【実施例】
【0085】
《実施例1(スパッタ法によるPd−W複合金属微粒子の作製)》
〈イオン液体の調製〉
イオン液体としてのBMI−PF6を2.4cm
3取り、これを加熱しながら105℃で1時間にわたり減圧乾燥し、イオン液体を調製した。なお、BMI−PF6は、下記の式で表すことができる:
【化1】
【0086】
〈触媒の作製〉
スパッタリング装置(Sanyu Electron社製SC−701HMCII4号機)内に、
図2に示すようなタングステン(W)板と、白金族金属としてのパラジウム(Pd)板を放射状に交互に配列した円板状の交互配列ターゲット(Pd板にW板をカーボンテープで張り付けたもの、面積比Pd:W=58:42)を設置した。
【0087】
次いで、スパッタリング装置のチャンバー内をArガスで2回置換してから圧力3.0Pa、スパッタリング電流20mAの条件下で30分間プレスパッタリングを行い、安定してスパッタリングを行うことができる状態にした。
【0088】
次に、上記のBMI−PF6をシャーレ(直径:70mm)に均一に広げ、それをスパッタリング装置内に入れた後、さらに30分間減圧乾燥した。
【0089】
次いで、圧力を3.0Pa、スパッタリング電流を20mA、そしてターゲット材料とBMI−PF6との距離を6.7cmとして、300分間にわたりスパッタリングを行った。
【0090】
その後、シャーレ内のイオン液体を回収し、Pd−W複合金属微粒子を含む分散液を得た。なお、蛍光X線分析の結果、当該分散液中のPd及びWの各濃度としては、Pdが100.5mM、かつWが9.6mMであった。この分析結果から、Pd−W複合金属微粒子中のPd及びWの平均含有率を、それぞれ91.3原子%及び8.7原子%と算出した。
【0091】
〈触媒の担持工程〉
次に、粉末担体としてのセリア−ジルコニア複合酸化物(CeO
2−ZrO
2:Rhodia社製)3.3gを、アセトニトリル4mLに分散させ、溶液を調製した。この溶液と、上記のPd−W複合金属微粒子を含む分散液3mLとを50mLのフラスコで混合し、混合分散液を調製した。
【0092】
次いで、この混合分散液を窒素気流中150℃で30分間にわたり加熱及び攪拌した。得られた分散液を冷却後、濾過によって当該分散液から粉末を分離し、それをアセトニトリルで3回洗浄してBMI−PF6を十分に除去した。
【0093】
次いで、得られた粉末を空気中110℃で5時間乾燥することにより、排ガス浄化触媒を得た。なお、Pd−W複合金属微粒子及びセリア−ジルコニア複合酸化物の総質量に基づいて、Pdの含有率は1.00質量%、かつWの含有率は0.17質量%であった。
【0094】
《実施例2(スパッタ法によるPd−W複合金属微粒子の作製)》
交互配列ターゲットの面積比Pd:W=42:58のものを用いたことを除いて、実施例1と同様にして、イオン液体の調製、触媒の作製、及び触媒の担持工程を行った。
【0095】
なお、触媒の作製で行った蛍光X線分析の結果、当該分散液中のPd及びWの各濃度としては、Pdが74.1mM、そしてWが18.0mMであった。この分析結果から、Pd−W複合金属微粒子中のPd及びWの平均含有率を、それぞれ80.5原子%及び19.5原子%と算出した。
【0096】
さらに、触媒の担持工程において、Pd−W複合金属微粒子及びセリア−ジルコニア複合酸化物の総質量に基づいて、Pdの含有率は0.99質量%、かつWの含有率は0.43質量%であった。
【0097】
《比較例1(スパッタ法によるPd金属微粒子の作製)》
〈イオン液体の調製〉
イオン液体を減圧乾燥する温度を120℃にしたことを除いて、実施例1と同様にしてイオン液体の調製を行った。
【0098】
〈触媒の作製〉
スパッタリング装置(同上)内に、円板状のPdターゲットを設置した。
【0099】
次に、上記のBMI−PF6をシャーレ(直径:70mm)に均一に広げ、それをスパッタリング装置内に入れた後、さらに30分間減圧乾燥した。
【0100】
次いで、圧力を3.0Pa、スパッタリング電流を20mA、そしてターゲット材料とイオン液体であるBMI−PF6との距離を6.7cmとして、120分間にわたりスパッタリングを行った。
【0101】
次に、シャーレ内のイオン液体を回収し、金属微粒子を含む分散液を得た。なお、蛍光X線分析の結果、当該分散液中のPdの濃度は、113.7mMであった。
【0102】
〈触媒の担持工程〉
実施例1と同様にして、金属微粒子の担持工程を行った。なお、Pd金属微粒子及びセリア−ジルコニア複合酸化物の総質量に基づいて、Pdの含有率は1.01質量%であった。
【0103】
《比較例2(スパッタ法によるW金属微粒子の作製)》
触媒の作製で、Pdターゲットを円板状のWターゲットに変更したこと、かつスパッタリングを150分間及び300分間にわたって行う操作を3回繰り返したことを除いて、比較例1と同様にして、イオン液体の調製を行った。
【0104】
比較例1と同様にして、触媒の作製を行った。なお、触媒の作製で行った蛍光X線分析の結果、当該分散液中のWの濃度は、75.6mMであった。
【0105】
比較例1と同様にして、触媒の担持を行った。なお、W及びセリア−ジルコニア複合酸化物の総質量に基づいて、Wの含有率は1.72質量%であった。
【0106】
《比較例3(含浸法によるPd触媒の合成)》
300mLビーカーで蒸留水50mLと、硝酸パラジウム0.6gとを混合し、これらを室温で撹拌することによって、硝酸パラジウムを完全に溶解させた。次いで、この溶液とセリア−ジルコニア複合酸化物30gとを混合し、この混合物を加熱し、これによって溶媒を蒸発させた。
【0107】
さらに、上記の混合物を120℃で1時間にわたり乾燥させた後、これを乳鉢で粉砕し、かつ500℃で2時間にわたり焼成し、Pd触媒を得た。Pd触媒の総質量に基づいて、Pdの含有率は1.02質量%であった。
【0108】
《比較例4(含浸法によるW触媒の合成)》
300mLビーカーで蒸留水50mLと、六塩化タングステン(WCl
6)1.0gとを混合し、これらを室温で撹拌することによって、六塩化タングステンを完全に溶解させた。次いで、この溶液とセリア−ジルコニア複合酸化物26gとを混合し、この混合物を加熱し、これによって溶媒を蒸発させた。
【0109】
さらに、上記の混合物を120℃で1時間にわたり乾燥させた後、これを乳鉢で粉砕し、かつ500℃で2時間にわたり焼成し、W触媒を得た。W触媒の総質量に基づいて、Wの含有率は1.75質量%であった。
【0110】
《比較例5(含浸法によるPd触媒及びW触媒からなる混合触媒の合成)》
硝酸パラジウムを0.27gで用いたことを除いて、比較例3と同様にしてPd触媒を合成した。また、六塩化タングステンを0.11gで用いたことを除いて、比較例4と同様にしてW触媒を合成した。
【0111】
これらPd触媒及びW触媒を混合し、乳鉢で粉砕することによって、混合触媒を得た。この混合触媒の総質量に基づいて、Pdの含有率は0.98質量%、かつWの含有率は0.41質量%であった。
【0112】
《比較例6(還元法による保護高分子及び還元剤を用いたPd−W触媒の合成)》
保護高分子としてのポリ−n−ビニルピロリドン(PVP)、還元剤としての水素化ホウ素ナトリウム、硝酸パラジウム、六塩化タングステン、及びセリア−ジルコニア複合酸化物を用いてPd−W触媒を合成した。Pd−W触媒の総質量に基づいて、Pdの含有率は0.92質量%、かつWの含有率は0.02質量%であった。
【0113】
上記の実施例1及び2並びに比較例1〜6の触媒の構成を下記の表1に示している。なお、触媒の含有率(%)は、ICP−MS(高周波誘導結合プラズマ−質量分析装置)によって分析した。
【0114】
〈TEM分析〉
上記の実施例1及び2並びに比較例1及び2の触媒を、透過型電子顕微鏡(TEM)(日立製H−7650)によって分析した。分析対像の試料としては、粉末担体に担持する前の各例の微粒子を含有している溶液を用いた。
【0115】
実施例1及び2並びに比較例1及び2の触媒のTEM像及び/又はヒストグラムを、
図3〜6に示し、実施例1及び2並びに比較例1の触媒のTEM像から計測した微粒子の平均粒径(dav(nm))及び標準偏差(σ(nm))を表1に示している。
【0116】
【表1】
【0117】
具体的には、実施例1に関する
図3(a)のTEM像及び(b)のヒストグラムからは、複合金属微粒子の粒径が、1.0nm〜3.5nm程度の範囲にあることが分かり、かつその粒径が平均粒径1.7nmの60%〜200%程度の範囲にあることが理解される。
【0118】
また、実施例2に関する
図4(a)のTEM像及び(b)のヒストグラムからは、複合金属微粒子の粒径が、0.5nm〜3.0nm程度の範囲にあることが分かり、かつその粒径が平均粒径1.6nmの30%〜190%程度の範囲にあることが理解される。
【0119】
したがって、これら
図3及び4からは、実施例1及び2の複合金属微粒子が、約2nm又はそれよりも小さい平均粒径を有する非常に繊細な一次粒子で形成され、かつそれらの複合金属微粒子が分散して存在していることが理解される。
【0120】
比較例1に関する
図5(a)のTEM像及び(b)のヒストグラムからは、Pd金属微粒子の粒径が、1.0nm〜4.3nm程度の範囲にあることが分かる。また、それらの金属微粒子が分散して存在していることが理解される。
【0121】
比較例2に関する
図6のTEM像からは、粒子を観察することはできなかった。これは、タングステンが、WOx等の酸化物として存在し、かつこの酸化物が結晶状の粒子でなく、非晶質のアモルファス形状を形成しているためと考えられる。
【0122】
《評価》
実施例1及び2並びに比較例1〜6の触媒について、粒成長の抑制効果の評価及び排ガス浄化能の評価を行った。
【0123】
〈粒成長の抑制効果の評価〉
粒成長の抑制効果の評価は、触媒に熱耐久試験を行った後に、触媒の金属微粒子を、エネルギー分散型X線分析装置付走査透過型電子顕微鏡(STEM−EDX)(日立製HD2700)と、X線回折装置(XRD)(株式会社リガク製RINT2000)とで分析することによって行った。
【0124】
(熱耐久試験)
実施例1及び2並びに比較例1〜6の触媒を、500℃で2時間にわたって焼成した後、各例の触媒を4gずつ採取し、試料として用いた。熱耐久試験の工程は、下記(1)〜(5)のとおりである:
(1)ガス流速10L/minのN
2雰囲気に試料を置き、常温から1050℃まで試料を加熱した;
(2)目標の温度に到達した後、雰囲気を混合気体Rに変更し、この混合気体Rを10L/minの流速で2分間にわたり、試料に曝した;
(3)その後、雰囲気を混合気体Lに変更し、この混合気体Lを10L/minの流速で2分間にわたり、試料に曝した;
(4)その後、(2)及び(3)の工程を交互に繰り返し、(2)及び(3)の工程の回数が総計で、150回となった。すなわち、(2)及び(3)の工程を合計時間にして300分間行った。この操作は(2)の工程で終わるようにした。;
(5)その後、1050℃から常温まで試料を冷ました。
【0125】
なお、混合気体R(リッチ)を構成する成分は、CO:1%、H
2O:3%、及びN
2バランスであり、混合気体L(リーン)を構成する成分は、O
2:5%、H
2O:3%、及びN
2バランスであった。
【0126】
(STEM−EDX分析)
熱耐久試験の後、試料を取り出し、実施例1及び2並びに比較例5の触媒に対してSTEM−EDX分析を行った。結果を
図7〜9に示している。なお、STEM−EDX分析については、一粒子分析を採用し、かつ測定対象となる各微粒子の抽出は、試料中の微粒子を無作為に抽出することによって行った。
【0127】
図7(a)〜(e)からは、微粒子が、分散して存在していることが分かる。また、
図7(f)からは、
図7(a)〜(e)の各測定点の微粒子が、パラジウム及びタングステンを含有しており、かつタングステンの含有率が約2原子%〜10原子%あることが分かる。
【0128】
したがって、表1の実施例1のタングステン(W)の平均含有率(原子%)が8.7原子%であり、1〜5の測定点で微粒子が約2原子%〜10原子%のタングステンを含有していることから、個数基準で100%の金属微粒子のタングステンの含有率が、タングステンの平均含有率の20%〜120%程度であることが理解される。
【0129】
図8(a)〜(d)からは、微粒子が、分散して存在していることが分かる。また、
図8(e)からは、
図8(a)を除いて、
図8(b)〜(d)の各測定点の微粒子が、パラジウム及びタングステンを含有しており、かつタングステンの含有率が約2原子%〜68原子%あることが分かる。
【0130】
したがって、表1の実施例2のタングステンの平均含有率(原子%)が19.5原子%であり、1〜5の測定点のうち2〜5の測定点で微粒子が約2原子%〜68原子%のタングステンを含有していることから、個数基準で80%以上の金属微粒子のタングステンの含有率が、タングステンの平均含有率の10%〜350%の範囲内であることが理解される。
【0131】
図9(a)及び(b)からは、微粒子及び非晶質が存在していることが分かる。また、
図9(c)からは、
図9(a)及び(b)の各測定点の微粒子が、パラジウムのみを含有していることが分かる。さらに、上記のICP−MS分析及び表1によれば、比較例5の触媒には、パラジウム及びタングステンが、金属微粒子及び担体の総質量に基づいて、それぞれ、0.98質量%及び0.41質量%で存在していることが分かる。
【0132】
したがって、比較例5の触媒中にパラジウム及びタングステンが存在しているが、微粒子は主にPdからなる微粒子として存在し、タングステンは微粒子としてではなく、非晶質として存在し、かつパラジウム及びタングステンからなる微粒子はほとんど存在していないことが理解される。
【0133】
これは、タングステンの酸化還元電位が非常に高く、溶液中のタングステンを単体の金属に還元することが困難であるため、含浸法により作製された比較例5の触媒では、パラジウム及びタングステンからなる微粒子の製造ができなかったことによると考えられる。
【0134】
(XRD分析)
熱耐久試験の後、実施例1及び2並びに比較例1〜6の触媒に対してXRD分析を行った。結果を表2に示し、特に、実施例1及び2並びに比較例1の結果を
図10に示している。
【0135】
なお、XRD分析の測定条件は、下記のとおりである:
測定モードはFT(Fixed Time)モード、X線源はCuKα(1.542Å);ステップ幅は0.02deg;計数時間は0.5sec;発散スリット(DS)は2/3deg;散乱スリット(SS)は2/3deg;受光スリット(RS)は0.5mm;管電圧は50kV;かつ管電流は300mA。
【0136】
また、各例の触媒のXRD分析の結果から、シェラ−(Scherrer)の式を用いて、熱耐久試験後の金属微粒子の粒径(nm)を求めた。シェラ−の式は、下記の式(I)で表すことができる:
【数1】
[式中、
形状因子:K
X線波長:λ
ピーク全半値幅:β
ブラッグ(Bragg)角:θ
金属微粒子の粒径:τ]
【0137】
【表2】
【0138】
図10(a)は、実施例1及び2並びに比較例1の触媒のX線回折パターンを示す図であり、
図10(b)は、
図10(a)において、Pd(111)面での回折を示す領域Dを拡大した図である。なお、
図10(a)の黒丸(●)のピークは、担体としてのCeO
2−ZrO
2を示している。
【0139】
図10(b)からは、実施例1及び2並びに比較例1の金属微粒子がPdを含有していることが分かり、かつパラジウムのブラッグ(Bragg)角及びピーク全半値幅を読み取ることができる。なお、ブラッグ角とは、ブラッグ条件を充足する角度を意味する。
【0140】
このブラッグ角等を用いて、上記のシェラ−の式から、実施例1及び2並びに比較例1の金属微粒子の粒径を求めた。結果を
図11に示している。
【0141】
図11は、実施例1及び2並びに比較例1の触媒とその金属微粒子の粒径(nm)との関係を示す図である。
図11からは、パラジウムのみからなる比較例1の金属微粒子の粒径が44.5nmであるのに対して、パラジウム及びタングステンからなる実施例1及び2の複合金属微粒子の粒径が、それぞれ30.4nm及び28.1nmであることが分かる。
【0142】
したがって、熱耐久試験の後において、パラジウムのみからなる比較例1の金属微粒子の粒径よりも、パラジウム及びタングステンからなる実施例1及び2の複合金属微粒子の粒径の方が小さいことから、パラジウム及びタングステンからなる複合金属微粒子では、タングステンの存在によって微粒子の粒成長が抑制されていることが分かる。
【0143】
〈排ガス浄化能の評価〉
排ガス浄化能の評価は、実施例1及び2並びに比較例1〜6の触媒を排ガスとしての試験ガスに曝したときに、各触媒が浄化したNOxの量を、FT−IR分析計で計測することにより行った。
【0144】
具体的には、触媒を0.3g採取して流通式反応装置(flow reactor)にセットし、この触媒に試験ガスを1(L/min)の流量で曝した。このとき、触媒の温度を、100℃から600℃まで20(℃/min)の昇温速度で昇温させつつ、触媒の温度(℃)に対するNOの転化率(%)を記録した。結果を
図12及び
図13に示している。
【0145】
なお、試験ガスを構成する成分は、CO:0.65体積%、CO
2:10.00体積%、C
3H
6:3000ppmC(1000ppm)、NO:1500ppm、O
2:0.70体積%、H
2O:3.00体積%、及びN
2バランスであった。
【0146】
図12(a)〜(c)からは、100℃〜400℃の範囲の温度では、実施例1及び2並びに比較例1の触媒のNOの転化率(%)はほとんど同じであるが、400℃〜600℃の範囲の温度では、実施例1及び2の触媒のNOの転化率(%)が上昇しているのに対し、比較例1の触媒のNOの転化率(%)が下降していることが分かる。
【0147】
また、表2の熱耐久試験後の粒径(nm)からは、実施例1及び2の金属微粒子の粒径が比較例1の金属微粒子の粒径よりも小さいことが分かる。
【0148】
このことから、400℃〜600℃の範囲の温度では、実施例1及び2の触媒の金属微粒子が、比較例1と比較してほとんど粒成長することなく、ひいては、微粒子の比表面積が小さくなることに伴うNOxの活性点数の減少が少ない又はほとんどなく、触媒活性の低下が防止されていると考えられる。
【0149】
したがって、実施例1及び2の触媒のNOの転化率(%)の上昇は、触媒活性の低下が防止されたことと、温度の上昇にともなって、速度論的にNOx浄化能が上昇したことによると考えられる。
【0150】
その一方で、400℃〜600℃の範囲の温度では、比較例1の触媒の金属微粒子が粒成長したため、NOxの活性点数が少なくなり、触媒活性が低下したと考えられる。
【0151】
したがって、比較例1の触媒のNOの転化率(%)の下降は、粒成長による触媒活性の低下を起因としており、温度の上昇に伴う速度論的なNOx浄化能の上昇によっても、当該触媒活性の低下分を補うことはできなかったと考えられる。
【0152】
さらに、
図13からは、600℃でのNOの転化率(%)が、比較例1の触媒より実施例1及び2の触媒で高くなっていることが分かる。このことから、400℃〜600℃の範囲の温度では、実施例1及び2の触媒のNOx浄化能が上昇するのみならず、600℃の高温では、比較例1の触媒より実施例1及び2の触媒のほうが、高いNOx浄化能を示すことが理解される。
【0153】
本発明の好ましい実施形態を詳細に記載したが、特許請求の範囲から逸脱することなく、本発明で使用される排ガス浄化触媒、粉末担体、イオン液体、製造装置、及び測定装置等の配置及びタイプについて変更が可能であることを当業者は理解する。