特許第6126143号(P6126143)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6126143
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】描画経路補正機能を備えた数値制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/4068 20060101AFI20170424BHJP
   G05B 19/4063 20060101ALI20170424BHJP
   G05B 19/409 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   G05B19/4068
   G05B19/4063 L
   G05B19/409 B
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-8930(P2015-8930)
(22)【出願日】2015年1月20日
(65)【公開番号】特開2016-134036(P2016-134036A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2015年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】村川 和彦
【審査官】 臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−311612(JP,A)
【文献】 特開平05−011830(JP,A)
【文献】 特開平06−059717(JP,A)
【文献】 特開平09−016238(JP,A)
【文献】 特開2013−250636(JP,A)
【文献】 特開平07−036514(JP,A)
【文献】 特開平06−124112(JP,A)
【文献】 特開平05−073126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/404−19/4068
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工プログラムに基づいた未加工経路を描画するチェック描画機能、および、前記加工プログラムに基づいた加工制御中の加工軌跡を描画する加工中描画機能を備えた数値制御装置において、
前記加工プログラムが指令する軸位置に対する実際に加工が行われる軸位置とのずらし量を示す描画軌跡補正ベクトルを算出する軌跡補正ベクトル算出手段と、
前記描画軌跡補正ベクトルに基づいて、前記加工中描画機能が描画する加工軌跡の描画位置を補正した加工軌跡を作成する描画軌跡作成手段と、
前記未加工経路、および、前記補正された加工軌跡を同一画面に表示する表示手段と、
を備えたことを特徴とする数値制御装置。
【請求項2】
加工プログラムに基づいた未加工経路を描画するチェック描画機能、および、前記加工プログラムに基づいた加工制御中の加工軌跡を描画する加工中描画機能を備えた数値制御装置において、
前記加工プログラムが指令する軸位置に対する実際に加工が行われる軸位置とのずらし量を示す描画軌跡補正ベクトルを算出する軌跡補正ベクトル算出手段と、
前記描画軌跡補正ベクトルに基づいて、前記チェック描画機能が描画する未加工経路の描画位置を補正した未加工経路を作成する描画軌跡作成手段と、
前記補正された未加工経路、および、前記加工軌跡を同一画面に表示する表示手段と、
を備えたことを特徴とする数値制御装置。
【請求項3】
操作者による手動操作に基づいて軸の移動を指令する手動介入量作成手段を更に備え、
前記軌跡補正ベクトル算出手段は、前記手動介入量作成手段による軸の移動の前後の軸位置に基づいて前記描画軌跡補正ベクトルを求める、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の数値制御装置。
【請求項4】
前記加工プログラムに含まれる前記チェック描画機能の有効/無効を切り換えるマクロ指令基づいて、前記チェック描画機能の有効/無効を判定する描画無効判定手段を更に備え、
前記軌跡補正ベクトル算出手段は、前記チェック描画機能が無効と判定されている期間の前後の軸位置に基づいて前記描画軌跡補正ベクトルを求める、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の数値制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数値制御装置に関し、特に加工時に発生した加工経路のずれを補正して描画する描画経路補正機能を備えた数値制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に数値制御装置には、加工前にNCプログラムの確認を行うチェック描画機能と、加工中の位置をプロットすることにより加工軌跡を表示する加工中描画機能が備わっている。さらに、加工前に行ったチェック描画経路と加工中描画の軌跡を重ねて表示させることにより、加工の進捗状況の確認を可能にしている(例えば、特許文献1)。
【0003】
従来技術において、例えばワイヤ放電加工における未加工経路と加工済経路を重ねて表示することにより加工の進捗の確認を可能とした例を図9に示す。図に示すように、未加工部経路は、加工前に加工プログラムの確認も含めて表示される。このような描画表示はチェック描画と呼ばれる。また、加工済経路は、加工中の時々刻々の現在位置を点列で表示することにより軌跡が実現される。このような描画表示は加工中描画と呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−073126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ワークの加工前処理、工作機械への設置誤差、加工開始位置のプログラムミスなどにより、加工プログラムの指令位置からずらした位置での加工が必要になった場合に、チェック描画経路と加工中描画の軌跡が重ならず、加工の進捗を正確に判断できないという問題があった。
【0006】
この問題について、図10のワイヤ放電加工における多数個取りの加工プログラムを例として説明する。図11は、図10の加工プログラムのチェック描画である。
例えば、図10図11に示される多数個取りの加工では、ワークをワイヤ放電加工機に設置する前に、各加工の開始位置にワイヤ結線用の開始穴が予め施されている。しかしながら、ワークをワイヤ放電加工機に設置した際のワーク設置ズレや、加工プログラムのミスや予め施された加工開始穴の穴位置や穴径のミスにより、図12に示すように、プログラムで指令された開始位置と各加工の開始穴位置が一致しない場合がある。
【0007】
このような場合、加工開始穴の穴位置を測定し、それに従って加工プログラムを修正する必要があるが、この修正作業は非常に大きな手間を要するため、しばしば加工プログラムの修正を行うことなく、そのまま加工が行われる。
【0008】
図12の例で説明すると、このような状況において加工を行うと、2つ目の加工開始穴に位置決めしたときに開始穴が一致していないため、ワイヤの結線が失敗して自動運転がワーニング停止する。操作者は、手動操作にて軸を開始穴の中央付近まで移動させて、中断ブロックであるワイヤ結線指令から自動運転を再開させる。そして、ワイヤの結線が行われ、2つ目の加工が実行される。
【0009】
しかしながら、図13に示すように、こうした加工では手動操作で移動させた分だけ加工中描画の軌跡がチェック描画の経路とずれてしまう。このようなずれた描画がされると、複雑な加工形状の場合において未加工経路と加工済経路の関係が分かり難くなるため、描画のみから加工の進捗を判断することが困難となり、操作者が予測加工時間や予測加工距離と実行済加工時間や実行済加工距離の関係からおおよその加工の進捗を判断しなければならなくなる、という課題があった。
【0010】
そこで本発明の目的は、加工時に発生した加工経路のずれを補正して描画する描画経路補正機能を備えた数値制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の請求項1に係る発明は、加工プログラムに基づいた未加工経路を描画するチェック描画機能、および、前記加工プログラムに基づいた加工制御中の加工軌跡を描画する加工中描画機能を備えた数値制御装置において、前記加工プログラムが指令する軸位置に対する実際に加工が行われる軸位置とのずらし量を示す描画軌跡補正ベクトルを算出する軌跡補正ベクトル算出手段と、前記描画軌跡補正ベクトルに基づいて、前記加工中描画機能が描画する加工軌跡の描画位置を補正した加工軌跡を作成する描画軌跡作成手段と、前記未加工経路、および、前記補正された加工軌跡を同一画面に表示する表示手段と、を備えたことを特徴とする数値制御装置である。
【0012】
本願の請求項2に係る発明は、加工プログラムに基づいた未加工経路を描画するチェック描画機能、および、前記加工プログラムに基づいた加工制御中の加工軌跡を描画する加工中描画機能を備えた数値制御装置において、前記加工プログラムが指令する軸位置に対する実際に加工が行われる軸位置とのずらし量を示す描画軌跡補正ベクトルを算出する軌跡補正ベクトル算出手段と、前記描画軌跡補正ベクトルに基づいて、前記チェック描画機能が描画する未加工経路の描画位置を補正した未加工経路を作成する描画軌跡作成手段と、前記補正された未加工経路、および、前記加工軌跡を同一画面に表示する表示手段と、を備えたことを特徴とする数値制御装置である。
【0013】
本願の請求項3に係る発明は、操作者による手動操作に基づいて軸の移動を指令する手動介入量作成手段を更に備え、前記軌跡補正ベクトル算出手段は、前記手動介入量作成手段による軸の移動の前後の軸位置に基づいて前記描画軌跡補正ベクトルを求める、ことを特徴とする請求項1または2に記載の数値制御装置である。
【0014】
本願の請求項4に係る発明は、前記加工プログラムに含まれる前記チェック描画機能の有効/無効を切り換えるマクロ指令基づいて、前記チェック描画機能の有効/無効を判定する描画無効判定手段を更に備え、前記軌跡補正ベクトル算出手段は、前記チェック描画機能が無効と判定されている期間の前後の軸位置に基づいて前記描画軌跡補正ベクトルを求める、ことを特徴とする請求項1または2に記載の数値制御装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、加工中描画の軌跡が加工前に行ったチェック描画経路と完全に重なるため、正確な進捗状況の確認が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の数値制御装置の要部ブロック図である。
図2】本発明の第1の実施形態における数値制御装置の機能ブロック図である。
図3】本発明の第1の実施形態における未加工経路と加工軌跡の表示例である。
図4】本発明の第1の実施形態における数値制御装置上で実行される処理のフローチャートである。
図5】本発明の第1の実施形態における未加工経路と加工軌跡の他の表示例である。
図6】本発明の第2の実施形態において用いられるマクロ指令の例である。
図7】本発明の第2の実施形態における数値制御装置の機能ブロック図である。
図8】本発明の第2の実施形態における数値制御装置上で実行される処理のフローチャートである。
図9】従来技術におけるワイヤ放電加工の未加工経路と加工軌跡の表示例である。
図10】ワイヤ放電加工における多数個取りの加工プログラムの例である。
図11】多数個取りの加工プログラムのチェック描画の表示例である。
図12】プログラムで指令された加工開始位置とワークに設けられた加工開始穴位置のずれについて説明する図である。
図13】未加工経路と加工軌跡の表示のずれについて説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。最初に本発明の技術的概要を説明する。
本発明では、加工時に発生した加工プログラムに対するずらし量(描画軌跡補正ベクトル)を求め、加工中描画の軌跡を描画軌跡補正ベクトル分の補正を行って表示する。または、加工前に行ったチェック描画軌跡を補正して表示する。
【0018】
加工時のずらし量(描画軌跡補正ベクトル)は、次のようにして求めることができる。
●手法1:各加工パートの開始位置において、自動運転を停止して手動操作で軸を移動した場合は、自動運転休止時の位置と自動運転の再スタート時の位置の差からずらし量を求める。
●手法2:開始位置サーチ機能(自動で開始位置を調整するマクロプログラム)により、自動運転中に加工位置が調整される場合は、マクロプログラムの開始時と終了時の位置の差からずらし量を求める。
【0019】
また、本発明による各描画に対する補正は、加工全体だけでなく、加工のパート毎にも有効にするため、加工中にずらし量が無効になる指令(ワーク座標系プリセットや機械座標系ベースでの位置決めなど)が行われた場合は、ずらし量をクリアし、加工中描画の軌跡の補正をキャンセルする。
【0020】
図1は、本発明の数値制御装置の概略ブロック図である。
数値制御装置1は、数値制御装置1全体を制御するCPU11を有し、該CPU11には、バスを介してROM12、RAM13、軸制御回路14、PMC15、表示器/MDIユニット16、サーボアンプ17が接続されている。
【0021】
ROM12には、数値制御装置1全体を制御するためのシステムプログラムが記憶されており、RAM13には、数値制御装置1が工作機械30を制御するために用いる加工プログラムなどが記憶されている。加工プログラムは、普段は不揮発性メモリ(図示せず)に記憶されており、実行時に不揮発性メモリから読み出されてRAM13へ記憶される。そして、CPU11はRAM13から加工プログラムを読み出しながら順次実行して軸制御回路14を制御し、サーボアンプ17を介して工作機械30を制御する。
また、PMC(プログラマブル・マシン・コントローラ)15は、数値制御装置1に内蔵されたシーケンスプログラムで工作機械側の補助装置等を制御する。
【0022】
表示器/MDIユニット16は、数値制御装置1の状態情報や加工状況に係る情報、チェック描画機能により描画された未加工経路、加工中描画機能により描画された加工軌跡を表示する表示装置21、操作者の操作を受け付けるキーボード22、及びCPU11による指令に基づいて上述した各情報を表示する画面情報を生成し、表示装置21に表示する制御を行うグラフィック制御回路23を備える。
図1に示す構成を備えた数値制御装置1上に実装される描画経路補正機能の実施形態について以下で詳述する。
【0023】
<第1の実施形態>
第1の実施形態では、操作者の手動操作により軸を移動させた場合における加工軌跡の描画経路補正の実施形態を説明する。図2は、本実施形態における数値制御装置1の機能ブロック図である。
本実施形態の数値制御装置1は制御部100を備える。制御部100は、CPU11がシステムプログラムを実行することにより数値制御装置1上に実現される機能手段であり、サブ機能手段として、移動指令作成手段110、座標更新手段120、描画軌跡作成手段130、手動介入量作成手段140、軌跡補正ベクトル算出手段150を備えている。
【0024】
移動指令作成手段110は、加工プログラムから読み出されたプログラム指令に基づいて移動指令を作成し、軸制御回路14、座標更新手段120へと出力する。
座標更新手段120は、表示装置21に表示される軸座標を管理する機能手段であり、移動指令作成手段110から出力された移動指令に基づいて現在の軸座標値を更新し、描画軌跡作成手段130、軌跡補正ベクトル算出手段150へと出力する。
描画軌跡作成手段130は、入力された軸の座標値に従って軸の描画軌跡(加工軌跡)に係るデータを作成し、グラフィック制御回路23へと出力する。
【0025】
手動介入量作成手段140は、操作者が操作盤などを手動で操作した際に発生する入力信号を受けて手動操作による軸の移動量に係る指令を作成し、軸制御回路14、軌跡補正ベクトル算出手段150へと出力する。
軌跡補正ベクトル算出手段150は、ワイヤの結線失敗による自動運転休止時の軸位置と、手動で軸を開始穴の中心付近へ移動して、自動運転を再スタートした軸位置とを記憶し、該記憶した軸位置に基づいて後述する描画軌跡補正ベクトルを算出し、算出された描画軌跡補正ベクトルに基づいて、座標更新手段120から描画軌跡作成手段130へ出力される軸座標値に補正を加える。
【0026】
以下では、描画軌跡補正ベクトルについて図3を用いて説明する。
図3は、1つのワークから3つ加工部材を取得する多数個取り加工を行う際において、加工プログラムが指令する加工開始位置に対して、ワークに設けられた2つ目、および3つ目の加工開始穴がずれている場合における、本実施形態の数値制御装置1の表示装置21上に表示される未加工経路と加工軌跡の表示例を示している。
【0027】
本実施形態の数値制御装置1により加工プログラムの自動運転を実行してワークに対する加工を行う場合、2つ目の加工開始穴に位置決めしたときに開始穴が一致していないため、ワイヤの結線が失敗して自動運転がワーニング停止する。その後、操作者が操作盤などを手動操作して軸を開始穴の中央付近まで移動させて、中断ブロックであるワイヤ結線指令から自動運転を再開させる。
【0028】
この時、軌跡補正ベクトル算出手段150は、ワイヤの結線失敗による自動運転休止時の軸位置、すなわち手動操作を始める前の軸位置と、手動で軸を開始穴の中心付近へ移動して、自動運転を再スタートした軸位置、即ち手動操作が終了した後の軸位置との差から、開始穴のズレ量と方向(描画軌跡補正ベクトル)を求める。そして、加工中描画の軌跡を描画するときに、描画軌跡補正ベクトルを座標更新手段120が出力する座標値に加算補正し、該補正された座標値に基づいて描画軌跡作成手段130が描画軌跡(加工軌跡)に係るデータを作成する。これにより、チェック描画の経路と加工中描画の軌跡を一致させることができる。
【0029】
また、2つ目の加工が終了し、3つ目の加工開始位置への位置決めする際は、プログラム指令と実加工の経路ズレが一旦解消されるため、プログラム指令と実加工経路のズレが解消される指令が実行された場合は、軌跡補正ベクトル算出手段150は描画軌跡補正ベクトルをクリアする。このようにすることで、多数個取り加工において行われる各加工の段階で補正量が蓄積されることなく加工軌跡が未加工経路の位置に補正されて表示される。なお、ズレが解消される指令には、ワーク座標系設定、機械座標系位置決め、相対座標系位置決めなどがある。
【0030】
図4は、本実施形態における数値制御装置1上で実行される自動運転処理のフローチャートである。
●[ステップSA01]操作者により、中断後の再スタートが指令されているか否かを判定する。中断後の再スタートである場合にはステップSA02へ進み、そうでない場合にはステップSA03へ進む。
●[ステップSA02]軌跡補正ベクトル算出手段150が、記憶してある手動操作により移動した軸位置に基づいて、描画軌跡補正ベクトルを計算する。
【0031】
●[ステップSA03]自動運転休止要求が指令されているか否かを判定する。自動運転休止要求が指令されている場合にはステップSA04へ進み、そうでない場合にはステップSA05へ進む。
●[ステップSA04]軌跡補正ベクトル算出手段150が、現在の軸位置を保存して自動運転を休止する。
【0032】
●[ステップSA05]加工プログラムから読み込まれたプログラム指令が、描画軌跡補正をキャンセルする指令であるか否かを判定する。描画軌跡補正をキャンセルする指令である場合にはステップSA06へ進み、そうでない場合にはステップSA07へ進む。
●[ステップSA06]描画軌跡補正ベクトルをクリアする。
【0033】
●[ステップSA07]補間周期毎の移動量を計算する補間処理を実行する。
●[ステップSA08]座標更新手段120が、ステップSA07の処理で計算された補間処理の結果データに基づいて座標値を更新する。
●[ステップSA09]軸制御回路14が、ステップSA07の処理で計算された補間処理の結果データ基づいて、サーボアンプ17を介してサーボモータに移動量を出力する。
●[ステップSA10]描画軌跡作成手段130が、入力された軸の座標値(出力座標値+描画軌跡補正ベクトル)に従って軸の描画軌跡(加工軌跡)に係るデータを作成し、グラフィック制御回路23へ出力することで加工軌跡の描画を行い、ステップSA03へ戻る。
【0034】
なお、上記では加工中描画の軌跡を描画軌跡補正ベクトルに基づいて補正して描画する例を説明したが、チェック描画の2つ目の経路の表示位置を補正するように構成してもよい。この場合、図5に示すように、自動運転再開時以降に実行される加工プログラムを解析して得られる未加工経路に対して描画軌跡補正ベクトルに基づいて(加工軌跡に対する補正とは逆の方向に)補正を行い再描画するようにすればよい。
【0035】
また、本実施形態では、各加工を開始する際の開始穴のズレに応じた描画軌跡の補正をする例について説明しているが、これに限らず自動運転中に発生するあらゆる手動介入によるズレ(手動介入前後の軸位置の移動)を検出して描画軌跡の補正を行うようにすることも可能である。
以上により、チェック描画経路と加工中の軌跡が完全に一致するため、加工の進捗を正確に判断することが可能になる。
【0036】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、操作者の手動操作による軸位置の移動に応じて描画軌跡補正ベクトルを算出する実施形態を説明したが、本実施形態では、ワイヤの結線指令においてワイヤの結線が失敗した場合に、自動で開始穴をサーチする指令に対応した実施形態を示す。
【0037】
図6は、ワイヤの結線指令においてワイヤの結線が失敗した場合に、自動で開始穴をサーチしてワイヤを結線し、さらに開始穴の中心位置へワイヤを位置決めするマクロ指令の例である。マクロ中の移動指令は、マクロ終了時の終了位置が不定であるため、チェック描画に反映されないように、チェック描画無効指令(M81)とチェック描画無効解除指令(M82)でくくられている。本実施形態では、加工時においてチェック描画無効時の軸位置の座標とチェック描画無効解除時の軸位置の座標から描画軌跡補正ベクトルを求め、加工中描画の軌跡を補正する。
【0038】
図7は、本実施形態における数値制御装置1の機能ブロック図である。本実施形態の数値制御装置1は、手動介入量作成手段140に換えて描画無効判定手段160を備えている点で第1の実施形態と異なる。
【0039】
描画無効判定手段160は、加工プログラムから読み出されたプログラム指令が、チェック描画無効指令であるか判定し、チェック描画無効指令である場合に、軌跡補正ベクトル算出手段150に対して軸位置を記憶するように指令する。また、加工プログラムから読み出されたプログラム指令が、チェック描画無効解除指令であるか判定し、チェック描画無効解除指令である場合に、軌跡補正ベクトル算出手段150に対して軸位置を記憶すると共に描画軌跡補正ベクトルを算出するように指令する。
【0040】
軌跡補正ベクトル算出手段150は、描画無効判定手段160からの指令を受けて、チェック描画無効開始時、およびチェック描画無効解除時における軸位置を記憶すると共に、チェック描画無効開始時の軸位置と、穴サーチ指令により軸を開始穴の中心付近へ移動して、チェック描画無効解除時の軸位置とに基づいて描画軌跡補正ベクトルを算出し、算出された描画軌跡補正ベクトルに基づいて、座標更新手段120から描画軌跡作成手段130へ出力される軸座標値に補正を加える。その他の構成については、第1の実施形態と同様である。
【0041】
図8は、本実施形態における数値制御装置1上で実行される自動運転処理のフローチャートである。
●[ステップSB01]前回読み出した加工プログラムのブロックに関する処理が終了しているか否かを判定する。前回読み出した加工プログラムのブロックの処理が終了している場合にはステップSB02へ進み、そうでない場合にはステップSB09へ進む。
●[ステップSB02]加工プログラムから新規ブロックを読み出す。
【0042】
●[ステップSB03]加工プログラムから読み出されたブロックのプログラム指令が、チェック描画無効指令か否かを判定する。チェック描画無効指令である場合には、ステップSB04へ進み、そうでない場合にはステップSB05へ進む。
●[ステップSB04]軌跡補正ベクトル算出手段150が、現在の軸位置を保存する。
【0043】
●[ステップSB05]加工プログラムから読み出されたブロックのプログラム指令が、チェック描画無効解除指令か否かを判定する。チェック描画無効解除指令である場合には、ステップSB06へ進み、そうでない場合にはステップSB07へ進む。
●[ステップSB06]軌跡補正ベクトル算出手段150が、記憶してある描画無効開始時の軸位置と現在の軸位置とに基づいて、描画軌跡補正ベクトルを計算する。
【0044】
●[ステップSB07]加工プログラムから読み込まれたプログラム指令が、描画軌跡補正をキャンセルする指令であるか否かを判定する。描画軌跡補正をキャンセルする指令である場合にはステップSB08へ進み、そうでない場合にはステップSB09へ進む。
●[ステップSB08]描画軌跡補正ベクトルをクリアする。
【0045】
●[ステップSB09]補間周期毎の移動量を計算する補間処理を実行する。
●[ステップSB10]座標更新手段120が、ステップSB09の処理で計算された補間処理の結果データに基づいて座標値を更新する。
●[ステップSB11]軸制御回路14が、ステップSB09の処理で計算された補間処理の結果データ基づいて、サーボアンプ17を介してサーボモータに移動量を出力する。
●[ステップSB12]描画軌跡作成手段130が、入力された軸の座標値(出力座標値+描画軌跡補正ベクトル)に従って軸の描画軌跡(加工軌跡)に係るデータを作成し、グラフィック制御回路23へ出力することで加工軌跡の描画を行い、ステップSB01へ戻る。
【0046】
なお、上記では加工中描画の軌跡を描画軌跡補正ベクトルに基づいて補正して描画する例を説明したが、チェック描画の2つ目の経路の表示位置を補正するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 数値制御装置
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 軸制御回路
15 PMC
16 表示器/MDIユニット
17 サーボアンプ
21 表示装置
22 キーボード
23 グラフィック制御回路
30 工作機械
100 制御部
110 移動指令作成手段
120 座標更新手段
130 描画軌跡作成手段
140 手動介入量作成手段
150 軌跡補正ベクトル算出手段
160 描画無効判定手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13