特許第6126204号(P6126204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6126204プロスタグランジンを主成分とした気管支拡張剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6126204
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】プロスタグランジンを主成分とした気管支拡張剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5575 20060101AFI20170424BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20170424BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20170424BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20170424BHJP
   A61P 11/08 20060101ALI20170424BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20170424BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   A61K31/5575ZMD
   A61P11/00
   A61P29/00
   A61P11/06
   A61P11/08
   A61K9/72
   A61K9/08
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-508895(P2015-508895)
(86)(22)【出願日】2013年3月1日
(65)【公表番号】特表2016-506359(P2016-506359A)
(43)【公表日】2016年3月3日
(86)【国際出願番号】RU2013000163
(87)【国際公開番号】WO2013162416
(87)【国際公開日】20131031
【審査請求日】2016年2月26日
(31)【優先権主張番号】2012116226
(32)【優先日】2012年4月24日
(33)【優先権主張国】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】514272014
【氏名又は名称】オブシェストヴォ エス オグラニケノイ オトヴェツヴェノスチュ “ノクシ ラボ”
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ベズグロフ,ヴラディミル ヴィレノヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】セルコフ,イゴール ヴィクトロビッチ
【審査官】 磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05625083(US,A)
【文献】 ロシア国特許出願公開第02067094(RU,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/5575
A61K 9/08
A61K 9/72
A61P 11/00
A61P 11/06
A61P 11/08
A61P 29/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気管支拡張物質として有効量の有効成分11(S),15(S)−ジヒドロキシ−9−ケト−5Z,13E−プロスタジエン酸の1’,3’−ジニトログリセリンエステルと、薬学的に許容される担体または希釈液とを含み、吸入によって患者に投与される薬剤であって、
前記11(S),15(S)−ジヒドロキシ−9−ケト−5Z,13E−プロスタジエン酸の1’,3’−ジニトログリセリンエステルが1回の吸入当たり7.5〜20μgの範囲である、炎症性もしくは閉塞性呼吸器疾患の治療のための薬剤。
【請求項2】
前記炎症性もしくは閉塞性呼吸器疾患は、気管支喘息および閉塞性気管支炎からなる群から選択される、請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
生理溶液である前記有効成分の溶液である、請求項1または2に記載の薬剤。
【請求項4】
効量の11(S),15(S)−ジヒドロキシ−9−ケト−5Z,13E−プロスタジエン酸の1’,3’−ジニトログリセリンエステルを繰り返し投与するための、請求項のいずれか1項に記載の薬剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学すなわち呼吸器学の分野に関し、気管支拡張作用を発現する有効成分を含む薬剤を用いた、炎症性もしくは閉塞性呼吸器疾患、特に喘息および閉塞性気管支炎の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、喘息および他の閉塞性気管支疾患の治療において、3種類の薬剤(抗炎症作用を有するコルチコステロイド以外)、すなわち、βアドレナリン受容体作動薬(即効性および持続性作用)、抗コリン薬(ムスカリン受容体拮抗薬)、テオフィリン(プリンの誘導体)のみが使用されている。
【0003】
また、その治療計画には現在のところ、単独または長時間作用性のβ作動薬と組み合わせた吸入コルチコステロイドの常用が含まれる。しかし、そのような見たところ有効な治療法にも関わらず、喘息を有する患者の約半分がその治療にあまり反応しない。別の問題は、窒息の急性発作である。長時間作用性β作動薬の長期間の服用歴を有する患者では、これらの薬剤の喘息発作を止める能力は低下している。気管支拡張剤の蓄積を拡大させるという問題の解決法の1つは、他の薬理学的標的を利用することである。
【0004】
実験動物に対する生体内実験のように、単離された気管支の小片に対する生体外実験で観察される、EP受容体EPサブタイプとの相互作用によって媒介される天然のプロスタグランジンE2の気管支拡張作用が知られている(X. Norel, L. Walch, C. Labat, J-P. Gascard, E. Dulmet, C. Brink. Prostanoid receptors involved in the relaxation of human bronchial preparations.//British Journal of Pharmacology (1999) 126, 867-872)。しかし、個体における気管支収縮を遮断するための天然のプロスタグランジンE2の使用は、強い咳反射により不可能である。
【0005】
この副作用を取り除くという課題は、ニトロ基を含むさらなる断片を導入すること、すなわち天然のプロスタグランジンE2の誘導体である、ニトロプロストン(nitroproston)と称される11(S),15(S)−ジヒドロキシ−9−ケト−5Z,13E−プロスタジエン酸の1’,3’−ジニトログリセリンエステルが得られるプロスタグランジン分子の修飾により、本発明の著者らによって解決された。ニトロプロストンの調製方法および平滑筋の実験におけるその活性のスペクトルは、本発明の著者らによって先のロシア特許第2067094号に記載されている。モルモットの気管の弛緩に対する実験では、天然のプロスタグランジンE2の0.14±0.08μmol/Lに対して、ニトロプロストンでは0.007±0.025μmol/LのEC50値が得られ、これは、天然のプロスタグランジンと比較してニトロプロストンのかなりより有意な活性を実証している。但し、天然のプロスタグランジンE2と同様に、実験動物の平滑筋について収集されたデータにより、ヒトにおける用途のための気管支拡張剤としてのその物質の適合性について結論づけることはできなかった。本著者らは、健康な志願者および気管支喘息を有する患者に対してさらなる研究を行い、ヒトにおける気管支拡張剤としてのニトロプロストンの適用に関する有効性、すなわち顕著な副作用を引き起こさないことを証明した。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、11(S),15(S)−ジヒドロキシ−9−ケト−5Z,13E−プロスタジエン酸の1’,3’−ジニトログリセリンエステル(ニトロプロストン)を主成分とした気管支拡張剤を創出するという課題を解決する。本薬剤は、例えば等張液の形態で吸入により気道に導入するのに適した任意の形態のニトロプロストンである。不安定な寛解および記録された気管支痙攣を発現している段階にある喘息を有する志願者の限定された群に対する実験では、等張液の形態のニトロプロストン(1回の吸入当たり7.5μgの用量)により、副作用を生じることなく気管支の長期間の拡張が生じた。喘息を有する患者の中には、記録された咳の発作を引き起こしたものを全くおらず、健康な志願者の中にもいなかった。ニトロプロストンの吸入溶液の副作用は、一過性のドライマウスのみであった。研究から、治療量(1回の吸入当たり5〜20μg)のニトロプロストンには毒性がなく、他のヒトの体器官からも反応は生じないことが分かった。齧歯類で測定した治療指数は15000を超えている。
【0007】
従って、本明細書に特許請求されている化合物は、気管支拡張剤の命名の拡大という問題を解決し、喘息発作および他の閉塞性気管支疾患を治癒させる薬に使用することができる。
【0008】
本発明の目的の1つは、炎症性もしくは閉塞性呼吸器疾患、特に喘息および閉塞性気管支炎の治療を目的とした薬剤である。
【0009】
上記薬剤の導入は、吸入により行うことが好ましく、すなわち、その有効成分は、吸入に適した形態であることが好ましい。吸入を目的とした薬剤の形態、すなわち有効成分を含む形態は、例えば、噴射剤中に溶液または分散液の形態の有効成分を含むスプレーなどの微細分散スプレーのための組成物、あるいは水、有機媒体または水/有機媒体中に有効成分を含む分散組成物であってもよい。例えば、薬剤の吸入のための形態は、噴射剤中に溶液または分散液の形態の有効成分を含むスプレーであってもよい。
【0010】
特に、本発明の薬剤を、有効成分のアルコール溶液の形態で調製してもよい。そのような溶液をスプレーとしての使用に適したものにするために、必ずしもノルフルラン(norfluran)すなわち(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)などの液化石油ガスをここに添加する必要はない。
【0011】
好ましい実施形態では、本薬剤は、吸入に適した生理溶液である11(S),15(S)−ジヒドロキシ−9−ケト−5Z,13E−プロスタジエン酸の1’,3’−ジニトログリセリンエステル溶液である。
【0012】
本発明の別の目的は、喘息および閉塞性気管支炎などの炎症性もしくは閉塞性呼吸器疾患の治療方法である。この目的のために、そのような治療を必要としている患者に、有効量の11(S),15(S)−ジヒドロキシ−9−ケト−5Z,13E−プロスタジエン酸の1’,3’−ジニトログリセリンエステルを導入する。
【0013】
本発明の好ましい実施形態では、有効成分を所望の体積になるまで生理溶液に溶解して調製される等張液の形態の、11(S),15(S)−ジヒドロキシ−9−ケト−5Z,13E−プロスタジエン酸の1’,3’−ジニトログリセリンエステルを患者に投与する。
【0014】
本発明の別の好ましい実施形態では、例えば吸入により患者に投与される11(S),15(S)−ジヒドロキシ−9−ケト−5Z,13E−プロスタジエン酸の1’,3’−ジニトログリセリンエステルの上記調製した溶液中の治療的有効量は、5〜20μgの範囲であってもよい。
【0015】
本発明の最も好ましい実施形態では、11(S),15(S)−ジヒドロキシ−9−ケト−5Z,13E−プロスタジエン酸の1’,3’−ジニトログリセリンエステルを、1回の吸入当たり5〜7.5μgの量で、吸入により患者に投与する。
【0016】
所望の結果を達成するために、11(S),15(S)−ジヒドロキシ−9−ケト−5Z,13E−プロスタジエン酸の1’,3’−ジニトログリセリンエステルの単回注射では十分でないような本発明の実施では、治療効果を高め、かつその時間を長引かせるために、吸入の形態の有効成分の繰り返しの導入を患者に対して行うことができる。
【0017】
本発明の別の目的は、11(S),15(S)−ジヒドロキシ−9−ケト−5Z,13E−プロスタジエン酸の1’,3’−ジニトログリセリンエステルの気管支拡張剤としての使用である。また、11(S),15(S)−ジヒドロキシ−9−ケト−5Z,13E−プロスタジエン酸の1’,3’−ジニトログリセリンエステルを使用して、喘息および閉塞性気管支炎などの炎症性もしくは閉塞性呼吸器疾患の治療を目的とした製剤を調製することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】7.5μgの用量のニトロプロストンの吸入後360分以内の最大呼気流速における変化を示す。x軸は、ニトロプロストンの導入後の時間(単位:分)であり、y軸は、最大呼気流速(単位:リットル/分)である。患者の名前は省略されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の実施例により、本発明の実施形態を例示する。
【0020】
実施例1:11(S),15(S)−ジヒドロキシ−9−ケト−5Z,13E−プロスタジエン酸の1’,3’−ジニトログリセリンエステル(ニトロプロストン)の合成
【0021】
125mlのトルエンおよび20mlの乾燥アセトンの混合物中に、アルゴン雰囲気下で、1グラム(2.8mmol)のプロスタグランジンE2を絶えず撹拌しながら溶解し、1.46g(14.46mmol)のトリエチルアミンおよび2g(10.47mmol)の塩化パラトルエンスルホニルを連続的に添加し、これを10分間撹拌した。次いで、得られた混合無水物の溶液に、1g(8.2mmol)のジメチルアミノピリジンおよび1.5g(8.24mmol)の1,3−ジニトログリセリンを添加し、得られた混合物を25℃で1時間撹拌した。トリエチルアミン塩酸塩を濾別し、濾液を減圧下で半分になるまで蒸発させ、沈殿したトリエチルアミン塩酸塩の量を再び濾別し、濾液を、200gのシリカゲルL(100〜250μm)と共にカラムに入れ、ベンゼン−アセトンの勾配系を用いるカラムで溶離した。生成物を含む画分(TLCで確認)を1つにまとめ、溶媒を減圧下で蒸発させた。995mgのニトロプロストンを、68%の収率で粘性の無色の油として得た。Rf 0.39 (ベンゼン−ジオキサン−酢酸, 40 : 10 : 1), [α]D20 - 42.1° (с = 1, エタノール), 質量スペクトル (m/z): 517 (M + H)。質量スペクトル (化学イオン化), (m/z, %): 533 (M + NH3, 69), 516 (M, 60), 489 (M + H - CO, 40), 471 (M + H - NO2, 29), 426 (M - 2×NO2, 100), 409 (M - 2×NO2 - OH, 69), 391 (M - 2×NO2 - OH - H2O, 58), 352 (M - (CH2ONO2)2C, 54), 334 (M - (CH2ONO2)2COH, 44), 317 (M - (CH2ONO2)2COH - H2O, 86)。IR-スペクトル, (KBr, 薄膜), nm-1: 3400 (ОН), 2860-3100 (CH), 1750 (C=O), 1660 (N=O, asym), 1280 (N=O, sym), 860 (O-N), 980 (C-C), 1158, 1102, 1074, 1010, 754, 634。1H NMR (500 MHz, CDCl3, δ, ppm): 5,59 (1H, dd, J = 7,5 Hz, J = 15 Hz, H-14), 5,49 (1H, dd, J = 8,5 Hz, J = 15 Hz, H-13), 5,35 (3H, m, Н-5, Н-6, H-22), 4,74 (2H, dd, J = 4 Hz, J = 12,5 Hz, H-21またはH-23), 4,56 (2H, dd, J = 6 Hz, J = 12,5 Hz, H-21またはH-23), 4,03 (1H, q, J = 7 Hz, H-15), 3,99 (1H, q, J = 8,5 Hz, H-11), 2,67 (1H, dd, J = 7 Hz, J = 18 Hz, H-10β), 2,34 (2H, t, J = 7 Hz, H-2), 2,29 (2H, m, H-12, H-10α), 2,08 (5H, m, H-8, H-3, H-7), 1,67 (2H, dq, J = 2 Hz, J = 7 Hz, H-16), 1,52 (2Н, dm, H-4), 1,31 (6H, m, H-17, Н-18, H-19), 0,90 (3H, t, J = 7 Hz, H-20)。13С-NMR (500 MHz, CDCl3, δ, ppm): 211,75 (C-9), 171,31 (C-1), 136,59 (C-22), 131,31 (C-14), 130,04 (C-13), 127,99 (C-5), 126,90 (C-6), 73,07 (C-15), 72,16 (C-11), 69,59 (C-21またはС-23), 66,54 (C-21またはС-23), 54,79 (C-12), 54,13 (C-8), 46,23 (C-10), 37,76 (C-16), 33,45 (C-2), 32,26 (C-18), 26,88 (C-4), 25,75 (C-7), 25,52 (C-17), 24,89 (C-3), 23,25 (C-19), 14,87 (C-20)。
【0022】
適当な濃度のニトロプロストンのエタノール溶液を調製した。標準溶液の濃度は、1mL当たり10mg(1%)であった。
【0023】
実施例2:ニトロプロストンの急性毒性および治療指数の決定
【0024】
白色で非近交系の雄のマウス(体重22±2g)に対して実験を行った。アルコール溶液の形態のニトロプロストンを、215mg/kgの用量を最大50μlで10匹のマウスに腹膜内注射した。対照群(10匹の動物)に同じ体積の純粋なエチルアルコールを注射した。動物の健康監視期間は14日であった。治療指数は、血圧の変化に関するED20(薬理量)に対するLD50値(中毒量)の比として定めた。対照群および実験群において、動物の死亡は観察されなかった。従って、a)アルコール溶液の形態のニトロプロストンは毒性の低い化合物であり、b)ニトロプロストンの治療指数は15000超であるとみなすことができる。
【0025】
実施例3:繰り返し導入したニトロプロストンの毒性の決定
【0026】
白色で非近交系の雄のマウス(体重26±2g)に対して実験を行った。動物を、それぞれ10匹の動物からなる3つの群に分けた。ニトロプロストン(1%のアルコール溶液)を水で希釈し、2種類の用量すなわち50μg/kgおよび500μg/kgを20μlの体積で注射した。対照群に等体積の蒸留水を注射した。これらの注射を14日間にわたって毎日行った。これらの動物を毎日観察し、動物の体重を測定し、餌および水を与えた。対照群と実験群との間で動物の状態および行動において違いは観察されなかった。従って、50μg/kgおよび500μg/kgの用量で14日間のニトロプロストンの導入により毒性作用は全く生じないことが証明された。
【0027】
実施例4:ニトロプロストンの気管支拡張活性
【0028】
健康な志願者(平均年齢42.6±3.9歳)および不安定な寛解状態にある気管支喘息を有する患者(平均年齢48.3±5.1歳)に対して試験を行った。1回の吸入当たり5μgおよび7.5μgの用量の生理溶液である溶液の形態のニトロプロストンを吸入により導入した。当業者には、吸入用溶液の調製は難しいことではなく、吸入器の特定の状況で使用される技術的機構によって決定される有効成分の用量および溶液の体積は分かっている。全ての患者において、ベロテック(Berotec)(標準的な気管支拡張剤を用いた試験により、気管支痙攣の存在を示す陽性の結果が得られた。自動の肺機能測定器(VI 8911、Estonia社)を用いて、外呼吸機能を測定した。健康な志願者では、ベロテックおよびニトロプロストンのいずれによっても外呼吸の機能において有意な変化は生じなかった。1回の吸入当たり5μgの用量のニトロプロストンを投与した患者では、外呼吸のパラメータは僅かに改善したが、どんな副作用も認められなかった。1回の吸入当たり7.5μgの用量のニトロプロストンを投与した全ての患者の外呼吸指数は改善した。従って、元の値と比較して最大25%の呼気流速の変化は10.4〜32.2%の範囲であった。1回の吸入当たり7.5μgのニトロプロストンを投与した患者の最大呼気流速における変化を図1に示す。全ての患者がこのパラメータの最大の増加により反応し、ヒトにおける炎症性もしくは閉塞性肺疾患の治療のための気管支拡張剤としてのニトロプロストンの有効性を反映していた。
図1