくつかの実施形態では、Pt、Ir、又はRuの少なくとも1つ)である、実施形態1に記載の電気化学電池電極。
3.第2の主面上の貴金属合金が、少なくとも1種類の金属遷移金属を含む、実施形態1又は2のいずれか1つに記載の電気化学電池電極。
4.第2の主面上の貴金属合金が、Ni、Co、Ti、Mn、又はFeの少なくとも1つを含む、実施形態1又は2のいずれか1つに記載の電気化学電池電極。
5.第2の主面上の貴金属合金が、Ptと、少なくとも1種類の他の異なる金属と、を含む、実施形態1に記載の電気化学電池電極。
6.白金と第2の主面上の貴金属合金に含まれるすべての他の金属の合計との原子%が1:20〜95:100である、実施形態5に記載の電気化学電池電極。
7.前記第1の電極触媒層が貴金属又はその合金の少なくとも1つを含む、実施形態1〜6のいずれか1つに記載の電気化学電池電極。
8.第1の電極触媒層の貴金属が、Pt、Ir、Au、Os、Re、Pd、Rh、又はRuの少なくとも1つである、実施形態7に記載の電気化学電池電極。
9.第1及び第2の電極触媒層の材料が同一である、実施形態1〜8のいずれか1つに記載の電気化学電池電極。
10.第1及び第2の電極触媒層の材料が異なる、実施形態1〜8のいずれか1つに記載の電気化学電池電極。
11.担体層が0.3マイクロメートル〜2マイクロメートルの範囲の平均厚さを有する、実施形態1〜10のいずれか1つに記載の電気化学電池電極。
12.ウィスカが、20nm〜60nmの範囲の平均断面寸法及び0.3マイクロメートル〜3マイクロメートルの範囲の平均長さを有する、実施形態1〜11のいずれか1つに記載の電気化学電池電極。
13.第1及び第2のナノスケール電極触媒層が、独立して、0.1nm〜50nmの範囲の平均平面相当厚を有する、実施形態1〜12のいずれか1つに記載の電気化学電池電極。
14.ウィスカが未転化ペリレンレッドを含む、実施形態1〜13のいずれか1つに記載の電気化学電池電極。
15.ナノ構造要素が第1の材料を含み、第2のナノスケール電極触媒層を有する第2の面も第1の材料を含む、実施形態1〜13のいずれか1つに記載の電気化学電池電極。
16.第1の材料がペリレンレッドである、実施形態1〜15のいずれか1つに記載の電気化学電池電極。
17.第2の面上のペリレンレッドが未転化ペリレンレッドである、実施形態16に記載の電気化学電池電極。
18.第2の面上の第1の材料が、10nm〜200nm(いくつかの実施形態では、25nm〜175nm)の範囲の厚さを有する、実施形態15〜17のいずれか1つに記載の電気化学電池電極。
19.第1の面に0よりも大きい第1のPt表面積を有する、実施形態15〜18のいずれか1つに記載の電気化学電池電極であって、第1及び第2のナノスケール電極触媒層が、それぞれPtを含み総Pt含有量を有しており、第1の面のみに存在する場合、総Pt含有量が0よりも大きい第2のPt表面積を有し、第1のPt表面積が、第2のPt表面積よりも少なくとも10(いくつかの実施形態では、少なくとも15、20、又は更には25)%大きい、電気化学電池電極。
20.第1の面に0よりも大きい第1のPt比活性度を有する、実施形態15〜19のいずれか1つに記載の電気化学電池電極であって、第1及び第2のナノスケール電極触媒層が、それぞれPtを含み総Pt含有量を有しており、第1の面のみに存在する場合、総Pt含有量が0よりも大きい第2のPt比活性度を有し、第1のPt比活性度が、第2のPt比活性度よりも少なくとも10(いくつかの実施形態では、少なくとも15、20、又は更には25)%大きい、電気化学電池電極。
21.第1のナノスケール電極触媒層が0よりも大きい第1の絶対活量を有し、第2のナノスケール電極触媒層が0よりも大きい第2の絶対活量を有し、第1の絶対活量が、第2の絶対活量よりも少なくとも10(いくつかの実施形態では、少なくとも15、20、又は更には25)%大きい、実施形態15〜20のいずれか1つに記載の電気化学電池電極。
22.第1のナノスケール電極触媒層が0よりも大きい第1のPt含有量と、0よりも大きい第1のPt表面積とを有し、第2のナノスケール電極触媒層が第2のPt含有量と、0よりも大きい第2のPt表面積とを有し、第1及び第2のPt表面積の合計が、第2のPt表面積よりも少なくとも10(いくつかの実施形態では、少なくとも15、20、又は更には25)%大きい、実施形態15〜18のいずれか1つに記載の電気化学電池電極。
23.第1のナノスケール電極触媒層が0よりも大きい第1のPt含有量と、0よりも大きい第1のPt比活性度とを有し、第2のナノスケール電極触媒層が第2のPt含有量と、0よりも大きい第2のPt比活性度とを有し、第1及び第2のPt比活性度の合計が、第2のPt比活性度よりも少なくとも10(いくつかの実施形態では、少なくとも15、20、又は更には25)%大きい、実施形態15〜18又は22のいずれか1つに記載の電気化学電池電極。
24.燃料電池用触媒電極である、実施形態1〜23のいずれか1つに記載の電気化学電池電極。
25.触媒がアノード触媒である、実施形態24に記載の電気化学電池電極。
26.触媒がカソード触媒である、実施形態24に記載の電気化学電池電極。
27.実施形態1〜26のいずれか1つに記載の電気化学電池電極を作製する方法であって、
第1の主面及び第2の概ね対向する主面を有するナノ構造触媒担体層を設けることであって、第1の面が、第1の面から離れる方向に突出する担体ウィスカを含むナノ構造要素を含み、担体ウィスカが、その上に第1のナノスケールの電極触媒層を有する、ことと、
第2の面上に貴金属合金をスパッタリングして、その上に第2のナノスケール電極触媒層を設けることとを含む、方法。
【0044】
本発明の利点及び実施形態は、以下の実施例により更に例示されるが、これらの実施例に列挙したその特定の材料及び量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を過度に限定すると解釈されるべきではない。すべての部及びパーセンテージは、特に記載されていない限り、重量に基づく。
【実施例】
【0045】
ナノ構造触媒担体の一般的な調製方法
ポリイミド薄膜として入手したロール品ウェブ(商品名「KAPTON」でE.I.du Pont de Nemours(Wilmington,DE)から入手)を基材として使用し、その上に顔料材料(C.I.顔料レッド149、「PR149」とも呼ばれ、Clariant(Charlotte,NC)から入手)を堆積させた。ポリイミド薄膜の主面は、6マイクロメートル間隔で約3マイクロメートルの高さの頂部を備えるV型機構を有した。この基材をミクロ構造触媒移動基材(MCTS)と呼ぶ。
【0046】
DCマグネトロン平面スパッタリングターゲット及び典型的なArバックグラウンド圧力及び所望のウェブ速度でポリイミド薄膜ウェブがターゲット下を1回通過するとCrが堆積するのに十分な当業者に既知のターゲット出力を使用して、ポリイミド薄膜の主面上に公称100nm厚のCr層をスパッタリングによって堆積させた。次いで、Crでコーティングしたポリイミド薄膜ウェブに顔料材料(「PR149」)を含む昇華源の上を通過させた。1回の通過で所望の量の顔料材料(「PR149」)(例えば、0.022mg/cm
2)(約220nm厚の層)を堆積させるために十分な蒸気圧を生じさせるために、顔料材料(「PR149」)を約500℃の制御温度に加熱した。ウェブ上の顔料材料(「PR149」)の厚さは、昇華源又はウェブ速度のいずれかを変化させることによって制御した。昇華の質量又は厚さ堆積速度は、薄膜の厚さに敏感な光学的方法又は質量に敏感な水晶発振器など当業者に既知の任意の好適な方法で測定できる。
【0047】
次いで、参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第5,039,561号(Debe)及び同第4,812,352号(Debe)に記載のように、熱アニールによって顔料材料(「PR149」)コーティングをナノ構造薄膜(ウィスカを含む)に転化した。これは、平均長0.6マイクロメートルで走査電子顕微鏡(SEM)によって測定した場合、NSTF層が1平方マイクロメートルあたり68ウィスカの平均面積数密度を有するように、所望のウェブ速度で顔料材料(「PR149」)の成膜直後の層を配向結晶質ウィスカを含むナノ構造薄膜(NSTF)に転化するのに十分な温度分布を有する真空に、顔料材料(「PR149」)でコーティングされたウェブを通過させることによって行った。顔料材料(「PR149」)の厚さは、下記の特定の実施例で指定するように様々であった。すべてのサンプルは、同一のウェブ速度でアニール段階を経た。
【0048】
図3A〜3Cは、初期厚がそれぞれ2400オングストローム、3600オングストローム、及び7200オングストロームの顔料材料(「PR149」)層のアニール後にMCTSで成長した様々なNSTFウィスカのSEM断面画像を示している。熱アニールによって配向結晶質ウィスカに転化された顔料材料(「PR149」)の開始時厚さが示されており、下記の対応の実施例にも記載されている。
図3A〜3Cは、アニール後の顔料材料(「PR149」)層の残りの未転化部分も示している。すべてのサンプルは、5フィート/分(1.5メートル/分)の同一速度で同一温度に設定したアニール炉を通過させてアニールした。
【0049】
図3A〜3Cにおいて、残りの顔料材料(「PR149」)の多孔質層は、プリフォームペリレン又は未転化ペリレンで構成される。所定のアニール時間(炉を通過するウェブ速度)では、この未転化層の厚さは、顔料材料(「PR149」)層の開始時量が増加するにつれて増加する。
【0050】
ナノ構造触媒担体ウィスカ(ナノ構造薄膜(NSTF))上でのナノスケール触媒層の一般的なコーティング方法
ナノ構造薄膜(NSTF)触媒層は、(上記に記載のように調製した)NSTFウィスカ上に触媒薄膜をスパッタコーティングすることにより調製した。更に具体的には、約5mTorr(0.66Pa)の典型的なArスパッタガス圧及び5インチ×15インチ(12.7センチメートル×38.1センチメートル)の方形スパッタリングターゲットを使用して、上記のように調製したNSTF基材上にPtCoMn三元合金をマグネトロンスパッタリングによって堆積させた。
【0051】
すべての実施例では、下記のように、膜への移動前に、同一量のPt含有触媒(即ち、組成式Pt
68Co
29Mn
3(原子%)を有するPtCoMn三元合金のうちの0.10mgのPt/cm
2)をNSTFウィスカに堆積させて、触媒コーティングされた膜(CCM)を作製した。触媒は、Pt及びCoMnの単一ターゲット下を複数回通過させてNSTFウィスカ上に堆積させ、所望の厚さの結合2層を堆積させた。DCマグネトロンスパッタリングターゲットの堆積速度は、当業者に既知の標準的な方法で測定した。各マグネトロンスパッタリングターゲットの出力は、ターゲットを通過するごとにNSTF基材上に所望の2層厚さの触媒をもたらすのに十分な動作ウェブ速度において、この要素が所望の堆積速度となるように制御された。2層厚さは、コーティングが表面に均一に広がると仮定して、同一の堆積速度及び時間が完全に平坦な表面に薄膜を堆積させるために使用されるように測定した、堆積した材料の平面相当厚を指す。典型的な2層厚さ(第1の層と次に発生する第2の層との平面相当厚の合計)は、約50オングストローム以下であった。次いで、通過させる回数を選択して、所望のPtの総装填量にした。
【0052】
図3において、残りの顔料材料(「PR149」)の多孔質層は、プリフォームペリレン又は未転化ペリレンで構成される。所定のアニール時間(炉を通過するウェブ速度)では、この未転化層の厚さは、顔料材料(「PR149」)層の開始時量が増加するにつれて増加する。膜に移動させると、この多孔質未転化層は、CCM触媒電極の最上部であった。下記の本発明による実施例では、この未転化層は第2のナノスケール触媒層でコーティングされるが、下記の比較例では、この未転化層に第2のナノスケール触媒は塗布されない。
【0053】
以降のコーティング及び本発明による燃料電池の試験に使用する触媒コーティングされた膜(CCM)の一般的な調製方法
触媒コーティングされた膜(CCM)は、米国特許第5,879,827号(Debeら)に詳細が記載されているプロセスを使用して上記の触媒コーティングされたNSTFウィスカをプロトン交換膜(PEM)の両面に同時に移動させることによって作製され(フルCCM)、片面がアノード側を形成し、反対側の面がCCMのカソード側を形成した。触媒移動は、3M Company(St.Paul,MN)によって製造され、市販されている、公称当量850及び厚さ20マイクロメートルである、ペルフルオロ化スルホン酸膜上でのホットロール積層によって実行した。ホットロール温度は350
oF(177℃)であり、ニップにおいてラミネータロールを結合させる直径3インチ(7.62cm)の水圧シリンダに供給したガス管圧は、150〜180psi(1.03MPa〜1.24MPa)の範囲であった。NSTF触媒コーティングされたMCTSは、13.5cm×13.5cmの正方形に事前に切断し、より大きい正方形のPEMの片面又は両面に挟んだ。片面又は両面に触媒コーティングされたMCTSを有するPEMを2ミル(50マイクロメートル)厚のポリイミド薄膜の間に配置してから、外側を紙でコーティングし、1.2フィート/分(37cm/分)の速度で積層組立体にホットロールラミネータのニップを通過させた。ニップを通過させた直後の組立体がまだ暖かいうちに、ポリイミド及び紙の層を素早く取り外し、カソード触媒側のCrコーティングされたMCTS基材を手でCCMから剥がした。第1のナノスケール電極触媒でコーティングされたウィスカ担体層はPEM面に付着したままであり、CCM全体がまだアノード側のMCTSに付着していた。これにより、CCMのカソード側の外表面にあるウィスカ担体薄膜の未転化端部が露出した。次いで、このように形成したCCMを真空槽内に配置し、CCMの露出した外表面に追加の触媒をスプラッタリングして、下記の特定の実施例でより詳細に説明するように、カソード電極の第2のナノスケール電極触媒層を作製した。使用した真空槽は、米国特許第5,879,827号(Debeら)の
図4Aに概略的に示されており(この開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる)、顔料材料(「PR149」)でコーティングされたMCTS基材をドラムに載置し、次いで、基材が、それぞれ所望の元素組成を有する単一又は連続DCマグネトロンスパッタリングターゲット上を通過するようにドラムを回転させる。これらの実施例では、この触媒層は、単一の合金ターゲットからPt
75Co
22Mn
3の組成及びPt装填量0.05mg/cm
2で堆積した。
【0054】
比較例は、CCMの外側表面に更なる触媒を塗布せずに、フルCCMを作製することによって調製した。
【0055】
CCMの一般的な試験方法
上記のように作製したCCMをH
2/空気燃料電池内で試験した。適切なガス拡散層(GDL)を使用してフルCCMを取り付けて、4連サーペンタイン流場を有する、50cm
2試験用電池(Fuel Cell Technologies(Albuquerque,NM)から入手)でフルMEAを直接作製した。次いで、電圧(動電位又は定電位)又は電流(動電流又は静電流)負荷制御下でMEAがブレークイン状態になるようにH
2及び空気流の速度、圧力、相対湿度、並びに電池温度を制御して、当業者に周知の試験プロトコルを使用して分極曲線を得た。触媒カソードの特性も、酸素還元反応(ORR)の900mVにおける絶対活量、面積比活性度、及び質量比活性度、電極の表面積効果比(SEF)、並びに水素空気下0.813ボルトにおける動電位電流密度を得るための当業者に既知の試験プロトコルを使用して測定した。
【0056】
試験対象CCMでは、使用したアノード触媒は、0.05mgのPt/cm
2装填量を有する、ロールコーティングされた触媒Pt
68Co
29Mn
3の単一ロットから使用した。使用した膜は同一ロット番号のものであり、アノード及びカソードのGDLは同一ロット番号のものであった。すべてのサンプルは、同一試験電池内の同一試験ステーションで試験した。当業者には、これらの要素が燃料電池の性能に影響し得ることは既知である。燃料電池試験は、起動調整、高速動電位走査(PDS曲線)、低速動電流走査(HCT曲線)、酸素下900mVでのORR反応、H
upd表面積、様々な温度及び相対湿度下での定常状態性能、並びに様々な温度及び相対湿度下での一時的パワーアップ(0.02〜1A/cm
2ステップ)を含んだ。
【0057】
実施例1〜7及び比較例A〜D
上記のナノ構造触媒担体の一般的な調製方法の一般的なプロセスに従って、実施例1〜7及び比較例A〜Dのサンプルを調製した。比較例Dの担体は、3フィート/分(約0.9メートル/分)の速度でアニールした。顔料材料(「PR149」)コーティングの初期厚は、表1(下記)にまとめるように様々であった。次いで、上記のナノ構造触媒担体ウィスカ(ナノ構造薄膜(NSTF))上でのナノスケール触媒層の一般的なコーティング方法に従って、ウィスカ(即ち、NSTFウィスカ)を含むナノ構造触媒担体の第1の面をナノスケール触媒層でコーティングした。実施例1〜7及び比較例A〜Dのすべてについて、同量のPtを含有する触媒(即ち、組成式Pt
68Co
29Mn
3(原子%)を有するPtCoMn三元合金のうちの0.10mgのPt/cm
2)をウィスカに堆積させた。次いで、上記のように20マイクロメートル厚のPEM(3M Company(St.Paul,MN)から市販)の片面上に触媒コーティングされた基材を移動して、実施例1〜7及び比較例A〜Dのそれぞれに対してCCMを形成した。CCMでは、使用したアノード触媒は、0.05mgのPt/cm
2装填量を有するロールコーティングされた触媒Pt
68Co
29Mn
3の単一ロットから使用した。比較例A〜DのCCMには、ナノスケール触媒層を更に追加しなかった。実施例1〜7のCCMは、カソード側のナノスケール触媒層の追加層でコーティングした。実施例1〜7のサンプルすべてでは、単一の合金ターゲットからPt
75Co
22Mn
3の組成及びPt装填量0.05mg/cm
2を使用して、(カソード側に)第2のナノスケール触媒層を堆積させた。次いで、上記のCCM試験方法を使用して、実施例1〜7及び比較例A〜DのCCMを試験した。実施例1〜7及び比較例A〜Dの特定の詳細を下記の表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
表2(下記)は、水素/空気下0.813ボルトにおける動電位電流密度(PDS)、電極の表面積効果比(SEF)、酸素還元反応(ORR)の900mVにおける絶対活量、面積比活性度、及び質量比活性度など、実施例1〜7及び比較例A〜Dの様々な試験データをまとめたものである。
【0060】
【表2】
【0061】
表2(上記)は、各実施例タイプについて、0.813ボルトにおける動電位分極走査の動的電流密度Jが対応する比較例を超えたことを示している。つまり、実施例1、2、及び3は、比較例Aよりも大きい0.813ボルトにおける動的電流密度を示し、実施例4及び5の平均は、比較例Bの平均よりも大きい動的電流密度を示し、実施例6及び7は、比較例C、更には、ほぼ同一の顔料材料(「PR149」)の開始時厚さ、同一の総Pt量を有するが、第2のナノスケール触媒層は含まない比較例Dよりも大きい動的電流密度を示した。
【0062】
表2(上記)はまた、各実施例タイプについて、第2のナノスケール電極触媒層の形成によってPt表面積が増加したことを示した。つまり、実施例1、2、及び3は、比較例Aよりも平均して高いSEFを示し、実施例4及び5は、比較例Bよりも高いSEFを示し、実施例6及び7は、比較例C、更には、ほぼ同一の顔料材料(「PR149」)の開始時厚さ、同量のPtを有するが、第2のナノスケール触媒層は含まない比較例Dよりも高いSEFを示した。
【0063】
表2(上記)はまた、各実施例タイプについて、第2のナノスケール電極触媒層を形成したことにより、900mVにおけるORR絶対活量が向上したことを示す。つまり、実施例1、2、及び3は、比較例Aよりも平均して高い絶対活量を示し、実施例4及び5は、比較例Bよりも高い絶対活量を示し、実施例6及び7は、比較例C、更には、ほぼ同一の顔料材料(「PR149」)の開始時厚さ、同一の総Pt量を有するが、第2のナノスケール触媒層は含まない比較例Dよりも高い絶対活量を示した。
【0064】
表2(上記)はまた、各実施例タイプについて、第2のナノスケール電極触媒層を形成したことにより、900mVにおけるORR面積比活性度が向上したことを示した。つまり、実施例1、2、及び3は、比較例Aよりも平均して高い面積比活性度を示し、実施例4及び5は、比較例Bよりも高い面積比活性度を示し、実施例6及び7は、比較例C、更には、ほぼ同一の顔料材料(「PR149」)の開始時厚さ、同一の総Pt量を有するが、第2のナノスケール触媒層は含まない比較例Dよりも高い面積比活性度を示した。
【0065】
最後に、表2(上記)は、実施例6及び7の900mVにおけるORR質量比活性度が、平均して比較例Cよりも高く、ほぼ同一の顔料材料(「PR149」)の開始時厚さ、同一の総Pt量を有するが、第2のナノスケール触媒層は含まない比較例Dよりも著しく高いことを示す。
【0066】
図4は、電池温度75℃、露点70℃、水素及び空気の周囲出口圧力、並びにアノード及びカソードのそれぞれ800/1800sccmの一定流速という条件下で50cm
2のMEAから取得した実施例1〜7及び比較例A〜Dの動電位曲線(PDS)である。一定電圧分極走査は、0.85Vから0.25Vまで行い、0.05Vずつ段階的に増加させて、1段階10秒間の滞留時間で0.85Vまで戻った。
【0067】
図5は、50cm
2のMEAから取得した実施例1〜7及び比較例A〜Dの動電流曲線(GDS)である。このときの条件は、電池温度80℃、露点68℃、水素及び空気の絶対出口圧力150kPa、アノード及びカソードでのそれぞれのH
2/空気の対比流速2/2.5である。一定電流分極走査は、2.0A/cm
2から0.02A/cm
2まで、10進ごとに10電流段階で増加させ、1段階120秒の滞留時間で段階的に行った。
図5は、実施例6及び7が、動電流走査による燃料電池試験で最良の高温/乾燥性能を有することを示す。
【0068】
図6は、90℃における相対湿度に応じた、実施例1〜7及び比較例A〜Dの動電流電池電圧反応である。
【0069】
本開示の範囲及び趣旨から外れることなく、本発明の予測可能な修正及び変更が当業者には自明であろう。本発明は、説明を目的として本出願に記載される各実施形態に限定されるべきものではない。
本発明の実施態様の一部を以下の項目[1]−[16]に記載する。
[1]
第1の主面及び第2の概ね対向する主面を有するナノ構造触媒担体層を含む電気化学電池電極であって、前記第1の面が、前記第1の面から離れる方向に突出する担体ウィスカを含むナノ構造要素を含み、前記担体ウィスカが、その上に第1のナノスケール電極触媒層を有し、前記第2の面上の第2のナノスケール電極触媒層が貴金属合金を含む、電気化学電池電極。
[2]
前記第2のナノスケール電極触媒層の貴金属が、Pt、Ir、Au、Os、Re、Pd、Rh、又はRuの少なくとも1つである、項目1に記載の電気化学電池電極。
[3]
前記第2の主面上の貴金属合金が、少なくとも1種類の金属遷移金属を含む、項目1又は2のいずれか一項に記載の電気化学電池電極。
[4]
前記第2の主面上の貴金属合金が、Ni、Co、Ti、Mn、又はFeの少なくとも1つを含む、項目1又は2のいずれか一項に記載の電気化学電池電極。
[5]
前記担体層が0.3マイクロメートル〜2マイクロメートルの範囲の平均厚さを有する、項目1〜4のいずれか一項に記載の電気化学電池電極。
[6]
前記ウィスカが、20nm〜60nmの範囲の平均断面寸法及び0.3マイクロメートル〜3マイクロメートルの範囲の平均長さを有する、項目1〜5のいずれか一項に記載の電気化学電池電極。
[7]
前記第1及び第2のナノスケール電極触媒層が、独立して、0.1nm〜50nmの範囲の平均平面相当厚を有する、項目1〜6のいずれか一項に記載の電気化学電池電極。
[8]
前記ナノ構造要素が第1の材料を含み、前記第2のナノスケール電極触媒層を有する前記第2の面も前記第1の材料を含む、項目1〜7のいずれか一項に記載の電気化学電池電極。
[9]
前記第2の面上の前記第1の材料が、10nm〜200nmの範囲の厚さを有する、項目8に記載の電気化学電池電極。
[10]
前記第1の面に0よりも大きい第1のPt表面積を有する、項目8又は9のいずれか一項に記載の電気化学電池電極であって、前記第1及び第2のナノスケール電極触媒層がそれぞれPtを含み総Pt含有量を有しており、前記第1の面上にちょうどに存在する場合、前記総Pt含有量が0よりも大きい第2のPt表面積を有し、前記第1のPt表面積が前記第2のPt表面積よりも少なくとも10%大きい、電気化学電池電極。
[11]
前記第1の面に0よりも大きい第1のPt比活性度を有する、項目8〜10のいずれか一項に記載の電気化学電池電極であって、前記第1及び第2のナノスケール電極触媒層がそれぞれPtを含み総Pt含有量を有しており、前記第1の面のみに存在する場合、前記総Pt含有量が0よりも大きい第2のPt比活性度を有し、前記第1のPt比活性度が、前記第2のPt比活性度よりも少なくとも10%大きい、電気化学電池電極。
[12]
前記第1のナノスケール電極触媒層が0よりも大きい第1の絶対活量を有し、前記第2のナノスケール電極触媒層が0よりも大きい第2の絶対活量を有し、前記第1の絶対活量が、前記第2の絶対活量よりも少なくとも10%大きい、項目8〜11のいずれか一項に記載の電気化学電池電極。
[13]
前記第1のナノスケール電極触媒層が0よりも大きい第1のPt含有量と、0よりも大きい第1のPt表面積とを有し、前記第2のナノスケール電極触媒層が第2のPt含有量と、0よりも大きい第2のPt表面積とを有し、前記第1及び第2のPt表面積の合計が、前記第2のPt表面積よりも少なくとも10%大きい、項目8又は9のいずれか一項に記載の電気化学電池電極。
[14]
前記第1のナノスケール電極触媒層が0よりも大きい第1のPt含有量と、0よりも大きい第1のPt比活性度とを有し、前記第2のナノスケール電極触媒層が第2のPt含有量と、0よりも大きい第2のPt比活性度とを有し、前記第1及び第2のPt比活性度の合計が、前記第2のPt比活性度よりも少なくとも10%大きい、項目8、9、又は13のいずれか一項に記載の電気化学電池電極。
[15]
燃料電池用触媒電極である、項目1〜14のいずれか一項に記載の電気化学電池電極。
[16]
項目1〜15のいずれか一項に記載の電気化学電池電極を作製する方法であって、
第1の主面及び第2の概ね対向する主面を有するナノ構造触媒担体層を設けることであって、前記第1の面が、前記第1の面から離れる方向に突出する担体ウィスカを含むナノ構造要素を含み、前記担体ウィスカが、その上に第1のナノスケールの電極触媒層を有する、ことと、
前記第2の面上に貴金属合金をスパッタリングして、その上に第2のナノスケール電極触媒層を設けることと
を含む、方法。